説明

液体金属ループ及び中性子発生装置

【課題】液体金属ループに多くのベローズ13を用いるためコスト高になっていること。
【解決手段】この液体金属ループは、ノズル11と受け部12との間に液体金属を膜状に噴射することで陽子ビームのターゲットを形成するターゲット形成部1と、前記液体金属を循環させるループを構成する配管10とを有する。前記配管10の一部は、前記液体金属の噴射方向に平行に設けられ且つ非伸縮性の配管10のみから構成される。陽子ビームの照射により運転中に温度が上昇し、配管10が熱伸びするところ、前記ターゲット形成部1は液体金属を膜状に噴射して噴流でターゲットを形成するので、前記ノズル11と受け部12との間に構造物がなく、当該ターゲット形成部1により熱伸縮を吸収できる。このため、液体金属の噴射方向の配管10にはベローズ13を設けなくても良いので、製造コストを低減し、メンテナンス作業を削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管によりクエンチタンクや循環ポンプを接続して、液体金属をループ状に循環させる液体金属ループ及び中性子発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来の液体金属ループを示す構成図である。この液体金属ループ900は、陽子ビームを照射して中性子を得るためのターゲット901と、ターゲット901の下流に配置されたクエンチタンク902と、クエンチタンク902に接続された循環ポンプ903と、循環ポンプ903の下流に配置された熱交換器904とを有する。前記ターゲット901は、湾曲したバックプレート905に液体リチウムを遠心力で押しつけ、当該バックプレート905上に液体リチウム膜流を形成する形式のものである。
【0003】
この液体金属ループ900では、前記ターゲット901、循環ポンプ903及び熱交換器904をステンレス製の配管906により接続している。この配管906には、液体リチウムの温度上昇に伴う伸縮を吸収するため、ベローズ907が設けられている。ベローズ907は、各配管906の熱伸縮する方向にそれぞれ設けられる。
【0004】
液体金属ループ900の運転を開始すると、バックプレート905上に液体リチウムが流れ、液体リチウムの膜流が形成される。この液体リチウムに陽子ビームを照射すると液体リチウムの温度が上昇して配管906の温度が上昇する。配管906は温度上昇によって熱伸びを生じるが、各配管906の敷設方向に設けたベローズ907によりその熱伸びが吸収される。なお、従来の液体金属ループ900としては、特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−33600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の液体金属ループ900では、配管906の熱伸縮を吸収するベローズ907を当該配管906に多数設けているため、装置全体のコストが高くなるという問題点があった。また、ベローズ907の寿命が比較的短いため交換等のメンテナンスが必要になるところ、中性子に曝されたベローズ907の交換や処理に多大な手間とコストがかかり、液体金属ループ900の保守費用が嵩んでしまうという問題点があった。この発明はかかる問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る液体金属ループは、少なくともクエンチタンクおよび循環ポンプをループ状に接続し、液体金属を循環させる配管と、循環している液体金属を膜状に陽子ビームの照射空間に噴射してターゲットを形成するノズル及びその受け部とからなり、前記ノズル及び受け部が前記配管に接続されたターゲット形成部と、を有し、前記配管の一部が、前記液体金属の噴射方向に平行に設けられ、且つ、非伸縮性配管のみから構成されることを特徴とする。
【0008】
液体金属ループは、少なくともクエンチタンク、循環ポンプを配管で連結することでループを構成している。液体金属のターゲットに陽子ビームを照射すると循環する液体金属の温度が上昇し、非伸縮性配管が熱伸びする。この非伸縮性配管は、ベローズを設けていない通常の配管を意味するものとする。ここで、前記ターゲット形成部は陽子ビームの照射空間に液体金属を膜状に噴射して噴流でターゲットを形成しており、前記ノズルと受け部との間に構造物がないので、ノズルと受け部との間隔の変動をもって前記配管の熱伸縮を吸収できる。このため、液体金属の噴射方向の配管にはベローズを設けなくても良くなるので、製造コストを低減し、メンテナンス作業を削減できる。
