液体試料用高圧示差走査熱量測定装置
【課題】 液体試料を加圧下で測定できる液体試料用示差走査熱量測定装置を提供する。
【解決手段】 試料容器及びリファレンス容器が少なくとも10MPaの耐圧性を有し、該2つの耐圧容器に同時に、且つ同様に加圧するための高圧コネクター及びそれに接続する高圧ポンプを有する。
【解決手段】 試料容器及びリファレンス容器が少なくとも10MPaの耐圧性を有し、該2つの耐圧容器に同時に、且つ同様に加圧するための高圧コネクター及びそれに接続する高圧ポンプを有する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、示差走査熱量測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】示差走査熱量測定装置とは、測定すべき試料(液体の場合では、測定する物質を液体中に溶かしたものや、懸濁したもの)と、測定する物質を入れない液体(リファレンスという)を断熱室に入れ、その断熱室を徐々に昇温する。試料に相変化や反応がなければ、試料とリファレンスは同じように昇温する。そして、例えば試料に吸熱的な反応があれば試料はリファレンスと同様に昇温せず、温度上昇が押さえられる。これを、試料側に設けられたサブヒーターによってリファレンスと同じ温度まで昇温する。そして、このサブヒーターによって与えた熱量を、その時の断熱室の温度を横軸とし、縦軸に表示する。この測定によって、何度で相変化等の反応が生じたかが分かる。このような測定装置が示差走査熱量測定装置である。
【0003】ここで、液体試料用示差走査熱量測定装置の概要について、図6を用いて説明する。示差走査熱量測定装置11は、断熱室12、室内昇温用メインヒーター13、試料容器S、リファレンス容器R、及び試料とリファレンスを個別に昇温できるサブヒーター14、15を有している。更に、試料容器S、リファレンス容器Rには温度センサー16、17が設けられている。図示していないが、ヒーター13、14、15への電流量を制御する装置や温度センサー等はコンピューターによって集中制御されている。
【0004】装置に試料とリファレンスを入れ、メインヒーター13によって徐々に昇温する。そして、試料とリファレンスの温度上昇をそれぞれの温度センサーによって検知する。温度に差が出れば、その差を補償するため低い方のサブヒーターに通電し同じ温度にする。この時の通電量を記録する。この動作をしながら、断熱室を昇温していく。これによって、室内温度(即ち試料温度)と、その時のリファレンスとの吸収熱量差が検出でき、分子構造の変化等が生じたことが分かる。
【0005】これは、高分子物質の分野で広く利用されており、特にタンパク質の変成が解析できることで、生体高分子や生化学の分野でも利用されている。
【0006】また、近年高圧環境下での物質の挙動に関心が高まってきている。例えば、タンパク質の圧力変成に関する研究が盛んに行なわれている。天然のタンパク質に200MPa程度の超高圧を加えると、分子の立体構造が変化して変成を生じる。このような圧力変成を利用すれば、尿素などの変成試薬を加える必要がなく、また不要な分解産物を生じないので、目的物質の抽出や精製が容易となる。
【0007】更に、タンパク質の圧力変成、或いは化学合成における圧力効果・基礎的な機構の解明は、より有用な物質、医薬、食品等の開発或いは生産に有用である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の液体試料用示差走査熱量測定装置では、加圧できないため上記のような圧力変成の研究は非常に手間のかかるものであった。しかし、例えばタンパク質分子の圧力変成に関する研究を推進するためには、高圧下条件におけるタンパク質の熱物性をリアルタイムに測定する必要がある。つまり、高圧下において示差走査熱量測定を実施することが望まれるのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者は鋭意研究の結果本発明液体試料用示差走査熱量測定装置を完成させたものであり、その特徴とするところは、試料容器及びリファレンス容器が少なくとも10MPa(約100Kgf/cm2 )の耐圧性を有し、且つ該2つの耐圧容器に同時、且つ同様に加圧するための高圧コネクター及びそれに接続する高圧ポンプを有する点にある。
