説明

液処理装置および液処理方法

【課題】基板の下面を効率良く洗浄することができる液処理装置を提供する。
【解決手段】基板洗浄装置(10)は、基板保持機構に保持された基板(W)の下面の下方に位置して基板の下面に処理液を吐出するノズル(60)を備える。ノズルは基板の中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置の間に配列された複数の第1の吐出口(61)を有している。第1吐出口は、基板の下面に向けて吐出される処理液の吐出方向が基板の回転方向の成分を持つように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を回転させながら基板の下面に処理液を供給することにより基板に所定の液処理例えば洗浄処理またはエッチング処理を行う液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ等の基板(以下、ウエハともいう)を略水平状態に保持した状態で回転させながら当該基板に洗浄液を供給することにより基板の洗浄処理を行う基板洗浄装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウエハを水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックの回転軸内で延在するとともにスピンチャックにより保持されたウエハの下面の中央部に向けて洗浄液を吐出する開口端を有する洗浄液供給管と、を備えた基板処理装置が記載されている。基板の下面の中央部に向けて洗浄液を吐出すると、基板下面の周縁部の洗浄が不十分になる場合もある。
【0004】
特許文献2には、ウエハを水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックにより保持されたウエハの上面に、薬液等の処理液体と窒素ガスとからなる二流体スプレーをウエハの概ね半径に相当する長さの帯の態様で吐出する二流体ノズルと、を備えた基板処理装置が記載されている。特許文献2には、このような二流体ノズルをウエハの下面側に配置してウエハの下面を洗浄してもよい旨が示唆されているが、そのための具体的な構成については記載されていない。
【0005】
特許文献3には、ウエハを水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックにより保持されたウエハの上面に、薬液等の処理液体と窒素ガスとからなる二流体スプレーをウエハの概ね直径に相当する長さの帯の態様で吐出する二流体ノズルと、ウエハ上面の中心部にDIW(純水)等の処理液体を吐出する別のノズルと、を備えた基板処理装置が記載されている。特許文献3の装置では、二流体ノズルが二流体スプレーをウエハ表面に吐出するときには、ウエハが回転しない状態で二流体ノズルがウエハの上面をスキャンする。特許文献3にはウエハの下面の洗浄については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−290197号公報
【特許文献2】特開2005−353739号公報
【特許文献3】特開2008−130763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基板の下面を効率良く処理することができる液処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、基板の周縁部を保持する保持部材を有し、基板を水平に保持するように構成された基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、前記基板保持機構に保持された基板の下面の下方に位置するとともに前記基板保持部により保持された基板の下面に処理液を吐出する第1のノズルであって、複数の第1の吐出口を有しており、前記複数の第1の吐出口が前記基板保持部に保持された基板の中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置の間に配列されている、第1のノズルと、前記第1の吐出口に処理液を供給する液体供給機構と、を備え、前記第1吐出口が、当該第1の吐出口から基板の下面に向けて吐出される処理液の吐出方向が、前記回転駆動部により回転させられる基板の回転方向に傾斜するように形成されている液処理装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、基板を水平姿勢に保持することと、複数の第1の吐出口を有する第1のノズルを、前記複数の第1の吐出口が前記基板の中央部に対向する位置から前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列されるように、前記基板の下方に設けることと、基板を回転させることと、第1の吐出口から基板の下面に向けて吐出される処理液の吐出方向が、前記基板の回転方向の成分を持つように、前記第1の吐出口から前記基板の下面に向けて処理液を吐出させることと、を備えた液処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の中央部に対向する位置から前記基板の周縁部に対向する位置にわたって配列された複数の第1の吐出口により、基板の下面に高い均一性をもって処理液を吐出させることができる。また、第1の吐出口から基板の下面に向けて吐出される処理液の吐出方向が、前記基板の回転方向の成分を持っているため、処理液が基板の下面に衝突したときに液はねが抑制され、効率の良い液処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態による基板洗浄装置を含む液処理システムを上方から見た上方平面図である。
【図2A】本発明の実施の形態の基板洗浄装置の構成を示す縦断面図であって、リフトピンプレートおよび洗浄液供給管が下方位置にあるときの状態を示す図である。
【図2B】本発明の実施の形態の基板洗浄装置の構成を示す縦断面図であって、リフトピンプレートおよび洗浄液供給管が上方位置にあるときの状態を示す図である。
【図2C】図2Aに示すような、ウエハが基板支持部および固定保持部により保持された状態を示す、図2Aにおける基板洗浄装置を上方から見た上面図である。
【図3】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置のリフトピンプレートの構成を示す斜視図である。
【図4】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置の保持プレートの構成を示す斜視図である。
【図5】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置における、リフトピンプレートから下方に延びる接続部材および保持プレートから下方に延び接続部材を収容する中空の収容部材の構成の詳細を示す拡大縦断面図である。
【図6】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置における保持プレートに設けられた基板支持部の構成を示す拡大縦断面図である。
【図7】図6に示す状態からリフトピンプレートが下方に移動したときの状態を示す拡大縦断面図である。
【図8】図7に示す状態からリフトピンプレートが更に下方に移動したときの状態を示す拡大縦断面図である。
【図9】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置の処理流体供給管および棒状ノズル並びにこれらを昇降させる昇降機構の構成を示す斜視図である。
【図10】処理流体供給管および棒状ノズルの構成を説明するための図であって、(a)は平面図、(b)はXb−Xb線に沿った断面図、(c)はXc−Xc線に沿った断面図である。
【図11】棒状ノズルから液体のみが吐出される状態を示す図であって、(a)はウエハ下面に到達した瞬間の液体が濡らす領域を示す図、(b)は棒状ノズルの棒状部分の吐出口から液体が吐出される様子を示す側面図、(c)は棒状ノズルの中央部分の吐出口から液体が吐出される様子を示す側面図である。
【図12】棒状ノズルの吐出口から吐出された薬液がウエハ上に形成するスポットについて説明する図である。
【図13】棒状ノズルから二流体が吐出される状態を示す図であって、(a)は棒状ノズルの棒状部分の吐出口から二流体が吐出される様子を示す側面図、(b)は棒状ノズルの中央部分の吐出口から二流体が吐出される様子を示す側面図である。
【図14】棒状ノズルの棒状部分の吐出口近傍における液体吐出路と気体吐出路との合流の態様を説明する図である。
【図15】液処理装置の変形例について説明するための概略構成図である。
【図16】棒状ノズルの吐出口配置の変形例を示す概略平面図である。
【図17】棒状ノズルの位置を変化させながら吐出口から液体を吐出する例を説明するための概略平面図である。
【図18】棒状ノズルの変形例において、吐出口近傍を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
まず、図1を用いて、本発明による液処理装置の実施形態に係る基板洗浄装置を含む処理システムについて説明する。図1に示すように、処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハW(以下単に「ウエハW」と称する)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット103と、棚ユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを基板洗浄装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図1に示すように、液処理システムには、複数(図1に示す態様では10個)の基板洗浄装置10が組み込まれている。
【0014】
