説明

液体霧化装置

【解決課題】従来技術の微細化原理とは異なる新規原理を用いて、かつ簡単な装置構成で液体を霧化可能な液体霧化装置を提供することを目的とする。
【課題解決手段】2つの気体流同士を衝突させるための第1気体噴射部および第2気体噴射部と、液体を流出させるための液体流出部と、前記第1気体噴射部から噴射された気体流と前記第2気体噴射部から噴射された気体流と前記液体流出部から流出した液体とを衝突させて当該液体を霧化させるエリアである気液混合エリア部と、前記第1気体噴射部と前記第2気体噴射部に沿って装置外側に断面凸状に突出して形成され、内部に前記気液混合エリア部が形成される突出部と、前記突出部に、前記気液混合エリア部で生成された霧の広角噴霧方向に沿って形成される噴出用スリット部と、前記噴出用スリット部の底部近傍に霧の広角噴霧方向に沿って形成される規制部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を霧化するための液体霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の霧化技術として、気液混合式(二流体式)、超音波式、超高圧式(100MPa〜300MPa)、蒸発式等がある。一般的な二流体ノズルは、気体と液体とを同一噴射方向で噴射させて気液の随伴流によるせん断効果で液体を微細化する。
【0003】
また、気液混合式二流体ノズルの一例として、微粒子ミストを生成するための噴霧ノズル装置が知られている(特許文献1)。この噴霧ノズル装置は、第1ノズル部と第2ノズル部を有し、第1ノズル部からの噴霧液と第2ノズル部からの噴霧液とを衝突させて、微粒子ミストを形成することができる。しかしながら、2流体ノズル部を2つ備えるため、コスト高であり、また小型化には適していない。
【0004】
また、従来のノズル構造の場合、噴霧角が広角(例えば80°以上)であれば、その噴霧流が噴霧出口部に付着し、しずくとなりボタ落ちするので、周辺を濡らしてしまい問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−126587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の従来技術の微細化原理とは異なる原理を用いて、かつ簡単な装置構成で液体を霧化可能な液体霧化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体霧化装置は、2つの気体流同士を衝突させるための第1気体噴射部および第2気体噴射部と、
液体を流出させるための液体流出部と、
前記第1気体噴射部から噴射された気体流と前記第2気体噴射部から噴射された気体流と前記液体流出部から流出した液体とを衝突させて当該液体を霧化させるエリアである気液混合エリア部と、
装置外側に断面凸状に突出して形成され、内部に前記気液混合エリア部が形成される突出部と、
前記突出部に、前記気液混合エリア部で生成された霧の広角噴霧方向に沿って形成される噴出用スリット部と、
前記噴出用スリット部の底部近傍に、前記霧の広角噴霧方向に向かって傾斜して形成される規制部と、を備える。
【0008】
この構成の作用効果を図1A〜図1C(霧化エリア部の断面模式図)を参照しながら説明する。第1、第2気体噴射部1、2から噴射した気体流同士11、21が衝突して、衝突部100が形成される。この衝突部100を含む部分を衝突壁と呼ぶ(図1B)。液体流出部6から流出された液体61は、この衝突壁(衝突部100を含む)に衝突する(図1B)。衝突壁に液体61が衝突することで、液体61が粉砕(霧化)され霧62となる。霧62が発生するエリアを気液混合エリア部120として破線で示す。霧62は、突出部30に形成された噴出用スリット部31の隙間から広角に広がって(扇状に広がって)噴霧される(図2A,図2B参照)。このとき、噴出用スリット部31の底部近傍に霧の広角噴霧方向に向かって規制部32a、32bが形成されている(図1C)。この規制部32a、32bによって、噴霧される霧がノズル先端面に付着せずに前方へ噴出されやすくなり、広角噴霧でもノズル先端部にしずくが発生しにくく、噴霧パターン長径方向の平均粒子径がほぼ均等になる。
【0009】
