説明

液処理装置

【課題】ウォーターマークの発生を抑制することができる液処理装置を提供すること。
【解決手段】洗浄処理装置1は、ウエハWを保持するスピンチャック59と、ウエハWに処理液および乾燥ガスを吐出口から吐出方向に吐出する吐出ノズル75と、吐出口よりも上流側で吐出ノズル75に接続された吐出ノズルへ処理液を供給する処理液供給機構と、吐出口よりも上流側で吐出ノズル75に接続された吐出ノズルへ乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給機構と、吐出口よりも上流側で吐出ノズルに接続され、ウエハWに処理液を吐出させた後で乾燥ガスを吐出する前に、吐出ノズルの内部に残留する処理液を吐出方向と逆方向に吸引する処理液吸引機構103aと、処理液吸引機構に接続され、処理液供給機構と乾燥ガス供給機構から処理液および前記乾燥ガスの一方が吐出ノズルへ供給されるように、処理流体を切り替える開閉バルブ102a・102b・102dとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハやLCD基板等の各種基板に対して洗浄等の液処理を施す液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造プロセスにおいては半導体ウエハ(ウエハ)を所定の薬液や純水等の洗浄液によって洗浄し、ウエハに付着したパーティクル、有機汚染物、金属不純物等のコンタミネーション、エッチング処理後のポリマー等を除去する洗浄システムが使用されている。
【0003】
このような洗浄システムに備えられるウエハ洗浄装置としては、ウエハを略水平姿勢でスピンチャックに保持し、ウエハを静止させた状態または回転させた状態でウエハの表裏面に薬液を供給して薬液処理を行い、次にウエハを所定の回転数で回転させながらウエハに純水を供給して薬液を洗い流し、その後にウエハを回転させながらウエハに乾燥ガス(例えば、窒素ガス(N))を噴射して乾燥処理を行う枚葉式のウエハ洗浄装置が知られている。
【0004】
このようなウエハ洗浄処理装置において、ウエハの裏面の洗浄は、ウエハの裏面に対向させて円形プレートを配置し、この円形プレートの略中心からウエハとこの円形プレートとの間に薬液と純水、乾燥ガスを供給することによって行われている。ウエハの裏面への薬液等の供給は、円形プレートの略中心を貫通するように略鉛直に配置された1本の吐出ノズルを用いて行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この吐出ノズルからウエハに乾燥ガスを吐出する際には、先に吐出した純水が吐出ノズルの内部に残留している。このような純水は乾燥ガスの噴射開始時に乾燥ガスによって押し出されるが、吐出ノズルが鉛直方向に配置されているために吐出ノズル内部の純水は重力の影響を受けることによって完全には排出され難い状態にあり、一部の純水がノズルの内壁に付着等する。このようにノズルの内壁に純水が付着した状態で、さらに乾燥ガスを噴射すると、乾燥ガスの勢いによって純水がミスト化し、このミストは乾燥ガスとともにウエハに向けて噴射される。このときに噴射されたミストがウエハの既に乾燥している部分に付着すると、ウォーターマークが発生してウエハの品質を低下させる問題があった。
【0006】
また、薬液を吐出した後には吐出ノズルの内部に薬液が残留し、このような薬液は未使用の状態であるにもかかわらず、純水とともにウエハと円形プレートとの間に吐出され、その後に使用済みの薬液と純水とが混ざり合って、円形プレートからこぼれ落ちまたはウエハの回転によってウエハから振り切られて、その後に回収される。こうして回収された薬液は純水によって希釈されており、またパーティクルを多く含むために、回収された薬液の再利用には一定の処理を行う必要がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、基板におけるウォーターマークの発生を抑制することができる液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、被処理体に処理液を供給して液処理を行う液処理装置であって、
被処理体を水平姿勢で保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された被処理体に処理液および乾燥ガスを吐出口から吐出方向に吐出する吐出ノズルと、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへ処理液を供給する処理液供給機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへ乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続され、基板に前記処理液を吐出させた後で前記乾燥ガスを吐出する前に、前記吐出ノズルの内部に残留する処理液を前記吐出方向と逆方向に吸引する処理液吸引機構と、
前記処理液吸引機構に接続され、前記処理液供給機構と前記乾燥ガス供給機構から前記処理液および前記乾燥ガスの一方が前記吐出ノズルへ供給されるように、処理流体を切り替える切替機構と
を具備することを特徴とする液処理装置、が提供される。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、 基板に処理液を供給して液処理を行う液処理装置であって、
被処理体を水平姿勢で保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された被処理体に処理液としての薬液およびリンス液、ならびに乾燥ガスを吐出口から吐出方向に吐出する吐出ノズルと、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへ薬液を供給する薬液供給機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへリンス液を供給するリンス液供給機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへ乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給機構と、
前記薬液供給機構、前記リンス液供給機構、および前記乾燥ガス供給機構のうちのいずれかから、前記薬液、前記リンス液、および前記乾燥ガスのいずれか1つが前記吐出ノズルへ供給されるように、処理流体を切り替える切替機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続され、基板に前記リンス液を吐出させた後で前記乾燥ガスを吐出する前に、前記吐出ノズルの内部に残留する前記リンス液の残留部を前記吐出方向と逆方向に吸引する液吸引機構と
を具備することを特徴とする液処理装置、が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の観点によれば、一つの吐出ノズルにより処理液と処理ガスとを切り替えて供給することができ、かつ吐出ノズルの処理液を吸引する処理液吸引機構が設けられているので、ノズル孔内壁に付着した処理液を処理液吸引機構で吸引除去することができ、その後ノズル孔から乾燥用ガスを噴射しても処理液のミストが発生し難く、これによって基板にウォーターマークが発生することを確実に防止することができる。
