説明

液体調味料

【課題】血圧の上昇を顕著に抑制できる、醤油及び醤油含有液状調味料(つゆ類、だし醤油、タレ類、ドレッシング類、ラーメンスープ、ぽん酢醤油など)、ソース、食酢、料理酒などの液体調味料を得る。
【解決手段】醤油、あるいは塩化カリウム含有醤油などの液体調味料に、大豆に液体麹を添加混合し25〜55℃で12〜168時間反応させて得られる大豆の液体麹加水分解物と、γ‐アミノ酪酸とを添加含有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醤油にγ‐アミノ酪酸を添加含有せしめてなる液体調味料の改良に関し、特に血圧の上昇を顕著に抑制できる液体調味料に関する。なお、本発明でいう液体調味料とは、醤油、醤油含有液状調味料(つゆ類、だし醤油、タレ類、ドレッシング類、ラーメン用スープ、ぽん酢醤油など)、ソース、食酢、料理酒などを意味する。
【背景技術】
【0002】
従来、醤油にγ‐アミノ酪酸を添加含有せしめ、血圧上昇を抑制する薬理作用を有する液体調味料が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、塩化カリウム含有醤油にγ‐アミノ酪酸を添加含有せしめ、血圧上昇を抑制する薬理作用を有する液体調味料が知られている(例えば、特許文献4〜7参照)。
また醤油の製造法において、大豆原料としてγ‐アミノ酪酸を富化した大豆、大豆胚芽又は挽割大豆を使用し、高血圧症患者向けの醤油を得ることが知られている(特許文献8)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−246840号公報
【特許文献2】特開2006−314316号公報
【特許文献3】特開2006−325578号公報
【特許文献4】特開2004−290129号公報
【特許文献5】特開2006−87328号公報
【特許文献6】特開2006−136262号公報
【特許文献7】特開2006−141226号公報
【特許文献8】特開平11−151072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来公知の、醤油にγ‐アミノ酪酸を添加した醤油の血圧上昇を顕著に抑制でき、風味良好な液体調味料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、醤油を摂食しても血圧上昇を顕著に抑制できる、しかも良好な風味を有する液体調味料を開発することができれば、醤油業界にとって多大な貢献となることに着目し、鋭意研究を重ねた結果、醤油、又は塩化カリウム含有醤油にγ‐アミノ酪酸を添加し、さらに大豆の液体麹加水分解物を添加含有せしめたところ、上記課題を解決することができることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、γ‐アミノ酪酸及び大豆の液体麹加水分解物を添加含有せしめてなる液体調味料であり、また本発明は、γ‐アミノ酪酸、大豆の液体麹加水分解物及び塩化カリウムを添加含有せしめてなる液体調味料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、血圧の上昇を顕著に抑制でき、風味良好な液体調味料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するには、従来公知の醤油又は塩化カリウム含有醤油に、γ−アミノ酪酸及び大豆の液体麹加水分解物を添加含有せしめることにより得られる。
【0009】
(醤油)
本発明において用いられる醤油としては、通常の醤油の醸造法に従って製造される醤油(例えば濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜醤油、再仕込醤油など)の生醤油又は火入醤油が挙げられる。これらの醤油は一般に食塩14〜20%(w/v)含有するが、食塩0〜13%(w/v)に調整した低食塩醤油、特に4〜10%(w/v)に調整した減塩醤油は、血圧の上昇をよく抑制し得るので好ましい。次に醤油含有液状調味料としては、麺つゆ、鍋つゆ、だし醤油(だし割り醤油)などのつゆ類、焼肉のタレ、豆腐のタレ、納豆のタレ、蒲焼のタレ、照焼のタレ、丼のタレなどのタレ類、ドレッシング類、ぽん酢醤油、ラーメン用スープなどが挙げられる。