次に、基板洗浄装置10の概略的な構成について図2Aおよび図2Bを用いて説明する。基板洗浄装置10は、ウエハWを保持する保持プレート30と、保持プレート30の上方に設けられ、ウエハWを下方から支持するリフトピン22を有するリフトピンプレート20と、保持プレート30を回転させる電動モータ等を備えた回転駆動部39と、保持プレート30の中心部分に形成された貫通穴30aおよびリフトピンプレート20の中心部分に形成された貫通穴20aを通るよう設けられた処理流体供給管40と、処理流体供給管40を介して供給された処理流体をウエハWの下面に向けて吹き付ける棒状ノズル60を有している。リフトピンプレート20は、保持プレート30と連動して回転するようになっている。
【0015】
リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60は、保持プレート30に対して相対的に昇降することができる。ここで、図2Aは、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60がそれぞれ下降位置にあるときの状態を示しており、図2Bは、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60がそれぞれ上昇位置にあるときの状態を示している。リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60は、それぞれ、図2Aに示すような下降位置と図2Bに示すような上昇位置との間で昇降する。
【0016】
次に、基板洗浄装置10の各構成要素の詳細について以下に説明する。
【0017】
図3に示すように、リフトピンプレート20は円板形状のものからなり、その中心部分には貫通穴20aが形成されている。貫通穴20aの周囲には環状突起20bが設けられており、リフトピンプレート20上にある液体が貫通穴20a内に入り込むことを防止している。貫通穴20aに処理流体供給管40が通される。リフトピンプレート20の表面には複数本(3本または4本)のリフトピン22が設けられている。これらのリフトピン22は、リフトピンプレート20の周縁部近傍において周方向に等間隔で設けられている。また、リフトピンプレート20の下面(各リフトピン22が設けられた面とは反対側の面)から、3つの棒状の接続部材24が下方に延びている。これらの接続部材24は、リフトピンプレート20の周縁部近傍において周方向に等間隔で設けられている。
【0018】
図4に示すように、保持プレート30は円板形状のものからなり、その中心部分には貫通穴30aが形成されている。この貫通穴30aには処理流体供給管40が通される。また、保持プレート30の表面には、図2Aに示すように、接続部材38を介して回転カップ36が取り付けられている。回転カップ36は、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60が下降位置にあるときに保持プレート30により保持されるウエハWの外周縁を囲む。また、図2Aおよび図2Cに示すように、回転カップ36には、ウエハWを保持するための2つの固定保持部材37が設けられている。固定保持部材37の具体的な機能については後述する。なお、これらの固定保持部材37は、回転カップ36に設けられる代わりに保持プレート30に設けられていてもよく、あるいは接続部材38に直接接続されていてもよい。固定保持部材37が接続部材38に直接接続されている場合には、水平方向の力に対する固定保持部材37の強度をより大きなものとすることができる。
【0019】
保持プレート30の下面(回転カップ36が設けられた面とは反対側の面)の中心部分には、当該保持プレート30の下面から下方に延びるよう中空の回転軸34が取り付けられている。回転軸34の中空部分には処理流体供給管40が収容されている。回転軸34はベアリング(図示せず)により支持されるとともに、電動モータ等の回転駆動部39により回転させられる。回転駆動部39が回転軸34を回転させることにより、保持プレート30も回転する。
【0020】
図4に示すように、保持プレート30には、3つの貫通穴(接続部材貫通穴)30bが形成されており、各貫通穴30bにリフトピンプレート20に結合された接続部材24がスライド可能に通されている。従って、接続部材24は、保持プレート30とリフトピンプレート20との相対的回転を禁止して保持プレート30およびリフトピンプレート20が一体的に回転するように接続する一方で、保持プレート30とリフトピンプレート20との相対的上下動を許容する。貫通穴30bは保持プレート30の周方向に等間隔に設けられている。また、保持プレート30の下面において、各貫通穴30bの箇所には、3つの円筒形状の収容部材32が設けられている。各収容部材32は、保持プレート30の下面から下方に延びるようになっており、リフトピンプレート20の下面から下方に延びる各接続部材24を収容するようになっている。これらの収容部材32は、保持プレート30の周縁部近傍において周方向に等間隔で設けられている。
【0021】
リフトピンプレート20の下面から下方に延びる各接続部材24および保持プレート30の下面から下方に延びる各収容部材32について図5を用いてより詳細に説明する。図5に示すように、円筒形状の各収容部材32の内径は各接続部材24の外径よりもやや大きくなっており、各収容部材32の長手方向(図5の上下方向)に沿って各接続部材24が各収容部材32内で移動することができるようになっている。図2Aに示すように、リフトピンプレート20が下降位置にあるときには、各接続部材24は各収容部材32に完全に収容された状態となる。一方、図2Bに示すように、リフトピンプレート20が上昇位置にあるときには、各接続部材24はその下部における一部分のみが各収容部材32に収容された状態となり、各接続部材24は保持プレート30に形成された貫通穴30bを通過してこの保持プレート30から上方に突出する。リフトピンプレート20が下降位置にあるときには、各接続部材24が各収容部材32に収容された状態となる。
【0022】
図5に示すように、各収容部材32の中空部分にはバネ26が圧縮された状態で収容されている。このバネ26は、その下端が接続部材24の下端部分に取り付けられるとともに、その上端が貫通穴30bの近傍における保持プレート30の下面に取り付けられている。このため、バネ26により接続部材24は下方に付勢されるようになっている。すなわち、バネ26が圧縮状態から元の状態に戻ろうとする力により、接続部材24には常に下向きの力(保持プレート30から下方に移動しようとする力)が加えられる。
【0023】
図2Aおよび図2Bに示すように、回転カップ36の外方には外カップ56が設けられており、保持プレート30や回転カップ36は外カップ56により覆われる。この外カップ56には排液管58が接続されており、ウエハWの洗浄のために使用され、ウエハWの回転により当該ウエハWから外方に飛散して外カップ56により受けられた洗浄液は排液管58により排出される。
【0024】
図2A等に示すように、保持プレート30には、ウエハWを側方から支持するための可動の基板保持部材31が設けられている。基板保持部材31は、図2Aに示すようにリフトピンプレート20が下降位置にあるときにウエハWを側方から保持し、一方、図2Bに示すようにリフトピンプレート20が上昇位置にあるときにウエハWから離間する。より詳細に説明すると、図2Cに示すように、ウエハWの洗浄処理を行う際に、ウエハWは基板保持部材31および2つの固定保持部材(固定の基板保持部材)37により保持される。このときに、基板保持部材31はウエハWを固定保持部材37に向かって押し付ける。
すなわち、図2Cにおいて基板保持部材31によりウエハWに対して図2Cにおける左方向に力が加えられ、これによりウエハWは2つの固定保持部材37に押し付けられる。このように、可動の基板保持部材31および固定保持部材37の両方を用いてウエハWを側方から保持する場合には、固定保持部材37を用いずに複数の可動の基板保持部材31だけを用いてウエハWを側方から保持する場合と比較して、ウエハWに対して移動(進退)する部材の数を1つのみとすることができるので、よりシンプルな構成でウエハWの保持を行うことができる。
【0025】
以下に基板保持部材31の構成の詳細について図6〜図8を参照して説明する。
【0026】
図6は、リフトピンプレート20が図2Bに示すような上昇位置から図2Aに示すような下降位置に向かって移動する途中での状態を示す図であり、図7は、図6に示す状態からリフトピンプレート20が下方に移動したときの状態を示す図であり、図8は、図6に示す状態からリフトピンプレート20が更に下方に移動し、リフトピンプレート20が図2Aに示すような下降位置に到達したときの状態を示す図である。
【0027】
図6乃至図8に示すように、基板保持部材31は軸31aを介して保持プレート30に軸支されている。より詳細には、図6乃至図8に示すように、保持プレート30には軸受け部33が取り付けられており、この軸受け部33に設けられた軸受け孔33aに軸31aが受け入れられる。軸受け孔33aは水平方向に延びる長孔からなり、基板保持部材31の軸31aはこの軸受け孔33aに沿って水平方向に移動することができる。このようにして、基板保持部材31は、軸受け部33の軸受け孔33aに受け入れられた軸31aを中心として揺動することができる。
【0028】
基板保持部材31の軸31aには、ねじりバネ等のバネ部材31dが巻き掛けられている。このバネ部材31dは、軸31aを中心として基板保持部材31を図6乃至図8における時計回りの方向に回転させるような力を基板保持部材31に付勢するようになっている。これにより、基板保持部材31に何ら力が加えられていない場合には、図2Bに示すように、基板保持部材31が保持プレート30に対して傾斜した状態となり、基板保持部材31におけるウエハWを側方から保持するための基板保持部分31b(後述)は保持プレート30の中心から遠ざかった状態となる。