上記規制部32a、32bは、噴出用スリット部31の凹溝断面の端部よりも外側(噴霧方向)に、その先端部あるいはその傾斜面が突出して形成されていてもよい。また、上記規制部32a、32bは、噴出用スリット部31の凹溝内部(あるいは突出部30)よりも外側(噴霧方向)に形成されていてもよい。
【0010】
本発明において、突出部は、気体オリフィスを形成するための部材と一体に形成されていてもよく、別部材で形成されていてもよい。
【0011】
本発明の液体霧化装置によれば、気体流同士の衝突部あるいは衝突壁(衝突部を含む)と、液体とを衝突させて衝突粉砕することで、低圧力(低気体圧、低液体圧)、低流量(低気体流量、低液体流量)、低エネルギーで効率的に霧化することができる。また、従来の二流体ノズルに比べ、低気液体積比(または低気液比)で霧化することができる。また、従来の二流体ノズルに比べ、本発明の液体霧化装置は低騒音である。また、本発明の液体霧化装置の構造をシンプルにできる。
【0012】
気体噴射部から噴射される気体(気体流)の圧力、流量は、特に制限されないが、本発明の霧化原理によって、低気体圧力、低気体流量で、液体を好適に霧化できる。また、衝突部および衝突壁を構成することになる気体流同士の圧力は、同じまたは略同じに設定することが好ましく、衝突部および衝突壁を構成することになる気体流同士の流量も、同じまたは略同じに設定することが好ましい。また、気体噴射部から噴射される気体流の断面形状は、特に制限されず、例えば、円状、楕円状、矩形状、多角形状が挙げられる。また、衝突部および衝突壁を構成する気体流同士の断面形状は、同一または略同一であることが好ましい。衝突部が変形、サイズ縮小等することを抑制することで、一定の形状、一定サイズの衝突部を維持して、安定した噴霧量で粒子径変動の少ない霧化体を生成するのに好ましい。
【0013】
液体流出部から流出される液体(液体流)の圧力、流量は、特に制限されないが、本発明の霧化原理によって、低圧力、低流量の液体を好適に霧化できる。また、液体流出部の圧力は、一般的は水道配管の水圧でもよく、液体流出部は、液体を自然落下させる装置であってもよい。本発明において、「液体流出部から流出した液体」には、自然落下速度で落下する液体も含まれる。
【0014】
液体流出部と気体噴射部の相対的配置例を図3A〜図3Fを参照して説明する。この相対的配置によって、気液衝突位置が規定される。図3Aの配置は、第1、第2気体噴射部1、2が対向配置され、液体流出部6のノズル先端が第1、第2気体噴射部1,2の両ノズル先端外側面部分に接触している。図3Bの配置は、第1、第2気体噴射部1、2が対向配置され、第1、第2気体噴射部1,2の両ノズル先端と液体流出部6のノズル先端部とが接触している。図3Bの配置は図3Aの配置よりも、流出される液体流量が多く、かつ逆流も小さい傾向となる。図3Cの配置は、第1、第2気体噴射部1、2の両ノズル先端間に、液体流出部6のノズルが入り込んだ配置である。図3Dの配置は、図3Bの配置と比較して、第1、第2気体噴射部1,2の両ノズルの間隔が、図3Bのそれよりも大きい配置である。図3Eの配置は、図3Bの配置と比較して、液体流出部6が衝突壁から遠ざかった配置である。また、液体流出部は1つを例示しているが、液体流出部は2つ以上であってもよく、図3Fでは、液体流出部は2つ配置されている。なお、図3A〜3Fは、突出部等の他の部材を省略して示している。
【0015】
上記生成される霧は、気体流同士の衝突部から排出される排出気体流とともに噴霧される。この排出気体流によって噴霧パターンが形成される。噴霧パターンは、例えば、2つの噴射された気体流の衝突で形成された衝突部と液体(液体流)とが衝突した場合には、噴出用スリット部31の開放方向に、液体流出方向軸を中心にして幅広の扇状に形成され、その断面形状は楕円状または長円状(図2A、図2B)となる。気体流同士が衝突した衝突面に平行に(衝突面が拡張する方向に)、衝突した(衝突後の)気体が拡散しており、この方向に霧62が扇状に広がって噴出されることになる。本発明において、霧62の広角噴霧角γは、80°以上であり、100°〜180°の広角噴霧角も可能となる。
【0016】
