液剤塗布具
【課題】長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部に生じる隙間を一層確実に塞ぐことを可能とする液剤塗布具を提供する。
【解決手段】液剤塗布具10は、挿入管16の生体組織18への挿入部20を被覆するための液剤Lが充填される貯液部22bと、前記挿入管16の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部32を有すると共に、前記貯液部22bに充填される前記液剤Lを前記挿入管16の外周面に向けて吐出する吐出孔36を前記アーム部32に設けたノズル14とを備える。さらに、液剤塗布具10は、前記挿入管16を前記アーム部32により囲繞される領域内の所定位置で位置決め保持する保持機構42を備え、該保持機構42は、アーム部32の内面32aから拡張及び収縮可能なバルーン40を有する。
【解決手段】液剤塗布具10は、挿入管16の生体組織18への挿入部20を被覆するための液剤Lが充填される貯液部22bと、前記挿入管16の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部32を有すると共に、前記貯液部22bに充填される前記液剤Lを前記挿入管16の外周面に向けて吐出する吐出孔36を前記アーム部32に設けたノズル14とを備える。さらに、液剤塗布具10は、前記挿入管16を前記アーム部32により囲繞される領域内の所定位置で位置決め保持する保持機構42を備え、該保持機構42は、アーム部32の内面32aから拡張及び収縮可能なバルーン40を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル等の長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部を被覆する液剤を塗布するための液剤塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の長尺状の挿入体、例えば、血管カテーテル、導尿カテーテル及び硬膜外カテーテル等の各種カテーテル、又は、留置ドレーン、又は、腹膜透析チューブ、又は、ヒューバー針の挿入部、又は、生体埋込型医療機器のケーブル、又は、気管切開カニューレ等(以下、挿入管という)を体内に挿入し留置する際には、当該挿入管の生体組織(例えば、体表面)への挿入部に隙間を生じることがあり、この隙間に菌(例えば、皮膚に常在する菌)や汚れが侵入し、感染症や炎症を生じる可能性がある。
【0003】
そこで、一般的には、上記の感染症や炎症を予防するために、挿入部周辺をドレッシング剤で被覆する処置や、抗菌剤を含浸させたパッチを挿入部周辺に貼り付ける処置等が行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−94299号公報
【特許文献2】特許第3046623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなドレッシング剤やパッチを挿入部及びその周辺に貼り付ける処置を行うことにより、感染症や炎症の予防に対して一定の効果を得ることができる。しかしながら、このようなドレッシング剤やパッチを貼り付ける方法は、挿入管と生体組織との挿入部周辺を上方からカバーするだけの処置であるため、挿入部に生じる隙間を完全に塞ぐことは難しい。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を考慮してなされたものであり、長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部に生じる隙間を一層確実に塞ぐことを可能とする液剤塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液剤塗布具は、生体組織に挿入する長尺状の挿入体の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部と、前記挿入体を前記アーム部により囲繞される領域内の所定位置で位置決め保持する保持機構と、前記挿入体の前記生体組織への挿入部を被覆するための液剤を前記挿入体の外周面に向けて吐出する吐出孔とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、前記液剤を吐出孔から、アーム部で囲繞した挿入体の外周面に向けて吐出することにより、挿入部及びその周辺に液剤を塗布し、該挿入部に生じる隙間を確実に被覆し塞ぐことができる。さらに、アーム部により囲繞される領域内で挿入体を所定位置に位置決め保持する保持機構を備えることにより、アーム部により囲繞される領域内で挿入体を位置決め保持した状態で安定して液剤を塗布することができる。
【0009】
また、前記液剤が充填される貯液部と、前記アーム部及び前記保持機構及び前記吐出孔を有し、該吐出孔に前記貯液部からの前記液剤を流通可能なノズルとを備え、貯液部内に充填された液剤をノズルの吐出孔から吐出する構成としてもよい。
【0010】
この場合、前記吐出孔は、前記アーム部に設けられ、前記保持機構は、前記アーム部の前記吐出孔を避けた位置に設けると、保持機構が吐出孔からの液剤吐出を阻害することを防止することができる。
【0011】
前記アーム部は、前記挿入体の外径より大きな内径を有するリング形状であり、前記保持機構は、前記アーム部により囲繞される領域の略中心に前記挿入体を位置決め保持するセンタリング機構を有すると、アーム部の内面に設けた各吐出孔から挿入体の外周面までの距離を略均等にすることができ、液剤を挿入部に対して一層均一に塗布することができる。
【0012】
前記保持機構は、前記アーム部の内面に設けられ、前記貯液部から供給される前記液剤の圧力によって拡張及び収縮可能なバルーンを有すると、該バルーンを拡張させて挿入体に接触させることで、挿入体をアーム部により囲繞される領域内で位置決め保持することができる。
【0013】
前記バルーンは、前記アーム部の内面に複数設けられると共に、拡張した各バルーンの先端で前記挿入体を挟持する構成が好ましい。
【0014】
前記アーム部は、前記挿入体を囲繞する方向の一部に、前記挿入体の外径が通過可能な開口部を有するとよい。そうすると、該開口部を介して挿入体をアーム部の内側に容易に配置することができる。
【0015】
前記保持機構は、前記アーム部の内面において前記挿入体の軸線方向と交差する面上に張られた膜体を有し、前記膜体は、前記開口部に向かって延びたスリットを有すると、該スリットを介して挿入体を膜体の奥部に押し込むことにより、該挿入体をアーム部により囲繞される領域内で位置決め保持することができる。
【0016】
前記スリットは、前記開口部側が開口し、該開口部側とは反対側が閉塞しており、該閉塞している部分には、該スリットよりも幅広の孔部が設けられていると、挿入体を開口部からスリットを通過させた後、前記孔部に配置することにより、挿入体を該孔部で安定して保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、挿入体の生体組織への挿入部を被覆するための液剤を吐出孔から、アーム部で囲繞した挿入体の外周面に向けて吐出することにより、挿入部及びその周辺に液剤を塗布し、該挿入部に生じる隙間を確実に被覆し塞ぐことができる。さらに、アーム部により囲繞される領域内で挿入体を所定位置に位置決め保持する保持機構を備えることにより、アーム部により囲繞される領域内で挿入体を位置決め保持した状態で安定して液剤を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液剤塗布具の一部分解斜視図である。
【図2】図2Aは、図1に示す液剤塗布具においてバルーンが収縮した状態での先端側を拡大した部分断面図であり、図2Bは、図2Aに示す状態からバルーンを拡張した状態での部分断面図である。
【図3】図3Aは、図1に示す塗布具によって挿入管の生体組織への挿入部に対して液剤の塗布を行う様子を示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示す塗布具の平面図であり、図3Cは、図3Aに示す状態から液剤の塗布を行い、挿入部周辺を液剤によって被覆した状態を示す説明図である。
【図4】図4Aは、図1に示すノズルの変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図4Bは、図1に示すノズルの別の変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図5】図5Aは、シリンジとノズルの接続部にロック機構を設けた構成例の側面断面図であり、図5Bは、図5Aに示すロック機構をロック状態とした側面断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る液剤塗布具の一部分解斜視図である。
【図7】図7Aは、図6に示す液剤塗布具の先端側を拡大した部分断面図であり、図7Bは、図7Aに示す状態から挿入管を位置決め保持した状態での部分断面図である。
【図8】図7A中のVIII−VIII線に沿う断面説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る液剤塗布具の斜視図である。
【図10】図10Aは、本発明の第4の実施形態に係る液剤塗布具の平面図であり、図10Bは、図10Aに示す液剤塗布具の側面図である。
【図11】図1に示すノズルのさらに別の変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液剤塗布具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液剤塗布具10の一部分解斜視図である。本実施形態に係る液剤塗布具10(以下、単に「塗布具10」ともいう)は、液剤Lが充填されたシリンジ12と、シリンジ12の先端に接続されるノズル14とを有し、液剤Lをノズル14から目的部位へと塗布(投与、吐出、注入)するための器具である。
【0021】