【0010】試料容器は、10MPa(約100Kgf/cm2 )の耐圧性を有することを必要とするが、その他については特別限定しない。10MPaとしたのは、これ以上は高圧であり、通常の容器では耐えられないためである。材質は、示差走査熱量測定装置に使用できればよく、各種ステンレス、鉄、銅、アルミニュウム、チタン、或いは合金等である。
【0011】サイズも基本的には自由であるが、温度を厳密に制御、測定するものであるため、熱容量を小さくするため肉厚は、耐圧があればできるだけ小さい方がよい。試料の温度均一にするため通常は内径も小さいほうがよい。数mm以下、0.5〜2.0mm程度である。
【0012】この試料容器は、片側は高圧ポンプに接続するため開放であるが、他方は封止しなければならない。この封止法も、熱容量が小さく、熱伝導が良く、耐圧のある方法でなければならない。好ましいのは、容器の側壁肉厚と同じ程度の肉厚で底面とする方法である。しかし、単に底板を溶接する方法では、高圧には耐えることは難しい。勿論、これらの方法で10MPaに耐えられれ、且つ熱容量や熱伝導の問題がなければ使用できる。本発明者は、この点についても容器の片側を絞り加工を施し、開口部を非常に小さくした後、その開口部を溶接する方法で耐圧を高めることに思い到った。この方法では、底面部は湾曲した形状になり、且つ全体として同じ程度の肉厚となった。このため、熱容量や熱伝導の点については非常に良い。
【0013】2つの耐圧容器に同時、且つ同様に加圧するのは、試料とリファレンスとは同じ環境に置く必要があるため、圧も同時に且つ同圧に昇圧する必要があるためである。従来、このような高圧装置は存在しなかったため、このような考え方は不要であった。
【0014】高圧コネクターとは、高圧ポンプと試料容器及びリファレンス容器を接続するものである。これは、試料容器とリファレンス容器を連結して同圧とし、かつポンプと接続することによって、同時に加圧できるようしたものである。
【0015】高圧ポンプは、どのようなものでもよく手動式でも自動式でもよい。特に、圧は変えずに一定の高圧で行なうものでは手動でも十分である。圧力媒体は、通常用いられる水、シリコンオイル、ケロシン、グリセリン、アルコール等でよく、リファレンスに用いる液でもよい。
【0016】更に、本発明装置は、圧を一定にして温度を変えて示差熱を測定するだけでなく、温度を一定にして圧力を変えて示差熱を測定することもできる。これは従来になかった測定方法であるが、高圧測定ができる装置によって実現したものである。測定法としては、メインヒーターによって、温度を一定にし(例えば、50℃)、圧力を自動ポンプによって徐々に上げる。圧力を上げることによって、例えば分子構造の変化等の吸熱反応があれば、試料温度センサーがその反応による温度下降を検知し、コンピューターに入力される。この断熱室内温度との差を補償するため、試料サブヒーターに通電され温度を一定に戻す。この通電量が記録される。このようにして、各圧力での示差熱が測定できる。
【0017】
【発明の実施の形態】次に図面に示す実施の形態に基づき、本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置1の概要を示す概略図である。試料容器2及びリファレンス容器3に加圧するためのコネクター4、高圧ポンプ5、及び圧力計6が設けられている。これ以外については、通常の液体用示差走査熱量測定装置と同様である。この高圧ポンプ5によって所定の圧まで加圧し、後は通常の示差走査熱量測定を行なえばよい。
【0018】図2は、本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置1に用いる試料容器2、リファレンス容器3、高圧コネクター4近傍の部分断面図である。断熱室7は試料容器2とリファレンス容器3が入るだけの容積を有している。温度を厳密に制御するためと、断熱性のためこの例では非常に厚い金属容器となっている。この例では、コネクター4は断熱室7の蓋8と一体として構成されている。即ち、蓋8に下方から縦方向の2本の細孔を彫り、その2本の細孔と連結するように左右に貫通孔を開ける。
【0019】縦方向の細孔に試料容器とリファレンス容器が接続され、左右の貫通孔の一方には高圧ポンプからのラインが接続され、他方はニードルとネジによって密閉されている。蓋8はボルト9によって断熱室容器10に固定されている。その他の要素、例えばヒーターや温度センサー等は省略している。
