説明

液処理装置および液処理方法

【課題】1つの液処理装置にて異なる種類の液処理を行うにあたって、各液処理時に基板の周辺の処理液由来の雰囲気が拡散することを防止ないし抑制しつつ、クロスコンタミネーションを防止する。
【解決手段】基板処理装置は、基板(W)を水平に保持して回転させる基板保持部と、基板に対して第1の処理液および第2の処理液をそれぞれ第1処理液供給ノズルおよび第2処理液供給ノズルと、基板に供給された後の処理液を受けるための液受けカップ(40,42,44)と、液受けカップの周囲に配設され、その上端が前記液受けカップの上方にある上昇位置と、前記上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降自在な、上部に上部開口(50n)が形成された筒状の第1カップ外周筒(50A)と、その外側の第2カップ外周筒(50B)を備えている。使用される処理液に応じて、カップ外周筒50A、50Bを使い分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に洗浄処理、エッチング処理等の液処理を行う液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、半導体ウエハ等の基板(以下、単に「ウエハ」ともいう)に形成された処理対象膜の上に所定のパターンでレジスト膜が形成され、このレジスト膜をマスクとしてエッチング、イオン注入等の処理が処理対象膜に施されるようになっている。処理後、不要となったレジスト膜はウエハ上から除去される。
【0003】
レジスト膜の除去方法として、SPM処理がよく用いられている。SPM処理は、硫酸と過酸化水素水とを混合して得たSPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)液をレジスト膜に供給することにより行われる。
【0004】
SPM処理は、一般に、基板保持部により水平に保持されて回転するウエハに薬液ノズルからSPM液を供給することにより行われる。SPM処理においては、高温のSPM液がウエハに向けて吐出されるため、SPM液およびSPM液とレジストの反応生成物の蒸気およびミストなどからなるヒューム(fume)が発生する。ヒュームが拡散して処理チャンバ内を汚染することを防止するため、ウエハの近傍の空間を囲む部材が設けられる。例えば、特許文献1に記載の装置では、処理液を受け止めるスプラッシュガード(以下、本明細書では「カップ」とも称する。)によりウエハ周縁の周囲を取り囲み、また、ウエハの表面(被処理面)の上方に遮蔽板(以下、本明細書では「天板」とも称する。)を配置し、これによりヒュームの飛散を防止している。
【0005】
しかしながら、薬液ノズルを保持するノズル支持部材を通過させるためにカップ上部と天板との間に隙間が必要である。このため、ヒュームがこの隙間を通って漏洩する。また、SPM処理を行った後に引き続き同じ装置を用いて別の薬液洗浄処理を行いたい場合がある。この場合、SPM液およびヒュームは特に汚染性が高いため、クロスコンタミネーションを防止することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−35866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、1つの液処理装置にて異なる種類の液処理を行うにあたって、各液処理時に基板の周辺の処理液由来の雰囲気が漏洩することを防止ないし抑制しつつ、クロスコンタミネーションを防止することができる液処理装置を提供することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板を水平に保持して回転させる基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に対して第1の処理液を供給する第1処理液供給ノズルと、前記基板保持部に保持された基板に対して第2の処理液を供給する第2処理液供給ノズルと、前記基板保持部に保持されたときの基板の径方向周囲に位置するよう設けられた、前記第1処理液供給ノズルまたは前記第2処理液供給ノズルにより基板に供給された後の処理液を受けるためのカップと、前記カップの周囲に配設され、その上端が前記カップの上方にある上昇位置と、前記上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降自在な、上部に上部開口が形成された筒状の第1カップ外周筒と、前記カップの周囲であって前記第1カップ外周筒の外側に配設され、その上端が前記カップの上方にある上昇位置と、前記上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降自在な、上部に上部開口が形成された筒状の第2カップ外周筒と、を備えた液処理装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記の液処理装置を用いる液処理方法であって、前記第1カップ外周筒を上昇位置に位置させるとともに前記第2カップ外周筒を下降位置に位置させた状態で前記基板保持部に保持された基板を回転させて、前記第1のノズルから前記基板に前記第1の処理液を供給して基板に第1の液処理を施す第1液処理工程と、前記第2カップ外周筒を上昇位置に位置させるとともに前記第1カップ外周筒を下降位置に位置させた状態で前記基板保持部に保持された基板を回転させて、前記第2のノズルから前記基板に前記第2の処理液を供給して基板に第2の液処理を施す第2液処理工程と、を備えた液処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記第1カップ外周筒および第2カップ外周筒が、第1の処理液を用いた液処理時および第2の処理液を用いた液処理時にそれぞれ、基板の上方空間の処理液由来の雰囲気が半径方向外側に拡散することを防止する。そして、第1の処理液を用いた液処理時および第2の処理液を用いた液処理時にそれぞれ専用で前記第1カップ外周筒および第2カップ外周筒を用いることにより、クロスコンタミネーションを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る液処理装置を含む液処理システムを上方から見た上面図である。
【図2】図1に示す液処理装置の全体構成を概略的に示す側面図である。
【図3】図2に示す液処理装置のA−A矢視による上面図である。
【図4】図2に示す液処理装置のB−B矢視による上面図である。
【図5】図2に示す液処理装置における基板保持部およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である。
【図6A】図2に示す液処理装置における天板およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である。
【図6B】図6Aにおける領域VIBを拡大して示す縦断面図である。
【図7】図2に示す液処理装置におけるエアフードおよびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である。
【図8】図2に示す液処理装置における各ノズルおよび各ノズル支持アームの構成を示す説明図である。
【図9】(a)〜(e)は、図2に示す液処理装置により行われるウエハの洗浄処理の一連の工程を順次示す説明図である。
【図10】(f)〜(j)は、図2に示す液処理装置により行われるウエハの洗浄処理の一連の工程を順次示す説明図である。
【図11】(k)〜(m)は、図2に示す液処理装置により行われるウエハの洗浄処理の一連の工程を順次示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
まず、図1を用いて、一実施形態に係る液処理装置10を含む液処理システムについて説明する。図1に示すように、液処理システムは、当該システムの外部から基板、例えば半導体ウエハW(以下、「ウエハW」とも略称する)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための受け渡しユニット103と、受け渡しユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを液処理装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図1に示すように、液処理システムには、複数(図示実施形態では4個)の液処理装置10が設けられている。
【0014】
次に、液処理装置10の概略的な構成について図2乃至図4を用いて説明する。
【0015】