【0029】
また、軸31aに巻き掛けられたバネ部材31dからは線状部分が伸び出しており、この線状部分は軸受け部33の内壁面33bに係止されて、軸31aを保持プレート30の中心に向かって押し返す。このように、バネ部材31dの線状部分により、軸31aは保持プレート30の中心に向かって(すなわち、図6乃至図8における左方向に向かって)常時押圧される。このため、比較的径が小さなウエハWが可動の基板保持部材31および固定保持部材37により支持される場合には、軸31aは、図6乃至図8に示すように、軸受け孔33aにおける保持プレート30の中心に近い位置(すなわち、図6乃至図8における左側の位置)に位置する。一方、比較的径が大きなウエハWが基板保持部材31および固定保持部材37により支持される場合には、バネ部材31dの線状部分による力に抗して、軸31aは軸受け孔33aに沿って図6等に示す位置から右方向に移動する。なお、ここでのウエハの径の大小とは、許容寸法誤差内でのウエハの径の大小を意味している。
【0030】
また、基板保持部材31は、ウエハWを側方から保持する基板保持部分31bと、軸31aに関して基板保持部分31bと反対側に設けられた被押圧部材31cとを有している。被押圧部材31cは、リフトピンプレート20と保持プレート30との間に設けられており、この被押圧部材31cは、図6乃至図8に示すようにリフトピンプレート20が下降位置またはその近傍位置にあるときに当該リフトピンプレート20の下面により下方に向かって押圧される。
【0031】
図6乃至図8に示すように、基板保持部材31は、リフトピンプレート20が上昇位置から下降位置に移動したときに、当該リフトピンプレート20の下面により被押圧部材31cが下方に押圧されることにより軸31aを中心として図6等の反時計回りの方向(図6等の矢印方向)に回転する。そして、基板保持部材31が軸31aを中心として回転することにより、基板保持部分31bがウエハWに向かって当該ウエハWの側方から移動する。これにより、リフトピンプレート20が下降位置に到達したときに、図8に示すように、ウエハWが基板保持部材31により側方から保持される。ここで、図8に示すように、ウエハWが基板保持部材31により側方から保持されたときに、このウエハWはリフトピン22の先端から上方に離間し、リフトピン22から上方に浮いた状態となる。また、前述のように、ウエハWの大きさによっては、バネ部材31dの線状部分による力に抗して軸31aが軸受け孔33aに沿って図6等に示す位置から右方向に移動する場合もある。このため、比較的大きなウエハWが基板保持部材31および固定保持部材37により保持される場合であっても、基板保持部材31が水平方向に移動可能となっているので、ウエハWを変形させたり破損させたりすることなくウエハWを側方から保持することができる。
【0032】
上述のような基板保持部材31が基板洗浄装置10に設けられていることにより、基板保持部材31を駆動するための専用の駆動機構(動力源)を設ける必要がなく、後述する昇降駆動部50によりリフトピンプレート20を昇降させるだけで、保持プレート30の基板保持部材31によるウエハWの保持/解放動作を行うことができるため、基板洗浄装置10の構成をよりシンプルなものとすることができる。また、リフトピンプレート20の昇降のタイミングと基板保持部材31の移動のタイミングとの間にタイムラグが生じることを抑制することができ、スループットを向上させることもできる。
【0033】
図2Aおよび図2Bに示すように、処理流体供給管40はリフトピンプレート20の貫通穴20aおよび保持プレート30の貫通穴30aをそれぞれ通過するよう設けられている。なお、処理流体供給管40は、リフトピンプレート20や保持プレート30が回転する際にも回転しないようになっている。処理流体供給管40の内部には、洗浄液としてDHF、SC1等の薬液およびDIW等のリンス液を通すための液体供給路40aと、気体例えばNガス等の不活性ガスを通すための気体供給路40bとが軸方向に延びている。
処理流体供給管40の上端には後に詳述する棒状ノズル60が取り付けられている。
【0034】
図2A、図2Bおよび図9に示すように、処理流体供給管40には接続部材52を介して昇降駆動部50が設けられている。昇降駆動部50は、処理流体供給管40を昇降させるようになっている。すなわち、昇降駆動部50が接続部材52を昇降させることにより、この接続部材52に接続された処理流体供給管40および棒状ノズル60も昇降することとなる。より詳細には、昇降駆動部50は、図2Aに示すような下降位置と、図2Bに示すような上昇位置との間で処理流体供給管40および棒状ノズル60を昇降させる。
【0035】
また、図9に示すように、処理流体供給管40には第1の連動部材44が接続されている。そして、第1の連動部材44には、3つの棒状の第2の連動部材46が第1の連動部材44から上方に延びるよう接続されている。ここで、各第2の連動部材46は、リフトピンプレート20の下面から下方に延びるよう設けられた各接続部材24に対応して設けられており、棒状の各第2の連動部材46の外径は円筒形状の収容部材32の内径よりも小さい。より詳細には、各第2の連動部材46は、各接続部材24の底面に接触するよう設けられており、各第2の連動部材46は、図2B等に示すように各収容部材32内で各接続部材24を上方に押し上げることができる。
【0036】
すなわち、図2Aに示すような状態において、昇降駆動部50が処理流体供給管40を上方に移動させたときには、処理流体供給管40に接続された第1の連動部材44および各第2の連動部材46も上方に移動し、各第2の連動部材46が各収容部材32内で各接続部材24を上方に押し上げることとなる。これにより、リフトピンプレート20も処理流体供給管40と連動して上方に移動し、図2Bに示すように、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60はそれぞれの上昇位置に到達することとなる。一方、図2Bに示すような状態において、昇降駆動部50が処理流体供給管40を下方に移動させたときには、収容部材32の内部に設けられたバネ26の力により接続部材24には常に下方に向かう力が加えられているので、各第2の連動部材46が下方に移動したときに各接続部材24もその下面が各第2の連動部材46の上端部分に接触するよう下方に移動する。このようにして、図2Aに示すように、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60はそれぞれの下降位置に到達する。
【0037】
図2Aに示すように、リフトピンプレート20は、下降位置にあるときには保持プレート30に隣接する。図示例においては、詳細には、リフトピンプレート20は保持プレート30上に載置され、保持プレート30により支持される。一方、図2Bに示すように、リフトピンプレート20は、上昇位置にあるときには、保持プレート30から上方に離間し、リフトピン22上へのウエハWの受け渡しおよびリフトピン22上からのウエハWの取り出しを行うことができるようになる。
【0038】
このように、第1の連動部材44および3つの第2の連動部材46により、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60を連動して一体的に昇降させる連動機構が構成されている。また、第1の連動部材44、3つの第2の連動部材46、昇降駆動部50、接続部材52により、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60を連動して昇降させて、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60を保持プレート30に対して相対的に昇降させる昇降機構が構成されている。
【0039】
次に、図2A、図2B、図9及び図10を参照して、棒状ノズル60の構成について説明する。棒状ノズル60は棒状部分60Aと中央部分60Bを有する。中央部分60Bにおいて、棒状ノズル60は処理流体供給管40の上端に取り付けられている。中央部分60Bは、リフトピンプレート20の貫通穴20aを覆うカバー部材としての役割をも果たす。棒状部分60Aは中央部分60Bからリフトピンプレート20の半径方向外側すなわちウエハWの半径方向外側に延び、リフトピン22と干渉しないように、リフトピン22が配置される仮想円周のわずかに手前で終端している。
【0040】
特に図10(a)(b)に示すように、棒状部分60Aは翼型断面を有している。この液処理装置では、棒状部分60Aに対してウエハWが図10(b)の矢印R方向に回転するようになっている。このとき、ウエハWの下面とリフトピンプレート20との間には矢印R方向の気流が生じる。翼型断面を有する棒状部分60Aの上方を通過する気流により、液の流れが改善される。詳細には、気流は、棒状部分60Aの背面とウエハWとの間を通過する際に、絞り効果により流速を増すとともにウエハWの下面に向かうように整流される。このように棒状部分60Aの影響を受けた気流は、ウエハWの下面上に衝突した処理液(例えば薬液)がウエハWの下面に沿ってスムーズに拡散することを助ける。また、棒状部分60Aが翼型断面を有することにより、気流の影響による棒状部分60Aの振動が最小限に抑制される。
【0041】
棒状部分60Aの上面には、棒状部分60Aの長手方向に沿って複数の吐出口61(第1の吐出口)が設けられている。吐出口61の配列ピッチは例えば1〜2mm程度、吐出口61の開口径は0.2〜0.5mm程度とすることができる。中央部分60Bにも、複数の吐出口62(第2の吐出口)が形成されている。
【0042】
