説明

液化ガスローリー車遠隔監視システム

【課題】タンクローリー車を遠隔監視して液化ガス輸送に対する安全を確保する。
【解決手段】液化ガスローリー車遠隔監視システム1は、タンクローリー車2に搭載される車両搭載システムを備える。車両搭載システムは、圧力センサ17による測定値に基づいて警報設定値(基準値)を設定する基準値設定手段(制御部)と、圧力センサによる測定値が警報設定値を超えたときに異常と判定する判定手段(制御部)を備える。基準値設定手段は、圧力センサによる測定値が15分以上継続して0.15MPa(第1の値)以下であるときは、警報設定値を0.35MPa(第1の基準値)に設定し、圧力センサによる測定値が15分以上継続して0.50MPa(第2の値)以上であるときは、警報設定値を0.75MPa(第2の基準値)に設定する。警報情報は、ネットワークを介して送信され、遠隔地にあるPC7(出力手段)により出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(以下「LNG」という)や液化石油ガス(以下「LPガス」という)などの液化ガスを搬送する液化ガスローリー車のタンクの状態を遠隔監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスのひとつであるLNG(液化天然ガス)は、LNGを充填するためのタンクを搭載したLNGタンクローリー車により輸送されている。LNGは、爆発のおそれのあるいわゆる危険物であるため、タンク内のLNGの安全管理には、種々の発明が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、搬送されてサテライト基地に設置されるバルク容器(LNGが充填されるタンクの一種)の圧力等を、バルク容器の設置場所(サテライト基地)から離れた管理基地で監視するシステムが記載されている。この発明では、バルク容器に、流量センサ、圧力センサ、温度センサ、レベル(液位)センサ、振れセンサおよび洩れセンサを設け、バルク容器内のLNGの一定期間の使用量、圧力、温度、容量、地震、ガス洩れを含む監視項目について監視し、監視データを管理基地に送信することにより、管理基地における一元管理を実現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−133735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のバルク容器の遠隔監視システムは、サテライト基地に設置されたバルク容器の状態を遠隔監視するためのものであり、移動するタンクローリー車のタンクの状態を常に遠隔監視できるものではなかった。タンクローリー車は、危険物であるLNGを積んで走行するものであるから、地震などの突発的な災害発生時への対策を含めて、タンクの状態を常に遠隔監視できるシステムの登場が期待されていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、移動するタンクローリー車のタンクの状態を常に遠隔監視できるシステムを提供し、LNGなどの液化ガスの輸送に対する安全を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムは、液化ガスを搬送するタンクローリー車に設けられたタンク内の圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段による測定値が予め設定された基準値を超えたときに異常と判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果の情報(以下「判定結果情報」という)を所定時間ごとにネットワークを介して送信する情報送信手段と、を備えて前記タンクローリー車に搭載される車両搭載システムと、前記情報送信手段により送信された前記判定結果情報を前記ネットワークを介して受信して、記憶部に記憶する記憶手段と、前記記憶部に記憶された判定結果情報に基づいて判定結果を出力する出力手段と、を備えた管理側システムと、を含んで構成される液化ガスローリー車遠隔監視システムであって、前記車両搭載システムは、前記圧力測定手段による測定値に基づいて前記基準値を設定する基準値設定手段を備え、前記基準値設定手段は、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して第1の値以下であるときは、前記基準値を第1の基準値に設定し、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して前記第1の値より高い第2の値以上であるときは、前記基準値を前記第1の基準値より高い第2の基準値に設定することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、タンクローリー車のタンク内圧力が基準値を超えて異常な状態となっていないかについての情報を、出力手段が出力するので、出力手段によりタンクの状態を遠隔監視できる。さらに、タンクローリー車のタンク内圧力は、タンクに液化ガスが充填されている積込状態であるか、充填されていない空荷状態であるかによって変わるところ、本発明では、その圧力変化に基づいて、異常判定のための基準値を変更するので、常に適切な基準値に基づいてタンクの安全を監視することができる。
【0009】
ここで、本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムでは、前記車両搭載システムは、GPS信号を受信して前記タンクローリー車の位置情報を取得するGPS信号受信手段を備え、前記情報送信手段は、前記GPS信号受信手段が取得した位置情報を所定時間ごとにネットワークを介して送信し、前記記憶手段は、前記位置情報を前記ネットワークを介して受信して、前記記憶部に記憶し、前記出力手段は、前記記憶部に記憶された位置情報に基づいて前記タンクローリー車の位置を表示する構成とすることができる。
【0010】
これによれば、タンクローリー車の位置情報も出力手段により表示されるので、タンクローリー車の位置を特定することができる。
【0011】
また、本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムでは、前記記憶手段は、サーバコンピュータであり、前記出力手段は、前記サーバコンピュータに対してネットワークを介して通信可能に接続され、前記記憶部に記憶された情報を取得して表示可能な1以上のユーザー端末装置である構成とすることができる。
【0012】
これによれば、情報送信手段により送信された情報が、サーバコンピュータの記憶部に記憶されるため、直接ユーザー端末装置に送信されるよりも、ユーザー端末装置にかかる負担が少ない。
【0013】
また、本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムでは、前記車両搭載システムは、前記タンクローリー車における前記タンクが収納された後部機器室を開閉する開閉扉の開状態および閉状態を検知する扉開閉検知手段を備え、前記基準値設定手段は、前記扉開閉検知手段によって前記開閉扉が開状態であることが検知されているときは、前記圧力測定手段による測定値にかかわらず、前記基準値を前記第2の基準値に設定又は維持する構成とすることができる。