【0009】
第2の発明に係る液体金属ループは、少なくともクエンチタンクおよび循環ポンプをループ状に接続し、液体金属を循環させる配管と、循環している液体金属を膜状に陽子ビームの照射空間に噴射してターゲットを形成するノズル及びその受け部とからなり、前記ノズル及び受け部が前記配管に接続されたターゲット形成部と、を有し、当該配管が、X:前記液体金属の噴射方向、Y:ターゲット形成部の受け部の幅方向、Z:ターゲット形成部の受け部の高さ方向、のXYZ軸方向に配置され、これらのうち少なくとも2軸方向の配管を前記非伸縮性配管のみで構成し、当該非伸縮性配管の合計の熱伸縮の量が、前記ターゲット形成部の受け部の幅W又は高さHの寸法と、前記形成されるターゲットの膜幅Tw又は膜厚Ttとの寸法の差(W−Tw、H−Tt)より小さいことを特徴とする。
【0010】
X軸方向(噴射方向)の配管の熱伸縮の吸収については、上記同様である。Y軸及びZ軸方向では、前記受け部をターゲットの膜幅Tw、膜厚Ttより大きな寸法、換言すれば、非伸縮性の配管の合計の熱伸縮の量(配管系統における非伸縮性配管が固定された基準位置からの変位の絶対値の合計量)が前記ターゲット形成部の受け部の幅W又は高さHの寸法と、前記形成されるターゲットの膜幅Tw又は膜厚Ttとの寸法の差(W−Tw、H−Tt)より小さくなるようにすることで、当該膜幅Tw又は膜厚Tt方向の熱伸びを吸収できるようになる。即ち、ノズルと受け部との相対位置がY又はZ軸方向にずれたとしても、受け部により液体リチウムの噴流を受けることができ、ターゲットは維持される。
【0011】
第3の発明に係る液体金属ループは、少なくともクエンチタンクおよび循環ポンプをループ状に接続し、液体金属を循環させる配管と、液体金属の膜流を形成するバックウォールに連続形成した流路部を、前記クエンチタンクの液体金属の導入口に設けた配管にスライド可能に挿入し、且つ、前記配管に接続されたターゲット形成部と、を有し、前記流路部に平行な方向の配管を非伸縮性配管のみから構成することを特徴とする。
【0012】
即ち、クエンチタンクの配管とターゲット形成部の流路部とをスライド可能に挿入されているので、非伸縮性配管の熱伸縮を吸収できる。このため、液体金属の噴射方向の配管にはベローズを設けなくても良くなるから、製造コストを低減し、メンテナンス作業を削減できる。
【0013】
第4の発明に係る液体金属ループは、上記発明において、更に、前記配管を支持した状態で熱伸縮方向にスライドさせるスライド支持手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
第5の発明に係る液体金属ループは、上記発明において、更に、前記スライド支持手段は、XYZ軸方向のうち2軸方向にスライド可能な構造であることを特徴とする。
【0015】
第6の発明に係る液体金属ループは、上記発明において、更に、前記スライド支持手段は、一つの軸方向の熱伸縮によるスライド量を他の軸方向の伸縮に対応するスライド量に変換することを特徴とする。
【0016】
第7の発明に係る中性子発生装置は、上記のいずれか一つに記載の液体金属ループを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる液体金属ループを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1にかかる液体金属ループを示す構成図である。
【図3】図2に示した液体金属ループのスライド支持部の構成例を示す説明図である。
【図4】ノズルとターゲットとの寸法関係を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1にかかる液体金属ループを示す構成図である。
【図6】図5に示した液体金属ループのスライド支持部の構成例を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態4にかかる液体金属ループに用いるスライド支持部の一例を示す説明図である。
【図8】天井又は梁から配管を吊るす場合のスライド支持部を示す説明図である。
【図9】スライド支持部の別の例を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係る液体金属ループの一部を示す構成図である。
