説明

液化ガスタンクの内槽支持装置

【課題】 内槽を外槽に対して相対的に揺らすことなく横搭載運搬を可能にし、冷熱による内槽の熱収縮量を吸収し得る液化ガスタンクの内槽支持装置を提供する。
【解決手段】 内槽支持装置4を、内槽3の上側に突設され、先端部にばね収用室が設けられた第1柱状金具41と、内槽3の下側に突設された第2柱状金具42と、第1柱状金具41に摺動可能に外嵌され、ばね収用室に組込まれたばねにより上方に付勢される摺動筒44と、摺動筒44の外周に設けられた第1連結金具45に一端側が、外槽2の内壁の第1連結金具45より下位位置に設けられた第3連結金具47に他端側が連結された複数の第1断熱連結具48と、第2柱状金具42の外周に設けられた第2連結金具46に一端側が、外槽2の内壁の第2連結金具46より下位位置に設けられた第3連結金具47に他端側が連結された複数の第2断熱連結具49とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱用真空を保持する外槽の内部に、内部に液化ガス、例えば液体水素が充填される内槽を支持する液化ガスタンクの内槽支持装置の改善に係り、より詳しくは、トレーラ等による横積載運搬を可能にし、しかも据え付け後において、液体水素の充填により内槽が熱収縮しても、その熱収縮量を吸収し、内槽の熱収縮に起因する不具合を回避し得るようにした液化ガスタンクの内槽支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱用真空を保持する外槽と、極低温の液化ガスを収納する内槽とからなる二重殻断熱構成になる液化ガスタンクでは、液化ガスの蒸発量を少なくするために、内槽支持装置は外槽からの伝熱量を少なくする必要がある。また、内槽は液化ガスの冷熱により冷却されて熱収縮する為、熱収縮により生じる応力を緩和する機構が内槽支持装置に必要となる。そのため、繊維強化プラスチックからなるバンド状荷重支持体を用いると共に、ばねを用いた内槽支持装置により、外槽の中央部に内槽を支持するようにした断熱支持装置が公知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平8−28534号公報
【0003】
以下、この従来例に係る断熱支持装置を、この断熱支持装置を用いたクライオスタットの図4と、この断熱支持装置を示す図5を参照しながら説明する。
符号51は超電導コイルを示し、この超電導コイル51はヘリウム槽53内の液体ヘリウム52に浸漬されている。このヘリウム槽53は、このヘリウム槽53の側壁に設けられた取付座56に、後述する複数の断熱支持体55により支持されて、ヘリウム槽53を真空断熱する真空槽54内に収容されている。
【0004】
即ち、前記断熱支持体55の一端側は、図5に示すように真空槽54に設けられたフランジ58に取付けられてなる支持棒57に、ピン68を介して連結されている。また、支持棒57のピン68の反対側には、ナット62が螺着されることにより押さえ板60が取付けられており、この押さえ板60はフランジ58に取付けられた座61内に組込まれてなるばね59の弾発力を受けるように構成されている。
【0005】
そして、前記断熱支持体55の他端側は、ピン74を介してフック部材73に連結されており、このフック部材73のフック部73aは、前記取付座56に設けられたピン部72に掛止させるように構成されている。また、下部真空槽54bに設けられた穴の外側に設けられた溝に、フランジ58の下部真空槽54b側の面に接して真空槽54内の真空気密を保持するOリング63が嵌着されている。さらに、フランジ58に開けられた内穴に周設された溝に、支持棒57の外周に接して真空槽54内の真空気密を保持するOリング64が嵌着されている。なお、フランジ58、座61、ナット62等を囲ってなるものは断熱支持装置を保護するカバー65である。
【0006】
この従来例に係る装置は、下記の手順によって組立られる。即ち、ヘリウム槽53が吊り下げられている上部真空槽54aと下部真空槽54bとの組み合わせ後、この装置の取付部の穴から、断熱支持体55、支持棒57,ピン68,フック部材73およびピン74を組み合せたものを挿入する。そして、フック部材73を回転させてフック部73aをピン部72に引っ掛ける。その後、フランジ58、座61、ばね59、押さえ板60、ナット62およびOリング63、64を取付け、次いで、カバー65を取付ける。勿論、分解は以上の逆順で行われる。従って、この断熱支持装置によれば、ヘリウム槽53および真空槽54を組み立てた状態のままで着脱が可能で、断熱支持体55の交換時に、冷却装置全体を分解、再組立する必要がないため、メンテナンスが容易かつ安価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
