説明

液体霧化装置および液体霧化方法

【解決課題】従来技術の微細化原理とは異なる新規原理を用いて、かつ簡単な装置構成で液体を霧化可能な液体霧化装置を提供することを目的とする。
【課題解決手段】気体を噴射する第1気体噴射部および第2気体噴射部と、液体を噴射する液体噴射部とを備え、前記第1気体噴射部の噴射方向軸と前記第2気体噴射部の噴射方向軸とが45°から220°の角度範囲を形成し、当該第1、第2気体噴射部から噴射した気体同士を前記液体噴射部の先端より前方で衝突させて形成した衝突部または当該衝突部を含む部分と、前記液体噴射部で噴射した液体とを衝突させて当該液体を霧化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を霧化するための液体霧化装置および液体霧化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の霧化技術として、気液混合式(二流体式)、超音波式、超高圧式(100MPa〜300MPa)、蒸発式等がある。一般的な二流体ノズルは、気体と液体とを同一噴射方向で噴射させて気液の随伴流によるせん断効果で液体を微細化する。
【0003】
また、気液混合式二流体ノズルの一例として、微粒子ミストを生成するための噴霧ノズル装置が知られている(特許文献1)。この噴霧ノズル装置は、第1ノズル部と第2ノズル部を有し、第1ノズル部からの噴霧液と第2ノズル部からの噴霧液とを衝突させて、微粒子ミストを形成することができる。しかしながら、2流体ノズル部を2つ備えるため、コスト高であり、また小型化には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−126587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の従来技術の微細化原理とは異なる新規原理を用いて、かつ簡単な装置構成で液体を霧化可能な液体霧化装置および液体霧化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体霧化装置は、気体を噴射する気体噴射部を少なくとも2つと、液体を噴射する液体噴射部とを備え、前記少なくとも2つの気体噴射部から噴射した気体同士を衝突させて形成した衝突部または当該衝突部を含む部分と、前記液体噴射部で噴射した液体とを衝突させて当該液体を霧化する。
【0007】
この構成の作用効果を図1を参照しながら説明する。少なくとも2つの気体噴射部1、2から噴射した気体同士11、21を衝突させて衝突部100を形成する。この衝突部100を含む部分を衝突壁101とする(図1(a))。液体噴射部6から噴射された液体61は、この衝突部100または衝突壁101に衝突する(図1(b))。衝突部100または衝突壁101に液体61が衝突することで、液体61が粉砕(霧化)され霧化体62となる。また、液体噴射手段から噴射した液体に対し、少なくとも2つの気体噴射部から噴射した気体同士を衝突させることで、噴射された液体と気体同士で形成された衝突部または衝突壁とを衝突させることができ、これによって、液体を霧化できる。
【0008】
本発明の液体霧化装置によれば、気体同士の衝突部または衝突壁と、液体とを衝突させて衝突粉砕することで、低圧力(低気体圧、低液体圧)、低流量(低気体流量、低液体流量)、低エネルギーで効率的に霧化することができる。また、従来の二流体ノズルに比べ、低気液体積比(または気液比)で霧化することができる。また、従来の二流体ノズルに比べ、本発明の液体霧化装置は低騒音である。また、本発明の液体霧化装置の構造をシンプルにできる。
【0009】
気体噴射部から噴射される気体の圧力、流量は、特に制限されないが、本発明の霧化原理によって、低気体圧力、低気体流量で、液体を好適に霧化できる。また、衝突部および衝突壁を構成することになる気体同士の圧力は、同じまたは略同じに設定することが好ましく、衝突部および衝突壁を構成することになる気体同士の流量も、同じまたは略同じに設定することが好ましい。また、気体噴射部から噴射される気体の断面形状は、特に制限されず、例えば、円状、楕円状、矩形状、多角形状が挙げられる。また、衝突部および衝突壁を構成する気体同士の断面形状は、同一または略同一であることが好ましい。衝突部が変形、サイズ縮小等することを抑制することで、一定の形状、一定サイズの衝突部を維持して、安定した噴霧量で粒子径変動の少ない霧化体を生成するのに好ましい。
【0010】