【図11】従来の液体金属ループを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる液体金属ループを示す構成図である。この液体金属ループ100は、液体リチウムのターゲットTを形成するターゲット形成部1と、ターゲット形成部1から配管10を通して接続されたクエンチタンク2と、クエンチタンク2から延出した配管10に接続した循環ポンプ3と、循環ポンプ3から延出した配管10に接続した熱交換器4とを有し、熱交換器4から延出した配管10は再びターゲット形成部1に接続される。
【0019】
このターゲット形成部1は、陽子ビームの照射領域を横切るように液体リチウムを平面的に噴射するノズル11と、噴射された液体リチウムを受ける受け部12とから構成される。ノズル11には、先端に短冊形状の吐出口が形成される。この吐出口から高圧で噴射された液体リチウムは、膜状の噴流となる。噴流となった液体リチウムは受け部12により緩衝される。
【0020】
前記液体金属ループ100を構成する配管10の配置方向を次のように区分する。
X:前記液体リチウムの噴射方向
Y:ターゲット形成部1の受け部12の幅方向
Z:ターゲット形成部1の受け部12の高さ方向
【0021】
X軸方向は、ターゲット形成部1の液体リチウムの噴射方向であり、このX軸方向に配置される配管10xを、非伸縮性配管のみで構成する。非伸縮性配管とは、ベローズ13を持たない配管10をいい、係る配管同士を接続した連結配管も含む。伸縮性配管とは、配管10にベローズ13を設けて熱伸縮を吸収可能にした配管をいい、当該伸縮性配管に接続した通常の配管10も含む。
【0022】
前記Y軸方向およびZ軸方向の配管10y,10zについては伸縮性配管により構成するものとする。
【0023】
ターゲット形成部1のノズル11は、スライド支持部20により支持されている。液体金属ループ100の使用状態における配管10の熱伸縮は、長さ等の規模によるが大凡3mm〜10mm程度の範囲にある。このため、スライド支持部20は、ターゲット形成部1を液体リチウムの噴射方向に当該範囲においてスライド支持出来ればよい。例えば、スライド支持部20は、摺動面を有するベッドに載せたコラム上にノズル11を設置できる構造にしても良い。また、ベッド上に設けたリニアガイドによりコラムを直動可能に支持し、このコラム上にノズル11を設置できる構造にしても良い。これらの他、ノズル11を直動可能に支持できるような周知構造を採用できる。ターゲット形成部1の受け部12についても上記同様のスライド支持部20により支持できる。
【0024】
熱交換器4も上記スライド支持部20と同様のスライド支持部21により支持される。なお、配管10を支持するスライド支持部22は、熱伸縮を吸収できる簡易な構造の支持手段とする(スライド支持部22の例は後述する)。
【0025】
次に、この液体金属ループ100の動きについて説明する。循環ポンプ3を運転して液体リチウムをターゲット形成部1のノズル11に供給することで、当該ノズル11から液体リチウムが膜状に噴出する。この膜状の液体リチウムのターゲットTに陽子ビームを照射するとその背後に中性子が生成される。陽子ビームの照射により加熱された液体リチウムは受け部12から入って配管10内を循環するので、運転開始後から次第に配管10の温度が上昇し、配管10が熱伸びを起こす。
【0026】
X軸方向の配管10xは、配管10xが非伸縮性配管で構成されているため、配管10xの熱伸びに従いターゲット形成部1が微小移動する。ターゲット形成部1は、ノズル11及び受け部12がスライド支持部20により微小スライド可能に支持されていることから、配管10xの熱伸びに従って移動する。ここで、ターゲット形成部1は、ノズル11と受け部12との間に液体リチウムの噴流を飛ばしてターゲットTを形成するものであり、従来のように湾曲したバックウォールに液膜を形成する構成ではないので、当該ノズル11と受け部12との間に構造物がない。
【0027】
このため、ノズル11と受け部12との間隔が微小に変わっても、陽子ビームの照射範囲が変わらなければ何ら問題ない。よって、X軸方向における受け部12とクエンチタンク2との間の配管10xの長さと、ノズル11と熱交換器4との間の配管10xの長さとが異なる結果、前記ノズル11と受け部12との移動量が異なるものとなっても、ターゲット形成部1で当該移動量を吸収できる。熱交換器4も、X軸方向の配管10xの熱伸びに応じてスライド支持部21によりスライドして当該熱伸びを吸収する。