処理流体供給管40は、その上端に拡径された頭部41を有している。棒状ノズル60の中央部分60Bは、その下面に中空の係合突起63a,63bを有しており、係合突起63a,63bは、処理流体供給管40の頭部41の上面に開口する液体供給路40aおよび気体供給路40bにそれぞれはめ込まれる。前述したように中央部分60Bにリフトピンプレート20の貫通穴20aを覆うカバー部材としての機能を与えるために、中央部分60Bの下面には円錐台形のカバー65が取り付けられている。カバー65の周縁部分は、リフトピンプレート20の貫通穴20aの周囲に設けられた環状突起20b(図2A、図3を参照)の上方に位置している。例示された実施形態においては、カバー65を中央部分60Bと処理流体供給管40の頭部41との間に挟んだ状態で、処理流体供給管40の頭部41と棒状ノズル60の中央部分60Bとをボルト64により結合することにより、カバー65は中央部分60Bと一体化されている。なお、カバー65は中央部分60Bと一体的に形成されていてもよい。また、カバー65は円錐台形状であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、貫通穴20aを覆って液体が貫通穴20aに入ることを防止することができるのであれば、その形状は任意である。さらにまた、カバー65を、処理流体供給管40の頭部41の上端に当該頭部41と一体的に形成された部材として形成し、このようなカバー付き頭部41を中央部分60Bと結合することにより中央部分60Bにカバー部材としての機能を与えてもよい。
【0043】
棒状ノズル60の中央部分60Bの内部には、液体供給路40aおよび気体供給路40bとそれぞれ連通する液体通路66aおよび気体通路66bが形成されている。この液体通路66aおよび気体通路66bは、棒状ノズル60の棒状部分60Aの先端部に至るまで、半径方向外側に向けて(棒状ノズル60の長手方向に沿って)水平に、かつ互いに平行に延びている。
【0044】
図10(b)に示すように、棒状ノズル60の棒状部分60Aにおいて、各吐出口61に対応して、液体通路66aに1つの液体吐出路67aが、気体通路66bに一つの気体吐出路67bがそれぞれ接続されている。液体吐出路67aと気体吐出路67bとは棒状部分60Aの上面あるいはその近傍(すなわち吐出口61またはその近傍)において合流している。
【0045】
図10(c)に示すように、棒状ノズル60の中央部分60Bにおいて、各吐出口62に対応して、液体通路66aに1つの液体吐出路68aが、気体通路66bに一つの気体吐出路68bがそれぞれ接続されている。液体吐出路67aと気体吐出路67bとは中央部分60Bの上面より下方で合流した後、吐出口62に通じている。吐出口62の開口径は吐出口61の開口径より大きい。
【0046】
図2Aに示すように、処理流体供給管40の液体供給路40aおよび気体供給路40bは、液体供給機構70および気体供給機構80にそれぞれ接続されている。液体供給機構70は、少なくとも1種類(図示例では1種類)の薬液を液体供給路40aに供給するための第1液体供給部70aと、リンス液としてのDIW(純水)を液体供給路40aに供給するための第2液体供給部70bと、を有している。第1液体供給部70aは、DHF、SC1等の薬液供給源(CHM)71aに接続された管路74aに上流側から順次介設された可変絞り弁72aおよび開閉弁73aを有している。第2液体供給部70bは、DIW供給源71bに接続された管路74bに上流側から順次介設された可変絞り弁72bおよび開閉弁73bを有している。管路74aと管路74bは開閉弁73a,74bの下流で合流し、液体供給路40aに接続されている。なお図2Aにおいて符号75、76で示す開閉弁は、必要に応じて液体供給路40a、管路74aおよび管路74b内に残留する液体をドレンする際に用いられるものである。なお、例えばSC1洗浄とDHF洗浄を連続的に行う場合などのように2種類以上の薬液を液体供給路40aに供給することが必要ならば、第1液体供給部70aと同じ構成の液体供給部を並列に設ければよい。
【0047】
気体供給機構80は、気体供給路40bにガス、例えば不活性ガス(本例ではN)を供給するために設けられている。気体供給機構80は、Nガス供給源81に接続された管路84aに上流側から順次介設された可変絞り弁82および開閉弁83を有している。
【0048】
基板洗浄装置10はさらに、保持プレート30により保持されたウエハWの上面に処理流体を供給するための構成を備えている。図示例では、基板洗浄装置10は、ウエハWの上面に薬液を吐出する薬液供給ノズル91と、ウエハWの上面にDIWとNガスとを含むミスト状の混合流体を吐出する二流体ノズル92とを備えている。薬液供給ノズル91および二流体ノズル92は、概略的に示したノズル駆動機構93によりウエハWの中心からウエハWの周縁まで移動することが可能であり、すなわちウエハWの上面をスキャンしながら処理流体を供給することができる。また、薬液供給ノズル91および二流体ノズル92は、ノズル駆動機構93により、外カップ56よりもさらに外側の待機位置(図示せず)まで移動することができる。薬液供給ノズル91には、前述した薬液供給源71aから可変絞り弁94aおよび開閉弁95aを介して制御された流量で薬液を供給することができる。二流体ノズル92には、前述したDIW供給源71bおよびNガス供給源81から、可変絞り弁94b、94cおよび開閉弁95b、95cを介して制御された流量でDIWおよびNガスを供給することができる。なお、ノズル駆動機構93は先端にノズルを保持する旋回アームを有する形式のものであってもよいし、先端にノズルを保持するアームをガイドレールに沿って並進運動させる形式のものであってもよい。また、単一のノズル駆動機構93により薬液供給ノズル91および二流体ノズル92を移動させてもよいし、薬液供給ノズル91および二流体ノズル92にそれぞれ専用のノズル駆動機構を設けてもよい。
【0049】
基板洗浄装置10は、その全体の動作を統括制御するコントローラ100を有している。コントローラ100は、基板洗浄装置10の全ての機能部品(例えば回転駆動部39、昇降駆動部50、開閉弁および可変絞り弁、ノズル駆動機構93など)の動作を制御する。コントローラ100は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、或いはCDROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が参照符号106で示されている。プロセッサ107は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体106から呼び出して実行させ、これによってコントローラ100の制御の下で基板洗浄装置10の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。コントローラ100は、図1に示す液処理システム全体を制御するシステムコントローラであってもよい。
【0050】
次に棒状ノズル60からの処理流体の吐出について説明する。棒状ノズル60は2つの流体吐出モードで処理流体を吐出する。
【0051】
[第1の吐出モード]
第1の吐出モードでは、処理流体供給管40の液体供給路40aに薬液例えばDHFを供給し、気体供給路40bには何も供給しない。この場合、棒状部分60Aにおいては、液体通路66aおよびこれに接続された各液体吐出路67aを経て、図11(b)に示すように薬液が各吐出口61からウエハWの下面に向けて吐出される。ここで、液体吐出路67aはウエハWの回転方向に傾斜しており、かつ、吐出口61は液体吐出路67aを流れる薬液を偏向しないように設けられているため、薬液が吐出口61から斜めに吹き出す。薬液の吐出方向を示すベクトルは、ウエハWの回転方向の成分を有している。このような態様で薬液をウエハWに向けて吐出することにより、ウエハWの下面に衝突した薬液がウエハWに弾かれること(液はね)を抑制することができ、吐出した薬液を無駄にすることなく吐出した薬液の多くをウエハWの処理に有効に利用することができる。
【0052】
図12に示された複数の楕円は、各吐出口61から吐出された薬液がウエハWの下面に到達した瞬間に薬液により覆われるウエハWの下面上の領域(以下に「スポット」とも称する)を示している。薬液はウエハWの下面に到達した後には、ウエハWの回転による遠心力、吐出口61からの薬液の吐出圧力等の要因に応じてウエハWの下面上で広がる。棒状部分60Aにおいては、各吐出口61は、平面視で、ウエハWの中心を中心として当該吐出口61を通る円の接線方向に薬液を吐出するようになっているので、楕円形スポットの中心の間隔Pは、吐出口61の配列ピッチに等しい。また、吐出後薬液は拡散するため、楕円の短軸の長さBは吐出口61の径よりも大きくなる。なお、吐出口61から薬液吐出方向はウエハWの回転方向に傾斜しているため、楕円の長軸Aの長さは吐出口61の径よりもずっと大きい。隣接する楕円形スポットには所定の長さLの重複部分が生じる。
【0053】
また、第1の吐出モードにおいて、中央部分60Bの吐出口62は液体吐出路67aを流れる薬液を真上に偏向するように設けられているため、吐出口62から薬液がウエハWの下面に向けて真上に吐出される。従って、吐出口62からの薬液のスポットは円形となる。中央部分60Bの真上にあるウエハWの周速は低いので薬液を斜めに吐出するメリットは小さいし、また、薬液を斜めに吐出するとウエハ中心付近における処理の均一性がむしろ低下する可能性があるため、薬液を真上に吐出するようにしている。
【0054】
第1の吐出モードにおいて、吐出口61、62から吐出された薬液がウエハWの下面に到達した瞬間にウエハWの下面上に形成するスポットが図11(a)に示されている。図11(a)において、白抜きの円は吐出口61を示しており、また「×」印は吐出口62の中心を示しており、白抜きの楕円は吐出口61から吐出された薬液により形成されるスポットを、白抜きの円は吐出口62から吐出された薬液により形成されるスポットをそれぞれ示している。
【0055】