【0011】
また、本発明の第2の観点によれば、吐出ノズルが薬液とリンス液と乾燥用ガスを切り替えて吐出できるようになっており、リンス液を吐出した後に液吸引機構でリンス液を吸引し、その後乾燥用ガスを供給する構成を有しており、リンス液を吸引してから乾燥用ガスを吐出するので、基板にウォーターマークを発生させずに乾燥させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態では、本発明を、ウエハの搬入から洗浄/乾燥処理、搬出を一貫して行う洗浄処理システムに備えられ、ウエハの表裏面を同時に洗浄処理することができる洗浄処理ユニットに適用した場合について説明する。
【0013】
図1は洗浄処理システム1の概略構造を示す平面図であり、図2はその側面図である。洗浄処理システム1は、ウエハWに洗浄処理および洗浄処理後の熱的処理を施す洗浄処理部2と、洗浄処理部2に対してウエハWを搬入出する搬入出部3から構成されている。搬入出部3は、複数枚、例えば25枚のウエハWを略水平姿勢で鉛直方向に所定の間隔で収容可能なフープ(FOUP;front opening unified pod)Fを載置するための載置台6が設けられたイン・アウトポート4と、載置台6に載置されたフープFと洗浄処理部2との間でウエハWの受け渡しを行うウエハ搬送装置7が備えられたウエハ搬送部5から構成されている。
【0014】
フープFにおいて、ウエハWはフープFの1側面を通して搬入出され、この側面には開閉可能な蓋体が設けられている。またフープFの内壁には、ウエハWを所定間隔で保持するための棚板が設けられており、ウエハWを収容する25箇所のスロットが形成されている。ウエハWは表面(半導体デバイスを形成する面をいうものとする)が上面(ウエハWを水平に保持した場合に上側となっている面をいうものとする)となっている状態で各スロットに1枚ずつ収容される。
【0015】
イン・アウトポート4の載置台6上には、例えば、3個のフープFをY方向に並べて所定位置に載置することができるようになっている。フープFは蓋体が設けられた側面をイン・アウトポート4とウエハ搬送部5との境界壁8側に向けて載置される。境界壁8においてフープFの載置場所に対応する位置には窓部9が形成されており、窓部9のウエハ搬送部5側には窓部9を開閉するシャッタ10が設けられている。
【0016】
シャッタ10は、フープFに設けられた蓋体をも開閉することができるようになっており、窓部9の開閉と同時にフープFの蓋体を開閉する。フープFが載置台6の所定位置に載置されていないときにはシャッタ10が動作しないように、シャッタ10にインターロックを設けることが好ましい。窓部9を開口してフープFのウエハ搬入出口とウエハ搬送部5とを連通させると、ウエハ搬送部5に設けられたウエハ搬送装置7のフープFへのアクセスが可能となり、ウエハWの搬送を行うことが可能な状態となる。なお、窓部9の上部には図示しないウエハ検査装置が設けられており、フープF内に収納されたウエハWの枚数と状態をスロット毎に検出することができるようになっている。このようなウエハ検査装置はシャッタ10に装着させることも可能である。
【0017】
ウエハ搬送部5に設けられたウエハ搬送装置7はY方向に移動可能である。またウエハ搬送装置7はウエハWを保持する搬送ピック11を有し、この搬送ピック11はX方向にスライド自在であり、かつ、Z方向に昇降可能であり、かつ、X−Y平面内(θ方向)で回転自在となっている。これによりウエハ搬送装置7を載置台6に載置された任意のフープFと対向する位置へ移動させて、搬送ピック11を対向しているフープFの任意の高さのスロットにアクセスさせることができる。
【0018】
またウエハ搬送装置7を洗浄処理部2に設けられた2台のウエハ受渡ユニット(TRS)16・17(ウエハ受渡ユニット(TRS)17の位置は後に示す図3参照)と対向する位置に移動させて、搬送ピック11をウエハ受渡ユニット(TRS)16・17にアクセスさせることができる。つまり、ウエハ搬送装置7は、フープFに対してウエハWの搬入出を行うとともに、洗浄処理部2側から搬入出部3側へ、逆に搬入出部3から洗浄処理部2側へウエハWを搬送する。
【0019】
洗浄処理部2は、ウエハ搬送部5との間でウエハWの受け渡しを行うためにウエハWを一時的に載置する2台のウエハ受渡ユニット(TRS)16・17と、ウエハWの表面と裏面を同時に洗浄処理する4台の洗浄処理ユニット(CLN)12・13・14・15と、洗浄処理後のウエハWを加熱処理する3台のホットプレートユニット(HP)19・20・21(ホットプレートユニット(HP)20・21の位置は後に示す図3参照)と、加熱されたウエハWを冷却する冷却ユニット(COL)22(冷却ユニット(COL)22の位置は後に示す図3参照)と、これら全てのユニットにアクセス可能であり、これらのユニット間でウエハWの搬送を行う主ウエハ搬送装置18と、を有している。
【0020】
また、洗浄処理部2には、洗浄処理システム1全体を稼働させるための電源である電源ユニット(PU)23と、洗浄処理システム1を構成する各ユニットおよび洗浄処理システム1全体の動作・制御を行う機械制御ユニット(MCU)24と、洗浄処理ユニット(CLN)12〜15に送液する所定の薬液を貯蔵する薬液貯蔵ユニット(CTU)25が設けられている。電源ユニット(PU)23は図示しない主電源と接続される。洗浄処理部2の天井には、各ユニットおよび主ウエハ搬送装置18に清浄な空気をダウンフローするためのフィルターファンユニット(FFU)26が設けられている。
【0021】
薬液貯蔵ユニット(CTU)25と電源ユニット(PU)23と機械制御ユニット(MCU)24を洗浄処理部2の外側に設置することによって、または外部に引き出すことによって、この面(Y方向側面)からウエハ受渡ユニット(TRS)16・17、主ウエハ搬送装置18、ホットプレートユニット(HP)19〜21、冷却ユニット(COL)22のメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0022】
図3はウエハ受渡ユニット(TRS)16・17と、ウエハ受渡ユニット(TRS)16・17のX方向に隣接する主ウエハ搬送装置18と、ホットプレートユニット(HP)19〜21と、冷却ユニット(COL)22の概略配置を示す断面図である。ウエハ受渡ユニット(TRS)16・17は上下2段に積み重ねられて配置されており、例えば、下段のウエハ受渡ユニット(TRS)17は、ウエハ搬送部3側から洗浄処理部2側へ搬送するウエハWを載置するために用い、一方、上段のウエハ受渡ユニット(TRS)16は、洗浄処理部2側からウエハ搬送部3側へ搬送するウエハWを載置するために用いることができる。
【0023】
フィルターファンユニット(FFU)26からのダウンフローの一部は、ウエハ受渡ユニット(TRS)16・17と、その上部の空間を通ってウエハ搬送部5に向けて流出する構造となっている。これにより、ウエハ搬送部5から洗浄処理部2へのパーティクル等の侵入が防止され、洗浄処理部2の清浄度が保持されるようになっている。
【0024】
