説明

液処理装置および液処理方法

【課題】処理室内の雰囲気の置換性を向上させることができ、基板の液処理を行う際に飛散した薬液等の雰囲気が処理室内に残存しないようにすることができる液処理装置および液処理方法を提供する。
【解決手段】液処理装置10において、カップ外周筒50が上方位置にあるときにこのカップ外周筒50内の雰囲気が当該カップ外周筒50の外側に送られるようになっている。また、処理室20内の雰囲気の排気を行うための排気部56が処理室20内においてカップ外周筒50の外側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を水平状態に保持した状態で回転させながら当該基板に処理液を供給することにより基板の洗浄処理やエッチング処理、メッキ処理、現像処理等の液処理を行う液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ等の基板(以下、ウエハともいう)を水平状態に保持した状態で回転させながら当該基板の表面や裏面に処理液を供給することにより基板の洗浄処理やエッチング処理、メッキ処理、現像処理等の液処理を行う液処理装置として、様々な種類のものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1には、基板をスピンチャックにより水平に保持して回転させ、スピンチャックにより保持されて回転する基板の表面に処理液を供給するような、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の液処理装置が開示されている。また、このような枚葉式の液処理装置において、処理室の上方にFFU(ファンフィルタユニット)を設け、このFFUからN2ガス(窒素ガス)やクリーンエア等のガスをダウンフローで処理室内に送るような技術が知られている。
【0003】
処理室の上方にFFUが設けられた液処理装置の構成について図12および図13を用いて説明する。図12は、従来の液処理装置の概略的な構成を示す側面図であり、図13は、図12に示す従来の液処理装置の上面図である。図12および図13に示すように、従来の液処理装置200は、ウエハWが収容され、この収容されたウエハWの液処理が行われる処理室(チャンバー)210を備えている。図12および図13に示すように、処理室210内には、ウエハWを保持して回転させるための保持部220が設けられており、この保持部220の周囲にはカップ230が配設されている。また、従来の液処理装置200では、保持部220に保持されたウエハWに対してカップ230の上方から処理液を供給するためのノズル240およびこのノズル240を支持するアーム241が処理室210内に設けられている。また、アーム241には略鉛直方向に延びるアーム支持部242が設けられており、このアーム支持部242によりアーム241が支持されている。そして、アーム支持部242は図示しない駆動機構により正逆両方向に回転駆動させられるようになっている。このことにより、アーム241はアーム支持部242を中心として正逆両方向に回転可能となり、このアーム241は、保持部220により保持されたウエハWに処理液を供給する進出位置(図13の実線参照)とカップ230から退避した退避位置(図13の二点鎖線参照)との間でアーム支持部242を中心として回転移動を行うようになる(図13の矢印参照)。
【0004】
また、図12に示すように、処理室210の上方にはFFU(ファンフィルタユニット)250が設けられており、このFFU250からN2ガス(窒素ガス)やクリーンエア等のガスが常にダウンフローで処理室210内に送られるようになっている。また、処理室210の底部には排気部260が設けられており、この排気部260により処理室210内の雰囲気の排気が行われるようになっている。このように、FFU250から処理室210内にクリーンエア等のガスがダウンフローで送られ、このガスが排気部260により排気されることにより、処理室210内の雰囲気の置換が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−94525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図12および図13に示すような従来の液処理装置200では、ノズル240を支持するアーム241やこのアーム241を支持するアーム支持部242が処理室210内に設けられているため、カップ230の外側の領域のスペースが大きくなり、このようなカップ230の外側の領域では処理室210内の雰囲気の置換が行われにくくなる。具体的には、図12および図13において参照符号Xで示されるような領域は、カップ230の外側に位置していることにより、FFU250から処理室210内にダウンフローで送られたガスが滞留しやすくなり、このような領域では雰囲気の置換が適切に行われないおそれがある。このため、従来の液処理装置200では、処理室210内でウエハWの液処理を行う際に参照符号Xで示されるような領域に薬液等が飛散すると、この薬液の雰囲気が当該領域で残存してしまい、その後のウエハWの処理においてこの残存した薬液の雰囲気によりウエハWが汚れてしまう等の悪影響を与えてしまうおそれがある。具体的には、処理後のウエハWを含む様々な乾燥物に対して薬液等が再付着してしまうと、パーティクルの原因となってしまうという問題がある。また、残存した薬液におけるアルカリ性や酸性の雰囲気が化学反応を起こすことにより、結晶物が生成されてしまい、パーティクルの原因となってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、処理室内の雰囲気の置換性を向上させることができ、基板の液処理を行う際に飛散した薬液等の雰囲気が処理室内に残存しないようにすることができる液処理装置および液処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液処理装置は、基板を水平状態に保持して回転させるための基板保持部および当該基板保持部の周囲に配設されるカップが内部に設けられた処理室と、前記基板保持部に保持された基板に対して処理液を供給するためのノズルと、前記ノズルを支持し、前記処理室内に進出した進出位置と前記処理室から退避した退避位置との間で水平方向に移動自在となっているアームと、前記処理室に隣接して設けられ、当該処理室から退避した前記アームが待機するためのアーム待機部と、前記処理室内において前記カップの周囲