棒状ノズル60の棒状部分60Aの吐出口61のうち、棒状部分60Aの先端側の少なくともいくつかの(複数、図示例では5つの)吐出口61は、平面視において、接線方向(矢印D1)から角度θだけ半径方向外側に向いている(矢印D2を参照)。これらの外側の吐出口61は、ウエハの外側に向かって流れる薬液の流れを形成する。これにより薬液により除去されるウエハW下面状の不要物質ないし汚染物質をウエハWの外側に効果的に追い出すことができる。例えば、角度θは、棒状部分60Aの最も先端側にある吐出口61において最大にし、基端側にゆくに従い角度θを小さくし、最も先端側にある吐出口61から所定個数例えば6個目の吐出口において角度θをゼロにすることができる。いずれにせよ、角度θがゼロでない場合には、隣接する楕円形スポットの重複部分の長さLが小さくなる。
【0056】
隣接する楕円形スポットの重複部分の長さ(半径方向長さ)Lは、処理の種類によっては、処理の面内均一性に影響を及ぼすことも考えられる。このようなことが考えられる場合には、可変絞り弁72aを調整することにより、吐出口61からの薬液の吐出圧力(吐出の勢い)を変化させることが好ましい。薬液の吐出圧力が高い場合には、(吐出口61から吐出した薬液がウエハWの下面に到達した「瞬間」において薬液により覆われるウエハWの下面上の領域として定義されるスポットのサイズはあまり変わらない)ウエハWの下面に到達した直後に薬液が勢いよく広がるため、実質的に楕円形スポットのサイズが増大し、重複部分の長さLが増したのと同じ効果が得られる。薬液の吐出圧力は、「高→低→高→低→・・・」とパルス的に、あるいはサインカーブ等の所定の制御曲線に従って連続的に変化させることができる。
【0057】
上記に代えて、或いは上記に加えて、棒状ノズル60の位置を変化させながら吐出口61から薬液を吐出してもよい。この目的のため、例えば、図9に概略的に示すように水平移動機構54(一点鎖線で表示)を昇降駆動部50に取り付けることができる。水平移動機構54と同様の機能を、接続部材52に組み込むことも可能である。水平移動機構54は、処理流体供給管40を水平方向に微少量移動させて、棒状ノズル60を棒状部分60Aの長手方向に沿って変位させる。これにより、隣接する楕円形スポットの重複部分の位置を変化させることができるので、処理の均一性を向上させることができる。なお、棒状ノズル60の移動距離は、棒状ノズル60の吐出口61の配列ピッチPと同じか、或いはそれ未満でもよい。水平移動機構54は、例えば電動モータにより駆動されるボールねじにより構成することが可能であるが、これに限定されるものではなく、微少量のリニア駆動に適した任意の機構を用いることが可能である。
【0058】
なお、図11(a)に示すように、中央部分60Bにある複数の吐出口62のうち最も棒状部分60Aに近い位置にある吐出口62から吐出された薬液が形成するスポットは、棒状部分60Aにある複数の吐出口61のうち最も中央部分60Bに近い位置にある吐出口61から吐出された薬液が形成するスポットとは、図中一点鎖線Cで示した円弧よりわかるように重複部分を有している。この重複部分の長さも、薬液の吐出圧力を変化させることによって変化させることができる。
【0059】
複数の吐出口61から吐出された薬液が形成するスポットは、概ね基板の半径方向に並んでいればよいので、吐出口61は厳密に基板の半径上(基板の中心を通る直線上)にある必要はない。なお、図11(a)に示す構成例では、平面視で基板の半径上(基板の中心を通る直線上)に位置しているのは複数の吐出口62のみであり、複数の吐出口61は基板の中心を通る直線から若干ずれた位置にある前記直線と平行な直線上に配置されている。なお、平面視で、複数の吐出口61、62の全てを一直線上に、例えば基板の中心を通る直線上に、配置してもよい(図16(a)を参照)。また、平面視で、複数の吐出口61、62から吐出された薬液が形成する全てのスポットが一直線上、例えば基板の中心を通る直線上に、並ぶようにしてもよい(図16(b)を参照)。また、平面視で、複数の吐出口61、62から吐出された薬液が形成するスポットが折れ線(吐出口61によるスポットが配列される直線と吐出口62によるスポットが配列される直線とが所定の角度を成す)を形成してもよい(図16(c)参照)。また、吐出口61の配列ラインが若干湾曲していてもよい。いずれにせよ、複数の吐出口61は、基板の中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置の間に配列されていれば十分である。
【0060】
[第2の吐出モード]
第2の吐出モードでは、処理流体供給管40の液体供給路40aにDIWを供給し、気体供給路40bにNガスを供給する。この場合、図13(a)に示すように、棒状部分60Aにおいては、液体通路66aおよびこれに接続された各液体吐出路67aを経て薬液が各吐出口61に導かれる一方で、気体通路66bおよびこれに接続された各気体吐出路67bを経てNガスが各吐出口61に導かれる。DIWとNガスは吐出口61で衝突し、DIWとNガスからなるミスト状の混合流体すなわち二流体スプレーが形成される。この場合、DIWとNガスとの衝突により、二流体スプレーは扇状に広がりつつ上方に向かう。二流体スプレーの衝突エネルギーにより、ウエハWの下面を洗浄することができる。この場合、二流体スプレーの吐出方向(主方向)を示すベクトルは概ね鉛直方向上方を向いていてウエハWの回転方向の成分を殆ど有していないが、二流体スプレーによる洗浄効果は二流体スプレーの衝突エネルギーに依存しているため、この方が好ましい。
なお、二流体スプレーの吐出方向(主方向)を示すベクトルが、ウエハWの回転方向と逆方向の成分を有していることも好ましい。
【0061】
また、第2の吐出モードにおいて、中央部分60Bの吐出口62は液体吐出路68aおよび気体吐出路68bから流れてきたDIWおよびNガスを真上に偏向するように設けられているため、吐出口62から吐出された二流体スプレーは扇状に広がりつつ上方に向かう。
【0062】
第2の吐出モードの場合も、第1の吐出モードで行ったのと同様に、可変絞り弁72b、82の開度調整によりDIWおよびNガスの両方または一方の吐出圧力を変更しながら、二流体スプレーを基板の下面に吐出させてもよい。
【0063】
次に、基板洗浄装置10により実行される一連の処理について説明する。
【0064】
まず、昇降機構によって、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60を図2Bに示すような上昇位置に位置づける。次に、図2Bの二点鎖線に示すように、基板洗浄装置10の外部からウエハWが搬送アーム104により基板洗浄装置10に搬送され、このウエハWがリフトピンプレート20のリフトピン22上に載置される。
【0065】
次に、昇降駆動部50が処理流体供給管40および棒状ノズル60を上昇位置から下降位置まで移動させる。この際に、収容部材32の内部に設けられたバネ26の力により接続部材24には常に下方に向かう力が加えられているので、処理流体供給管40の下方への移動に連動してリフトピンプレート20も下方に移動し、リフトピンプレート20が上昇位置から下降位置まで移動する。また、この際に、リフトピンプレート20の下面により基板保持部材31の被押圧部材31cが図6に示すような状態から下方に押圧され、これにより基板保持部材31が軸31aを中心として図6の反時計回りの方向に回転する。
このようにして、基板保持部材31の基板保持部分31bがウエハWに向かって当該ウエハWの側方から移動し(図7参照)、基板保持部材31によりウエハWは側方から保持される(図8参照)。このときに、基板保持部材31により側方から保持されたウエハWはリフトピン22から上方に離間する。なお、通常、ウエハWは、その「表面」(デバイスが形成される面)が「上面」となり、その「裏面」(デバイスが形成されない面)が「下面」となるように、保持プレート30により保持される。本明細書において、用語「上面(下面)」は、単に、ある時点において上(下)を向いている面という意味で用いられる。
【0066】
リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60が図2Aに示すような下降位置に到達した後、ノズル駆動機構93を駆動して、薬液供給ノズル91をウエハWの上面の中心の上方に位置させる。次いで、回転駆動部39により保持プレート30を回転させる。この際に、保持プレート30の裏面から下方に延びるよう設けられた各収容部材32に、リフトピンプレート20の下面から下方に延びるよう設けられた各接続部材24が収容された状態となっているので、保持プレート30が回転したときにリフトピンプレート20も連動して回転し、ウエハWも回転する。なお、この際に、処理流体供給管40およびこれに接続された棒状ノズル60は回転することなく停止したままである。
【0067】
次に、ウエハWが回転した状態で、ウエハWの中心の上方にある薬液供給ノズル91からウエハWの上面に薬液例えばDHFの供給を開始する。そして、ウエハWの上面に薬液を供給しながら、ノズル駆動機構93により、薬液供給ノズル91がウエハWの周縁部に至るまで薬液供給ノズル91をウエハW半径方向外側に移動させてゆく。これによりウエハWの上面が、いわゆるスキャン方式により薬液洗浄される。
【0068】
上記のウエハW上面の薬液洗浄の開始と同時に、前述した第1の吐出モードで棒状ノズル60から、回転するウエハWの下面に薬液(ウエハW上面に供給される薬液と同じ薬液)を供給する。これによりウエハWの下面が、薬液洗浄される。
【0069】
薬液洗浄が終了したら、薬液およびパーティクル除去のための処理として液体と気体との混合流体による液滴処理を行う。すなわち、ノズル駆動機構93を駆動して、二流体ノズル92をウエハWの上面の中心の上方に位置させ、ウエハWを回転させる。そして、DIWとNガスの混合流体からなる二流体スプレーをウエハWの上面に供給しながら、ノズル駆動機構93により、二流体ノズル92がウエハWの周縁部に至るまで二流体ノズル92をウエハW半径方向外側に移動させてゆく。これによりウエハWの上面が、いわゆるスキャン方式により液滴処理される。
【0070】