液剤Lは、カテーテル、ドレーン又はケーブル等からなる長尺状の挿入体である挿入管16の生体組織18(例えば、体表面)への挿入部20を被覆するための薬剤等であり(図3A〜図3C参照)、すなわち、塗布具10は、先端のノズル14から前記挿入部20及びその周辺に、液剤Lを塗布するための医療用器具である。挿入管16の生体組織18への挿入部20とは、体表面以外、例えば、体内にあるものであってもよい。液剤Lとしては、例えば、シアノアクリレートを含有するシーラント(封止材、接着剤)や、例えば、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用いるとよい。該液剤は、吐出後に硬化するものがよく、生体組織と適度な接着性を有するものが望ましい。具体的な材料の一例としては、ポリエチレングリコールを主としたゲルや多糖ゲルがあり、2液を混合させるなどして硬化させる方法でもよい。
【0022】
以下、図1における左側(シリンジ12側)を「基端(後端)」側、右側(ノズル14側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0023】
図1に示すように、シリンジ12は、先細りテーパ形状で突出する流出口22aを先端に設けた外筒(シリンダ)22と、外筒22内で液密に摺動し、内部に液剤Lが充填される貯液部22bを画成するガスケット24が先端に装着され、前後方向(軸方向)に移動可能な押し子(プランジャロッド)26とを備える。
【0024】
ノズル14は、シリンジ12の流出口22aにテーパ嵌合する注入口28を基端面に有した略円筒状のベース部30と、ベース部30の先端から平面視(図2A参照)で挿入管16を囲繞するために一部に開放部分があり、例えばCリング状、V字状、U字状(本実施形態では、Cリング状の構成を例示)に形成されるアーム部(リング部)32とを有する。
【0025】
さらに、ノズル14は、アーム部32により囲繞される領域内で挿入管16を囲繞した際に、該挿入管16をアーム部32により囲繞される領域内の所定位置で位置決め保持する複数(本実施形態では、4個)のバルーン40を備える保持機構42を有する。なお、図1及び図2Bは、バルーン40の拡張状態を示し、図2Aは、バルーン40の収縮(折り畳み)状態を示している。
【0026】
ベース部30の内部には、注入口28から連通して軸方向に延びたノズル流路34が形成され、該ノズル流路34は、アーム部32の内部にも延在している(図2A及び図2B参照)。さらに、略円形状に形成されたアーム部32の内面(内周面)32aには、ノズル流路34から分岐した複数(本実施形態では、7個)の吐出孔36がバルーン40を避けた位置に開口形成されている。
【0027】
図2A及び図2Bに示すように、このノズル14における各吐出孔36は、全てアーム部32を構成する円の中心を指向する吐出方向に形成されている。勿論、吐出孔36の吐出方向や配置間隔等は適宜変更可能である。
【0028】
図1及び図2Aに示すように、アーム部32には、ベース部30の軸方向先端側に、挿入管16の外径が通過可能な開口部(切欠部、スリット)38が設けられている。本実施形態の場合、開口部38は、先端方向に向かって幅(内面間距離)が拡がる傾斜形状に構成される。
【0029】
保持機構42を構成する各バルーン40は、アーム部32の内面32aに略等間隔で設けられており、平面視でアーム部32により囲繞される領域の中心Cに向かって拡張(伸張)可能であると共に(図2B参照)、アーム部32の内面32aにバルーン全体が密着し、該内面32aからほとんど突出しない状態まで収縮(折り畳み)可能である(図2A参照)。バルーン40は、例えば、拡張時の形状が、先端に半球状の曲面を持つ円筒形状や、ドーム形状等に構成される。図2Bに示すように、拡張時、各バルーン40の各先端は、放射方向からアーム部32により囲繞される領域の中心Cに向かって集合した状態となる。
【0030】
バルーン40の収縮及び拡張は、その内圧の変化によって制御することができ、収縮された状態(図2A参照)から、ノズル流路34に連通する拡張流路44から内部に液剤Lが圧送されることで円筒形状に拡張し(図2B参照)、液剤Lの圧力を抜くことで再び収縮する。
【0031】
従って、保持機構42では、図2Aに示すように、シリンジ12から液剤Lが供給されていない状態では、各バルーン40が収縮し、開口部38を通してアーム部32の内外へと挿入管16を容易に通過させることができる。一方、図2Bに示すように、液剤Lがノズル流路34及び拡張流路44を介して供給されることにより、各バルーン40が拡張し、アーム部32により囲繞される領域内に配置された挿入管16の外周面を略均等に各バルーン40の先端で押圧し、アーム部32により囲繞される領域の中心Cに略一致した位置に挿入管16を位置決め保持することができる。
【0032】
このように構成されるノズル14の材質は、特に限定されないが、例えば、ベース部30及びアーム部32は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネイト、アクリル樹脂、ポリアミド等の樹脂を用いるとよい。また、バルーン40は、例えば、一般的なバルーンカテーテルに使用されるバルーンと同様な材質、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等で形成するとよく、好ましくは、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマーで形成するとよい。なお、シリンジ12の外筒22及び押し子26には、ベース部30等と同様の材質を用いるとよく、ガスケット24には、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマーを用いるとよい。
【0033】
ノズル14の寸法は、例えば、ベース部30の基端からアーム部32の先端までの長さが10mm〜50mm程度、好ましくは20mm〜30mm程度であるとよい。アーム部32の内面32aの内径、つまり、アーム部32により囲繞される領域の外径は、挿入管16の外径にもよるが、例えば、5mm〜30mm程度、好ましくは10mm〜20mm程度であり、開口部38の幅(間隔)は、3mm〜30mm程度、好ましくは3mm〜20mm程度であり、吐出孔36は、口径が0.5mm〜3mm程度、好ましくは1mm〜2mm程度であるとよい。また、バルーン40は、直径は、例えば、2mm〜20mm程度、好ましくは4mm〜15mm程度であり、拡張時の長さ(アーム部32の内径方向の長さ)は、2mm〜12mm程度、好ましくは、4mm〜10mm程度であるとよい。これらの各寸法や材質は、当該塗布具10の用途や仕様、液剤Lの種類等によって適宜最適に設定可能であることは勿論である。
【0034】
次に、以上のように構成される塗布具10を用いた液剤塗布方法の一例について、図3A〜図3Cを参照して説明する。図3Aは、図1に示す塗布具10によって挿入管16の生体組織18への挿入部20に対して液剤Lの塗布を行う様子を示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示す塗布具10の平面図であり、図3Cは、図3Aに示す状態から液剤Lの塗布を行い、挿入部20周辺を液剤Lによって被覆した状態を示す説明図である。
【0035】
長尺状の挿入体である挿入管16としては、例えば、血管カテーテル、導尿カテーテル及び硬膜外カテーテル等の各種カテーテル、又は、留置ドレーン、又は、腹膜透析チューブ、又は、ヒューバー針の挿入部、又は、生体埋込型医療機器のケーブル、又は、切開カニューレ等を挙げることができる。このような挿入管16が生体組織18(例えば、体表面)に挿入された状態では、図3Aに示すように、挿入部20において挿入管16と生体組織18との間に、該挿入管16の外周面に沿った隙間Gが生じることになる。なお、図3A〜図3Cでは、理解の容易のため、隙間Gをやや誇張して図示しているが、実際の隙間Gは、図3A〜図3Cに図示したものよりも幅の狭い、より微小な間隔である。
【0036】
このように挿入部20に生じる隙間Gには、生体組織18の表面(皮膚表面等)に常在する菌や汚れが侵入する可能性があり、感染症や炎症を防止するためには、この隙間Gをより確実に塞ぐことが好ましい。ところが、上記した従来のドレッシング剤は、フィルムを挿入部周辺に貼り付けるだけの構成であるため、挿入部で生じる前記隙間Gを完全に塞ぐことは難しい。しかも、貼り付けたフィルムにしわ等が生じることがあり、そうすると、しわ等によって生じた隙間(空間)を通して菌が移動し、前記隙間Gへと侵入する可能性もある。
【0037】
そこで、本実施形態では、上記の隙間Gを確実に閉塞し、しわ等に起因する前記隙間の発生を防止するため、液剤Lとして、シアノアクリレートを含有するシーラントや、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用い、これらを単独で又は混合したものを液剤Lとして、シリンジ12の貯液部22b内に予め充填しておくか、又は手技の直前に充填しておく。
【0038】
次に、シリンジ12の流出口22aのキャップ39(図1参照)を取り外して該流出口22aを開通してからノズル14を装着し、プライミングを行った後、図2A及び3Aに示すように、開口部38を通してアーム部32の内側に挿入管16を挿入し、該アーム部32の内面32aで挿入管16を囲繞するように配置する。すなわち、アーム部32のリング内側に挿入管16を挿通させた状態とする。この際、図2Aに示すように、保持機構42では、シリンジ12から液剤Lが供給されていない状態では、各バルーン40が収縮しているため、挿入管16をアーム部32により囲繞される領域内へと容易に配置することができる。
【0039】
なお、キャップ39に代えて、例えば、流出口22aの出口に図示しない樹脂製の膜を設けておき、使用開始時に、該膜を図示しない穿刺針等によって開通するか、又はノズル14のノズル流路34内に設けた流路が形成された穿刺針によって開通するように構成してもよい。
【0040】