液体噴射部から噴射される液体の圧力、流量は、特に制限されないが、本発明の霧化原理によって、低圧力、低流量の液体を好適に霧化できる。また、液体噴射部の圧力は、一般的は水道配管の水圧でもよく、液体噴射部は、液体を自然落下させる装置であってもよい。本発明において、「液体噴射部で噴射した液体」には、自然落下速度で落下する液体も「噴射した液体」に含まれる。
【0011】
噴射された液体と、気体同士の衝突部または衝突壁とを衝突させる場合に、衝突部または衝突壁より液体の衝突断面積が小さいことが好ましい。気体の衝突部または衝突壁よりも噴射された液体の噴射断面が大きいと、液体の一部が衝突部または衝突壁に衝突せずに霧化されないため好ましくない。なお、実施形態の一例として、液体の一部を霧化させたい場合には、液体の噴射断面を気体の衝突部または衝突壁より大きくしてもよく、また、噴射された液体の一部が衝突部または衝突壁に衝突するように液体噴射部と気体噴射部の相対的配置を設定してもよい。
【0012】
液体噴射部のオリフィス径が、気体噴射部のオリフィス径よりも小さいことが好ましい。これによって、気体の衝突壁より液体の衝突断面積を小さくできる。
【0013】
液体噴射部と気体噴射部の相対的配置例を図3参照して説明する。この相対的配置によって、気液衝突位置が規定される。図3の(a)の配置は、気体噴射部1、2が対向配置され、液体噴射部6のノズル先端が気体噴射部1,2の両ノズル先端外側面部分に接触している。(b)の配置は、気体噴射部1、2が対向配置され、気体噴射部1,2の両ノズル先端と液体噴射部6のノズル先端部とが接触している。(b)の配置は(a)の配置よりも、噴射される液体流量が多く、かつ逆流も小さい傾向となる。(c)の配置は、気体噴射部1、2の両ノズル先端間に、液体噴射部6のノズルが入り込んだ配置である。(d)の配置は、(b)の配置と比較して、気体噴射部1,2の両ノズルの間隔が、(b)のそれよりも大きい配置である。(e)の配置は、(b)の配置と比較して、液体噴射部6が衝突壁から遠ざかった配置である。図3において、気体噴射部を2つ配置するものとして説明したが、2つに制限されず、3つ、4つ、それ以上でもよい(図2B参照)。また、液体噴射部は1つを例示しているが、液体噴射部は2つ以上であってもよく、図3(f)では、液体噴射部は2つ配置されている。
【0014】
上記霧化体は、気体の衝突部から排出される排出気体流とともに噴霧される。この排出気体流によって噴霧パターンが形成される。噴霧パターンとして、例えば、2つの噴射された気体の衝突で形成された衝突部と液体とが衝突した場合には、液体噴射方向と同じ方向に、幅広の扇状に形成され、その断面形状は楕円状または長円状(図2A(a)、(b)参照)となる。また、それぞれ90°の角度配置で4方向から4つの気体を噴射して1箇所に衝突部を形成した場合には、液体噴射方向と同じ方向に、噴霧パターンは錐状または柱状に形成され、その断面形状は略円状となる(図2B(a)、(b)参照)。
【0015】
上記発明の一実施形態として、第1気体噴射部の噴射方向軸と第2気体噴射部の噴射方向軸とが所定の角度範囲を形成することが好ましい。第1気体噴射部1および第2気体噴射部2のそれぞれの噴射方向軸で形成される「所定の角度範囲」は、第1気体噴射部1から噴射された気体と第2気体噴射部2から噴射された気体の衝突角に相当し、「所定の角度範囲(衝突角)」は10°〜350°であり、好ましくは45°〜220°であり、より好ましくは130°〜200°であり、さらに好ましくは140°〜190°である。図4に衝突角αを示す。180°より小さい衝突角を形成している衝突部に対して液体を噴射させた場合に、この衝突角の角度が小さいほど、従来の二流体ノズルの原理(気体と液体とを同一噴射方向で噴射させて気液の随伴流によるせん断効果で液体を微細化する)に類似するため、本発明の上記微細化原理の効果が低くなる傾向になるが、一方で、衝突角の角度が小さいほど、噴射された液体の逆流が抑えられる傾向である。また、180°より大きい衝突角を形成している衝突部に対して液体を噴射させた場合に、衝突角の角度が大きいほど、噴射された気体および衝突して広がった気体が、噴射された液体を押し戻すように作用して液体を逆流させてしまう傾向である。なお、図4において、液体噴射部6のノズル先端が、気体噴射部1,2の両ノズル先端と接触しているが、これに制限されず、液体噴射部6のノズル先端位置が、気体噴射部1,2の両ノズル間に配置させていてもよく、図4の配置よりも気体噴射部1,2から距離を置いて配置されていてもよい。
【0016】
上記発明の一実施形態として、第1気体噴射部の噴射方向と第2気体噴射部の噴射方向とが対向し、第1気体噴射部の噴射方向軸と第2気体噴射部の噴射方向軸とが一致していることが好ましい。これは、第1気体噴射部から噴射された気体と第2気体噴射部から噴射された気体の衝突角αが180°であって、噴射方向軸が一致していることを意味する。