上記のウエハW上面のリンス処理の開始と同時に、前述した第2の吐出モードで、棒状ノズル60から、回転するウエハWの下面にDIWとNガスの混合流体からなる二流体スプレーを供給する。これによりウエハWの下面が、液滴処理される。なお、二流体スプレーは、高い物理的除去作用を発揮するため、前工程で用いた薬液およびパーティクルを効率的に除去することができる。
【0071】
液滴処理が終了したら、ウエハWを回転させることによりウエハWの乾燥処理を行う。
【0072】
所望の一連の処理が終了したら、昇降駆動部50が処理流体供給管40および棒状ノズル60を下降位置から上昇位置まで移動させる。この際に、各第2の連動部材46が各接続部材24を上方に押し上げることにより、処理流体供給管40の上方への移動に連動してリフトピンプレート20も上方に移動し、リフトピンプレート20が下降位置から上昇位置まで移動する。また、この際に、基板保持部材31に対するバネ部材31dの付勢力により、基板保持部材31は軸31aを中心として図6の時計回りの方向(図6における矢印とは反対の方向)に回転する。これにより、基板保持部材31はウエハWから側方に離間する。基板保持部材31がウエハWから側方に離間することにより、このウエハWはリフトピン22により裏面から支持されるようになる。
【0073】
図2Bに示すようにリフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60が上昇位置に到達した後、リフトピン22上に載置されたウエハWは搬送アーム104により当該リフトピン22上から除去される。搬送アーム104により取り出されたウエハWは基板洗浄装置10の外部に搬送される。
【0074】
上記の実施形態によれば、ウエハWの中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置の間に配列されている複数の吐出口61を有するノズルを使用しているため、ウエハWの下面を高い面内均一性で効率良く処理することができる。また、処理用液体の量を削減することができる。また、ウエハWの下面の均一に洗い流すことができる。さらに、処理時間を削減することができる。しかも、吐出口61から吐出される液体の吐出方向がウエハWの回転方向に傾斜しているため、言い換えれば、吐出口61からウエハWの下面に向けて吐出される処理液の吐出方向がウエハWの回転方向の成分を持つように吐出口61が形成されているため、処理液がウエハW下面に衝突したときに液はねが抑制されるので、処理液の無駄が生じない。また、はねた液の再付着に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。また、ノズルの外側端部の吐出口が外側を向いているので、ウエハWの下面に供給された処理液を基板の外に効果的に追い出すことができる。
【0075】
また、上記の実施形態によれば、ウエハの上面処理における面内均一性に匹敵する高い面内均一性をもって、ウエハの上面処理と並行してウエハの下面を処理することができるので、高品質の処理を行いつつもスループットを向上させることができる。
【0076】
また、上記の実施形態においては、リフトピンプレート20、処理流体供給管40および棒状ノズル60が保持プレート30に対して相対的に昇降するようになっており、ウエハWを下方から支持するリフトピン22はリフトピンプレート20に設けられている。しかも、処理流体供給管40および棒状ノズル60の間には、リフトピンプレート20の貫通穴20aを塞ぐようにカバー65が設けられている。リフトピンプレート20の貫通穴20aがカバー65により塞がれるので、処理流体供給管40を通すための貫通穴20aに洗浄液が入り込んでしまうことを防止することができる。リフトピンプレート20にリフトピン22が設けられているので、従来のようなリフトピン22を通すための貫通穴が底板に形成されておりリフトピン22が当該貫通穴を通って底板の下方に退避するようになっている場合と比較して、ウエハWの乾燥後にリフトピン22に洗浄液が残ることがなくなり、これにより洗浄処理後のウエハWの裏面に洗浄液が付着することを防止することができる。なぜならば、ウエハWの乾燥処理時に、リフトピン22がリフトピンプレート20と一体的に回転するからである。また、リフトピン22がリフトピンプレート20と一体的に回転することにより、リフトピン22に洗浄液の液滴が残ることが抑制され、これにより洗浄処理後のウエハWの裏面に洗浄液の液滴が付着することをより一層防止することができる。
【0077】
また、上記の実施形態においては、処理流体供給管40および棒状ノズル60とリフトピンプレート20とを一体的に昇降させるようになっているので、処理流体供給管40およびリフトピンプレート20が昇降する際にカバー65がリフトピンプレート20の貫通穴20aを塞ぐので、貫通穴20aに洗浄液が入り込んでしまうことをより一層防止することができる。
【0078】
また、上記の実施形態においては、保持プレート30に回転カップ36が設けられているので、ウエハWの洗浄処理を行う際に回転しているウエハWから洗浄液が外方に飛散することを防止することができる。また、保持プレート30に基板保持部材31が設けられているので、ウエハWを回転させる際にウエハWを側方から支持することによってより安定的にウエハWが保持される。
【0079】
また、上記の実施形態において、水平移動機構54によって棒状ノズル60の位置を変化させながら吐出口61から薬液やDIWなどの処理液を吐出する例について言及した。以下、この例について図17(a)(b)(c)を参照してさらに詳細に説明する。
【0080】
はじめに、棒状ノズル60の位置を変化させながら吐出口61から処理液を吐出することの背景について説明する。例えば、薬液供給源71aやDIW供給源71bから棒状ノズル60に供給される処理液の圧力が一定となっている場合について考える。この場合、各吐出口61から吐出される処理液の流速は、吐出口61の数が多くなるほど、および、各吐出口61の開口径が大きくなるほど、低下する。従って、薬液供給源71aやDIW供給源71bにおける供給圧力が一定という条件の下で、各吐出口61から吐出される処理液の流速を所定値以上とするためには、吐出口61の数および各吐出口61の開口径が制限されることになる。このように吐出口61の数および各吐出口61の開口径が制限される場合、隣接する2つの吐出口61から同時に吐出される処理液によってウエハWの下面に形成されるスポットが平面視において互いに重ならないということが生じ得る。このような場合、以下に説明するように、棒状ノズル60の位置を変化させながら吐出口61から処理液を吐出することが有用となる。
【0081】
図17(a)(b)(c)は、棒状ノズル60の位置を変化させながら吐出口61から処理液を吐出する様子を示す図である。ここで、複数の吐出口61のうちの少なくとも一部分は、図17(a)に示すように、複数の吐出口61が形成された直線に沿って所定の配列ピッチPで形成されている。なお図17(a)において、矢印Lは、配列された複数の吐出口61を結ぶ直線が延びる方向(以下、配列方向Lと称する)を示している。また図17(b)は、棒状ノズル60が図17(a)に示す位置からウエハWの周縁部側に向けて配列方向Lに沿って配列ピッチPの3分の1だけ変位された状態を示す図である。また図17(c)は、棒状ノズル60が図17(b)に示す位置からウエハWの周縁部側に向けて配列方向Lに沿って配列ピッチPの3分の1だけ変位された状態を示す図である。
【0082】
はじめに、棒状ノズル60を所定の位置(第1の位置)に配置した状態で、第1の吐出モードにおいて、ウエハWの下面に向けて各吐出口61から処理液を吐出する。各吐出口61から吐出された処理液がウエハWの下面に到達した瞬間にウエハWの下面上に形成されるスポットSが図17(a)に示されている。図17(a)において、スポットSは、実線によって囲まれた楕円領域として表されている。なお第1の位置における処理液の吐出は、ウエハWが少なくとも1回転する間にわたって継続される。
【0083】
次に、図17(b)に示すように、水平移動機構54によって棒状ノズル60をウエハWの周縁部側に向けて配列方向Lに沿って配列ピッチPの3分の1だけ変位させる。その後、変位後の位置(第2の位置)において、第1の吐出モードによって、ウエハWの下面に向けて各吐出口61から処理液を吐出する。図17(b)において、棒状ノズル60が第2の位置にある際に各吐出口61から吐出された処理液がウエハWの下面に到達した瞬間にウエハWの下面上に形成されるスポットSが実線で示されている。また図17(b)において、棒状ノズル60が上述の第1の位置にある際に形成されるスポットSが点線で示されている。図17(b)に示すように、第2の位置は、棒状ノズル60が第1の位置にある際に形成されるスポットSと、棒状ノズル60が第2の位置にある際に形成されるスポットSとが平面視において部分的に重なるよう設定されている。なお第2の位置における処理液の吐出は、ウエハWが少なくとも1回転する間にわたって継続される。
【0084】
その後、図17(c)に示すように、水平移動機構54によって棒状ノズル60をウエハWの周縁部側に向けて配列方向Lに沿って配列ピッチPの3分の1だけさらに変位させる。その後、変位後の位置(第3の位置)において、第1の吐出モードによって、ウエハWの下面に向けて各吐出口61から処理液を吐出する。図17(c)において、棒状ノズル60が第3の位置にある際に各吐出口61から吐出された処理液がウエハWの下面に到達した瞬間にウエハWの下面上に形成されるスポットSが実線で示されている。また図17(c)において、棒状ノズル60が上述の第1の位置および第2の位置にある際に形成されるスポットS,Sが点線で示されている。図17(c)に示すように、第3の位置は、棒状ノズル60が第1の位置および第2の位置にある際に形成されるスポットS,Sと、棒状ノズル60が第3の位置にある際に形成されるスポットSとが平面視においてそれぞれ部分的に重なるよう設定されている。このため、ウエハWの下面に対して、各吐出口61の配列方向Lに沿って隙間無く処理液を供給することができる。なお第3の位置における処理液の吐出は、ウエハWが少なくとも1回転する間にわたって継続される。