に配設され、上方位置と下方位置との間で昇降可能となっているカップ外周筒と、を備え、前記カップ外周筒が上方位置にあるときにこのカップ外周筒内の雰囲気が当該カップ外周筒の外側に送られるようになっており、前記処理室内の雰囲気の排気を行うための排気部が前記処理室内において前記カップ外周筒の外側に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の液処理方法は、処理室の内部に設けられた基板保持部により基板を水平状態に保持させる工程と、前記処理室内においてカップの周囲に配設されているカップ外周筒を下方位置から上方位置に移動させ、カップ外周筒内の領域を外部から隔離する工程と、ノズルを支持するアームを、前記処理室に隣接して設けられたアーム待機部から前記処理室内に進出させる工程と、前記基板保持部により基板を回転させ、前記処理室内に進出したアームのノズルにより、前記基板保持部により保持されて回転する基板に処理液を供給する工程と、を備え、前記カップ外周筒が上方位置にあるときにこのカップ外周筒内の雰囲気が当該カップ外周筒の外側に送られ、前記処理室内において前記カップ外周筒の外側に設けられている排気部により、前記処理室内の雰囲気の排気が行われることを特徴とする。
【0010】
このような液処理装置および液処理方法によれば、カップ外周筒が上方位置にあるときにこのカップ外周筒内の雰囲気が当該カップ外周筒の外側に送られるようになっており、処理室内の雰囲気の排気を行うための排気部が処理室内においてカップ外周筒の外側に設けられているので、カップ外周筒が下方位置にあるときには、排気部により処理室内全体の雰囲気の排気を行うことができ、カップ外周筒が上方位置にあるときにも、カップ外周筒内の雰囲気が当該カップ外周筒の外側に送られるようになるので、排気部によりカップ外周筒内の雰囲気の排気を行うことができる。このようにして、上述のような液処理装置および液処理方法によれば、処理室内、とりわけカップ外周筒内の雰囲気の置換性を向上させることができる。
【0011】
本発明の液処理装置においては、前記カップ外周筒を洗浄するための洗浄部を更に備えていてもよい。
【0012】
この際に、前記洗浄部は、洗浄液を貯留するための貯留部分を有し、前記カップ外周筒が下方位置にあるときに当該カップ外周筒が前記貯留部分に貯留された洗浄液に浸され、前記カップ外周筒が上方位置にあるときに当該カップ外周筒が前記貯留部分に貯留された洗浄液から上方に離間するようになっていてもよい。
【0013】
本発明の液処理装置においては、前記カップ外周筒には通気用開口が設けられており、前記カップ外周筒が上方位置にあるときにこのカップ外周筒内の雰囲気は前記通気用開口を介して前記カップ外周筒の外側に送られて前記排気部により排気されるようになっていてもよい。
【0014】
本発明の液処理装置においては、前記処理室と前記アーム待機部との間には鉛直方向に延びる壁が設けられており、前記壁には、前記アームが通過可能な開口が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液処理装置および液処理方法によれば、処理室内の雰囲気の置換性を向上させることができ、基板の液処理を行う際に飛散した薬液等の雰囲気が処理室内に残存しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態による液処理装置を含む液処理システムを上方から見た上面図である。
【図2】本発明の実施の形態による液処理装置の概略的な構成を示す上面図である。
【図3】図2に示す液処理装置の側面図である。
【図4】図2に示す液処理装置の構成の詳細を示す縦断面図であって、カップ外周筒が下方位置にあるときの状態を示す図である。
【図5】図2に示す液処理装置の構成の詳細を示す縦断面図であって、カップ外周筒が上方位置にあるときの状態を示す図である。
【図6A】(a)は、図4等に示す液処理装置における保持プレートに設けられた保持部材の構成を示す拡大縦断面図であり、(b)は、(a)に示す状態からリフトピンプレートが下方に移動したときの状態を示す拡大縦断面図であり、(c)は、(b)に示す状態からリフトピンプレートが更に下方に移動したときの状態を示す拡大縦断面図である。
【図6B】図4等に示す液処理装置におけるカップ外周筒の構成を示す斜視図である。
【図7】図4等に示す液処理装置のカップ外周筒の洗浄部の構成を示す側断面図であって、(a)は、カップ外周筒が上方位置にあるときの状態を示し、(b)は、カップ外周筒が下方位置にあるときの状態を示している。
【図8】カップ外周筒が下方位置にあるときの処理室におけるガスの流れを示す図である。
【図9】カップ外周筒が上方位置にあるときの処理室におけるガスの流れを示す図である。
【図10】本発明による液処理装置におけるカップ外周筒の他の構成を示す斜視図である。
【図11】図10に示すカップ外周筒を用いた場合における、カップ外周筒が上方位置にあるときの処理室におけるガスの流れを示す図である。
【図12】従来の液処理装置の概略的な構成を示す側面図である。
【図13】図10に示す従来の液処理装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図9は、本実施の形態による液処理装置を示す図である。より詳細には、図1は、本発明の実施の形態による液処理装置を含む液処理システムを上方から見た上面図である。また、図2は、本発明の実施の形態による液処理装置の概略的な構成を示す上面図であり、図3は、図2に示す液処理装置の概略的な構成を示す側面図である。また、図4および図5は、図2に示す液処理装置の構成の詳細を示す縦断面図である。また、図6Aは、図4等に示す液処理装置における保持プレートに設けられた保持部材の構成を示す拡大縦断面図であり、図6Bは、図4等に示す液処理装置におけるカップ外周筒の構成を示す斜視図である。また、図7は、図4等に示す液処理装置のカップ外周筒の洗浄部の構成を示す側断面図である。また、図8および図9は、それぞれ、カップ外周筒が下方位置および上方位置にあるときの処理室におけるガスの流れを示す図である。
【0018】