【0014】
液化ガスの荷卸しは、後部機器室の開閉扉を開いて加圧器を使ってタンクを加圧することにより行われるが、本発明によれば、扉開閉検知手段によって開閉扉が開状態であることが検知されているときは、異常判定のための基準値を第2の基準値に設定するので、液化ガスを荷卸しする際にタンク内圧力が急上昇して第1の基準値を超えても、異常と判定されることがない。
【0015】
また、本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムでは、電子メールを受信可能な1以上の端末装置をさらに備え、前記車両搭載システムは、前記端末装置のメールアドレスが記憶されるアドレス記憶部と、前記アドレス記憶部に記憶されたメールアドレスを宛先にして電子メールを送信する電子メール送信手段と、前記タンクローリー車における前記タンクが収納された後部機器室を開閉する開閉扉の開状態および閉状態を検知する扉開閉検知手段と、前記扉開閉検知手段が前記開閉扉の開状態を検知したときに、前記基準値設定手段が前記圧力測定手段による測定値にかかわらず前記基準値を前記第2の基準値に設定又は維持する第1のモードと、前記扉開閉検知手段が前記開閉扉の開状態を検知したときに、前記基準値設定手段が前記基準値を前記第2の基準値に設定することなく、前記電子メール送信手段が前記アドレス記憶部に記憶されたメールアドレスを宛先にして前記開閉扉が開状態である旨の扉開放情報を含む電子メールを送信する第2のモードとを切り替えるモード切替手段と、を備えている構成とすることができる。
【0016】
これによれば、モード切替手段により第2のモードに設定されているときは、扉開閉検知手段により開閉扉の開状態が検知されると、電子メールが端末装置に送信されるため、端末装置を、タンクローリー車による液化ガス輸送の関係者にもたせておくことにより、夜間などに車庫に格納されているタンクローリー車の開閉扉が不正侵入者により開かれた場合に、これらの関係者に対して、その事実を迅速に通知することができる。
【0017】
また、本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムでは、電子メールを受信可能な1以上の端末装置をさらに備え、前記車両搭載システムは、前記端末装置のメールアドレスが記憶されるアドレス記憶部と、前記判定手段が異常と判定したときに、前記アドレス記憶部に記憶されたメールアドレスを宛先にして、異常が発生した旨の警報情報を含む電子メールを送信する電子メール送信手段と、を備える構成とすることができる。
【0018】
これによれば、電子メールを受信可能な端末装置を、タンクローリー車による液化ガス輸送の関係者にもたせることにより、異常時には、これらの関係者に対して、電子メールで異常の発生を迅速に通知することができる。
【0019】
また、本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムは、液化ガスを搬送するタンクローリー車に設けられたタンク内の圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段による測定値が予め設定された基準値を超えたときに異常と判定する判定手段と、を備えて前記タンクローリー車に搭載される車両搭載システムと、電子メールを受信可能な1以上の端末装置と、を含んで構成される液化ガスローリー車遠隔監視システムであって、前記車両搭載システムは、前記端末装置のメールアドレスが記憶されるアドレス記憶部と、前記判定手段が異常と判定したときに、前記アドレス記憶部に記憶されたメールアドレスを宛先にして、異常が発生した旨の警報情報を含む電子メールを送信する電子メール送信手段と、を備えるとともに、前記圧力測定手段による測定値に基づいて前記基準値を設定する基準値設定手段をさらに備え、前記基準値設定手段は、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して第1の値以下であるときは、前記基準値を第1の基準値に設定し、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して前記第1の値より高い第2の値以上であるときは、前記基準値を前記第1の基準値より高い第2の基準値に設定することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、電子メールを受信可能な端末装置を、タンクローリー車による液化ガス輸送の関係者にもたせることにより、異常時には、これらの関係者に対して、電子メールで異常の発生を迅速に通知することができる。
【0021】
また、本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムを構成する車両搭載システムは、液化ガスを搬送するタンクローリー車に設けられたタンク内の圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段による測定値が予め設定された基準値を超えたときに異常と判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果の情報(以下「判定結果情報」という)を所定時間ごとにネットワークを介して他の装置に送信する情報送信手段と、を備えて前記タンクローリー車に搭載される車両搭載システムであって、前記圧力測定手段による測定値に基づいて前記基準値を設定する基準値設定手段を備え、前記基準値設定手段は、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して第1の値以下であるときは、前記基準値を第1の基準値に設定し、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して前記第1の値より高い第2の値以上であるときは、前記基準値を前記第1の基準値より高い第2の基準値に設定することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、タンクローリー車のタンク内圧力が基準値を超えて異常な状態となっていないかについての情報を、他の装置を用いて得ることができるので、他の装置を用いてタンクの状態を遠隔監視することができる。さらに、タンクローリー車のタンク内圧力は、タンクに液化ガスが充填されている積込状態であるか、充填されていない空荷状態であるかによって変わるところ、本発明では、その圧力変化に基づいて、異常判定のための基準値を変更するので、常に適切な基準値に基づいてタンクの安全を監視することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、タンクローリー車に搭載されたタンクの状態を、遠隔地にある出力手段により監視でき、しかも、タンクの状態の特性(積込状態、空荷状態)を考慮して、タンクの異常を示す基準値を自動的に変更することとしているので、常に適切な基準値に基づいてタンクの安全を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る液化ガスローリー車遠隔監視システムを示す概略構成図である。