【0017】
上記発明の一実施形態として、前記液体噴射部は、前記衝突部に対して、前記液体の噴射方向軸が直交するように液体を噴射することが好ましい。図1(b)は、衝突部100および衝突壁101に対して液体の噴射方向軸が直交する例を示している。他の実施形態例として、図5に示すように、衝突部100および衝突壁101に対して液体の噴射方向軸が傾いている例を示す。この傾き角βとしては、0°(直交位置)から±80°の範囲、好ましくは0°から±45°、より好ましくは0°から±30°、さらに好ましくは0°から±15°の範囲である。傾き角βが小さくなるほど、霧化体の生成効率が高い傾向となる。
【0018】
上記発明の一実施形態として、前記液体噴射部からの液体噴射方向に向かって、前記気体噴射部と段違いに配置される補助気体噴射部をさらに備える構成がある。これによって、衝突部または衝突部を含む部分(衝突壁)に液体を衝突させて得られた霧化体において、各噴射部のオリフィス径や噴射圧条件が原因で、または噴霧パターンが広角に広がり過ぎて噴霧出口に接触する等の原因で飛沫(粒子径の粗い微粒子)が発生する場合に、第1、第2補助気体によってこの飛沫発生を好適に抑制することができる。
【0019】
上記発明の一実施形態として、前記液体が連続流、間欠流またはインパルス流の液体であることが好ましい。連続流は、例えば、柱状の液体流である。間欠流は、例えば、所定間隔で噴射する液体流である。インパルス流は、例えば、所定のタイミングで瞬間的に噴射する液体流である。液体供給装置等で、液体の噴射方法を自在に制御することで、霧化タイミング、霧化体の噴霧量を自在に制御することができる。
【0020】
上記発明の一実施形態として、前記液体が微細化された液体である。液体噴射部から噴射される液体として、微細化された液微粒子を用いることができ、液微粒子としては、例えば、二流体ノズル装置、超音波装置、超高圧噴霧装置、蒸発式噴霧装置等で微細化された液微粒子が挙げられる。
【0021】
上記発明の一実施形態として、前記衝突部を含む部分と前記液体噴射部で噴射した液体とを衝突させて液体を霧化した霧化体の噴霧パターンのパターン形状を変形させる気体を噴射する規制用気体噴射部をさらに備える。これによって、噴霧パターンのパターン形状を自在に変形することができる。また、広角の噴霧パターンを変形させて角度の小さい噴霧パターンにすることで、霧化体が各気体噴射部、液体噴射部のノズル部に接触して液滴に成長することを抑制することができる。また、規制用気体噴射部から噴射する気体の噴射量および/または噴射速度を、気体噴射部から噴射する気体の噴射量および/または噴射速度よりも小さく設定することが好ましい。
【0022】
例えば、噴射方向が対向するように配置された第1気体噴射部と第2気体噴射部とで形成された衝突部を含む部分に前記液体噴射部で噴射した液体を衝突させて霧化した霧化体の噴霧パターンが、広角でかつパターン断面が楕円状または長円状である場合に、噴霧パターンの角度が小さくなるように、気体の衝突部を含む部分または生成された霧化体に向かって規制用気体噴射部から気体を噴射する。これによって、噴霧パターンを変形(規制)することができる。図6に示す規制用気体噴射部71,72の気体オリフィス断面積は、気体噴射部1,2の気体オリフィス断面積よりも小さくしてあり、霧化体62の噴霧パターンの角度を調整している。規制用気体噴射部71、72は、図6に示すように、気体噴射部1,2と直角に配置されているが、特にこの配置に限定されない。また、気体の衝突部を含む衝突壁に規制用気体噴射部から噴射した気体が直交するように衝突させているが、特にこれに限定されず、図6(c)に示すように規制用気体噴射部が傾いて配置されていてもよい。
【0023】
また、他の本発明は液体霧化方法であって、少なくとも2つの気体同士を衝突させて形成した衝突部または当該衝突部を含む部分と、液体とを衝突させて当該液体を霧化する。気体同士の衝突部または衝突壁と液体とを衝突させて衝突粉砕することで、低圧力(低気体圧、低液体圧)、低流量(低気体流量、低液体流量)、低エネルギーで効率的に霧化することができ、また、低気液比で霧化することができる。
【0024】
上記気体としては、特に制限されないが、例えば、空気、清浄空気(クリーンエア)、窒素、不活性ガス、燃料混合エア、酸素等が挙げられ、使用目的に応じて適宜設定可能である。
【0025】
