説明

液化ガスの液面検知装置及び凍結保存容器

【課題】容器内の低温液化ガスに熱が伝わることを抑制し、低温液化ガスの蒸発量を抑えることのできる液化ガスの液面検知装置を提供する。
【解決手段】低温液化ガスの液面を検知する液面検知部を有するプラスチック光ファイバ21のケーブルを鞘管20内に収納する。鞘管20は、前記低温液化ガスの液相中に挿入される下部鞘管20aと、前記低温液化ガスの気相中に配置される上部鞘管20bと、前記低温液化ガスの液面の最高位より上方の気相中で上部鞘管20bの上部と下部鞘管20aの下部との間に設けられる屈曲管部20cとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスの液面検知装置及び凍結保存容器に係り、詳しくは、断熱容器内に貯留された低温液化ガスの液面を検知するための液面検知装置及び該液面検知装置を用いた凍結保存容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、培養、食品等の分野で各種試料を液化窒素のような低温液化ガスで冷却して凍結保存することが行われている。凍結保存用の断熱容器としては、給液管路、温度センサ、液面センサを備えた専用の凍結保存容器を使用して容器内の温度管理を自動的に行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、液面センサ(液面検知装置)としては、用途に応じて各種のものが用いられているが、近年は、安価に提供できるものとして、光ファイバセンサを用いた液面検知装置が多用されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−249309号公報
【特許文献2】特開2002−131115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された凍結保存容器は、容器自体に配管や配線が接続されているため、大規模で定置式の施設には有効であるが、小規模な施設ではコスト的に問題があり、持ち運びへの対応は困難であった。このため、持ち運びにも対応できるように、容積が数リットル乃至数十リットル程度のボトル状の断熱容器を使用して試料を凍結保存することが行われている。このような持ち運び可能な容器を使用する場合、特許文献1に記載されているような液面センサを装着することができないため、容器の全重量を計測して液量を算出したり、容器内に適宜な液面検出器、例えば、特許文献1に示されるような光ファイバセンサを挿入して液量を確認するようにしている。
【0004】
容器の重量を計測する方法は、液量を連続的に監視できる利点は有するものの、精密な測定を行えるものは一般に高価であり、コスト的に問題となる。一方、光ファイバセンサは、比較的安価な構成とすることができるが、センサ下部の液面検知部を低温液化ガス中に挿入しなければならないため、光ファイバセンサからの熱侵入によって低温液化ガスの蒸発量が増加するという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、容器内の低温液化ガスに熱が伝わることを抑制し、液化ガスの蒸発量を抑えることのできる液化ガスの液面検知装置及びこの液面検知装置を用いた凍結保存容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の液面検知装置は、断熱容器内に貯留した低温液化ガスの液面を検知する液面検知部を有する液面検出手段のケーブルを鞘管内に収納し、該鞘管を前記断熱容器内に挿入して液面を検知する液面検知装置において、前記鞘管は、前記低温液化ガスの液相中に挿入される下部鞘管と、前記断熱容器内の気相中に配置される上部鞘管と、前記低温液化ガスの液面の最高位より上方の気相中で前記上部鞘管の上部と前記下部鞘管の下部との間に設けられる屈曲管部とを有していることを特徴としている。
【0007】
前記断熱容器は、外槽と内槽との間に断熱槽を有し、前記内槽は、円筒状の容器本体と、該容器本体の上部に上方が縮径する円錐部を介して連設され、前記容器本体より小径の円筒状に形成されたネック部と、該ネック部の上端に設けられた開口部と、該開口部に装着される蓋部材とを有するとともに、前記下部鞘管が前記容器本体内に配置され、前記上部鞘管が前記ネック部内に配置されるとともに、前記屈曲管部が前記円錐部の内周壁に沿って屈曲しているものでも良く、前記上部鞘管と前記下部鞘管とを前記断熱容器の軸線に対してそれぞれ平行に設けるとともに、前記上部鞘管の容器内側面と前記下部鞘管の容器外側面との距離を前記ネック部の内径より小さくすると好適で、前記鞘管は、その上端部が前記開口部の上端に係止して前記断熱容器に保持することもできる。