【図2】同実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システムを示す概略ブロック図である。
【図3】液化ガスローリー車遠隔監視システムを構成する車載器が実行するメイン処理のフローチャートである。
【図4】同車載器が実行する警報設定値変更処理のフローチャートである。
【図5】同車載器が実行する警報メール送信処理のフローチャートである。
【図6】同車載器が実行するタイマ割込処理のフローチャートである。
【図7】液化ガスローリー車遠隔監視システムを構成するPC(ユーザー端末装置)が備える表示画面を示す図である。
【図8】別の画像が表示された同PC(ユーザー端末装置)が備える表示画面を示す図である。
【図9】タンク内圧力の測定値の遷移および警報設定値の遷移等を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る液化ガスローリー車遠隔監視システム1を示す概略構成図であり、図2は、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1を示す概略ブロック図である。実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1は、LNG(液化天然ガス)を充填可能なタンク4を搭載したタンクローリー車2を、遠隔地にあるPC(パーソナルコンピュータ)7にて監視するシステムである。
【0026】
図1に示すように、液化ガスローリー車遠隔監視システム1は、複数台のタンクローリー車2と、サーバ装置(サーバコンピュータに相当する)9と、PC(クライアントコンピュータであり、ユーザー端末装置に相当する)7と、携帯電話12を含んで構成されている。PC7とサーバ装置9は、インターネット14を介して通信可能となっており、管理側システムS2を構成している(図2参照)。携帯電話12は、移動体通信設備15に対して通信可能となっている。
【0027】
タンクローリー車2の後部機器室3には、LNGを充填するためのタンク4が収納されている。後部機器室3は、開閉扉により開閉可能とされている。開閉扉は、タンク4にLNGを充填したり、タンク4からLNGを放出したりする際に開かれる。
【0028】
タンク4には、タンク4内の圧力を測定するための圧力センサ17が取り付けられている。また、開閉扉には、開閉扉が開状態であるか閉状態であるかを検知するための扉リミットスイッチ18が取り付けられている。扉リミットスイッチ18は、開閉扉が開状態であるときONされ、開閉扉が閉状態であるときOFFされる。
【0029】
タンクローリー車2のキャビン5には、車載器20と、通信端末28としての携帯電話が設置されている。通信端末28は、車載器20に対して無線又は有線通信により接続されている。車載器20、通信端末28、圧力センサ17、及び扉リミットスイッチ18は、車両搭載システムS1を構成している(図2参照)。
【0030】
車載器20は、図2に示すように、制御部22と、制御部22に接続されるGPS受信部24、入力装置25、積置中スイッチ26を備えて構成されている。
【0031】
制御部22は、演算処理装置であるCPU22aと、CPU22aにより実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶したROM22bと、そのROM22b内に記憶される制御プログラムの実行に当たって各種のデータ等を一時的に記憶するためのワーキングメモリであるRAM22cが集積されて実装された制御基板を含んで構成されている。ROM22b内には、図3〜6にフローチャートで示すプログラムが制御プログラムの一部として記憶されている。また、後述する警報設定値(基準値に相当する)は、RAM22cに記憶される。
【0032】
GPS受信部24は、車載器20に内蔵されたGPS受信装置であり、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部22へ出力する。GPS信号には、タンクローリー車2の位置と現在時刻を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、制御部22は、タンクローリー車2の現在位置と現在時刻を算出することができる。
【0033】
入力装置25は、押しボタンスイッチやタッチパネルから構成されて、制御部22に対して所定の信号を入力するものである。車載器20のユーザーは、この入力装置25を利用して、車載器20を起動させたり、各種設定値の変更を行ったりする。
【0034】
積置中スイッチ26は、押しボタンスイッチから構成されて、後述する第1のモードと第2のモードを切り替えるためのものである。積置中スイッチ26がOFFされている間は、車載器20は第1のモードに設定され、積置中スイッチ26がONされている間は、車載器20は第2のモードに設定される。
【0035】
また、図2に示すように、車載器20の制御部22には、圧力センサ17、扉リミットスイッチ18、通信端末28が接続されている。したがって、制御部22には、圧力センサ17からタンク内圧力に関する信号が入力され、扉リミットスイッチ18から開閉扉の開閉状態に関する信号が入力されることとなる。また、車載器20は、通信端末28により、基地局などの移動体通信設備15と通信することが可能となっているため、移動体通信設備15を介して携帯電話12に電子メールを送信したり、移動体通信設備15などで構成される携帯電話網からインターネット14に接続して、サーバ装置9に種々の情報を送信したりすることが可能となっている。
【0036】
ここで、携帯電話12は、タンクローリー車2を用いたLNGの輸送に関係する者(例えば、タンクローリー車2を運送する運送会社の担当者や、複数の運送会社を利用してLNGの需要者にLNGを供給するLNG供給会社の担当者など。以下「関係者」ともいう。)が所持して利用するものである。
【0037】
また、車載器20からサーバ装置9に対して送信される種々の情報とは、圧力センサ17により測定されたタンク内圧力値の情報(以下「圧力情報」ともいう)、圧力センサ17により測定された圧力値が制御部22に設定された警報設定値を超して異常な状態となっていないかについての警報情報、GPS受信部24により受信されたGPS信号に基づいて計算されたタンクローリー車2の位置情報、扉リミットスイッチ18により検知された開閉扉の開閉状態についての情報(以下「扉開閉情報」という)、積置中スイッチ26により検知された積置中であるか否かについての情報(以下「積置中情報」という)、及び、制御部22のROM22bに記憶されている車載器20に固有のシリアル番号情報(車両を特定するための「車両識別情報」ともいう)等である。
【0038】
サーバ装置9は、図2に示すように、データベース(記憶部に相当する)10を備えている。サーバ装置9は、移動体通信設備15などで構成される携帯電話網やインターネット14により構成されるネットワーク(通信網ともいう)を介して、車載器20から送信された圧力情報、警報情報、位置情報、扉開閉情報、積置中情報、及びシリアル番号情報(車両識別情報)を受信して、データベース10(以下「DB10」という)に記憶する。