図2〜図4に示すように、液処理装置10は、収容されたウエハWの液処理が行われる処理チャンバ20と、処理チャンバ20に隣接して形成された待機領域80と、を備えている。なお、本実施の形態による液処理装置10では、処理チャンバ20および待機領域80は連通している。図2に示すように、処理チャンバ20内には、ウエハWを水平状態で保持して回転させる基板保持部21が設けられており、この基板保持部21の周囲にはリング状の回転カップ40が配設されている。回転カップ40は、ウエハWの液処理を行う際に当該ウエハWから遠心力により飛散する処理液を受けるために設けられている。また、図2および図3に示すように、処理チャンバ20内において回転カップ40の周囲には、カップ外周筒が二重に配置されており、円筒形に形成されたカップ外周筒50Aおよびカップ外周筒50Aの外側にカップ外周筒50Bが同心に配設されている。これらのカップ外周筒50A,50BはウエハWに施される処理に応じて独立して昇降可能となっている。基板保持部21、回転カップ40およびカップ外周筒50A,50B構成の詳細については後に説明する。
【0016】
図3に示すように、1つの液処理装置10には複数(図示例では4個)のノズル支持アーム82(82p,82q,82r,82s)が設けられており、各ノズル支持アーム82の先端にそれぞれ1つのノズル82a(あるいは2つのノズル82a,82a’(図8も参照))が設けられている。各ノズル支持アームは、全体として細長い棒状、より詳細には細長い円柱形状を有している。図2では、複数のノズル支持アーム82のうちの1つだけが示されている。図2に示すように、各ノズル支持アーム82にはアーム支持部82b(図3には図示せず)が設けられており、各アーム支持部82bは破線で概略的に示されたリニア駆動機構82c(図3には図示せず)によってノズル支持アーム82の長手方向(図2における左右方向)に直線的に駆動されるようになっている。リニア駆動機構82cの構成は任意であるが、例えば、アーム支持部82bをガイドレール(図示せず)に沿ってスライド移動可能に設けるとともに、ガイドレール両端部にそれぞれ設けられたプーリ(図示せず)間に掛け渡されたベルト(図示せず)にアーム支持部82bを固定し、ベルトを駆動することによりアーム支持部82bが移動するような構成とすることができる。各ノズル支持アーム82は、対応するカップ外周筒(50Aまたは50B)の側部に形成された側部開口50mを通って、カップ外周筒(50Aまたは50B)の内側にノズル支持アーム82の先端部が進出した進出位置と、ノズル支持アーム82の先端部がカップ外周筒50から退避した退避位置との間で水平方向に直線運動を行う(図2および図3における各ノズル支持アーム82近傍に表示された矢印を参照)。
【0017】
図2および図4に示すように、基板保持部21に保持されたウエハWを上方から覆うための天板32が水平方向に移動自在に設けられている。天板32は、図4において実線で示すような、基板保持部21により保持されたウエハWを上方から覆う進出位置と、図4において二点鎖線で示すような、水平方向において進出位置から退避した位置である退避位置との間で移動することができる。天板32およびその周辺部品の構成の詳細については後に説明する。
【0018】
図2に示すように、基板保持部21に保持されたウエハWを上方から覆うためのエアフード70が昇降自在に設けられている。このエアフード70から、Nガス(窒素ガス)やクリーンエア等の清浄化されたガスが下方向に流される。エアフード70は、基板保持部21により保持されたウエハWを上方から覆う下降位置と、下降位置よりも上方に位置する上昇位置との間で昇降自在に設けられている。図2では、エアフード70が上昇位置に位置しているときの状態を示している。エアフード70は上昇位置においてもウエハを上方から覆っている。エアフード70の構成の詳細については後に説明する。
【0019】
図2および図3に示すように、待機領域80の底部には排気部58が設けられており、この排気部58により待機領域80内の雰囲気の排気が行われる。各ノズル支持アーム82を駆動するためのリニア駆動機構82cから発生するパーティクルは、排気部58により吸引され除去される。
【0020】
図3および図4に示すように、液処理装置10の筐体の処理チャンバ20の区域に設けられた開口および待機領域80の開口にはシャッター60、62がそれぞれ設けられており、シャッター60、62を開くことにより処理チャンバ20内および待機領域80内の機器にアクセスしてメンテナンスすることができる。シャッター60、62は、搬送アーム104により処理チャンバ20からウエハWを搬出入するための開口94a(後述)の反対側に設けられている。
【0021】
図3に示すように、液処理装置10の筐体の側壁には、搬送アーム104により処理チャンバ20内へウエハWを搬入し、処理チャンバ20からウエハWを搬出するための開口94aが設けられており、この開口94aには、当該開口94aを開閉するためのシャッター94が設けられている。
【0022】
次に、図2乃至図4に示すような液処理装置10の各構成要素の詳細について図5乃至図8を用いて説明する。
【0023】
まず、図5を参照して、基板保持部21について説明する。図5は、液処理装置10の各構成要素のうち、基板保持部21およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である。
【0024】
図5に示すように、基板保持部21は、ウエハWを保持するための円板形状の保持プレート26と、保持プレート26の上方に設けられた円板形状のリフトピンプレート22とを備えている。リフトピンプレート22の上面には、ウエハWを下方から支持するためのリフトピン23が周方向に等間隔で3つ設けられている。なお、図5には2つのリフトピン23のみが表示されている。リフトピンプレート22の下方にはピストン機構24が設けられており、このピストン機構24によりリフトピンプレート22が昇降するようになっている。搬送アーム104(図1参照)によりウエハWをリフトピン23上に載置するとき、並びにリフトピン23上からウエハWを取り出すときには、ピストン機構24によりピン24aが押し上げられることによりリフトピンプレート22が図5に示すような位置から上方に移動させられ、リフトピンプレート22は回転カップ40よりも上方に位置するようにする。一方、処理チャンバ20内でウエハWの液処理や乾燥処理等を行う際には、ピストン機構24によりリフトピンプレート22が図5に示すような下降位置に移動させられ、ウエハWの周囲に回転カップ40が位置するようにする。
【0025】
保持プレート26には、ウエハWを側方から保持するための保持部材25が周方向に等間隔で3つ設けられている。なお、図5には2つの保持部材25のみが表示されている。各保持部材25は、リフトピンプレート22が上昇位置から図5に示すような下降位置に移動したときにこのリフトピン23上のウエハWを側方から保持し、保持したときにウエハWをわずかに持ち上げてリフトピン23からわずかに離間させるように構成されている。
【0026】
また、リフトピンプレート22および保持プレート26の中心部分にはそれぞれ貫通穴が形成されており、これらの貫通穴を通るよう処理液供給管28が設けられている。処理液供給管28は、保持プレート26の各保持部材25により保持されたウエハWの裏面に薬液や純水等の様々な種類の処理液を供給する。処理液供給管28はリフトピンプレート22と連動して昇降するようになっている。処理液供給管28の上端には、リフトピンプレート22の貫通穴を塞ぐよう設けられたヘッド部分28aが形成されている。また、図5に示すように、処理液供給管28には処理液供給部29が接続されており、この処理液供給部29により処理液供給管28に様々な種類の処理液が供給される。
【0027】
保持プレート26には、図示しない接続部を介してリング状の回転カップ40が取り付けられており、これにより、回転カップ40は保持プレート26と一体的に回転するようになっている。回転カップ40は、図5に示すように、保持プレート26の各保持部材25により支持されたウエハWを側方から囲うよう設けられている。このため、回転カップ40は、ウエハWの液処理を行う際にこのウエハWから側方に飛散した処理液を受けることができる。なお、保持プレート26は、当該保持プレート26から下方に延びる回転軸26aを回転駆動モータ27により回転させることにより、回転する。このとき、下降位置にあるリフトピンプレート22は、ピン24a介して保持プレート26と係合しているため、リフトピンプレート22と一緒に回転する。
【0028】