【0008】
また、前記蓋部材は、前記ネック部内に挿入されるプラグ部を有しており、該プラグ部の外周には、該プラグ部を前記ネック部に挿入したときに、ネック部内周面との間に前記鞘管を挿通可能な複数の凹溝が軸線方向に設けられていると良い。
【0009】
さらに、前記液面検出手段は、プラスチック光ファイバで形成されていても良く、前記ケーブルの外周と前記鞘管の内周との間の隙間を、液面の最高位より上方で封止することもできる。
【0010】
また、前記鞘管は、前記液面検知部に対応する位置の周壁に通孔を有していても良く、液面の最高位より上方の気相部の温度を検出する温度センサを備えることもでき、前記下部鞘管及び前記屈曲管部が金属製であり、前記上部鞘管が非金属製であっても良い。さらに、前記断熱容器が凍結保存容器であって、前記液化ガスが液化窒素であると好適である。
【0011】
また、本発明の凍結保存容器は、上述の液化ガスの液面検知装置を使用した凍結保存容器であって、前記鞘管の上部に前記開口部の上端に係止して前記蓋部材の外方に突出する係止管部を設けるとともに、前記断熱容器の外部に液面表示部を有する液面検知装置の本体部を設置し、前記係止管部の外端から引き出された前記ケーブルを前記本体部に接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液面検知装置は、液相中に挿入される下部鞘管と気相中に配置される上部鞘管との間の気相中に屈曲管部を設けることにより、鞘管全体を直管で形成した場合に比べて気相部分の鞘管を長くすることができ、熱輸送量を減少させることができるので、熱侵入による低温液化ガスの蒸発量を抑えることができる。また、屈曲管部を容器の円錐部に沿って屈曲させることにより、凍結保存試料等の被凍結物を断熱容器内に出し入れする際の邪魔になることがなくなる。
【0013】
さらに、液面センサをプラスチック光ファイバにすることにより、鞘管の屈曲形状に沿って鞘管内にプラスチック光ファイバを損傷させることなく容易に収容させることができ、加工に要するコストを減少させることができる。また、ケーブルの外周と鞘管の内周との間を、液面の最高位より上方で接着剤等で封止することにより、ケーブルと鞘管と間の空隙を通って熱が伝わることを防止できる。さらに、鞘管周壁の液面検知部に対応する位置に通孔を設けておくことにより、液面検知部の状態を容易に確認できる。また、気相部の温度を検出可能な温度センサを設けておくことにより、容器内の状態をより確実に知ることができる。さらに、上部鞘管を非金属性とすることにより鞘管の断熱性を向上できる。
【0014】
加えて、前述の液面検知装置を、各種試料を凍結保存する凍結保存容器に適用することにより、液化窒素の蒸発量を極力抑えて試料の凍結保存を良好に行うことができる。さらに、凍結保存試料を出し入れする際に、鞘管を容器内に残した状態で取り出すことが可能となるので、鞘管の温度上昇を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1乃至図5は本発明の液面検知装置を備えた凍結保存容器の一形態例を示すもので、図1は凍結保存容器の断面正面図、図2は図1のII−II断面図、図3は液面検知装置の要部断面図、図4は液面センサの要部説明図、図5は凍結保存容器の正面図である。
【0016】
この凍結保存容器10は、外槽11と内槽12との間に断熱層を形成した断熱容器であって、内槽12は、円筒状の容器本体13と、該容器本体13の上部に上方が縮径した円錐部14を介して連設されたネック部15とが一体的に形成されている。外槽11は、断熱材を介して前記容器本体13を収容する円筒部11aと、前記ネック部15を収容する上方が縮径した縮径部11bとが一体に形成されると共に、縮径部11bの上端部と、前記ネック部15の上端部とが溶着されて外槽11と内槽12とが連結される。また、縮径部11bの上面には一対の把手11c,11cが突設されている。
【0017】
前記外槽11の上端部を溶着したネック部15の上端開口15aは、蓋部材16が着脱可能に嵌着され、該蓋部材16は、外槽11の上部に着脱可能に設けられるキャップ17に覆われている。また、凍結保存容器10内には、容器本体13内に貯留した液体窒素の液面を検知する液面検知装置18が挿入されている。