まず、図1を用いて、本実施の形態による液処理装置を含む液処理システムについて説明する。図1に示すように、液処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハ等の基板W(以下、ウエハWともいう)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット103と、棚ユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを液処理装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図1に示すように、液処理システムには、複数(図1に示す態様では4個)の液処理装置10が設けられている。
【0019】
次に、本実施の形態による液処理装置10の概略的な構成について図2および図3を用いて説明する。
【0020】
図2および図3に示すように、本実施の形態による液処理装置10は、ウエハWが収容され、この収容されたウエハWの液処理が行われる処理室(チャンバー)20を備えている。図3に示すように、処理室20内には、ウエハWを水平状態で保持して回転させるための保持部21が設けられており、この保持部21の周囲にはリング状の回転カップ40が配設されている。また、図2および図3に示すように、処理室20内において回転カップ40の周囲には円筒状のカップ外周筒50が配設されている。後述するように、このカップ外周筒50はウエハWの処理状況に応じて昇降可能となっている。これらの保持部21、回転カップ40およびカップ外周筒50の構成の詳細については後述する。
【0021】
また、液処理装置10には、保持部21に保持されたウエハWに対してウエハWの上方から処理液を供給するためのノズル82aおよびこのノズル82aを支持するノズルアーム82が設けられている。図2に示すように、1つの液処理装置10には複数(具体的には例えば6つ)のノズルアーム82が設けられており、各ノズルアーム82の先端にノズル82aが設けられている。また、図3に示すように、各ノズルアーム82にはアーム支持部84が設けられており、各アーム支持部84は図示しない駆動機構によって図3における左右方向に駆動されるようになっている。このことにより、各ノズルアーム82は、処理室20内に進出した進出位置と、処理室20から退避した退避位置との間で水平方向に直線運動を行うようになっている(図2および図3における各ノズルアーム82に設けられた矢印参照)。また、図3に示すように、各ノズルアーム82には表面処理液供給管82mが設けられており、各表面処理液供給管82mは表面処理液供給部89に接続されている。そして、表面処理液供給部89から各表面処理液供給管82mを介して各ノズルアーム82のノズル82aに処理液が供給されるようになっている。
【0022】
図2および図3に示すように、液処理装置10において、アーム待機部80が処理室20に隣接して設けられている。このアーム待機部80において、処理室20から退避したノズルアーム82が待機するようになっている。また、アーム待機部80と処理室20との間には鉛直方向に延びる壁90が設けられている。この壁90は、各ノズルアーム82が通過可能な開口88aが設けられたアーム洗浄部88を有している。このアーム洗浄部88により各ノズルアーム82の洗浄が行われるようになっている。
【0023】
また、図3に示すように、処理室20の上方にはFFU(ファンフィルタユニット)70が設けられており、このFFU70からN2ガス(窒素ガス)やクリーンエア等のガスがダウンフローで処理室20内に送られるようになっている。また、図2および図3に示すように、処理室20の底部におけるカップ外周筒50の外側には排気部56が設けられており、この排気部56により処理室20内の雰囲気の排気が行われるようになっている。この排気部56により、処理室20内におけるカップ外周筒50の外側の雰囲気の排気を行うことができるようになっている。具体的には、排気部56により、アーム待機部80内の雰囲気がカップ外周筒50内に入り込むことが抑止される。また、この排気部56により、カップ外周筒50内の雰囲気がアーム待機部80に出てしまうことが抑止される。
【0024】
また、図2および図3に示すように、アーム待機部80の底部には排気部58が設けられており、この排気部58によりアーム待機部80内の雰囲気の排気が行われるようになっている。具体的には、各ノズルアーム82を駆動するための駆動機構(図示せず)から発生するパーティクルを排気部58により引くことができるようになっている。
【0025】
また、図2に示すように、液処理装置10の処理室20およびアーム待機部80の出入口にはそれぞれメンテナンス用のシャッター60、62が設けられている。処理室20およびアーム待機部80にそれぞれメンテナンス用のシャッター60、62が設けられていることにより、これらの処理室20内やアーム待機部80内の機器を個別にメンテナンスすることができる。また、処理室20内でウエハWを処理している最中でも、シャッター62を開くことによりアーム待機部80内の機器をメンテナンスすることができるようになる。
【0026】
また、図2に示すように、液処理装置10の側壁には、搬送アーム104により処理室20内へウエハWを搬入したり処理室20からウエハWを搬出したりするための開口94aが設けられており、この開口94aには、当該開口94aを開閉するためのシャッター94が設けられている。
【0027】
なお、図2に示す液処理装置10において、処理室20内におけるカップ外周筒50の内部の領域はクリーンルームに対して微陽圧となっており、一方、処理室20内におけるカップ外周筒50の外側の領域はクリーンルームに対して微陰圧となっている。このため、処理室20内において、カップ外周筒50の内部の領域の気圧はカップ外周筒50の外側の領域の気圧よりも大きくなっている。
【0028】
次に、図2および図3に示すような液処理装置10の構成の詳細について図4および図5を用いて説明する。
【0029】
図4および図5に示すように、保持部21は、ウエハWを保持するための円板形状の保持プレート26と、保持プレート26の上方に設けられた円板形状のリフトピンプレート22とを備えている。リフトピンプレート22の上面には、ウエハWを下方から支持するためのリフトピン23が周方向に等間隔で3つ設けられている。なお、図4および図5では2つのリフトピン23のみを表示している。また、リフトピンプレート22にはピストン機構24が設けられており、このピストン機構24によりリフトピンプレート22が昇降するようになっている。より具体的には、搬送アーム104(図1参照)によりウエハWをリフトピン23上に載置したりリフトピン23上からウエハWを取り出したりするときには、ピストン機構24によりリフトピンプレート22が図4等に示すような位置から上方に移動させられ、このリフトピンプレート22は回転カップ40よりも上方に位置するようになる。一方、処理室20内でウエハWの液処理を行う際には、ピストン機構24によりリフトピンプレート22が図4等に示すような下方位置に移動させられ、ウエハWの周囲に回転カップ40が位置するようになる。