また、回転カップ40の周囲には、ドレインカップ42および案内カップ44がそれぞれ設けられている。ドレインカップ42および案内カップ44はそれぞれリング状に形成されている。また、ドレインカップ42および案内カップ44はそれぞれ上部に開口を有している。ここで、ドレインカップ42は処理チャンバ20内においてその位置が固定されている。一方、案内カップ44はドレインカップ42内に移動可能に設けられて図示しない昇降シリンダにより昇降させられるようになっている。
【0029】
図5に示すように、ドレインカップ42や案内カップ44の下方には、第1排出部46aおよび第2排出部46bがそれぞれ設けられている。使用される処理液の種類により設定される案内カップ44の上下方向位置に依存して、ウエハWから側方に飛散した処理液が、2つの排出部46a、46bのうちいずれか一つの排出部に選択的に送られるようになっている。具体的には、後述するSC−1液による液処理が行われる場合には、案内カップ44が上昇位置(図5に示すような状態)に位置して、ウエハWから側方に飛散したSC−1液が第2排出部46bに送られる。一方、後述するSPM液による液処理が行われる場合には、案内カップ44が下降位置に位置して、ウエハWから側方に飛散したSPM液が第1排出部46aに送られる。また、図5に示すように、第1排出部46aおよび第2排出部46bには気液分離部48a、48bがそれぞれ接続されている。そして、第1排出部46aおよび第2排出部46bにおいて排液のみならず排気も行われるようになっており、図5に示すように、気液分離部48a、48bにおいて第1排出部46aおよび第2排出部46bから送られてきた処理液の廃液(ミストも含む)およびガスからなる気液混合流体から液体と気体とが分離され、それぞれ排液(DR)および排気(EXH)される。
【0030】
また、図5に示すように、ドレインカップ42には、ウエハWの中心に向かって純水を供給する固定リンスノズル43が設けられている。この固定リンスノズル43により、ウエハWの中心に向かって純水等のリンス液が放物線状に吐出されるようになっている(図5の二点鎖線参照)。
【0031】
ドレインカップ42および案内カップ44の周囲には、前述したカップ外周筒50A、50Bが設けられている。図5に示すように、内側のカップ外周筒50Aの下端は、カップ外周筒50Aを支持する支持部材53Aが連結されており、支持部材53Aは駆動機構54Aにより昇降する。駆動機構54Aおよび支持部材53Aは、例えばエアシリンダ機構のシリンダ部およびロッド部からそれぞれ構成することができる。駆動機構54Aにより支持部材53Aを昇降させることにより、カップ外周筒50Aは、カップ外周筒50Aの上端がドレインカップ42より上方にある上昇位置と、上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降可能である。図3および図5に示すように、カップ外周筒50Aの側部には、ノズル支持アーム82p,82qを通すための2つの側部開口50mが設けられている。図5に示すように、カップ外周筒50Aの上部は開口端であり、言い換えれば、カップ外周筒50Aの上部に上部開口50nが形成されている。上部開口50nが天板32により塞がれる位置までカップ外周筒50Aが上昇する。
【0032】
また、外側のカップ外周筒50Bの上部には、このカップ外周筒50Bを支持するための支持部材53Bが連結されており、支持部材53Bには当該支持部材53Bを昇降させる駆動機構54Bが連結されている。駆動機構54Bは例えばエアシリンダ機構から構成することができる。駆動機構54Bにより支持部材53Bを昇降させることにより、カップ外周筒50Bは、図5に示す内側のカップ外周筒50Aと同様に、カップ外周筒50Bの上端がドレインカップ42の上方にある上昇位置と、上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降可能である。カップ外周筒50Bの側部にも、ノズル支持アーム82r、82sを通すための2つの側部開口(カップ外周筒50Aの側部開口50mと同形状である)が設けられているが、これは図示されていない。カップ外周筒50Bの上部にも、カップ外周筒50Aと同様に、上部開口が形成されており、この上部開口は、カップ外周筒50Bが上昇位置にあり、かつエアフード70が下降位置にあるときに、当該エアフード70により塞がれる。
【0033】
また、図5に示すように、処理チャンバ20内には、カップ外周筒50A,50Bをそれぞれ洗浄するための洗浄部52A,52Bが設けられている。洗浄部52A,52Bはそれぞれ、DIW(純水)等の洗浄液を貯留するためのリング形状の洗浄槽52Aa,52Baを有している。カップ外周筒50A,50Bが下降位置にあるときにカップ外周筒50A,50Bが洗浄槽52Aa,52Baに貯留された洗浄液に浸され、これによって、カップ外周筒50A,50Bを洗浄することができる。洗浄槽52Aaの底壁とそこを貫通する支持部材53Aとの間(図5の左側を参照)には、洗浄液の漏洩を防止しつつ支持部材53Aの上下運動を許容する適当なシール(図示せず)が施されている。なお、内側のカップ外周筒50Aが下降位置にあるときには、カップ外周筒50Aの全体(上端部まで)が洗浄槽52Aaにある洗浄液に浸っていることが好ましい。
【0034】
洗浄槽52Aa,52Baの底部(図5の右側を参照)には洗浄液供給路52Ab,52Bbが形成されており、この洗浄液供給路52Ab,52Bbに図5中矢印で概略的に示すように、洗浄液供給源(DIW)から洗浄液が連続的に送られる。洗浄槽52Aa,52Baの上部の側部(図5の左側を参照)にはそれぞれ、排液路52Ac,52Bcが開口しており、この排液路52Ac,52Bcを介して洗浄槽52Aa,52Baの洗浄液が排出されるようになっている。すなわち、洗浄槽52Aa,52Ba内には、洗浄槽52Aa,52Baの底部の洗浄液供給路52Ab,52Bbから、上方に向かって流れて洗浄槽52Aa,52Baの上部の排液路52Ac,52Bcから流出する洗浄液の流れが形成され、これによりカップ外周筒50A,50Bに付着した薬液が洗い流されるとともに洗浄槽52Aa,52Ba内の洗浄液が常時清浄化されるようになっている。なお、実際には、洗浄液供給路52Ab,52Bbおよび排液路52Ac,52Bcの各々は円周方向に間隔を空けて複数設けられているが、図5では、図面の簡略化のため1つずつだけ示している。
【0035】
また、図2に示すように、カップ外周筒50Bのすぐ外側に、各ノズル支持アーム82を洗浄するために、各ノズル支持アーム82に対応して1つずつアーム洗浄部88が設けられている。このアーム洗浄部88の構成についての詳細な図示は省略するが、このアーム洗浄部88は、その内部に洗浄液が収容される洗浄室(図示せず)を有しており、前記洗浄室の内部を細長い円柱形状のノズル支持アーム82が貫いている。ノズル支持アーム82が進出位置から退避位置に移動するとき、または退避位置から進出位置に移動するときに、洗浄室に収容された洗浄液にノズル支持アーム82の一部が接触しながらノズル支持アーム82が移動することによりノズル支持アーム82の洗浄が行われるようになっている。上記に代えて、アーム洗浄部88は、洗浄室内に洗浄液のシャワーを噴射するノズルを設けて構成してもよく、また、洗浄液を乾燥させるためのガスを噴射するガスノズルをアーム洗浄部88に付設することもできる。なお、図3には、図面の簡略化のため、アーム洗浄部88は図示されていない。
【0036】
4つのノズル支持アーム82(82p〜82s)のノズル82a(82a’)からそれぞれ吐出される流体の詳細について、図8を参照して以下に説明する。
【0037】
図8(a)に示すように、4つのノズル支持アーム82のうち第1のノズル支持アーム82pには、2つのノズル82a,82a’が設けられている。第1のノズル支持アーム82pのノズル82aからは硫酸と過酸化水素水とを混合して得たSPM液がウエハWに向かって下方に吐出されるようになっている。第1のノズル支持アーム82p内にはノズル82aに接続された処理液供給管83aが設けられており、並列に設けられた過酸化水素水供給部83bおよび硫酸供給部83cがそれぞれ流量調整弁および開閉弁を介して処理液供給管83aに接続されている。また、硫酸供給部83cから供給された硫酸を加熱するためのヒータ83dが設けられている。そして、過酸化水素水供給部83bおよび硫酸供給部83cから供給された過酸化水素水および硫酸が混合され、この硫酸と過酸化水素水とを混合して得たSPM液が処理液供給管83aを介して第1のノズル支持アーム82pのノズル82aに送られるようになっている。硫酸供給部83cから供給された硫酸はヒータ83dにより加熱され、さらにこの加熱された硫酸と過酸化水素水とが混合されたときに反応熱が生じる。このため、第1のノズル支持アーム82pのノズル82aから吐出されるSPM液は、100℃以上、例えば170℃程度の高温となる。また、第1のノズル支持アーム82pのノズル82a’からはリンス液としてのホットDIW(加熱された純水)がウエハWに向かって下方に吐出されるようになっている。第1のノズル支持アーム82p内にはノズル82a’に接続された処理液供給管83a’が設けられており、純水供給部83eが流量調整弁および開閉弁を介して処理液供給管83a’に接続されている。また、純水供給部83eから供給された純水を例えば60〜80℃に加熱するためのヒータ83fが設けられている。