周知のとおり、近年では地球温暖化の要因となる二酸化炭素の発生量を削減することができる燃料電池が脚光を浴びてきている。そのため、まだ設置件数は少ないが、燃料電池を搭載した自動車に、燃料となる液体水素を供給する水素ステーションが設けられるようになってきている。このような水素ステーションには、断熱用真空を保持する外槽と、この外槽の内部に断熱連結具により支持され、内部に液化ガスである液体水素が充填される内槽とからなる二重殻断熱構成になる液体水素タンクである液化ガスタンクが据え付けられている。このような液化ガスタンクは、設置コストの観点から、工場において製造すると共に組み立て、例えばトレーラ等に横向き搭載(一般に、縦長構成である。)して運搬し、設置すべき水素ステーションにおいて縦向きに据え付けるようにすることが好ましい。
【0008】
このような液化ガスタンクの内槽を、ばねを備えた上記従来例に係る断熱支持装置により外槽の内部に支持すれば、液体水素の冷熱(大気圧における沸点:20K)による内槽の熱収縮量を吸収するので、縦向きの内槽の熱収縮による引張力の発生により断熱支持装置が破損するような恐れがない。一方、工場から据え付け現場である水素ステーションまでの横向き運搬に際して、外槽に対して相対的に内槽がトレーラ等の急減速、急発進、および坂道走行時により前後進方向に揺れたり、右折左折走行により左右方向に揺れたり、また走行道路の凹凸により上下方向にも揺れたりするため、これらの加振力に対して収縮量が小さくて、かつ上記の内槽の熱収縮量を吸収できるコイルばねを選定しなければならない。しかし運搬時の加振力は熱収縮による引張力よりも大きいため、前記のようなコイルばねを選定することは不可能である。すなわち上記従来例に係る断熱支持装置を運搬時と液化ガスの使用時の両方で使用することは不可能である。
【0009】
また、上記従来例によれば、内槽に相当するヘリウム槽および外槽に相当する真空槽を組み立てた状態のままで断熱支持装置の着脱が可能な為、断熱支持体の交換時に、冷却装置全体を分解、再組立する必要がない。従って、工場から運搬するに際してばねのない運搬専用の支持装置で内槽を支持すれば、運搬時に生じる不具合を回避することが可能である。しかしながら、運搬専用の支持装置を用意する必要があり、運搬専用の支持装置の取外工事、正規の断熱支持装置の取付工事、長時間を要する真空排気工事を要するだけでなく、複数の断熱支持装置を用いる必要があるから、外槽に相当する真空槽自体の全体構成も、ばね取付け部の構造が複雑になるから、コスト高になるという経済上のデメリットもある。
【0010】
従って、本発明の目的は、トレーラ等による横積載運搬に際して、内槽が外槽に対して相対的に揺れるのを防止することができ、しかも据え付け後において、支持装置を交換するまでもなく、液化ガスの充填により内槽が熱収縮しても内槽の熱収縮量を吸収し、内槽の熱収縮に起因する不具合を回避することができる液化ガスタンクの内槽支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例に係る課題を解決するために、本発明に係る液化ガスタンクの内槽支持装置は、下記のように構成されている。即ち、本発明の請求項1に係る液化ガスタンクの内槽支持装置は、断熱用真空を保持する外槽2の内部に、極低温の液化ガスを収納する内槽3を支持する液化ガスタンクの内槽支持装置において、前記液化ガスタンクが据え付けられたとき、内槽3の上側になる一端側に突設され、先端部にばね収容室41aが設けられた第1柱状金具41と、内槽3の下側になる他端側に突設された第2柱状金具42と、第1柱状金具41に摺動可能に外嵌され、ばね収容室41aに組込まれたばね43により上方に付勢される摺動筒44と、摺動筒44の外周に設けられた第1連結金具45に一端側が、外槽2の内壁の第1連結金具45より下位位置に設けられた第3連結金具47に他端側が連結された第1断熱連結具48と、第2柱状金具42の外周に設けられた第2連結金具46に一端側が、外槽2の内壁の第2連結金具46より上位位置に設けられた第3連結金具47に他端側が連結された第2断熱連結具49とからなり、これら第1、2断熱連結具48,49はそれぞれ液化ガスタンクの径中心に対して放射状になるように複数個配設されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る液化ガスタンクの内槽支持装置では、内槽は第1断熱連結具と、第2断熱連結具とにより外槽の内部に支持されている。そして、液化ガスタンクが縦向きに据え付けられたときには、液化ガスタンクの径中心に対して放射状になるように配設された各第2断熱連結具の外槽の内壁側が、上位位置になるように傾斜している。
【0013】