【0018】
蓋部材16は、容器本体13より小径のネック部15内に挿入される断熱材からなるプラグ部16aと、該プラグ部16aの上部に設けられてネック部15の上端開口15aを閉塞する蓋部16bとを備えている。プラグ部16aは、ネック部15の内径よりも僅かに小径の略円筒状に形成され、容器軸線方向に連続する6個の凹溝16cが外周側に開口した状態で周方向に等間隔に設けられている。凹溝16cの1つには、前記液面検知装置18が挿入され、他の5つには、被凍結保存物を容器本体13内に保持する保持部材19がそれぞれ挿入され、蓋部16bには、液面検知装置18を挿通させる開口部16dが形成されている。
【0019】
キャップ17は、外槽11の上部開口部を囲繞して設けられる円形の固定部17aと、該固定部17aの上部に着脱可能に嵌着されるキャップ部17bとを備え、該キャップ部17bには、前記液面検知装置18を挿通させる開口17cが形成されている。
【0020】
液面検知装置18は、鞘管20内に長さの異なる4組のU字タイプの液面検出手段であるプラスチック光ファイバ21と1つの温度センサである熱電対(図示せず)とを収容して構成されている。鞘管20は、前記液化窒素の液相中に挿入される下部鞘管20aと、前記内槽12内の気相中に配置される上部鞘管20bと、前記液化窒素の液面の最高位より上方の気相中で上部鞘管20bの上部と下部鞘管20aの下部との間に設けられる屈曲管部20cとを有している。
【0021】
下部鞘管20aは、容器本体13内に配置され、上部鞘管20bがネック部15内に配置されたプラグ部16aの凹溝16c内に配置されると共に、屈曲管部20cが、円錐部14の内周壁に沿って屈曲している。また、上部鞘管20bは、断熱性能が金属に比べて高く、低温でも使用可能な非金属性の材料、例えばエポキシ樹脂やグラスファイバで形成され、下部鞘管20a及び屈曲管部20cは、曲げ加工、孔明け加工が容易な金属管、例えばステンレス管を曲げ加工して一体に形成されいる。
【0022】
そして、本形態例では、上部鞘管20bと下部鞘管20aとは、容器本体13の軸線L1に対してそれぞれ平行に設けるとともに、上部鞘管20bの容器内側面と下部鞘管20aの容器外側面との距離D1をネック部15の内径D2より小さくし、口径が小さなネック部15を通して容器本体13内に鞘管20を挿入可能な形状としている。
【0023】
さらに、上部鞘管20bの上端には、水平方向に屈曲された係止部20dが接続され、該係止部20dがネック部15の上端開口15aに係止されることにより、鞘管20が断熱容器10に保持されると共に、係止部20dの先端側は、蓋部材16の開口部16dとキャップ17の開口17cとを介して、断熱容器10の外側に突出し、別途設けられた液面検知装置本体部22に接続される。
【0024】
屈曲管部20cの上端部には、ガス抜き用の通孔20eが形成され、下部鞘管20aには、5段階で液面が検知できるように上下方向4箇所に検知用通孔20f,20g,20h,20iが形成されている。
【0025】
プラスチック光ファイバ21は、U字状に折り返され、U字部21aを液面検知部としたもので、U字部21aのクラッドを部分的に除去して構成されている。4組のプラスチック光ファイバ21は、それぞれU字部21aが前記鞘管20の下部鞘管20aに形成された各検知用通孔20f,20g,20h,20iにそれぞれ対応する位置に配置され、最も長いプラスチック光ファイバ21のU字部21aが最も下方に配置される検知用通孔20iの位置に、順に短くなるU字部21aが検知用通孔20h,20gの位置に、最も短くなるU字部21aが最上部の位置にある検知用通孔20fの位置にそれぞれ配置される。また、鞘管20に収納した前記熱電対は、前記屈曲管部20cに形成した通孔20eの近傍位置に先端の測温接点が配置される。
【0026】
また、図3に示されるように、鞘管20の上部鞘管20bの内周と、該上部鞘管20bに挿入される各プラスチック光ファイバ21のケーブル部分や熱電対のケーブル部分の外周との間は、接着剤A1が充填されてそれぞれ封止されている。
【0027】