主ウエハ搬送装置18は、Z方向に延在する垂直壁27・28およびこれらの間の側面開口部29を有する筒状支持体30と、その内側に筒状支持体30に沿ってZ方向に昇降自在に設けられたウエハ搬送体31とを有している。筒状支持体30はモータ32の回転駆動力によって回転可能となっており、それに伴ってウエハ搬送体31も一体的に回転されるようになっている。
【0025】
ウエハ搬送体31は、搬送基台33と、搬送基台33に沿って前後に移動可能な3本の搬送アーム34・35・36とを備えており、搬送アーム34〜36は、筒状支持体30の側面開口部29を通過可能な大きさを有している。これら搬送アーム34〜36は、搬送基台33内に内蔵されたモータおよびベルト機構によってそれぞれ独立して進退移動することが可能となっている。ウエハ搬送体31は、モータ37によってベルト38を駆動させることにより昇降する。なお、符号39は駆動プーリー、40は従動プーリーである。
【0026】
ウエハWの強制冷却を行う冷却ユニット(COL)22の上には、ホットプレートユニット(HP)19〜21が3台積み重ねられて設けられている。なお、ウエハ受渡ユニット(TRS)16・17の上部の空間に、ホットプレートユニット(HP)19〜21と冷却ユニット(COL)22を設けることも可能である。この場合には、図1と図3に示されるホットプレートユニット(HP)19〜21および冷却ユニット(COL)22の位置をその他のユーティリティ空間として利用することができる。
【0027】
洗浄処理ユニット(CLN)12〜15は、上下2段で各段に2台ずつ設けられている。洗浄処理ユニット(CLN)12と洗浄処理ユニット(CLN)14は、その境界をなしている壁面41に対してほぼ対称な構造を有しており、このことは洗浄処理ユニット(CLN)13と洗浄処理ユニット(CLN)15についても同様である。また洗浄処理ユニット(CLN)12〜15は同等の構成(部材および機能)を備えている。そこで、以下、洗浄処理ユニット(CLN)12を例として
、その構造について詳細に以下に説明することとする。
【0028】
図4は洗浄処理ユニット(CLN)12の概略平面図であり、図5はその概略断面図である。洗浄処理ユニット(CLN)12はハウジング42を有し、ハウジング42の内部にはアウターチャンバ43と、薬液アーム格納部44と、リンス乾燥アーム格納部45とが設けられている。また、アウターチャンバ43の内部にはインナーカップ58と、インナーカップ58内においてウエハWを保持するスピンチャック59と、スピンチャック59に保持されたウエハWの裏面と所定間隔で対向可能なアンダープレート63と、ウエハWの表面と所定の間隔で対向可能なトッププレート60と、が設けられている。
【0029】
ハウジング42には窓部46´が形成されており、この窓部46´は第1シャッタ46により開閉自在となっている。図4および図5にはこの第1シャッタ46を駆動する機構は図示していない。搬送アーム34(または35、36)は洗浄処理ユニット(CLN)12に対してこの窓部46´を通してウエハWを搬入出し、窓部46´はウエハWの搬入出時以外は第1シャッタ46によって閉塞された状態に保持される。なお、第1シャッタ46はハウジング42の内部から窓部46´を開閉するようになっている。これによりハウジング42の内部が陽圧になった場合において、ハウジング42内の雰囲気が外部へ漏洩することが防止される。
【0030】
ウエハWの洗浄処理はアウターチャンバ43の内部において行われる。アウターチャンバ43には窓部47´が形成され、この窓部47´は図示しないシリンダ駆動機構等によって移動可能な第2シャッタ47によって開閉自在となっている。搬送アーム34(または35、36)は、窓部46´および窓部47´を通してアウターチャンバ43内に進入/退出し、スピンチャック59に対してウエハWの受け渡しを行い、窓部47´はウエハWの受け渡し時以外は第2シャッタ47によって閉塞された状態に保持される。
【0031】
第2シャッタ47はアウターチャンバ43の内部から窓部47´を開閉するようになっているために、アウターチャンバ43内が陽圧になった場合にも、アウターチャンバ43内部の雰囲気が外部に漏れ出ないようになっている。なお、第1シャッタ46と第2シャッタ47とを共通の駆動機構によって駆動し、窓部46´と窓部47´を同時に開閉するようにしてもよい。
【0032】
アウターチャンバ43の上壁には、アウターチャンバ43内に窒素ガス(N)等の不活性ガスを供給するガス供給口86が設けられている。このガス供給口86は、アウターチャンバ43内にダウンフローを形成し、スピンチャック59に保持されたウエハWに吐出された薬液の蒸気がアウターチャンバ43内に充満することを防止する。またこのようなダウンフローを形成することによって、ウエハWの表面にウォーターマークが生じ難くなるという効果も得られる。アウターチャンバ43の底部にはドレイン43aが設けられ、ドレイン43aから排気および排液を行うことができるようになっている。
【0033】
インナーカップ58は、上部にテーパー部が形成され、底壁にドレイン58aが形成された構造を有している。インナーカップ58は、その上端がスピンチャック59に保持されたウエハWよりも上方に位置し、かつ、テーパー部がウエハWを囲繞する位置(図5において実線で示される位置、以下「処理位置」という)と、その上端がスピンチャック59に保持されたウエハWよりも下側の位置(図5において点線で示される位置、以下「退避位置」という)との間で昇降自在となっている。
【0034】
インナーカップ58は、搬送アーム34(または35、36)とスピンチャック59との間でウエハWの受け渡しが行われる際には搬送アーム34の進入/退出を妨げないように退避位置に保持される。一方、スピンチャック59に保持されたウエハWに洗浄処理が施される際には処理位置に保持される。これによりウエハWに吐出された薬液や純水の周囲への飛散が防止される。またウエハWの洗浄処理に用いられた薬液はドレイン58aへと導かれる。ドレイン58aには図示しない薬液回収ラインと排気ダクトが接続されており、インナーカップ58内で発生するミスト等のアウターチャンバ43内への拡散が防止され、また薬液が回収または廃棄(排液)されるようになっている。
【0035】
スピンチャック59は、回転プレート61と、回転プレート61と接続された回転筒体62とを有し、ウエハWを支持する支持ピン64aとウエハWを保持する保持ピン64bが回転プレート61の周縁部に取り付けられている。搬送アーム34(または35、36)とスピンチャック59との間のウエハWの受け渡しは、この支持ピン64aを利用して行われる。支持ピン64aは、ウエハWを確実に支持する観点から、少なくとも3箇所に設けることが好ましい。
【0036】
保持ピン64bは、搬送アーム34(または35、36)とスピンチャック59との間でのウエハWの受け渡しを妨げないように、図示しない押圧機構によって回転プレート61の下部に位置する部分を回転プレート61側に押し当てることにより、保持ピン64bの上先端が回転プレート61の外側へ移動するように傾斜させることができるようになっている。保持ピン64bもウエハWを確実に保持する観点から、少なくとも3箇所に設けることが好ましい。
【0037】
