説明

液体輸送用チューブのカプリング装置

【課題】 カプリングプラグ9及びカプリングプラグ15を接続したカプリングプラグ部に、前述カプリングプラグ9又はカプリングプラグ15の何れかに嵌合するカプリングソケット1を有するカプリングソケット部を接続する時に、接続側とは反対側のカプリングプラグ9又はカプリングプラグ15から液が噴出する現象があった。
【解決手段】 前述のカプリング装置において、カプリングソケット1、カプリングプラグ9及びカプリングプラグ15の何れか1つ又は2つ以上の嵌合面に、抜き差し方向に溝形状の空気抜き通路を設け、プラグ本体10もしくはプラグ本体16の抜き差し方向の断面積に対する、カプリングプラグ9又はカプリングプラグ15とカプリングソケット1を嵌合した状態における溝形状の空気抜き通路の断面積の比率を0.5%〜15%とした。これにより、前述のカプリングプラグ部よりの液の噴出量を抑えるとともに気密性も確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体輸送用チューブを処理装置に着脱するための、前記チューブの一端または両端に設けたカプリングプラグと前記処理装置に設けたカプリングソケットからなるカプリング装置にかかわる。
このようなカプリング装置は医療用人工透析装置に多く採用されており、以下の説明も医療用人工透析装置への適用事例に基づいて行なうが、本発明は当適用事例に限定されるものではなく、液体輸送用チューブのカプリング装置に広く適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
カプリングソケット1は、医療用人工透析装置の透析液の調合及び洗浄時にカプリングプラグ9に接続され、透析液あるいは洗浄における液をバイパスする。次に、カプリングソケット1はダイアライザの透析液ポートに接続され、透析終了後に、カプリングソケット1はカプリングプラグ9に再度接続される。この接続時に、前工程でチューブ13に溜まった液が、他方のカプリングプラグ15から噴出する問題がある。
【0003】
一般的にこの対策として、医療用人工透析装置に電磁弁を追加し、プログラム・ソフトウェアによる制御で動作させ、チューブ内の液を抜き噴出を防いでいる。しかし、追加の電磁弁なしで、部品の形状で解決する方法が望まれている。
【0004】
さらに、カプリングプラグに弁を付設する方法も考案されているが、この場合、内部構造が複雑になり、液回路内の清浄度を損なうおそれがあるため現在ではほとんど採用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のカプリング装置では、医療用人工透析装置のカプリングソケット1をカプリングプラグ9に接続する時、もしくはカプリングソケット1をカプリングプラグ15に接続する時、チューブ13内に溜まった液が噴出し周囲を汚染する問題があった。
【0006】
本発明は、プログラム・ソフトウェアによる制御で動作させる電磁弁を用いなくとも部品の形状で解決し、液の噴出をほぼ完全に抑えるカプリングソケット及びカプリングプラグを実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、チューブ13の両端に開口部を上向きにしたカプリングプラグ9及びカプリングプラグ15を接続したカプリングプラグ部と、前述カプリングプラグ9又はカプリングプラグ15の何れかに嵌合するカプリングソケット1を有するカプリングソケット部からなるカプリング装置において、カプリングソケット1、カプリングプラグ9及びカプリングプラグ15の何れか1つ又は2つ以上の嵌合面に、抜き差し方向に溝形状の空気抜き通路を設けたものである。
【0008】
また、本発明の第2の課題解決手段は、上記の溝形状の空気抜き通路として、溝又は面取り何れかの形状を設けたものである。
【0009】
また、本発明の第3の課題解決手段は、プラグ本体10もしくはプラグ本体16の抜き差し方向の断面積に対する、カプリングプラグ9又はカプリングプラグ15とカプリングソケット1を嵌合した状態における溝形状の空気抜き通路の断面積の比率を0.5%〜15%としたものである。
【0010】
さらに、本発明の第4の課題解決手段は、プラグ本体10もしくはプラグ本体16の抜き差し方向の断面積に対する、カプリングプラグ9又はカプリングプラグ15とカプリングソケット1を嵌合した状態における溝形状の空気抜き通路の断面積の比率を1%〜6%としたものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によって、確実に液の噴出を抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】空気抜き通路付きカプリングソケット1の図面であり、(a)は左側面、(b)は正面図。
【図2】空気抜き通路付きカプリングプラグ9の図面であり、(a)は左側面、(b)は正面図。
【図3】カプリングソケット1、カプリングプラグ9及びカプリングプラグ15の全体構造を示す断面図であり、カプリングソケット1をカプリングプラグ9に接続する途中の図面で、内部の空気が空気抜き通路を通る状態を示す断面図。
【図4】カプリングソケット1、カプリングプラグ9及びカプリングプラグ15の全体構造を示す断面図であり、カプリングソケット1をカプリングプラグ9に接続終了後の、Oリングで気密が保たれた状態を示す断面図。