ノズル14の挿入管16への設置位置は、挿入管16や塗布具10の種類や寸法、挿入部20での隙間Gの大きさ等にもよるが、例えば、生体組織18の表面から5mm〜20mm、好ましくは10mm程度の高さ位置(図3A中のh=10mm)に設定するとよい。また、開口部38の幅(最小幅)は、例えば、対象となる挿入管16の外径よりも多少大きく、例えば、数%〜数10%程度大きく設定することが好ましく、同様に、アーム部32の内面32aの内径は、対象となる挿入管16の外径よりも多少大きく、例えば、1.3倍〜2倍程度に設定することが好ましい。また、開口部38が弾性部材からなり、拡張することができる場合はこの限りではない。
【0041】
続いて、シリンジ12の押し子26を押し込むことにより、図2B、図3B及び図3Cに示すように、液剤Lが拡張流路44から各バルーン40内に圧送されて各バルーン40が拡張する。これにより、各バルーン40の先端によって挿入管16の外周面が挟持されて、アーム部32により囲繞される領域の中心Cに略一致した位置で位置決め保持されると同時に、液剤Lがノズル14の各吐出孔36から一挙に挿入管16に向けて吐出される。
【0042】
従って、吐出孔36から吐出された液剤Lが、挿入管16の外周面を伝いながら下降して挿入部20に到達し、液剤Lが挿入部20及びその周辺に適切に塗布され、隙間Gが確実に被覆され塞がれる。また、当該塗布具10の液剤Lは、例えば、上記のドレッシング剤と併用することもでき、そうするとドレッシング剤に生じるしわがあった場合でも菌が隙間Gから体内に侵入することが確実に防止される。
【0043】
例えば、液剤Lとして、シアノアクリレートを含有するシーラントを用いると、挿入部20及びその周辺部で該シーラントが固化するため、隙間Gを確実に塞ぐことができ、しかも挿入管16を挿入部20に対して固定することもできる。一方、液剤Lとして、例えば、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用いると、挿入部20及びその周辺部に該液剤Lが保持され、隙間Gを確実に塞ぐことができる。なお、該液剤を用いる場合には、上記のシーラントのように挿入部20周辺で固化することはないが、一般に、挿入管16と生体組織18との間に生じる隙間Gの幅は極めて狭いことから、所定の粘度からなる液剤Lであれば、固化しなくてもその表面張力によって確実に隙間Gを塞ぐことは可能である。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る塗布具10では、シリンジ12の貯液部22b内に充填された液剤Lをアーム部32の内面32aに開口する吐出孔36から挿入管16の外周面に向けて吐出し、挿入部20及びその周辺に液剤Lを塗布することにより、隙間Gを確実に被覆し、塞ぐことができる。従って、カテーテル等の挿入管16と生体組織18との間の挿入部20に形成される隙間Gに菌や汚れが侵入することを確実に防ぐことができ、該挿入部20での感染症や炎症の発生を予防することができる。
【0045】
ノズル14は、挿入管16を囲繞可能なアーム部32を有し、このアーム部32の内面32aに液剤Lの吐出孔36が形成されると共に、さらに、保持機構42が設けられている。従って、液剤Lの塗布時、アーム部32の内側で挿入管16を所定位置(例えば、アーム部32により囲繞される領域の中心Cに対応した位置)に位置決め保持しつつ、吐出孔36から液剤Lを確実に挿入管16の外周面に一挙に吐出することができ、高い操作性と確実な塗布とが可能となる。つまり、各吐出孔36がアーム部32の内面32aに形成され、且つ、保持機構42を構成するバルーン40が設けられることにより、アーム部32の内側(内部)に挿入管16を配置するだけで、液剤Lの塗布時には、挿入管16が確実に位置決め保持され、アーム部32により囲繞される領域内から抜け止めされた状態で、液剤Lを挿入管16の外周面に略均等に安定して吐出することができる。
【0046】
なお、液剤Lの吐出孔は、アーム部32の内面に設けられる吐出孔36に代えて又は併設して、図2B中のベース部30側の1つのバルーン40に2点鎖線で例示したように、吐出孔40aを各バルーン40の側面(又は先端面)に設けてもよい。このようにバルーン40に吐出孔40aを設けることで、アーム部32の構造が簡素化され、製造効率を向上させることができる。但し、バルーン40を液剤Lによって十分に拡張させるため、1つのバルーン40における全ての吐出孔40aの合計断面積は、拡張流路44の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0047】
ここで、保持機構42は、各バルーン40によってアーム部32により囲繞される領域の中心Cに略一致した位置に挿入管16を位置決め保持可能なセンタリング機構を構成しているため、アーム部32の内面32aに設けた各吐出孔36から挿入管16の外周面までの距離を略均等にすることができる。このため、液剤Lを挿入部20に対して一層均一に塗布することができる。勿論、保持機構42は、センタリング機構を構成しない構造であってもよく、挿入管16の保持位置は、当該塗布具10の仕様や用途によって適宜設定すればよい。
【0048】
挿入管16を位置決め保持する保持機構としては、アーム部32に設けた保持機構42に加えて、例えば、図3A中に2点鎖線で示す保持アーム43を設けてもよい。保持アーム43は、ベース部30から延びたフレームの先に、挿入管16を囲繞して保持するために、例えば、C字状、U字状又はV字状等に構成され、且つ挿入管16より僅かに大径の内径を持つリング状の保持部43aを有する。この保持アーム43を設けることにより、保持機構42と保持アーム43とで、挿入管16の軸方方向で2箇所を保持することができ、挿入管16の一層安定した位置決め保持が可能となる。なお、保持アーム43の保持部43aは、図3Aに示すようにアーム部32の上部ではなく、下部に設けてもよいが、吐出孔36からの液剤Lが挿入管16の外周面を伝って挿入部20に塗布されることから、図3Aに示すようにアーム部32の上部に設けることが好ましい。
【0049】
上記したように、当該塗布具10では、例えば、十分な粘度を持った液剤Lを塗布することから、シリンジ12から吐出される液剤Lは、バルーン40を十分に拡張可能な所定の高い圧力(液圧)を持っている。このため、保持機構42では、塗布具10の使用者がバルーン40を拡張させるために特別な操作をしなくても、アーム部32により囲繞される領域内に挿入管16を配置してシリンジ12の押し子26を押し込むだけで、該シリンジ12から供給される液剤Lの液圧によってバルーン40が確実に拡張し、自動的に挿入管16を位置決め保持することができる。
【0050】
なお、吐出孔36は、上記のように複数設けず、例えば、ある程度の大きさを持つ1つの吐出孔36のみであってもよいが、挿入管16の外周面に対してより均等に液剤Lを塗布するためには、アーム部32の周方向に略等間隔で均等配置された3つ以上の吐出孔36を設けることが好ましい。
【0051】
図2Aに示すように、ノズル14は、挿入管16をアーム部32により囲繞される領域内に挿入するための開口部38を有し、この開口部38を、当該塗布具10の先端方向、つまり軸線上に開口形成している。これにより、使用者は、塗布具10を挿入管16にセットする際、例えば、片手でシリンジ12部分を把持したまま、開口部38へと容易に挿入管16を通過させることができ、高い操作性を得ることができる。
【0052】
しかも、ノズル14では、開口部38を、アーム部32の内面32a側から外面側に向けて幅が拡がる傾斜面で形成している。これにより、開口部38からアーム部32により囲繞される領域内へと挿入管16を一層容易に挿入することが可能となると共に、一旦アーム部32の内側に配置された挿入管16の開口部38からの抜け止め機能も付与することができる。
【0053】
保持機構42を構成するバルーン40は、上記では4個設けた構成を例示したが、例えば、図4Aに示すように、アーム部32の内面32aに3個のバルーン40を略均等に配置した保持機構42aを備えるノズル14aとして構成してもよい。要は、バルーン40は、アーム部32の内側に配置された挿入管16を所定位置で位置決めし、保持することができるものであれば、例えば、図4Bに示すように、2個のバルーン40と、挿入管16の背面を受ける湾曲した受け面46aを有する支持台46を設けた保持機構42bを備えるノズル14bとして構成してもよい。受け面46aは、例えば、バルーン40と同様な弾性材料によって構成してもよい。
【0054】
図2B、図4A及び図4Bに示すノズル14、14a、14bのように、各バルーン40のうち、少なくとも1以上のバルーン40が、その拡張時、開口部38をある程度閉塞する位置に配置されていると、挿入管16のアーム部32の内側からの一層確実な抜け止めを行うことができる。すなわち、ノズル14、14a、14bでは、開口部38の両脇にバルーン40を設けたことにより、アーム部32の内側に挿入管16を配置する際には、バルーン40が収縮して開口部38を完全に開放した状態となる一方、アーム部32の内側で挿入管16を位置決め保持する際には、バルーン40が拡張して開口部38のアーム部32側がバルーン40によって一部閉塞され、挿入管16の抜け止めがなされる。
【0055】
ところで、当該塗布具10では、例えば、十分な粘度を持った液剤Lを塗布するため、シリンジ12から吐出される液剤Lは所定の高い圧力(抵抗)を発生することになる。そこで、ノズル14とシリンジ12との接続部について、図2に示される通常のテーパ嵌合構造(ルアーテーパ嵌合構造)以外にも、例えば、図5A及び図5Bに示されるルアーロック21を備えたルアーロック構造とすることも有効である。
【0056】
図5A及び図5Bに示すように、ルアーロック21は、シリンジ12の流出口22aの外周側に隙間23を有して配置された筒部25の内周面に形成された雌ねじ27と、ベース部30の基端側外周面に形成された雄ねじ29とから構成されている。シリンジ12側の雌ねじ27に対し、ノズル14側の雄ねじ29が螺合されることにより、シリンジ12とノズル14とをより確実に嵌合・締結することができる。
【0057】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る液剤塗布具50の斜視図である。この第2の実施形態に係る液剤塗布具50において、上記第1の実施形態に係る液剤塗布具10と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略し、以下同様とする。