回転筒体62の外周面にはベルト65が捲回されており、ベルト65をモータ66によって周動させることにより、回転筒体62および回転プレート61を回転させて、保持ピン64bに保持されたウエハWを回転させることができるようになっている。保持ピン64bの重心の位置を調整することによって、ウエハWの回転時に保持ピン64bがウエハWを保持する力を調整することができる。例えば、保持ピン64bの重心を回転プレート61よりも下側に設けると、回転プレート61よりも下側の部分に遠心力が掛かることによって、上先端部は内側へ移動しようとするため、これによってウエハWを保持する力が高められる。
【0038】
アンダープレート63は回転プレート61の中央部および回転筒体62内を貫挿して設けられたシャフト(支持柱)67に接続されている。シャフト67は水平板68の上面に固定されており、この水平板68はシャフト67と一体的にエアシリンダ等を有する昇降機構69により鉛直方向に昇降可能となっている。アンダープレート63およびシャフト67には、その内部を貫通するように、薬液や純水、乾燥ガス(例えば、窒素ガス)をウエハWの裏面に向けて供給する裏面洗浄用ノズル75が設けられている。
【0039】
スピンチャック59と搬送アーム34(または35、36)との間でウエハWの受け渡しが行われる際には、アンダープレート63は搬送アーム34と衝突しないように回転プレート61に近接する位置に降下される。ウエハWの裏面に対して洗浄処理を行う際には、アンダープレート63は保持ピン64bに保持されたウエハWの裏面に近接する位置へ上昇され、ウエハWへ裏面洗浄用ノズル75を通して薬液等が吐出される。なお、アンダープレート63を所定高さに固定し、回転筒体62を昇降させることによって、保持ピン64bに保持されたウエハWとアンダープレート63との間隔を洗浄処理の進行に合わせて調整するようにしてもよい。
【0040】
トッププレート60は枢軸70の下端に接続されており、水平板71に設けられたモータ72によって、枢軸70とともに回転可能となっている。枢軸70は水平板71の下面に回転自在に支持され、この水平板71はアウターチャンバ43の上壁に固定されたエアシリンダ等からなる昇降機構73により鉛直方向に昇降可能である。トッププレート60と枢軸70には、鉛直方向にこれらを貫通する孔部85が設けられており、その内部には、ウエハWの表面に薬液等を供給する表面洗浄用ノズル120が設けられている。
【0041】
スピンチャック59と搬送アーム34(または35、36)との間でウエハWの受け渡しが行われる際には、トッププレート60が搬送アーム34と衝突しないように、アウターチャンバ43の上壁に近い位置に保持される。またウエハWの表面(上面)に対して洗浄処理を行う際には、トッププレート60は保持ピン64bに保持されたウエハWの表面に近接する位置へ降下され、表面洗浄用ノズル120からウエハWへ薬液等が吐出される。
【0042】
図6はトッププレート60と表面洗浄用ノズル120のより詳細な構造と、裏面洗浄用ノズル75および表面洗浄用ノズル120へ洗浄液や乾燥ガスを供給する薬液供給システム100の概略構成を示す説明図である。
【0043】
裏面洗浄用ノズル75には4個の開閉バルブ102a・102b・102c・102dが並列に取り付けられている。このうち、開閉バルブ102a・102b・102dを切り替えることによって、それぞれ裏面洗浄用ノズル75へ薬液、純水、窒素ガスを供給することができるようになっている。また、開閉バルブ102cに取り付けられている配管には、アスピレータまたは真空ポンプ等の吸引装置103aが設けられている。この吸引装置103aを動作させて開閉バルブ102cを開くことによって、裏面洗浄用ノズル75内に残っている薬液または純水を吸引して除去することが可能である。こうして吸引された薬液または純水は回収されて再利用されるか、または廃棄される。なお、図6において、各開閉バルブ102a〜102dについては、薬液等の流路を示し、これらの流路を開閉する機構の図示を省略している。
【0044】
表面洗浄用ノズル120には、4個の開閉バルブ101a・101b・101c・101dが並列に取り付けられている。表面洗浄用ノズル120へは、開閉バルブ101aを通して薬液が、開閉バルブ101bを通して純水が、開閉バルブ101dを通して窒素ガスが、それぞれ供給可能となっている。また、開閉バルブ101cに取り付けられている配管には、アスピレータまたは真空ポンプ等の吸引装置103bが設けられている。この吸引装置103bを動作させて開閉バルブ101cを開くことによって表面洗浄用ノズル120の内部に残っている薬液または純水を吸引して除去することができる。こうして吸引された薬液または純水は回収されて再利用されるか、または廃棄される。なお、図6において、各開閉バルブ101a〜101dについては、薬液等の流路を示し、これらの流路を開閉する機構の図示を省略している。
【0045】
孔部85と表面洗浄用ノズル120との間隙部85aには、ガス供給管121を通して窒素ガスを供給することができ、また、間隙部85aからは2箇所のガス排気管122a(スローリーク用)・122b(強制排気用)を通して排気を行うことができるようになっている。ガス供給管121を通して間隙部85aに供給された窒素ガスは、一定の流量で間隙部85aからガス排気管122aを通して外部へ排気される(スローリーク)ようになっている。この間隙部85aへの窒素ガス供給量と間隙部85aからのガス排気管122aを通した窒素ガス排気量は、ウエハWの表面とトッププレート60との間に薬液や純水の層が形成されている際に、薬液や純水の層への窒素ガスのバブリングが起こらず、かつ、間隙部85aへの薬液や純水の浸入が起こらないように設定される。
【0046】
間隙部85aからはガス排気管122bを通した強制排気を行うことが可能となっている。ガス排気管122bからの排気量はガス排気管122aからの排気量よりも多い。ガス排気管122bを通した強制排気は、少なくとも間隙部85aの下端が薬液や純水と接していない状態において行われる。例えば、トッププレート60と枢軸70を回転させながら、ガス排気管122bを通して間隙部85aの強制排気を行うことによって、間隙部85aへの薬液または純水の吸引を防止しながら、トッププレート60および枢軸70の回転によって間隙部85aにおいて発生するパーティクルのウエハWへの付着を防止することができる。
【0047】
表面洗浄用ノズル120の先端部は楔形となっており、表面洗浄用ノズル120の先端に薬液や純水が付着し難く、汚れ難い構造となっている。これにより表面洗浄用ノズル120の先端でのパーティクルの発生や、ウエハWの乾燥処理時における表面洗浄用ノズル120からの純水等の液滴の落下によるウォーターマークの発生等が防止される。
【0048】
図7は表面洗浄用ノズル120とトッププレート60の別の形態を示す断面図である。図6には表面洗浄用ノズル120の形態として、その内径が先端へ向かうにしたがって長くなる楔形の形態が示されているが、例えば、図7(a)に示すように、内径は一定であり、外径が先端へ向かうにしたがって短くなるような楔形の形態としてもよい。さらに図7(b)に示すように、その先端が逆三角形となるような尖塔型としてもよい。
【0049】