上記発明の一実施形態として、前記第1気体噴射部の噴射方向軸と前記第2気体噴射部の噴射方向軸との交差角度が90°〜180°の範囲であることが好ましい。第1気体噴射部1および第2気体噴射部2のそれぞれの噴射方向軸が交差する角度範囲は、第1気体噴射部1から噴射された気体と第2気体噴射部2から噴射された気体の衝突角に相当する。例えば、「衝突角α」は、90°〜220°であり、好ましくは90°〜180°であり、より好ましくは110°〜180°である。図4に衝突角αを示す。180°より小さい衝突角を形成している衝突部に液体(液体流)を衝突させた場合に、この衝突角の角度が小さいほど、従来の二流体ノズルの原理(気体と液体とを同一噴射方向で噴射させて気液の随伴流によるせん断効果で液体を微細化する)に類似するため、本発明の上記微細化原理の効果が低くなる傾向になるが、一方で、衝突角の角度が小さいほど、流出された液体の逆流が抑えられる傾向である。また、180°より大きい衝突角を形成している衝突部に液体を衝突させた場合に、衝突角の角度が大きいほど、噴射された気体および衝突して広がった気体が、液体を押し戻すように作用して液体を逆流させてしまう傾向である。なお、図4において、液体流出部6のノズル先端が、第1、第2気体噴射部1,2の両ノズル先端と接触しているが、これに制限されず、液体流出部6のノズル先端位置が、第1、第2気体噴射部1,2の両ノズル間に配置させていてもよく、図4の配置よりも第1、第2気体噴射部1,2から距離を置いて配置されていてもよい。
【0017】
上記発明の実施形態例として、図5に示すように、衝突部100の衝突面100aに対して液体の流出方向軸が傾いている例を示す。この傾き角βとしては、0°(直交位置)から±80°の範囲、好ましくは0°から±45°、より好ましくは0°から±30°、さらに好ましくは0°から±15°の範囲である。傾き角βが小さくなるほど、霧の生成効率(霧化効率)が高い傾向となる。
【0018】
上記発明の前記規制部の傾斜角度は、180°より小さい傾斜角であればよく、例えば、噴霧方向に開くように、10°〜160°の角度範囲が挙げられる。好ましい実施形態としては、20°〜150°の角度範囲で傾斜して形成されていることが好ましい。図1Dは、規制部32a、32bの傾斜角度θを示す。傾斜角度θとしては、20°〜150°の範囲が好ましく、より好ましくは、40°〜120°であり、さらに好ましくは、60°〜90°である。θが小さくなるほど、噴霧が直進的になり、噴霧出口周辺に霧がより付着しにくくなるが、噴霧パターンの長径が短くなり広角噴霧パターンでなくなる。一方、θが大きくなるほど噴霧出口周辺に霧が付着しやく、しずくになりやすくなる。θが60°〜90°の範囲では、しずく発生の抑制効果が高く、広角噴霧パターンを維持できる。また、本発明の規制部によって、傾斜角度θ(=θ1+θ2)をコントロールすることで、噴霧パターンの長径の長さ、噴霧パターンを可変にコントロールできる。図1Dに示すように、規制部32a、規制部32bは、噴霧方向中心軸から、同じ傾斜角(θ/2ずつ)であることが必ずしも必要ではなく、得たい噴霧パターンに応じて、θ1とθ2の角度が異なっていてもよい。
【0019】
上記発明の一実施形態として、前記気液混合エリアが、前記噴出用スリット部の底部よりも噴霧方向側に形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成では、図1Eに示すように、気液混合エリア120(気体流同士および液体流との衝突部エリア)が、噴出用スリット部31の底部(底面)31aよりも噴霧方向側に形成される。従来の二流体ノズルでは最大噴霧角が100°未満であり、かつ噴霧距離が遠くなれば先細りパターンになっていたが(100°以上の噴霧角で使用すると実用性が著しく低下していたが)、本発明によれば、先細りが少なく、かつ最大噴霧角(広角噴霧角度γ)が180°の噴霧パターンを簡単に得ることができる。さらに、本発明の霧化原理による高い霧化効果と広角噴霧による噴霧パターン断面の低密度により、従来の二流体ノズルよりも大幅な低気水比で微粒化ができる。
【0021】
上記発明の一実施形態として、前記突出部の装置外部に突出している先端部断面が、半円形状または半楕円形状であることが好ましい。
【0022】
この構成では、図1C、図1F、図2Cに示すように、突出部30の先端部30aの断面が、R形状を有する半円形状または半楕円形状である。これによって、噴霧パターンの長径方向の粒子の密度分布を略均一にでき、R形状にすることで、噴霧パターンの長径方向の霧粒子の密度分布を制御できる。一方、図2Dに示すように、先端部30bが角ばっていると、そこを通過する霧が膨張するときに、霧粒子が引っかかり(接触可能面積が大きいため引っかかりやすい)、噴霧パターンにスジや粗粒子が発生しやすく、また噴霧パターンの中央部分の霧粒子が他エリアよりも高密度になりやすい。