【0058】
本第2の実施形態に係る塗布具50では、アーム部32により囲繞される領域内で挿入管16を位置決め保持するために、上記第1の実施形態の保持機構42に代えて、保持機構52を備えたノズル15を有する。
【0059】
図6及び図7Aに示すように、保持機構52は、アーム部32の内面32aを覆うように該内面32aに沿って張り渡され、弾性変形可能な薄い膜体(シート)54を備える。膜体54は、図7Aに示す平面視で開口部38の傾斜面に沿って形成された凹部56と、凹部56の底部中心からアーム部32により囲繞される領域の中心Cに向かって延びたスリット58と、スリット58の奥部が連通し、前記中心Cを囲むように形成された保持孔(孔部)60とを有する。
【0060】
すなわち、膜体54は、アーム部32の内面32aにおいて、挿入管16の軸線方向と交差(本実施形態では、直交)する面上に設けられ、スリット58は、開口部38側が開口し、開口部38とは反対側が保持孔60によって閉塞した行き止まりとなっている。従って、保持機構52では、図7Aに示す状態から、アーム部32の内側に挿入管16を配置する際には、開口部38から凹部56へと挿入管16を通過させ、さらに、スリット58を挿入管16の外周面で押し広げながら通過させることにより、図7Bに示すように、保持孔60内で挿入管16を位置決め保持することができる。
【0061】
膜体54の材質は、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマーを用いるとよい。また、膜体54の厚さは、例えば、0.1mm〜5mm程度が好ましく、スリット58の幅は、略0(ゼロ)から挿入管16の外径より小さい幅であればよく、また、保持孔60の直径は、スリット58の幅と同一以下で且つ挿入管16の外径以下であることが好ましい。但し、保持孔60の直径は、挿入管16の外径以上であってもよい。
【0062】
なお、図8に示すように、膜体54は、アーム部32の内面32aにおいて、吐出孔36よりも上方、つまりアーム部32の内側に挿入管16を配置した状態で、生体組織18に対して吐出孔36よりも離れた位置となるように設定されている。これにより、液剤Lは、吐出孔36から膜体54の下面側に吐出されるため、膜体54が邪魔にならず、液剤Lを挿入部20に確実に塗布することができる。
【0063】
そこで、ノズル15の上下を誤って反転させ、吐出孔36より膜体54が生体組織18側に配置されることを防止するため、アーム部32の上面に所定のマーク62(図6〜図7Bでは3個設置)を設け、該マーク62によってノズル15の正しい設置方向を使用者に通知することも有効である。マーク62は、例えば、印刷や刻設によって形成すればよい。
【0064】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る液剤塗布具70の斜視図である。
【0065】
上記第1(第2)の実施形態に係る塗布具10(50)では、ノズル14(15)をシリンジ12に対して着脱可能に構成していたが、この塗布具70では、図9に示すように、シリンジ12と略同構造からなるシリンジ72の先端に、上記のノズル14(14a、14b、15)と略構造からなるノズル74を一体的に設けて構成している。
【0066】
従って、当該塗布具70では、ノズル74をシリンジ72に装着する工程が不要となり、取り扱いが一層容易となる。さらに、ノズル74をシリンジ72に一体化したことにより、当該塗布具70の製造コストを低減することができる。
【0067】
図10Aは、本発明の第4の実施形態に係る液剤塗布具80の平面図であり、図10Bは、図10Aに示す液剤塗布具80の側面図である。
【0068】
この塗布具80は、図9に示す塗布具70のシリンジ72に代えて、貯液部82aを有する小型扁平な本体部82を有し、該本体部82の先端に貯液部82aから連通するノズル流路34を設けたノズル84が一体的に備えられている。本体部82の略中央部には、その上下面に扁平半球状に膨出形成された膨出部82bが設けられ、この膨出部82bの内側が貯液部82aとなっている。本体部82は、少なくとも貯液部82aを構成する膨出部82bが可撓性を有する樹脂製材料等によって形成される。
【0069】
従って、当該塗布具80では、使用者が本体部82を片手で把持した状態で、例えば親指と人差指とで図10B中の矢印Pに示すように、膨出部82b(貯液部82a)を押し潰す方向に押圧することにより、ノズル84の吐出孔36から液剤Lを吐出することができる。塗布具80ではシリンジが不要となることから、全体として一層コンパクト且つ低コストな構造とすることができ、取り扱い性をより一層向上させることができる。
【0070】
本発明は、上記の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0071】
例えば、上記各実施形態では、保持機構42、52として、アーム部32により囲繞される領域内で挿入管16を位置決めし、且つ固定・保持可能な構成を例示したが、当該保持機構は、アーム部32の内側で挿入管16を固定できなくても、使用者が安定して液剤Lを塗布できる程度に位置決め保持することができる構造であればよい。
【0072】
そこで、例えば、図11に示すように、ノズル14(14a、14b、15、74、84)に代えて、アーム部32の内面32aの対向面間に細径の糸90を交差するように複数本(図11では、2本)設け、各糸90の交点にマーク91を設置した保持機構92を備えるノズル94として構成することもできる。糸90としては、例えばノズル14と同様な樹脂等による合成繊維等の線材を用いるとよく、マーク91としては、糸90の一部を着色したものや、糸90よりも多少大径の部材を固着したもの等とするとよい。糸90は、マーク91がアーム部32の内円の略中心に配置されるように設置してもよいが、例えば、マーク91がアーム部32の内円の中心Cから多少後方にオフセットした位置となるように設置するとよい。これにより、ノズル94のアーム部32の内側には、2本の糸90が交差したことにより、所定の角度を持って開口部38側を指向した凹状部分(谷部)が形成され、該凹状部分で一層安定して挿入管16を位置決め保持することができる。
【0073】
また、アーム部32は、挿入管16の少なくとも一部を囲繞可能な形状であればよく、上記のリング形状(Cリング形状)以外にも、例えば、U字状、V字状や菱形状等、要は、挿入管16を適切に位置決めし、挿入部20に対して液剤Lを適切に塗布可能な形状であれば。換言すれば、アーム部32としては、挿入管16の少なくとも一部を囲繞でき、この挿入管16に対して液剤Lを円滑に吐出することができる構成であればよい。
【0074】
液剤塗布具10によって吐出・塗布する液剤Lとしては、上記したシアノアクリレートを含有するシーラントや、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し且つ十分な粘度を有した液剤以外であっても勿論よく、要は挿入部20周辺に塗布されることで固化し又は適度な粘度によって隙間Gを被覆し塞ぐことができるものであればよく、例えば、ポリエチレングリコールを主としたゲルや多糖ゲル等を用いてもよい。なお、当該塗布具によって塗布される液剤とは、塗布される状態で液体のものをいい、塗布された後、シーラントのように固化するものも当然に含むものとする。
【符号の説明】
【0075】
10、50、70、80…液剤塗布具 12、72…シリンジ
14、14a、14b、15、74、84、94…ノズル
16…挿入管 18…生体組織
20…挿入部 32…アーム部
36…吐出孔 38…開口部
40…バルーン 42、42a、42b、52、92…保持機構
54…膜体 58…スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル等の長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部を被覆する液剤を塗布するための液剤塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の長尺状の挿入体、例えば、血管カテーテル、導尿カテーテル及び硬膜外カテーテル等の各種カテーテル、又は、留置ドレーン、又は、腹膜透析チューブ、又は、ヒューバー針の挿入部、又は、生体埋込型医療機器のケーブル、又は、気管切開カニューレ等(以下、挿入管という)を体内に挿入し留置する際には、当該挿入管の生体組織(例えば、体表面)への挿入部に隙間を生じることがあり、この隙間に菌(例えば、皮膚に常在する菌)や汚れが侵入し、感染症や炎症を生じる可能性がある。
【0003】
そこで、一般的には、上記の感染症や炎症を予防するために、挿入部周辺をドレッシング剤で被覆する処置や、抗菌剤を含浸させたパッチを挿入部周辺に貼り付ける処置等が行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−94299号公報
【特許文献2】特許第3046623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなドレッシング剤やパッチを挿入部及びその周辺に貼り付ける処置を行うことにより、感染症や炎症の予防に対して一定の効果を得ることができる。しかしながら、このようなドレッシング剤やパッチを貼り付ける方法は、挿入管と生体組織との挿入部周辺を上方からカバーするだけの処置であるため、挿入部に生じる隙間を完全に塞ぐことは難しい。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を考慮してなされたものであり、長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部に生じる隙間を一層確実に塞ぐことを可能とする液剤塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液剤塗布具は、生体組織に挿入する長尺状の挿入体の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部と、前記挿入体を前記アーム部により囲繞される領域内の所定位置で位置決め保持する保持機構と、前記挿入体の前記生体組織への挿入部を被覆するための液剤を前記挿入体の外周面に向けて吐出する吐出孔とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、前記液剤を吐出孔から、アーム部で囲繞した挿入体の外周面に向けて吐出することにより、挿入部及びその周辺に液剤を塗布し、該挿入部に生じる隙間を確実に被覆し塞ぐことができる。さらに、アーム部により囲繞される領域内で挿入体を所定位置に位置決め保持する保持機構を備えることにより、アーム部により囲繞される領域内で挿入体を位置決め保持した状態で安定して液剤を塗布することができる。