トッププレート60の外周端面もまた断面略楔形となっており、薬液や純水が付着し難い形状となっている。図6では、トッププレート60の形態として、上側の外径が下側の外径よりも短い形態を示しているが、図7(c)に示すように上側の外径が下側の外径よりも長い形態や、図7(d)に示すように上側と下側の外径がほぼ同じであって厚み方向の中間部分の外径が最も長くなるような断面略尖塔形の形態としてもよい。このような場合であっても、トッププレート60を回転させた際の遠心力によって、トッププレート60に付着した薬液や純水が振り切られやすく、端面への薬液や純水の付着が抑制される。なお、トッププレート60が有するこのような効果は、図6に示した形態の場合に最も大きい。
【0050】
薬液アーム格納部44には、窓部48´と、窓部48´を図示しない駆動機構によって開閉する第3シャッタ48とが設けられている。薬液アーム格納部44をアウターチャンバ43と雰囲気隔離するときは、この第3シャッタ48が閉じられる。リンス乾燥アーム格納部45には窓部49´と、窓部49´を図示しない駆動機構によって開閉する第4シャッタ49とが設けられている。リンス乾燥アーム格納部45をアウターチャンバ43と雰囲気隔離するときは、この第4シャッタ49が閉じられる。
【0051】
薬液アーム格納部44内には薬液供給系アーム50が格納されており、薬液供給系アーム50には2本の薬液供給ノズル51・52が取り付けられている。また、リンス乾燥アーム格納部45にはリンス乾燥アーム53が格納されており、このリンス乾燥アーム53には、2本のリンス乾燥ノズル54・55が取り付けられている。
【0052】
図8は薬液供給ノズル51・52とリンス乾燥ノズル54・55へ薬液等を供給する薬液供給システム100´の概略構成を示す説明図である。薬液供給ノズル51・52には、2個の開閉バルブ112a・112bからなるバルブ群と、4個の開閉バルブ111a・111b・111c・111dからなるバルブ群が取り付けられている。薬液供給ノズル51・52へは、開閉バルブ111aを通して薬液が、開閉バルブ111bを通して純水が、開閉バルブ111dを通して窒素ガスが供給され、開閉バルブ112a・112bを切り替えることによって、薬液供給ノズル51・52の一方から薬液等を吐出することができるようになっている。
【0053】
開閉バルブ111cに取り付けられている配管には、アスピレータまたは真空ポンプ等の吸引装置113が設けられている。吸引装置113を動作させて開閉バルブ111cと開閉バルブ112aを開くことによって薬液供給ノズル52の内部に残っている薬液等を吸引除去することができる。同様に、吸引装置113を動作させて開閉バルブ111cと開閉バルブ112bを開くと、薬液供給ノズル51の内部に残っている薬液等が吸引除去される。こうして吸引された薬液等は回収されて再利用されるか、または廃棄される。
【0054】
リンス乾燥ノズル54・55には、2個の開閉バルブ115a・115bからなるバルブ群と、3個の開閉バルブ114a・114b・114cからなるバルブ群が取り付けられている。リンス乾燥ノズル54・55へは、開閉バルブ114aを通して純水が、開閉バルブ114cを通して窒素ガスが供給され、開閉バルブ115a・115bを切り替えることによって、リンス乾燥ノズル54・55の一方から純水等を吐出することができるようになっている。
【0055】
吸引装置113は開閉バルブ114bにも接続されている。これにより、吸引装置113を動作させて開閉バルブ114bと開閉バルブ115aを開くことによってリンス乾燥ノズル54の内部に残っている純水を吸引除去することができる。同様に、吸引装置113を動作させて開閉バルブ114bと開閉バルブ115bを開くと、リンス乾燥ノズル55の内部に残っている純水が吸引除去される。こうして吸引された純水は、通常、所定の処理を経た後に廃棄される。
【0056】
なお、図8において、各開閉バルブ111a〜111d・112a・112b・114a〜114c・115a・115bについては、薬液等の流路を示し、これらの流路を開閉する機構の図示を省略している。薬液供給システム100´における薬液、純水、窒素ガスの供給源は、薬液供給システム100の薬液、純水、窒素ガスの供給源と共用することができる。
【0057】
薬液供給系アーム50は回動して、薬液供給ノズル51・52をアウターチャンバ43内へ進入させ、スピンチャック59に保持されたウエハWの少なくとも中心と周縁部との間をスキャンさせることができるようになっている。また、薬液供給系アーム50は、ウエハWの洗浄処理時以外は薬液アーム格納部44に保持される。薬液アーム格納部44は常時薬液雰囲気となるために、薬液供給系アーム50には耐食性部品が使用されている。なお、薬液供給系アーム50の回動動作のタイミングに合わせて、第3シャッタ48が窓部48´を開閉するようにこれらを制御することも好ましい。
【0058】
リンス乾燥アーム53は回動して、リンス乾燥ノズル54・55をアウターチャンバ43内へ進入させ、スピンチャック59に保持されたウエハWの少なくとも中心と周縁部との間をスキャンさせることができるようになっている。リンス乾燥アーム53は、ウエハWの洗浄処理時以外はリンス乾燥アーム格納部45に保持される。リンス乾燥アーム格納部45は薬液雰囲気ではないが、リンス乾燥アーム53には耐食性部品を使用することは好ましい。なお、リンス乾燥アーム53の回動動作のタイミングに合わせて、第4シャッタ49により窓部49´が開閉するようにこれらを制御することも好ましい。
【0059】
薬液アーム格納部44には薬液供給系アーム洗浄装置56が設けられ、薬液供給ノズル51・52を適宜洗浄することができるようになっている。薬液供給ノズル51・52を洗浄する際には、第3シャッタ48が閉じられ、薬液アーム格納部44内の雰囲気がハウジング42とアウターチャンバ43に漏出しないようになっている。またリンス乾燥アーム格納部45にはリンス乾燥アーム洗浄装置57が設けられ、リンス乾燥ノズル54・55を適宜洗浄することができるようになっている。リンス乾燥ノズル54・55を洗浄する際には、第4シャッタ49が閉じられ、リンス乾燥アーム格納部45の雰囲気がハウジング42とアウターチャンバ43に漏出しないようになっている。
【0060】
次に、洗浄処理システム1におけるウエハWの洗浄工程について説明する。図9は洗浄処理の概略工程を示すフローチャートである。最初に、搬送ロボットやオペレータによって、未洗浄のウエハWが収納されたフープFがイン・アウトポート4の載置台6上の所定位置に載置される(ステップ1)。この載置台6に載置されたフープFから搬送ピック11によって1枚ずつウエハWが取り出され(ステップ2)、取り出されたウエハWは、例えば、ウエハ受渡ユニット(TRS)16に搬送される(ステップ3)。
【0061】
次いで、主ウエハ搬送装置18は、搬送アーム34〜36のいずれか、例えば、搬送アーム34を用いてウエハ受渡ユニット(TRS)16に載置されたウエハを取り出し(ステップ4)、洗浄処理ユニット(CLN)12〜15のいずれか、例えば、洗浄処理ユニット(CLN)12に搬入する(ステップ5)。
【0062】