【0020】この例では、コネクター4自身、その構造から非常に大きな耐圧性を有している。且つ、試料容器2とリファレンス容器3を同時に、同等に加圧できる構造となっている。
【0021】図3は、図2で用いた試料容器及びリファレンス容器の底部の加工方法の1例を示す拡大断面図である。(a)は加工前を示し、(b)は絞り始め、(c)は絞り完了の状態を示す。この状態で先端に残存する開口部を溶接で埋めれば完成である。この方法により、底面部は湾曲した形状になり、且つ全体として同じ程度の肉厚となった。このため、熱容量や熱伝導の点については非常に良い。この例では、外径1.26mm、内径0.9mm、長さ134mmのSUS316製パイプを用いた。この例では、250MPaまで測定可能であった。
【0022】次に、図3の例によって、30℃で培養し対数増加期に集菌した酵母を試料として、常圧及び140MPa(約1400気圧)の加圧下における示差走査熱量測定を行い、その結果を図4、図5に示す。図4及び図5は、温度・定圧比熱曲線を示す。菌体の示差走査熱量測定において、定圧比熱の量はその温度で変成しつつあるタンパク質の量を示すと考えられる。この2つのグラフから、常圧と高圧とでは、変成する温度領域及びその組成が異なることが理解できる。
【0023】
【発明の効果】天然のタンパク質分子は、規則的なヘリックス構造や折り畳み構造を多数含んだ特異的な立体構造を有している。この立体構造は、加熱することやpHを変えること、また尿素などの変成試薬を添加することで変化させることができるが、高圧を用いることによっても同様の効果を得ることができると考えられている。本発明高圧示差走査熱量測定装置を用いれば、それを科学的に実証する手段となるばかりでなく、様々なタンパク質分子等の圧力変成の模様をリアルタイムに観測できる手段を提供でき、産業上の利用価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置の概要を示す概略図である。
【図2】本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置に用いる試料容器、リファレンス容器、高圧コネクター近傍の部分断面図である。
【図3】図2で用いた試料容器及びリファレンス容器の底部の加工方法の1例を示す拡大断面図である。
【図4】温度・定圧比熱曲線を示すグラフである。
【図5】温度・定圧比熱曲線を示すグラフである。
【図6】従来の液体試料用示差走査熱量測定装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置
2 試料容器
3 リファレンス容器
4 コネクター
5 高圧ポンプ
6 圧力計
7 断熱室
8 蓋
9 ボルト
10 断熱室容器
11 従来の液体試料用示差走査熱量測定装置
12 断熱室
13 室内昇温用メインヒーター
14、15 サブヒーター
16、17 温度センサー
S 試料容器
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、示差走査熱量測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】示差走査熱量測定装置とは、測定すべき試料(液体の場合では、測定する物質を液体中に溶かしたものや、懸濁したもの)と、測定する物質を入れない液体(リファレンスという)を断熱室に入れ、その断熱室を徐々に昇温する。試料に相変化や反応がなければ、試料とリファレンスは同じように昇温する。そして、例えば試料に吸熱的な反応があれば試料はリファレンスと同様に昇温せず、温度上昇が押さえられる。これを、試料側に設けられたサブヒーターによってリファレンスと同じ温度まで昇温する。そして、このサブヒーターによって与えた熱量を、その時の断熱室の温度を横軸とし、縦軸に表示する。この測定によって、何度で相変化等の反応が生じたかが分かる。このような測定装置が示差走査熱量測定装置である。
【0003】ここで、液体試料用示差走査熱量測定装置の概要について、図6を用いて説明する。示差走査熱量測定装置11は、断熱室12、室内昇温用メインヒーター13、試料容器S、リファレンス容器R、及び試料とリファレンスを個別に昇温できるサブヒーター14、15を有している。更に、試料容器S、リファレンス容器Rには温度センサー16、17が設けられている。図示していないが、ヒーター13、14、15への電流量を制御する装置や温度センサー等はコンピューターによって集中制御されている。
