説明

液体貯留装置

【課題】貯留した液体の劣化を効果的に抑制するとともに、貯留液体を少量ずつ排出した際にも、その抑制効果を持続することができる液体貯留装置を提供する。
【解決手段】液体を気密貯留可能な貯留容器3と、当該貯留容器から液体を抽出するための抽出弁5と、当該貯留容器内部に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段11と、当該貯留容器内部の気体をパージするためのパージ弁7と、により液体貯留装置1を構成する。不活性ガス供給手段は、ガスタンク13と不活性ガス生成装置15とにより構成する。不活性ガス発生装置で生成した不活性ガスにより貯留液体の劣化を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コーヒーや紅茶等の各種飲料用液体や、飲料用液体以外の液体を貯留するための液体容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯留した飲料用液体を貯留しておくための液体容器として、家庭用の押し型ポットがある(特許文献1参照)。この種の液体容器は、コーヒーや茶類を抽出するための湯を貯めておくためのものが一般的であるが、湯の代わりにコーヒーや紅茶等を貯めるために使用されることもある。
【特許文献1】特開平7−163471号公報参照(図1参照)
【0003】
また、特許文献2には、気体分離膜を用いた気体分離装置が提案されている。上記気体分離装置は、気体分離膜を挟んだ両側に圧力差を生じさせ、その圧力差を用いて一方側にある気体からその気体に含まれる特定の気体を他方側に分離するように構成されている。
【特許文献2】特許第3769601号公報(段落番号0005〜0007、図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液体容器内に、たとえば90度前後のコーヒーを貯留しておくと、時間の経過とともに、そのコーヒーの色が変わったり味が悪くなったりしてしまう。これは、主として、液体容器内の空気(酸素)が反応して、コーヒーを劣化(酸化)させてしまうからであって、問題とされていた。紅茶その他の飲料等についても、コーヒーの場合と同じ問題が生じる。さらに、高温の場合だけでなく、清涼飲料水等の液体を低温貯留しておく場合にも、同じく劣化の問題が指摘されている。さらに、化粧品や各種薬品、その他の液体に対しても劣化防止の要請がある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決することを目的とする。すなわち、液体容器内に貯留した液体の、たとえば酸化劣化を効果的に抑制するとともに、貯留液体を少量ずつ排出した際にも、その抑制効果を持続することのできる液体貯留装置を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために発明者は、まず、液体容器内を大気と遮断した閉空間として構成し、その上で、この閉空間内の大気(空気)を不活性ガス(たとえば、窒素又は窒素冨化気体)に置換可能に構成した。これによって、大気と貯留液体との接触を断つことができるので、酸化劣化を効果的に抑制することができた。上記例は酸化劣化を抑制する場合を示したが、酸化劣化に限らず、特定液体に対して特定気体の代わりに不活性ガスを適用する場合も、上記同様に置換することができる。さらに、そのような不活性ガスに代表される特定ガスを入手する手段として、気体分離膜を利用した気体分離原理を採用した。それらの詳しい構成については、項を改めて説明する。なお、何れかの請求項記載の発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、その性質上可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用されるものとする。
【0007】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る液体貯留装置(以下、適宜「請求項1の貯留装置」という)は、液体を気密貯留可能な貯留容器と、当該貯留容器から液体を抽出するための抽出弁と、当該貯留容器内部に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段と、当該貯留容器内部の気体をパージするためのパージ弁と、を含み、当該抽出弁の開放時に当該貯留容器内部から液体を排出可能に構成してある。ここで、当該不活性ガス供給手段は、当該貯留容器とガス供給弁を介して連結したガスタンクと、当該ガスタンクにガス注入弁を介して連結した不活性ガス生成装置と、を含めて構成してある。当該不活性ガス生成装置は、隔壁によって外部と隔離された内部を備える気密容器と、当該隔壁に設けられた気体取出弁と、当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、を含めて構成してあり、当該隔壁は、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少可能に構成してある。さらに、当該気体分離膜は、当該気密容器内部の全圧Pが容積減少により全圧P1(P<P1)を超えたときに容器内部に密封されていた気体Gから当該気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を当該気密容器外部に分離排出可能に構成してあり、当該気体取出弁は、当該気密容器内部のさらなる容積減少により当該気密容器内部の全圧がP2(P2>P1)となったときに当該気密容器内部と当該貯留容器外部とを連通して当該気密容器内部に残る気体g2を当該貯留容器外部に供給可能に構成してある。パージ弁の開閉は手動によるものであってもよいし、貯留容器内部の全圧が所定値以上に上昇したときに所定値に戻るまでの間自動開放するものであってもよい。駆動機構は、手動によるものでもよいし、モータ等を用いた自動によるものでもよい。
【0008】