【0039】
PC7は、LNG供給会社におけるLNG輸送を管理する事務所(以下「管理事務所」ともいう)に設置されるものである。PC7には、図示を省略するがCPUおよび記憶装置が内蔵されており、記憶装置には、サーバ装置9のDB10に記憶された圧力情報、警報情報、位置情報、扉開閉情報、積置中情報、及び車両識別情報を、インターネット14を介して取得して、所定の表示形態(図8,9参照)で表示画面7a(図1参照)に表示する専用のアプリケーションがインストールされている。したがって、タンクローリー車2によるLNG輸送の管理者は、このPC7により、タンク内圧力、異常発生の有無、タンクローリー車2の位置、開閉扉の状態、積置中であるか否か、及び、どのタンクローリー車2であるかについて、監視することができる。
【0040】
次に、図3〜6に基づいて、車載器20の動作、すなわち、車載器20の制御部22が実行する処理について説明する。
【0041】
[メイン処理]車載器20のユーザーが入力装置25を操作して車載器20を起動させると、制御部22は、図3に示すメイン処理を実行する。メイン処理では、制御部22は、GPS信号受信処理(ステップS101)、圧力センサ読込処理(ステップS102)、警報設定値変更処理(ステップS103、図4参照)、および警報メール送信処理(ステップS104、図5参照)を繰り返し実行する。GPS信号受信処理(ステップS101)では、制御部22は、GPS受信部24によりGPS信号を受信してタンクローリー車2の位置を特定し、特定した位置情報をRAM22cの所定記憶域に格納する。また、圧力センサ読込処理(ステップS102)では、制御部22は、圧力センサ17から圧力検知信号を読み込んで、タンク4内の圧力を計測し、計測した圧力値をRAM22cの所定記憶域に格納する。
【0042】
[警報設定値変更処理]図4に示すように、警報設定値変更処理では、制御部22は、RAM22cの所定記憶域に格納した圧力測定値が、0.15MPa(メガパスカル)以下であるか否か判定し(S201)、0.15MPa以下でなければステップS205に進み、0.15MPa以下であれば、15分以上継続して0.15MPa以下であるか否か判定する(S202)。15分以上継続していない場合はステップS208に進み、15分以上継続している場合は、扉リミットスイッチ18がONされているか否か判定する(S203)。扉リミットスイッチ18がONされている場合はステップS208に進み、扉リミットスイッチ18がOFFである場合は、警報設定値を0.35MPaに設定する(S204)。ここで、警報設定値とは、タンク4(図1参照)からガス漏れの危険性がなく安全であると考えられる基準値である。車載器20の起動時の初期設定では、警報設定値は、0.75MPaに設定されている。
【0043】
ステップS205では、制御部22は、圧力測定値が0.50MPa以上であるか否か判定する(S205)。判定結果が、0.50MPa以上でなければステップS208に進み、0.50MPa以上であれば、15分以上継続して0.50MPa以上であるか否か判定する(S206)。そして、15分以上継続していない場合はステップS208に進み、15分以上継続している場合は、警報設定値を0.75MPaに設定する(S207)。
【0044】
ステップS208では、制御部22は、扉リミットスイッチ18がONされているか否か判定する(S208)。扉リミットスイッチ18がOFFである場合は処理を終え、扉リミットスイッチ18がONされている場合は、積置中スイッチ26がONされているか否か判定する(S209)。積置中スイッチ26がONされている場合は、タンクローリー車2の後部機器室3を開閉する開閉扉が開いている旨の警報情報を含む電子メール(以下「扉「開」警報メール」という)を、各関係者が所持する携帯電話12のメールアドレスを宛先として送信する(S210)。なお、このような処理を行うモードを第2のモードという。また、扉「開」警報メールには、タンクローリー車2の位置情報も添付される。また、各関係者が所持する携帯電話12のメールアドレスは、制御部22のRAM22cに記憶されている。
【0045】
一方、積置中スイッチ26がOFFである場合は、いま設定されている警報設定値が0.35MPaであるか否かを判定し(S211)、警報設定値が0.35MPaに設定されていれば警報設定値を0.75MPaに設定して(S212)処理を終え、警報設定値が0.35MPaに設定されていなければ既に警報設定値は0.75MPaに設定されているのでそのまま処理を終える。このような処理を行うモードを第1のモードという。
【0046】
[警報メール送信処理]図5に示すように、警報メール送信処理では、制御部22は、圧力センサ読込処理(ステップS101)でRAM22cの所定記憶域に格納した圧力測定値を、設定されている警報設定値と比較し、比較した結果をRAM22cの所定記憶域に格納する(S301)。圧力測定値が警報設定値よりも小さければ処理を終えるが、圧力測定値が警報設定値以上であった場合には、タンク内圧力が異常に上昇していてガス漏れの危険性がある旨の警報情報を含む電子メール(以下「警報メール」という)を、各関係者が所有する携帯電話12のメールアドレスを宛先として送信する(S302)。なお、警報メールには、タンクローリー車2の位置情報も添付される。
【0047】
[タイマ割込処理]上記メイン処理(図3参照)の実行中、制御部22は、図6に示すタイマ割込処理を10分ごとに実行する。図6に示すタイマ割込処理では、制御部22は、所定の情報をインターネット14を介してサーバ装置9に送信する所定情報送信処理を行う(S401)。ここで送信される所定の情報とは、圧力センサ17により測定されたタンク内圧力値の情報(圧力情報)、圧力センサ17により測定された圧力値が制御部22に設定された警報設定値を超して異常な状態となっていないかについての警報情報、タンクローリー車2の位置情報、扉リミットスイッチ18により検知された開閉扉の開閉状態についての情報(扉開閉情報)、積置中スイッチ26により検知された積置中であるか否かについての情報(積置中情報)、及び、車載器20に固有のシリアル番号情報(車両を特定するための車両識別情報)等である。インターネット14を介してこれらの情報を受信したサーバ装置9は、車両ごとにこれらの情報をDB10に逐次記憶していく。
【0048】
図7,8は、管理事務所に設置されたPC7の表示画面7aであり、PC7にインストールされた専用のアプリケーションを起動して、液化ガスローリー車を遠隔監視している様子を示している。PC7は、アプリケーションが起動されると、インターネット14を介してサーバ装置9のDB10に記憶された各種情報を取得し、図7に示す表示形態でPC7の表示画面7aに表示する。図7に示すように、表示画面7aには、圧力情報を表示する圧力表示部30、警報情報を表示する警報表示部31、位置情報を表示する位置表示部32、扉開閉情報を表示する扉開閉表示部33、積置中情報を表示する積置中表示部34が設けられている。