保持部材19は、前記プラグ部16aの凹溝16cに挿入され、該凹溝16cから容器本体13内に突出する支持部19aと、該支持部19aの基端からネック部外周側に突出する摘み部19bと、前記支持部19aの先端に接続され、被凍結保存物を収容する網状のキャニスタ19cとを備えている。該キャニスタ19cは、蓋部材16を上端開口15aから取り外し、プラグ部16aをネック部15から抜き出し、前記鞘管20の上部鞘管20bを残した状態で、ネック部15から抜き差し可能な形状及び大きさに形成される。
【0028】
液面検知装置本体部22は、プラスチック光ファイバ21や熱電対にそれぞれ対応した発光部、受光部、制御回路などを収納したものであって、図5に示されるように、プラスチック光ファイバ21等を収容した柔軟な連結管23が接続部24を介して上部鞘管20bに接続され、装着用ストラップ25により凍結保存容器10に吊されるとともに、電源ケーブル26,信号ケーブル27が連結されている。液面検知装置本体部22では、液面検知装置18で検知した液面が液晶部分に表示され、熱電対で測定された温度は、温度表示部22aに表示される。
【0029】
4組のプラスチック光ファイバ21により検知された液化窒素の液面が、検知用通孔20iよりも下方の領域、検知用通孔20i,20h間の領域、検知用通孔20h,20g間の領域、検知用通孔20g,20f間の領域、検知用通孔20fよりも上方の領域のどの領域にあるかを5段に配置された矩形内のLED22bが液面位置に対応して点灯することにより表示される。また、液面低下,温度異常,液面センサ断線,温度センサ断線等に応じて4つの小さなLED22cがそれぞれ点灯するようになっている。さらに、これらの情報は、信号ケーブル27を介して外部の制御装置などに伝達される。
【0030】
上述のように形成された凍結保存容器10は、容器本体13に液化窒素を所定量導入し、液面検知装置18の下部鞘管20aと屈曲管部20cと、保持部材19の被凍結保存物を収容したキャニスタ19cをそれぞれ容器本体13内に挿入する。このとき、上端開口15aの上面に、プラグ部16aの各凹溝16cに対応する周方向溝を設けておくことにより、鞘管20や保持部材19を所定位置に配置することができる。
【0031】
そして、プラグ部16aの各凹溝16cに液面検知装置18の鞘管上部鞘管20bと、各保持部材19の支持部19aとを挿入させながら、プラグ部16aをネック部15に装着する。プラグ部16aの上面に蓋部材16の蓋部16bを装着し、蓋部16bの開口部16dから係止部20dを突出させるとともに、該係止部20dを上端開口15aに係止させて鞘管20を断熱容器10内に保持させる。さらに、前記液面検知装置18の係止部20dをキャップ17の開口17cから突出させた状態で、固定部17aにキャップ部17bを嵌着する。液面検知装置本体部22は、装着用ストラップ25を外槽11の縮径部11bに掛けることにより、冷凍保存容器10の前面に設けられる。
【0032】
凍結保存容器10に収容された液化窒素は、凍結保存時間が長くなるに連れて自然蒸発することにより、液面が低下する。この液化窒素の液面変化は、各プラスチック光ファイバ21のU字部21aが液相中にあるときと気相中にあるときとの戻り光の変化を利用して検出される。すなわち、光ファイバ21のU字部21aが液相中にあると、ここから光が拡散し、受光部で検出する光量に変化が生じるため、液面を検知することが可能となる。これにより、各U字部21aに対応した検知用通孔20f,20g,20h,20iに対して、液化窒素の液面が、検知用通孔20iよりも下方の領域、検知用通孔20i,20h間の領域、検知用通孔20h,20g間の領域、検知用通孔20g,20f間の領域、検知用通孔20fよりも上方の領域のいずれかにあるかが液面検知装置本体部22のLED22bに示される。
【0033】
さらに、気相領域の温度が前記熱電対により検出され、液面検知装置本体部22の温度表示部22aに表示される。容器内の気相温度を監視することにより、凍結保存容器10内の温度が上昇して被凍結保存物を適正に凍結保存し難い状態になったこと、例えば、凍結保存容器10の断熱層に異常が発生して熱侵入が生じたことを検知することができ、異常な温度上昇に対して迅速な対応が可能となる。
【0034】
被凍結物を凍結保存容器10から取り出す際には、固定部17aからキャップ部17bを、ネック部15から蓋部材16をそれぞれ順次取り外し、プラグ部16aをネック部15から抜き取る。次いで、摘み部19bを持って、保持部材19の支持部19aを移動,回転させて、キャニスタ19cとネック部15の位置を合わせて、キャニスタ19cをネック部15から引き抜いて被凍結物を取り出す。