請求項1の貯留装置によれば、貯留容器内部に液体を気密貯留することができる。パージ弁は、貯留容器内部にある気体を不活性ガスと置換するための弁である。不活性ガスは不活性ガス供給手段によって供給される。不活性ガスが供給されると貯留容器内部の全圧は増加するが、ここで、パージ弁を開放すると貯留容器内部にある気体が外部へ排出される。このとき、抽出弁は閉鎖されている。排出される気体は、パージ弁開放当初は略その気体そのものであるが、不活性ガスが供給され続けるにつれその気体に含まれる不活性ガスの濃度が徐々に高くなっていく。気体側から見れば、その気体が不活性ガスによって少しずつ希釈されていく。希釈が進み排出されるものが完全に又は略不活性ガスそのものになったときに、パージ弁を閉鎖すれば、貯留容器内部を、不活性ガス雰囲気とすることができる。つまり、もともと貯留容器内部に貯留されていた気体を、不活性ガスと完全に、又は、略完全に置換することができる。ここで、貯留容器内部にある液体は不活性ガス以外の気体との接触が絶たれるので、置換後におけるその気体を原因とする液体劣化が有効抑制される。なお、パージ弁は、これを開放してから不活性ガスを供給するようにしてもよい。貯留された液体は開放した抽出弁を介して外部に抽出される。液体抽出は、不活性供給手段による継続した不活性ガス供給によって可能となる。次は、不活性ガス供給手段の作用について説明する。不活性ガスは不活性ガス生成装置により供給され、ガスタンクは供給された不活性ガスを貯留し貯留容器に供給する機能を有している。
【0009】
上記不活性ガス生成装置によれば、気密容器内部に密閉された気体Gが、気密容器内部が容積減少により全圧PからP1以上に上昇することによって気体分離膜を介した気密容器内外に圧力差が生じることになり、この圧力差によって気体g1の一部又は全部が気体分離膜を透過して気密容器外部に分離排出される。この時点で、気体取出弁は閉鎖状態にあり、容器内部には気体g2(気体g1が含まれる場合もある)が充満している。気体g1が分離排出された後も気密容器内外に圧力差があるから、一旦分離排出した気体g1と同じ種類の気体が、当該気密容器の外的環境に変化がない限り容器内部に入ってくることはない。ただ、外的環境に変化(たとえば、内部より外部のほうが圧力及び/又は濃度が高くなった)した場合には入ってくることもあり得る。全圧P1となった気密容器内部の容積をさらに減少させることにより、全圧P1をそれよりも高い全圧P2にまで至らせると、今度は気体取出弁が開放して容器内部にある気体g2の少なくとも一部が容器外部に押し出し排出される。排出の際にも、気体分離膜の内外に圧力差が存在するため、気体g1が気体分離膜を介して気密容器外へ分離排出される場合もある。この時点で、気体Gが気体分離膜によって気体g1と気体g2に分離されることになる。気体分離膜の種類、形状、大きさ、厚み等、気体取出弁の開放圧力の設定値等は、たとえば、分離装置の使用目的、分離によって得ようとする気体の種類、量、濃度等に合わせて適宜設定する。つまり、気体Gが、たとえば、大気であり気体分離膜が酸素気体を透過させ窒素気体を透過させない性質のものである場合において、全圧Pの大気が(たとえば、容器変形により)気密容器内部の容積減少に伴い全圧P1に達したときに、気体分離膜を介して酸素気体g1が容器外部へ分離排出される。この分離排出によって、酸素気体g1と窒素富化気体g2とが分離される。気密容器内に残った窒素リッチ(窒素富化気体)な気体g2は、さらなる容積減少により全圧がP2に至ったときに気体取出弁から気密容器外部へ排出される(取り出される)。つまり、気体吸引装置のような特別な装置を用いることなく、気体g2を気密容器から取り出すことができる。取り出された気体g2は、ガスタンク経由で貯留容器に供給される。
【0010】
請求項2記載の発明に係る液体貯留装置(以下、適宜「請求項2の貯留装置」という)は、液体を気密貯留可能な貯留容器と、当該貯留容器から貯留された液体を抽出するための抽出弁と、当該貯留容器内部に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段と、当該貯留容器内部の気体をパージするためのパージ弁と、を含み、当該抽出弁の開放時に当該貯留容器内部から液体を排出可能に構成してある。ここで、当該不活性ガス供給手段は、当該貯留容器とガス供給弁を介して連結したガスタンクと、当該ガスタンクにガス注入弁を介して連結した不活性ガス生成装置と、を含めて構成してある。当該不活性ガス生成装置は、一方の隔壁と他方の隔壁とを含むとともに内部に気密室を備える気密容器と、当該気密室を当該一方の隔壁側に位置する一方の気密室と当該他方の隔壁側に位置する他方の気密室とに気密分離可能、かつ、当該一方の気密室と当該他方の気密室との間の体積比を変動させるために当該気密容器内部で気密状態を保ちつつ往復移動可能に構成した可動隔壁と、当該一方の隔壁の少なくとも一部を構成する一方の気体分離膜と、当該他方の隔壁の少なくとも一部を構成する他方の気体分離膜と、当該可動隔壁を往復移動させる駆動機構と、当該一方の隔壁に設けた一方の取入逆止弁及び一方の取出逆止弁と、当該他方の隔壁に設けた他方の取入逆止弁及び他方の取出逆止弁と、を含めて構成してある。上記構成において、当該可動隔壁の当該一方の隔壁方向への移動によって、当該一方の気密室内部の全圧Pが全圧P1(P<P1)を超えたときに当該一方の気密室内部にある気体Gから当該気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を当該一方の気体分離膜を介して当該一方の気密室外に分離排出可能、かつ、当該他方の気密室内部の減圧により当該他方の取入逆止弁を介して気体Gを当該他方の気密室内部に取入可能、に構成してあり、当該可動隔壁の当該他方の隔壁方向への移動によって、当該他方の気密室内部の全圧P´が全圧P´1(P´<P´1)超えたときに当該他方の気密室内部にある気体Gから当該気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を当該他方の気体分離膜を介して当該他方の気密室外に分離排出可能、かつ、当該一方の気密室内部の減圧により当該一方の取入逆止弁を介して気体Gを当該一方の気密室内部に取入可能、に構成してある。当該一方の気体取出弁が、当該可動隔壁の当該一方の分離膜方向へのさらなる移動によって、当該一方の気密室内部の全圧がP2(P2>P1)を超えたときに当該一方の気密室内部と当該ガスタンク内部とを連通して当該一方の気密室内部に残る気体g2を当該ガスタンク内に供給可能に構成してあり、当該他方の気体取出弁が、当該可動隔壁の当該他方の分離膜方向へのさらなる移動によって、当該他方の気密室内部の全圧がP´2(P´2>P´1)を超えたときに当該他方の気密室内部と当該ガスタンク内部とを連通して当該他方の気密室内部に残る気体g2を当該ガスタンク内に供給可能に構成してある。駆動機構は、手動によるものでもよいし、モータ等を用いた自動によるものでもよい。