【0049】
より具体的に説明すれば、通常、LNG供給会社は、複数の輸送会社(運送会社)を利用して一定範囲内の需要者に対してLNGを輸送しているため、PC7の表示画面7aには、LNG供給会社が利用している輸送会社名35と、各タンクローリー車2の号車No.(ナンバー)36が表示されるとともに、号車No.(ナンバー)ごとに、圧力表示部30に圧力情報が表示され、警報表示部31に警報情報が表示され、位置表示部32に位置情報が表示され、扉開閉表示部33に扉開閉情報が表示され、積置中表示部34に積置中情報が表示される。これにより、タンクローリー車2から離れたLNG供給会社の管理事務所内において、LNG供給会社の管理者が、複数台のタンクローリー車2の状況を一元管理することが可能となっている。
【0050】
さらに、図7に示す表示画面7aにおいて、一台のタンクローリー車2を選択して、トレンド表示38をクリックすれば、図8に示すように、そのタンクローリー車2のタンク内圧力トレンドを表示したウィンドウ40が表示される。このタンク内圧力トレンドウィンドウ40では、サーバ装置9のDB10に蓄積記憶された圧力情報などに基づいて、6日前から現在までの圧力測定値の遷移をグラフで確認することができるとともに、後部機器室3を開閉する開閉扉の開閉状況の遷移についても確認することができる。
【0051】
次に、図9に基づいて、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1における特徴的構成である警報設定値の変更について、タンクローリー車2の一連の移動状況に沿って詳述する。なお、図9は、タンクローリー車2の一連の移動状況を横軸にとったタイミングチャートであり、aは警報設定値の遷移を示し、bは圧力センサ17により測定されたタンク内圧力の測定値の遷移を示し、cは開閉扉の開閉状況の遷移を示し、dは積置中スイッチ26のON/OFFの遷移を示している。
【0052】
まず、タンクローリー車2の一連の移動状況について説明すると、タンクローリー車2は、車庫から基地へ移動してLNGをタンク4に充填する積込作業を行い、一旦車庫に戻って待機する。この状況を積置中という。その後、車庫から客先へ移動してLNGをタンク4から降ろす荷卸作業を行い、再び車庫に戻ってくる。このような一連の移動をタンクローリー車2は繰り返している。そしてこのような一連の移動の中で、タンクローリー車2のタンク内圧力が異常に上昇するということは、積み込んでいるLNGがタンク4から漏れるおそれがあること意味する。そのため実施形態では、タンク内圧力を測定し、ガス漏れの危険性がないと考えられる値(警報設定値)を超えていないか判定するようにしている(図5に示すステップS301参照)。
【0053】
ここで、タンク4内にLNGを積み込んでいるとき(積込時という)と、LNGを降ろした後(空荷時という)とでは、ガス漏れの危険性がないと考えられる値は異なる。実施形態のタンク4では、図9にbで示すように、液化ガスをタンク4に充填するとき、タンク内圧力は、0.15MPa以下に低下し、以後タンク4から液化ガスを荷卸しするまで、タンク内圧力は0.15MPa以下に維持される。また、液化ガスを荷卸しする際には加圧器を用いてタンク4を加圧するため、液化ガスを荷卸しするときのタンク内圧力は、0.5MPaを超えて0.6MPa程度まで急上昇し、以後、タンク内圧力は、タンク4内に残るガスにより0.35〜0.5MPa程度に維持され、残ガスを脱いた後は0.15MPa〜0.35MPa程度に維持される。なお、図9に示すグラフ中、時間の経過に従ってタンク内圧力が徐々に上昇するのはLNGが自然に気化することによる圧力の上昇である。
【0054】
このように、タンク4内に液化ガスを積み込んでいるとき(積込時)は、タンク内圧力が0.15MPa以下となることから、実施形態では、タンク内圧力0.15MPa以下が15分以上継続したことに基づいて、タンク4は積込状態(LNGが充填されている状態)であると判断し、警報設定値を0.35MPaに設定することとしている(図4に示すステップS204参照)。また、液化ガスを荷卸しするとき(荷卸時)には、タンク内圧力が0.50MPaを超え、荷卸し後(空荷時)は、タンク内圧力が0.15〜0.50MPa程度となることから、実施形態では、タンク内圧力0.50MPa以上が15分以上継続したことに基づいて、タンク4は空荷状態(LNGが充填されていない状態)であると判断し、警報設定値を、0.75MPaに設定することとしている(図4に示すステップS207参照)。
【0055】
なお、タンク4には安全弁が設けられているが、安全弁は、積込時0.4MPa、空荷時0.8MPaを作動のための基準値としているので、警報を行うための警報設定値は積込時も空荷時も安全弁の作動のための基準値以下に設定されることとなり、実施形態では、安全弁を作動させることなく、警報が行われることとなる。
【0056】
さらに、実施形態では、図9にa,b,cで示すように、タンクローリー車2の後部機器室3(LNGタンク4が収納されている)を開閉する開閉扉が開いているとき(扉リミットスイッチ18がONであるとき)には、圧力測定値に関係なく、警報設定値を、0.75MPaに設定することとしている(図4に示すステップS212参照)。これは、荷卸時のタンク4加圧による圧力上昇が急であるため、測定値に基づいて警報設定値が空荷時の警報設定値(0.75MPa)に変更されるよりも前に、タンク内圧力が0.35MPa以上に上がってしまい、異常と判定されるのを回避するためである。なお、これにより、積込時にタンク内圧力が15分以上継続して0.15MPa以下となっても、開閉扉を閉めるまでは、警報設定値は0.35MPaに設定されないこととなる。
【0057】
また、実施形態では、LNGを積み込んだタンクローリー車2を車庫に保管している間の安全性を確保するため、積置中スイッチ26を設けており、図9にa,c,dで示すように、積置中スイッチ26をONしている間に、扉リミットスイッチ18がONされた場合(開閉扉が開かれた場合)は、不正侵入者により開閉扉が開かれた可能性があるので、警報設定値を0.75MPaに設定することなく、扉開放を知らせる警報メールを関係者に送信することとしている(図4に示すステップS210参照)。
【0058】
以上説明したように、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1は、タンクローリー車2に搭載される車両搭載システムS1(図2参照)と、管理側システムS2(図2参照)とを含んで構成される。車両搭載システムS1は、LNGを搬送するタンクローリー車2に設けられたタンク4内の圧力を測定する圧力センサ17(圧力測定手段)と、圧力センサ17による測定値が予め設定された警報設定値(基準値)を超えたときに異常と判定する判定手段(制御部22により構成される)と、判定手段による判定結果の情報(警報情報)を10分毎に移動体通信設備15などからなる携帯電話網及びインターネット14を介して送信する情報送信手段(通信端末28及び制御部22により構成される)とを備える。管理側システムS2は、情報送信手段により送信された警報情報(判定結果情報)を移動体通信設備15などからなる携帯電話網及びインターネット14(ネットワーク)を介して受信して、DB10(記憶部)に記憶するサーバ装置9(記憶手段、サーバコンピュータ)と、サーバ装置9に対してインターネット14(ネットワーク)を介して通信可能に接続され、DB10に記憶された警報情報を取得して警報の有無を表示可能なPC7(出力手段、ユーザー端末装置)とを備える。