【0010】
(塩化カリウム含有醤油)
本発明で用いる塩化カリウム含有醤油としては、塩化カリウムを添加含有せしめた任意の醤油が挙げられるが、塩化カリウム0.5〜10.0%(w/v)含有する醤油が好ましい。この醤油としては、以下の方法により得られた醤油が挙げられる。(1)通常の醤油の製造法において仕込み水として塩化カリウムと食塩の混合溶液を用いる方法、(2)塩化カリウム単独の溶液を仕込み水として用いて得た醤油に、別に食塩水を単独で仕込み水として用いて得た醤油を混合する方法、(3)あるいは食塩水を仕込み水として用いた通常の醤油に、又はこの醤油を電気透析、膜処理などによって食塩を脱塩処理し得られた醤油に、塩化カリウムを添加する方法。また本発明に用いる塩化カリウムとしては、塩化カリウム又は塩化カリウム高濃度含有海水塩などが挙げられる。
【0011】
(γ−アミノ酪酸)
γ−アミノ酪酸は、哺乳類の脳や脊髄に存在する抑制性の神経伝達物質である。そして脳の血流を活発にさせ、酸素供給量を増大させて脳の代謝機能を亢進し、脊髄の血管運動中枢に作用して血圧を降下させる作用を有し、また抗利尿ホルモンであるバソプレッシンの分泌を抑制して、血管を拡張して血圧を下げる作用を有することが知られている(新編脳代謝賦活剤、大友英一編、医薬ジャーナル社、1987)。
【0012】
このγ−アミノ酪酸は、グルタミン含有原料にグルタミン脱炭酸酵素及びグルタミナーゼを作用させることにより容易に製造が可能である(特開2002−300862、γ−アミノ酪酸含有天然食品素材の製造方法)。この方法によればγ‐アミノ酪酸含有粉末(γ‐アミノ酪酸粗精製品)が容易に得られる。γ‐アミノ酪酸含有液はイオン交換クロマトグラフィーなどによって濃縮精製し、精製品を容易に入手することが可能である。また、γ‐アミノ酪酸は市販品、あるいは試薬などを採用することができる。
【0013】
醤油におけるγ‐アミノ酪酸の含有量の調整は、醤油にγ‐アミノ酪酸、あるいはγ‐アミノ酪酸含有液を添加することにより行う。あるいは、通常の醤油の製造工程において、(1)γ‐アミノ酪酸を富化した醤油醸造原料(蛋白質原料、澱粉質原料)を用いることにより醤油の製造工程において、諸味液汁中にγ‐アミノ酪酸を生成蓄積したり、(2)優良微生物(麹菌、酵母、乳酸菌、その他優良バクテリアなど)を醤油麹、あるいは醤油諸味中に関与させ、該微生物の発酵手段により醤油諸味液汁中にγ‐アミノ酪酸を生成蓄積したり、又は(3)各種酵素(グルタミン酸脱炭酸酵素、グルタミナーゼ、ペプチダーゼ、プロテアーゼなど)を醤油麹、あるいは醤油諸味中に関与させ、酵素による分解手段により、醤油麹又は醤油諸味中にγ‐アミノ酪酸を生成蓄積したりして達成してもよい。
【0014】
醤油に対するγ−アミノ酪酸の含有量は、0.1〜5.0%(w/v)となるように調整することが好ましい。そのうち0.2〜3.5%(w/v)がより好ましい。
添加量が0.1%(w/v)よりも少ない場合は、血圧上昇の抑制効果が充分に期待することができない。また反対に5.0%(w/v)より多い場合はγ−アミノ酪酸特有の呈味の影響が現れる問題を有する。
【0015】
γ−アミノ酪酸の添加は、醤油の製造法の任意の工程が挙げられるが、できるだけ最終製品に近い工程、たとえば火入れ工程の前の生醤油(生揚げ醤油ともいう)又はこれを火入れした火入醤油に添加することが好ましい。
【0016】
(大豆の液体麹加水分解物)
次に、本発明において用いられる大豆の液体麹加水分解物とは、大豆に、液体麹を添加、混合し、25〜55℃で12〜168時間反応させて得られるものを言う。
【0017】
(大豆)
大豆としては、黄大豆、赤大豆、黒大豆などの大豆が挙げられ、それらは丸大豆(全脂大豆)、脱脂大豆、割砕大豆、粉末大豆などの形態のものが利用可能である。