【0011】
請求項2の貯留装置によれば、貯留容器内部に液体を気密貯留することができる。パージ弁は、貯留容器内部にある気体を不活性ガスと置換するための弁である。不活性ガスは不活性ガス供給手段によって供給される。不活性ガスが供給されると貯留容器内部の全圧は増加するが、ここで、パージ弁を開放すると貯留容器内部にある気体が外部へ排出される。このとき、抽出弁は閉鎖されている。排出される気体は、パージ弁開放当初は略その気体そのものであるが、不活性ガスが供給され続けるにつれその気体に含まれる不活性ガスの濃度が徐々に高くなっていく。気体側から見れば、その気体が不活性ガスによって少しずつ希釈されていく。希釈が進み排出されるものが完全に又は略不活性ガスそのものになったときに、パージ弁を閉鎖すれば、貯留容器内部を、不活性ガス雰囲気とすることができる。つまり、もともと貯留容器内部に貯留されていた気体を、不活性ガスと完全に、又は、略完全に置換することができる。ここで、貯留容器内部にある液体は不活性ガス以外の気体との接触が絶たれるので、置換後におけるその気体を原因とする液体劣化が有効抑制される。なお、パージ弁は、これを開放してから不活性ガスを供給するようにしてもよい。貯留された液体は開放した抽出弁を介して外部に抽出される。液体抽出は、不活性供給手段による継続した不活性ガス供給によって可能となる。次は、不活性ガス供給手段の作用について説明する。不活性ガスは不活性ガス生成装置により供給され、ガスタンクは供給された不活性ガスを貯留し貯留容器に供給する機能を有している。
【0012】
上記不活性ガス生成装置によれば、可動隔壁の往復移動によって一方の気密室と他方の気密室との間で体積比の変動が繰り返し行われる。一方の気圧室の体積が減少した分、他方の気密室の体積が増加するとともに、これとは逆に、一方の気密室の体積が増加した分、他方の気密室の体積が減少する。一方の隔壁方向への可動隔壁の移動によって一方の気密室の体積が減少する。体積減少によって一方の気密室内部の全圧Pが全圧P1を超えたときに、一方の気密室内部にある気体Gから気体g1が一方の気体分離膜を透過して外部に分離排出される。分離排出によって、気体g2が一方の気密室内部に残される。気体g2は、可動隔壁のさらなる同方向移動によって、全圧がP2を超えると一方の気体取出逆止弁が開いて外部に取り出される。上記した可動隔壁の移動により、一方の気密室の体積減少分だけ他方の気密室の体積が増加するが、この増加によって他方の気密室内部の全圧が減少する。他方の気密室内部の全圧減によって他方の取入逆止弁が開放して外部から気体Gを他方の気密室内部に取り入れる。ここで、上記とは逆に他方の隔壁方向へ可動隔壁が移動させ、その移動によって他方の気密室内部の全圧P´がP´1を超えると他方の気密室内部にあった気体Gから、そこに含まれていた気体g1が他方の気体分離膜の透過により分離排出される。分離排出によって気体g2が他方の気密室内部に残される。気体g2は、可動隔壁のさらなる同方向移動によって、全圧がP´2を超えると他方の気体取出逆止弁が開いて外部に取り出される。一方の取出逆止弁から取り出された気体g2及び他方の取出逆止弁から取り出された気体g2は、ガス注入弁を介して互い違いにガスタンクに注入される。可動隔壁の往復移動は駆動機構の働きによる。可動隔壁の往路移動と復路移動のそれぞれにおいて気体g2を取り出すことができるので、何れか一方の移動のときのみ取出可能な場合に比べて気体取出効率を倍にすることができる。なお、気体注入先となるガスタンクは1個でもよいし、2個又は2個以上でもよい。ガスタンクに貯留された気体g2は、ガス供給弁を介して貯留容器内部に供給される。
【0013】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る液体貯留装置(以下、適宜「請求項3の貯留装置」という)は、液体を気密貯留可能な貯留容器と、当該貯留容器から貯留された液体を気密貯留可能な貯留容器と、当該貯留容器から貯留された液体を抽出するための抽出弁と、当該貯留容器内部に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段と、当該貯留容器内部の気体をパージするためのパージ弁と、を含み、当該抽出弁の開放時に当該貯留容器内部から液体を抽出可能に構成してある。当該不活性ガス供給手段は、当該貯留容器とガス供給弁を介して連結したガスタンクと、当該ガスタンクにガス注入弁を介して連結した不活性ガス生成装置と、を含めて構成してある。当該不活性ガス生成装置は、一方の隔壁と他方の隔壁とを含むとともに内部に気密室を備える気密容器と、当該気密室を当該一方の隔壁側に位置する一方の気密室と当該他方の隔壁側に位置する他方の気密室とに気密分離可能、かつ、当該一方の気密室と当該他方の気密室との間の体積比を変動させるために当該気密容器内部で気密状態を保ちつつ往復移動可能に構成した可動隔壁と、当該一方の隔壁の少なくとも一部を構成する一方の気体分離膜と、当該他方の隔壁の少なくとも一部を構成する他方の気体分離膜と、当該可動隔壁を往復移動させる駆動機構と、当該一方の隔壁に設けた一方の取出逆止弁と、当該他方の隔壁に設けた他方の取出逆止弁と、を含めて構成してある。ここで、当該可動隔壁の当該一方の隔壁方向への移動によって、当該他方の気密室内部の全圧減により当該他方の気密室外部にある気体Gから当該気体Gに含まれている気体g1及び気体g2のうち当該気体g2の少なくとも一部を当該他方の気体分離膜を介して当該他方の気密室内部に分離導入可能、かつ、当該一方の気密室内部の全圧増により当該一方の取出逆止弁を介して気体g2を当該一方の気密室外部に取出可能、に構成してあり、当該可動隔壁の当該他方の隔壁方向への移動によって、当該一方の気密室内部の全圧減により当該一方の気密室外部にある気体Gから当該気体Gに含まれている気体g1及び気体g2のうち当該気体g2の少なくとも一部を当該他方一方の気体分離膜を介して当該一方の気密室内部に分離導入可能、かつ、当該他方の気密室内部の全圧増により当該他方の取出逆止弁を介して気体g2を当該他方の気密室外部に取出可能、に構成してある。