上記液体としては、特に制限されないが、例えば、水、イオン化水、化粧水等の化粧薬液、医薬液、殺菌液、除菌液等の薬液、塗料、燃料油、コーティング剤、溶剤、樹脂等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図2A】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図2B】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図3】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図4】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図5】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図6】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図7】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図8】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図9】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図10】水圧と噴霧量の関係例を示す図である。
【図11】噴霧量と平均粒子径の関係例を示す図である。
【図12】噴霧距離と平均粒子径の関係例を示す図である。
【図13】噴霧距離と流速の関係例を示す図である。
【図14】圧力と噴霧量特性を示す図である。
【図15】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図16】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施形態1)
本実施形態の液体霧化装置を図7を参照しながら説明する。図7に示す液体霧化装置は、ノズル装置として構成されている。第1気体噴射部を構成する第1気体オリフィス81と、第2気体噴射部を構成する第2気体オリフィス(不図示)とが、対向配置され、それぞれの長手方向のオリフィス軸が一致し、それぞれのオリフィス断面が四角形である。第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)は、液体オリフィス91が形成されている液体オリフィス部材95の外壁面に断面四角形の溝を形成し、この溝にキャップ部85で蓋をすることで断面四角形の第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)を形成している。
【0028】
気体通路部80から気体が供給される。気体通路部80が不図示のコンプレッサー等に接続されて、コンプレッサーを制御することで気体の噴射量、噴射速度等を設定できる。気体通路部80は第1気体オリフィス81および第2気体オリフィスの両方に通じており、第1気体オリフィス81および第2気体オリフィスから噴射されるそれぞれの気体の噴射量および噴射速度(流速)は同じに設定される。
【0029】
また、液体通路部90から液体が供給される。液体通路部90が不図示の液体供給部に接続され、液体供給部が液体を加圧して液体通路部90に液送する。液体供給部は液体の液送量、液送速度を設定する。なお、液体通路部90は、ノズル抑部99で形成され、気体通路部80は、ノズル抑部99の外壁部に設けたノズル本体部89で形成されている(以下の実施形態においても同様である)。
【0030】
図7(b)に示すように、第1気体オリフィス81および第2気体オリフィスから噴射した気体同士が、気液混合エリアMで衝突壁(衝突部を含む)を形成する。この衝突壁に液体オリフィス91から噴射した液体を衝突させて液体を霧化する。図7において、気液混合エリアMは、液体噴射方向に末広がりの台錘状に、液体オリフィス部材95に形成されている。この気液混合エリアMに液体噴射方向に向かって隣り合っている噴霧先端エリアM1は、気液混合エリアMより末広がりの台錘状にキャップ部85に形成されている。この構造によって、広角の噴霧スプレーパターンであっても、噴霧先端エリアM1等の壁面に霧化体が接触して、霧化体が液滴に成長することを抑制可能となる。
【0031】