【0018】
(液体麹)
液体麹としては、大豆単独、又は大豆に小麦、フスマなどを1〜5%(w/v)含む液体培地に、必要により泡消剤(例えば醤油油など)を添加したものに、麹菌を接種して、25〜40℃で、30〜90時間培養して得られたものが利用可能である。
なお、麹菌としては、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usami)などが挙げられる。
【0019】
(加水分解)
加水分解は、大豆に対して下記配合組成により液体麹を添加、混合し、加水分解条件にて処理することにより行われる。
【0020】
(配合組成)
液体麹 終濃度10〜70(好ましくは30〜50)%(v/v)
大豆 終濃度5〜40(好ましくは15〜30)%(w/v)
食塩 終濃度1〜25(好ましくは6〜18)%(w/v)
水 終濃度10〜85%(v/v)
【0021】
(加水分解条件)
25〜55℃(好ましくは30〜50℃)で、攪拌速度10〜150rpmにて、12〜168時間(好ましくは24〜144時間)加水分解する。
【0022】
なお、上記加水分解の際に、必要によりサッカロミセス(Saccharomyces)属などの酵母を添加して(10〜10個/ml)、同時に発酵させると、分解液の香味が向上するので好ましい。
【0023】
(加水分解物の粉末乾燥化)
上記加水分解物は、そのまま、又は乾燥粉末化して利用することができる。
乾燥粉末化は、賦形剤(デキストリンなど)を添加溶解したのち、噴霧乾燥機(ニロ社製のモービルマイナー型スプレードライヤーなど)にて、入口温度170〜210℃(好ましくは183〜193℃)、出口温度80〜110℃(好ましくは93〜103℃)の条件で噴霧乾燥する。
【0024】
本発明の大豆の液体麹加水分解物は、無水物換算で2.0〜15.0%(w/v)となるように混和することが好ましい。すなわち、2.0(W/V)未満においては、血圧の上昇抑制効果を十分に期待することができない。また反対に15.0%(w/v)を越えると、大豆の液体麹加水分解物の添加含有割合が高くなり、醤油の芳醇な香り、味が若干変化する危険性を有する。
【0025】
大豆の液体麹加水分解物の添加時期は、生揚げ醤油(諸味搾汁液)又はこれを火入れ殺菌した火入醤油に添加することが好ましい。
【0026】
本発明より得られる醤油は、例えば麺つゆ、たれ、ドレッシング、ラーメン用スープなどの素材用醤油として好適に利用し、血圧の上昇を顕著に抑制できる醤油含有液状調味料を製造することができる。また、本発明は、通常のソース、食酢、料理酒などに適用することによって、血圧の上昇を顕著に抑制できる、風味良好なそれらの調味料(液体調味料)を製造することができる。
【0027】
本発明で得られる液体調味料は、そのままでも本来の調味料として十分使用することが可能であるが、従来公知の核酸系調味料、アミノ酸系調味料、酸味料、無機塩類、甘味料、エキス、呈味性ペプチドなどの風味改善剤を添加すると、さらに風味が改善され、良好な風味の(美味しい)液体調味料が得られるので好ましい。
(1)核酸系調味料:5’−イノシン酸、グアニル酸、コハク酸、5’−リボヌクレオチド、ウリジル酸、アデニル酸及びこれらのナトリウム塩など、及び酵母エキスなど。
(2)アミノ酸系調味料:グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、グリシン、リジン、アラニン、イソロイシン、及びこれらのナトリウム塩など。
(3)酸味料:乳酸、酢酸、クエン酸、フィチン酸及びそれらのナトリウム塩、カルシウム塩など。
(4)無機塩類:塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウムなど。
(5)甘味料:蔗糖、水飴、グルコース、デキストリン、酸分解澱粉、酸化澱粉、サイクロデキストリンなど。
(6)エキス:昆布エキス、鰹節エキス、魚介類エキス、植物エキス(呈味性ポリフェノール)など。
(7)呈味性ペプチド:魚肉ペプチド、ゴマペプチドなど。