【0004】装置に試料とリファレンスを入れ、メインヒーター13によって徐々に昇温する。そして、試料とリファレンスの温度上昇をそれぞれの温度センサーによって検知する。温度に差が出れば、その差を補償するため低い方のサブヒーターに通電し同じ温度にする。この時の通電量を記録する。この動作をしながら、断熱室を昇温していく。これによって、室内温度(即ち試料温度)と、その時のリファレンスとの吸収熱量差が検出でき、分子構造の変化等が生じたことが分かる。
【0005】これは、高分子物質の分野で広く利用されており、特にタンパク質の変成が解析できることで、生体高分子や生化学の分野でも利用されている。
【0006】また、近年高圧環境下での物質の挙動に関心が高まってきている。例えば、タンパク質の圧力変成に関する研究が盛んに行なわれている。天然のタンパク質に200MPa程度の超高圧を加えると、分子の立体構造が変化して変成を生じる。このような圧力変成を利用すれば、尿素などの変成試薬を加える必要がなく、また不要な分解産物を生じないので、目的物質の抽出や精製が容易となる。
【0007】更に、タンパク質の圧力変成、或いは化学合成における圧力効果・基礎的な機構の解明は、より有用な物質、医薬、食品等の開発或いは生産に有用である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の液体試料用示差走査熱量測定装置では、加圧できないため上記のような圧力変成の研究は非常に手間のかかるものであった。しかし、例えばタンパク質分子の圧力変成に関する研究を推進するためには、高圧下条件におけるタンパク質の熱物性をリアルタイムに測定する必要がある。つまり、高圧下において示差走査熱量測定を実施することが望まれるのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者は鋭意研究の結果本発明液体試料用示差走査熱量測定装置を完成させたものであり、その特徴とするところは、試料容器及びリファレンス容器が少なくとも10MPa(約100Kgf/cm2 )の耐圧性を有し、且つ該2つの耐圧容器に同時、且つ同様に加圧するための高圧コネクター及びそれに接続する高圧ポンプを有する点にある。
【0010】試料容器は、10MPa(約100Kgf/cm2 )の耐圧性を有することを必要とするが、その他については特別限定しない。10MPaとしたのは、これ以上は高圧であり、通常の容器では耐えられないためである。材質は、示差走査熱量測定装置に使用できればよく、各種ステンレス、鉄、銅、アルミニュウム、チタン、或いは合金等である。
【0011】サイズも基本的には自由であるが、温度を厳密に制御、測定するものであるため、熱容量を小さくするため肉厚は、耐圧があればできるだけ小さい方がよい。試料の温度均一にするため通常は内径も小さいほうがよい。数mm以下、0.5〜2.0mm程度である。
【0012】この試料容器は、片側は高圧ポンプに接続するため開放であるが、他方は封止しなければならない。この封止法も、熱容量が小さく、熱伝導が良く、耐圧のある方法でなければならない。好ましいのは、容器の側壁肉厚と同じ程度の肉厚で底面とする方法である。しかし、単に底板を溶接する方法では、高圧には耐えることは難しい。勿論、これらの方法で10MPaに耐えられれ、且つ熱容量や熱伝導の問題がなければ使用できる。本発明者は、この点についても容器の片側を絞り加工を施し、開口部を非常に小さくした後、その開口部を溶接する方法で耐圧を高めることに思い到った。この方法では、底面部は湾曲した形状になり、且つ全体として同じ程度の肉厚となった。このため、熱容量や熱伝導の点については非常に良い。
【0013】2つの耐圧容器に同時、且つ同様に加圧するのは、試料とリファレンスとは同じ環境に置く必要があるため、圧も同時に且つ同圧に昇圧する必要があるためである。従来、このような高圧装置は存在しなかったため、このような考え方は不要であった。
【0014】高圧コネクターとは、高圧ポンプと試料容器及びリファレンス容器を接続するものである。これは、試料容器とリファレンス容器を連結して同圧とし、かつポンプと接続することによって、同時に加圧できるようしたものである。
【0015】高圧ポンプは、どのようなものでもよく手動式でも自動式でもよい。特に、圧は変えずに一定の高圧で行なうものでは手動でも十分である。圧力媒体は、通常用いられる水、シリコンオイル、ケロシン、グリセリン、アルコール等でよく、リファレンスに用いる液でもよい。