【0038】
また、図8(b)に示すように、第2のノズル支持アーム82qのノズル82aからは、天板32を洗浄するための純水等の天板洗浄液が上向きに吐出されるようになっている。第2のノズル支持アーム82q内にはノズル82aに接続された洗浄液供給管84aが設けられており、洗浄液供給部84bが流量調整弁および開閉弁を介して洗浄液供給管84aに接続されている。洗浄液供給部84bから供給された純水等の天板洗浄液が洗浄液供給管84aを介して第2のノズル支持アーム82qのノズル82aに送られる。
【0039】
また、図8(c)に示すように、第3のノズル支持アーム82rのノズル82aからは、アンモニア水と過酸化水素水との混合液(以下、「SC−1液」ともいう)と、常温リンス液としての純水とをウエハWに向かって下方に吐出できるようになっている。第3のノズル支持アーム82r内にはノズル82aに接続された処理液供給管85aが設けられており、並列に設けられた過酸化水素水供給部85b、アンモニア水供給部85cおよび純水供給部85dがそれぞれ流量調整弁および開閉弁を介して処理液供給管85aに接続されている。第3のノズル支持アーム82rのノズル82aからSC−1液を吐出する場合には、純水供給部85dに対応する開閉弁が閉止された状態で、過酸化水素水供給部85bおよびアンモニア水供給部85cから過酸化水素水およびアンモニア水が送り出されてこれらが混合してSC−1液が生成され、このSC−1液が処理液供給管85aを介して第3のノズル支持アーム82rのノズル82aに送られる。また、常温純水からなるリンス液を供給する場合には、過酸化水素水供給部85bおよびアンモニア水供給部85cに対応する開閉弁をそれぞれ閉止した状態で、純水供給部85dから処理液供給管85aを介して純水が送り出される。
【0040】
また、図8(d)に示すように、第4のノズル支持アーム82sのノズル82aは二流体ノズルとして構成されている。第4のノズル支持アーム82sのノズル82aには純水供給管86aおよびNガス供給管86cがそれぞれ接続されており、純水供給管86aには純水供給部86bが接続されるとともにNガス供給管86cにはNガス供給部86dが接続されている。純水供給部86bから純水供給管86aを介して供給された純水と、Nガス供給部86dからNガス供給管86cを介して供給されたNガスとが二流体ノズル内で混合することにより、この二流体ノズルから純水の液滴が下方に噴霧される。
【0041】
なお、第2のノズル支持アーム82qの高さレベルは、第1のノズル支持アーム82pの高さレベルよりも高くしてもよく、そうすれば、第2のノズル支持アーム82qおよび第3のノズル支持アーム82rが同時にカップ外周筒50内に進出したときにアーム同士が衝突または干渉しないようにできる。これによって、第1のノズル支持アーム82pのノズル82aによりウエハWに高温リンス処理を行う際に、第2のノズル支持アーム82qのノズル82aにより天板32を洗浄することができる。また、第2のノズル支持アーム82qのノズル82aにより天板32を洗浄するときに、ウエハWが取り除かれた基板保持部21を洗浄することができる。なお、この場合、内側のカップ外周筒50Aに形成される2つの側部開口50mの高さレベルも変更される。
【0042】
各ノズル支持アーム82が退避位置にあるときには、当該ノズル支持アーム82の先端部分が、上昇位置にあるときのカップ外周筒50の対応する側部開口50mに近接して当該側部開口50mを塞ぐようになっている。このことにより、カップ外周筒50の内側の雰囲気が側部開口50mからカップ外周筒50の外側に漏出することをさらに防止することができる。
【0043】
次に、天板32およびその周辺に位置する構成要素の詳細の構造について図4、図6Aおよび図6Bを用いて説明する。
【0044】
図6Aに示すように、天板32は天板保持アーム35により保持されるようになっている。また、天板32の上部には回転軸34が取り付けられており、この回転軸34と天板保持アーム35との間にはベアリング34aが設けられている。このため、回転軸34は天板保持アーム35に対して回転することができるようになっている。また、回転軸34にはプーリ34bが取り付けられている。一方、天板保持アーム35の基端部にはサーボモータ36が設けられており、このサーボモータ36の先端にもプーリ36bが設けられている。そして、回転軸34のプーリ34bおよびサーボモータ36のプーリ36bには無端のタイミングベルト36aが張架されており、このタイミングベルト36aにより、サーボモータ36による回転駆動力が回転軸34に伝達され、天板32が回転軸34を中心として回転するようになっている。なお、サーボモータ36にはケーブル36cが接続されており、このケーブル36cにより液処理装置10の筐体の外部からサーボモータ36に電力が供給されるようになっている。これらの回転軸34、タイミングベルト36a、サーボモータ36等により、水平面上で天板32を回転させる天板回転機構が構成されている。
【0045】
天板32の周縁に隣接して、天板32の裏面に付着した後に遠心力により半径方向外側に飛散する液体(例えばヒュームの凝縮物)を受け止めるためのリング状の液受け部材130が設けられている。液受け部材130は、その内部にリング状の液受け空間132を有しており、この液受け空間132は天板32の周縁に向けて開口している。液受け部材130は、液受け空間132の内周端を形成する上方向に延びる縁部材134を有しており、天板32から飛散する液体が確実に液受け空間132に落ちるように、天板32の周縁は縁部材134よりも半径方向外側に位置していることが好ましい。
【0046】
液受け部材130には、液受け空間132に接続された1つまたは複数の排出口136が形成されている。排出口136には、ミストセパレータ137aおよびイジェクタ137bが介設された排出管137cが接続されており、必要に応じて液受け空間132内を吸引することができるようになっている。液受け空間132を吸引することにより、液受け空間132内にある液体を排出管137cに効率よく排出することができる。また、液受け空間132を吸引することにより、天板32の周縁部下面近傍において液受け空間132内に向かう気流が生じ、この気流により天板32の周縁部に到達した液体が液受け空間132内に引きずり込まれるので、液体を確実に液受け空間132内に導くことができる。なお、ミストセパレータ137aにより分離された液体は工場廃液系(DR)に排液され、イジェクタ137bからの排気は工場排気系(EXH)に排気される。なお、排出口136を1つだけ設ける場合には、排出管137cの取り回しを簡略化するために、排出口136は天板保持アーム35の下方(図4を参照)に設けることが好ましい。
【0047】
回転可能な天板32の上方には、回転不能な円形の整流板140が設けられている。天板32の上面と整流板140の下面との間には、空間141が設けられている。整流板140の下面の周縁部は、液受け部材130の液受け空間132を画成する内側上面138と接続されている。従って、イジェクタ137bにより液受け空間132を吸引すると、天板32と整流板140との間の空間141内を半径方向外側に向けて流れる気流が生じ、この気流は、天板32の周縁と液受け部材130の内側上面138との間の隙間を通って液受け空間132に流れ込むため、天板32の周縁と液受け部材130の縁部材134との間を通って液受け空間132に流れ込む液体が、天板32の周縁と液受け部材130の内側上面138との間の隙間を通って天板32の上方に吹き出すことはない。
【0048】
液受け部材130および整流板140は、天板保持アーム35に固定されて天板保持アーム35から放射状に延びる複数(本例では4本)の支持腕146により支持されている。支持腕146の先端部下面には、取付けリング150、整流板140の外周縁部144、液受け部材130がこの順で上から順に積層され、ボルト148aにより互いに締結されている。また、支持腕146の基端部下面には、整流板140の内周縁部142がボルト148bにより締結されている。従って、図示された構成例においては、天板32、液受け部材130および整流板140は共通の支持部材である天板保持アーム35により支持されて一緒に一体的に移動し、また、天板32だけが鉛直軸線周りに回転可能であり、液受け部材130および整流板140は回転しない。