【0085】
このように図17(a)(b)(c)に示す例によれば、各吐出口61の配列方向Lに沿って棒状ノズル60の位置を変化させながら、吐出口61から処理液を吐出することができる。従って、仮に吐出口61の開口径が配列ピッチPに比べて小さく、このため図17(a)に示すように隣接する2つの吐出口61から同時に吐出される処理液によってウエハWの下面に形成されるスポットSが平面視において互いに重ならない場合であっても、ウエハWの下面に対して、各吐出口61の配列方向Lに沿って隙間無く処理液を供給することができる。このため、上述のように薬液供給源71aやDIW供給源71bから棒状ノズル60に供給される処理液の圧力が一定となっている場合に、所望の流速を確保しながら、吐出口61の数および各吐出口61の開口径などをより高い自由度の下で設定することが可能となる。また、棒状ノズル60の位置を変化させながら吐出口61から処理液を吐出することにより、ウエハWの下面に対して均一に処理液を供給することができる。すなわち、ウエハWの下面に対して均一に液処理を施すことができる。
【0086】
なお図17(a)(b)(c)においては、棒状ノズル60を配列方向Lに沿って配列ピッチPの3分の1ずつ変位させる例を示したが、これに限られることはない。例えば、棒状ノズル60を配列方向Lに沿って配列ピッチPの2分の1ずつ変位させてもよく、若しくは、棒状ノズル60を配列方向Lに沿って配列ピッチPの4分の1ずつ、またはさらに細かく変位させてもよい。1回の移動における棒状ノズル60の変位量は、吐出口61の配列ピッチPや、吐出口61によってウエハW上に形成されるスポットSの寸法に応じて適宜設定される。
【0087】
また図17(a)(b)(c)においては、棒状ノズル60を第1→第2→第3の位置へ断続的に移動させる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、配列ピッチP以下の所定の移動距離だけ配列方向Lに沿って棒状ノズル60を連続的に移動させながら、吐出口61から処理液を吐出してもよい。この場合も、ウエハWの下面に対して均一に液処理を施すことができる。なお棒状ノズルの移動速度は、ウエハWの下面に対して、各吐出口61の配列方向Lに沿って隙間無く処理液を供給することができるよう、スポットSの寸法やウエハWの回転速度に応じて適宜設定される。
【0088】
また図17(a)(b)(c)においては、棒状ノズル60がウエハWの周縁部側に向けて配列方向Lに沿って動かされる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、棒状ノズル60をウエハWの中心部側に向けて配列方向Lに沿って動かしてもよい。また、配列方向Lに沿って棒状ノズル60が往復運動するよう棒状ノズル60を動かしてもよい。
【0089】
上述のように水平移動機構54によって棒状ノズル60を移動させるための具体的な方法が特に限られることはない。例えば、コントローラ100が水平移動機構54を制御することによって、棒状ノズル60の上述の移動が実現され得る。この場合、コントローラ100の記憶媒体106には、予め定められた手順に従い棒状ノズル60を移動させるためのプログラムが格納されている。
【0090】
なお複数の吐出口61は、その一部分のみではなくその全てが、配列方向Lに沿って等しい配列ピッチPで形成されていてもよい。また、このように等しい配列ピッチPで並ぶ吐出口61が、ウエハWの中心部に処理液を吐出することができる位置にまで形成されていてもよい。若しくは、ウエハWの中心部に処理液を吐出することができる位置には図10に示されるような吐出口62が形成されており、且つ、各吐出口62の配列ピッチが吐出口61の配列ピッチPと等しくなっていてもよい。これによって、ウエハWの下面の全域にわたって均一に処理液を供給することができる。
【0091】
上記の実施形態は例えば下記のように改変することができる。
【0092】
上記実施形態においては、図14(a)に詳細に示すように、棒状部分60Aにおいては液体吐出路67aと気体吐出路67bとがちょうど吐出口61の開口端で交差するようになっていたが、図14(b)に示すように、吐出口61の開口端のやや手前で気体吐出路67bを液体吐出路67aに合流させてもよい。
【0093】
上記実施形態においては、DHF洗浄処理、DIWおよびNガスによる液滴処理、スピン乾燥処理を順次行っている。しかし、上記実施形態に係る基板処理装置により実施される処理はこれに限定されるものではない。例えば、薬液処理(DHFまたはそれ以外の薬液を使用)、DIWリンス処理、スピン乾燥処理を順次行ってもよい。このとき、DIWリンス処理においては、Nガスを吐出することなくDIWのみを吐出することができる。また、薬液処理は、薬液とNガスを同時に吐出させる処理、すなわち薬液とNガスとの混合流体を基板に吐出させるいわゆる二流体ケミカル処理であってもよい。なお、気体(ガス)はNガスに限定されるものではなく、その他の不活性ガスであってもよい。また、気体(ガス)は、液処理の種類によっては、反応性のガスであってもよい。
【0094】
また、上記実施形態に係る基板処理装置により実施される処理は、塗布/現像プロセスにおける基板裏面に対する各種の液処理(例えば現像処理後の洗浄処理、不要なレジストの除去処理)とすることができる。また、めっき処理の前処理または後処理としての基板の下面(例えば裏面)に対する液処理であってもよい。
【0095】
上記実施形態においては、ウエハを保持して回転させる機構であるいわゆる「スピンチャック」の基板保持部として、リフトピンプレート20と回転カップ36と一体化された保持プレート30とを有する形式のものを用いた。しかしながら、上記実施形態に係る棒状ノズル60は、基板の周縁を保持する形式のものであるならば様々な形式のスピンチャックと組み合わせて液処理装置を構築することができる。例えば図15に概略的に示すように、基板の周縁を保持するように構成されたメカニカルスピンチャック200に、上記実施形態に関連して説明した処理流体供給管40および棒状ノズル60を組み合わせて液処理装置を構築することができる。メカニカルスピンチャック200は、回転部材201と回転部材201に複数(3つまたは4つ)設けられたウエハ保持部材203と、回転部材201を回転させるモータ202とを有する。例えば、図15に示す液処理装置は、上述した実施形態と異なり、専らウエハWの下面のみを処理する装置であってもよく、この場合は上面に処理流体を供給するためのノズルは必要ない。もちろん、図15に示す構成に様々な構成要素(飛散した処理流体を受けるカップ、上面処理用のノズル等)を追加することもできる。なお、図15に示す形式のスピンチャックを用いた場合には、棒状ノズル60の先端はウエハ保持部材203に干渉しない限りにおいて半径方向外側に位置させることができる。
【0096】
また上記実施形態に示す棒状ノズル60において、第2の吐出モードの際、液体吐出路67aから導かれるDIWと、気体吐出路67bから導かれるNガスとが吐出口61で衝突し、DIWとNガスからなるミスト状の混合流体(二流体スプレー)が形成される例を示した。この場合、図18(a)に示すように、棒状ノズル60の内部に、DIWとNガスとを衝突させて二流体スプレーを形成するための混合部69が設けられていてもよい。この混合部69は、吐出口61に向かうにつれて拡がるよう構成された空間である。このような混合部69は、例えば、円錐台状の空間であって、その底面(面積が大きい方の面)が吐出口61に対応し、その頂面(面積が小さい方の面)が棒状ノズル60の内部に位置する円錐台状の空間を設けることによって得られる。このような混合部69を棒状ノズル60の内部に設けることにより、形成される二流体スプレーの形状を整えることができる。例えば、より等方的に広がる二流体スプレーを得ることができる。このことにより、ウエハWの下面をより均一に洗浄することができる。
【0097】
ガスを導く気体吐出路67bは、図18(a)に示すように、鉛直方向上方に延びるよう構成されていてもよい。これによって、二流体スプレーの吐出方向を鉛直方向とすることができ、このことにより、二流体スプレーをウエハWの下面に対して垂直方向から衝突させることができる。すなわち、二流体スプレーのエネルギーを低下させることなく、二流体スプレーをウエハWの下面に衝突させることができる。これによって、ウエハWの下面を効率良く洗浄することができる。
【0098】
図18(a)に示す例において、混合部69および液体吐出路67aは、第1の吐出モードの際に液体吐出路67aを経て吐出口61から吐出される処理液が、混合部69を画定する側壁69aによって偏向されないよう構成されている。具体的には、図18(b)に示すように、液体吐出路67aを吐出口61に向けて仮想的に延長した場合の空間67a’が側壁69aに接しないよう、側壁69aおよび液体吐出路67aが鉛直方向に対してなす角度φおよびφ、吐出口61および液体吐出路67aの開口径dおよびdや、側壁69aと液体吐出路67aとが接続される位置などが設定されている。このため、液体吐出路67aから導かれる処理液は、角度φを維持したまま吐出口61から斜めに吐出される。好ましくは、角度φは、吐出口61から吐出される処理液の吐出方向がウエハWの回転方向Rと同じ方向の成分を含むよう設定されている。
【0099】
上記実施形態においては、棒状ノズル60が液体のみを吐出する第1の吐出モードと、液体と気体の混合流体からなる二流体スプレーを吐出する第2の吐出モードの2つの吐出モードを実現できるように構成されていた。しかしながら、二流体スプレーの吐出が必要無いならば、上記実施形態の構成からNガスの吐出に必要な構成(気体供給路40b、気体通路66b、気体吐出路67b、68b、気体供給機構80など)を全て取り除いてもよい。