従って、本発明の請求項1に係る液化ガスタンクの内槽支持装置によれば、例えば第1断熱連結具側が前進側に向けられて横向き状態で搬送される場合、即ち、トレーラ等の急減速時には第1断熱連結具により内槽の慣性力を受け止め、急発進時には第2断熱連結具により内槽の慣性力を受け止める。また、登り坂走行時の内槽の後方向の荷重は第2断熱連結具により、下り坂走行時の前方向の荷重は第1断熱連結具により受け止められる。さらに、右折左折走行による左右方向の揺れ、走行道路の凹凸による上下方向の揺れに起因して生じる荷重は第1,2断熱連結具の連携作用により受け止められる。
【0014】
さらに、本発明の請求項1に係る液化ガスタンクの内槽支持装置によれば、充填、払出しによる液化ガス量の増減の如何にかかわらず、液化ガスを含む内槽の重量は第2断熱連結具によって受け止められ、そして液化ガスの冷熱により内槽が熱収縮してもその熱収縮量は、第1柱状金具の先端部のばね収容室に組込まれたばねの伸縮によって吸収される。
そして、第1断熱連結具の一端側が第1連結金具を介して連結されている摺動筒がばねによって上方向きに付勢されているので、第1断熱連結具に設計範囲内の張力が付与され続ける。従って、内槽が熱収縮しても第1断熱連結具が緩むようなことがないから、第1断熱連結具によって内層を前後左右方向の所定位置に維持し続けることができる。勿論、内槽3の下位位置は、第2柱状金具の長さ及び径は内槽と比較して小さく熱収縮寸法も内槽と比較して僅かであるから、第2断熱連結具によって所期の高さ位置に維持し続けることができる。
【0015】
従って、本発明の請求項1に係る液化ガスタンクの内槽支持装置によれば、前記従来例に係る断熱支持装置のように、液化ガスタンクの内槽が外槽に対して相対的に揺れるようなことがなく、断熱支持装置の破損という不具合が生じるようなことがない。また、本発明の請求項1に係る液化ガスタンクの内槽支持装置によれば、上記従来例に係る断熱支持装置のように、運搬専用の支持装置を用意したり、運搬専用の支持装置の取外工事、正規の断熱支持装置の取付工事、長時間を要する真空排気工事をしたりする必要がなく、構成も簡単であるから、コスト的に有利になるという経済上の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る液化ガスタンクの内槽支持装置を、液化ガスが液体水素である場合を例として、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る内槽支持装置を用いて組立てた二重殻断熱構成になる液化ガスタンクの模式的縦断面図、図2は内槽が熱収縮していない場合の図1のA部における拡大断面図、図3は内槽が熱収縮している場合の図1のA部における拡大断面図である。
【0017】
図に示す符号1は、二重殻断熱構成になる液化ガスタンクを示す。この液化ガスタンク1は断熱用真空を保持し、一端側の底部付近に据え付け支脚2bが突設されてなる外槽2を備えている。そして、この外槽2の内部の中心部には、低温脆性をおこすことがなく、かつ機械的強度に優れた材料、例えばオーステナイト系ステンレス鋼等の材料から構成され、極低温の液化ガスである液体水素(大気圧における沸点:20K)を収納する内槽3が設けられている。そして、液体水素を収容するこの内槽3は、後述する構成になる内槽支持装置4によって支持されている。なお、前記内槽3の外周部を囲繞してなるものは、例えばアルミニウム箔とガラス繊維製布の積層体からなる断熱層3aである。
【0018】
前記内槽支持装置4は、液化ガスタンク1が据え付け支脚2bを介して据え付けられたとき、内槽3の上側になる一端側に突設されてなる第1柱状金具41と、内槽3の下側になる他端側に突設されてなる第2柱状金具42とを備えている。この第1柱状金具41の先端部には、上側に開口するばね収容室41aが設けられており、このばね収容室41aにコイルばね43が組込まれている。前記第1柱状金具41の先端部には、前記コイルばね43により上方に付勢され、コイルばね43の付勢力を受けるばね受け座44aに息抜き孔44bが開けられてなる摺動筒44が摺動可能に外嵌されている。なお、第1柱状金具41の先端部の外周面、または摺動筒44の内周面の何れか一方、または両面に低摩擦部材からなるコーティング層が形成されている。
【0019】
前記摺動筒44の外周には第1連結金具45が設けられると共に、外槽2の内壁2aの前記第1連結金具45の対応位置よりも下位位置に第3連結金具47が設けられている。
そして、これら第1連結金具45と第3連結金具47とに、例えば繊維強化プラスチック(以下、FRPという。)からなるバンド状断熱支持体48aを用いた第1断熱連結具48の端部のそれぞれが連結されている。また、前記第2柱状金具42の先端部の外周には第2連結金具46が設けられると共に、外槽2の内壁2aの前記第2連結金具46の対応位置よりも上位位置に第3連結金具47が設けられている。そして、これら第2連結金具46と第3連結金具47とに、FRPからなるバンド状断熱支持体49aを用いた第2断熱連結具49の端部のそれぞれが連結されている。