【0028】
以下実験例及び実施例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、実験例及び実施例では、γ−アミノ酪酸をGABA、塩化ナトリウムをNaCl、塩化カリウムをKCl、全窒素分をT.N.、とそれぞれ略記することがある。
【0029】
実験例1
(液体麹の製造)
脱脂大豆2%(w/v)、大豆油(消泡剤)2.0%(v/v)を含む液体培地(2L)に、麹菌アスペルギルス・ソーヤの胞子を添加して、30℃で72時間攪拌培養して、液体麹を得た。
【0030】
実験例2
(醤油麹の製造)
通常の醤油麹の製造法に従って、蒸煮変性した脱脂大豆と炒熬割砕した小麦とを略等量混合し、これに種麹菌アスペルギルス・ソーヤを接種し、42時間通風製麹して醤油麹を得た。
【0031】
実験例3
(醤油の製造)
実験例2で得た醤油麹を高濃度食塩水に仕込み、25〜30℃で、適宜攪拌しながら150日間常法通りの諸味管理を行い、発酵熟成させた後、圧搾濾過して約18%(w/v)NaCl、約1.9%(w/v)T.N.の生醤油を得た。得られた生醤油を80℃、30分間、火入れを行った後、20℃で一晩静置して滓引きを行って醤油(火入醤油)を得た。
【0032】
実験例4
(脱塩醤油の製造)
実験例3で得た火入醤油を電気透析装置にて脱塩処理し、4.0%(w/v)NaCl、約1.8%(w/v)T.N.の脱塩醤油を得た。
【0033】
実験例5
(減塩醤油の製造)
実験例4で得た脱塩醤油にNaClを添加、混合して、終濃度8.6%(w/v)NaCl、約1.8%(w/v)T.N.の減塩醤油を得た。
【0034】
実験例6
(KCl含有醤油の製造例)
実験例4で得た脱塩醤油にKCl、NaClを添加、混合して、終濃度8.6%(w/v)NaCl、4.0%(w/v)KCl、約1.8%(w/v)T.N.のKCl含有醤油を得た。
【0035】
実験例7
(GABA含有醤油の製造)
実験例4で得た脱塩醤油に食塩とGABA(味の素ヘルシーサプライ製)を添加、混合して、終濃度8.6%(w/v)NaCl、1.4%(w/v)GABA、約1.8%(w/v)T.N.のGABA含有醤油を得た。
【0036】
実験例8
(大豆の液体麹加水分解物の製造)
蒸煮した脱脂大豆800g、実験例1で得られた液体麹1500ml、水1300ml、NaCl370g、酵母チゴサッカロミセス・ルーキシを1.5×10個/mlの割合で混合して(約4L)、約40℃、100rpmで48時間、さらに45℃、100rpmで72時間攪拌培養した。培養液をナイロン製の濾布にて濾過して、血圧降下作用を有する、9.3%(w/v)NaCl、2.0%(w/v)T.N.の大豆の液体麹加水分解物3500mlを得た。
【0037】
実験例9
(大豆の液体麹加水分解物を含有する醤油の製造)
上記実験例4で得た脱塩醤油700mlに、上記実験例8で得た大豆の液体麹加水分物200mlを添加した後、更に脱塩醤油と食塩を添加して正確に容量を合わせて、最終的に8.6%(w/v)NaCl、7.2%(w/v)大豆の液体麹分解物(無水物換算)を含有する1.8%(w/v)T.N.の醤油を1000ml得た。
【実施例1】
【0038】
(GABAと大豆の液体麹加水分解物を含有してなる醤油の製造例)
上記実験例4で得た脱塩醤油700mlに、上記実験例8で得た大豆の液体麹加水分解物200ml、GABA(味の素ヘルシーサプライ製)14gを添加し、更に脱塩醤油とNaClを添加して正確に容量を合わせて、最終的に8.6%(w/v)NaCl、1.4%(w/v)GABA、7.2%(w/v)大豆の液体麹分解物(無水物換算)を含有する1.9%(w/v)T.N.の風味良好な醤油を1000ml得た。
【実施例2】
【0039】
(Dahl−Sラットによる、GABAと大豆の液体麹加水分解物を添加した醤油における血圧上昇抑制確認試験)
13週齢の食塩感受性ラットDahl−S/Sea、雄(以下、Dahl−Sラットと示す)24匹を6匹ずつ4群に分け6週間の混餌投与試験を行った。