【符号の説明】
【0100】
22、30 基板保持部(保持プレート、リフトピンプレート)
39 回転駆動部
60 第1のノズル(棒状ノズル)
60A 第1のノズルの棒状部分
60B 第1のノズルの中央部分
61 第1の吐出口
62 第2の吐出口
65 カバー
70 液体供給機構
72a、72b 可変絞り
91、92 第2のノズル
R 基板の回転方向
W 基板(ウエハ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部を保持する保持部材を有し、基板を水平に保持するように構成された基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、
前記基板保持機構に保持された基板の下面の下方に位置するとともに前記基板保持部により保持された基板の下面に処理液を吐出する第1のノズルであって、複数の第1の吐出口を有しており、前記複数の第1の吐出口が前記基板保持部に保持された基板の中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置の間に配列されている、第1のノズルと、 前記第1の吐出口に処理液を供給する液体供給機構と、
を備え、
前記第1吐出口が、当該第1の吐出口から基板の下面に向けて吐出される処理液の吐出方向が前記回転駆動部により回転させられる基板の回転方向に傾斜するように形成されている液処理装置。
【請求項2】
前記第1の吐出口は、前記基板保持部に保持された基板の中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置を結ぶ直線上に配列されており、前記直線は、前記基板の半径方向を向いた直線またはこの直線と平行な直線である、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記第1のノズルは前記基板保持部に保持された基板の半径方向に延びる棒状部分を有し、前記棒状部分に前記複数の第1の吐出口が設けられている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記第1のノズルの前記第1の吐出口が配列されている領域よりも更に半径方向内側の領域に、少なくとも1つの第2の吐出口が設けられており、前記第2の吐出口は鉛直方向上方に向けて処理液を吐出するように形成されている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記複数の第1吐出口のうちの少なくとも半径方向の最も外側にある第1吐出口は、当該最も外側にある第1吐出口から吐出される処理液の吐出方向が、半径方向外側を向いた成分を持つように形成されている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記第1のノズルの吐出口から吐出された処理液が前記基板保持部に保持された基板の下面に到達した瞬間に前記基板の下面を覆う領域をスポットと呼ぶこととしたとき、隣接する第1吐出口から吐出された処理液が形成するスポット同士が重複部分を有する、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記第1のノズルの前記第1の吐出口が配列されている領域よりも更に半径方向内側の領域に、少なくとも1つの第2の吐出口が設けられており、前記第2の吐出口は鉛直方向上方に向けて処理液を吐出するように形成されており、前記第1のノズルの吐出口から吐出された処理液が前記基板保持部に保持された基板の下面に到達した瞬間に前記基板の下面を覆う領域をスポットと呼ぶこととしたとき、最も半径方向内側にある第1の吐出口から吐出された処理液が形成するスポットは、前記最も半径方向内側にある第1の吐出口に隣接する第2の吐出口から吐出された処理液が形成するスポットと重複部分を有する、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項8】
前記基板保持部に保持された基板の上面に処理液を供給する第2のノズルを更に備えた、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項9】
前記液体供給機構は可変絞り弁を有しており、
前記液処理装置は、前記第1の吐出口から前記基板の下面に向けて処理液が供給されているときに、予め定められた手順に従い前記可変絞り弁の開度を変動させるコントローラをさらに備えている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項10】
前記第1のノズルは、前記基板保持部に保持された基板の半径方向に延びる棒状部分と、前記基板保持部により保持される基板の中央部に対向する位置に設けられた中央部分と、を有しており、
前記棒状部分に、前記第1の吐出口が配置されており、
前記中央部分に、鉛直方向上方に向けて処理液を吐出するように形成されている少なくとも1つの第2の吐出口が配置されており、
前記前記基板保持部の中央部に貫通穴が設けられており、この貫通穴に、前記第1のノズルに処理液を供給するための処理流体供給管が通されており、
前記第1のノズルの前記中央部分には、基板に吐出された処理液が前記貫通穴に流入することを防止するためのカバーが設けられており、
前記第1の吐出口と前記少なくとも1つの第2の吐出口は、平面視において、一直線上に並んでいる、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項11】
前記第1のノズルは、前記基板保持部に保持された基板の半径方向に延びる棒状部分と、前記基板保持部により保持される基板の中央部に対向する位置に設けられた中央部分と、を有しており、
前記棒状部分に、前記第1の吐出口が配置されており、
前記中央部分に、鉛直方向上方に向けて処理液を吐出するように形成されている少なくとも1つの第2の吐出口が配置されており、
前記前記基板保持部の中央部に貫通穴が設けられており、この貫通穴に、前記第1のノズルに処理液を供給するための処理流体供給管が通されており、
前記第1のノズルの前記中央部分には、基板に吐出された処理液が前記貫通穴に流入することを防止するためのカバーが設けられており、
前記第1のノズルの吐出口から吐出された処理液が前記基板保持部に保持された基板の下面に到達した瞬間に前記基板の下面を覆う領域をスポットと呼ぶこととしたとき、前記第1の吐出口と前記少なくとも1つの第2の吐出口は、これらの吐出口から吐出された処理液が形成するスポットが、平面視において一直線上に並ぶように形成されている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項12】
前記第1のノズルは、前記基板保持部に保持された基板の半径方向に延びる棒状部分と、前記基板保持部により保持される基板の中央部に対向する位置に設けられた中央部分と、を有しており、
前記棒状部分に、前記第1の吐出口が配置されており、
前記中央部分に、鉛直方向上方に向けて処理液を吐出するように形成されている少なくとも1つの第2の吐出口が配置されており、
前記前記基板保持部の中央部に貫通穴が設けられており、この貫通穴に、前記第1のノズルに処理液を供給するための処理流体供給管が通されており、
前記第1のノズルの前記中央部分には、基板に吐出された処理液が前記貫通穴に流入することを防止するためのカバーが設けられており、
前記第1のノズルの吐出口から吐出された処理液が前記基板保持部に保持された基板の下面に到達した瞬間に前記基板の下面を覆う領域をスポットと呼ぶこととしたとき、前記第1の吐出口と前記少なくとも1つの第2の吐出口は、これらの吐出口から吐出された処理液が形成するスポットが、平面視において折れ線を形成するように形成されている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項13】
前記第1の吐出口は、前記基板保持部に保持された基板の中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置を結ぶ直線上に配列されており、
前記液処理装置は、前記複数の第1の吐出口が形成された前記直線に沿って前記第1のノズルを移動させる水平移動機構をさらに備え、
前記水平移動機構は、前記第1の吐出口から前記基板の下面に向けて処理液が吐出されているときに、予め定められた手順に従い前記第1のノズルを移動させるよう制御される、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項14】
前記複数の第1の吐出口のうちの少なくとも一部分は、前記直線に沿って所定の配列ピッチで形成されており、
前記水平移動機構は、前記配列ピッチ以下の所定の移動距離だけ前記第1のノズルを移動させるよう制御される、請求項13に記載の液処理装置。
【請求項15】
液処理方法において、
基板を水平姿勢に保持することと、
複数の第1の吐出口を有する第1のノズルを、前記複数の第1の吐出口が前記基板の中央部に対向する位置から前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列されるように、前記基板の下方に設けることと、
基板を回転させることと、
第1の吐出口から基板の下面に向けて吐出される処理液の吐出方向が、前記基板の回転方向の成分を持つように、前記第1の吐出口から前記基板の下面に向けて処理液を吐出させることと、
を備えた液処理方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−151439(P2012−151439A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240325(P2011−240325)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】