【0014】
請求項3の貯留装置によれば、貯留容器内部に液体を気密貯留することができる。パージ弁は、貯留容器内部にある気体を不活性ガスと置換するための弁である。不活性ガスは不活性ガス供給手段によって供給される。不活性ガスが供給されると貯留容器内部の全圧は増加するが、ここで、パージ弁を開放すると貯留容器内部にある気体が外部へ排出される。このとき、抽出弁は閉鎖されている。排出される気体は、パージ弁開放当初は略その気体そのものであるが、不活性ガスが供給され続けるにつれその気体に含まれる不活性ガスの濃度が徐々に高くなっていく。気体側から見れば、その気体が不活性ガスによって少しずつ希釈されていく。希釈が進み排出されるものが完全に又は略不活性ガスそのものになったときに、パージ弁を閉鎖すれば、貯留容器内部を、不活性ガス雰囲気とすることができる。つまり、もともと貯留容器内部に貯留されていた気体を、不活性ガスと完全に、又は、略完全に置換することができる。ここで、貯留容器内部にある液体は不活性ガス以外の気体との接触が絶たれるので、置換後におけるその気体を原因とする液体劣化が有効抑制される。なお、パージ弁は、これを開放してから不活性ガスを供給するようにしてもよい。貯留された液体は開放した抽出弁を介して外部に抽出される。液体抽出は、不活性供給手段による継続した不活性ガス供給によって可能となる。次は、不活性ガス供給手段の作用について説明する。不活性ガスは不活性ガス生成装置により供給され、ガスタンクは供給された不活性ガスを貯留し貯留容器に供給する機能を有している。
【0015】
上記不活性ガス生成装置によれば、可動隔壁の往復移動によって一方の気密室と他方の気密室との間で体積比の変動が繰り返し行われる。一方の気密室の体積が減少した分、他方の気密室の体積が増加するとともに、これとは逆に、一方の気密室の体積が増加した分、他方の気密室の体積が減少する。一方の隔壁方向への可動隔壁の移動によって他方の気密室の体積が増加する。体積増加によって他方の気密室内部の全圧が減少する。この減少によって、他方の気密室外部にある気体Gから気体g2が他方の気体分離膜を透過して他方の気密室内部に分離導入される。分離導入された気体g2は、可動隔壁の逆方向移動(他方の気密室方向への移動)によって、他方の取出逆止弁を介して外部に取り出される。上記した可動隔壁の逆移動により、他方の気密室の体積減少分だけ一方の気密室の体積が増加するが、この増加によって一方の気密室内部の全圧が減少する。この減少によって、一方の気密室外部にある気体Gから気体g2が一方の気体分離膜を透過して一方の気密室内部に分離導入される。分離導入された気体g2は、可動隔壁の逆方向移動(一方の気密室方向への移動)によって、一方の取出逆止弁を介して外部に取り出される。一方の取出逆止弁から取り出された気体g2及び他方の取出逆止弁から取り出された気体g2は、ガス注入弁を介して互い違いにガスタンクに注入される。可動隔壁の往復移動は駆動機構の働きによる。可動隔壁の往路移動と復路移動のそれぞれにおいて気体g2を取り出すことができるので、何れか一方の移動のときのみ取出可能な場合に比べて気体取出効率を倍にすることができる。なお、気体注入先となるガスタンクは1個でもよいし、2個又は2個以上でもよい。ガスタンクに貯留された気体g2は、ガス供給弁を介して貯留容器内部に供給される。
【0016】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る液体貯留装置(以下、適宜「請求項4の貯留装置」という)では、請求項1乃至3いずれかの貯留装置の基本構成を前提とした好ましい態様として、前記気体Gが大気であり、前記気体g1が酸素又は酸素冨化気体であり、前記気体g2が窒素又は窒素冨化気体であることを特徴とする。
【0017】
請求項4の貯留装置によれば、請求項1乃至3いずれかの貯留装置の作用効果に加え、大気から酸素又は酸素冨化気体を分離排出することによって得た窒素又は窒素冨化気体を不活性ガスとして使用する。無尽蔵にある大気から取り出した窒素又は窒素冨化気体を用いれば、貯留容器内部に貯留された液体の劣化防止を手軽に、かつ、安価に行うことができる。
【0018】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係る液体貯留装置(以下、適宜「請求項5の貯留装置」という)では、請求項4の貯留装置の基本構成を前提とした好ましい態様として、前記ガスタンクが、前記不活性ガス生成装置に対して分離可能に構成してあり、かつ、分離後においても貯留されている窒素又は窒素冨化気体を当該貯留容器に供給可能に構成してある。
【0019】
請求項5の貯留装置によれば、請求項4の貯留装置の作用効果に加え、冨化製不活性ガス生成装置から分離したガスタンクから貯留装置に窒素又は窒素冨化気体を供給することができる。不活性ガス生成装置を持ち歩かなくて済むので、たいへん便利である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る液体貯留装置によれば、貯留した液体の劣化を効果的に抑制するとともに、貯留液体を少量ずつ排出した際にも、その抑制効果を持続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、各図を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、適宜「本実施形態」という)について説明する。図1は、本実施形態に係る液体貯留装置の縦断面図である。図2は、本実施形態の第1変形例に係る液体貯留装置の縦断面図である。図3は、本実施形態の第2変形例に係る液体貯留装置の縦断面図である。なお、本実施形態における貯留液体はコーヒーとし、貯留されたコーヒーに大気から酸素又は酸素冨化気体を分離して得た不活性ガス(窒素又は窒素冨化気体)を用いて酸化抑制するものとする。
