説明

液処理装置及び液処理方法

【課題】液処理と乾燥処理を異なる高さ位置で行うことができる液処理装置を提供する。
【解決手段】基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、前記基板保持部を上昇及び下降させる基板保持部昇降部材と、前記基板に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板に前記処理液を供給するときに、前記基板を囲う液受けカップと、前記基板に前記処理液を供給するときに、前記基板と前記液受けカップの上方に位置し、前記基板を乾燥するときに、前記基板を囲い、かつ前記液受けカップの上方に位置する乾燥カップとを備えることを特徴とする液処理装置により上記の課題が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ用ガラス基板などの基板を液処理する液処理装置及び液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(IC)やフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造工程には、半導体ウエハや、FPD用のガラス基板などの基板を液体により処理する工程がある。そして、液体による処理の終了後、基板を回転させて乾燥させる工程がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−87294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、基板を液体で処理した後、液処理時の基板の位置関係を維持した状態、または、基板のみを昇降させてカップを切り替えた状態で、基板の回転を継続して純水を振り切って乾燥させている。これらの場合には、液処理を行った後もミストなどの雰囲気が基板周辺に残り、乾燥時に基板に付着してパーティクルの原因となる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて為され、液処理と乾燥処理を異なる高さ位置で行うことができる液処理装置及び液処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、前記基板保持部を上昇及び下降させる基板保持部昇降部材と、前記基板に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板に前記処理液を供給するときに、前記基板を囲う液受けカップと、前記基板に前記処理液を供給するときに、前記基板と前記液受けカップの上方に位置し、前記基板を乾燥するときに、前記基板を囲い、かつ前記液受けカップの上方に位置する乾燥カップとを備えることを特徴とする液処理装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、基板を保持して液処理位置において液処理を行う液処理工程と、前記液処理工程において前記液処理が行われた前記基板を前記液処理位置より上方の乾燥位置にて乾燥する乾燥処理工程とを含むことを特徴とする液処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、液処理と乾燥処理を異なる高さ位置で行うことにより、液処理を行った後の蒸気やミストなどのヒュームが乾燥時に基板に付着してパーティクルが発生することを防止できる液処理装置及び液処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による液処理装置を示す概略図である。
【図2】図1の液処理装置の乾燥カップを説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態による液処理方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態による液処理方法を説明する説明図である。
【図5】図4に引き続いて、本発明の実施形態による液処理方法を説明する説明図である。
【図6】図5に引き続いて、本発明の実施形態による液処理方法を説明する説明図である。
【図7】図6に引き続いて、本発明の実施形態による液処理方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきである。
【0011】
(液処理装置の構成)
始めに、図1を参照しながら、本発明の実施形態による液処理装置について説明する。本実施形態においては、処理する基板として、半導体ウエハ(以下、ウエハという。)を用いる。
【0012】