【0030】
保持プレート26には、ウエハWを側方から支持するための保持部材25が周方向に等間隔で3つ設けられている。なお、図4および図5では2つの保持部材25のみを表示している。各保持部材25は、リフトピンプレート22が上方位置から図4および図5に示すような下方位置に移動したときにこのリフトピン23上のウエハWを支持し、このウエハWをリフトピン23からわずかに離間させるようになっている。
【0031】
リフトピンプレート22および保持プレート26の構成について、図6Aを用いてより詳細に説明する。図6Aにおいて、(a)は、リフトピンプレート22が上方位置から図4等に示すような下方位置に移動する途中での状態を示す図であり、(b)は、(a)に示す状態からリフトピンプレート22が下方に移動したときの状態を示す図であり、(c)は、(b)に示す状態からリフトピンプレート22が更に下方に移動し、リフトピンプレート22が図4等に示すような下方位置に到達したときの状態を示す図である。
【0032】
図6に示すように、保持部材25は軸25aを介して保持プレート26に軸支されている。より詳細には、図6に示すように、保持プレート26には軸受け部26aが取り付けられており、この軸受け部26aに設けられた軸受け孔26bに軸25aが受け入れられる。軸受け孔26bは水平方向に延びるような細長い孔からなり、保持部材25の軸25aはこの軸受け孔26bに沿って水平方向に移動することができる。このようにして、保持部材25は、軸受け部26aの軸受け孔26bに受け入れられた軸25aを中心として揺動することができる。
【0033】
保持部材25の軸25aには、ねじりバネ等のバネ部材25dが巻き掛けられている。このバネ部材25dは、軸25aを中心として保持部材25を図6における時計回りの方向に回転させるような力を保持部材25に付勢するようになっている。これにより、保持部材25に何ら力が加えられていない場合には、保持部材25が保持プレート26に対して傾斜した状態となり、保持部材25におけるウエハWを側方から支持するための支持部分25b(後述)は保持プレート26の中心から遠ざかった状態となる。
【0034】
また、軸25aに巻き掛けられたバネ部材25dからは線状部分が伸び出しており、この線状部分は軸受け部26aの内壁面26cに係止されて、軸25aを保持プレート26の中心に向かって押し返す。このように、バネ部材25dの線状部分により、軸25aは保持プレート26の中心に向かって(すなわち、図6における左方向に向かって)常時押圧される。このため、比較的径が小さなウエハWが保持部材25により保持される場合には、軸25aは、図6に示すように、軸受け孔26bにおける保持プレート26の中心に近い位置(すなわち、図6における左側の位置)に位置する。一方、比較的径が大きなウエハWが保持部材25により支持される場合には、バネ部材25dの線状部分による力に抗して、軸25aは軸受け孔26bに沿って図6に示す位置から右方向に移動する。なお、ここでのウエハWの径の大小とは、許容寸法誤差内でのウエハWの径の大小を意味している。
【0035】
また、保持部材25は、ウエハWを側方から支持する支持部分25bと、軸25aに関して支持部分25bと反対側に設けられた被押圧部材25cとを有している。被押圧部材25cは、リフトピンプレート22と保持プレート26との間に設けられており、この被押圧部材25cは、図6に示すようにリフトピンプレート22が下方位置またはその近傍位置にあるときに当該リフトピンプレート22の下面により下方に向かって押圧される。
【0036】
図6に示すように、保持部材25は、リフトピンプレート22が上方位置から下方位置に移動したときに、当該リフトピンプレート22の下面により被押圧部材25cが下方に押圧されることにより軸25aを中心として図6における反時計回りの方向(図6における矢印方向)に回転する。そして、保持部材25が軸25aを中心として回転することにより、支持部分25bがウエハWに向かって当該ウエハWの側方から移動する。これにより、リフトピンプレート22が下方位置に到達したときに、図6(c)に示すように、ウエハWが保持部材25により側方から支持される。ここで、図6(c)に示すように、ウエハWが保持部材25により側方から支持されたときに、このウエハWはリフトピン23の先端から上方に離間し、リフトピン23から上方に浮いた状態となる。また、前述のように、ウエハWの大きさによっては、バネ部材25dの線状部分による力に抗して軸25aが軸受け孔26bに沿って図6に示す位置から右方向に移動する場合もある。このため、比較的大きなウエハWが保持部材25により支持される場合であっても、保持部材25が水平方向に移動可能となっているので、ウエハWを変形させたり破損させたりすることなくウエハWを側方から支持することができる。
【0037】
また、リフトピンプレート22および保持プレート26の中心部分にはそれぞれ貫通穴が形成されており、これらの貫通穴を通るよう処理液供給管28が設けられている。この処理液供給管28は、保持プレート26の各保持部材25により保持されたウエハWの裏面に薬液や純水等の処理液を供給するようになっている。また、処理液供給管28はリフトピンプレート22と連動して昇降するようになっている。処理液供給管28の上端には、リフトピンプレート22の貫通穴を塞ぐよう設けられたヘッド部分28aが形成されている。また、図4等に示すように、処理液供給管28には処理液供給部29が接続されており、この処理液供給部29により処理液供給管28に処理液が供給されるようになっている。
【0038】
図4および図5に示すように、保持部21の周囲にはリング状の回転カップ40が配設されている。この回転カップ40は保持プレート26に取り付けられており、保持プレート26と一体的に回転するようになっている。より詳細には、回転カップ40は、保持プレート26の各保持部材25により支持されたウエハWを側方から囲うよう設けられており、ウエハWの液処理を行う際にこのウエハWから側方に飛散した処理液を受けるようになっている。
【0039】