【図5】従来型のカプリングソケット1を従来型のカプリングプラグ9に接続する前の断面図。
【図6】従来型のカプリングソケット1を接続した直後に反対側のカプリングプラグ15から液が噴出する状態を示す断面図。
【図7】本発明であるカプリングプラグ9に空気抜き通路を付けた場合の断面図であり、カプリングソケット1を接続する前の断面図。
【図8】カプリングソケット1を接続した直後に反対側のカプリングプラグ15から液の噴出が抑えられた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のカプリングソケット1及びカプリングプラグ9の最適な実施態様を、図1、図2、図3及び図4を用いて具体的に説明する。図1は、ソケット本体2に空気抜き通路14を設けた図であり、図2はプラグ本体10に空気抜き通路14を設けた図である。
【0014】
図3は、チューブ13の両端に、開口部を上向きにしたカプリングプラグ9及びカプリングプラグ15をつないだ状態とし、カプリングソケット1を接続する途中の状態を示した断面図である。図4は、カプリングソケット1がカプリングプラグ9に完全に差し込まれOリングで気密性が保たれた状態を示した断面図である。
【0015】
チューブ13内に液が充填された状態でカプリングソケット1を接続する場合、カプリングソケット1内の空気といっしょに差し込まれた空気を、外に逃がしながら接続できるように、カプリングソケット1又はカプリングプラグ9に空気抜き通路を設ける。
【0016】
カプリングソケット1の空気抜き通路は、ソケット本体2に設け形状は溝とするが、カプリングプラグ9の空気抜き通路は、プラグ本体10に設けこの形状は溝又は面取りのどちらでも良い。
【0017】
空気抜き通路において溝又は面取りの形状が問題でなく、プラグ本体10の嵌合方向の断面積に対し、ソケット本体2の内周の溝、及びプラグ本体10の外周の溝又は面取りのそれぞれ合計の断面積の比率が確保できれば問題ない。この断面積の比率が0.5%未満であると着脱時の液噴出を防ぐことが出来ず、15%を超えると気密性を確保できなくなるので0.5%〜15%の範囲に限定することが好ましい。ただし無造作に着脱した場合にはこの範囲であっても多少の液噴出、気密漏れが見られることがあるので、1%〜6%の範囲に限定することがより好ましい。空気抜き通路として設ける溝又は面取りの個数は1カプリング当り1箇所でよいが、この断面積の比率の範囲で2箇所設けるとより確実に問題点を解消できる。
【実施例】
【0018】
面取りによる空気抜き通路を2箇所設け、この空気抜き通路の断面積合計がプラグ本体の嵌合方向の断面積に対し5.7%となるようにしたカプリングプラグを作成し、これに溝又は面取りを施していないカプリングソケットを嵌合して液噴出、気密洩れを調べたところ、勢いよく嵌合を行なっても液噴出、気密洩れが起こらないことを確認した。
【符号の説明】
【0019】
1 カプリングソケット
2 ソケット本体
3 スリーブ
4 Oリング
5 ボール
6 ストップリング
7 ニップル
8 チューブ
9 カプリングプラグ
10 プラグ本体
11 ブッシュ
12 ニップル
13 チューブ
14 空気抜き通路
15 カプリングプラグ
16 プラグ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体輸送用チューブ13の両端に開口部を上向きにしたカプリングプラグ9及びカプリングプラグ15を接続したカプリングプラグ部と、前述カプリングプラグ9又はカプリングプラグ15の何れかに嵌合するカプリングソケット1を有するカプリングソケット部からなるカプリング装置において、カプリングソケット1、カプリングプラグ9及びカプリングプラグ15の何れか1つ又は2つ以上の嵌合面に、抜き差し方向に溝形状の空気抜き通路を設けたことを特徴とする液体輸送用チューブのカプリング装置。
【請求項2】
溝形状の空気抜き通路は、溝又は面取り形状の何れかである請求項1に記載の液体輸送用チューブのカプリング装置。
【請求項3】
プラグ本体10もしくはプラグ本体16の抜き差し方向の断面積に対するカプリングプラグ9又はカプリングプラグ15とカプリングソケット1を嵌合した状態におおける溝形状の空気抜き通路の断面積の比率が、0.5%〜15%である請求項1又は請求項2に記載の液体輸送用チューブのカプリング装置。
【請求項4】
プラグ本体10もしくはプラグ本体16の抜き差し方向の断面積に対するカプリングプラグ9又はカプリングプラグ15とカプリングソケット1を嵌合した状態における溝形状の空気抜き通路の断面積の比率が、1%〜6%である請求項3に記載の液体輸送用チューブのカプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−81214(P2012−81214A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239035(P2010−239035)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(592253404)協和ファインテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】