【0028】
また、受け部12とクエンチタンク2との間の配管10xを伸縮性配管とした場合でも、ノズル11が移動してノズル11と熱交換器4との間の熱伸縮を吸収する。一方、ノズル11と熱交換器4との間の配管10xを伸縮性配管とした場合でも、受け部12が移動して受け部12とクエンチタンク2との間の熱伸縮を吸収する。
【0029】
一方、Y軸方向及びZ軸方向の配管10y,10zは、伸縮性配管により構成されているので、その熱伸縮は伸縮性配管に設けたベローズ13によって吸収される。
【0030】
以上、この発明の液体金属ループ100によれば、X軸方向(液体リチウムの噴射方向)に平行となる配管10xを非伸縮性配管とし、この非伸縮性配管の熱伸びをターゲット形成部1により吸収するので、ベローズ13の数を少なくできる。このため、液体金属ループ100のコストを低減できる。また、ベローズ13は性能維持のため定期的に交換する必要があり、中性子に曝された液体リチウムが内部循環するものであることから、交換作業や後処理に多大なコストがかかっていたが、このようなベローズ13の数が減ることにより、メンテナンス作業が簡略化され、液体金属ループ100の保守費用を低減できる。
【0031】
更に、通常の大型の液体金属ループでは、ループを構成する配管の曲げを多くとることで熱伸びを吸収するように設計するが、液体金属ループをコンパクト化する場合、配管の曲げによる熱伸びの吸収は困難となる。本発明の液体金属ループ100は、曲げが少なく配管長が短い液体金属ループの構造に好適である。
【0032】
(実施の形態2)
図2は、この発明の実施の形態2に係る液体金属ループを示す構成図である。この液体金属ループ200は、実施の形態1の液体金属ループ100において、更にZ軸方向の配管10zの熱伸びを吸収するようにした点に特徴がある。その他の構成は実施の形態1と同様であるからその説明を省略し、同一構成要素には同一符合を付する。
【0033】
この液体金属ループ200では、X軸方向及びZ軸方向に配置される配管10x,10zを、非伸縮性配管のみで構成する。また、ターゲット形成部1の受け部12は、図3に示すように、膜状の噴流として形成されるターゲットTの膜厚Ttさより大きな高さH(短辺方向の長さ)を有する。そして、Z軸方向の非伸縮性配管の合計の熱伸縮の量(配管系統における非伸縮性配管が固定された基準位置からの変位の絶対値の合計量)が、前記ターゲット形成部1の受け部12の高さHの寸法と、前記形成されるターゲットTの膜厚Ttとの寸法の差より小さいものとする。好ましくは、前記寸法の差の半分より小さいものとする。なお、前記固定された基準位置は、例えばクエンチタンク2が固定構造となる場合、Z軸方向におけるクエンチタンク2の非伸縮性配管の固定位置となる。
【0034】
また、ノズル11及び受け部12は、スライド支持部23で支持するのが好ましい。液体金属ループ200に用いるスライド支持部23は、Z軸方向にノズル11又は受け部12が移動してもこれらを支持できるように、X軸方向の移動に従って上下動する構成とする。換言すれば、X軸方向の熱伸縮によるスライド量をZ軸方向の伸縮に相当するスライド量に変換する構成とする。図4は、そのようなスライド支持部を示す説明図であり、(a)は液体金属ループの運転前、(b)は運転中の状態を示す。このスライド支持部23は、摺動面を有するベッド231に載せたコラム232上にノズル11を設置し、前記ベッド231を所定角度にセットすることで実現できる。
【0035】
前記スライド支持部23を構成するにあたっては、X軸方向における温度に対応する熱伸び量と、当該温度に対応するZ軸方向の配管10zの熱伸び量とを求め、X軸方向とZ軸方向との熱伸び量の関係を導く。そして、X軸方向の移動に対してどの程度Z軸方向の移動を行えばよいかを求め、前記ベッド231の上面を傾ける。そうすれば、温度上昇によるX軸方向の水平移動に伴い、コラム232がZ軸方向に所定量だけ上下動(Δz)し、XZ方向の2軸変位があっても前記ノズル11又は受け部12を支持できる。なお、前記のように温度上昇によるX軸方向の水平移動に伴い、コラムがZ軸方向に所定量だけ上下動することができれば、スライド支持部23は係る構成に限定されない。
【0036】