【0049】
図6Bに示すように、天板32が進出位置にあり、かつ内側のカップ外周筒50Aが上昇位置にあるときに、液受け部材130の下面は内側のカップ外周筒50Aの上面に接触するかあるいは漏洩が生じない程度の僅かな隙間が両者の間にあるように近接させており、これにより、カップ外周筒50A、液受け部材130および天板32によりウエハWを包囲する密閉または閉鎖空間が画成されている。なお、液受け部材130の下面およびカップ外周筒50の上面の少なくとも一方にシール部材を設けて、液受け部材130の下面およびカップ外周筒50Aの上面の間を密封してもよい。
【0050】
図4および図6Aに示すように、天板保持アーム35の基端には回転モータ37が設けられており、天板保持アーム35は回転モータ37の回転軸を中心として旋回するようになっている。これにより、天板32は、基板保持部21により保持されたウエハWを上方から覆う進出位置(図4で実線で示す位置)と、進出位置から水平方向に退避した位置である退避位置(図4の二点鎖線で示す位置)との間を移動することができる。
【0051】
また、図2および図4に示すように、液処理装置10の待機領域80には、天板32が退避位置に退避したときに当該天板32を収納する天板収納部38が設けられている。この天板収納部38の側方には開口が形成されており、天板32が進出位置から退避位置に移動したときにこの天板32は天板収納部38の側方の開口を介して天板収納部38内に完全に収納される。天板収納部38には排気部39が設けられており、天板収納部38内の雰囲気は常に排気部39により排気されている。このため、天板収納部38内に収容された天板32の下面にSPM液等の処理液に由来する液滴が付着していたとしても、その液滴由来の雰囲気が待機領域80や処理チャンバ20内に流出することはない。
【0052】
次に、エアフード70およびその周辺に位置する構成要素の詳細の構造について図7を用いて説明する。
【0053】
図7に示すように、エアフード70は、下部が開口したケーシング72と、ケーシング72の下部に設けられ複数の開口77aを有するパンチングプレート等の下板77とを備えており、ケーシング72内にはフィルター76が一層または複数層設けられている。また、ケーシング72の上部には可撓性のダクト74が接続されており、このダクト74は液処理装置10の筐体の外部の環境に連通している。また、ダクト74の基端部にはケーシング72内にガスを送り込むためのファン(図示せず)が設けられている。液処理装置10の筐体の外部の環境からダクト74を経由してケーシング72内にガス(例えば空気)が送られ、ケーシング72内においてフィルター76によりガスに含まれるパーティクルが除去された後、下板77の開口77aから清浄化されたガスが下方に流れるようになっている。
【0054】
また、図7に示すように、エアフード70には、当該エアフード70を昇降させるエアフード昇降機構78が設けられている。このエアフード昇降機構78により、エアフード70は、基板保持部21に保持されたウエハWの近傍に位置してウエハWを上方から覆う下降位置と、下降位置よりもウエハWから上方に離れた上昇位置との間で昇降するようになっている。なお、前述したように、図2では、エアフード70が上昇位置に位置しているときの状態を示している。なお、エアフード70が下降位置にあり、外側のカップ外周筒50Bが上昇位置にあるとき、外側のカップ外周筒50Bの上面はエアフード70の下板77の下面に接触するかあるいは漏洩が生じない程度の僅かな隙間が両者の間にあるように近接させており、これによって、ウエハWの周囲には、エアフード70とカップ外周筒50Bとによって、ウエハWを包囲する密閉または閉鎖空間が画成される(図7および図10(i)〜(k)を参照)。なお、図示された実施形態においては、エアフード70が上昇位置と下降位置との間で昇降し、天板32が進出位置と退避位置との間で水平移動するようになっているが、これに限定されるものではなく、エアフード70が進出位置と退避位置との間で水平移動し、天板32が上昇位置と下降位置との間で昇降するようになっていてもよい。
【0055】
また、図2に示すように、液処理装置10は、その全体の動作を統括制御するコントローラ200を有している。コントローラ200は、液処理装置10の全ての機能部品(例えば、基板保持部21、ピストン機構24、サーボモータ36、カップ外周筒50A,50Bの駆動機構54A,54B、天板32を移動させる回転モータ37、エアフード昇降機構78等)の動作を制御する。コントローラ200は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、あるいはCD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が図2において参照符号201で示されている。プロセッサ202は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体201から呼び出して実行させ、これによってコントローラ200の制御の下で液処理装置10の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。コントローラ200は、図1に示す液処理システム全体を制御するシステムコントローラであってもよい。
【0056】
次に、上述した液処理装置10を用いて、ウエハWの上面にある不要なレジスト膜を除去する洗浄処理の一連の工程について図9〜図11を用いて説明する。以下に示す洗浄処理の一連の工程は、コントローラ200が液処理装置10の各機能部品の動作を制御することにより行われる。なお、図9〜図11では、図面の見やすさを重視して液処理装置の各構成部材は大幅に簡略化されて記載されている。
【0057】
まず、図9(a)に示すように、天板32を退避位置に移動させ、この天板32を天板収納部38に収納させる。また、エアフード70を図2に示す上昇位置から下降させ、下降位置に位置させる。また、内側および外側のカップ外周筒50A,50Bを下降位置に位置させ、基板保持部21の上部空間の側方を開放する。このような状態で、基板保持部21のリフトピンプレート22および処理液供給管28を図5に示す位置から上方に移動させ、処理チャンバ20の開口94aに設けられたシャッター94を開く。そして、液処理装置10の外部からウエハWが搬送アーム104(図1を参照)により開口94aを介して処理チャンバ20内に搬送され、このウエハWがリフトピンプレート22のリフトピン23上に載置され、その後、搬送アーム104は処理チャンバ20から退避する。この際に、各ノズル支持アーム82は待機領域80内の退避位置に位置している。エアフード70から処理チャンバ20内にクリーンエア等のガスが常にダウンフローで送られることにより、処理チャンバ20内の清浄度が維持されるようになっている。
【0058】
次に、リフトピンプレート22および処理液供給管28を下方に移動させ、これらのリフトピンプレート22および処理液供給管28を図5に示すような下降位置に位置させる。この際に、保持プレート26に設けられた各保持部材25が、リフトピン23上のウエハWを側方から支持し、このウエハWをリフトピン23からわずかに離間させる。
【0059】
その後に、図9(b)に示すように、エアフード70を下降位置から上昇位置に移動させ、その後、天板32を退避位置から進出位置に移動させる。これにより、基板保持部21により保持されたウエハWは天板32によって覆われるようになる。次いで、図9(c)に示すように、内側のカップ外周筒50Aを下降位置から上昇させて上昇位置に位置させる。これにより、ウエハWの周囲には、天板32とカップ外周筒50Aとによって外部から隔離された空間が形成される。この空間を、以下の説明において、「第1の処理空間」とも称する。後述するように、この第1の処理空間は、硫酸と過酸化水素水とを混合して得たSPM液によりウエハWに対して液処理が行われる空間である。なお、このときのカップ外周筒50Aの上端部と天板32およびその周辺部品との位置関係は、図6Bに示された通りである(図9(d)〜(e)および図11(m)に示す状態においても同じ)。なお、カップ外周筒50Aが上昇位置にあるとき、カップ外周筒50Aの下端部は洗浄槽52Aa内の洗浄液に浸っている。これにより、カップ外周筒50Aの下端部近傍の空間を介したカップ外周筒50Aの内側の空間と外側の空間との連通を遮断するウオーターシールが形成される。なお、カップ外周筒50Bが上昇位置にあるときも、カップ外周筒50Bの下端部は洗浄槽52Ba内の洗浄液に浸っており、同様にウオーターシールが形成される。次いで、サーボモータ36によって天板32を回転させる。