【0023】
本発明の一実施形態として、前記第1気体噴射部のスリット幅(d1)および前記第2気体噴射部のスリット幅(d2)が、前記液体流出部の出口オリフィス直径(d3)の1倍〜1.5倍であることが好ましい。流出された液体と、気体流同士の衝突部または衝突壁とを衝突させる場合に、衝突部または衝突壁より液体の衝突断面積が小さいことが好ましいからである。気体流同士の衝突部または衝突壁よりも流出した液体の衝突断面が大きいと、液体の一部が衝突部または衝突壁に衝突せずに霧化されない傾向にあり、微粒化が悪い。
【0024】
この構成では、図1Fに示すように、第1気体噴射部1のスリット幅がd1であり、不図示の第2気体噴射部2のスリット幅がd2であり、d1=d2の寸法設定である。そして、液体流出部6の出口オリフィス直径がd3であるとき、d3=d1〜1.5×d1の範囲である。これによって、均等な粒子径と拡散分布が得られる。気体噴射部のスリット幅d1が、液体流出部の出口オリフィス直径d3より過大であれば、噴霧パターン中央部の微粒化が低下し、粗粒子が発生しやすい。一方、気体噴射部のスリット幅d1が、液体流出部の出口オリフィス直径d3より過小であれば、噴霧パターンの長径方向の両サイドに粗粒子が多く発生しやすい。
【0025】
また、第1、第2気体噴射部のオリフィス径(断面円の直径)が、液体流出部のオリフィス径(断面円の直径)の1倍から1.5倍であることが好ましい。上記と同様の理由である。
【0026】
本発明の一実施形態として、突出部の幅(d4)が、第1気体噴射部のスリット幅(d1)および第2気体噴射部のスリット幅(d2)の1倍より大きく6倍以下であることが好ましく、より好ましくは1.5倍以上4倍以下であり、さらに好ましくは2倍以上3倍以下である。幅d4が大きくなるほど、霧と接触する面積が大きくなりしずく発生がしやすくなる。
【0027】
また、図1Eに示すように、突出部に形成された噴出用スリット部の幅(d5)とスリット深さ(d6)は、特に制限されないが、気液混合エリア12を噴出用スリット部内部に配置できる程度の空間を有していることが好ましい。
【0028】
上記発明の一実施形態として、前記液体が連続流、間欠流またはインパルス流の液体であることが好ましい。連続流は、例えば、柱状の液体流である。間欠流は、例えば、所定間隔で流出する液体流である。インパルス流は、例えば、所定のタイミングで瞬間的に流出する液体流である。液体供給装置等で、液体の流出方法を自在に制御することで、霧化タイミング、生成される霧の噴霧量を自在に制御することができる。
【0029】
上記発明の一実施形態として、前記液体が微細化された液体である。液体流出部から流出される液体として、微細化された液微粒子を用いることができ、液微粒子としては、例えば、二流体ノズル装置、超音波装置、超高圧噴霧装置、蒸発式噴霧装置等で微細化された液微粒子が挙げられる。
【0030】
上記気体としては、特に制限されないが、例えば、空気、清浄空気(クリーンエア)、窒素、不活性ガス、燃料混合エア、酸素等が単独で、あるいはそれら複数種類の混合気体が挙げられ、使用目的に応じて適宜設定可能である。
【0031】
上記液体としては、特に制限されないが、例えば、水、イオン化水、化粧水等の化粧薬液、医薬液、殺菌液、除菌液等の薬液、塗料、燃料油、コーティング剤、溶剤、樹脂等が単独で、あるいはそれら複数種類の混合液体が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図1B】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図1C】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図1D】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図1E】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図1F】液体霧化装置の一例を説明するための模式図である。
【図2A】液体霧化装置の噴霧出口部を上方から見た模式図である。
【図2B】液体霧化装置の側面から見た模式図である。