【0016】更に、本発明装置は、圧を一定にして温度を変えて示差熱を測定するだけでなく、温度を一定にして圧力を変えて示差熱を測定することもできる。これは従来になかった測定方法であるが、高圧測定ができる装置によって実現したものである。測定法としては、メインヒーターによって、温度を一定にし(例えば、50℃)、圧力を自動ポンプによって徐々に上げる。圧力を上げることによって、例えば分子構造の変化等の吸熱反応があれば、試料温度センサーがその反応による温度下降を検知し、コンピューターに入力される。この断熱室内温度との差を補償するため、試料サブヒーターに通電され温度を一定に戻す。この通電量が記録される。このようにして、各圧力での示差熱が測定できる。
【0017】
【発明の実施の形態】次に図面に示す実施の形態に基づき、本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置1の概要を示す概略図である。試料容器2及びリファレンス容器3に加圧するためのコネクター4、高圧ポンプ5、及び圧力計6が設けられている。これ以外については、通常の液体用示差走査熱量測定装置と同様である。この高圧ポンプ5によって所定の圧まで加圧し、後は通常の示差走査熱量測定を行なえばよい。
【0018】図2は、本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置1に用いる試料容器2、リファレンス容器3、高圧コネクター4近傍の部分断面図である。断熱室7は試料容器2とリファレンス容器3が入るだけの容積を有している。温度を厳密に制御するためと、断熱性のためこの例では非常に厚い金属容器となっている。この例では、コネクター4は断熱室7の蓋8と一体として構成されている。即ち、蓋8に下方から縦方向の2本の細孔を彫り、その2本の細孔と連結するように左右に貫通孔を開ける。
【0019】縦方向の細孔に試料容器とリファレンス容器が接続され、左右の貫通孔の一方には高圧ポンプからのラインが接続され、他方はニードルとネジによって密閉されている。蓋8はボルト9によって断熱室容器10に固定されている。その他の要素、例えばヒーターや温度センサー等は省略している。
【0020】この例では、コネクター4自身、その構造から非常に大きな耐圧性を有している。且つ、試料容器2とリファレンス容器3を同時に、同等に加圧できる構造となっている。
【0021】図3は、図2で用いた試料容器及びリファレンス容器の底部の加工方法の1例を示す拡大断面図である。(a)は加工前を示し、(b)は絞り始め、(c)は絞り完了の状態を示す。この状態で先端に残存する開口部を溶接で埋めれば完成である。この方法により、底面部は湾曲した形状になり、且つ全体として同じ程度の肉厚となった。このため、熱容量や熱伝導の点については非常に良い。この例では、外径1.26mm、内径0.9mm、長さ134mmのSUS316製パイプを用いた。この例では、250MPaまで測定可能であった。
【0022】次に、図3の例によって、30℃で培養し対数増加期に集菌した酵母を試料として、常圧及び140MPa(約1400気圧)の加圧下における示差走査熱量測定を行い、その結果を図4、図5に示す。図4及び図5は、温度・定圧比熱曲線を示す。菌体の示差走査熱量測定において、定圧比熱の量はその温度で変成しつつあるタンパク質の量を示すと考えられる。この2つのグラフから、常圧と高圧とでは、変成する温度領域及びその組成が異なることが理解できる。
【0023】
【発明の効果】天然のタンパク質分子は、規則的なヘリックス構造や折り畳み構造を多数含んだ特異的な立体構造を有している。この立体構造は、加熱することやpHを変えること、また尿素などの変成試薬を添加することで変化させることができるが、高圧を用いることによっても同様の効果を得ることができると考えられている。本発明高圧示差走査熱量測定装置を用いれば、それを科学的に実証する手段となるばかりでなく、様々なタンパク質分子等の圧力変成の模様をリアルタイムに観測できる手段を提供でき、産業上の利用価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置の概要を示す概略図である。
【図2】本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置に用いる試料容器、リファレンス容器、高圧コネクター近傍の部分断面図である。
