説明

液体調味料

【課題】遮光性の包装容器を使用することなく、光が当る場所で長期間保存しても、混濁せず、フェルラ酸による消臭効果の優れた液体調味料を提供する。
【解決手段】液体調味料(例えば清酒、合成清酒、酒精含有甘味調味料、醗酵調味料、料理酒、みりん、みりん風調味料またはワインなど)を濾過膜で濾過した後、フェルラ酸を添加して液体調味料を得る。または、この調味料を容器に充填し、蓋体で密封して、容器入り液体調味料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルラ酸を含有した液体調味料の改良に関する。特に、食品の加工工程中や調理の際にオフフレーバー、不快臭の発生を抑制するばかりでなく、光が当る場所で長期間保存しても混濁の生じない液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種調味料にフェルラ酸を添加し、食品の加工工程中に発生する不快臭を抑え、嗜好性を高める方法(例えば、特許文献1参照)、煮魚用調味液にフェルラ酸を添加し、調理するとき魚特有の生臭さがマスキングされた調理品を得る方法(例えば、特許文献2参照)、調味料にフェルラ酸の多量体を添加し、魚介類、畜肉製品及び野菜等の食品のオフレーバーの除去、消臭を行う方法(例えば、特許文献3参照)がそれぞれ知られている。
【0003】
しかし、フェルラ酸を含有するこれらの液体調味料は、長時間光が当ると混濁するという欠点を有することを発見した。
【0004】
【特許文献1】特開2004−267158号公報
【特許文献2】特開2002−291437号公報
【特許文献3】特開2001−352914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光が当る場所で長期間保存しても、混濁せず、フェルラ酸による消臭効果の優れた、液体調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、液体調味料を濾過膜で濾過し、これにフェルラ酸を添加した液体調味料は、光が当る場所で長期間保存しても混濁せず、フェルラ酸を安定に保持できることを知り、この知見に基いて本発明を完成した。すなわち本発明は、以下に示す液体調味料である。
(1)液体調味料を濾過膜で濾過し、これにフェルラ酸を添加して得られる液体調味料。
(2)液体調味料が清酒、合成清酒、酒精含有甘味調味料、醗酵調味料、料理酒、みりん、みりん風調味料、およびワインからなる群から選ばれる少なくとも一種またはそれを含有する液体調味料である前記(1)記載の液体調味料。
(3)濾過膜が限外濾過膜または精密濾過膜である前記(1)記載の液体調味料。
(4)限外濾過膜の分画分子量が5,000〜200,000である前記(3)記載の液体調味料。
(5)精密濾過膜の孔径が0.1μm以下である前記(3)記載の液体調味料。
(6)液体調味料を濾過膜で濾過し、これにフェルラ酸を添加したのち、容器詰めして得られる容器入り液体調味料。
(7)容器が無色透明なペットボトルである前記(6)記載の容器入り液体調味料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光が当る場所で長期間保存しても、混濁せず、フェルラ酸による消臭効果の優れた液体調味料を得ることができる。また、遮光性の包装容器を使用することなく、すなわち、通常の無色透明なペットボトルを使って容器入り液体調味料を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる液体調味料としては、清酒、合成清酒、酒精含有甘味調味料、醗酵調味料、料理酒(清酒風料理酒、料理用果実酒等)、みりん、みりん風調味料、及びワインからなる群から選ばれる少なくとも一種またはそれを含有する液体調味料、例えば、各種のつゆ、たれ等が挙げられる。
上記酒精含有甘味調味料としては、米類、麦類、雑穀類の澱粉をα−アミラーゼで液化し、これをアルコール及び米麹と共に仕込み、糖化熟成して得られるもの、及び、これに食塩又は含塩調味料を加えたものが挙げられる。
【0009】
また、本発明で用いるフェルラ酸は、市販品、あるいは通常の方法により得たフェルラ酸含有物でもよい。
【0010】
液体調味料に対するフェルラ酸の添加は、フェルラ酸を終濃度50mg/L以上とすることが必要で、好ましくは100〜1000mg/L、さらに好ましくは100〜600mg/Lである。