また、回転カップ40の周囲には、ドレインカップ42、第1案内カップ43、第2案内カップ44および第3案内カップ45が上方から順に設けられている。ドレインカップ42および各案内カップ43、44、45はそれぞれリング状に形成されている。ここで、ドレインカップ42は処理室20において固定されている。一方、各案内カップ43、44、45にはそれぞれ昇降シリンダ(図示せず)が連結されており、これらの案内カップ43、44、45は対応する昇降シリンダにより互いに独立して昇降自在となっている。
【0040】
図4および図5に示すように、ドレインカップ42や各案内カップ43、44、45の下方には、第1処理液回収用タンク46a、第2処理液回収用タンク46b、第3処理液回収用タンク46cおよび第4処理液回収用タンク46dがそれぞれ設けられている。そして、各案内カップ43、44、45の上下方向における位置により、ウエハWの液処理を行う際にこのウエハWから側方に飛散した処理液が、この処理液の種類に基づいて、4つの処理液回収用タンク46a、46b、46c、46dのうちいずれか一つの処理液回収用タンクに選択的に送られるようになっている。具体的には、全ての案内カップ43、44、45が全て上方位置にあるときには(図4および図5に示すような状態)、ウエハWから側方に飛散した処理液は第4処理液回収用タンク46dに送られるようになっている。一方、第3案内カップ45のみが下方位置にあるときには、ウエハWから側方に飛散した処理液は第3処理液回収用タンク46cに送られるようになっている。また、第2案内カップ44および第3案内カップ45が下方位置にあるときには、ウエハWから側方に飛散した処理液は第2処理液回収用タンク46bに送られるようになっている。また、全ての案内カップ43、44、45が下方位置にあるときには、ウエハWから側方に飛散した処理液は第1処理液回収用タンク46aに送られるようになっている。
【0041】
また、図4および図5に示すように、第4処理液回収用タンク46dの内側には排気部48が設けられている。そして、各案内カップ43、44、45の上下方向における位置が所定の位置となることにより、ウエハWの周囲の雰囲気が、排気部48により排気されるようになっている。
【0042】
また、本実施の形態の液処理装置10においては、処理室20内においてドレインカップ42や各案内カップ43、44、45の周囲にカップ外周筒50が設けられている。このカップ外周筒50は、図4に示すような下方位置と図5に示すような上方位置との間で昇降可能となっている。また、図2および図3に示すように、カップ外周筒50には、ノズルアーム82が通過可能な開口50mが設けられている。カップ外周筒50は、図5に示すような上方位置にあるときに、カップ外周筒50内の領域を外部に対して隔離するようになっている。
【0043】
このようなカップ外周筒50の構成の詳細について図6Bを用いて説明する。図6Bは、カップ外周筒50の構成を示す斜視図である。図6Bに示すように、カップ外周筒50の側面には、ノズルアーム82が通過可能な開口50mが、ノズルアーム82の本数に応じて設けられている(例えばノズルアーム82が6本の場合、6つの開口50mが設けられる)。また、カップ外周筒50の上部には、このカップ外周筒50を支持するための支持部材50aが連結されており、支持部材50aには当該支持部材50aを昇降させる駆動機構50bが設けられている。そして、駆動機構50bにより支持部材50aを昇降させることにより、この支持部材50aに支持されるカップ外周筒50も昇降するようになっている。
【0044】
また、図4および図5に示すように、FFU70にはガイド部材51が取り付けられている。このガイド部材51は、図5に示すようにカップ外周筒50が上方位置にあるときに、このカップ外周筒50から内側にわずかに距離を隔てて位置するよう配置されている。また、本実施の形態の液処理装置10においては、図5に示すようにカップ外周筒50が上方位置にあるときには、カップ外周筒50内の気圧はカップ外周筒50の外側の気圧よりも大きくなるようになっている。このため、カップ外周筒50が上方位置にあるときには、図9に示すように、FFU70により生じる処理室20内のダウンフローのガスが、ガイド部材51によりカップ外周筒50の上端近傍において当該カップ外周筒50の内側から外側に案内されるようになっている。
【0045】
また、図4および図5に示すように、処理室20内には、カップ外周筒50を洗浄するための洗浄部52が設けられている。この洗浄部52は、純水等の洗浄液を貯留するための貯留部分52aを有しており、図4に示すようにカップ外周筒50が下方位置にあるときにこのカップ外周筒50が貯留部分52aに貯留された洗浄液に浸されるようになっている。洗浄部52は、貯留部分52aに貯留された洗浄液にカップ外周筒50が浸されることにより、このカップ外周筒50の洗浄を行うようになっている。貯留部分52aに貯留される洗浄液としては、例えば室温以上の、好ましくは40℃以上の、更に好ましくは60℃以上の純水等が用いられる。貯留部分52aに貯留される洗浄液の温度が高い場合には、カップ外周筒50に対する洗浄効果がより大きくなる。
【0046】
このような洗浄部52の構成の詳細について図7を用いて説明する。図7は、洗浄部52の構成を示す側断面図である。具体的には、図7(a)は、カップ外周筒50が上方位置にあるときの状態を示しており、図7(b)は、カップ外周筒50が下方位置にあるときの状態を示している。
【0047】
図7に示すように、洗浄液を貯留するための貯留部分52aには洗浄液供給管52bが接続されており、この洗浄液供給管52bにより貯留部分52aに洗浄液が連続的に送られるようになっている。洗浄液供給管52bには洗浄液供給部53が接続されており、この洗浄液供給部53から洗浄液供給管52bに洗浄液が供給されるようになっている。また、図7に示すように、洗浄液供給管52bには加温装置53aが設けられており、この加温装置53aにより洗浄液供給管52b内の洗浄液が加温されるようになっている。また、貯留部分52aの側部にはドレン管52cが設けられており、このドレン管52cにより貯留部分52a内の洗浄液が排出されるようになっている。すなわち、洗浄液供給管52bにより貯留部分52aに洗浄液が連続的に送られ、この貯留部分52a内の洗浄液がドレン管52cにより排出されることにより、貯留部分52aに貯留される洗浄液は常に清浄な状態に維持されるようになっている。また、貯留部分52aの上部には、カップ外周筒50が通過可能な上部開口52dが設けられている。
【0048】