上記実施形態1では、キャップ部85と液体オリフィス部材95とで、第1、第2気体オリフィスを形成しているが、一部材で第1、第2気体オリフィスを形成してもよい。また、第1、2気体オリフィスの断面形状が四角形に限定されず、他の多角形状でもよく、円状でもよい。また、第1、第2気体オリフィスの2つに限定されず、第3気体オリフィス、第4気体オリフィス、それ以上の気体オリフィスも形成できる。また、気液混合エリアMの形状は、上記に制限されず、円筒状でもよく、円錐状、多角錘状でもよいが、霧化体の噴霧方向に向かって末広がりの形状であることが好ましい。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態の液体霧化装置(ノズル装置として構成)を図8を参照しながら説明する。図8に示す液体霧化装置は、第1気体噴射部を構成する第1気体オリフィス81と、第2気体噴射部を構成する第2気体オリフィス(不図示)とが、対向配置され、それぞれの長手方向のオリフィス軸が一致し、それぞれのオリフィス断面が四角形である。第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)は、液体オリフィス91が形成されている液体オリフィス部材95を覆う外部材96の外壁面に断面四角形の溝を形成し、この溝にキャップ部85で蓋をすることで断面四角形の第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)を形成している。液体オリフィス91の先端部が、第1気体オリフィス81と第2気体オリフィスからそれぞれ噴射した気体同士が衝突して形成される衝突壁(衝突部を含む)に入り込んでいる(図3(c)の配置に相当する)。
【0033】
気体通路部80、液体通路部90は実施形態1と同様であり、液体供給部と気体を供給するコンプレッサー等も同様の構成を採用できる。
【0034】
図8(b)に示すように、第1気体オリフィス81および第2気体オリフィスから噴射した気体同士が、気液混合エリアMで衝突壁(衝突部を含む)を形成する。この衝突壁に液体オリフィス91から噴射した液体を衝突させて液体を霧化する。図8において、気液混合エリアMは、液体噴射方向に末広がりの台錘状に外部材96に形成されている。図8(b)で示されるように、気液混合エリアMに形成される衝突壁(不図示)に液体オリフィス91の先端部が入り込む配置になっている。この気液混合エリアMに液体噴射方向に向かって隣り合っている噴霧先端エリアM1は、気液混合エリアMより末広がりの台錘状にキャップ部85に形成されている。また、図8(d)に示すように、液体オリフィス部材95の先端部95aをテーパ状に形成してもよい。テーパー形状にすることで、図16に示すように、気体流(1)および(3)がテーパー形状に沿う流れとなって、気体流(2)および(4)の気体が液体オリフィス内へ逆流することを抑制し、かつ気体流(2)、(4)によって形成された衝突壁(衝突部を含む)に液体を直交するように衝突させて液体を微細化(霧化)することができる。なお、気体流(1)(または(3))は、気体流(2)(または(4))と同じ気体オリフィスから噴射されているが、気体流(2)(または(4))の気体オリフィスとは異なる別の気体オリフィスから噴射されてもよい。
【0035】
上記実施形態2では、キャップ部85と外部材96とで、第1、第2気体オリフィスを形成しているが、一部材で第1、第2気体オリフィスを形成してもよい。また、外部材96と液体オリフィス部材95とを一部材で形成してもよい。また、第1、2気体オリフィスの断面形状が四角形に限定されず、他の多角形状でもよく、円状でもよい。また、第1、第2気体オリフィスの2つに限定されず、第3気体オリフィス、第4気体オリフィス、それ以上の気体オリフィスも形成できる。また、気液混合エリアMおよび噴霧先端エリアM1の形状は、上記に制限されず、円筒状でもよく、円錐状、多角錘状でもよいが、霧化体の噴霧方向に向かって末広がりの形状であることが好ましい。
【0036】
(実施形態3)
本実施形態の液体霧化装置(ノズル装置として構成されている)を図9を参照しながら説明する。図9に示す液体霧化装置は、第1気体噴射部を構成する第1気体オリフィス81と、第2気体噴射部を構成する第2気体オリフィス(不図示)とが、気体の衝突角が150°になるように配置され、それぞれのオリフィス断面が四角形である。第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)は、液体オリフィス91が形成されている液体オリフィス部材95の外壁面に断面四角形の溝を形成し、この溝にキャップ部85で蓋をすることで断面四角形の第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)を形成している。
【0037】
気体通路部80、液体通路部90は実施形態1と同様であり、液体供給部と気体を供給するコンプレッサー等も同様の構成を採用できる。
【0038】