【0009】
また、前記液剤が充填される貯液部と、前記アーム部及び前記保持機構及び前記吐出孔を有し、該吐出孔に前記貯液部からの前記液剤を流通可能なノズルとを備え、貯液部内に充填された液剤をノズルの吐出孔から吐出する構成としてもよい。
【0010】
この場合、前記吐出孔は、前記アーム部に設けられ、前記保持機構は、前記アーム部の前記吐出孔を避けた位置に設けると、保持機構が吐出孔からの液剤吐出を阻害することを防止することができる。
【0011】
前記アーム部は、前記挿入体の外径より大きな内径を有するリング形状であり、前記保持機構は、前記アーム部により囲繞される領域の略中心に前記挿入体を位置決め保持するセンタリング機構を有すると、アーム部の内面に設けた各吐出孔から挿入体の外周面までの距離を略均等にすることができ、液剤を挿入部に対して一層均一に塗布することができる。
【0012】
前記保持機構は、前記アーム部の内面に設けられ、前記貯液部から供給される前記液剤の圧力によって拡張及び収縮可能なバルーンを有すると、該バルーンを拡張させて挿入体に接触させることで、挿入体をアーム部により囲繞される領域内で位置決め保持することができる。
【0013】
前記バルーンは、前記アーム部の内面に複数設けられると共に、拡張した各バルーンの先端で前記挿入体を挟持する構成が好ましい。
【0014】
前記アーム部は、前記挿入体を囲繞する方向の一部に、前記挿入体の外径が通過可能な開口部を有するとよい。そうすると、該開口部を介して挿入体をアーム部の内側に容易に配置することができる。
【0015】
前記保持機構は、前記アーム部の内面において前記挿入体の軸線方向と交差する面上に張られた膜体を有し、前記膜体は、前記開口部に向かって延びたスリットを有すると、該スリットを介して挿入体を膜体の奥部に押し込むことにより、該挿入体をアーム部により囲繞される領域内で位置決め保持することができる。
【0016】
前記スリットは、前記開口部側が開口し、該開口部側とは反対側が閉塞しており、該閉塞している部分には、該スリットよりも幅広の孔部が設けられていると、挿入体を開口部からスリットを通過させた後、前記孔部に配置することにより、挿入体を該孔部で安定して保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、挿入体の生体組織への挿入部を被覆するための液剤を吐出孔から、アーム部で囲繞した挿入体の外周面に向けて吐出することにより、挿入部及びその周辺に液剤を塗布し、該挿入部に生じる隙間を確実に被覆し塞ぐことができる。さらに、アーム部により囲繞される領域内で挿入体を所定位置に位置決め保持する保持機構を備えることにより、アーム部により囲繞される領域内で挿入体を位置決め保持した状態で安定して液剤を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液剤塗布具の一部分解斜視図である。
【図2】図2Aは、図1に示す液剤塗布具においてバルーンが収縮した状態での先端側を拡大した部分断面図であり、図2Bは、図2Aに示す状態からバルーンを拡張した状態での部分断面図である。
【図3】図3Aは、図1に示す塗布具によって挿入管の生体組織への挿入部に対して液剤の塗布を行う様子を示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示す塗布具の平面図であり、図3Cは、図3Aに示す状態から液剤の塗布を行い、挿入部周辺を液剤によって被覆した状態を示す説明図である。
【図4】図4Aは、図1に示すノズルの変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図4Bは、図1に示すノズルの別の変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図5】図5Aは、シリンジとノズルの接続部にロック機構を設けた構成例の側面断面図であり、図5Bは、図5Aに示すロック機構をロック状態とした側面断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る液剤塗布具の一部分解斜視図である。
【図7】図7Aは、図6に示す液剤塗布具の先端側を拡大した部分断面図であり、図7Bは、図7Aに示す状態から挿入管を位置決め保持した状態での部分断面図である。
【図8】図7A中のVIII−VIII線に沿う断面説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る液剤塗布具の斜視図である。
【図10】図10Aは、本発明の第4の実施形態に係る液剤塗布具の平面図であり、図10Bは、図10Aに示す液剤塗布具の側面図である。
【図11】図1に示すノズルのさらに別の変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液剤塗布具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液剤塗布具10の一部分解斜視図である。本実施形態に係る液剤塗布具10(以下、単に「塗布具10」ともいう)は、液剤Lが充填されたシリンジ12と、シリンジ12の先端に接続されるノズル14とを有し、液剤Lをノズル14から目的部位へと塗布(投与、吐出、注入)するための器具である。
【0021】
液剤Lは、カテーテル、ドレーン又はケーブル等からなる長尺状の挿入体である挿入管16の生体組織18(例えば、体表面)への挿入部20を被覆するための薬剤等であり(図3A〜図3C参照)、すなわち、塗布具10は、先端のノズル14から前記挿入部20及びその周辺に、液剤Lを塗布するための医療用器具である。挿入管16の生体組織18への挿入部20とは、体表面以外、例えば、体内にあるものであってもよい。液剤Lとしては、例えば、シアノアクリレートを含有するシーラント(封止材、接着剤)や、例えば、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用いるとよい。該液剤は、吐出後に硬化するものがよく、生体組織と適度な接着性を有するものが望ましい。具体的な材料の一例としては、ポリエチレングリコールを主としたゲルや多糖ゲルがあり、2液を混合させるなどして硬化させる方法でもよい。
【0022】
以下、図1における左側(シリンジ12側)を「基端(後端)」側、右側(ノズル14側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0023】
図1に示すように、シリンジ12は、先細りテーパ形状で突出する流出口22aを先端に設けた外筒(シリンダ)22と、外筒22内で液密に摺動し、内部に液剤Lが充填される貯液部22bを画成するガスケット24が先端に装着され、前後方向(軸方向)に移動可能な押し子(プランジャロッド)26とを備える。
【0024】
ノズル14は、シリンジ12の流出口22aにテーパ嵌合する注入口28を基端面に有した略円筒状のベース部30と、ベース部30の先端から平面視(図2A参照)で挿入管16を囲繞するために一部に開放部分があり、例えばCリング状、V字状、U字状(本実施形態では、Cリング状の構成を例示)に形成されるアーム部(リング部)32とを有する。
【0025】
さらに、ノズル14は、アーム部32により囲繞される領域内で挿入管16を囲繞した際に、該挿入管16をアーム部32により囲繞される領域内の所定位置で位置決め保持する複数(本実施形態では、4個)のバルーン40を備える保持機構42を有する。なお、図1及び図2Bは、バルーン40の拡張状態を示し、図2Aは、バルーン40の収縮(折り畳み)状態を示している。
【0026】
ベース部30の内部には、注入口28から連通して軸方向に延びたノズル流路34が形成され、該ノズル流路34は、アーム部32の内部にも延在している(図2A及び図2B参照)。さらに、略円形状に形成されたアーム部32の内面(内周面)32aには、ノズル流路34から分岐した複数(本実施形態では、7個)の吐出孔36がバルーン40を避けた位置に開口形成されている。
【0027】
図2A及び図2Bに示すように、このノズル14における各吐出孔36は、全てアーム部32を構成する円の中心を指向する吐出方向に形成されている。勿論、吐出孔36の吐出方向や配置間隔等は適宜変更可能である。
【0028】
図1及び図2Aに示すように、アーム部32には、ベース部30の軸方向先端側に、挿入管16の外径が通過可能な開口部(切欠部、スリット)38が設けられている。本実施形態の場合、開口部38は、先端方向に向かって幅(内面間距離)が拡がる傾斜形状に構成される。
【0029】
保持機構42を構成する各バルーン40は、アーム部32の内面32aに略等間隔で設けられており、平面視でアーム部32により囲繞される領域の中心Cに向かって拡張(伸張)可能であると共に(図2B参照)、アーム部32の内面32aにバルーン全体が密着し、該内面32aからほとんど突出しない状態まで収縮(折り畳み)可能である(図2A参照)。バルーン40は、例えば、拡張時の形状が、先端に半球状の曲面を持つ円筒形状や、ドーム形状等に構成される。図2Bに示すように、拡張時、各バルーン40の各先端は、放射方向からアーム部32により囲繞される領域の中心Cに向かって集合した状態となる。
【0030】
バルーン40の収縮及び拡張は、その内圧の変化によって制御することができ、収縮された状態(図2A参照)から、ノズル流路34に連通する拡張流路44から内部に液剤Lが圧送されることで円筒形状に拡張し(図2B参照)、液剤Lの圧力を抜くことで再び収縮する。