【0059】
さらに車両搭載システムS1は、圧力センサ17による測定値に基づいて警報設定値を設定する基準値設定手段(制御部22により構成される)を備え、基準値設定手段は、圧力センサ17による測定値が15分以上継続して0.15MPa(第1の値)以下であるときは、警報設定値(基準値)を0.35MPa(第1の基準値)に設定し、圧力センサ17による測定値が15分以上継続して0.15MPa(第1の値)より高い0.50MPa(第2の値)以上であるときは、警報設定値を0.35MPa(第1の基準値)より高い0.75MPa(第2の基準値)に設定する。言い換えれば、車両搭載システムS1は、圧力センサ17による測定値に基づいてタンク4が積荷状態であるか空荷状態であるかを判定する状態判定手段(制御部22により構成される)と、状態判定手段が積荷状態であると判定したとき警報設定値を0.35MPa(第1の基準値)に設定し、状態判定手段が空荷状態であると判定したとき警報設定値を0.35MPa(第1の基準値)より高い0.75MPa(第2の基準値)に設定する基準値設定手段(制御部22により構成される)を備え、状態判定手段は、圧力センサ17による測定値が15分以上継続して0.15MPa(第1の値)以下であるときは、積荷状態であると判定し、圧力センサ17による測定値が15分以上継続して0.15MPa(第1の値)より高い0.50MPa(第2の値)以上であるときは、空荷状態であると判定する。
【0060】
よって実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1によれば、PC7(ユーザー端末装置)は、タンクローリー車2のタンク内圧力が警報設定値(基準値)を超えて異常な状態となっていないかについての情報を、サーバ装置9(サーバコンピュータ)を介して取得して表示画面7aに表示することができるので、タンク4の状態をPC7により遠隔監視できる。
【0061】
さらに、タンクローリー車2のタンク内圧力は、タンク4にLNGが充填されている積込状態であるか、充填されていない空荷状態であるかによって変わるところ、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1では、その圧力変化に基づいて、異常判定のための警報設定値(基準値)を変更するので、常に適切な警報設定値に基づいてタンク4の安全を監視することができる。言い換えれば、実施形態では、タンクローリー車2の移動特性(積込、荷卸し、空荷のサイクル)を考慮して、ガス漏れの危険性判断のための警報設定値を自動的に変更することとしているので、タンクローリー車2の安全を常に監視することができる。
【0062】
さらに、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1によれば、複数台のタンクローリー車2の状態を、遠隔地にあるPC7により一元して管理することができる。加えて、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1によれば、液面計などの他の計器類を設けることなく、圧力センサ17を用いたタンク内圧力の監視のみで、タンク4の状態(積荷状態か空荷状態か)を把握することができる(図9のb参照)。
【0063】
また、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1では、車両搭載システムS1(図2参照)は、GPS信号を受信してタンクローリー車2の位置情報を取得するGPS信号受信手段(GPS信号受信部24及び制御部22により構成される)を備え、情報送信手段(通信端末28及び制御部22により構成される)は、GPS信号受信手段が取得した位置情報を10分ごとに移動体通信設備15などからなる携帯電話網及びインターネット14(ネットワーク)を介して送信し、サーバ装置9(記憶手段、サーバコンピュータ)は、位置情報をネットワークを介して受信して、DB10(記憶部)に記憶し、PC7(出力手段、ユーザー端末装置)は、DB10に記憶された位置情報に基づいてタンクローリー車2の位置を表示する。
【0064】
よって、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1によれば、タンクローリー車2の位置情報もサーバ装置9(サーバコンピュータ)を介してPC7(ユーザー端末装置)が取得できるため、PC7を用いてタンクローリー車2の位置を特定することができる。
【0065】
また、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1では、車両搭載システムS1(図2参照)は、タンクローリー車2におけるタンク4が収納された後部機器室3を開閉する開閉扉の開状態および閉状態を検知する扉リミットスイッチ18(扉開閉検知手段)を備え、基準値設定手段(制御部22により構成される)は、扉リミットスイッチ18によって開閉扉が開状態であることが検知されているときは、圧力センサ17(圧力測定手段)による測定値にかかわらず、警報設定値(基準値)を0.75MPa(第2の基準値)に設定又は維持する。
【0066】
液化ガスの荷卸しは、後部機器室3の開閉扉を開いて加圧器を使ってタンク4を加圧することにより行われるところ、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1によれば、扉リミットスイッチ18(扉開閉検知手段)によって開閉扉が開状態であることが検知されているときは、異常判定のための警報設定値(基準値)を0.75MPa(第2の基準値)に設定するので、液化ガスを荷卸しする際にタンク内圧力が急上昇して、15分経過するより前に0.35MPa(第1の基準値)を超えても、異常と判定されることがない(図9参照)。
【0067】
また、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1は、電子メールを受信可能な携帯電話12(端末装置)をさらに備えて構成されており、車両搭載システムS1(図2参照)は、携帯電話12のメールアドレスが記憶されるRAM22c(アドレス記憶部)と、RAM22cに記憶されたメールアドレスを宛先にして電子メールを送信する電子メール送信手段(通信端末28及び制御部22により構成される)と、タンクローリー車2におけるタンク4が収納された後部機器室3を開閉する開閉扉の開状態および閉状態を検知する扉リミットスイッチ18(扉開閉検知手段)とを備える。さらに、車両搭載システムS1は、扉リミットスイッチ18が開閉扉の開状態を検知したときに、基準値設定手段(制御部22により構成される)が圧力センサ17(圧力測定手段)による測定値にかかわらず警報設定値(基準値)を0.75MPa(第2の基準値)に設定又は維持する第1のモードと、扉リミットスイッチ18が開閉扉の開状態を検知したときに、基準値設定手段が警報設定値を0.75MPa(第2の基準値)に設定することなく、電子メール送信手段がRAM22cに記憶されたメールアドレスを宛先にして開閉扉が開状態である旨の扉開放情報を含む電子メールを送信する第2のモードとを切り替える積置中スイッチ26(モード切替手段)を備えている。