図9(b)に示すように、第1気体オリフィス81および第2気体オリフィスから噴射した気体同士が、気液混合エリアMで衝突壁(衝突部を含む)を形成する。この衝突壁に液体オリフィス91から噴射した液体を衝突させて液体を霧化する。図9(b)において、気液混合エリアMは、液体噴射方向に末広がりの台錘状に液体オリフィス部材95に形成されている。この気液混合エリアMに液体噴射方向に向かって隣り合っている噴霧先端第1エリアM1は、気液混合エリアMより末広がりの台錘状にキャップ部85に形成されている。さらに、この噴霧先端第1エリアM1に液体噴射方向に向かって隣り合っている噴霧先端第2エリアM2は、噴霧先端第1エリアM1より末広がりの台錘状にキャップ部85に形成されている。この噴霧先端第1エリアM1の出口部分が噴霧先端第2エリアM2の入口部分に入り込む配置の段差構造となっている。この段差構造によって、広角の噴霧スプレーパターンであっても、噴霧先端第2エリアM2の壁面に霧化体が接触して液滴に成長することが抑制可能になる。
【0039】
上記実施形態3では、キャップ部85と液体オリフィス部材95とで、第1、第2気体オリフィスを形成しているが、一部材で第1、第2気体オリフィスを形成してもよい。また、第1、2気体オリフィスの断面形状が四角形に限定されず、他の多角形状でもよく、円状でもよい。また、第1、第2気体オリフィスの2つに限定されず、第3気体オリフィス、第4気体オリフィス、それ以上の気体オリフィスも形成できる。また、気液混合エリアM、噴霧先端第1エリアM1および噴霧先端第2エリアM2の形状は、上記に制限されず、円筒状でもよく、円錐状、多角錘状でもよいが、霧化体の噴霧方向に向かって末広がりの形状であることが好ましい。また、気体の衝突角αが150°に限定されず、例えば、衝突角αが90°から180°の範囲で変更できる。また、噴霧先端第1エリアM1の出口部分が噴霧先端第2エリアM2の入口部分に入り込む配置の段差構造は、必須ではなく、段差がなくてもよい。
【0040】
(実施形態4)
本実施形態の液体霧化装置(ノズル装置として構成されている)を図15を参照しながら説明する。図15に示す液体霧化装置は、第1気体噴射部を構成する第1気体オリフィス81と、第2気体噴射部を構成する第2気体オリフィス(不図示)とが、気体の衝突角が150°になるように配置され、それぞれのオリフィス断面が四角形である。第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)は、液体オリフィス91が形成されている液体オリフィス部材95の外壁面に断面四角形の溝を形成し、この溝に外部材96で蓋をするように設け、さらに外部材96の外側からキャップ部85が設けられている。この外部材96の外壁面には、第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)のオリフィスの長さ方向軸に対し30°の角度で位置するように、断面四角形の溝が形成され、この溝の外側からキャップ部85で蓋をすることで第1補助気体オリフィス811(第1補助気体噴射部を構成している)、第2補助気体オリフィス(不図示、第2補助気体噴射部を構成している)を形成している。第1補助気体オリフィス811および第2補助気体オリフィスは、液体オリフィス91からの液体噴射方向に向かって第1気体オリフィスおよび第2気体オリフィスと段違いに配置されている。
【0041】
気体通路部80、液体通路部90は実施形態1と同様であり、液体供給部と気体を供給するコンプレッサー等も同様の構成を採用できる。気体通路部80からの気体は、第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)、第1補助気体オリフィス811、第2補助気体オリフィス(不図示)に流れる。
【0042】
図15(b)に示すように、第1気体オリフィス81および第2気体オリフィスから噴射した気体同士が、気液混合エリアMで衝突壁(衝突部を含む)を形成する。この衝突壁に液体オリフィス91から噴射した液体を衝突させて液体を霧化する。図15(b)において、気液混合エリアMは、液体噴射方向に末広がりの台錘状に液体オリフィス部材95に形成されている。この気液混合エリアMに液体噴射方向に向かって隣り合っている補助気体衝突エリアM3は、気液混合エリアMより末広がりの台錘状に外部材96に形成されている。この補助気体衝突エリアM3において、気液混合エリアMで発生した霧化体に対し、第1補助気体オリフィス811および第2補助気体オリフィスから噴射した気体を当てて、霧化体中の飛沫を好適に微細化させることができる。
【0043】