【0031】
従って、保持機構42では、図2Aに示すように、シリンジ12から液剤Lが供給されていない状態では、各バルーン40が収縮し、開口部38を通してアーム部32の内外へと挿入管16を容易に通過させることができる。一方、図2Bに示すように、液剤Lがノズル流路34及び拡張流路44を介して供給されることにより、各バルーン40が拡張し、アーム部32により囲繞される領域内に配置された挿入管16の外周面を略均等に各バルーン40の先端で押圧し、アーム部32により囲繞される領域の中心Cに略一致した位置に挿入管16を位置決め保持することができる。
【0032】
このように構成されるノズル14の材質は、特に限定されないが、例えば、ベース部30及びアーム部32は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネイト、アクリル樹脂、ポリアミド等の樹脂を用いるとよい。また、バルーン40は、例えば、一般的なバルーンカテーテルに使用されるバルーンと同様な材質、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等で形成するとよく、好ましくは、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマーで形成するとよい。なお、シリンジ12の外筒22及び押し子26には、ベース部30等と同様の材質を用いるとよく、ガスケット24には、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマーを用いるとよい。
【0033】
ノズル14の寸法は、例えば、ベース部30の基端からアーム部32の先端までの長さが10mm〜50mm程度、好ましくは20mm〜30mm程度であるとよい。アーム部32の内面32aの内径、つまり、アーム部32により囲繞される領域の外径は、挿入管16の外径にもよるが、例えば、5mm〜30mm程度、好ましくは10mm〜20mm程度であり、開口部38の幅(間隔)は、3mm〜30mm程度、好ましくは3mm〜20mm程度であり、吐出孔36は、口径が0.5mm〜3mm程度、好ましくは1mm〜2mm程度であるとよい。また、バルーン40は、直径は、例えば、2mm〜20mm程度、好ましくは4mm〜15mm程度であり、拡張時の長さ(アーム部32の内径方向の長さ)は、2mm〜12mm程度、好ましくは、4mm〜10mm程度であるとよい。これらの各寸法や材質は、当該塗布具10の用途や仕様、液剤Lの種類等によって適宜最適に設定可能であることは勿論である。
【0034】
次に、以上のように構成される塗布具10を用いた液剤塗布方法の一例について、図3A〜図3Cを参照して説明する。図3Aは、図1に示す塗布具10によって挿入管16の生体組織18への挿入部20に対して液剤Lの塗布を行う様子を示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示す塗布具10の平面図であり、図3Cは、図3Aに示す状態から液剤Lの塗布を行い、挿入部20周辺を液剤Lによって被覆した状態を示す説明図である。
【0035】
長尺状の挿入体である挿入管16としては、例えば、血管カテーテル、導尿カテーテル及び硬膜外カテーテル等の各種カテーテル、又は、留置ドレーン、又は、腹膜透析チューブ、又は、ヒューバー針の挿入部、又は、生体埋込型医療機器のケーブル、又は、切開カニューレ等を挙げることができる。このような挿入管16が生体組織18(例えば、体表面)に挿入された状態では、図3Aに示すように、挿入部20において挿入管16と生体組織18との間に、該挿入管16の外周面に沿った隙間Gが生じることになる。なお、図3A〜図3Cでは、理解の容易のため、隙間Gをやや誇張して図示しているが、実際の隙間Gは、図3A〜図3Cに図示したものよりも幅の狭い、より微小な間隔である。
【0036】
このように挿入部20に生じる隙間Gには、生体組織18の表面(皮膚表面等)に常在する菌や汚れが侵入する可能性があり、感染症や炎症を防止するためには、この隙間Gをより確実に塞ぐことが好ましい。ところが、上記した従来のドレッシング剤は、フィルムを挿入部周辺に貼り付けるだけの構成であるため、挿入部で生じる前記隙間Gを完全に塞ぐことは難しい。しかも、貼り付けたフィルムにしわ等が生じることがあり、そうすると、しわ等によって生じた隙間(空間)を通して菌が移動し、前記隙間Gへと侵入する可能性もある。
【0037】
そこで、本実施形態では、上記の隙間Gを確実に閉塞し、しわ等に起因する前記隙間の発生を防止するため、液剤Lとして、シアノアクリレートを含有するシーラントや、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用い、これらを単独で又は混合したものを液剤Lとして、シリンジ12の貯液部22b内に予め充填しておくか、又は手技の直前に充填しておく。
【0038】
次に、シリンジ12の流出口22aのキャップ39(図1参照)を取り外して該流出口22aを開通してからノズル14を装着し、プライミングを行った後、図2A及び3Aに示すように、開口部38を通してアーム部32の内側に挿入管16を挿入し、該アーム部32の内面32aで挿入管16を囲繞するように配置する。すなわち、アーム部32のリング内側に挿入管16を挿通させた状態とする。この際、図2Aに示すように、保持機構42では、シリンジ12から液剤Lが供給されていない状態では、各バルーン40が収縮しているため、挿入管16をアーム部32により囲繞される領域内へと容易に配置することができる。
【0039】
なお、キャップ39に代えて、例えば、流出口22aの出口に図示しない樹脂製の膜を設けておき、使用開始時に、該膜を図示しない穿刺針等によって開通するか、又はノズル14のノズル流路34内に設けた流路が形成された穿刺針によって開通するように構成してもよい。
【0040】
ノズル14の挿入管16への設置位置は、挿入管16や塗布具10の種類や寸法、挿入部20での隙間Gの大きさ等にもよるが、例えば、生体組織18の表面から5mm〜20mm、好ましくは10mm程度の高さ位置(図3A中のh=10mm)に設定するとよい。また、開口部38の幅(最小幅)は、例えば、対象となる挿入管16の外径よりも多少大きく、例えば、数%〜数10%程度大きく設定することが好ましく、同様に、アーム部32の内面32aの内径は、対象となる挿入管16の外径よりも多少大きく、例えば、1.3倍〜2倍程度に設定することが好ましい。また、開口部38が弾性部材からなり、拡張することができる場合はこの限りではない。
【0041】
続いて、シリンジ12の押し子26を押し込むことにより、図2B、図3B及び図3Cに示すように、液剤Lが拡張流路44から各バルーン40内に圧送されて各バルーン40が拡張する。これにより、各バルーン40の先端によって挿入管16の外周面が挟持されて、アーム部32により囲繞される領域の中心Cに略一致した位置で位置決め保持されると同時に、液剤Lがノズル14の各吐出孔36から一挙に挿入管16に向けて吐出される。
【0042】
従って、吐出孔36から吐出された液剤Lが、挿入管16の外周面を伝いながら下降して挿入部20に到達し、液剤Lが挿入部20及びその周辺に適切に塗布され、隙間Gが確実に被覆され塞がれる。また、当該塗布具10の液剤Lは、例えば、上記のドレッシング剤と併用することもでき、そうするとドレッシング剤に生じるしわがあった場合でも菌が隙間Gから体内に侵入することが確実に防止される。
【0043】
例えば、液剤Lとして、シアノアクリレートを含有するシーラントを用いると、挿入部20及びその周辺部で該シーラントが固化するため、隙間Gを確実に塞ぐことができ、しかも挿入管16を挿入部20に対して固定することもできる。一方、液剤Lとして、例えば、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用いると、挿入部20及びその周辺部に該液剤Lが保持され、隙間Gを確実に塞ぐことができる。なお、該液剤を用いる場合には、上記のシーラントのように挿入部20周辺で固化することはないが、一般に、挿入管16と生体組織18との間に生じる隙間Gの幅は極めて狭いことから、所定の粘度からなる液剤Lであれば、固化しなくてもその表面張力によって確実に隙間Gを塞ぐことは可能である。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る塗布具10では、シリンジ12の貯液部22b内に充填された液剤Lをアーム部32の内面32aに開口する吐出孔36から挿入管16の外周面に向けて吐出し、挿入部20及びその周辺に液剤Lを塗布することにより、隙間Gを確実に被覆し、塞ぐことができる。従って、カテーテル等の挿入管16と生体組織18との間の挿入部20に形成される隙間Gに菌や汚れが侵入することを確実に防ぐことができ、該挿入部20での感染症や炎症の発生を予防することができる。
【0045】
ノズル14は、挿入管16を囲繞可能なアーム部32を有し、このアーム部32の内面32aに液剤Lの吐出孔36が形成されると共に、さらに、保持機構42が設けられている。従って、液剤Lの塗布時、アーム部32の内側で挿入管16を所定位置(例えば、アーム部32により囲繞される領域の中心Cに対応した位置)に位置決め保持しつつ、吐出孔36から液剤Lを確実に挿入管16の外周面に一挙に吐出することができ、高い操作性と確実な塗布とが可能となる。つまり、各吐出孔36がアーム部32の内面32aに形成され、且つ、保持機構42を構成するバルーン40が設けられることにより、アーム部32の内側(内部)に挿入管16を配置するだけで、液剤Lの塗布時には、挿入管16が確実に位置決め保持され、アーム部32により囲繞される領域内から抜け止めされた状態で、液剤Lを挿入管16の外周面に略均等に安定して吐出することができる。
【0046】