この液体金属ループ200では、X軸方向の配管10xの熱伸びに関する挙動は上記実施の形態1と同じである。Z軸方向の配管10zの熱伸びでは、上記同様に、当該配管10zが非伸縮性配管で構成されているため、配管10の熱伸びに従いターゲット形成部1が微小移動する。ターゲット形成部1は、X軸方向の伸縮に基づくノズル11又は受け部12の移動により、Z軸方向にも移動する。この移動量はZ軸方向の配管10zの熱伸びに対応した量である。
【0037】
Z軸方向における受け部12とクエンチタンク2との間の配管10zの長さと、ノズル11と熱交換器4との間の配管10zの長さとが異なる結果、前記ノズル11と受け部12との移動量が異なる。ここで、Z軸方向の非伸縮性配管の合計の熱伸縮の量は、前記ターゲット形成部1の受け部12の高さHの寸法と、前記形成されるターゲットの膜厚Ttとの寸法の差より小さく設定されているので、Z軸方向の熱伸縮は、ターゲット形成部1で吸収できる。即ち、ノズル11と受け部12との相対位置がZ軸方向にずれたとしても、受け部12により液体リチウムの噴流を受けることができ、ターゲットTを維持できる。
【0038】
また、ノズル11及び受け部12は、上記スライド支持部23により支持され、X軸方向の熱伸びに対応してZ軸方向に上下動するようになっているので、上記のノズル11と受け部12との相対位置のZ軸方向のずれ量は、小さく抑えられる。
【0039】
以上の液体金属ループ200によれば、X軸方向及びZ軸方向の配管10x,10zを非伸縮性配管とし、この非伸縮性配管の熱伸びをターゲット形成部1により吸収するので、ベローズ13の数をより少なくできる。このため、液体金属ループ200のコストを大幅に低減できる。また、ベローズ13の数が大幅に減ることにより、メンテナンス作業が簡略化され、保守費用を大きく低減できるようになる。
【0040】
(実施の形態3)
図5は、この発明の実施の形態3に係る液体金属ループを示す構成図である。この液体金属ループ300は、実施の形態2の液体金属ループ200において、更にY軸方向の配管10yの熱伸びを吸収するようにした点に特徴がある。その他の構成は実施の形態2と同様であるからその説明を省略し、同一構成要素には同一符合を付する。
【0041】
この液体金属ループ300では、XYZ軸方向に配置される配管10x,10y,10zを、非伸縮性配管のみで構成する。また、ターゲット形成部1の受け部12は、膜状の噴流として形成されるターゲットTの膜幅Twより大きな幅(長辺方向の長さ)を有する。そして、Y軸方向の非伸縮性配管の合計の熱伸縮の量(配管系統における非伸縮性配管が固定された基準位置からの変位の絶対値の合計量)が、前記ターゲット形成部1の受け部12の幅Wの寸法と前記形成されるターゲットTの膜幅Twとの寸法の差より小さいものとする。好ましくは、前記寸法の差の半分より小さいものとする。なお、前記固定された基準位置は、例えばクエンチタンク2が固定構造となる場合、Y軸方向におけるクエンチタンク2の非伸縮性配管の固定位置となる。
【0042】
スライド支持部24には、図6に示すようなものを用いるのが好ましい。スライド支持部24は、Y軸方向にノズル11又は受け部12が移動してもこれらを支持できるように、図6のスライド支持部231のコラム232に、当該コラム232の移動方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向)に移動可能な第二コラム233を載せた構成とする。
【0043】
この液体金属ループ300では、X軸方向及びZ軸方向の配管10x,10zの熱伸びに関する挙動は上記実施の形態2と同じである。Y軸方向の配管10yの熱伸びでは、上記同様に、配管10が非伸縮性配管で構成されているため、配管10の熱伸びに従いターゲット形成部1が微小移動する。
【0044】
Y軸方向における受け部12とクエンチタンク2との間の配管10yの長さと、ノズル11と熱交換器4との間の配管10yの長さとが異なる結果、前記ノズル11と受け部12との移動量が異なるものとなる。ここで、Y軸方向の非伸縮性配管の合計の熱伸縮の量は、前記ターゲット形成部1の受け部12の幅Wの寸法と前記形成されるターゲットの膜幅Twとの寸法の差より小さく設定されているので、Y軸方向の熱伸縮は、ターゲット形成部1で吸収できる。即ち、ノズル11と受け部12との相対位置がY軸方向にずれたとしても、受け部12により液体リチウムの噴流を受けることができ、ターゲットを維持できる。
【0045】