また、この補助気体衝突エリアM3に液体噴射方向に向かって隣り合っている噴霧先端第1エリアM1は、筒状部と補助気体衝突エリアM3より末広がりの台錘状部の組み合わせ部としてキャップ部85に形成されている。さらに、この噴霧先端第1エリアM1に液体噴射方向に向かって隣り合っている噴霧先端第2エリアM2は、噴霧先端第1エリアM1より末広がりの台錘状にキャップ部85に形成されている。この噴霧先端第1エリアM1の出口部分が噴霧先端第2エリアM2の入口部分に入り込む配置の段差構造となっている点は、実施形態3の図9と同じである。
【0044】
上記実施形態4では、液体オリフィス部材95と外部材96とで、第1、第2気体オリフィスを形成しているが、一部材で第1、第2気体オリフィスを形成してもよい。また、キャップ部85と外部材96とで、第1、第2補助気体オリフィスを形成しているが、一部材で第1、第2補助気体オリフィスを形成してもよい。また、第1、第2気体オリフィス、第1、第2補助気体オリフィスを一部材で形成してもよい。また、第1、2気体オリフィス、第1、第2補助気体オリフィスの断面形状が四角形に限定されず、他の多角形状でもよく、円状でもよい。また、第1、第2気体オリフィスの2つに限定されず、第3気体オリフィス、第4気体オリフィス、それ以上の気体オリフィスも形成できる。また、第1、第2補助気体オリフィスの2つに限定されず、第3補助気体オリフィス、第4補助気体オリフィス、それ以上の補助気体オリフィスも形成できる。また、気液混合エリアM、補助気体衝突エリアM3、噴霧先端第1エリアM1および噴霧先端第2エリアM2の形状は、上記に制限されず、円筒状でもよく、円錐状、多角錘状でもよいが、霧化体の噴霧方向に向かって末広がりの形状であることが好ましい。また、気体の衝突角αが150°に限定されず、例えば、衝突角αが90°から180°の範囲で変更できる。また、噴霧先端第1エリアM1の出口部分が噴霧先端第2エリアM2の入口部分に入り込む配置の段差構造は、必須ではなく、段差がなくてもよい。
【0045】
また、第1、第2気体オリフィスと第1、第2補助気体オリフィスの配置関係は、液体噴射方向に向かって段違いに(図15では噴霧正面から見て直線状にお互いが重なって)配置されているが、これに制限されず、第1、第2補助気体オリフィスの配置を変更でき、例えば、噴霧正面からみて第1、第2気体オリフィスに対し、第1、第2補助気体オリフィスが所定角度(例えば、0°から90°)回転して、段違いに配置していてもよい。また、第1補助気体オリフィス811および第2補助気体オリフィスの断面四角形のサイズは、第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)の断面四角形のサイズと同じサイズでもよく、小さくてもよい。
【0046】
(別実施形態)
液体噴射部に二流体ノズルを組み込み、二流体ノズルで一次微細化した液微粒子を、気体同士を衝突させて形成した衝突部または衝突壁に衝突させて二次微細化を行う。
【0047】
(噴霧量特性の評価)
図3(c)に示す配置構成の液体霧化装置を用いて噴霧量特性を評価した。第1、第2気体噴射部1、2の気体オリフィス径φを0.406mm、液体噴射部6の液体オリフィス径φを0.25mmとした。気体に空気を用い、液体に水を用いた。気体噴射の空気圧を0.2MPaの一定条件とし、液体噴射の水圧(MPa)を変えた場合の空気量(NL/min)と噴霧量(ml/min)を測定した。比較として従来の内部混合型2流体ノズルでも同様に評価した。
【0048】
図10に評価結果を示す。この評価結果から以下のことが分かった。液体霧化装置の場合、大気中で気液混合(外部混合型)するので、水圧で噴霧量を変化しても空気量の変化が少なく、比較的低能力のコンプレッサーで容易に噴霧量制御ができる。また、外部混合のために逆流現象を発生させることなく、極低水圧(極低噴霧量)の運転が可能である。また、低噴霧量時は、水圧が低く水オリフィス出口の衝突壁の抵抗により水オリフィス側に圧力損失が発生するので、それが好影響となってより少ない噴霧量が得られ、最大噴霧量/最少噴霧量の比(ターンダウン)が大きくなり噴霧量のゼロスタートも可能となる。一方、従来の内部混合型の二流体ノズルの場合は、水圧を挙げて噴霧量を増やせば、空気量が少なくなり気水体積比が低下するので粒子径が変化する。その対策として、噴霧量の変化に対応して空気圧(空気量)も制御する必要があるが、コンプレッサーの能力アップや制御機器等でコストアップになる。また、空気圧が高くなれば空気が水オリフィス内に逆流する現象が発生するので、広範囲な噴霧量の可変が困難である。
【0049】
(実施例)