【0068】
よって、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1によれば、積置中スイッチ26(モード切替手段)により第2のモードに設定されているときは、扉リミットスイッチ18(扉開閉検知手段)により開閉扉の開状態が検知されると、電子メールが、タンクローリー車2による液化ガス輸送の関係者が所持する携帯電話12(端末装置)に送信されるため、夜間などで車庫に格納されているタンクローリー車2の開閉扉が不正侵入者により開かれた場合には、これらの関係者に対して、その事実を迅速に通知することができる。
【0069】
また、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1は、電子メールを受信可能な携帯電話12(端末装置)をさらに備えて構成されており、車両搭載システムS1(図2参照)は、携帯電話12のメールアドレスが記憶されるRAM22c(アドレス記憶部)と、判定手段(制御部22により構成される)が異常と判定したときに、RAM22cに記憶されたメールアドレスを宛先にして、異常が発生した旨の警報情報を含む電子メールを送信する電子メール送信手段(通信端末28及び制御部22により構成される)と、を備えている。
【0070】
よって、実施形態の液化ガスローリー車遠隔監視システム1によれば、異常時には、携帯電話12を所持しているLNG輸送の関係者に対して、電子メールで異常の発生を迅速に通知することができる。
【0071】
なお、実施形態では、LNGを輸送するタンクローリー車2を監視するシステムとして説明したが、本発明の液化ガスローリー車遠隔監視システムは、液化石油ガス(LPガス)を輸送するタンクローリー車など、他の液化ガスを輸送するローリー車に対しも適用することができる。
【0072】
また、実施形態では、LNG供給会社の管理者が一台のPC7で、複数台のタンクローリー車2を遠隔監視するシステムとして構成したが(図1参照)、複数のPC7をインターネット14に接続して、すなわち、ユーザー端末装置を複数用いて構成してもよい。また、ユーザー端末装置としては、PC7のほか、携帯情報端末など他の通信可能な電子機器を用いることができる。
【0073】
また、実施形態では、車載器20を移動体通信設備15およびインターネット14を介してサーバ装置9と通信可能に構成したが、サーバ装置9やPC7を用いることなく、携帯電話12に対して電子メールを送信することによりタンクローリー車2の異常や位置を通知するだけの遠隔監視システムとして構成してもよい。
【0074】
また、実施形態では、携帯電話12に警報情報を含む電子メールを送信するよう構成したが、携帯電話12に代えて、又は携帯電話12とともに、関係者が所持するPC(パーソナルコンピュータ)や携帯情報端末など、電子メールを受信可能な他の端末装置に電子メールを送信するよう構成してもよい。
【0075】
また、実施形態では、圧力センサ17により測定された圧力値の情報などをサーバ装置9に送信する構成としたが、タンクローリー車2にカメラを設けて構成し、異常と判定された際には、このカメラで撮影したタンクローリー車2の映像情報も、車載器20が送信するよう構成してもよい。このような構成とすれば、LNG輸送の管理者は、タンクローリー車2の状況を画像で確認することが可能となる。
【0076】
また、実施形態では、管理側システムS2を、警報情報などの情報を蓄積記憶する記憶手段としてのサーバ装置9と、警報情報などの情報に基づいて所定の表示を行う出力手段としてのPC7とに分けて構成し、PC7の負担を軽減させたが、一台のPC7が記憶手段と出力手段を兼ねる構成としてもよい。
【0077】
また、実施形態では、サーバ装置9とPC7とをインターネット14を介して接続する構成としたが、社内LANなど他の通信回線を介して接続する構成としてもよい。
【0078】
なお、本実施形態におけるPC7が、本発明のユーザー端末装置に相当し、出力手段を構成する。
本実施形態におけるサーバ装置9が、本発明のサーバコンピュータに相当し、記憶手段を構成する。
本実施形態におけるDB10が、本発明の記憶部に相当する。
本実施形態における携帯電話12が、端末装置に相当する。
本実施形態における移動体通信設備15などにより構成される携帯電話網やインターネット14が、ネットワークを構成する。
本実施形態における圧力センサ17が、本発明の圧力測定手段に相当する。
本実施形態における扉リミットスイッチ18が、扉開閉検知手段に相当する。
本実施形態におけるRAM22cが、アドレス記憶部に相当する。
本実施形態における積置中スイッチ26が、モード切替手段に相当する。
また、本実施形態における制御部22が、本発明の判定手段、及び基準値設定手段を構成する。
本実施形態における「通信端末28、制御部22」が、情報送信手段、及び電子メール送信手段を構成する。
本実施形態における「GPS受信部24、制御部22」が、GPS信号受信手段を構成する。
本実施形態における警報情報が、本発明の判定結果情報に相当する。
本実施形態における警報設定値が、本発明の基準値に相当する。
【符号の説明】
【0079】
1…液化ガスローリー車遠隔監視システム
2…タンクローリー車
3…後部機器室
4…タンク
7…PC(ユーザー端末装置)
9…サーバ装置(サーバコンピュータ)
10…DB(データベース、記憶部)
12…携帯電話(端末装置)
14…インターネット
15…移動体通信設備
17…圧力センサ(圧力測定手段)
18…扉リミットスイッチ(扉開閉検知手段)
20…車載器
22…制御部
22c…RAM(アドレス記憶部)
24…GPS受信部
26…積置中スイッチ(モード切替手段)
28…通信端末
S1…車両搭載システム
S2…管理側システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを搬送するタンクローリー車に設けられたタンク内の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段による測定値が予め設定された基準値を超えたときに異常と判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果の情報(以下「判定結果情報」という)を所定時間ごとにネットワークを介して送信する情報送信手段と、を備えて前記タンクローリー車に搭載される車両搭載システムと、
前記情報送信手段により送信された前記判定結果情報を前記ネットワークを介して受信して、記憶部に記憶する記憶手段と、
前記記憶部に記憶された判定結果情報に基づいて判定結果を出力する出力手段と、を備えた管理側システムと、を含んで構成される液化ガスローリー車遠隔監視システムであって、
