説明

液剤組成物

【課題】ホップエキスの苦味を改善した液剤組成物を提供する。
【解決手段】ホップエキス及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを配合することを特徴とする液剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、医薬部外品及び食品等の分野における液剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホップは催眠、鎮静、利尿、食欲増進、消化促進等様々な生理作用があり、医薬品・食品等に広く利用されてきた。
【0003】
ホップを含有する液剤には、通常ホップエキスが使用されているが、水溶液に溶かした場合に強い苦味が生じるという問題があった。この問題を解決する方法として、アセスルファムカリウムを配合する方法(特許文献1)、ミチヤナギとシソとを組み合わせて配合する方法(特許文献2)等が報告されている。しかしこれらの技術を使用しても、マスキング効果が十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−55074号公報
【特許文献2】特開2008−231008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、苦味を有するホップエキスを日常的に無理なく、多量に摂取することができるように、苦味をマスキングしたホップエキス配合液剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、意外にもポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを配合することにより、ホップエキスが溶解した際に生じる苦味が改善されることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)ホップエキス及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを含有することを特徴とする液剤組成物、又は
(2)ホップエキス1質量部に対して、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを0.01質量部以上配合することを特徴とする、(1)に記載の液剤組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ホップエキスの苦味が改善された極めて服用しやすい液剤組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるホップ(別名:ヒシュカ、セイヨウカラハナソウ)はクワ科の植物のホップ(Humulus lupulus)の果穂である。ホップはフムロン、ルプロン、コフムロン、コルプロン、クエルシトリン、α‐、β‐フムレン、ミルセンなどの成分を含有し、健胃、沈静、利尿などの作用を有する。ホップエキスは、前記ホップを通常の方法を用いて抽出することにより得られる。抽出溶媒として、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール、水等、もしくはその混合物を用いることが出来る。
【0010】
ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートは、塩基性高分子の一種で、ポリビニルアルコールとアセトアルデヒドが脱水反応し、一部残りのヒドロキシル基にエチルアミノ酢酸がエステル結合されたものである。一般に市販されており、コーティング剤、結合剤などとして主に医薬品分野で使用されている。水にはほとんど溶けないが酸性(pH5.8以下)の水溶液には溶ける性質を持つ。
【0011】
本発明における液剤組成物において、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートの配合量はホップエキス1質量部に対して0.001〜100質量部であり、好ましくは0.005〜50質量部であり、さらに好ましくは0.01〜10質量部である。この配合量により、ホップより生じる苦味を効果的に低減する液剤組成物を提供することができる。
【0012】
本発明における液剤組成物のpHは、特に限定されないが、好ましくは2.5〜7.0であり、より好ましくは3.0〜6.0であり、さらに好ましくは3.0〜4.5である。
【0013】
本発明の液剤組成物のpHを上記範囲に保つために、必要に応じて有機酸等のpH調整剤を配合することができる。また、その他の成分として、ビタミン類、他のミネラル類、アミノ酸及びその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリー等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、甘味料等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0014】
本発明の液剤組成物は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、更に精製水を加えて容量調整し、必要に応じてろ過、殺菌処理を行うことにより本発明の液剤組成物を得ることができる。
【0015】
本発明の液剤組成物は、内服液剤組成物であり、ドリンク剤、シロップ等の医薬品及び医薬部外品の他、健康飲料、茶飲料、スポーツドリンク等の食品領域における各種飲料として提供することができる。
【0016】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明をより詳細に説明する。
<実施例>
(1)苦味の評価
精製水にホップエキス(松浦薬業(株))200mg又は400mgを溶かし、その溶液に表1〜3に示す配合量のポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート又はポピドンを添加・溶解させた。さらに精製水を加えて全量100mLとし、塩酸及び水酸化ナトリウムでpH3〜4.5に調整した。各試験液をガラスビンに充填後殺菌し、表1〜3に示す実施例1〜8及び比較例1〜6の液剤組成物を得た。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
【表3】

【0020】
<試験例>
各液剤組成物約10mLを5秒間口に含んだ時に感じる苦味の最大値について、成人男女からなるパネルにより評価した。評価方法は、以下のスタンダードに対する相対評価とした。
【0021】
スタンダードは、0.006、0.012、 0.020、 0.031、0.050mM 硫酸キニーネとした。各濃度の硫酸キニーネを服用した際の苦味をそれぞれ苦味強度1〜5に設定し、「0.006mMよりも苦味が弱い」場合を苦味強度0、「0.050mMよりも苦味が強い」場合を苦味強度6に設定した。
【0022】
6名の評価結果の平均値を表4に、5名の評価結果の平均値を表5に,2名の評価結果の平均値を表6に示す。
【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
【表6】


比較例1のホップエキス配合液剤では強い苦味が認められたが、実施例1のようにポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを添加することで苦味が顕著に抑制された。比較例2において添加したポピドンでは十分な苦味抑制効果が認められなかった。ホップエキス1質量部に対してポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを0.01質量部以上含有させることにより苦味が顕著に抑制された(実施例2〜5)。pH3.0〜4.5の範囲で苦味が顕著に抑制された(実施例6〜8)。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明により、ホップエキスにより生じる苦味が改善された、極めて服用しやすい液剤組成物を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップエキス及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを配合することを特徴とする液剤組成物。
【請求項2】
ホップエキス1質量部に対して、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを0.01質量部以上配合することを特徴とする、請求項1に記載の液剤組成物。

【公開番号】特開2011−148777(P2011−148777A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283968(P2010−283968)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】