図示のとおり、液処理装置100は、ウエハWを支持する基板支持部10と、基板支持部10により支持されたウエハWの下面に対向するように設けられた貯留槽20と、基板支持部10と貯留槽20との離間距離を変化させることができる駆動部30と、貯留槽20の外周側に貯留槽20を囲むように設けられた環状の液受けカップ部40と、液受けカップ部40の上方に設けられた環状の乾燥カップ42と、を有する。液処理装置100は、基板支持部10によりウエハWを回転可能に支持し、貯留槽20に液体を供給して液層を生成し、駆動部30により基板支持部10と貯留槽20との離間距離を減少させて、その液層にウエハWを浸漬し、ウエハWの表面を液処理する。また、液処理装置100は、貯留槽20から排出された液体、および、回転するウエハW表面上に供給されウエハWの回転により振り切られた液体を液受けカップ部40で回収する。また、液処理装置100は、駆動部30により基板支持部10と乾燥カップ42を上昇させ、液処理を行った位置とは異なる位置で乾燥処理を行う。
【0013】
基板支持部10は、環状のトッププレート部材10aと、トッププレート部材10aの下方でウエハWを挟持する爪部10sと、トッププレート部材10aの中央部に位置するトッププレートノズル10nと、液体を加熱する加熱部10Lと、を有する。
【0014】
トッププレート部材10aは、ウエハWの表面(パターン形成面)が下方に向いた状態でウエハWを支持する。トッププレート部材10aには、例えば3個の爪部が等間隔で配置されている。トッププレートノズル10nは、ウエハWの上面に液体(処理液等)を供給する。加熱部10Lは、ウエハW上面の液体(液膜)の温度を均一に保つため、ウエハWを所定の温度に加熱する。加熱部10Lは、例えばLEDを用いることができる。
【0015】
貯留槽20は、基板支持部10により支持されるウエハWの下面に対向するように設けられた円形の底部20bと、底部20bの外周部に底部20bを囲むように設けられた周壁を含む堰部20dと、貯留槽20に液体を供給する供給部20sと、底部20bと堰部20dとの摺動部に位置するシール部材23と、を有する。
【0016】
底部20bは、環状のベースプレート部材20aと、ウエハWに振動を付与する超音波振動板20sと、を有する。ベースプレート部材20aのウエハWの下面に対向する表面は、ベースプレート部材20aの中心部から外周部の方向に下降する傾斜面である。超音波振動板20sは、液体を振動させ、液体に接したウエハWの表面を物理的に洗浄する。
【0017】
底部20bは、堰部20dと相対的な位置関係を変化させるように移動することができ、堰部20dの上端より、底部20b(ベースプレート部材20a)の上端の位置を低くした場合に、底部20bと堰部20dとによって、液体を貯留することができる槽(容器)を形成する。ここで、底部20bと堰部20dとの相対的な位置関係を変化させる方法は、底部20b若しくは堰部20dのいずれか一方を移動させる方法、または、底部20b及び堰部20dの両方を相対的に移動させる方法でもよい。
【0018】
堰部20dは、貯留槽20の外周部に、ベースプレート部材20aを囲むように設けられた円筒形状の部材である。堰部20dの上端の表面は、堰部20dの中心部から外周部の方向に下降する傾斜面である。
【0019】
供給部20sは、ベースプレート部材20aの中心部に位置するベースプレートノズル20nと、ベースプレート部材20aの中心部から外周部の方向に配置された複数の吐出口20mと、を有する。ベースプレートノズル20n及び吐出口20mは、ウエハWの下面に液体を供給する。
【0020】
シール部材23は、貯留槽20に貯留された液体が底部20b(ベースプレート部材20a)と堰部20dとの間隙から漏洩するのを防止するため、ベースプレート部材20aと堰部20dとの摺動部の水密性を確保する。シール部材23は、例えばOリングなどを用いることができる。
【0021】
駆動部30は、基板支持部10のトッププレート部材10aを回転駆動するモータ30Mと、基板支持部10(ウエハW)と貯留槽20との離間距離を変化させる基板駆動部30aと、底部20bを上下に移動させる底部駆動部30bと、を含む。なお、駆動部30の基板駆動部30a及び底部駆動部30bは、モータ、シリンダ若しくは電磁力等の回転運動又は直線運動により、被駆動部を所望の位置に移動させる手段であれば、いずれの手段も用いることができる。
【0022】
液受けカップ部40は、貯留槽20に貯留された液体を排出する環状の第1の収容部40aと、第1の収容部40aより外周側に設けられ、回転しているウエハWに供給した液体のうち、遠心力により振り切られた液体を回収する環状の第2の収容部40bと、第1の収容部40aと第2の収容部40bとを仕切る可動式の仕切りガイド40gと、を有する。また、液受けカップ部40は、第1の収容部40aに流入した液体を排液する排液口41cと、第2の収容部40bに流入した液体を排液する排液口41dと、液処理装置100内の雰囲気ガスを排気する排気口41eと、を有する。ここで、液受けカップ部40は、仕切りガイド40gが上方のガイド位置Gup(図1で実線で示す位置)のときは排液口41cに液体を排液し、下方のガイド位置Gdw(図1で破線で示す位置)のときは排液口41dに液体を排液する。