第1群には、上記実験例5で得た「減塩醤油(8.6%(w/v)NaCl)」をMF粉末飼料(オリエンタル酵母工業社製、マウス・ラット飼育用飼料)に25%(V/W)混合し、さらに食塩を餌に添加して、最終的に3%(w/w)NaClになるよう調製した減塩醤油含有飼料を与えた。
第2群には、実験例7で得たGABAを含有醤油(8.6%(w/v)NaCl、1.4%(w/v)GABA)をMF粉末飼料に25%(V/W)混合し、さらに食塩を餌に添加して、最終的に3%(w/w)NaCl、0.35%(w/w)GABAになるよう調製したGABA含有飼料を与えた。
第3群には、実験例9で得た大豆の液体麹加水分解物を含有してなる醤油(8.6%(w/v)NaCl、7.2%(w/v)大豆の液体麹加水分解物)をMF粉末飼料に25%(V/W)混合し、さらに食塩を餌に添加して最終的に3%(w/w)NaCl、1.8%(w/w)大豆の液体麹加水分解物になるよう調製した大豆の液体麹加水分解物含有飼料を与えた。
第4群には、実施例1で得たGABAと大豆の液体麹加水分解物を含有してなる醤油(8.6%(w/v)NaCl、1.4%(w/v)GABA、7.2%(w/v)大豆の液体麹加水分解物)をMF粉末飼料に25%(V/W)混合し、さらに食塩を餌に添加して最終的に3%(w/w)NaCl、0.35%(w/w)GABA、1.8%(w/w)大豆の液体麹加水分解物になるよう調製した大豆の液体麹加水分解物含有飼料を与えた。
試験開始前と1週間毎に、室町機械社製ラット・マウス用非観血式血圧計MK−2000を用い収縮期血圧の測定を6週間行った。
これらの結果を図1に示す。なお、統計処理は、減塩醤油含有飼料を与えた第1群とその他の群との間で、ANOVA−Tukey検定を行った。図1において、p<0.1は90%、p<0.05は95%、p<0.01は99%そしてp<0.001は99.9%の、信頼限界を以って有意差有りを意味する(図2においても同様とする)。
【0040】
図1の結果から、第1群の減塩醤油含有飼料(3%(w/w)NaCl)を与えた群は、食塩の負荷により血圧が上昇していることが確認できる。これに対し、第2群のGABA醤油含有飼料(3%(w/w)NaCl、0.35%(w/w)GABA)と第3群の大豆の液体麹加水分解物醤油を含有する飼料(3%(w/w)NaCl、1.8(W/W)%大豆の液体麹加水分解物)を与えた群は、第1群より血圧値の上昇が有意に抑制されていることが判る。
さらにGABAと大豆の液体麹加水分解物を含む飼料(3%(w/w)NaCl、0.35%(w/w)GABA、1.8%(w/w)大豆の液体麹加水分解物)を与えた第4群は、組み合せ効果により、より顕著に血圧上昇が抑制されていることが判る。
【実施例3】
【0041】
(GABA、大豆の液体麹加水分解物、KClを含有してなる醤油の製造例)
上記実験例4で得た脱塩醤油700mlに、上記実験例8で得た大豆の液体麹加水分解物200ml、GABA(味の素ヘルシーサプライ製)14g、KClを40g添加して、更に脱塩醤油とNaClを添加して正確に容量を合わせて、最終的に8.6%(w/v)NaCl、1.4%(w/v)GABA、7.2%(w/v)大豆の液体麹分解物、4%(w/v)KClを含有する1.9%T.N.の風味良好な醤油を1000ml得た。
【実施例4】
【0042】
(Dahl−Sラットによる、GABAと大豆の液体麹加水分解物を添加したKCl含有醤油における血圧上昇抑制確認試験)
10週齢の食塩感受性ラットDahl−S/Sea、雄(以下、Dahl−Sラットと示す)24匹を6匹ずつ4群に分け6週間の混餌投与試験を行った。
第1群には、上記実験例5で得た減塩醤油(8.6%(w/v)NaCl)をMF粉末飼料(オリエンタル酵母工業社製、マウス・ラット飼育用飼料)に35%(V/W)混合し、最終的に3%(w/w)NaClになるよう調製した減塩醤油含有飼料を与えた。
第2群には、上記実験例6で得た塩化カリウム含有醤油(8.6%(w/v)NaCl、4.0%(w/v)KCl)をMF粉末飼料に35%(V/W)混合し、最終的に3%(w/w)NaCl、1.4%(w/w)KClになるよう調製した塩化カリウム含有飼料を与えた。
