説明

液体貯留設備

【課題】上面をカバーシートで覆い、内部にガス体を伴う液体を貯留でき、しかも液体中に設置する機器の取り扱いも容易である液体貯留設備を提供する。
【解決手段】内部に液体10を貯留する凹面部11の周縁11aに、凹面部11を覆う樹脂製のカバーシート19の周縁部を一体的に取り付け、全体が筒体状に形成された開口枠体22の一端開口が液体10の表面に没入し、他端開口がカバーシート19に形成された開口19aを貫通して外部に臨み、かつ外面がカバーシートに形成された開口19aの内周と溶着されて水封部を形成し、この開口枠体22を通して、液体10内に設置される機器21の出入りを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス体と共に液体を貯留する液体貯留設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス体と共に液体を貯留する液体貯留設備として、有機性廃水等の液体を貯蔵するタンクは数多く提案されており、メタン発酵槽などとして利用されている(例えば、特許文献1参照)。メタン発酵槽などに用いられる液体貯留設備としては、大量の液体を貯留できるものが、メタン発酵効率などの面から要求されるようになってきた。この場合、従来の金属製タンクでは、構造的に、かつ製造コスト的に限界があり、きわめて大容量のタンクを製作することが困難であった。このため、大地形状を活用し、そこにシートを敷設して液体貯留設備として形成することが考えられた。特に地価の安い海外では数多く使用されるケースがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−237238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構成の液体貯留設備では、ガス体と液体の両方を貯留する場合、ガス体の気密性を保つ必要がある。また、液中に設置される機器への保守修理が必要になるなど、構造的に難しい問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、シート方式で構成され、内部にガス体を伴う液体を貯留でき、しかも液体中に設置する機器の取り扱いも容易である液体貯留設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態による液体貯留設備は、内部に液体を貯留する凹面部と、周縁部が、前記凹面部の周縁に一体的に取り付けられ、前記凹面部全体を覆う樹脂製のカバーシートと、このカバーシートと溶着可能な樹脂材による溶着部を有し、全体が筒体状に形成され、その筒体の一端開口が前記液体の表面に没入し、他端開口が前記カバーシートに形成された開口を貫通して外部に臨み、かつ前記溶着部により、カバーシートに形成された開口の内周と溶着されて水封部を形成する開口枠体とを備え、この開口枠体を通して、前記凹面部内に貯留された液体内に設置される機器の出入りを可能としたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液体貯留設備の断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に用いる固定具を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る液体貯留設備の断面図である。
【図4】図3の開口枠体部分を拡大して示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態に係る液体貯留設備を、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1では、内部に液体10を貯留する凹面部11を、例えば、大地12を堀削して形成する。この凹面部11の周壁は斜面を成す法面により形成されており、その上部、すなわち、凹面部11の周縁11aは盛土などにより土手状に形成されている。図の例では、大面積の凹面部11を堀削形成しており、中央部にコンクリート製の仕切壁13を立設して、2つの貯留設備(図では左半分を示している)として用いる場合を示している。仕切壁13は、凹面部11の底部中央に埋設されたコンクリート製の水平な基礎部14上に垂直に一体形成されている。
【0010】
この凹面部11は、前述のように液体10を貯留するものであるため、その内面(すなわち底面及び周壁となる法面)には大地への漏水を防止するために樹脂製のシート16が敷設されている。このシート16の材質としては、例えば、HDPE(High−Density Polyethylene:高密度ポリエチレン)を用いる。施工に当っては、HDPEのシートを幅7m、長さ約100m、重さ約1.5トン程度のロール状に巻回したものを、現場において凹面部11の内側の底面及び法面に沿って敷設後、各シート間の重ね合わせ部分を、図示しない専用の熱溶着機により現場で溶着して、凹面部11の内面全体を覆う。このシート16の周囲端部は、凹面部11の周縁11aの土手部上面、及び仕切壁13の上面部にそれぞれ設けられた固定具17に溶着され、固定される。
【0011】
固定具17は、図2で示すように、シート16と溶着可能な材質で作られており、平面状の溶着部17aと、この溶着部17aと直角を成す複数の脚部17bとを有している。前述した凹面部11の周縁11aの土手部上面、及び仕切壁13の上面部への取り付けは、コンクリート打ちの際、この脚部17bを固まる前のコンクリートに打設して一体に取り付ける。そして、シート16の周囲端部は、この溶着部17a上に、前述した熱溶着機によって現場で加熱加圧され、溶着される。
【0012】