【0023】
乾燥カップ42は、図2(a)に示すように、環状形状を有している。乾燥カップ42の内径は、液処理装置100で処理されるウエハWの直径よりも大きく、ウエハ支持部10によってウエハWは乾燥カップ42内部を上下方向に移動することができる。また、図1に示すように、乾燥カップ42は、上部プレート42aと下部プレート42bとを有している。上部プレート42aは、外周部に向かって下降するように傾斜する傾斜面を有し、その外縁部において、下部プレート42bと結合している。このため、乾燥カップ42は、中心に向かって開口する開口部Pを有している。また、下部プレート42bには、図2(a)に示すように、乾燥カップ42の中心を対称に乾燥カップ42内を排気するための2つの開口hが形成されており、図1に示すように、これらの開口hにダクト42cが接続されている。開口hは、乾燥カップ42内を排気できればよく、2つ以上設けてもよい。ダクト42cは、その下方部分が、排気排液導管42dに上下動可能に挿入されている。排液排気導管42dは、ダンパ42e及び気液分離器42fを介して排気装置(不図示)に接続されている。
【0024】
また、図2(b)に示すように、乾燥カップ42には駆動機構42gが設けられ、これにより乾燥カップ42の上下方向位置が調整される。具体的には、乾燥カップ42は、駆動機構42gによって、液受けカップ部40上に僅かな隙間をあけて配置されるか(図1参照、以下、この位置を下方位置という)、または液受けカップ部40から上方に離間した位置に配置される(図7参照、以下、この位置を上方位置という)。液処理装置100にウエハWを搬入出する際には、ウエハWと干渉しないように乾燥カップ42は下方位置に配置される。
【0025】
一方、乾燥カップ42は、乾燥処理時には上方位置に配置され、貯留槽20の上方にウエハ支持部10により支持されるウエハWの外縁が乾燥カップ42の開口部Pに臨むように位置する。このとき、乾燥カップ42内において、ウエハWの回転によりウエハWの周囲に、ウエハW中心から外周へ向かう気流が発生する。この気流は、排気装置により乾燥カップ42の開口部Pから開口hを通してダクト42cに吸引され、排気排液導管42dに排出される。また、ウエハ支持部10の回転によりウエハWから飛散した液体は、開口部Pを通して乾燥カップ42に受けられる。受けられた液体は、下部プレート42b上を流れて開口hからダクト42cを通して排気排液導管42dに至り、気液分離器42fにより液体のみが所定の排液路(不図示)を通して排出される。なお、排気装置による排気量はダンパ42eにより調整可能である。
【0026】
また、乾燥カップ42が上方位置に配置される乾燥処理時には、液受けカップ部40と乾燥カップ42との間には、液受けカップ部40及び乾燥カップ42の内外空間を連通する気流路42h(図2(b)参照)が形成されている。気流路42hによる効果は後述する。
【0027】
液処理装置100の液体供給系は、供給管57を介して、液体供給源50を供給部20s(ベースプレートノズル20n)に接続している。
【0028】
液体供給源50は、本実施形態では、4本の配管51〜54を有する。供給する液体(処理液)は、洗浄液として配管52からSC1を、リンス液として配管51から常温の脱イオン水(CDIW)及び配管53から高温の脱イオン水(HDIW)を、レジスト剥離の処理液として配管54から硫酸(HSO)を供給することができる。
【0029】
また、配管51〜54に対して、集合弁56が設けられている。集合弁56の入口は配管51〜54に接続され、集合弁56の出口は供給管57に接続されている。また、集合弁56は、配管51〜54に対応して三方弁を有する。ここで、三方弁とは、択一的に弁を開閉することによって、所望の液体を供給管57に択一的に供給する。具体的には、三方弁51aが開くと、配管51を流れる脱イオン水(CDIW)が供給管57に流入する。一方、閉まっている他の三方弁においては、対応する配管52〜54を流れる液体は、そのまま配管52〜54を流れ、供給管57には流入しない。
【0030】
なお、このような構成を有する集合弁56の代わりに複数の個別の弁を配管51〜54に設けることにより、液体を択一的に供給管57に供給する構成としても良い。
【0031】
供給管57は、図示しない流量制御器及び供給弁を介して、供給部20sのベースプレートノズル20nに接続されている。更に、供給管57は、図示しないドレイン管が接続されている。
【0032】
一方、供給部20sの吐出口20mは、本実施形態では、開閉弁を介して、過酸化水素水(H)を吐出する。また、基板支持部10のトッププレートノズル10nは、液体及び気体を供給する。トッププレートノズル10nの構成(配管、弁など)は、ベースプレートノズル20nの場合と同様のため、説明を省略する。
【0033】
(液処理の動作)