第3群には、実施例1で得たGABAと大豆の液体麹加水分解物を含有してなる醤油(8.6%(w/v)NaCl、1.4%(w/v)GABA、7.2%(w/v)大豆の液体麹加水分解物)をMF粉末飼料に35%(V/W)混合し、最終的に3%(w/w)NaCl、0.5%(w/w)GABA、2.5%(w/w)大豆の液体麹加水分解物になるよう調製した大豆の液体麹加水分解物含有飼料を与えた。
第4群には、実施例3で得たGABA、大豆の液体麹加水分解物、KClを含有してなる醤油(8.6%(w/v)NaCl、1.4%(w/v)GABA、7.2%(w/v)大豆の液体麹加水分解物)、4.0%(w/v)KCl)をMF粉末飼料に35%(V/W)混合し、最終的に3%(w/w)NaCl、0.5%(w/w)GABA、2.5%(w/w)大豆の液体麹加水分解物、1.4%(w/w)KClになるよう調製した大豆の液体麹加水分解物含有飼料を与えた。
試験開始前と1週間毎に、室町機械社製ラット・マウス用非観血式血圧計MK−2000を用い収縮期血圧の測定を6週間行った。
これらの結果を図2に示す。
【0043】
第1群の減塩醤油含有飼料(3%(w/w)NaCl)を与えた群は、食塩の負荷により血圧が上昇していることが確認できる。これに対し、塩化カリウム含有醤油飼料(3%(w/w)NaCl、1.4%(w/w)KCl)を与えた群は、血圧の上昇が有意に抑制されていることが判る。
また、GABAと大豆の液体麹加水分解物を含む飼料(3%(w/w)NaCl、0.5%(w/w)GABA、2.5%(w/w)大豆の液体麹加水分解物)を与えた第3群も、GABAと大豆液体麹分解液の組み合せ効果により血圧の上昇が有意に抑制されていることが判る。さらにGABAと大豆の液体麹加水分解物、KClを含む飼料(3%(w/w)NaCl、0.5%(w/w)GABA、2.5%(w/w)大豆の液体麹加水分解物、1.4%(w/w)KCl)を与えた第4群は、組み合せ効果により、より顕著に血圧上昇が抑制されていることが判る。
【実施例5】
【0044】
(官能評価における苦味低減効果の確認試験)
カリウムは一般的に濃度に比例して、塩味だけでなく苦味が強くなることが知られている。カリウム含有醤油に対して、GABAおよび大豆の液体麹加水分解物を添加したときの苦味低減効果を3点識別法にて評価した。
【0045】
サンプルは、以下の終濃度にて調製した。
(1)KCl含有醤油(実験例6:8.6%(w/v)NaCl、4%(w/v)KCl)(対照)
(2)KCl+GABA含有醤油(8.6%(w/v)NaCl、4.0%(w/v)KCl、1.4%(w/v)GABA)(比較例1)
(3)KCl+大豆の液体麹加水分解物含有醤油(8.6%(w/v)NaCl、4.0%(w/v)KCl、7.2%(w/v)大豆の液体麹加水分解物)(比較例2)
(4)KCl+GABA+大豆の液体麹加水分解物含有醤油(実施例3:8.6%(w/v)NaCl、4.0%(w/v)KCl、1.4%(w/v)GABA、7.2%(w/v)大豆の液体麹分解物)(本発明)。
試験は、識別能力を有する21名のパネルにて実施した。
【0046】
結果を下記表1に示した。なお表1の**:P<0.01は、99%の信頼限界を以って有意差有りを意味する。
【0047】
【表1】

注)**:P<0.01
【0048】
表1の結果から、KCl含有醤油は苦味が有意に識別されていることが判る。それに対して、KCl含有醤油にGABA、もしくは大豆の液体麹加水分解物を添加した醤油は、苦味が有意に識別されておらず、GABA及び大豆の液体麹加水分解物は、それぞれKClの苦味低減効果があることが判る。さらに、KCl含有醤油に、GABAと大豆の液体麹加水分解物の両方を添加した実施例3(本発明)の醤油は、識別できた人数が少なく苦味低減効果がより顕著に現れていることが判る。
【実施例6】
【0049】
(官能評価における調味料としての風味の解析)