以上の液体金属ループ300によれば、XYZ軸方向の配管10を非伸縮性配管とし、この非伸縮性配管の熱伸びをターゲット形成部1により吸収するので、ベローズ13の数をより大幅に少なくできる。このため、液体金属ループ300のコストを大幅に低減できる。また、ベローズ13の数が大幅に減ることにより、メンテナンス作業が簡略化され、保守費用を低減できるようになる。
【0046】
なお、上記実施の形態1〜3では、説明の便宜のため、クエンチタンク2を配管10z上に、循環ポンプ3を配管10y上に、熱交換器4を配管10x上に配置した例を示したが、これに限定されるものではない。また、配管10は略XYZ軸方向に配置されることが多いが全ての配管がXYZ軸方向に配置されるとは限らない。その場合、各配管10をXYZ軸方向の成分に分解して、上記実施の形態を適用するものとする。また、実際の液体金属ループでは、クエンチタンク2のような大型構造物は固定した状態になる。例えば、クエンチタンク2と循環ポンプ3とが固定構造となる場合、その間の配管10にはベローズ13が設けられる場合がある。
【0047】
(実施の形態4)
図7は、この発明の実施の形態4にかかる液体金属ループに用いるスライド支持部の一例を示す説明図であり、(a)は配管の径方向断面図、(b)は配管の軸方向の側面図である。このスライド支持部22は、配管10を支持するものであり、配管10を把持する筒状体を軸方向に分割した構造の把持部221と、把持部221を支持する支持プレート222と、支持プレート222の下部に設けたスライド板223と、スライド板223を直動ガイドするガイド部224とからなる。配管10が熱伸びを起こすと把持部221がスライド板223ごとガイド部224に沿ってスライドする。このため、熱伸びする配管10をスライドしながら支持できる。
【0048】
また、図8は、天井又は梁から配管を吊るす場合のスライド支持部を示す説明図である。このスライド支持部26は、配管10を吊るして支持するものであり、配管10を把持する筒状体を軸方向に分割した構造の把持部261と、把持部261を支持する支持棒262と、支持棒262の上端に設けた上下動すると共に配管10の軸方向に回動するスプリングハンガー263とからなる。配管10が熱伸びを起こすと把持部261が移動し、この移動はスプリングハンガー263により吸収される。また、配管10が鉛直方向に上下動する場合もスプリングハンガー263によりその上下動を吸収できる。また、スプリングハンガー263は軸支部264にて天井又は梁に回動可能に軸支されている。このように、スライド支持部26により3軸方向にスライド可能であるため、上記実施の形態2,3におけるスライド支持部22,23として用いることができる。
【0049】
図9は、スライド支持部の別の例を示す構成図であり、(a)は配管の軸方向の側面図、(b)は配管の径方向断面図である。このスライド支持部27は、配管10の周囲に向けた筒状体を軸方向に2分割した第一磁石271と、この第一磁石271に反発する磁力を生じさせる筒状体を軸方向に2分割した第二磁石272と、第二磁石272を内面に設けた筒状の支持部本体273と、支持部本体273を支持する支持部274と、配管10の一部に設けた移動量規制部275とから構成される。配管10は、このスライド支持部27の軸方向中心を貫通する。第一磁石271及び第二磁石272は、永久磁石であるが、いずれか一方又は両方が電磁石であっても良い。
【0050】
配管10は、第一磁石271及び第二磁石272の間に生じる反発力により、浮上した状態で支持される。この状態で配管10が熱伸びを起こすと、当該配管10は磁力により支持された状態で軸方向に移動する。係るスライド支持部27の場合、磁力で配管10を支持するので、配管10の熱をスライド支持部27で遮断できる。また、第一磁石271及び第二磁石272の空隙により3軸方向に微小移動可能である。このため、上記実施の形態1〜3におけるスライド支持部20,22,23として用いることができる。
【0051】
(実施の形態5)
図10は、この発明の実施の形態5に係る液体金属ループの一部を示す構成図である。この液体金属ループ500は、上記実施の形態1〜4のターゲット形成部1に代えてバックウォール上に液体金属の膜流を形成する構成とした点が異なる。その他の構成は、上記実施の形態1〜4と同じであるからその説明を省略する。ターゲット形成部501のバックウォール15は平面形状でも湾曲形状でも良い。このバックウォール15から連続形成されている略直線状の流路部16は、クエンチタンク2のタンク本体の側面に設けられる配管17に対してスライド可能に遊挿される。配管17はクエンチタンク2の液体金属の導入口18に設けられる。