【0035】
上述の液面検知装置18では、液化窒素の液相中に挿入される下部鞘管20aと気相中に配置される上部鞘管20bとの間の気相中に屈曲管部20cを設けることにより、鞘管全体を直管で形成した場合に比べて気相部分の鞘管を長くすることができ、熱輸送量を減少させることができるので、熱侵入による液化窒素の蒸発量を抑えることができ、試料の凍結保存を良好に行うことができる。また、屈曲管部20cを容器本体13の円錐部14に沿って屈曲させることにより、凍結保存試料等の被凍結物を断熱容器内に出し入れする際の邪魔になることがなくなる。
【0036】
さらに、液面センサとしてプラスチック光ファイバ21を採用することにより、鞘管20の屈曲形状に沿ってプラスチック光ファイバ21を損傷させることなく容易に挿入して鞘管内に収容させることができ、加工に要するコストを減少させることができる。
【0037】
また、プラスチック光ファイバ21のケーブルの外周と鞘管20の内周との間を、液面の最高位より上方で接着剤A1で封止することにより、ケーブルと鞘管20と間の空隙を通って熱が伝わることを防止できる。さらに、鞘管周壁に、液面検知部である各U字部21aに対応する位置に通孔をそれぞれ設けておくことにより、ガス抜き孔として機能し、誤検知を防止できる。また、プラスチック光ファイバ21の断線の有無を容易に確認できる。さらに、液面検知部の状態、すなわち、U字部21aが正規の位置にあるか否かを容易に確認できる。また、気相部の温度を検出する温度センサを設けておくことにより、容器本体13内の状態をより確実に知ることができる。
【0038】
さらに、曲げ加工や孔明け加工を行う下部鞘管20a及び屈曲管部20cを金属製とし、上部鞘管20bをエポキシ樹脂やグラスファイバ等の非金属製の断熱材とすることにより、鞘管の加工を容易に行えると共に、断熱性を更に向上できる。さらに、凍結保存試料を出し入れする際に、鞘管20を容器内に残した状態で取り出すことが可能となるので、鞘管20の温度上昇を回避することができる。
【0039】
なお、上述の形態例では、上部鞘管をエポキシ樹脂やグラスファイバ等で形成しているが、屈曲管部により熱輸送量を減少させることができることから、鞘管全体をステンレス管としても差し支えない。また、被凍結物は、液相域及び気相域のいずれに配置してもよい。
【0040】
さらに、本発明の液面検知装置は、上述のように凍結保存容器の液化窒素の液面を検知するものに限らず、液化窒素,液化アルゴン,液化ヘリウム,液化酸素等の各種低温液化ガスの貯留容器に適用することができ、鞘管の屈曲管部も容器の内壁に沿わせるものに限らず、容器の形状に応じて螺旋状やジグザグ状に形成することもできる。また、鞘管内に納める液面センサは、光ファイバ式のものに限らず、静電容量式、ダイオード式、ゼーベック効果を利用した熱電対式でも良い。さらに、光ファイバのセンサ部は、上述の形態例のように、U字状に形成したものに限らず、2本の光ファイバの終端にプリズムを配置するものや、光ファイバの終端を楔状に加工するもの、光ファイバの長さ方向に所定の間隔で溝(断面V字状,コ字状等)を刻んだもの、光ファイバの径を終端に向かうに連れて段階的に細くなるように加工したもの等でも良い。また、光ファイバは石英製でも良い。また、凍結保存容器などの無圧容器の液面検知に限らず、容器の開口や液面計の構造を適宜工夫することにより、高圧容器などにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の液面検知装置を適用した凍結保存容器の一形態例を示す断面正面図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】同じく液面検知装置の要部断面図である。
【図4】同じく液面センサの要部説明図である。
【図5】同じく凍結保存容器の正面図である。
【符号の説明】
【0042】