次に、図1〜図6を参照しながら、上記の液処理装置100において実施される液処理方法の一例について説明する。図3は、液処理方法を説明するフローチャートの例である。図4〜図6は、実施される液処理の各工程を説明する説明図である。図1及び図4〜図6を参照しながら、図3の液処理方法について説明する。
【0034】
始めに、図3のステップS1(及び図1)において、液処理装置100は、搬送機構61により、液処理装置100内にウエハWを搬入する(図1のM1)。次に、基板支持部10は、図示しない受け渡し機構により、搬送機構61からウエハWを受け取り、爪部10s(スピンチャック)によってウエハWを支持する。基板支持部10は、ウエハWのパターン形成面(表面)を下方に向けて、ウエハWを支持する。このとき、搬送機構61に干渉しないように、乾燥カップ42は下方位置に配置される。その後、ステップS2に進む。
【0035】
図3のステップS2(及び図4)において、液処理装置100は、回転処理工程として、ウエハWの表面に形成されているレジストを剥離する処理をする。具体的には、先ず、図4において、液処理装置100は、基板駆動部30aにより、基板支持部10を下方に移動する(M1)。このとき、下方に移動したトッププレート部材10aは、液受けカップ部40と下方位置に位置する乾燥カップ42の間に位置する。これにより、液受けカップ部40上方の開口を覆うことができる。
【0036】
次に、モータ30Mにより、ウエハW(トッププレート部材10a)を、所定の回転速度(例えば、500rpm)で回転する。その後、配管54の三方弁を開き、ベースプレートノズル20nから硫酸(HSO)を吐出する。また、吐出口20mから過酸化水素水(H)を吐出する。
【0037】
このとき、硫酸および過酸化水素水の混合液が生成され、混合液において硫酸と過酸化水素水との化学反応(HSO+H→HSO+HO)が生じ、強い酸化力を有するHSOを含むSPMが生成される。また、ウエハWの表面上のSPMは、ウエハWの回転による遠心力を受け、ウエハW表面の中央部から外周部に向けて拡がり、その表面上にSPMの液膜を形成する。このため、SPMの酸化反応により、ウエハWの表面に残存している不要なレジストを剥離することができる。
【0038】
ウエハW表面上のSPMの液膜の温度は、ウエハWの外周に向かって低下する。そのため、液処理装置100は、加熱部10Lにより、ウエハWの外周部を加熱して液膜の温度が低下するのを抑制する。また、ウエハW表面上のSPMが遠心力によりウエハWの外周縁から飛散するため、液処理装置100は、液受けカップ部40の第1の液収容部40aにより、飛散したSPMの液滴を回収し、排液口41cに排液する。また、高温のSPMからは蒸気やミストなどのヒュームが発生するが、トッププレート部材10aにより液受けカップ部40上方の開口が覆われているので、液受けカップ部40の上方にSPMのヒュームが流れることを抑制できる。
【0039】
以上より、回転処理工程の処理を完了すると、ウエハWの回転を停止し、ステップS3に進む。なお、回転処理工程を省略して、前工程(ステップS1)から次工程(ステップS3)に進んでもよい。
【0040】
次に、図3のステップS3(及び図5)において、液処理装置100は、貯留槽20に液体を供給し、その液体の液層Lを生成する。具体的には、先ず、液処理装置100は、仕切りガイド40gの位置を下方に移動(G1)し、排液口41dに液体を排液できるようにする。さらに、底部駆動部30bによって底部(ベースプレート部材20a)を下降させる。堰部20dの上端よりベースプレート部材20aの上端の位置を低くし、ベースプレート部材20aと堰部20dとによって、液体を貯留することができる貯留槽20を形成する。このとき、乾燥カップ42は、回転処理工程と同じく、下方位置に位置している。
【0041】
次に、液処理装置100は、貯留工程として、配管53(又は、配管51)の三方弁を開き、ベースプレートノズル20nからHDIW(又は、CDIW)を供給し、貯留槽20にHDIW(またはCDIW)の液層Lを生成する。次いで、液処理装置100は、浸漬工程として、基板駆動部30aにより、基板支持部10を下方に移動(M1)し、ウエハWをHDIW(またはCDIW)の液層に浸漬する処理(以下、DIP処理という。)をする。液処理装置100は、所定の時間、DIP処理を行う。このとき、液処理装置100は、DIP処理により、ウエハWの表面を均一に洗浄することができる。このとき、液受けカップ部40上方の開口は、トッププレート部材10aにより覆われており、液層からの雰囲気が液受けカップ部40より上方に流れていくことを抑制できる。
【0042】
ここで、液処理装置100は、DIP処理中に、モータ30Mにより、ウエハW(トッププレート部材10a)を低回転の回転速度で回転してもよい。また、底部20bの超音波振動板20sにより、ウエハW等に振動を付与し、ウエハWの表面を物理的に超音波洗浄してもよい。