【0052】
また、前記ターゲット形成部501は、スライド支持部20,22,23によりスライド可能に支持されている。前記流路部16に平行なX軸方向の配管10xは、非伸縮性配管により構成されている。
【0053】
バックウォール15上に流された液体金属は、前記流路部16から配管17に至り、クエンチタンク2に導入される。また、ターゲットに陽子ビームを照射することで配管10内の液体金属の温度が上昇して、配管10が熱伸びする。この熱伸びによりターゲット形成部501が移動し、その移動量は前記流路部16と配管17との間で吸収される。このようにすれば、流路部16と平行となる配管10xを非伸縮性配管のみで構成できるので、ループ上のベローズ13の数を少なくでき、コストを低減できる。
【0054】
また、Y、Z方向を非伸縮性配管のみから構成する場合、流路部16と配管17との取り合いにY軸方向及びZ軸方向の伸びより大きな空隙を設けておくことで、Y軸方向およびZ軸方向の熱伸びを吸収できる。
【0055】
また、上記液体金属ループ100〜500を用いて構成した中性子発生装置は、配管10構造が簡単で且つ保守費用が安価なものとなる。
【符号の説明】
【0056】
100 液体金属ループ
1 ターゲット形成部
2 クエンチタンク
3 循環ポンプ
4 熱交換器
10 配管
11 ノズル
12 受け部
20 スライド支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともクエンチタンクおよび循環ポンプをループ状に接続し、液体金属を循環させる配管と、
循環している液体金属を膜状に陽子ビームの照射空間に噴射してターゲットを形成するノズル及びその受け部とからなり、前記ノズル及び受け部が前記配管に接続されたターゲット形成部と、を有し、
前記配管の一部が、前記液体金属の噴射方向に平行に設けられ、且つ、非伸縮性配管のみから構成されることを特徴とする液体金属ループ。
【請求項2】
少なくともクエンチタンクおよび循環ポンプをループ状に接続し、液体金属を循環させる配管と、
循環している液体金属を膜状に陽子ビームの照射空間に噴射してターゲットを形成するノズル及びその受け部とからなり、前記ノズル及び受け部が前記配管に接続されたターゲット形成部と、を有し、
当該配管が、
X:前記液体金属の噴射方向
Y:ターゲット形成部の受け部の幅方向
Z:ターゲット形成部の受け部の高さ方向
のXYZ軸方向に配置され、これらのうち少なくとも2軸方向の配管を前記非伸縮性配管のみで構成し、
当該非伸縮性配管の合計の熱伸縮の量が、前記ターゲット形成部の受け部の幅又は高さの寸法と、前記形成されるターゲットの膜幅又は膜厚との寸法の差より小さいことを特徴とする液体金属ループ。
【請求項3】
少なくともクエンチタンクおよび循環ポンプをループ状に接続し、液体金属を循環させる配管と、
液体金属の膜流を形成するバックウォールに連続形成した流路部を、前記クエンチタンクの液体金属の導入口に設けた配管にスライド可能に挿入し、且つ、前記配管に接続されたターゲット形成部と、を有し、
前記流路部に平行な方向の配管を非伸縮性配管のみから構成することを特徴とする液体金属ループ。
【請求項4】
更に、前記配管を支持した状態で熱伸縮方向にスライドさせるスライド支持手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の液体金属ループ。
【請求項5】
前記スライド支持手段は、XYZ軸方向のうち2軸方向にスライド可能な構造であることを特徴とする請求項4に記載の液体金属ループ。
【請求項6】
更に、前記スライド支持手段は、一つの軸方向の熱伸縮によるスライド量を他の軸方向の伸縮に対応するスライド量に変換することを特徴とする請求項5に記載の液体金属ループ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の液体金属ループを有することを特徴とする中性子発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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