前記車両搭載システムは、
前記圧力測定手段による測定値に基づいて前記基準値を設定する基準値設定手段を備え、
前記基準値設定手段は、
前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して第1の値以下であるときは、前記基準値を第1の基準値に設定し、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して前記第1の値より高い第2の値以上であるときは、前記基準値を前記第1の基準値より高い第2の基準値に設定する
ことを特徴とする液化ガスローリー車遠隔監視システム。
【請求項2】
前記車両搭載システムは、GPS信号を受信して前記タンクローリー車の位置情報を取得するGPS信号受信手段を備え、
前記情報送信手段は、前記GPS信号受信手段が取得した位置情報を所定時間ごとにネットワークを介して送信し、
前記記憶手段は、前記位置情報を前記ネットワークを介して受信して、前記記憶部に記憶し、
前記出力手段は、前記記憶部に記憶された位置情報に基づいて前記タンクローリー車の位置を表示することを特徴とする請求項1に記載の液化ガスローリー車遠隔監視システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、サーバコンピュータであり、
前記出力手段は、前記サーバコンピュータに対してネットワークを介して通信可能に接続され、前記記憶部に記憶された情報を取得して表示可能な1以上のユーザー端末装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液化ガスローリー車遠隔監視システム。
【請求項4】
前記車両搭載システムは、前記タンクローリー車における前記タンクが収納された後部機器室を開閉する開閉扉の開状態および閉状態を検知する扉開閉検知手段を備え、
前記基準値設定手段は、前記扉開閉検知手段によって前記開閉扉が開状態であることが検知されているときは、前記圧力測定手段による測定値にかかわらず、前記基準値を前記第2の基準値に設定又は維持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液化ガスローリー車遠隔監視システム。
【請求項5】
電子メールを受信可能な1以上の端末装置をさらに備えた請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液化ガスローリー車遠隔監視システムであって、
前記車両搭載システムは、
前記端末装置のメールアドレスが記憶されるアドレス記憶部と、
前記アドレス記憶部に記憶されたメールアドレスを宛先にして電子メールを送信する電子メール送信手段と、
前記タンクローリー車における前記タンクが収納された後部機器室を開閉する開閉扉の開状態および閉状態を検知する扉開閉検知手段と、
前記扉開閉検知手段が前記開閉扉の開状態を検知したときに、前記基準値設定手段が前記圧力測定手段による測定値にかかわらず前記基準値を前記第2の基準値に設定又は維持する第1のモードと、前記扉開閉検知手段が前記開閉扉の開状態を検知したときに、前記基準値設定手段が前記基準値を前記第2の基準値に設定することなく、前記電子メール送信手段が前記アドレス記憶部に記憶されたメールアドレスを宛先にして前記開閉扉が開状態である旨の扉開放情報を含む電子メールを送信する第2のモードとを切り替えるモード切替手段と、を備えていることを特徴とする液化ガスローリー車遠隔監視システム。
【請求項6】
電子メールを受信可能な1以上の端末装置をさらに備えた請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液化ガスローリー車遠隔監視システムであって、
前記車両搭載システムは、
前記端末装置のメールアドレスが記憶されるアドレス記憶部と、
前記判定手段が異常と判定したときに、前記アドレス記憶部に記憶されたメールアドレスを宛先にして、異常が発生した旨の警報情報を含む電子メールを送信する電子メール送信手段と、を備えることを特徴とする液化ガスローリー車遠隔監視システム。
【請求項7】
液化ガスを搬送するタンクローリー車に設けられたタンク内の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段による測定値が予め設定された基準値を超えたときに異常と判定する判定手段と、を備えて前記タンクローリー車に搭載される車両搭載システムと、
電子メールを受信可能な1以上の端末装置と、を含んで構成される液化ガスローリー車遠隔監視システムであって、
前記車両搭載システムは、
前記端末装置のメールアドレスが記憶されるアドレス記憶部と、
前記判定手段が異常と判定したときに、前記アドレス記憶部に記憶されたメールアドレスを宛先にして、異常が発生した旨の警報情報を含む電子メールを送信する電子メール送信手段と、を備えるとともに、
前記圧力測定手段による測定値に基づいて前記基準値を設定する基準値設定手段をさらに備え、
前記基準値設定手段は、
前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して第1の値以下であるときは、前記基準値を第1の基準値に設定し、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して前記第1の値より高い第2の値以上であるときは、前記基準値を前記第1の基準値より高い第2の基準値に設定する
ことを特徴とする液化ガスローリー車遠隔監視システム。
【請求項8】
液化ガスを搬送するタンクローリー車に設けられたタンク内の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段による測定値が予め設定された基準値を超えたときに異常と判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果の情報(以下「判定結果情報」という)を所定時間ごとにネットワークを介して他の装置に送信する情報送信手段と、を備えて前記タンクローリー車に搭載される車両搭載システムであって、
前記圧力測定手段による測定値に基づいて前記基準値を設定する基準値設定手段を備え、
前記基準値設定手段は、
前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して第1の値以下であるときは、前記基準値を第1の基準値に設定し、前記圧力測定手段による測定値が所定時間以上継続して前記第1の値より高い第2の値以上であるときは、前記基準値を前記第1の基準値より高い第2の基準値に設定する
ことを特徴とする車両搭載システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−97601(P2013−97601A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240356(P2011−240356)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(501146502)株式会社シーエナジー (1)
【Fターム(参考)】