このステップ5は次の順序で行われる。最初に、ハウジング42に設けられた第1シャッタ46とアウターチャンバ43に設けられた第2シャッタ47が開かれる。これとほぼ同時またはこの操作前に、インナーカップ58は退避位置で保持され、アンダープレート63は回転プレート61に近い位置で待機し、トッププレート60はアウターチャンバ43の上壁近傍で待機した状態とする。その後に搬送アーム34はアウターチャンバ43内に進入し、スピンチャック59に設けられた支持ピン64aにウエハWを受け渡す。
【0063】
ウエハWが支持ピン64aに支持されたら、搬送アーム34をアウターチャンバ43から退出させ、第1シャッタ46および第2シャッタ47を閉じる。また、インナーカップ58を上昇させて処理位置で保持し、アンダープレート63を上昇させてウエハWとの間を所定間隔に保持し、トッププレート60を降下させてウエハWとの間を所定間隔に保持する(ステップ6)。
【0064】
こうしてウエハWの薬液処理を開始する(ステップ7)。ウエハWを回転させずに薬液処理を行う場合には、ウエハWを支持ピン64aに支持された状態で維持してよい。一方、ウエハWを回転させながら薬液処理を行う場合と、薬液処理後にウエハWを回転させながら行うリンス処理やガス乾燥処理時には、ウエハWを回転させる前に保持ピン64bに保持させる。
【0065】
ウエハWとトップレート60の両方を静止させた状態、またはウエハWとトップレート60の一方を回転させて他方を静止させた状態、またはウエハWとトッププレート60の両方を回転させた状態のいずれかの状態で、開閉バルブ101aを開き、表面洗浄用ノズル120から薬液をウエハWの表面に吐出して、ウエハWとトッププレート60との間に薬液層を形成して所定時間保持する。また、開閉バルブ102aを開き、裏面洗浄用ノズル75を通して薬液をウエハWの裏面に向けて吐出し、ウエハWとアンダープレート63との間に薬液層を形成し、所定時間保持する。なお、このような薬液処理の最中に、適量の薬液を連続的にまたは間欠的に、ウエハWとトッププレート60との間およびウエハWとアンダープレート63との間にそれぞれ供給してもよい。
【0066】
このような薬液処理の間、表面洗浄用ノズル120と孔部85との間に形成されている間隙部85aには、窒素ガスのガス供給管121から窒素ガスが供給され、かつ、ガス排気管122aから排気(スローリーク)される。このような窒素ガスの供給と排気は、ウエハWとトッププレート60との間に形成された薬液層への窒素ガスの噴射が起こらず、かつ、間隙部85aへの薬液の浸入が起こらないように行われる。なお、薬液処理中にウエハWの周囲からこぼれ落ちる薬液は、ドレイン58aを通して回収され、再利用される。
【0067】
薬液処理終了後には、開閉バルブ101aを閉じてウエハWの表面への薬液の吐出を停止した後に、吸引装置103bを動作させて開閉バルブ101cを開くことによって、表面洗浄用ノズル120内に残っている薬液が吸引除去される。こうして吸引除去された薬液は回収されて再利用に供される。同様に、開閉バルブ102aを閉じてウエハWの裏面への薬液の供給を停止した後に、吸引装置103aを動作させて開閉バルブ102cを開き、裏面洗浄用ノズル75内に残留している薬液を吸引回収する(ステップ8)。このような薬液回収処理では、薬液をウエハWから流し出してインナーカップ58の底部に設けられたドレイン58aを通して回収する場合と比較すると、濃度が高く、しかも汚れの少ない薬液を回収することができるために、回収された薬液の再利用も容易である。
【0068】
薬液回収処理終了後には、開閉バルブ101c・102cを閉じ、また、インナーカップ58を退避位置に降下させた後に、ウエハWから薬液を除去するリンス処理を行う(ステップ9)。このリンス処理においては、トッププレート60の水洗処理が同時に行われる。
【0069】
ウエハWの表面のリンス処理方法としては、例えば、トッププレート60の水洗処理を行いながらウエハWの予備洗浄を行い、ウエハWの最終的なリンス処理はリンス乾燥ノズル54・55の一方を用いて行う方法が挙げられる。この場合には、トッププレート60とウエハWとを所定の低速回転数で回転させながら、開閉バルブ101bを開いて表面洗浄用ノズル120からウエハWに向けて純水を吐出して、トッププレート60とウエハWとの間に純水層を形成し、しかもこの純水層から一定量の純水が流れ落ちるようにしてリンス処理を行う(ステップ9a)。
【0070】
こうして一定時間が経過したら開閉バルブ101bを閉じて純水の吐出を停止し、開閉バルブ101dを開いて一定量の窒素ガスを表面洗浄用ノズル120から噴射させて表面洗浄用ノズル120の下端近傍に窒素ガス溜まりを形成する。そして、トッププレート60の回転数を上げて、その途中、例えば回転数が100rpmを超えるとほぼ同時に、間隙部85aからの排気ルートをガス排気管122aからガス排気管122bに切り替える。ガス排気管122bからの強制排気が行われる時点では、既にトッププレート60とウエハWとの間の純水層は崩れているために、間隙部85bから純水を吸引することなく、トッププレート60と枢軸70の回転によって間隙部85aで生ずるパーティクルの降下を防止して、ウエハWへのパーティクルの付着を防止することができる。
【0071】
その後、トッププレート60を所定の回転数にまで上昇させて所定時間保持することにより、トッププレート60に付着した純水を振り切り、スピン乾燥させる(ステップ9b)。なお、このようにしてトッププレート60のスピン乾燥が行われている間に、表面洗浄用ノズル120からの窒素ガスの噴射を連続的に行ってもよいし、トッププレート60のスピン乾燥処理中またはスピン乾燥処理後に、吸引装置103bを動作させて開閉バルブ101cを開くことによって、表面洗浄用ノズル120の内部に残っている純水を吸引して除去してもよい。これにより表面洗浄用ノズル120の内部を乾燥させて、その後に表面洗浄用ノズル120から純水の液滴がウエハWに落下することを防止することができる。
【0072】
トッププレート60の水洗処理が終了した後には、トッププレート60を上昇させ、第4シャッタ49を開いてリンス乾燥アーム53をインナーカップ58内に進入させる(ステップ9c)。そして、ウエハWを所定の回転数で回転させながら、例えば、リンス乾燥ノズル54から純水をウエハWの表面に吐出しながら、リンス乾燥アーム53をウエハWの略中心と周縁との間で回動させることによって、ウエハWの表面を精密にリンス処理する。
【0073】
このような表面洗浄用ノズル120とリンス乾燥ノズル54によるウエハWの表面のリンス処理と並行して、ウエハWの裏面に対するリンス処理が、開閉バルブ102bを開いて裏面洗浄用ノズル75を通してウエハWの裏面に向けて純水を吐出することによって行われる。このとき、ウエハWの裏面全体に純水があたるようにウエハWとアンダープレート63との間に純水層を形成し、この純水層から一定量の純水が流れ落ちるようにする。このようなリンス処理の間にウエハWの周囲から飛散する薬液や純水は、ドレイン43aを通して回収され、または廃棄される。
【0074】
リンス処理の終了時には、開閉バルブ115aを開いたまま、吸引装置113を動作させて、開閉バルブ114aを閉じて開閉バルブ114bを開くことによって、リンス乾燥ノズル54内に残っている純水を吸引除去する(ステップ10)。これにより次工程であるウエハWの乾燥処理時に、リンス乾燥ノズル54から純水の液滴がウエハWへ落下したり、または、窒素ガスに純水のミストが混じってウエハWの表面にウォーターマークが発生することが防止される。