【0060】
次に、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第1のノズル支持アーム82pをカップ外周筒50の対応する側部開口50mを通って処理チャンバ20の内側に進入させる(図9(d)参照)。
【0061】
次に、基板保持部21の保持プレート26およびリフトピンプレート22を回転させ、保持プレート26の各保持部材25により保持されているウエハWを回転させる。そして、ウエハWが回転した状態で、カップ外周筒50A内に進出した第1のノズル支持アーム82pのノズル82aからウエハWの上面にSPM液が供給され、ウエハWのSPM処理が行われる。このSPM処理によって、ウエハWの表面のレジストがSPM液によって剥離される。SPM液とともに剥離されたレジストは、回転するウエハWの遠心力によってウエハWから飛散し、下降位置にある案内カップ44を介して第1排出部46aに送られて回収される。SPM処理時において、第1のノズル支持アーム82pのノズル82aからウエハWに向かってSPM液を吐出させながらこのノズル82aを図9(d)における左右方向に移動させることにより、ウエハWの全域に均一にSPM液を吐出することが好ましい。
【0062】
SPM処理が行われるときに、天板32の下方であってかつカップ外周筒50Aの内側に形成される第1の処理空間は外部から隔離されているため、第1の処理空間内の雰囲気が外部に出ることを防ぐことができ、かつ、外部の雰囲気が第1の処理空間内に入るのを防ぐことができる。また、天板32が水平面に沿って回転していることにより、天板32の下面に付着したSPM液等の処理液の液滴は遠心力によって天板32の周縁に向かって流れ、液受け部材130の液受け空間132内に流れ込み、さらにこの液受け空間132から排出口136、ミストセパレータ137aおよびイジェクタ137bが介設された排出管137cを介して、工場排液系に排出される。また、カップ外周筒50の内壁面に付着した処理液の液滴は、カップ外周筒50Aの内壁面に沿って自重により落下する。従って、SPM液等の処理液の液滴がウエハWに再付着することが抑制される。
【0063】
SPM処理が所定時間実行された後、第1のノズル支持アーム82pのノズル82aからのSPM液の吐出が終了され、次いで、引き続きウエハWおよび天板32を回転させた状態で、第1のノズル支持アーム82pのノズル82a’から高温DIW(例えば80℃に加熱された純水)の供給を行うことにより高温リンス処理が行われる。この際に、ウエハWの下面(裏面)に向かって処理液供給管28からも加熱された純水を供給し、ウエハ裏面に対しても高温リンス処理を行う。高温DIWの吐出中、ノズル82a’をウエハのWの回転中心の真上に位置させ続けてもよいし、ウエハWの半径方向に往復させてもよい。なお、SPM液の吐出終了後であって高温DIWの供給前に、第1のノズル支持アーム82pを一旦後退させてアーム洗浄部88で洗浄した後に、再度カップ外周筒50A内に進出させてもよい。
【0064】
高温リンス処理の終了後、図9(e)に示すように、第1のノズル支持アーム82pはカップ外周筒50A内から退避し、待機領域80で待機するようになる。この際に、ウエハWおよび天板32は引き続き回転し続けている。また、第1のノズル支持アーム82pがカップ外周筒50内から退避して退避位置に移動する際に、アーム洗浄部88により第1のノズル支持アーム82pの洗浄が行われ、第1のノズル支持アーム82pに付着したSPM処理に由来する汚染物質が除去される。また、高温リンス処理の終了後直ちに、固定リンスノズル43からウエハWの中心に向かって純水(例えば、80℃)の供給が開始される。ウエハWを回転させながら固定リンスノズル43からの純水を供給することによりウエハWの表面に純水の液膜が形成されるので、ウエハWの表面が大気に露出しなくなるのでウエハWの表面にパーティクルが付着することを防止することができる。
【0065】
次に、天板32の回転を停止し、さらに図10(f)に示すようにカップ外周筒50Aが下降位置まで下降して洗浄槽52Aa内の洗浄液(純水)中に沈められる。これによりSPM処理時にカップ外周筒50Aの内周面に付着したSPM液由来の汚染物質が、洗浄槽52Aa内の洗浄液により洗浄される。カップ外周筒50Aは、次に使用される時までの間、洗浄槽52Aa内で待機している。
【0066】
次に、図10(g)に示すように天板32を進出位置から退避位置に移動させ、この天板32を天板収納部38に収納する。このとき天板32の下面には、SPM液由来の汚染物質(ヒュームの凝縮物等)が付着しているが、天板収納部38内は排気部39により排気されるので、汚染物質の雰囲気が待機領域80や処理チャンバ20内に流出することはない。
【0067】
次いで、図10(h)に示すように、外側のカップ外周筒50Bが駆動機構54Bにより上昇位置まで上昇する。その後、図10(i)に示すように、エアフード70が上昇位置から下降して下降位置に位置するようになる。このとき、カップ外周筒50の上端が、エアフード70の下板77の下面に接触または近接するようになり、これにより、ウエハWの周囲にはエアフード70とカップ外周筒50Bとによって外部から隔離された第2の処理空間が形成される。この第2の処理空間内に、エアフード70により清浄化されたガス(清浄空気)を供給して、処理空間内に残った雰囲気を置換する。
【0068】
次に、固定リンスノズル43からのリンス液の供給が停止され、待機領域80で待機している第3のノズル支持アーム82rが外側のカップ外周筒50Bの側部開口50mを介して、カップ外周筒50Bの内側に進出する(図10(j)参照)。そして、引き続きウエハWを回転させ続けるとともにエアフード70により清浄化されたガスが第2の処理空間内で流れている状態で、カップ外周筒50B内に進出した第3のノズル支持アーム82rのノズル82aからウエハWの中心に向けてSC−1液を供給する。このことにより、ウエハWの表面に残るレジスト残渣を取り除くことができる。なお、ウエハWに対してSC−1処理が行われる際には、SC−1液およびレジスト残渣は、上昇位置に位置する案内カップ44を介して、第2排出部46bに送られて排出される。
【0069】
ウエハWに対してSC−1液による液処理が行われるときに、エアフード70および外側のカップ外周筒50Bの内側に形成される第2の処理空間は外部から隔離されているため、SC−1液の成分を含む雰囲気が外部に出ることを防ぐことができ、かつ、外部の雰囲気が第2の処理空間内に入るのを防ぐことができる。また、第2の処理空間が閉じた空間となっていることにより、第2の処理空間の清浄度を清浄化されたガスにより維持することができる。
【0070】
SC−1処理が終了すると、図11(k)に示すように、第3のノズル支持アーム82rはカップ外周筒50B内から退避して待機領域80で待機するようになる。この際に、ウエハWは回転し続けている。また、第3のノズル支持アーム82rがカップ外周筒50B内から退避して退避位置に移動する際に、アーム洗浄部88により第3のノズル支持アーム82rの洗浄が行われる。これにより、第3のノズル支持アーム82rに付着したSC−1液等の汚れを除去することができる。また、第3のノズル支持アーム82rがカップ外周筒50B内から退避した後も、エアフード70により、清浄化されたガスが第2の処理空間内で流れ続けている。次いで、第3のノズル支持アーム82rがカップ外周筒50Bの側部開口50mを介してカップ外周筒50B内に進出する(すなわち再度図10(j)の状態になる)。ウエハWが回転した状態で、カップ外周筒50内に進出した第3のノズル支持アーム82rのノズル82aからウエハWの中心に向けて、常温の純水を供給する。この際に、ウエハWの下面(裏面)に向かって処理液供給管28から常温の純水を供給する。これにより、ウエハWに対してリンス処理が行われる。その後、ウエハWを高速回転させることにより、第2の処理空間内でウエハWの乾燥処理が行われる。
【0071】
なお、ウエハWに対するSC−1液による液処理が終了し、第3のノズル支持アーム82rがカップ外周筒50B内から退避した後、ウエハWの乾燥処理を行う前に、第4のノズル支持アーム82sをカップ外周筒50Bの内側に進出させ、この第4のノズル支持アーム82sの二流体ノズルによりウエハWに純水の液滴を噴霧することによってウエハWのリンス処理を行ってもよい。この場合には、ウエハWに対するリンス処理が終了し、第4のノズル支持アーム82sがカップ外周筒50内から退避した後も、エアフード70により清浄化されたガスが第2の処理空間内で流れ続けている。その後、ウエハWを高速回転させることにより、第2の処理空間内でウエハWの乾燥処理が行われる。