なお、液剤Lの吐出孔は、アーム部32の内面に設けられる吐出孔36に代えて又は併設して、図2B中のベース部30側の1つのバルーン40に2点鎖線で例示したように、吐出孔40aを各バルーン40の側面(又は先端面)に設けてもよい。このようにバルーン40に吐出孔40aを設けることで、アーム部32の構造が簡素化され、製造効率を向上させることができる。但し、バルーン40を液剤Lによって十分に拡張させるため、1つのバルーン40における全ての吐出孔40aの合計断面積は、拡張流路44の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0047】
ここで、保持機構42は、各バルーン40によってアーム部32により囲繞される領域の中心Cに略一致した位置に挿入管16を位置決め保持可能なセンタリング機構を構成しているため、アーム部32の内面32aに設けた各吐出孔36から挿入管16の外周面までの距離を略均等にすることができる。このため、液剤Lを挿入部20に対して一層均一に塗布することができる。勿論、保持機構42は、センタリング機構を構成しない構造であってもよく、挿入管16の保持位置は、当該塗布具10の仕様や用途によって適宜設定すればよい。
【0048】
挿入管16を位置決め保持する保持機構としては、アーム部32に設けた保持機構42に加えて、例えば、図3A中に2点鎖線で示す保持アーム43を設けてもよい。保持アーム43は、ベース部30から延びたフレームの先に、挿入管16を囲繞して保持するために、例えば、C字状、U字状又はV字状等に構成され、且つ挿入管16より僅かに大径の内径を持つリング状の保持部43aを有する。この保持アーム43を設けることにより、保持機構42と保持アーム43とで、挿入管16の軸方方向で2箇所を保持することができ、挿入管16の一層安定した位置決め保持が可能となる。なお、保持アーム43の保持部43aは、図3Aに示すようにアーム部32の上部ではなく、下部に設けてもよいが、吐出孔36からの液剤Lが挿入管16の外周面を伝って挿入部20に塗布されることから、図3Aに示すようにアーム部32の上部に設けることが好ましい。
【0049】
上記したように、当該塗布具10では、例えば、十分な粘度を持った液剤Lを塗布することから、シリンジ12から吐出される液剤Lは、バルーン40を十分に拡張可能な所定の高い圧力(液圧)を持っている。このため、保持機構42では、塗布具10の使用者がバルーン40を拡張させるために特別な操作をしなくても、アーム部32により囲繞される領域内に挿入管16を配置してシリンジ12の押し子26を押し込むだけで、該シリンジ12から供給される液剤Lの液圧によってバルーン40が確実に拡張し、自動的に挿入管16を位置決め保持することができる。
【0050】
なお、吐出孔36は、上記のように複数設けず、例えば、ある程度の大きさを持つ1つの吐出孔36のみであってもよいが、挿入管16の外周面に対してより均等に液剤Lを塗布するためには、アーム部32の周方向に略等間隔で均等配置された3つ以上の吐出孔36を設けることが好ましい。
【0051】
図2Aに示すように、ノズル14は、挿入管16をアーム部32により囲繞される領域内に挿入するための開口部38を有し、この開口部38を、当該塗布具10の先端方向、つまり軸線上に開口形成している。これにより、使用者は、塗布具10を挿入管16にセットする際、例えば、片手でシリンジ12部分を把持したまま、開口部38へと容易に挿入管16を通過させることができ、高い操作性を得ることができる。
【0052】
しかも、ノズル14では、開口部38を、アーム部32の内面32a側から外面側に向けて幅が拡がる傾斜面で形成している。これにより、開口部38からアーム部32により囲繞される領域内へと挿入管16を一層容易に挿入することが可能となると共に、一旦アーム部32の内側に配置された挿入管16の開口部38からの抜け止め機能も付与することができる。
【0053】
保持機構42を構成するバルーン40は、上記では4個設けた構成を例示したが、例えば、図4Aに示すように、アーム部32の内面32aに3個のバルーン40を略均等に配置した保持機構42aを備えるノズル14aとして構成してもよい。要は、バルーン40は、アーム部32の内側に配置された挿入管16を所定位置で位置決めし、保持することができるものであれば、例えば、図4Bに示すように、2個のバルーン40と、挿入管16の背面を受ける湾曲した受け面46aを有する支持台46を設けた保持機構42bを備えるノズル14bとして構成してもよい。受け面46aは、例えば、バルーン40と同様な弾性材料によって構成してもよい。
【0054】
図2B、図4A及び図4Bに示すノズル14、14a、14bのように、各バルーン40のうち、少なくとも1以上のバルーン40が、その拡張時、開口部38をある程度閉塞する位置に配置されていると、挿入管16のアーム部32の内側からの一層確実な抜け止めを行うことができる。すなわち、ノズル14、14a、14bでは、開口部38の両脇にバルーン40を設けたことにより、アーム部32の内側に挿入管16を配置する際には、バルーン40が収縮して開口部38を完全に開放した状態となる一方、アーム部32の内側で挿入管16を位置決め保持する際には、バルーン40が拡張して開口部38のアーム部32側がバルーン40によって一部閉塞され、挿入管16の抜け止めがなされる。
【0055】
ところで、当該塗布具10では、例えば、十分な粘度を持った液剤Lを塗布するため、シリンジ12から吐出される液剤Lは所定の高い圧力(抵抗)を発生することになる。そこで、ノズル14とシリンジ12との接続部について、図2に示される通常のテーパ嵌合構造(ルアーテーパ嵌合構造)以外にも、例えば、図5A及び図5Bに示されるルアーロック21を備えたルアーロック構造とすることも有効である。
【0056】
図5A及び図5Bに示すように、ルアーロック21は、シリンジ12の流出口22aの外周側に隙間23を有して配置された筒部25の内周面に形成された雌ねじ27と、ベース部30の基端側外周面に形成された雄ねじ29とから構成されている。シリンジ12側の雌ねじ27に対し、ノズル14側の雄ねじ29が螺合されることにより、シリンジ12とノズル14とをより確実に嵌合・締結することができる。
【0057】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る液剤塗布具50の斜視図である。この第2の実施形態に係る液剤塗布具50において、上記第1の実施形態に係る液剤塗布具10と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略し、以下同様とする。
【0058】
本第2の実施形態に係る塗布具50では、アーム部32により囲繞される領域内で挿入管16を位置決め保持するために、上記第1の実施形態の保持機構42に代えて、保持機構52を備えたノズル15を有する。
【0059】
図6及び図7Aに示すように、保持機構52は、アーム部32の内面32aを覆うように該内面32aに沿って張り渡され、弾性変形可能な薄い膜体(シート)54を備える。膜体54は、図7Aに示す平面視で開口部38の傾斜面に沿って形成された凹部56と、凹部56の底部中心からアーム部32により囲繞される領域の中心Cに向かって延びたスリット58と、スリット58の奥部が連通し、前記中心Cを囲むように形成された保持孔(孔部)60とを有する。
【0060】
すなわち、膜体54は、アーム部32の内面32aにおいて、挿入管16の軸線方向と交差(本実施形態では、直交)する面上に設けられ、スリット58は、開口部38側が開口し、開口部38とは反対側が保持孔60によって閉塞した行き止まりとなっている。従って、保持機構52では、図7Aに示す状態から、アーム部32の内側に挿入管16を配置する際には、開口部38から凹部56へと挿入管16を通過させ、さらに、スリット58を挿入管16の外周面で押し広げながら通過させることにより、図7Bに示すように、保持孔60内で挿入管16を位置決め保持することができる。
【0061】
膜体54の材質は、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマーを用いるとよい。また、膜体54の厚さは、例えば、0.1mm〜5mm程度が好ましく、スリット58の幅は、略0(ゼロ)から挿入管16の外径より小さい幅であればよく、また、保持孔60の直径は、スリット58の幅と同一以下で且つ挿入管16の外径以下であることが好ましい。但し、保持孔60の直径は、挿入管16の外径以上であってもよい。
【0062】
なお、図8に示すように、膜体54は、アーム部32の内面32aにおいて、吐出孔36よりも上方、つまりアーム部32の内側に挿入管16を配置した状態で、生体組織18に対して吐出孔36よりも離れた位置となるように設定されている。これにより、液剤Lは、吐出孔36から膜体54の下面側に吐出されるため、膜体54が邪魔にならず、液剤Lを挿入部20に確実に塗布することができる。
【0063】
そこで、ノズル15の上下を誤って反転させ、吐出孔36より膜体54が生体組織18側に配置されることを防止するため、アーム部32の上面に所定のマーク62(図6〜図7Bでは3個設置)を設け、該マーク62によってノズル15の正しい設置方向を使用者に通知することも有効である。マーク62は、例えば、印刷や刻設によって形成すればよい。
【0064】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る液剤塗布具70の斜視図である。
【0065】
上記第1(第2)の実施形態に係る塗布具10(50)では、ノズル14(15)をシリンジ12に対して着脱可能に構成していたが、この塗布具70では、図9に示すように、シリンジ12と略同構造からなるシリンジ72の先端に、上記のノズル14(14a、14b、15)と略構造からなるノズル74を一体的に設けて構成している。
【0066】
従って、当該塗布具70では、ノズル74をシリンジ72に装着する工程が不要となり、取り扱いが一層容易となる。さらに、ノズル74をシリンジ72に一体化したことにより、当該塗布具70の製造コストを低減することができる。
【0067】
図10Aは、本発明の第4の実施形態に係る液剤塗布具80の平面図であり、図10Bは、図10Aに示す液剤塗布具80の側面図である。
【0068】