図7(b)に示すように、カップ外周筒50が下方位置にあるときにはこのカップ外周筒50の大部分が貯留部分52aに貯留された洗浄液に浸されるようになる。一方、図7(a)に示すように、カップ外周筒50が上方位置にあるときは、このカップ外周筒50は貯留部分52aに貯留された洗浄液から上方に離間するようになる。このため、カップ外周筒50が上方位置にあるときには、貯留部分52aに貯留された洗浄液とカップ外周筒50の下部との間で間隙が形成されるので、この間隙を介してカップ外周筒50内の雰囲気をカップ外周筒50の外側に送ることができるようになる。
【0049】
また、図7に示すように、カップ外周筒50の上端には、このカップ外周筒50が図7(b)に示すような下方位置にあるときに貯留部分52aに貯留された洗浄液を覆う蓋部分50cが設けられている。具体的には、蓋部分50cは、カップ外周筒50が図7(b)に示すような下方位置にあるときに、貯留部分52aの上部開口52dを塞ぐようになっている。洗浄部52において、貯留部分52aに貯留される洗浄液の温度が高温(具体的には、例えば60℃以上)である場合には、貯留部分52aに貯留される洗浄液は蒸発しやすくなり、この洗浄液の蒸気が例えば処理室20内におけるウエハWの乾燥処理時にウエハW等に付着してしまうと乾燥効率が悪くなるという問題がある。また、貯留部分52aに貯留される洗浄液の温度が40℃程度であっても、この洗浄液が蒸発してしまい、洗浄液の蒸気が例えば処理室20内におけるウエハWの乾燥処理時にウエハW等に付着してしまうおそれがある。これに対して、本実施の形態の液処理装置10によれば、蓋部分50cがカップ外周筒50の上端に設けられていることにより、カップ外周筒50が図7(b)に示すような下方位置にあるときには、貯留部分52aに貯留された洗浄液が蒸発してこの洗浄液の雰囲気が処理室20内やアーム待機部80に入り込むことを防止することができる。また、この場合、たとえ貯留部分52aに貯留された洗浄液が蒸発してこの洗浄液の雰囲気が処理室20内やアーム待機部80に入り込んだときでも、処理室20の底部におけるカップ外周筒50の外側に排気部56が設けられているので、このような洗浄液の雰囲気は排気部56により排気されるようになる。
【0050】
また、カップ外周筒50が図7(a)に示すような上方位置にあるときには、FFU70に取り付けられたガイド部材51はこのカップ外周筒50の上端から内側にわずかに隙間を隔てて位置するようになる。また、前述のように、カップ外周筒50が図7(a)に示すような上方位置にあるときには、カップ外周筒50内の気圧がカップ外周筒50の外側の気圧よりも大きくなる。このため、図7(a)に示すように、FFU70により生じる処理室20内のダウンフローのガスが、ガイド部材51によりカップ外周筒50の上端近傍において当該カップ外周筒50の内側から外側に案内される。
【0051】
また、図4および図5に示すように、処理室20内において、洗浄部52の外側には処理室20内の雰囲気の排気を行うための排気部56が設けられている。このような排気部56が設けられていることにより、カップ外周筒50が図4に示すような下方位置にあるときには、処理室20内全体の雰囲気の排気を行うことができる(図8参照)。また、カップ外周筒50が図5に示すような上方位置にあるときには、図9に示すように、カップ外周筒50内の雰囲気が、貯留部分52aに貯留された洗浄液とカップ外周筒50の下部との間で形成された間隙を介してカップ外周筒50の外側に送られ、最終的に排気部56により排気される。このように、処理室20内の雰囲気の排気を行うための排気部56が処理室20内においてカップ外周筒50の外側に設けられている場合でも、カップ外周筒50内の雰囲気の排気を適切に行うことができるので、カップ外周筒50内の雰囲気の置換性を向上させることができる。
【0052】
前述のように、本実施の形態においては、1つの液処理装置10に複数(具体的には例えば6つ)のノズルアーム82が設けられており、各ノズルアーム82の先端にノズル82aが設けられている。具体的には、各ノズル82aは、それぞれ、第1の薬液(具体的には、例えば酸性の薬液)、第2の薬液(具体的には、例えばアルカリ性の薬液)、純水、N2ガス、IPA(イソプロピルアルコール)、純水のミストをウエハWの上面に供給するようになっている。
【0053】
次に、このような構成からなる液処理装置10の動作について説明する。
【0054】
まず、保持部21におけるリフトピンプレート22および処理液供給管28を図4に示す位置から上方に移動させることと、処理室20の開口94aに設けられたシャッター94をこの開口94aから退避させることにより開口94aを開くことを行う。そして、液処理装置10の外部からウエハWが搬送アーム104により開口94aを介して処理室20内に搬送され、このウエハWがリフトピンプレート22のリフトピン23上に載置され、その後、搬送アーム104は処理室20から退避する。この際に、カップ外周筒50は図4に示すような下方位置に位置している。また、各ノズルアーム82は処理室20から退避した退避位置に位置している。すなわち、各ノズルアーム82はアーム待機部80で待機している。また、FFU70から処理室20内にクリーンエア等のガスが常にダウンフローで送られ、このガスがカップ外周筒50の内部から外部に送られた後、排気部56により排気されることにより、処理室20内の雰囲気の置換が行われるようになっている。
【0055】
次に、リフトピンプレート22および処理液供給管28を下方に移動させ、これらのリフトピンプレート22および処理液供給管28を図4に示すような下方位置に位置させる。この際に、保持プレート26に設けられた各保持部材25が、リフトピン23上のウエハWを支持し、このウエハWをリフトピン23からわずかに離間させる。
【0056】
その後に、またはリフトピンプレート22の下降中に、カップ外周筒50に設けられた駆動機構50bにより、このカップ外周筒50を上方に移動させ、カップ外周筒50を図5に示すような上方位置に位置させる。そして、カップ外周筒50が上方位置に移動した後、アーム待機部80で待機している6つのノズルアーム82のうち一または複数のノズルアーム82が壁90のアーム洗浄部88の開口88aおよびカップ外周筒50の開口50mを介して処理室20内に進出する。この際に、ノズルアーム82は直線運動を行う。
【0057】