【0075】
その後またはほぼ同時に、吸引装置103aを動作させて開閉バルブ102cを開くことによって、裏面洗浄用ノズル75の内部に残っている純水を吸引除去する(ステップ11)。裏面洗浄用ノズル75の殆どの部分は鉛直方向に延在しているために、その内部に残っている純水に働く重力の向きと吸引装置103aによる吸引の向きが同じとなる。これにより吸引装置103aによる純水の除去が効果的に行われ、裏面洗浄用ノズル75の壁面における純水の付着をほぼ完全になくすことができる。なお、このステップ11はウエハWを静止させた状態で行ってもよく、ウエハWを低速回転、例えば100rpm以下で回転させた状態で行ってもよい。
【0076】
次に、ウエハWを所定の回転数で回転させながら、ウエハWの表面にはリンス乾燥ノズル54から窒素ガスを噴射し、ウエハWの裏面には裏面洗浄用ノズル75を通して窒素ガスを噴射することによって、ウエハWの乾燥処理を行う(ステップ12)。ウエハWの表面の乾燥処理では、先立ってリンス乾燥ノズル54の内部から純水が除去されているために、窒素ガスに純水のミストが混じらず、これによってウエハWの表面にウォーターマークが発生することが防止される。同様に、ウエハWの裏面の乾燥処理においても、先立って裏面洗浄用ノズル75の内部から純水が除去されているために窒素ガスに純水のミストが混じらず、これによってウエハWの裏面にウォーターマークが発生することが防止される。
【0077】
このようにウエハWの表面へ窒素ガスを噴射する際には、リンス乾燥アーム53をその先端がウエハWの略中心と周縁との間で移動するように回動させてもよい。この場合に、ガス供給口86から供給される窒素ガスによりアウターチャンバ43内を窒素雰囲気とすると、リンス乾燥アーム53のスキャン効果と相まって、よりウォーターマークの発生の少ない処理を行うことができる。
【0078】
図10は、リンス処理後の裏面洗浄用ノズル75の内部に残った純水の除去方法の違いと、乾燥処理後のウエハWの裏面のウォーターマークの発生数との関係を示すグラフである。図10中の「洗浄処理前」は、洗浄処理装置1による洗浄処理を行う前のウエハWの裏面のウォーターマーク数(パーティクル数)を示している。
【0079】
図10中の「純水/窒素ガス処理」は、開閉バルブ102dを開いて窒素ガスを裏面洗浄用ノズル75に導入することによって、裏面洗浄用ノズル75内の純水をウエハWの裏面に向けて押し出した後に、引き続いて裏面洗浄用ノズル75からウエハWに向けて窒素ガスを噴射してウエハWの裏面の乾燥処理を行った場合のウォーターマーク数を示している。
【0080】
この場合には、ウエハWの裏面に多くのウォーターマークが観察された。これは、純水に掛かる重力の向きと窒素ガスから受ける力の向きとが逆のために、裏面洗浄用ノズル75の内壁に純水が水滴として残りやすく、この水滴がウエハWの裏面乾燥時に窒素ガスの噴射によってミスト化してウエハWの裏面に向けて噴射され、ウエハWの乾燥した部分に付着することが大きな原因と考えられる。
【0081】
これに対して、図10中の「純水/吸引/窒素ガス処理」は、先に述べたステップ11による裏面洗浄用ノズル75内の純水除去(純水の吸引除去)を行い、その後に裏面洗浄用ノズル75からウエハWに向けて窒素ガスを噴射してウエハWの裏面の乾燥処理を行った場合の結果を示している。この場合には、「純水/窒素ガス処理」の場合と比較すると、ウォーターマークの数が格段に低減されていることがわかる。これは先に述べたように、裏面洗浄用ノズル75の壁面には純水が殆ど純水が付着していないために、窒素ガスに純水のミストが混ざらなくなり、これによりウエハWの裏面におけるウォーターマークの発生が防止されたためと考えられる。
【0082】
乾燥処理の終了後は、リンス乾燥アーム53をリンス乾燥アーム格納部45の内部に収容し、アンダープレート63を降下させ、ウエハWを保持ピン64bから支持ピン64aに移し替える(ステップ13)。次に、第1シャッタ46と第2シャッタ47を開いて、例えば、搬送アーム34をアウターチャンバ43内に進入させ、支持ピン64aに指示されたウエハWを搬送アーム34へ移し替える。ウエハWを保持した搬送アーム34が洗浄処理ユニット(CLN)12から退出したら、第1シャッタ46と第2シャッタ47を閉じる(ステップ14)。
【0083】
こうして洗浄処理ユニット(CLN)12から搬出されたウエハWは、ホットプレートユニット(HP)19・20・21のいずれかに搬送されてそこで熱処理が行われ、その後に必要に応じて冷却ユニット(COL)22に搬送されて、そこで冷却処理され(ステップ15)、さらに、そこから主ウエハ搬送装置18によってウエハ受渡ユニット(TRS)17に搬送されてそこに載置され、続いて搬送ピック11がウエハ受渡ユニット(TRS)17に載置されたウエハWを取り出して、そのウエハWが収納されていたフープFの元のスロットにウエハWを収納する(ステップ16)。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。上記説明においては、ウエハWの表面の薬液処理をトッププレート60および表面洗浄用ノズル120を用いて行った場合について説明したが、薬液処理は薬液供給系アーム50を動作させて行ってもよい。
【0085】
薬液供給系アーム50を用いた場合の薬液処理は、第3シャッタ48を開いて薬液供給系アーム50をその先端がウエハWの略中心に位置するように回動した後に、(1)薬液供給ノズル51(または52)からウエハWの表面に薬液を供給してウエハWの表面に薬液のパドルを形成し、所定時間保持する方法、(2)ウエハWを所定の回転数で回転させながら、薬液供給ノズル51(または52)から薬液を吐出させつつ薬液供給系アーム50をその先端がウエハWの略中心と周縁との間で移動するように回動させる方法、のいずれかが好適に採用される。
【0086】
薬液の供給が終了した後には、開閉バルブ111aを閉じて開閉バルブ111cを開き、吸引装置113を動作させることによって、薬液供給ノズル51(または52)内に残っている薬液を吸引して回収する。その後、ウエハWを所定の回転数で回転させるとほぼ同時に、開閉バルブ111cを閉じて開閉バルブ111bを開くことによって、薬液供給ノズル51(または52)から純水をウエハWの表面に供給して、ウエハWのリンス処理を行う。このとき、薬液供給系アーム50をその先端がウエハWの中心と周縁との間で移動するように回動させてもよい。
【0087】
薬液供給ノズル51(または52)からの純水の吐出が終了したら、開閉バルブ111bを閉じて開閉バルブ111cを開き、吸引装置113を動作させることによって、薬液供給ノズル51(または52)内に残っている純水を吸引除去する。その後は、薬液供給系アーム50を薬液アーム格納部44に収容して、先に説明したリンス乾燥アーム53を用いた仕上げのリンス処理を行う。
【0088】
なお、リンス処理の開始にあたって、薬液と純水が混ざり合うことによって薬液の腐食能力が高まる場合には、純水を供給する前にIPAをウエハWの表面に供給することによって薬液の多くを洗い流し、その後にウエハWに純水を供給することによって、アウターチャンバ43内の各種部品の腐食等を抑制することができる。表面洗浄用ノズル120、裏面洗浄用ノズル75および薬液供給ノズル51・52へIPAを供給することができるようにすることは、開閉バルブと配管の配設によって容易に実現することができる。