【0020】
この形態においては、第1断熱連結具48と第2断熱連結具49とは全く同構成、同寸法になるものであり、また第1柱状金具41と第1断熱連結具48、および第2柱状金具42と第2断熱連結具49とのなす角度θは、組立て時において何れも60度になるように設定されている。なお、第1断熱連結具48と第2断熱連結具49の構成、寸法は相違していても良く、また角度θについては60度でなければならないという理由はなく、例えば外槽2、内槽3等の寸法、形状や第1柱状金具41、第2柱状金具42等の長さ寸法によって適宜決定すれば良いものである。
【0021】
ところで、液化ガスタンク1の外槽2や内槽3は何れも製缶製品であるから高寸法精度を望むことができない。つまり、これら外槽2や内槽3の寸法精度は機械加工製品のそれに比較して遥に劣っている。従って、ペアとなる第1連結金具45と第3連結金具47、第2連結金具46と第3連結金具47の位置精度も良くなく、例えば引張に強くても、曲げに弱いバンド状断熱支持体48a、49aに曲げ力が作用し、第1断熱連結具48や第2断熱連結具49が損傷する恐れがある。そのため、第1断熱連結具48および第2断熱連結具49の両端の連結金具に連結するための連結ロッドは、図示省略しているが、相互に摺接する凹曲面と凸曲面とを有し、これら曲面に低摩擦部材からなるコーティング層が形成されてなるすりこぎ運動を許容する座金ユニットを介して連結金具に連結されている。
【0022】
これら第1断熱連結具48と第2断熱連結具49とは、液化ガスタンク1の径中心に対して放射状になるように、それぞれ3セットずつ設けられている。なお、本形態においては、これら第1断熱連結具48と第2断熱連結具49とは、それぞれ3セットずつ設けられているが、特に3セットずつでなければならない訳ではなく、例えば4セットずつ以上であっても良いので、上記形態に係る構成に限定されるものではない。
【0023】
ところで、前記コイルばね43の圧縮量は、液体水素の冷熱(大気圧における沸点:20K)による内槽3の熱収縮量を吸収すると共に、図3に示すように、内槽3が収縮しても摺動筒44に対して、例えば50〜100kg程度の付勢力を作用させ得るように考慮されている。そして、常温状態においては、図2に示すように、ばね収容室41aに組込まれているコイルばね43の上端が、第1柱状金具41の上端面に当接する摺動筒44の上底面の中心部に形成されてなるばね受け座44aに当接するように設定されている。これにより、常温時には勿論のこと、液体水素の冷熱(大気圧における沸点:20K)により内槽3が熱収縮しても、コイルばね43の付勢力が摺動筒44を介して第1断熱連結具48に伝達されるので、第1断熱連結具48に張力が付与され、第1断熱連結具48が緩むようなことがない。
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る液化ガスタンク1の内槽支持装置4の作用態様を説明する。
即ち、本発明の実施形態に係る液化ガスタンク1の内槽支持装置4では、内槽3は第1断熱連結具48と、第2断熱連結具49とにより第1柱状金具41と第2柱状金具42とを介して外槽2の内部の中央部に支持されている。そして、液化ガスタンク1が縦向きに据え付けられたときには、この液化ガスタンク1の径中心に対して放射状になるように配設された第1断熱連結具48の外槽2の内壁2a側が、下位位置になるように傾斜している。
また、液化ガスタンク1の径中心に対して放射状になるように配設された第2断熱連結具49の外槽2の内壁2a側が、上位位置になるように傾斜している。
【0025】
従って、本発明の実施形態に係る液化ガスタンク1の内槽支持装置4によれば、例えば第1断熱連結具48側がトレーラ等の運搬車両の前進側に向けられて横向き状態で搬送される場合、即ち、運搬車両の急減速時には第1断熱連結具48により内槽3の慣性力が受け止められ、急発進時には第2断熱連結具49により内槽3の慣性力が受け止められる。また、運搬車両の登り坂走行時の内槽3の後方向の荷重は第2断熱連結具49により、下り坂走行時の前方向の荷重は第1断熱連結具48により受け持たれる。さらに、運搬車両の右折左折走行による左右方向の揺れ、走行道路の凹凸による上下方向の揺れに起因して生じる荷重は第1,2断熱連結具48,49の連携作用により受け止められる。
【0026】