【図2C】噴霧パターン例を説明するための模式図である。
【図2D】噴霧パターン例を説明するための模式図である。
【図3A】液体流出部と気体噴射部の相対的配置例の模式図である。
【図3B】液体流出部と気体噴射部の相対的配置例の模式図である。
【図3C】液体流出部と気体噴射部の相対的配置例の模式図である。
【図3D】液体流出部と気体噴射部の相対的配置例の模式図である。
【図3E】液体流出部と気体噴射部の相対的配置例の模式図である。
【図3F】液体流出部と気体噴射部の相対的配置例の模式図である。
【図4】2つの気体噴射軸で形成される交差角度を説明するための模式図である。
【図5】液体流出方向の傾きを説明するための模式図である。
【図6A】実施形態1の液体霧化装置の外観斜視図である。
【図6B】図6Aの液体霧化装置の一部断面模式図である。
【図6C】図6Bの液体霧化装置の正面模式図である。
【図6D】図6Aの液体霧化装置のA部拡大図である。
【図7A】図6Aの気体オリフィスを構成する外キャップ部の一部断面模式図である。
【図7B】図7Aの外キャップ部の正面模式図である。
【図7C】図7Aの外キャップ部の背面模式図である。
【図7D】図7Bの外キャップ部のX−X断面模式図である。
【図7E】図7Aの外キャップ部のA部拡大図である。
【図7F】図7Dの外キャップ部のC部拡大図である。
【図7G】図7Eの外キャップ部のB−B断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施形態1)
本実施形態の液体霧化装置を図6A〜6Dを参照しながら説明する。図6A〜6Dに示す液体霧化装置は、ノズル装置として構成されている。図7A〜7Gは、外キャップ部を説明するための図である。第1気体噴射部を構成する第1気体オリフィス81と、第2気体噴射部を構成する第2気体オリフィス(不図示)とが、衝突角(α)=110°で気体流同士を衝突させるように配置されている。それぞれのオリフィス断面が四角形である。
【0034】
図6Bに示すように、気体通路部80から気体が供給される。気体通路部80が不図示のコンプレッサー等に接続されて、コンプレッサーを制御することで気体の噴射量、噴射速度等を設定できる。気体通路部80は第1気体オリフィス81および第2気体オリフィスの両方に通じており、第1気体オリフィス81および第2気体オリフィスから噴射されるそれぞれの気体の噴射量および噴射速度(流速)は同じ(あるいは略同じ)に設定される。
【0035】
また、液体通路部90から液体が供給される。液体通路部90が不図示の液体供給部に接続され、液体供給部が液体を加圧して液体通路部90に液送する。液体供給部は、液体の液送量、液送速度を設定する。なお、液体通路部90は、ノズル内本体99に形成される。気体通路部80は、ノズル内本体99の外壁部にネジ固定で組み込んだノズル外本体89で形成されている。
【0036】
ノズル内本体99の先端に内キャップ部95が組み込まれ、この内部キャップ部95によって、液体通路部90からの供給される液体を流出するための液体オリフィス91が形成されている。液体オリフィス91の断面形状は円であることが好ましい。本実施形態では、液体オリフィス91がその長軸方向にストレートに延び、その先端部911は、他のオリフィス径よりも小さい径である。
【0037】
ノズル外本体89の先端に外キャップ部85が組み込まれる。ネジ止部86がノズル外本体89にネジ固定されることで、このネジ止部86に直接に接する外キャップ部85および外キャップ部85に押圧される内キャップ部95をそれぞれ固定する。第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)は、外キャップ部85の内壁面に断面矩形の凹溝を形成し(図7E、7GのB−B断面参照)、この凹溝が内キャップ部95で密閉されることで断面矩形の第1気体オリフィス81、第2気体オリフィス(不図示)を形成している。凹溝81は、スリット幅d1、スリット深さd11で示される。また、各部材の固定方法はネジ固定に限定されず、他の連結手段を用いることができ、また、各部材間の隙間には不図示のシール部材(例えばOリング等)が適宜組み込まれていてもよい。
【0038】