この凹面部11による液体貯留設備は、前述のように、ガス体と共に液体を貯留するものであり、例えば、有機性廃水等の液体を貯留し、メタンガスを発生させるものである。このため、発生したメタンガスを、液体と共に内部に貯留しなければならず、凹面部11全体を覆うカバーが必要となる。そこで、この実施の形態では、凹面部11の内面を覆ったシート16と同じHDPEのカバーシート19により、凹面部11の上面を覆うように構成する。すなわち、HDPEによるシートを溶着により繋ぎ合わせ、凹面部11の上面を覆う大きさのカバーシート19を成形する。そして、成形されたカバーシート19の周縁部を、凹面部11の周縁11aの土手部上面、及び仕切り壁3の上面部にそれぞれ設けた固定具17に溶着し、固定する。この構成により、凹面部11内に気体と液体の両方を貯蔵する密閉形の液体貯留設備が築造される。
【0013】
また、凹面部11内に貯留された液体10として、前述のように有機性廃水を貯留し、メタンガス発酵槽として用いる場合、液体10中にはメタンガスを効率よく発生させるため機器21、例えば、プロペラ式の攪拌機を設置する。この攪拌機21は、有機性廃水中に設置されることから、ある頻度で外部に取り出し、保守点検する必要がある。そのために、カバーシート19に機器取り出し用の開口19aを形成する。すなわち、カバーシート19上の所定箇所をカットし、攪拌機21を内部から取り出すことが可能な開口19aをつくる。この開口19aには、筒体状に形成された開口枠体22を取り付ける。
【0014】
開口枠体22はカバーシート19と溶着可能な樹脂材による溶着部を有する。例えば、この実施の形態では、カバーシート19と同じHDPE材により筒体状に形成しており、この筒体の外周面がカバーシート19に形成された開口19aの内周に溶着されている。すなわち、カットした開口19aの大きさに合わせて、HDPE製の開口枠体(円柱形又は四角形)22を製作し、その外周に、カバーシート19に形成した開口19aの内周を溶着する。
【0015】
また、この開口枠体22を、上述のようにカバーシート19と同じHDPE材により形成した場合、開口枠体22自体を軽量に構成することができるので、特別な支持体を要することなく、カバーシート19に直接溶着して固定することができる。
【0016】
この開口枠体22は、その筒体の一端(図示下端)開口が、図示のように液体10の表面に没入した状態で設けられる。また他端(図示上端)開口は、カバーシート19に形成された開口19aを貫通して外部に臨んでいる。したがって、これらの構成により水封部が形成される。すなわち、開口枠体22の高さは、水封可能となるように、カバーシート19と液体水面との間の距離より大きく形成する。
【0017】
ここで、液体10から発生したメタンガスは、液体10の上方を覆うカバーシート19との間に貯留されるが、開口枠体22の筒体下端部は液体により封止され、水封部となっているため、カバーシート19との間に貯留されたメタンガスが、開口枠体22の筒内部を通って大量に外部に排気されることはない。勿論、開口枠体22の筒体内面積分の液体は外部に露出しているので、この部分で発生したメタンガスは外部に排出されるが、凹面部11全体の面積に比べれば極僅かであり、問題とはならない。
【0018】
なお、液体10の液面とカバーシートとの間に貯留されたメタンガスは、この間に設置されたガス回収配管23により回収され、図示しない発電設備の燃料などとして利用される。
【0019】
液体10中に設置された攪拌機21は、開口枠体22内を通して外部に取り出され、保守点検後は再び液体10中に設置される。そのために、攪拌機21を上下動可能に案内支持するガイドバー24を、凹面部11の底部に設けられた基礎25上に立設する。すなわち、攪拌機基礎(コンクリート構造)25を凹面部11の底部に設置し、ガイドバー24を、この基礎25の上にアンカー打設により取付ける。このガイドバー24は、その上端部が開口枠体22を貫通して外部に達する長さを有する。また、外部には、例えば、仕切壁13の上面に、滑車28を有する支持体27を設け、この滑車28に巻き掛けられた鎖29により、攪拌機21を上下動させるように構成する。すなわち、攪拌機21に一端を固定した鎖29を上下させることにより、ガイドバー24に沿って攪拌機21を移動させ、外部への取り出し、及び液体10内への挿入を容易に行えるように構成した。
【0020】
このように、大地の形状を活用し、そこに樹脂製のシート16を敷設し、さらにその上面部分をカバーシート19で覆うことによりガス体と共に液体を貯留する大容量の液体貯留設備を容易、かつ安価に構成することができる。また、液体10中に設置される攪拌機のような機器21を外部に取り出すためにカバーシート19に開口19aを形成する場合、この開口19aに開口枠体22を溶着により一体に取り付け、その下端部を液体中に没入させて水封部を構成したため、液体10の液面とカバーシート19間に貯留されたガスが開口19aから外部に大量に放出されることを確実に防止でき、しかも貯留されたガスは、ガス回収配管23により回収できる。ガス回収配管23は、図示しないが、その配管周面に多数の吸気孔を設けたもので、液体10の液面とカバーシート19間に貯留されたガスを効果的に吸引して回収することができる。したがって、この大容量の液体貯留設備は、メタン発酵槽などとして活広く活用することができる。
【0021】
上記実施の形態では、液体10中に設置される機器21としてプロペラ式の攪拌機を例示したが、これに限らず、例えば水中ポンプなど、他の機器であってもかまわない。
【0022】