(1)GABAと大豆の液体麹加水分解物含有醤油(実施例1で得られた減塩醤油)及び(2)GABA、大豆の液体麹加水分解物及びKClを添加含有せしめた醤油(実施例3で得られた減塩醤油)に、従来醤油の風味改善剤として知られている下記の食品添加物及び調味料(旨味、コク味増強用の食品添加物)を添加したとき、どの程度醤油の風味が改善されるか試験した。すなわち、上記2種類の醤油に下記終濃度にて一般的な食品添加物、調味料を添加した。
(食品添加物) :(終濃度)
グルタミン酸 :1.5%(w/v)
アスパラギン酸もしくはリジン :1.0%(w/v)
グルコンサン酸ナトリウム :2%(w/v)
コハク酸二ナトリウム又はイノシン酸二ナトリウム:0.05%(w/v)
グルコース :0.5%(w/v)
フィチン酸カルシウム :0.5%(w/v)
塩化マグネシウム :0.5%(w/v)
ポリフェノール(フレーバーホルダー長谷川香料社製):2.5%(w/v)
昆布エキス :2.5%(w/v)
魚肉ペプチド(マリンサプリ社製) :2.5%(w/v)
ゴマペプチド(岸本産業社製) :2.5%(w/v)
【0050】
試験は、10名のパネルによる下記基準値の平均値で評価した。
〔調味料としての風味(おいしさ)の評価基準〕
1:非常に劣る
2:劣る
3:普通
4:優れている
5:非常に優れている
【0051】
結果を表2、3に示した。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
(1)GABAと大豆の液体麹加水分解物含有醤油(実施例1で得た本発明減塩醤油)、および(2)GABA、大豆の液体麹加水分解物及びKClを含有した醤油(実施例3で得た本発明減塩醤油)は、従来醤油の風味改善剤として知られている上記の食品添加物及び調味料(旨味、コク味増強用の食品添加物)を添加すると、さらに風味が改善され、良好な風味の(美味しい)醤油が得られることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】食塩感受性ラット混餌投与試験結果を示す図。
【図2】別の食塩感受性ラット混餌投与試験結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ‐アミノ酪酸及び大豆の液体麹加水分解物を添加含有せしめてなる液体調味料。
【請求項2】
食塩を0〜13.0%(w/v)、γ‐アミノ酪酸を0.1〜5.0%(w/v)及び大豆の液体麹加水分解物を2.0〜15.0%(w/v)添加含有せしめてなる請求項1に記載の液体調味料。
【請求項3】
γ‐アミノ酪酸、大豆の液体麹加水分解物及び塩化カリウムを添加含有せしめてなる液体調味料。
【請求項4】
食塩を0〜13.0%(w/v)、γ‐アミノ酪酸を0.1〜5.0%(w/v)、大豆の液体麹加水分解物を2.0〜15.0%(w/v)及び塩化カリウムを0.5〜10.0%(w/v)添加含有せしめてなる請求項3に記載の液体調味料。
【請求項5】
大豆の液体麹加水分解物が、大豆に、液体麹を添加、混合し、25〜55℃で12〜168時間反応させて得られるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体調味料。
【請求項6】
液体調味料が、醤油である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体調味料。
【請求項7】
液体調味料が、醤油含有液状調味料である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体調味料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−167660(P2008−167660A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−764(P2007−764)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】