【0072】
ウエハWの乾燥処理が終了すると、図11(l)に示すように、外側のカップ外周筒50Bが上昇位置から下降して下降位置に位置するようになり、基板保持部21の上方空間の側方が開放される。その後、基板保持部21のリフトピンプレート22および処理液供給管28を図5に示す位置から上方に移動させ、処理チャンバ20の開口94aに設けられたシャッター94を開く。そして、開口94aを介して液処理装置10の外部から搬送アーム104が処理チャンバ20内に入り、リフトピンプレート22のリフトピン23上にあるウエハWが搬送アーム104に移載される。その後、搬送アーム104により取り出されたウエハWは液処理装置10の外部に搬送される。このようにして、一連のウエハWの液処理が完了する。
【0073】
次に、天板32の洗浄処理について図11(m)を参照して説明する。天板32を洗浄する際には、エアフード70を下降位置から上昇位置に移動させ、その後、天板32を退避位置から進出位置に移動させる。また、天板32が進出位置に移動した後、内側のカップ外周筒50Aを下降位置から上昇させて上昇位置に位置させ、次いで、サーボモータ36によって天板32に回転駆動力を与えることにより天板32を水平面に沿って回転軸34を中心として回転させる。
【0074】
そして、カップ外周筒50Aが上昇位置に移動した後、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第2のノズル支持アーム82qがカップ外周筒50Aの側面の側部開口50mを介してカップ外周筒50A内に進出する。
【0075】
その後、天板32が回転した状態で、カップ外周筒50内に進出した第2のノズル支持アーム82qのノズル82aから天板32に向かって純水等の天板洗浄液を吐出する。このことにより、天板32に付着したSPM処理に由来する汚染物質(ヒュームの凝縮物など)が除去される。ここで、第2のノズル支持アーム82qのノズル82aから天板32に向かって純水等の天板洗浄液を吐出させながらこのノズル82aを図11(m)における左右方向に移動させることにより、天板32の全域にわたってまんべんなく均一に洗浄を行うことができる。また、天板32に対して洗浄処理が行われるときに、天板32およびカップ外周筒50の内側には閉じた空間が形成されていることにより、第2のノズル支持アーム82qのノズル82aから吐出された天板洗浄液がカップ外周筒50の外部に出ることを防ぐことができる。また、天板洗浄処理時においても、ウエハWのSPM処理時と同様に、天板32の下面に付着した洗浄液は遠心力によって天板32の周縁に向かって流れ、液受け部材130の液受け空間132内に流れ込み、さらにこの液受け空間132から排出口136、ミストセパレータ137aおよびイジェクタ137bが介設された排出管137cを介して、工場排液系に排出される。また、カップ外周筒50の内壁面に付着した洗浄液の液滴は、カップ外周筒50の内壁面に沿って自重により落下する。
【0076】
上述したような天板32の洗浄処理は、ウエハWに対するレジスト膜の除去処理およびウエハWの洗浄処理の後に毎回行ってもよく、あるいは定期的に行うようにしてもよい。また、天板32の洗浄処理は、ウエハWのホットリンス処理と並行して行うことができる。天板32の洗浄処理とウエハWのホットリンス処理を同時に行う場合には、カップ外周筒50内に第1のノズル支持アーム82pおよび第2のノズル支持アーム82qが同時に進出する。この際に、第2のノズル支持アーム82qの高さレベルは、第1のノズル支持アーム82pの高さレベルよりも高くなっており、第1のノズル支持アーム82pおよび第2のノズル支持アーム82qが同時にカップ外周筒50内に進出したときに両者が衝突または干渉しないようになっている。このため、第2のノズル支持アーム82qのノズル82aによる天板32の洗浄処理と、第1のノズル支持アーム82pのノズル82aによりウエハWのホットリンス処理を同時に行うことができる。
【0077】
上記の実施形態によれば、ウエハWから飛散する処理液を受け止める液受けカップである回転カップ40、ドレインカップ42および案内カップ44の周囲にカップ外周筒50A、50Bを設け、液処理時にカップ外周筒50A、50Bの上端が回転カップ40よりも上方に位置する上昇位置にカップ外周筒50A、50Bを位置させている。このため、回転カップ40の上部開口から拡散する処理液由来のミストないしヒュームが、処理装置内の広範囲に(特に、平面視で、ウエハの半径方向外方向に)拡散することが防止される。また、2つのカップ外周筒50A、50Bをそれぞれ第1の薬液処理および第2の薬液処理に用いている。このため、一方のカップ外周筒(例えば50A)に付着した処理液由来のミストないしヒュームが他方のカップ外周筒(例えば50B)により形成される処理空間を汚染するといったカップ外周筒50A、50Bを介したクロスコンタミネーションを防止することができる。
【0078】
また、上記の実施形態においては、高い汚染性を有する第1の薬液(SPM液)による液処理を行うときに内側のカップ外周筒50Aを用いて第1の処理空間を形成し、SPM液よりも汚染性の低い第2の薬液(本例ではSC−1液)による液処理を行う場合には、外側のカップ外周筒50Bを用いて第2の処理空間を形成している。また、内側のカップ外周筒50Aは、使用しないときには、洗浄槽52Aa内に貯留された洗浄液内に沈められている。このため、まず、SPM液による液処理を行うときには、内側のカップ外周筒50Aがその内部雰囲気が外側に拡散することを防止するので、外側のカップ外周筒50Bを汚染することはない。むろんこのとき、外側のカップ外周筒50Bは洗浄槽52Ba内に貯留された洗浄液内に沈められているので、カップ外周筒50Bの汚染はより確実に防止される。したがって、SPM液による液処理終了時、すぐにカップ外周筒50Bを上昇させて、SC−1液による液処理を行うことができる。また、SC−1液による液処理を行うときには、内側のカップ外周筒50Aは、洗浄槽52Aa内に貯留された洗浄液内に沈められているので、外側のカップ外周筒50Bの内側の第2の処理空間の雰囲気の影響を受けないので、SC−1液により汚染されることはない。なお、SC−1処理中には、SC−1液のミストが洗浄槽52Aa内の洗浄液の水面に降下する可能性があるが、SC−1処理ではヒュームが生じないため汚染性は低く、また、洗浄槽52Aa内には常時新しい洗浄液が供給されているので、内側のカップ外周筒50Aの汚染は実質的に問題にならない。上記のことから理解できるように、相対的に汚染性の高い薬液による液処理を行う場合に内側のカップ外周筒50Aを用い、相対的に汚染性の低い薬液による液処理を行う場合に外側のカップ外周筒50Bを用いることが好ましい。
【0079】
また、上記の実施形態においては、ノズルをその先端部に保持するノズル支持アーム82は、カップ外周筒50A,50Bの側部に形成された側部開口50mを通って直進して、カップ外周筒の内側に進入することができるようになっている。このため、ノズル82aからウエハWに薬液が供給されている際に、薬液雰囲気が、ウエハの上方の空間から半径方向外側に向けて拡散することが防止されるかあるいは大幅に抑制される。また、上記の実施形態においては、カップ外周筒50A、50Bの上部開口50nは天板32またはエアフード70により閉塞されるので、薬液雰囲気が、ウエハの上方の空間からさらに上方に拡散することが防止または大幅に抑制される。
【0080】
なお、上記の実施形態に対しては、以下のような様々の変更を加えることができる。
【0081】
天板32と一緒に設けられている整流板140および液受け部材130は設けた方が好ましいが、省略することもできる。この場合、天板32の外径を内側のカップ外周筒50Aの内壁面の直径よりも僅かに小さくして、上昇位置にあるカップ外周筒50Aの上端部の内側に天板32を位置させる。こうすれば、回転する天板32の下面から遠心力により飛散する薬液(あるいはヒュームの凝縮物)は、カップ外周筒50Aの内壁面上に衝突した後、自重(重力)により下方に流れてゆき、最終的に洗浄槽52Ab内の洗浄液に溶け込み、洗浄液の流れに乗って排液される。
【0082】
1つのノズルアームが2種類(またはそれ以上)の異なる薬液をそれぞれ供給する2つ(またはそれ以上)のノズルを有していても構わない。具体的には例えば、1つのノズルアームにSPM液を供給するためのノズルと、SC−1液を供給するためのノズルが設けられていてもよい。この場合、SPM処理の終了後、SC−1処理の開始前にノズルアームを洗浄することが望ましい。
【0083】