この塗布具80は、図9に示す塗布具70のシリンジ72に代えて、貯液部82aを有する小型扁平な本体部82を有し、該本体部82の先端に貯液部82aから連通するノズル流路34を設けたノズル84が一体的に備えられている。本体部82の略中央部には、その上下面に扁平半球状に膨出形成された膨出部82bが設けられ、この膨出部82bの内側が貯液部82aとなっている。本体部82は、少なくとも貯液部82aを構成する膨出部82bが可撓性を有する樹脂製材料等によって形成される。
【0069】
従って、当該塗布具80では、使用者が本体部82を片手で把持した状態で、例えば親指と人差指とで図10B中の矢印Pに示すように、膨出部82b(貯液部82a)を押し潰す方向に押圧することにより、ノズル84の吐出孔36から液剤Lを吐出することができる。塗布具80ではシリンジが不要となることから、全体として一層コンパクト且つ低コストな構造とすることができ、取り扱い性をより一層向上させることができる。
【0070】
本発明は、上記の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0071】
例えば、上記各実施形態では、保持機構42、52として、アーム部32により囲繞される領域内で挿入管16を位置決めし、且つ固定・保持可能な構成を例示したが、当該保持機構は、アーム部32の内側で挿入管16を固定できなくても、使用者が安定して液剤Lを塗布できる程度に位置決め保持することができる構造であればよい。
【0072】
そこで、例えば、図11に示すように、ノズル14(14a、14b、15、74、84)に代えて、アーム部32の内面32aの対向面間に細径の糸90を交差するように複数本(図11では、2本)設け、各糸90の交点にマーク91を設置した保持機構92を備えるノズル94として構成することもできる。糸90としては、例えばノズル14と同様な樹脂等による合成繊維等の線材を用いるとよく、マーク91としては、糸90の一部を着色したものや、糸90よりも多少大径の部材を固着したもの等とするとよい。糸90は、マーク91がアーム部32の内円の略中心に配置されるように設置してもよいが、例えば、マーク91がアーム部32の内円の中心Cから多少後方にオフセットした位置となるように設置するとよい。これにより、ノズル94のアーム部32の内側には、2本の糸90が交差したことにより、所定の角度を持って開口部38側を指向した凹状部分(谷部)が形成され、該凹状部分で一層安定して挿入管16を位置決め保持することができる。
【0073】
また、アーム部32は、挿入管16の少なくとも一部を囲繞可能な形状であればよく、上記のリング形状(Cリング形状)以外にも、例えば、U字状、V字状や菱形状等、要は、挿入管16を適切に位置決めし、挿入部20に対して液剤Lを適切に塗布可能な形状であれば。換言すれば、アーム部32としては、挿入管16の少なくとも一部を囲繞でき、この挿入管16に対して液剤Lを円滑に吐出することができる構成であればよい。
【0074】
液剤塗布具10によって吐出・塗布する液剤Lとしては、上記したシアノアクリレートを含有するシーラントや、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し且つ十分な粘度を有した液剤以外であっても勿論よく、要は挿入部20周辺に塗布されることで固化し又は適度な粘度によって隙間Gを被覆し塞ぐことができるものであればよく、例えば、ポリエチレングリコールを主としたゲルや多糖ゲル等を用いてもよい。なお、当該塗布具によって塗布される液剤とは、塗布される状態で液体のものをいい、塗布された後、シーラントのように固化するものも当然に含むものとする。
【符号の説明】
【0075】
10、50、70、80…液剤塗布具 12、72…シリンジ
14、14a、14b、15、74、84、94…ノズル
16…挿入管 18…生体組織
20…挿入部 32…アーム部
36…吐出孔 38…開口部
40…バルーン 42、42a、42b、52、92…保持機構
54…膜体 58…スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に挿入する長尺状の挿入体の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部と、
前記挿入体を前記アーム部により囲繞される領域内の所定位置で位置決め保持する保持機構と、
前記挿入体の前記生体組織への挿入部を被覆するための液剤を前記挿入体の外周面に向けて吐出する吐出孔と、
を備えることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項2】
請求項1記載の液剤塗布具において、
前記液剤が充填される貯液部と、
前記アーム部及び前記保持機構及び前記吐出孔を有し、該吐出孔に前記貯液部からの前記液剤を流通可能なノズルと、
を備えることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項3】
請求項2記際の液剤塗布具において、
前記吐出孔は、前記アーム部に設けられ、
前記保持機構は、前記アーム部の前記吐出孔を避けた位置に設けられることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部は、前記挿入体の外径より大きな内径を有するリング形状であり、
前記保持機構は、前記アーム部により囲繞される領域の略中心に前記挿入体を位置決め保持するセンタリング機構を有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記保持機構は、前記アーム部の内面に設けられ、前記貯液部から供給される前記液剤の圧力によって拡張及び収縮可能なバルーンを有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項6】
請求項5記載の液剤塗布具において、
前記バルーンは、前記アーム部の内面に複数設けられると共に、拡張した各バルーンの先端で前記挿入体を挟持することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部は、前記挿入体を囲繞する方向の一部に、前記挿入体の外径が通過可能な開口部を有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項8】
請求項7記載の液剤塗布具において、
前記保持機構は、前記アーム部の内面において前記挿入体の軸線方向と交差する面上に張られた膜体を有し、
前記膜体は、前記開口部に向かって延びたスリットを有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項9】
請求項8記載の液剤塗布具において、
前記スリットは、前記開口部側が開口し、該開口部側とは反対側が閉塞しており、該閉塞している部分には、該スリットよりも幅広の孔部が設けられていることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項1】
生体組織に挿入する長尺状の挿入体の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部と、
前記挿入体を前記アーム部により囲繞される領域内の所定位置で位置決め保持する保持機構と、
前記挿入体の前記生体組織への挿入部を被覆するための液剤を前記挿入体の外周面に向けて吐出する吐出孔と、
を備えることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項2】
請求項1記載の液剤塗布具において、
前記液剤が充填される貯液部と、
前記アーム部及び前記保持機構及び前記吐出孔を有し、該吐出孔に前記貯液部からの前記液剤を流通可能なノズルと、
を備えることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項3】
請求項2記際の液剤塗布具において、
前記吐出孔は、前記アーム部に設けられ、
前記保持機構は、前記アーム部の前記吐出孔を避けた位置に設けられることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部は、前記挿入体の外径より大きな内径を有するリング形状であり、
前記保持機構は、前記アーム部により囲繞される領域の略中心に前記挿入体を位置決め保持するセンタリング機構を有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記保持機構は、前記アーム部の内面に設けられ、前記貯液部から供給される前記液剤の圧力によって拡張及び収縮可能なバルーンを有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項6】
請求項5記載の液剤塗布具において、
前記バルーンは、前記アーム部の内面に複数設けられると共に、拡張した各バルーンの先端で前記挿入体を挟持することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部は、前記挿入体を囲繞する方向の一部に、前記挿入体の外径が通過可能な開口部を有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項8】
請求項7記載の液剤塗布具において、
前記保持機構は、前記アーム部の内面において前記挿入体の軸線方向と交差する面上に張られた膜体を有し、
前記膜体は、前記開口部に向かって延びたスリットを有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項9】
請求項8記載の液剤塗布具において、
前記スリットは、前記開口部側が開口し、該開口部側とは反対側が閉塞しており、該閉塞している部分には、該スリットよりも幅広の孔部が設けられていることを特徴とする液剤塗布具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−66006(P2012−66006A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215437(P2010−215437)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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