次に、保持部21における保持プレート26およびリフトピンプレート22を回転させる。このことにより、保持プレート26の各保持部材25により支持されているウエハWも回転する。そして、ウエハWが回転した状態で、処理室20内に進出したノズルアーム82のノズル82aからウエハWの上面に処理液を供給する。また、この際に、ウエハWの下面(裏面)に向かって処理液供給管28から薬液や純水等の処理液を供給する。このようにして、ウエハWの上面および下面の両方に処理液が供給され、ウエハWの液処理が行われる。ウエハWに供給された処理液は、この処理液の種類に基づいて、各案内カップ43、44、45が上方位置または下方位置にそれぞれ位置することにより、4つの処理液回収用タンク46a、46b、46c、46dのうちいずれか一つの処理液回収用タンクに選択的に送られて回収される。
【0058】
その後、ウエハWの液処理が終了すると、処理室20に進出したノズルアーム82はこの処理室20から退避してアーム待機部80で待機するようになる。そして、カップ外周筒50に設けられた駆動機構50bにより、このカップ外周筒50を下方に移動させ、カップ外周筒50を図4に示すような下方位置に位置させる。
【0059】
その後、保持部21におけるリフトピンプレート22および処理液供給管28を図4に示す位置から上方に移動させる。この際に、保持プレート26の保持部材25により支持されたウエハWがリフトピンプレート22のリフトピン23上に受け渡される。次に、処理室20の開口94aに設けられたシャッター94をこの開口94aから退避させることにより開口94aを開き、液処理装置10の外部から開口94aを介して搬送アーム104を処理室20内に進出させ、この搬送アーム104によりリフトピンプレート22のリフトピン23上のウエハWを取り出す。搬送アーム104により取り出されたウエハWは液処理装置10の外部に搬送される。このようにして、一連のウエハWの液処理が完了する。
【0060】
以上のように本実施の形態の液処理装置10によれば、カップ外周筒50が上方位置にあるときにこのカップ外周筒50内の雰囲気が当該カップ外周筒50の外側に送られるようになっており、処理室20内の雰囲気の排気を行うための排気部56が処理室20内においてカップ外周筒50の外側に設けられているので、カップ外周筒50が図4に示すような下方位置にあるときには、処理室20内全体の雰囲気の排気を行うことができ(図8参照)、カップ外周筒50が図5に示すような上方位置にあるときにも、カップ外周筒50内の雰囲気が当該カップ外周筒50の外側に送られるようになっているので、排気部56によりカップ外周筒50内の雰囲気の排気を行うことができる(図9参照)。
【0061】
ここで、処理室内でウエハWの液処理を行う際にこの処理室内で薬液等が飛散すると、この薬液の雰囲気が当該領域で残存してしまい、その後のウエハWの処理においてこの残存した薬液の雰囲気によりウエハWが汚れてしまう等の悪影響を与えてしまうおそれがある。具体的には、処理後のウエハWを含む様々な乾燥物に対して薬液等が再付着してしまうと、パーティクルの原因となってしまうという問題がある。また、残存した薬液におけるアルカリ性や酸性の雰囲気が化学反応を起こすことにより、結晶物が生成されてしまい、パーティクルの原因となってしまうという問題がある。しかしながら、本実施の形態の液処理装置10では、処理室20内、とりわけカップ外周筒50内の雰囲気の置換性を向上させることができることができるので、ウエハWの液処理を行う際に飛散した薬液等の雰囲気が処理室20内やアーム待機部80に残存しないようにすることができる。
【0062】
また、本実施の形態の液処理装置10においては、前述のように、カップ外周筒50を洗浄するための洗浄部52が設けられている。このことにより、カップ外周筒50を清浄な状態に維持することができ、ウエハWの液処理を行う際に飛散した薬液等がカップ外周筒50に残存してしまうことを防止することができる。
【0063】
また、本実施の形態の液処理装置10においては、洗浄部52は、洗浄液を貯留するための貯留部分52aを有し、カップ外周筒50が下方位置にあるときに当該カップ外周筒50が貯留部分52aに貯留された洗浄液に浸されるようになっている。このことにより、洗浄部52は、貯留部分52aに貯留された洗浄液にカップ外周筒50を浸すというシンプルな方法で当該カップ外周筒50の洗浄を行うことができるようになる。
【0064】
また、本実施の形態の液処理装置10においては、図2および図3に示すように、処理室20とアーム待機部80との間には鉛直方向に延びる壁90が設けられており、壁90のアーム洗浄部88には、ノズルアーム82が通過可能な開口88aが設けられている。
【0065】
なお、本実施の形態による液処理装置は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。例えば、処理室20内に進出したノズルアーム82のノズル82aおよび処理液供給管28によりウエハWの上面および下面の両方に処理液を供給する必要はなく、ノズルアーム82のノズル82aによりウエハWの上面のみに処理液を供給するようになっていてもよい。また、本実施の形態による液処理装置は、基板の洗浄処理以外に、エッチング処理、メッキ処理、現像処理等の処理にも用いることができる。
【0066】
また、カップ外周筒50が上方位置にあるときにこのカップ外周筒50内の雰囲気をカップ外周筒50の外側に送る方法として、図7(a)に示すような、カップ外周筒50が上方位置にあるときに貯留部分52aに貯留された洗浄液とカップ外周筒50の下部との間で間隙を形成し、この間隙を介してカップ外周筒50内の雰囲気をカップ外周筒50の外側に送ることに限定されることはない。カップ外周筒50が上方位置にあるときにこのカップ外周筒50内の雰囲気をカップ外周筒50の外側に送る他の方法について図10および図11を用いて説明する。図10は、本発明による液処理装置20におけるカップ外周筒50の他の構成を示す斜視図であり、図11は、図10に示すカップ外周筒50を用いた場合における、カップ外周筒50が上方位置にあるときの処理室20におけるガスの流れを示す図である。
【0067】
図10に示すように、変形例に係るカップ外周筒50には、アーム82が通過可能な開口50mに加えて、カップ外周筒50内の雰囲気をカップ外周筒50の外側に送るための通気用開口50nが複数設けられている。図10に示すように、複数の通気用開口50nは、カップ外周筒50の側面において周方向に等間隔で配置されている。
【0068】