本発明において、このことは重要であって、フェルラ酸が50mg/L未満では消臭効果にすぐれた液体調味料を得ることができない。
【0011】
本発明において、濾過膜を用いることは極めて重要であって、濾過膜で濾過していない液体調味料にフェルラ酸を添加するときは、日光等の光の影響により混濁が生じる。これに対し、濾過膜で液体調味料を濾過した後にフェルラ酸を添加する場合は、混濁の発生を極力抑制できる。
このときに用いる濾過膜としては限外濾過膜または精密濾過膜が良い。限外濾過膜の分画分子量は、好ましくは1,000〜300,000であり、5,000〜200,000がより好ましい。1,000以下では、色成分が除去され、また、濾過処理の効率が悪くなるため好ましくない。反対に300,000をこえるときは、濁りが生じやすくなるので好ましくない。精密濾過膜の孔径は、0.1μm以下が好ましく、0.1μmを超えると濁りが生じやすくなるので好ましくない。
【0012】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0013】
(液体調味料の調製)
限外濾過膜を濾過器(アミコン社製ウルトラフィルトレーションセル8400)に装着し、清酒風料理酒(キッコーマン社製)を濾過した。濾過した清酒風料理酒にあらかじめエタノールに溶解したフェルラ酸(オリザ油化社製)200mg/L添加、溶解し、フェルラ酸を200mg/L含有する液体調味料を得た。限外濾過膜は、分画分子量5,000、10,000、30,000、100,000、200,000(200,000はアドバンテック東洋濾紙社製で、それ以外は全てミリポア社製)の限外濾過膜を使用した。また、精密濾過膜は、孔径0.1μmの精密濾過膜(アドバンテック東洋濾紙社製)を使用した。
【0014】
(容器入り液体調味料の調製)
次いで、これを容量500mlの無色透明ペットボトルに充填し、開口部を蓋体で密封して、本発明の、容器入り液体調味料を調製した。
上記ペットボトルは、外径30mm高さ20mmの首部と外径70mm高さ130mmの胴部と、上記首部と胴部を連結する高さ30mmの肩部とからなる容量500mlの無色透明のペットボトルを使用した。
【0015】
(比較例)
比較例として、上記実施例の液体調味料の調製において、濾過膜に孔径0.45μmの精密濾過膜(アドバンテック東洋濾紙社製)で濾過する以外は同様にして、比較例の容器入り液体調味料を調製した。また、濾過せずにフェルラ酸を添加した比較例の容器入り液体調味料も調製した。
【0016】
(日光の照射)
上記調整した容器入り液体調味料を日光の当る場所に57日間静置し、試験開始時と終了時に濁度を測定した。濁度の測定は、米国ハック社製の101型濁度測定機を用い、所定のセルに試料を入れて測定した。標準物としてホルマジン溶液を使用した。なお、ホルマジン溶液1ppmの濁度が1NTUである。
【0017】
結果を図1に示した。濾過なしおよび0.45μm精密濾過膜で濾過した比較例は、濁度の増加量がそれぞれ60.5および37.5NTUとなり、他の濾過膜処理を行なったものに比べて濁度が約10倍増加した。一方、限外濾過膜および孔径0.1μmの精密濾過膜で濾過した本発明品は、濁度の増加量が2.8〜4.9NTUで、目視では濁りが観察できない値であり良好であった。
【0018】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体調味料を濾過膜で濾過し、これにフェルラ酸を添加して得られる液体調味料。
【請求項2】
液体調味料が清酒、合成清酒、酒精含有甘味調味料、醗酵調味料、料理酒、みりん、みりん風調味料、およびワインからなる群から選ばれる少なくとも一種またはそれを含有する液体調味料である請求項1記載の液体調味料。
【請求項3】
濾過膜が限外濾過膜または精密濾過膜である請求項1記載の液体調味料。
【請求項4】
限外濾過膜の分画分子量が5,000〜200,000である請求項3記載の液体調味料。
【請求項5】
精密濾過膜の孔径が0.1μm以下である請求項3記載の液体調味料。
【請求項6】
液体調味料を濾過膜で濾過し、これにフェルラ酸を添加したのち、容器詰めして得られる容器入り液体調味料。
【請求項7】
容器が無色透明なペットボトルである請求項6記載の容器入り液体調味料。