【0043】
なお、ステップS3では、DIP処理中に、貯留槽20の液層Lに連続的に液体を供給し、堰部20dの上端から液体を排出しながら洗浄(以下、オーバーフロー洗浄という。)をすることができる。この場合、液処理装置100は、排出された液体を液受けカップ部40(第2の収容部40b)で収容し、その後、排液口41dに液体を排液することができる。オーバーフロー洗浄では、ステップS2において使用した液体(SPM等の処理液)が付着したベースプレート部材20a等を、ウエハWの洗浄と同時にすることができる。以上より、DIP処理を完了すると、ステップS4に進む。
【0044】
ステップS4(及び図6)において、液処理装置100は、排出工程として、貯留槽20の液体を排出する処理をする。具体的には、先ず、液処理装置100は、基板駆動部30aにより、基板支持部10を上方に移動し(M1)、貯留槽20の液層からウエハWを離間させる。また、液処理装置100は、底部駆動部30bによって底部(ベースプレート部材20a)を上昇させることにより、堰部20dの上端の表面に対して底部(ベースプレート部材20a)の上端の表面を相対的に上昇させる(M2)。これにより、ベースプレート部材20a及び堰部20dの上端の表面がベースプレート部材20aの中心部から外周部の方向に下降する傾斜面であるため、貯留槽20の液体を第2の収容部40bに排出することができる。一方、液処理装置100は、図示しない堰部駆動部によって堰部20dを降下させることにより、底部(ベースプレート部材20a)の上端の表面に対して堰部20dの上端の表面を相対的に降下させてもよい。さらに、貯留槽20の液体を排出した後、モータ30Mにより、ウエハW(トッププレート部材10a)を回転させて、ウエハW表面上の液体を除去してもよい。
【0045】
以上より、貯留槽20の液体を排出する処理を完了すると、ステップS5に進む。なお、排出工程の処理後、回転処理工程の処理をしてからステップS5に進んでもよい。回転処理工程として、例えば、ウエハWの回転洗浄工程及びリンス処理工程をすることができる。
【0046】
図3のステップS5(及び図7)において、液処理装置100は、ウエハWを回転しながら、ウエハWを乾燥する処理をする。具体的には、基板駆動部30aにより、基板支持部10を上方に移動する動きに同期させて、図7に示すように、駆動機構42gにより乾燥カップ42を上方位置に移動する。乾燥カップ42を上方位置に移動することにより、液受けカップ部40と乾燥カップ42との間に内外空間を連通する気流路42hが形成される。このとき、底部駆動部30bによって底部(ベースプレート部材20a)を下降させて貯留槽20を形成し、貯留槽20にDIWの液層を形成する。
【0047】
次に、モータ30Mにより、ウエハW(トッププレート部材10a)を回転させる。これにより、ウエハW表裏面に残るDIWが遠心力により振り切られ、ウエハWが乾燥する。振り切られたDIWは図7に矢印Y1で示すように、ウエハWの周囲を取り囲むように配置される乾燥カップ42の開口部Pに流入し、ダクト42cを通して排気排液導管42dから排出される。また、このときウエハWの回転によりウエハW周辺に回転中心から外周へ向かう気流が発生するのに加えて、排気排液導管42dを通して乾燥カップ42内が排気装置によって排気されている。これにより、ウエハW周辺に発生する蒸気やミストなどのヒュームは、開口部P、ダクト42c、及び排気排液導管42dを通して吸引される。そして、乾燥カップ42内が排気されると、乾燥カップ42と液受けカップ部40の間に形成された気流路42hから、排気量と同量程度の清浄気体を取り込むことができる。
【0048】
以上より、乾燥する処理をする完了すると、ウエハWの回転を停止し、ステップS6に進む。
【0049】
図3のステップS6において、液処理装置100は、搬送機構61(図1)により、処理済みのウエハWを液処理装置100外に搬出する。搬出方法は、ステップS1の逆手順と同様のため、説明を省略する。搬出を完了すると、図中の「END」に進み、液処理の動作を終了する。
【0050】
以下、本発明の実施形態による液処理装置100及び液処理方法の利点を説明する。本実施形態においては、上記のように液体による回転処理や浸漬処理と、ウエハWの乾燥処理とを異なる高さで行うことができる。これにより、液体による回転処理や浸漬処理を行う空間と乾燥処理を行う空間とを分けることができ、液処理後に残る雰囲気によって乾燥処理中にウエハWが汚染されることを防止することができる。さらに、液処理を行うときには、トッププレート部材10aにより液受けカップ部40の開口を覆うので、液処理によって発生する蒸気やミストなどのヒュームが、液受けカップ部40の上方に拡散することを抑制することができる。したがって、乾燥処理時にウエハWと乾燥カップ42が移動する上方位置には液処理によって発生する蒸気やミストなどのヒュームは存在せず、乾燥処理時にヒュームがウエハWに付着することに起因するパーティクルの発生を抑制することができる。