【0022】
(液体貯留装置の概略構造)
図1に基づいて本実施形態に係る液体貯留装置を説明する。液体貯留装置1は、コーヒーCを気密貯留可能な貯留容器3と、貯留容器3からその中に貯留されているコーヒーCを抽出するための抽出弁5と、貯留容器3の内部に不活性ガスNを供給するための不活性ガス供給手段11と、貯留容器3の内部の気体Gをパージするためのパージ弁7と、を含めて構成してある。貯留容器3は、たとえば、略直方体のステンレス製の容器本体3aと、容器本体3aが上部に有する開口部3hを気密閉鎖するための蓋体3bと、により概ね構成してある。抽出弁5は、容器本体3aの側壁下端に取り付けてあり、その開放によって内部に貯留してあるコーヒーCを抽出できるようになっている。不活性ガス供給手段11の説明は、次項以下で行う。パージ弁7は、貯留容器3内部の気体(空気、大気)を置換する用途と、内部圧力が所定値を超える場合にガス抜きを行う用途と、を有している。貯留容器3内部へのコーヒーC注入は、蓋体3bを開放して開口部3hを介して行う。容器本体3aは、これをヒーター(図示を省略)によって加温可能に構成しておくことが好ましい。貯留したコーヒーCを適温に保っておくためである。
【0023】
(不活性ガス供給手段の構造)
不活性ガス供給手段11は、不活性ガスNを貯留するためのガスタンク13と、不活性ガス生成装置15と、により概略構成してある。ガスタンク13はガス供給弁14を介して貯留容器3の内部に不活性ガスNを連続供給可能に構成してある。ガスタンク13は、保持構造(図示を省略)によって貯留容器3と取り外しできるように一体化させておくとよい。貯留容器3とともにガスタンク13を持ち運びできるようにするためである。ガスタンク13には、ガス注入弁17を設けてあり、このガス注入弁17を介して不活性ガス生成装置15が生成した不活性ガスNを注入するようになっている。ガス注入弁17には、ガスタンク13と不活性ガス生成装置15とを着脱可能にする構造を持たせてある。上記した貯留容器3とガスタンク13との併せ持ち運びを可能とするためである。
【0024】
(不活性ガス生成装置の構造)
不活性ガス生成装置15は、隔壁20(固定隔壁20a、膜支持隔壁20b、可動隔壁20c)によって外部と隔離された内部22を備える気密容器23と、膜支持隔壁20bに設けられた気体取出弁25と、膜支持隔壁20bによって支持され隔壁20の一部を構成する気体分離膜27と、可逆モータ29aと棒状スクリュー29bを含む駆動機構29と、を含めて概略構成してある。換言すると、気密容器23は、固定隔壁20aと、膜支持隔壁20b(気体分離膜27)と、固定隔壁20a内面に対して気密摺動する可動隔壁20cと、により気密な内部22を有している。可動隔壁20cは、可逆モータ29aによる棒状スクリュー29bのネジ作用によって膜支持隔壁20b(気体分離膜27)に対して近接離反可能(内部22の内部容積の増減可能)に構成してある。
【0025】
気体分離膜27は、たとえば、シリコンによって構成した酸素透過膜である。気体分離膜27は、気密容器23の内部22の全圧Pが容積減少により全圧P1(P<P1)を超えたときに気密容器23の内部22に密封されていた気体G(ここでは、空気、大気)から気体Gに含まれていた気体g1(ここでは、酸素又は酸素冨化気体)の少なくとも一部を気密容器23の外部に分離排出可能に構成してある。さらに、気体取出弁25は、気密容器23の内部22のさらなる容積減少により気密容器23の内部22の全圧がP2(P2>P1)となったときに気密容器23の内部22と気密容器23の外部とを連通して気密容器23の内部22に残る気体g2(ここでは、窒素又は窒素冨化気体)を気密容器23の外部に供給可能に構成してある。
【0026】
(液体貯留装置の使用方法)
貯留液体となるコーヒーCは、予め抽出しておき、前述した蓋体3bを開放して貯留容器3の内部に注ぎ込む。蓋体3bを閉鎖して内部を気密状態にしたら、ガス供給弁14を開放して不活性ガスNを貯留容器3の内部に供給する。必要に応じて不活性ガス生成装置15を作動させて不活性ガスNをガスタンク13に供給するようにしてもよい。不活性ガスNを供給しながらパージ弁7を開放すると、内部にある大気Gが不活性ガスNに希釈されつつ外部に放出され、やがて、内部が不活性ガス雰囲気となる。これで、貯留されたコーヒーCの酸化が有効抑制される。抽出弁5を開放してコーヒーCを抽出すると、その抽出に見合った分だけ不活性ガスNが供給され、貯留容器3内部は常に不活性ガス雰囲気が保たれる。コーヒーCを抽出しても空気が入り込む余地がないため、貯留容器3内に残されたコーヒーCの酸化も有効に抑制される。
【0027】
不活性ガス生成装置15は、次のように作用する。すなわち、気密容器23内部に密閉された気体Gが、気密容器23の内部が可動隔壁20cの移動による容積減少によって全圧PからP1以上に上昇することによって気体分離膜27を介した気密容器23の内外に圧力差が生じる。この圧力差によって気体g1の一部又は全部が気体分離膜27を透過して気密容器23の外部に分離排出される。この時点で、気体取出弁25は閉鎖状態にあり、気密容器23の内部22には気体g2(気体g1が含まれる場合もある)が充満している。気体g1が分離排出された後も気密容器23の内外に圧力差があるから、一旦分離排出した気体g1と同じ種類の気体が、当該気密容器の外的環境に変化がない限り容器内部に入ってくることはない。ただ、外的環境に変化(たとえば、内部より外部のほうが圧力及び/又は濃度が高くなった)した場合には入ってくることもあり得る。全圧P1となった気密容器内部の容積をさらに減少させることにより、全圧P1をそれよりも高い全圧P2にまで至らせると、今度は気体取出弁25が開放して容器内部にある気体g2の少なくとも一部が気密容器23の外部に押し出し排出される。押し出された気体g2がガスタンク13に注入される。
【0028】
(不活性ガス生成装置の第1変形例)