【0089】
本発明は洗浄装置に限定されず、種々の処理液を用いて基板の液処理を行う装置に対して適用することができる。なお、基板は半導体ウエハに限らず、その他のLCD用ガラス基板やセラミック基板等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態である洗浄処理ユニットを具備する洗浄処理システムの概略構造を示す平面図。
【図2】図1に示す洗浄処理システムの概略構造を示す側面図。
【図3】図1に示す洗浄処理システムの概略断面図。
【図4】洗浄処理ユニットの概略構造を示す平面図。
【図5】洗浄処理ユニットの概略構造を示す断面図。
【図6】トッププレートおよび表面洗浄用ノズルの構造と、裏面洗浄用ノズルおよび表面洗浄用ノズルへ薬液等を供給する薬液供給システムの概略構成を示す説明図。
【図7】トッププレートと表面洗浄用ノズルの別の形態を示す断面図。
【図8】薬液供給ノズルとリンス乾燥ノズルへ薬液等を供給する薬液供給システムの概略構成を示す説明図。
【図9】洗浄処理の概略工程を示すフローチャート(説明図)。
【図10】リンス処理後に裏面洗浄用ノズルの内部に残っている純水の除去方法と乾燥処理後のウエハWの裏面のウォーターマークの発生数との関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0091】
1;洗浄処理システム
2;洗浄処理部
3;搬入出部
12〜15;洗浄処理ユニット(CLN)
43;アウターチャンバ
59;スピンチャック
58;インナーカップ
63;アンダープレート
75;裏面洗浄用ノズル
100;薬液供給システム
101a・101b・101c・101d;開閉バルブ
102a・102b・102c・102d;開閉バルブ
103a・103b;吸引装置
120;表面洗浄用ノズル
121;ガス供給管
122a・122b;ガス排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に処理液を供給して液処理を行う液処理装置であって、
被処理体を水平姿勢で保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された被処理体に処理液および乾燥ガスを吐出口から吐出方向に吐出する吐出ノズルと、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへ処理液を供給する処理液供給機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへ乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続され、基板に前記処理液を吐出させた後で前記乾燥ガスを吐出する前に、前記吐出ノズルの内部に残留する処理液を前記吐出方向と逆方向に吸引する処理液吸引機構と、
前記処理液吸引機構に接続され、前記処理液供給機構と前記乾燥ガス供給機構から前記処理液および前記乾燥ガスの一方が前記吐出ノズルへ供給されるように、処理流体を切り替える切替機構と
を具備することを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記吐出ノズルへ前記処理液を供給する種類の異なる処理液供給機構を複数具備することを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記処理液吸引機構と前記切替機構とを制御する制御機構をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記吐出ノズルは、前記保持手段に保持された基板の裏面に対して所定間隔で対向するプレート部材と、
前記プレート部材を支持する支持部材と、
前記プレート部材および前記支持部材を貫通するように設けられた、前記処理液および前記乾燥ガスを流すためのノズル孔と
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記プレート部材は、昇降可能に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液処理装置。
【請求項6】
基板に処理液を供給して液処理を行う液処理装置であって、
被処理体を水平姿勢で保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された被処理体に処理液としての薬液およびリンス液、ならびに乾燥ガスを吐出口から吐出方向に吐出する吐出ノズルと、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへ薬液を供給する薬液供給機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへリンス液を供給するリンス液供給機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続された前記吐出ノズルへ乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給機構と、
前記薬液供給機構、前記リンス液供給機構、および前記乾燥ガス供給機構のうちのいずれかから、前記薬液、前記リンス液、および前記乾燥ガスのいずれか1つが前記吐出ノズルへ供給されるように、処理流体を切り替える切替機構と、
前記吐出口よりも上流側で前記吐出ノズルに接続され、基板に前記リンス液を吐出させた後で前記乾燥ガスを吐出する前に、前記吐出ノズルの内部に残留する前記リンス液の残留部を前記吐出方向と逆方向に吸引する液吸引機構と
を具備することを特徴とする液処理装置。
【請求項7】
前記吐出ノズルは、前記保持手段に保持された基板の裏面に対して所定間隔で対向するプレート部材と、
前記プレート部材を支持する支持部材と、
前記プレート部材および前記支持部材を貫通するように設けられた、前記薬液および前記リンス液および前記乾燥ガスを流すためのノズル孔と
を有することを特徴とする請求項6に記載の液処理装置。
【請求項8】
前記プレート部材は、昇降可能に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の液処理装置。
【請求項9】
前記液吸引機構は、前記切替機構に接続されていることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−124503(P2008−124503A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22730(P2008−22730)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【分割の表示】特願2002−113210(P2002−113210)の分割
【原出願日】平成14年4月16日(2002.4.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】