さらに、本発明の実施形態に係る液化ガスタンク1の内槽支持装置4によれば、充填、払出しによる液体水素量の増減の如何にかかわらず、液体水素を含む内槽3の重量は第2断熱連結具49によって支持され、そして液体水素の冷熱(大気圧における沸点:20K)により内槽3が熱収縮してもその熱収縮量は、第1柱状金具41の先端部のばね収容室41aに組込まれたコイルばね43によって吸収される。そして、第1断熱連結具48の一端側が第1連結金具45を介して連結されている摺動筒44がコイルばね43によって上方向きに付勢されているので、第1断熱連結具48に設計範囲内の張力が付与され続ける。従って、内槽3が熱収縮しても第1断熱連結具48が緩むようなことがないから、第1断熱連結具48によって内槽3は前後左右方向の所定位置に起立状態に維持され続ける。第2柱状金具の長さ及び径は内槽と比較して小さく熱収縮寸法も内槽と比較して僅かであるから、第2断熱連結具によって所期の高さ位置に維持し続けることができる。
【0027】
従って、本発明の形態に係る液化ガスタンク1の内槽支持装置4によれば、上記従来例に係る断熱支持装置のように、液化ガスタンク1の内槽3が外槽2に対して相対的に揺れるようなことがなく、内槽3は外槽2と一体に揺れるので、断熱支持装置の破損という不具合が生じるようなことがない。また、本発明の形態に係る液化ガスタンク1の内槽支持装置4によれば、上記従来例に係る断熱支持装置のように、運搬専用の支持装置を用意したり、運搬専用の支持装置の取外工事、正規の断熱支持装置の取付工事、長時間を要する真空排気工事をしたりする必要がなく、構成も簡単であるから、コスト的に有利になるという経済上の優れた効果がある。
【0028】
なお、以上の形態に係る液化ガスタンクの内槽支持装置においては、液体水素を収納する内槽を有する液化ガスタンクを例として説明した。しかしながら、本発明の技術的思想を、例えば液体空気、液体酸素、液体窒素、液体アルゴン、LNG等を収納する内槽を有する液化ガスタンクに対しても適用することができる。従って、上記形態に係る液化ガスタンクの構成に限定されるものではない。また、上記形態に係る液化ガスタンクの内槽支持装置は本発明の1具体例に過ぎないから、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由自在である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る内槽支持装置を用いて組立てた二重殻断熱構成になる液化ガスタンクの模式的縦断面図である。
【図2】本発明に係り、内槽が熱収縮していない場合の図1のA部における拡大断面図である。
【図3】従来例に係り、内槽が熱収縮している場合の図1のA部における拡大断面図である。
【図4】従来例に係る断熱支持装置を用いたクライオスタットの概略縦断面図である。
【図5】従来例に係る断熱支持装置の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…液化ガスタンク
2…外槽,2a…内壁,2b…据え付け支脚
3…内槽,3a…断熱層,
4…内槽支持装置
41…第1柱状金具,41a…ばね収容室
42…第2柱状金具
43…コイルばね
44…摺動筒,44a…ばね受け座,44b…息抜き孔
45…第1連結金具
46…第2連結金具
47…第3連結金具
48…第1断熱連結具,48a…バンド状断熱支持体
49…第2断熱連結具,49a…バンド状断熱支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱用真空を保持する外槽(2)の内部に、極低温の液化ガスを収納する内槽(3)を支持する液化ガスタンクの内槽支持装置において、前記液化ガスタンクが据え付けられたとき、内槽(3)の上側になる一端側に突設され、先端部にばね収容室(41a)が設けられた第1柱状金具(41)と、内槽(3)の下側になる他端側に突設された第2柱状金具(42)と、第1柱状金具(41)に摺動可能に外嵌され、ばね収容室(41a)に組込まれたばね(43)により上方に付勢される摺動筒(44)と、摺動筒(44)の外周に設けられた第1連結金具(45)に一端側が、外槽(2)の内壁の第1連結金具(45)より下位位置に設けられた第3連結金具(47)に他端側が連結された第1断熱連結具(48)と、第2柱状金具(42)の外周に設けられた第2連結金具(46)に一端側が、外槽(2)の内壁の第2連結金具(46)より上位位置に設けられた第3連結金具(47)に他端側が連結された第2断熱連結具(49)とからなり、これら第1,2断熱連結具(48),(49)はそれぞれ液化ガスタンクの径中心に対して放射状になるように複数個配設されてなることを特徴とする液化ガスタンクの内槽支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−57784(P2006−57784A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242212(P2004−242212)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】