図2を参照しながら不活性ガス生成装置の第1変形例について説明する。第1変形例に係る不活性ガス生成装置31が、先に述べた不活性ガス生成装置15と異なるのは、気体分離膜と弁構造についてのみであり、他の部位について異なることはない。したがって、本項では両者間で異なる部位についてのみ説明を行い、両者共通する部位については、図1で使用した符号と同じ符号を図2おいて使用するに止め、それらについての説明は省略する。
【0029】
不活性ガス供給手段30は、隔壁33を構成する一方の隔壁33aと他方の隔壁33bとを含むとともに内部に気密室35を備える気密容器37と、気密室35を当該一方の隔壁33a側に位置する一方の気密室35aと他方の隔壁33b側に位置する他方の気密室35bとに気密分離可能に、かつ、一方の気密室35aと他方の気密室35bとの間の体積比を変動させるために気密容器37内部で気密状態を保ちつつ往復移動可能に構成した可動隔壁39と、一方の隔壁33aの少なくとも一部を構成する一方の気体分離膜41aと、他方の隔壁33bの少なくとも一部を構成する他方の気体分離膜41bと、可動隔壁39を往復移動させる駆動機構29と、一方の隔壁33aに設けた一方の取入逆止弁43a及び一方の取出逆止弁45aと、他方の隔壁33bに設けた他方の取入逆止弁43b及び他方の取出逆止弁45bと、を含めて構成してある。
【0030】
上記構成において、可動隔壁39の一方の隔壁33a方向(一方の気体分離膜41a方向)への移動によって、一方の気密室35a内部の全圧Pが全圧P1(P<P1)を超えたときに一方の気密室35a内部にある気体Gから気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を一方の気体分離膜41aを介して一方の気密室35a外に分離排出可能、かつ、他方の気密室35b内部の減圧により他方の取入逆止弁43bを介して気体Gを他方の気密室35b内部に取入可能、に構成してあり、可動隔壁39の他方の隔壁33b方向への移動によって、他方の気密室35b内部の全圧P´が全圧P´1(P´<P´1)超えたときに他方の気密室35b内部にある気体Gから気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を他方の気体分離膜41bを介して他方の気密室35b外に分離排出可能、かつ、一方の気密室35a内部の減圧により一方の取入逆止弁43aを介して気体Gを一方の気密室35a内部に取入可能、に構成してある。ここで、一方の取出逆止弁45aが、可動隔壁39の一方の気体分離膜41a方向へのさらなる移動によって、一方の気密室35a内部の全圧がP2(P2>P1)を超えたときに一方の気密室35a内部と当該ガスタンク13内部とを連通して一方の気密室35a内部に残る気体g2をガスタンク13内に供給可能に構成してあり、他方の取出逆止弁45bが、可動隔壁39の他方の気体分離膜41b方向へのさらなる移動によって、他方の気密室35b内部の全圧がP´2(P´2>P´1)を超えたときに他方の気密室35b内部とガスタンク13内部とを連通して他方の気密室35b内部に残る気体g2をガスタンク13内に供給可能に構成してある。
【0031】
不活性ガス生成装置31によれば、可動隔壁39の往復移動によって一方の気密室35aと他方の気密室35bとの間で体積比の変動が繰り返し行われる。一方の気密室35aの体積が減少した分、他方の気密室35bの体積が増加するとともに、これとは逆に、一方の気密室35aの体積が増加した分、他方の気密室35bの体積が減少する。一方の隔壁33a方向への可動隔壁39の移動によって一方の気密室35aの体積が減少する。体積減少によって一方の気密室35a内部の全圧Pが全圧P1を超えたときに、一方の気密室35a内部にある気体Gから気体g1が一方の気体分離膜41aを透過して外部に分離排出される。分離排出によって、気体g2が一方の気密室35a内部に残される。気体g2は、可動隔壁39のさらなる同方向移動によって、全圧がP2を超えると一方の取出逆止弁45aが開いて外部に取り出される。上記した可動隔壁39の移動により、一方の気密室35aの体積減少分だけ他方の気密室35bの体積が増加するが、この増加によって他方の気密室35b内部の全圧が減少する。他方の気密室35b内部の全圧減によって他方の取入逆止弁43bが開放して外部から気体Gを他方の気密室35b内部に取り入れる。ここで、上記とは逆に他方の隔壁33b方向へ可動隔壁39を移動させ、その移動によって他方の気密室35b内部の全圧P´がP´1を超えると他方の気密室35b内部にあった気体Gから、そこに含まれていた気体g1が他方の気体分離膜41bの透過により分離排出される。分離排出によって気体g2が他方の気密室35b内部に残される。気体g2は、可動隔壁39のさらなる同方向移動によって、全圧がP´2を超えると他方の取出逆止弁45bが開いて外部に取り出される。一方の取出逆止弁45aから取り出された気体g2及び他方の取出逆止弁45bから取り出された気体g2は、ガス注入弁17を介して互い違いにガスタンク13に注入される。可動隔壁39の往復移動は駆動機構29の働きによる。可動隔壁39の往路移動と復路移動のそれぞれにおいて気体g2を取り出すことができるので、何れか一方の移動のときのみ取出可能な不活性ガス生成装置15に比べて気体取出効率を倍にすることができる。なお、気体注入先となるガスタンクは1個でもよいし、2個又は2個以上でもよい。ガスタンク13に貯留された気体g2は、ガス供給弁を介して貯留容器内部に供給される。
【0032】
(不活性ガス生成装置の第2変形例)
図3を参照しながら不活性ガス生成装置の第2変形例について説明する。第2変形例に係る不活性ガス生成装置51が、先に述べた不活性ガス生成装置31と異なるのは、気体分離膜と弁構造についてのみであり、他の部位について異なることはない。したがって、本項では両者間で異なる部位についてのみ説明を行い、両者共通する部位については、図2で使用した符号と同じ符号を図3おいて使用するに止め、それらについての説明は省略する。
【0033】