上記実施形態1から3の液体霧化装置(図7から9)を用いて、各種評価を行った。気体は空気、液体は水を用いた。液体オリフィス径φは0.4mmである。空気オリフィスの断面は四角形(縦0.47mm、横0.6mm)である。表1に空気圧、水圧を変えた場合の空気量Qa、噴霧量Qw、気水比(Qa/Qw)、平均粒子径(SMD)、噴霧流速を評価した。平均粒子径(SMD)は、レーザー回折法の計測装置により、噴霧距離300mmの位置の霧化体を測定した。霧化体の噴霧流速は、風速計により500mmの位置で測定した。従来の二流体ノズルを比較例として例示している。この二流体ノズルの液体オリフィス径φは2.5mmである。
【0050】
【表1】

【0051】
次に、上記実施形態1(図7)の液体霧化装置の噴霧量と平均粒子径の関係を図11に示す。空気圧を0.05MPaで一定とし、噴霧量を変えた場合の噴霧距離300mmの位置のスプレー幅中央部の霧化体の平均粒子径を測定した。その結果、噴霧量を20倍に変化させても平均粒子径は安定的であり、従来の二流体ノズルにない特性を有することを確認できた。
【0052】
次に、上記実施形態1(図7) の液体霧化装置の噴霧距離と平均粒子径の関係を図12に示す。実施形態1(図7)の条件は、空気圧を0.05MPa、水圧を0.038MPaとした場合に、空気量が12.0NL/min、噴霧量が52.4ml/min、気水体積比が229であった。低流速噴霧のために近距離(短時間)で水滴が蒸発することを確認できた。
【0053】
次に、従来の二流体ノズルと噴霧流速について比較評価した結果を図13に示す。実施形態1(図7)の条件は、空気圧を0.05MPa、水圧を0.038MPaとした場合に、空気量が12.0NL/min、噴霧量が52.4ml/min、気水体積比が229であった。従来の二流体ノズルは、空気圧を0.2MPa、水圧を0.04MPaとした場合に、空気量が60.0NL/min、噴霧量が41.4ml/min、気水体積比が1449.3であった。実施形態1の液体霧化装置は、従来の二流体ノズルに比べて、格段に流速が遅く、送風に流されやすいことを確認できた。
【0054】
次に、上記実施形態1(図7) の液体霧化装置の圧力(Pa)と噴霧量の特性について図14に示す。少ない水圧変化で噴霧量が大幅に可変でき、また、その際に空気圧の変化がない(または小さい)ため制御方法をシンプルにできることを確認できた。
【符号の説明】
【0055】
1 第1気体噴射部(第1気体オリフィス)
2 第2気体噴射部(第2気体オリフィス)
6 液体噴射部(液体オリフィス)
62 霧化体
71、72 規制用気体噴射部
81 第1気体オリフィス
91 液体オリフィス
100 衝突部
101 衝突壁
M 気液混合エリア
M1 噴霧先端(第1)エリア
M2 噴霧先端第2エリア
M3 補助気体混合エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を噴射する第1気体噴射部および第2気体噴射部と、
液体を噴射する液体噴射部とを備え、
前記第1気体噴射部の噴射方向軸と前記第2気体噴射部の噴射方向軸とが45°から220°の角度範囲を形成し、当該第1、第2気体噴射部から噴射した気体同士を前記液体噴射部の先端より前方で衝突させて形成した衝突部または当該衝突部を含む部分と、前記液体噴射部で噴射した液体とを衝突させて当該液体を霧化する液体霧化装置。
【請求項2】
前記角度範囲が90°から180°である、請求項1に記載の液体霧化装置。
【請求項3】
第1気体噴射部の噴射方向と第2気体噴射部の噴射方向とが対向し、第1気体噴射部の噴射方向軸と第2気体噴射部の噴射方向軸とが一致している、請求項1または2に記載の液体霧化装置。
【請求項4】
前記液体噴射部は、前記衝突部に対して、前記液体の噴射方向軸が直交するように液体を噴射する、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体霧化装置。
【請求項5】
液体が噴射される噴射位置よりも前方で、2つの気体同士を衝突角45°〜220°の角度範囲で衝突させて形成した衝突部または当該衝突部を含む部分と、前記液体とを衝突させて当該液体を霧化する液体霧化方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−254457(P2012−254457A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174116(P2012−174116)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2010−211115(P2010−211115)の分割
【原出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(503045038)ノズルネットワーク株式会社 (18)
【Fターム(参考)】