上記実施形態では、薬液処理としてSPM処理と、SC−1処理を行っているが、これに限定されるものではない。2つのカップ外周筒内で実行される2つの液処理は、クロスコンタミネーションが問題となりうる任意の薬液処理とすることができる。また、2つのカップ外周筒内で実行される2つの液処理は、一方が薬液処理であり、他方がリンス(純水リンス)処理であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 液処理装置
21 基板保持部
32 天板
40 液受けカップ(回転カップ)
42 液受けカップ(ドレインカップ)
44 液受けカップ(案内カップ)
50A (第1)カップ外周筒
50B (第2)カップ外周筒
50m 側部開口
52Aa,52Ba (カップ外周筒用の)洗浄槽
82(82p,82q,82r,82s) ノズル支持アーム
82a,82a’ ノズル(処理液供給ノズル)
82c アーム駆動機構
70 エアフード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に対して第1の処理液を供給する第1処理液供給ノズルと、前記基板保持部に保持された基板に対して第2の処理液を供給する第2処理液供給ノズルと、
前記基板保持部に保持されたときの基板の径方向周囲に位置するよう設けられた、前記第1処理液供給ノズルまたは前記第2処理液供給ノズルにより基板に供給された後の処理液を受けるための液受けカップと、
前記液受けカップの周囲に配設され、その上端が前記液受けカップの上方にある上昇位置と、前記上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降自在な、上部に上部開口が形成された筒状の第1カップ外周筒と、
前記液受けカップの周囲であって前記第1カップ外周筒の外側に配設され、その上端が前記カップの上方にある上昇位置と、前記上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降自在な、上部に上部開口が形成された筒状の第2カップ外周筒と、
を備えた液処理装置。
【請求項2】
前記第1処理液供給ノズルをその先端部に保持する第1ノズルアームと、前記第1ノズルアームをその長手方向に直進させる第1アーム駆動機構と、前記第2処理液供給ノズルをその先端部に保持する第2ノズルアームと、前記第2ノズルアームをその長手方向に直進させる第2アーム駆動機構と、をさらに備え、
前記第1カップ外周筒の側部には第1側部開口が設けられており、前記第1アーム駆動機構により前記第1ノズルアームを直進させることにより、前記第1側部開口を通って、前記第1ノズルアームの先端部が前記上昇位置にある前記第1カップ外周筒の内側に進入することができるようになっており、前記第2カップ外周筒の側部には第2側部開口が設けられており、前記第2アーム駆動機構により前記第2ノズルアームを直進させることにより、前記第2側部開口を通って、前記第2ノズルアームの先端部が前記上昇位置にある前記第2カップ外周筒の内側に進入することができるようになっている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
洗浄液を貯留する第1洗浄槽をさらに備え、第1洗浄槽は、前記下降位置にある前記第1カップ外周筒が第1洗浄槽に貯留された洗浄液内に浸漬されるように設けられている、請求項1または2に記載の液処置装置。
【請求項4】
洗浄液を貯留する第2洗浄槽をさらに備え、第2洗浄槽は、前記下降位置にある前記第2カップ外周筒が第2洗浄槽に貯留された洗浄液内に浸漬されるように設けられている、請求項3に記載の液処置装置。
【請求項5】
前記基板保持部に保持された基板を上方から覆う天板をさらに備え、前記天板は、前記上昇位置にある前記第1カップ外周筒の上部開口を閉塞して、前記第1カップ外周筒の内側かつ前記天板の下方に第1の処理空間を形成する、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記基板保持部に保持された基板を上方から覆い、清浄化されたガスを下方向に流すエアフードをさらに備え、前記エアフードは、前記上昇位置にある前記第2カップ外周筒の上部開口を閉塞して、前記第2カップ外周筒の内側かつ前記天板の下方に清浄化されたガスが流れる第2の処理空間を形成する、請求項5に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記液受けカップが昇降可能な可動部分を有しており、前記第1の処理液により処理が行われる際と前記第2の処理液により処理が行われる際とで前記可動部分が異なる高さに位置して、処理に供された後の前記第1の処理液と前記第2の処理液とを異なる排液部に導く、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項8】
基板を水平に保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に対して第1の処理液を供給する第1処理液供給ノズルと、前記基板保持部に保持された基板に対して第2の処理液を供給する第2処理液供給ノズルと、
前記基板保持部に保持されたときの基板の径方向周囲に位置するよう設けられた、前記第1処理液供給ノズルまたは前記第2処理液供給ノズルにより基板に供給された後の処理液を受けるための液受けカップと、
前記液受けカップの周囲に配設され、その上端が前記液受けカップの上方にある上昇位置と、前記上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降自在な、上部に上部開口が形成された筒状の第1カップ外周筒と、
前記液受けカップの周囲であって前記第1カップ外周筒の外側に配設され、その上端が前記カップの上方にある上昇位置と、前記上昇位置よりも下方に位置する下降位置との間で昇降自在な、上部に上部開口が形成された筒状の第2カップ外周筒と、
を備えた液処理装置を用いた液処理方法において、
前記第1カップ外周筒を上昇位置に位置させるとともに前記第2カップ外周筒を下降位置に位置させた状態で前記基板保持部に保持された基板を回転させて、前記第1のノズルから前記基板に前記第1の処理液を供給して基板に第1の液処理を施す第1液処理工程と、
前記第2カップ外周筒を上昇位置に位置させるとともに前記第1カップ外周筒を下降位置に位置させた状態で前記基板保持部に保持された基板を回転させて、前記第2のノズルから前記基板に前記第2の処理液を供給して基板に第2の液処理を施す第2液処理工程と、
を備えた液処理方法。
【請求項9】
前記第1液処理工程を実行する際に、前記第1カップ外周筒の側部に設けられた第1側部開口を通って、前記第1処理液供給ノズルをその先端部に保持する第1ノズルアームの先端側を前記第1カップ外周筒の内側に進入させ、前記第2液処理工程を実行する際に、前記第2カップ外周筒の側部に設けられた第2側部開口を通って、前記第2処理液供給ノズルをその先端部に保持する第2ノズルアームの先端側を前記第2カップ外周筒の内側に進入させる、請求項8に記載の液処理方法。
【請求項10】
前記第1カップ外周筒は、下降位置にあるときに、第1洗浄槽に貯留された洗浄液内に浸漬され、前記第2カップ外周筒は、下降位置にあるときに、第2洗浄槽に貯留された洗浄液内に浸漬される、請求項8または9に記載の液処理方法。
【請求項11】
前記第1液処理工程を実行する際に、天板が、前記上昇位置にある前記第1カップ外周筒の上部開口を閉塞して、基板を上方から覆うとともに前記第1カップ外周筒の内側かつ前記天板の下方に第1の処理空間を形成し、前記第2液処理工程を実行する際に、エアフードが、前記上昇位置にある前記第2カップ外周筒の上部開口を閉塞して、基板を上方から覆うとともに前記第2カップ外周筒の内側かつ前記エアフードの下方に第2の処理空間を形成し、当該第2の処理空間内に清浄化されたガスを下方向に流す、請求項8から10のうちのいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項12】
前記液受けカップが昇降可能な可動部分を有しており、前記第1の処理液により処理が行われる際と前記第2の処理液により処理が行われる際とで前記可動部分が異なる高さに位置して、処理に供された後の前記第1の処理液と前記第2の処理液とを異なる排液部に導く請求項8から11のうちのいずれか一項に記載の液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−93361(P2013−93361A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232862(P2011−232862)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】