不活性ガス生成装置51は、一方の隔壁と他方の隔壁とを含むとともに内部に気密室を備える気密容器と、当該気密室を当該一方の隔壁側に位置する一方の気密室と当該他方の隔壁側に位置する他方の気密室とに気密分離可能、かつ、当該一方の気密室と当該他方の気密室との間の体積比を変動させるために当該気密容器内部で気密状態を保ちつつ往復移動可能に構成した可動隔壁と、当該一方の隔壁の少なくとも一部を構成する一方の気体分離膜と、当該他方の隔壁の少なくとも一部を構成する他方の気体分離膜と、当該可動隔壁を往復移動させる駆動機構と、当該一方の隔壁に設けた一方の取出逆止弁と、当該他方の隔壁に設けた他方の取出逆止弁と、を含めて構成してある。ここで、当該可動隔壁の当該一方の隔壁方向への移動によって、当該他方の気密室内部の全圧減により当該他方の気密室外部にある気体Gから当該気体Gに含まれている気体g1及び気体g2のうち当該気体g2の少なくとも一部を当該他方の気体分離膜を介して当該他方の気密室内部に分離導入可能、かつ、当該一方の気密室内部の全圧増により当該一方の取出逆止弁を介して気体g2を当該一方の気密室外部に取出可能、に構成してあり、当該可動隔壁の当該他方の隔壁方向への移動によって、当該一方の気密室内部の全圧減により当該一方の気密室外部にある気体Gから当該気体Gに含まれている気体g1及び気体g2のうち当該気体g2の少なくとも一部を当該他方一方の気体分離膜を介して当該一方の気密室内部に分離導入可能、かつ、当該他方の気密室内部の全圧増により当該他方の取出逆止弁を介して気体g2を当該他方の気密室外部に取出可能、に構成してある。
【0034】
上記不活性ガス生成装置51によれば、可動隔壁の往復移動によって一方の気密室と他方の気密室との間で体積比の変動が繰り返し行われる。一方の気密室の体積が減少した分、他方の気密室の体積が増加するとともに、これとは逆に、一方の気密室の体積が増加した分、他方の気密室の体積が減少する。一方の隔壁方向への可動隔壁の移動によって他方の気密室の体積が増加する。体積増加によって他方の気密室内部の全圧が減少する。この減少によって、他方の気密室外部にある気体Gから気体g2が他方の気体分離膜を透過して他方の気密室内部に分離導入される。分離導入された気体g2は、可動隔壁の逆方向移動(他方の気密室方向への移動)によって、他方の取出逆止弁を介して外部に取り出される。上記した可動隔壁の逆移動により、他方の気密室の体積減少分だけ一方の気密室の体積が増加するが、この増加によって一方の気密室内部の全圧が減少する。この減少によって、一方の気密室外部にある気体Gから気体g2が一方の気体分離膜を透過して一方の気密室内部に分離導入される。分離導入された気体g2は、可動隔壁の逆方向移動(一方の気密室方向への移動)によって、一方の取出逆止弁を介して外部に取り出される。一方の取出逆止弁から取り出された気体g2及び他方の取出逆止弁から取り出された気体g2は、ガス注入弁を介して互い違いにガスタンクに注入される。可動隔壁の往復移動は駆動機構の働きによる。可動隔壁の往路移動と復路移動のそれぞれにおいて気体g2を取り出すことができるので、何れか一方の移動のときのみ取出可能な場合に比べて気体取出効率を倍にすることができる。なお、気体注入先となるガスタンクは1個でもよいし、2個又は2個以上でもよい。ガスタンクに貯留された気体g2は、ガス供給弁を介して貯留容器内部に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る液体貯留装置の縦断面図である。
【図2】本実施形態の第1変形例に係る液体貯留装置の縦断面図である。
【図3】本実施形態の第2変形例に係る液体貯留装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 液体貯留装置
3 貯留容器
3a 容器本体
3b 蓋体
3h 開口部
5 抽出弁
7 パージ弁
11 不活性ガス供給手段
13 ガスタンク
14 ガス供給弁
15 不活性ガス生成装置
17 ガス注入弁
20 隔壁
20a 固定隔壁
20b 膜支持隔壁
20c 可動隔壁
22 内部
23 気密容器
25 気体取出弁
27 気体分離膜
29 駆動機構
29a 可逆モータ
29b 棒状スクリュー
30 不活性ガス供給手段
31 不活性ガス生成装置
33 隔壁
33a 一方の隔壁
33b 他方の隔壁
35 気密室
35a 一方の気密室
35b 他方の気密室
37 気密容器
39 可動隔壁
41a,41b 気体分離膜
43a,43b 取入逆止弁
45a,45b 取出逆止弁
51 不活性ガス生成装置
C コーヒー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を気密貯留可能な貯留容器と、
当該貯留容器から液体を抽出するための抽出弁と、
当該貯留容器内部に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段と、
当該貯留容器内部の気体をパージするためのパージ弁と、を含み、
当該抽出弁の開放時に当該貯留容器内部から液体を抽出可能に構成してある液体貯留装置において、
当該不活性ガス供給手段が、当該貯留容器とガス供給弁を介して連結したガスタンクと、当該ガスタンクにガス注入弁を介して連結した不活性ガス生成装置と、を含めて構成してあり、
当該不活性ガス生成装置が、隔壁によって外部と隔離された内部を備える気密容器と、当該隔壁に設けられた気体取出弁と、当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、を含めて構成してあり、
当該隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少可能に構成してあり、
当該気体分離膜が、当該気密容器内部の全圧Pが容積減少により全圧P1(P<P1)を超えたときに容器内部に密封されていた気体Gから当該気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を当該気密容器外部に分離排出可能に構成してあり、
当該気体取出弁が、当該気密容器内部のさらなる容積減少により当該気密容器内部の全圧がP2(P2>P1)となったときに当該気密容器内部と当該貯留容器外部とを連通して当該気密容器内部に残る気体g2を当該貯留容器外部に供給可能に構成してある
ことを特徴とする液体貯留装置。