【0051】
また、液処理装置100においては、ウエハWの乾燥処理時に駆動機構40gによって乾燥カップ42が液受けカップ部40の上方に位置しているときには、乾燥カップ42と液受けカップ部40との間に大きな気流路42hが形成されている。このため、気流路42hを通してウエハWと貯留槽20との間の空間に乾燥カップ42の外側から清浄気体を取り込むことができる。(図7の矢印Y2)これにより、ウエハWと貯留槽20との間の空間は、流れ込んだ清浄気体によりほぼ常圧に維持されることができる。さらに、清浄気体が流れ込んでくることにより、乾燥処理を清浄な雰囲気で行うことができる。
【0052】
さらに、液処理装置100においては、乾燥処理時に貯留槽20にDIWの液層を形成する。本実施形態では、硫酸や過酸化水素水などの薬液を使用した回転処理工程後、DIWによる浸漬工程を行いベースプレート部材20a上の薬液をDIWで除去しているものの、ベースプレート部材20aに薬液が残存しているおそれがある。乾燥処理時に薬液が残存していると、その薬液に起因して薬液雰囲気が発生し、ウエハWに悪影響を及ぼすおそれがある。しかし、本実施形態における液処理装置100においては、乾燥処理時にベースプレート部材20aがDIWの液層で覆われているので、薬液の雰囲気が発生することはなく、ウエハWが汚染されることを防止することができる。
【0053】
以上、実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。
【0054】
例えば、ステップS5(図7)において、モータ30MによりウエハW(トッププレート部材10a)を回転しながら、ウエハWを上方位置に移動してもよい。これにより、ウエハWからのDIWの除去を早く開始することができ、乾燥処理に要する時間を短くすることができる。
【0055】
また、乾燥カップ42とトッププレート部材10aは、それぞれ駆動部材を有していたが、乾燥カップ42とトッププレート部材10aが係合することで1つの駆動部材によって昇降してもよい。これにより、トッププレート部材10aが上昇する際に乾燥カップ42も上昇することとなり、確実にウエハWの周囲を乾燥カップ42で覆うことができる。
【0056】
また、ステップS3(図5)において、ベースプレート部材20aのベースプレートノズル20nからウエハWの下面に向かってDIWを供給すると共に、トッププレート部材10aのトッププレートノズル10nからウエハWの上面に向かってDIWを供給してもよい。これにより、ウエハWの両面を同時にリンス洗浄することができる。
【0057】
また、乾燥カップ42は上部プレート42aと下部プレート42bによって、テーパ上の断面形状を有していたが(図1参照)、これに限らず、例えばC字型、U字型、コの字型といった断面形状を有していてもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、乾燥カップ42は上下動可能であったが、ウエハWの乾燥処理が行われる高さに乾燥カップを固定してもよい。これによっても、乾燥カップと液受けカップとの間に気流路を形成することができ、ウエハWと貯留槽20との間の空間に乾燥カップ42の外側からの清浄気体を取り込むことができる。さらに、乾燥カップ42の外側からの清浄気体を取り込むことに限られず、乾燥カップと液受けカップの間の空間にノズルなどの気体供給部を挿入して、ウエハW下面に気体を供給してもよい。
【0059】
また、排気装置による乾燥カップ42内の排気は、常に一定でもよいし、乾燥処理時のみ稼動させてもよい。液処理時は排気を弱くしておき、乾燥処理時に強く排気するように制御してもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、ウエハWのパターン形成面が下を向いている場合を説明したが、これに限らず、パターン形成面が上を向くようにしてもよい。
【0061】
また、使用する液体として、HSO、SC1、及びDIW等を例示したが、これらに限らず、実施する液処理に応じた液体(又は、気体)を用いて良いことは勿論である。
【0062】
上述の実施形態においては、ウエハを液処理する場合を例に説明したが、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板などの基板を製造する工程で、基板に対して液処理する場合においても、本発明を用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
100:基板処理装置
10:基板支持部、10a:トッププレート部材、10s:爪部、10n:トッププレートノズル、10L:加熱部
20:貯留槽、20b:底部、20d:堰部、20s:供給部、20n:ベースプレートノズル、20m:吐出口、20s:超音波振動板、23:Oリング