図7A〜7Dに示すように、外キャップ部85には、装置外側に断面凸状に突出した突出部851が形成されている。この突出部851の内部に気液混合エリア部(不図示)が形成される。この突出部851に、噴出用スリット部851aが形成されている。さらに、図7Fに示すように、噴出用スリット部851aの底部近傍に霧の広角噴霧方向に沿って規制部852a、852bが形成される。本実施形態において、この規制部852a、852bで形成される傾斜角度(θ)は、60°である。この規制部852a、852bによって、噴霧される霧がノズル先端面に付着せずに前方へ噴出されやすくなり、広角噴霧でもノズル先端部にしずくが発生しにくく、噴霧パターン長径方向の平均粒子径がほぼ均等になる。なお、傾斜角度θは60°に制限されない。
【0039】
また、図7Fに示すように、突出部851の先端断面851bは、半円形状である。これによって、噴霧パターンの長径方向の粒子の密度分布を略均一にでき、先端断面をR形状にすることで、噴霧パターンの長径方向の霧粒子の密度分布を好適に制御できる。
【0040】
また、2本の気体流同士と1本の液体流が衝突するエリアである気液混合エリア(不図示)が、噴出用スリット部851aの底部よりも噴霧方向側に形成されている。これによって、先細りが少なく、かつ最大噴霧角(広角噴霧角度γ)が180°の噴霧パターンを簡単に得ることができる。
【0041】
上記実施形態1では、外キャップ部85と内キャップ部95とで、第1、第2気体オリフィスを形成しているが、一部材で第1、第2気体オリフィスを形成してもよい。また、第1、2気体オリフィスの断面形状が矩形に限定されず、他の多角形状でもよく、円状でもよい。また、気体流同士の衝突角αは、110°に限定されず、例えば、90°〜180°の範囲で設定できる。
【0042】
(実施例1)
上記実施形態1に示す構成の液体霧化装置を用いて、しずく発生の有無を評価した。実施例1の突出部851の噴出用スリット部851aは、幅(d4)が1mm、スリット深さ(d6)が0.95mm、スリット間隔(d5)が0.3mmとし、規制部852a、852bの傾斜角度θが60°、第1、第2気体オリフィスの矩形断面がスリット幅(d1)が0.47mm、スリット深さ(d11)が0.57mm、液体オリフィス先端部の断面直径がφ0.35mmとした。気体に空気を用い、液体に水を用いた。気体噴射の空気量Qaを10.0(NL/min)、噴霧(水)量Qwを25.0(ml/min)とした場合、および気体噴射の空気量Qaを10.0(NL/min)、噴霧(水)量Qwを50.0(ml/min)とした場合のそれぞれの空気圧Pa、水圧Pw、噴霧角、平均粒子径(SMD)、しずく量を評価した。その結果を表1に示す。いずれの場合もしずくが発生しないことを確認できた。一方、この実施例1において、比較例1として規制部852a、852bを無くしたもので同じ評価を行ったところ、しずくが発生したことを確認した。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例2)
上記実施例1において、規制部852a、852bの傾斜角度を90°とし、気体噴射の空気量Qaを10.0(NL/min)、噴霧(水)量Qwを50.0(ml/min)とした場合の空気圧Pa、水圧Pw、スプレーパターンの長径方向の中央部および両端部の平均粒子径(SMD)を評価した。この比較として、規制部852a、852bを無くしたもので同じ評価をした(比較例2)。その結果を表2に示す。実施例2では、スプレーパターンの長径方向の中央部と両端部とで霧が略同じ平均粒子径であった。一方、比較例2ではスプレーパターンの長径方向の両端部の方の霧の平均粒子径が明らかに大きかった、規制部852a、852bがあることで、スプレーパターンの長径方向における霧の平均粒子径分布が略均一になることを確認できた。
【0045】
【表2】

【0046】
(実施例3:スプレーパターンの密度分布の評価)
実施例1は、突出部851の先端面851bが半円状になっている(実施例3として表3に記載した)。この比較として、その先端が角張っている断面矩形状の突出部について評価した(比較例3)。その結果を表3に示す。実施例3では、スプレーパターンの長径方向において、霧粒子の密度分布が略均一になっていたことを確認できた。一方、比較例3では、スプレーパターンの長径方向において、図2Dのように霧粒子の高密度のエリアと低密度のエリアとが分かれて確認できた。
【0047】
【表3】

【0048】