【請求項2】
液体を気密貯留可能な貯留容器と、
当該貯留容器から貯留された液体を抽出するための抽出弁と、
当該貯留容器内部に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段と、
当該貯留容器内部の気体をパージするためのパージ弁と、を含み、
当該抽出弁の開放時に当該貯留容器内部から液体を抽出可能に構成してある液体貯留装置において、
当該不活性ガス供給手段が、当該貯留容器とガス供給弁を介して連結したガスタンクと、当該ガスタンクにガス注入弁を介して連結した不活性ガス生成装置と、を含めて構成してあり、
当該不活性ガス生成装置が、
一方の隔壁と他方の隔壁とを含むとともに内部に気密室を備える気密容器と、
当該気密室を当該一方の隔壁側に位置する一方の気密室と当該他方の隔壁側に位置する他方の気密室とに気密分離可能、かつ、当該一方の気密室と当該他方の気密室との間の体積比を変動させるために当該気密容器内部で気密状態を保ちつつ往復移動可能に構成した可動隔壁と、
当該一方の隔壁の少なくとも一部を構成する一方の気体分離膜と、
当該他方の隔壁の少なくとも一部を構成する他方の気体分離膜と、
当該可動隔壁を往復移動させる駆動機構と、
当該一方の隔壁に設けた一方の取入逆止弁及び一方の取出逆止弁と、
当該他方の隔壁に設けた他方の取入逆止弁及び他方の取出逆止弁と、を含めて構成してあり、
当該可動隔壁の当該一方の隔壁方向への移動によって、当該一方の気密室内部の全圧Pが全圧P1(P<P1)を超えたときに当該一方の気密室内部にある気体Gから当該気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を当該一方の気体分離膜を介して当該一方の気密室外に分離排出可能、かつ、当該他方の気密室内部の減圧により当該他方の取入逆止弁を介して気体Gを当該他方の気密室内部に取入可能、に構成してあり、
当該可動隔壁の当該他方の隔壁方向への移動によって、当該他方の気密室内部の全圧P´が全圧P´1(P´<P´1)を超えたときに当該他方の気密室内部にある気体Gから当該気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を当該他方の気体分離膜を介して当該他方の気密室外に分離排出可能、かつ、当該一方の気密室内部の減圧により当該一方の取入逆止弁を介して気体Gを当該一方の気密室内部に取入可能、に構成してあり、
当該一方の取出逆止弁が、当該可動隔壁の当該一方の気体分離膜方向へのさらなる移動によって、当該一方の気密室内部の全圧がP2(P2>P1)を超えたときに当該一方の気密室内部と当該ガスタンク内部とを連通して当該一方の気密室内部に残る気体g2を当該ガスタンク内に供給可能に構成してあり、
当該他方の取出逆止弁が、当該可動隔壁の当該他方の気体分離膜方向へのさらなる移動によって、当該他方の気密室内部の全圧がP´2(P´2>P´1)を超えたときに当該他方の気密室内部と当該ガスタンク内部とを連通して当該他方の気密室内部に残る気体g2を当該ガスタンク内に供給可能に構成してある
ことを特徴とする液体貯留装置。
【請求項3】
液体を気密貯留可能な貯留容器と、
当該貯留容器から貯留された液体を抽出するための抽出弁と、
当該貯留容器内部に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段と、
当該貯留容器内部の気体をパージするためのパージ弁と、を含み、
当該抽出弁の開放時に当該貯留容器内部から液体を抽出可能に構成してある液体貯留装置において、
当該不活性ガス供給手段が、当該貯留容器とガス供給弁を介して連結したガスタンクと、当該ガスタンクにガス注入弁を介して連結した不活性ガス生成装置と、を含めて構成してあり、
当該不活性ガス生成装置が、
一方の隔壁と他方の隔壁とを含むとともに内部に気密室を備える気密容器と、
当該気密室を当該一方の隔壁側に位置する一方の気密室と当該他方の隔壁側に位置する他方の気密室とに気密分離可能、かつ、当該一方の気密室と当該他方の気密室との間の体積比を変動させるために当該気密容器内部で気密状態を保ちつつ往復移動可能に構成した可動隔壁と、
当該一方の隔壁の少なくとも一部を構成する一方の気体分離膜と、
当該他方の隔壁の少なくとも一部を構成する他方の気体分離膜と、
当該可動隔壁を往復移動させる駆動機構と、
当該一方の隔壁に設けた一方の取出逆止弁と、
当該他方の隔壁に設けた他方の取出逆止弁と、を含めて構成してあり、
当該可動隔壁の当該一方の隔壁方向への移動によって、当該他方の気密室内部の全圧減により当該他方の気密室外部にある気体Gから当該気体Gに含まれている気体g1及び気体g2のうち当該気体g2の少なくとも一部を当該他方の気体分離膜を介して当該他方の気密室内部に分離導入可能、かつ、当該一方の気密室内部の全圧増により当該一方の取出逆止弁を介して気体g2を当該一方の気密室外部に取出可能、に構成してあり、
当該可動隔壁の当該他方の隔壁方向への移動によって、当該一方の気密室内部の全圧減により当該一方の気密室外部にある気体Gから当該気体Gに含まれている気体g1及び気体g2のうち当該気体g2の少なくとも一部を当該他方
一方の気体分離膜を介して当該一方の気密室内部に分離導入可能、かつ、当該他方の気密室内部の全圧増により当該他方の取出逆止弁を介して気体g2を当該他方の気密室外部に取出可能、に構成してある
ことを特徴とする液体貯留装置。
【請求項4】
前記気体Gが大気であり、前記気体g1が酸素又は酸素冨化気体であり、前記気体g2が窒素又は窒素冨化気体である
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の液体貯留装置。
【請求項5】
前記ガスタンクが、前記不活性ガス生成装置に対して分離可能に構成してあり、かつ、分離後においても貯留されている窒素又は窒素冨化気体を当該貯留容器に供給可能に構成してある
ことを特徴とする請求項4記載の液体貯留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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