30:駆動部、30M:モータ、30a:基板駆動部、30b:底部駆動部
40:液受けカップ部、40a:第1の収容部、40b:第2の収容部、40g:仕切りガイド、41c:排液口、41d:排液口
50:液体供給源、51:配管(CDIW)、51a:三方弁(CDIW)、56:集合弁、57:供給管
W :ウエハ(基板)
L :液層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、
前記基板保持部を上昇及び下降させる基板保持部昇降部材と、
前記基板に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板に前記処理液を供給するときに、前記基板を囲う液受けカップと、
前記基板に前記処理液を供給するときに、前記基板と前記液受けカップの上方に位置し、前記基板を乾燥するときに、前記基板を囲い、かつ前記液受けカップの上方に位置する乾燥カップと
を備えることを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記乾燥カップは、前記基板を乾燥するときに、前記処理液を供給するときの位置よりも高い位置にあることを特徴とする、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記乾燥カップは、上部プレートと下部プレートからなる環状形状を有し、前記基板中心に向かって開口する開口部を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記基板保持部と前記乾燥カップは、同期して上昇することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記乾燥カップを上昇及び下降させる乾燥カップ昇降部材を更に有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に液処理装置。
【請求項6】
前記基板を乾燥するときに、前記基板の下面に気体を供給することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記乾燥カップと前記液受けカップとの間に、前記乾燥カップの外側の気体を取り込む気流路を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に液処理装置。
【請求項8】
前記基板保持部は、上昇するときに回転しながら上昇することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項9】
液体を貯留し、貯留された液体中に前記基板を浸漬可能な液体貯留部を更に有し、前記基板を乾燥するときに前記液体貯留部に純水を貯留することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項10】
基板を保持して液処理位置において液処理を行う液処理工程と、
前記液処理工程において前記液処理が行われた前記基板を前記液処理位置より上方の乾燥位置にて乾燥する乾燥処理工程と
を含むことを特徴とする液処理方法。
【請求項11】
前記液処理工程において、前記液処理位置における前記基板が、前記液処理に用いられる処理液を受ける液受けカップに囲まれ、
前記乾燥工程において、前記乾燥位置における前記基板が、当該基板を囲み当該基板に向かって開口する開口部を有する乾燥カップに囲まれて回転されることを特徴とする、請求項10に記載の液処理方法。
【請求項12】
前記液受けカップと前記乾燥カップの間の空間に気体が供給されることを特徴とする、請求項11に記載の液処理方法。
【請求項13】
前記液処理位置から前記乾燥位置に前記基板を上昇させる基板上昇工程を更に含むことを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項14】
前記液処理位置から前記乾燥位置に前記基板を上昇させる基板上昇工程を更に含み、
前記基板上昇工程において、前記基板とともに前記乾燥カップが同期して上昇されることを特徴とする、請求項11又は12に記載の液処理方法。
【請求項15】
前記基板上昇工程において、前記基板が回転しながら上昇することを特徴とする、請求項13又は14に記載の液処理方法。
【請求項16】
前記乾燥処理工程において、前記乾燥位置より下方に配置される貯留槽に純水を貯留することを特徴とする、請求項10から15のいずれか一項に記載の液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110278(P2013−110278A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254269(P2011−254269)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】