また、上記実施の形態では、凹面部11の中央部に仕切壁13を設け、凹面部11を2つの液体貯留設備として用いる場合を説明したが、仕切壁13は必ずしも設ける必要はなく、比較的小面積の凹面部11では仕切壁13を設けずに1つの液体貯留設備として用いてもよい。この場合、カバーシート19の全周縁部は、凹面部11の周縁11aとして形成された土手部上に、帯状に設置した固定具17を介して取り付ければよい。また、攪拌機などの機器21及びそれを出し入れするガイドバー24などは、周壁となる法面近くに設置し、凹面部11の周縁11aの土手部上に支持体27を設け、この支持体27に取り付けられた滑車28により鎖29を上下させ、これにより機器21を出し入れするように構成すればよい。
【0023】
また、上記実施の形態では、開口枠体22をカバーシート19と同じHDPE材により軽量に構成したので、特別な支持体を要することなく、カバーシート19に直接溶着して固定していた。しかし、凹面部11の中央部に仕切壁13が設けられた場合は、図3で示すように、仕切壁13の上部側面にコンクリート製の開口枠体32を一体に形成し、この開口枠体32を通して液体10中に設置された機器21を出し入れする用にしてもよい。
【0024】
この場合、コンクリート製の開口枠体32も、その下端が液体10中に没入して水封部を構成できるように縦方向の長さを設定する。また、コンクリートにはカバーシート19を直接溶着できないので、図4で示すように、仕切壁13の上面と同様に、コンクリート製の開口枠体32の上面にも、帯状を成すように固定具17を打設し、この固定具17にカバーシート19に形成された開口19aの内周部を溶着するように構成する。
【0025】
このように構成した場合も、カバーシート19で凹面部11の上面を覆うことにより、ガス体と共に液体を貯留する大容量の液体貯留設備を容易、かつ安価に構成することができる。また、機器21を外部に取り出すために、開口19aに開口枠体32を一体に取り付け、その下端部を液体中に没入させて水封部を構成したため、液体10の液面とカバーシート19間に貯留されたガスが開口19aから外部に大量に放出されることを確実に防止できる。また、開口枠体32自体もコンクリートにより強固に構成することができる。
【0026】
さらに、上記実施の形態では、凹面部11の内面を、シート材16によって覆っているが、シート材16以外の防水材、例えば、防水塗料を塗布したコンクリート材で内面を形成してもよい。この場合も、カバーシート19の周縁部は、凹面部11の周縁11aに固定されている固定具17に溶着して固定すればよい。
【0027】
なお、カバーシート19の周縁部を凹面部11の周縁11aに固定する構造として固定具17への溶着を例示したが、溶着に限らず、カバーシート19の周縁部を挟み込むように固定してもよい。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
10…液体
11…凹面部
11a…凹面部周縁
12…大地
16…シート材
17…固定具
17a…溶着部
17b…脚部
19…カバーシート
19a…開口
21…機器
22,32…開口枠体
23…ガス回収配管
24…ガイドシャフト
27…支持体27
28…滑車
29…鎖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留する凹面部と、
周縁部が、前記凹面部の周縁に一体的に取り付けられ、前記凹面部全体を覆う樹脂製のカバーシートと、
このカバーシートと溶着可能な樹脂材による溶着部を有し、全体が筒体状に形成され、その筒体の一端開口が前記液体の表面に没入し、他端開口が前記カバーシートに形成された開口を貫通して外部に臨み、かつ前記溶着部により、カバーシートに形成された開口の内周と溶着されて水封部を形成する開口枠体とを備え、
この開口枠体を通して、前記凹面部内に貯留された液体内に設置される機器の出入りを可能とした
ことを特徴とする液体貯留設備。
【請求項2】
前記液体は、ガスを発生する液体であること特徴とする請求項1に記載の液体貯留設備。
【請求項3】
前記液体内に設置される機器はプロペラ式攪拌機であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体貯留設備。
【請求項4】
前記凹面部内の、前記液体上面と前記カバーシートとの間の空間に、ガス体を吸気して外部に導出する回収配管を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体貯留設備。
【請求項5】
前記凹面部は、大地に形成され、その内面は前記カバーシートと同じ材質のシート材により覆われており、このシート材の、前記凹面部の周縁に位置する部分、及び前記カバーシートの周縁部は、これらと溶着可能な材質の固定具にそれぞれ溶着され、この固定具は、前記凹面部の周縁に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかにに記載の液体貯留設備。
【請求項6】
前記凹面部の内面は、前記シート材以外の防水材により形成されており、前記カバーシートの周縁部は、このカバーシートと溶着可能な材質の固定具に溶着され、この固定具は、前記凹面部の周縁に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかにに記載の液体貯留設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−60225(P2013−60225A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200903(P2011−200903)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】