10…凍結保存容器、11…外槽、11a…円筒部、11b…縮径部、11c…把手、12…内槽、13…容器本体、14…円錐部、15…ネック部、15a…上端開口、16…蓋部材、16a…プラグ部、16b…蓋部、16c…凹溝、16d…開口部、17…キャップ、17a…固定部、17b…キャップ部、17c…開口、18…液面検知装置、19…保持部材、19a…支持部、19b…摘み部、19c…キャニスタ、20…鞘管、20a…下部鞘管、20b…上部鞘管、20c…屈曲管部、20d…係止部、20e…通孔、21…プラスチック光ファイバ、21a…U字部、22…液面検知装置本体部、22a…温度表示部、22b,22c…LED、23…連結管、24…接続部、25…装着用ストラップ、26…電源ケーブル、27…信号ケーブル、A1…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱容器内に貯留した低温液化ガスの液面を検知する液面検知部を有する液面検出手段のケーブルを鞘管内に収納し、該鞘管を前記断熱容器内に挿入して液面を検知する液面検知装置において、前記鞘管は、前記低温液化ガスの液相中に挿入される下部鞘管と、前記断熱容器内の気相中に配置される上部鞘管と、前記低温液化ガスの液面の最高位より上方の気相中で前記上部鞘管の上部と前記下部鞘管の下部との間に設けられる屈曲管部とを有していることを特徴とする液化ガスの液面検知装置。
【請求項2】
前記断熱容器は、外槽と内槽との間に断熱槽を有し、前記内槽は、円筒状の容器本体と、該容器本体の上部に上方が縮径する円錐部を介して連設され、前記容器本体より小径の円筒状に形成されたネック部と、該ネック部の上端に設けられた開口部と、該開口部に装着される蓋部材とを有するとともに、前記下部鞘管が前記容器本体内に配置され、前記上部鞘管が前記ネック部内に配置されるとともに、前記屈曲管部が前記円錐部の内周壁に沿って屈曲していることを特徴とする請求項1記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項3】
前記上部鞘管と前記下部鞘管とを前記断熱容器の軸線に対してそれぞれ平行に設けるとともに、前記上部鞘管の容器内側面と前記下部鞘管の容器外側面との距離を前記ネック部の内径より小さくしたことを特徴とする請求項2記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項4】
前記鞘管は、その上端部が前記開口部の上端に係止して前記断熱容器に保持されていることを特徴とする請求項2又は3記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項5】
前記蓋部材は、前記ネック部内に挿入されるプラグ部を有しており、該プラグ部の外周には、該プラグ部を前記ネック部に挿入したときに、ネック部内周面との間に前記鞘管を挿通可能な複数の凹溝が軸線方向に設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項6】
前記液面検出手段は、プラスチック光ファイバで形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項7】
前記ケーブルの外周と前記鞘管の内周との間の隙間を、液面の最高位より上方で封止したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項8】
前記鞘管は、前記液面検知部に対応する位置の周壁に通孔を有していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項9】
前記鞘管は、液面の最高位より上方の気相部の温度を検出する温度センサを備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項10】
前記下部鞘管及び前記屈曲管部が金属製であり、前記上部鞘管が非金属製であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項11】
前記断熱容器が凍結保存容器であって、前記液化ガスが液化窒素であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の液化ガスの液面検知装置。
【請求項12】
請求項2乃至11のいずれか1項記載の液化ガスの液面検知装置を使用した凍結保存容器であって、前記鞘管の上部に前記開口部の上端に係止して前記蓋部材の外方に突出する係止管部を設けるとともに、前記断熱容器の外部に液面表示部を有する液面検知装置の本体部を設置し、前記係止管部の外端から引き出された前記ケーブルを前記本体部に接続したことを特徴とする凍結保存容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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