(実施例4)
次に、液体オリフィス先端直径をφ=0.35mmに固定し、気体オリフィスの矩形断面サイズを変えて、気体噴射の空気量Qaを10.0(NL/min)、噴霧(水)量Qwを50.0(ml/min)とした場合の空気圧Pa、水圧Pw、スプレーパターンの長径方向の中央部および両端部A,Bの平均粒子径(SMD)を評価した(比較例4,5)。その結果を表4に示す。実施例4(スリット幅が液体オリフィス先端直径の1.35倍)では、スプレーパターンの長径方向において、中央部、両端部A,Bが略均一の粒子径であり、略均一の微細化であった。一方、比較例4(気体オリフィスの矩形断面サイズが過大、スリット幅が液体オリフィス先端直径の2.24倍)では、スプレーパターンの長径方向において、中央部の平均粒子径が両端部のそれよりも2倍以上であり、液体の微細化効果が低くかった。これは、空気量と噴霧量とを一定条件にして行ったため、2つの気体流の衝突壁における空気密度が実施例4よりも低く、液体の微細化が進む前に前方へ噴霧されてしまったと推測される。また、比較例5(気体オリフィスの矩形断面サイズが過小、スリット幅が液体オリフィス先端直径の0.85倍)では、スプレーパターンの長径方向において、中央部の平均粒子径が両端部のそれよりも2倍程度小さく、液体の微細化効果が低くかった。これは、2つの気体流の衝突壁よりもこれと衝突する液体の断面積が大きいため、液体流の径方向にいく程、気体流との衝突が少なかったものと推測される。
【0049】
【表4】

【0050】
なお、上記において、平均粒子径(SMD)はレーザー回折法の計測装置により測定した。測定位置は、噴霧方向軸上で、ノズル先端から150mmの位置とした。
【符号の説明】
【0051】
1 第1気体噴射部(第1気体オリフィス)
2 第2気体噴射部(第2気体オリフィス)
6 液体流出部(液体オリフィス)
30 突出部
31 噴出用スリット部
32a、32b 規制部
62 霧
81 第1気体オリフィス
85 外側キャップ部
851 突出部
851a 噴出用スリット部
851b 先端断面
852a、852b 規制部
91 液体オリフィス
100 衝突部
100a 衝突面
120 気液混合エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの気体流同士を衝突させるための第1気体噴射部および第2気体噴射部と、
液体を流出させるための液体流出部と、
前記第1気体噴射部から噴射された気体流と前記第2気体噴射部から噴射された気体流と前記液体流出部から流出した液体とを衝突させて当該液体を霧化させるエリアである気液混合エリア部と、
装置外側に断面凸状に突出して形成され、内部に前記気液混合エリア部が形成される突出部と、
前記突出部に、前記気液混合エリア部で生成された霧の広角噴霧方向に沿って形成される噴出用スリット部と、
前記噴出用スリット部の底部近傍に、前記霧の広角噴霧方向に向かって傾斜して形成される規制部と、を備える液体霧化装置。
【請求項2】
前記規制部は、20°〜150°の角度範囲で傾斜して形成される、請求項1に記載の液体霧化装置。
【請求項3】
前記気液混合エリアが、前記噴出用スリット部の底部よりも噴霧方向側に形成される、請求項1または2に記載の液体霧化装置。
【請求項4】
前記突出部の装置外部に突出している先端部断面が、半円形状または半楕円形状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体霧化装置。
【請求項5】
前記第1気体噴射部のスリット幅(d1)および前記第2気体噴射部のスリット幅(d2)が、前記液体流出部の出口オリフィス直径(d3)の1倍〜1.5倍である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体霧化装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【公開番号】特開2013−94749(P2013−94749A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241330(P2011−241330)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(503045038)ノズルネットワーク株式会社 (18)
【Fターム(参考)】