また、図11に示すように、カップ外周筒50が上方位置にあるときにこのカップ外周筒50の下部が貯留部分52aに貯留された洗浄液に浸されるようになっている。このため、カップ外周筒50が上方位置にあるときには、貯留部分52aに貯留された洗浄液とカップ外周筒50の下部との間でシールが行われるようになる。そして、カップ外周筒50が上方位置にあるときには、図11に示すように、カップ外周筒50内の雰囲気が、このカップ外周筒50に形成された通気用開口50nを介してカップ外周筒50の外側に送られ、最終的に排気部56により排気される。このように、処理室20内の雰囲気の排気を行うための排気部56が処理室20内においてカップ外周筒50の外側に設けられている場合でも、通気用開口50nを介してカップ外周筒50内の雰囲気の排気を行うことができるので、カップ外周筒50内の雰囲気の置換性を向上させることができる。
【0069】
なお、図10に示すようなカップ外周筒50が用いられる場合において、図7(a)に示すように、カップ外周筒50が上方位置にあるときに、このカップ外周筒50が貯留部分52aに貯留された洗浄液から上方に離間するようになっていてもよい。この場合には、カップ外周筒50が上方位置にあるときにおいて、貯留部分52aに貯留された洗浄液とカップ外周筒50の下部との間で間隙が形成されるので、この間隙およびカップ外周筒50の通気用開口50nの両方を介してカップ外周筒50内の雰囲気をカップ外周筒50の外側に送ることができるようになる。
【符号の説明】
【0070】
10 液処理装置
20 処理室
21 保持部
22 リフトピンプレート
23 リフトピン
24 ピストン機構
25 保持部材
25a 軸
25b 支持部分
25c 被押圧部材
25d バネ部材
26 保持プレート
26a 軸受け部
26b 軸受け孔
26c 内面壁
28 処理液供給管
28a ヘッド部分
29 処理液供給部
40 回転カップ
42 ドレインカップ
43 第1案内カップ
44 第2案内カップ
45 第3案内カップ
46a 第1処理液回収用タンク
46b 第2処理液回収用タンク
46c 第3処理液回収用タンク
46d 第4処理液回収用タンク
48 排気部
50 カップ外周筒
50a 支持部材
50b 駆動機構
50c 蓋部分
50m 開口
51 ガイド部材
52 洗浄部
52a 貯留部分
52b 洗浄液供給管
52c ドレン管
52d 上部開口
53 洗浄液供給部
53a 加温装置
56 排気部
58 排気部
60 シャッター
62 シャッター
70 FFU
80 アーム待機部
82 ノズルアーム
82a ノズル
82m 表面処理液供給管
84 アーム支持部
88 アーム洗浄部
88a 開口
89 表面処理液供給部
90 壁
94 シャッター
94a 開口
101 載置台
102 搬送アーム
103 棚ユニット
104 搬送アーム
200 液処理装置
210 処理室
220 保持部
230 カップ
240 ノズル
241 アーム
242 アーム支持部
250 FFU
260 排気部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平状態に保持して回転させるための基板保持部および当該基板保持部の周囲に配設されるカップが内部に設けられた処理室と、
前記基板保持部に保持された基板に対して処理液を供給するためのノズルと、
前記ノズルを支持し、前記処理室内に進出した進出位置と前記処理室から退避した退避位置との間で水平方向に移動自在となっているアームと、
前記処理室に隣接して設けられ、当該処理室から退避した前記アームが待機するためのアーム待機部と、
前記処理室内において前記カップの周囲に配設され、上方位置と下方位置との間で昇降可能となっているカップ外周筒と、
を備え、
前記カップ外周筒が上方位置にあるときにこのカップ外周筒内の雰囲気が当該カップ外周筒の外側に送られるようになっており、
前記処理室内の雰囲気の排気を行うための排気部が前記処理室内において前記カップ外周筒の外側に設けられていることを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記カップ外周筒を洗浄するための洗浄部を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の液処理装置。
【請求項3】
前記洗浄部は、洗浄液を貯留するための貯留部分を有し、
前記カップ外周筒が下方位置にあるときに当該カップ外周筒が前記貯留部分に貯留された洗浄液に浸され、前記カップ外周筒が上方位置にあるときに当該カップ外周筒が前記貯留部分に貯留された洗浄液から上方に離間するようになっていることを特徴とする請求項2記載の液処理装置。
【請求項4】
前記カップ外周筒には通気用開口が設けられており、前記カップ外周筒が上方位置にあるときにこのカップ外周筒内の雰囲気は前記通気用開口を介して前記カップ外周筒の外側に送られて前記排気部により排気されるようになっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記処理室と前記アーム待機部との間には鉛直方向に延びる壁が設けられており、
前記壁には、前記アームが通過可能な開口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項6】
処理室の内部に設けられた基板保持部により基板を水平状態に保持させる工程と、
前記処理室内においてカップの周囲に配設されているカップ外周筒を下方位置から上方位置に移動させ、カップ外周筒内の領域を外部から隔離する工程と、
ノズルを支持するアームを、前記処理室に隣接して設けられたアーム待機部から前記処理室内に進出させる工程と、
前記基板保持部により基板を回転させ、前記処理室内に進出したアームのノズルにより、前記基板保持部により保持されて回転する基板に処理液を供給する工程と、
を備え、
前記カップ外周筒が上方位置にあるときにこのカップ外周筒内の雰囲気が当該カップ外周筒の外側に送られ、
前記処理室内において前記カップ外周筒の外側に設けられている排気部により、前記処理室内の雰囲気の排気が行われることを特徴とする液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−142392(P2012−142392A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293499(P2010−293499)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】