【図3】図2で用いた試料容器及びリファレンス容器の底部の加工方法の1例を示す拡大断面図である。
【図4】温度・定圧比熱曲線を示すグラフである。
【図5】温度・定圧比熱曲線を示すグラフである。
【図6】従来の液体試料用示差走査熱量測定装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 本発明液体試料用高圧示差走査熱量測定装置
2 試料容器
3 リファレンス容器
4 コネクター
5 高圧ポンプ
6 圧力計
7 断熱室
8 蓋
9 ボルト
10 断熱室容器
11 従来の液体試料用示差走査熱量測定装置
12 断熱室
13 室内昇温用メインヒーター
14、15 サブヒーター
16、17 温度センサー
S 試料容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】 試料容器及びリファレンス容器が少なくとも10MPa(約100Kgf/cm2 )の耐圧性を有し、該2つの耐圧容器に同時、且つ同様に加圧するための高圧コネクター及びそれに接続する高圧ポンプを有することを特徴とする液体試料用高圧示差走査熱量測定装置。
【請求項2】 該2つの圧力容器が、金属製で肉厚が0.5mm以下、外径が3mm以下であり、且つ容器底部は湾曲加工及び点溶接されたものである請求項1記載の液体試料用高圧示差走査熱量測定装置。
【請求項3】 試料容器及びリファレンス容器が少なくとも10MPa(約100Kgf/cm2 )の耐圧性を有し、該2つの耐圧容器に同時、且つ同様に加圧するための高圧コネクター及びそれに接続する高圧ポンプを有し、試料の圧力を変化させ、その圧力ごとの示差熱量を測定することを特徴とする圧力走査型高圧示差走査熱量測定装置
【請求項1】 試料容器及びリファレンス容器が少なくとも10MPa(約100Kgf/cm2 )の耐圧性を有し、該2つの耐圧容器に同時、且つ同様に加圧するための高圧コネクター及びそれに接続する高圧ポンプを有することを特徴とする液体試料用高圧示差走査熱量測定装置。
【請求項2】 該2つの圧力容器が、金属製で肉厚が0.5mm以下、外径が3mm以下であり、且つ容器底部は湾曲加工及び点溶接されたものである請求項1記載の液体試料用高圧示差走査熱量測定装置。
【請求項3】 試料容器及びリファレンス容器が少なくとも10MPa(約100Kgf/cm2 )の耐圧性を有し、該2つの耐圧容器に同時、且つ同様に加圧するための高圧コネクター及びそれに接続する高圧ポンプを有し、試料の圧力を変化させ、その圧力ごとの示差熱量を測定することを特徴とする圧力走査型高圧示差走査熱量測定装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図6】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2000−74863(P2000−74863A)
【公開日】平成12年3月14日(2000.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−259365
【出願日】平成10年8月27日(1998.8.27)
【出願人】(591029518)テラメックス株式会社 (11)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜
【出願人】(000001144)工業技術院長 (75)
【上記1名の復代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜 (外1名)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年3月14日(2000.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年8月27日(1998.8.27)
【出願人】(591029518)テラメックス株式会社 (11)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜
【出願人】(000001144)工業技術院長 (75)
【上記1名の復代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜 (外1名)
【Fターム(参考)】
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