説明

液化ガス採取容器

【課題】簡単な構造でメンテナンス性にも優れ、製造コストの低減も図ることができる液化ガス採取容器を提供する。
【解決手段】液化ガス容器11内に液状で採取した液化ガスを気化させてガス容器12内に貯留し、該ガス容器12内のガスを分析器に供給するための液化ガス採取容器において、前記液化ガス容器11と前記ガス容器12とを独立した容器でそれぞれ形成するとともに、前記液化ガス容器と前記ガス容器とを連通管13で連通させた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス採取容器に関し、詳しくは、液化酸素、液化窒素、液化アルゴン、液化炭酸ガス、液化天然ガスをはじめとする種々の超低温液化ガスを液体の状態で採取し、採取した液化ガスを気化させ、容器に気化ガスとして収納する液化ガス採取容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、酸素、窒素、アルゴンといった工業ガスは、原料空気を深冷液化分離することによって液状の液化ガスとして製造されている。これらの工業ガスの品質を管理する場合、製造した液化ガスを気化させてガス状で成分分析を行うのではなく、液状で容器にサンプリングし、この容器内で液化ガスの全量を気化させた後に成分分析することが行われており、液化ガスをサンプリングするための採取容器として、試料カップと予冷カップとからなる二重構造容器をガス容器内に収納した構造を有するものが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】米国COSMODYNE社、CRYOGENIC SAMPLER TYPE TTU-131/Eのカタログ[平成19年7月10日検索]、インターネット<URL:http://www.cosmodyne.com/FrostByte/Cosmodyne_Cryogenic-Sampler.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の液化ガス採取容器は、いずれも構造が複雑で製造コストが嵩み、高価なものとなっていた。また、試料カップの液化ガス採取弁のシール材を交換する場合、試料カップがガス容器内に収納された特殊な構造を有しているため、交換作業に多大な手間が掛かり、作業に長時間を要するというメンテナンス上の問題もあった。さらに、シール材が内部で脱落すると、全体を分解して取り除かなければならず、実質的に使用不可能になってしまうことがあった。
【0004】
そこで本発明は、簡単な構造でメンテナンス性にも優れ、製造コストの低減も図ることができる液化ガス採取容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の液化ガス採取容器は、液化ガス容器内に液状で採取した液化ガスを気化させてガス容器内に貯留し、該ガス容器内のガスを分析器に供給するための液化ガス採取容器において、前記液化ガス容器と前記ガス容器とを独立した容器でそれぞれ形成するとともに、前記液化ガス容器と前記ガス容器とを連通管で連通させたことを特徴としている。
【0006】
さらに、本発明の液化ガス採取容器は、前記液化ガス容器が、採取した液化ガスを貯留する内槽と、該内槽を収納した外槽とからなる二重構造に形成され、前記内槽内に連通する内槽接続管と前記内槽と外槽との間に連通する外槽接続管とが設けられるとともに、前記内槽接続管と前記外槽接続管とが液化ガス容器の外部で接続されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記ガス容器は、前記液化ガス容器内に液状で採取した液化ガスが環境温度35℃で全量気化したときに、気化したガスの圧力がゲージ圧で1MPa未満となる容積に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液化ガス採取容器によれば、液化ガス容器と前記ガス容器とを独立した容器でそれぞれ形成し、両者を連通管で連通させたシンプルな構造となっているため、製造コストの削減が図れる。また、前記連通管だけでなく、液化ガス容器に液化ガスを採取するための配管及び弁、ガスを分析器に供給するための配管及び弁に汎用性の配管材や弁を用いることができるので、製造コストの削減だけでなく、メンテナンス性の大幅な向上も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の液化ガス採取容器の第1形態例を示す説明図である。本形態例は、本発明の液化ガス採取容器の基本形態を示すもので、液化ガスを採取して一時貯留するための液化ガス容器11と、該液化ガス容器11で気化したガスを貯留するためのガス容器12と、液化ガス容器11とガス容器12とを連通させる連通管13と、液化ガス容器11内に液化ガスを採取するための液化ガス採取管14及び液化ガス採取弁15と、ガス容器12内のガスを図示しない分析器に供給するためのガス供給管16及びガス供給弁17とで形成されている。
【0010】
液化ガス容器11及びガス容器12は、独立した容器としてそれぞれ別個に形成されており、連通管13、液化ガス採取管14及びガス供給管16は、溶接などの適宜な接合手段により各容器にそれぞれ接合されている。各配管材や各弁は、使用温度を考慮するとともに、分析に支障のない範囲で汎用性の既製品を選定しており、各配管と各弁との接合手段や各弁に用いられるシール材も汎用性を有するものを選定している。
【0011】
このように形成した液化ガス採取容器は、液化ガス採取管14を液化ガス貯槽などの液化ガス採取部に接続し、液化ガス容器11を所定温度に冷却してから液化ガス採取弁15を開くことにより、液化ガス容器11内に液化ガスを液状のまま採取して貯留することができる。液化ガス容器11の冷却は、採取する液化ガスの一部を利用して行うこともできるが、別の冷媒、例えば液化酸素を採取する際の冷却に液化窒素を利用して行うことも可能である。
【0012】
液化ガス容器11内に所定量の液化ガスを採取した後、液化ガス採取弁15を閉じて液化ガス容器11の冷却を停止し、液化ガス容器11を大気などで昇温させることによって液化ガス容器11内の液化ガスの全量を気化させ、気化したガスをガス容器12内に移して貯留する。そして、液化ガスを採取した液化ガス採取容器を分析室などに搬送し、ガス供給管16を分析計に接続してからガス供給弁17を開くことにより、液化ガスの全量が気化した状態のガスを分析計に供給することができる。
【0013】
このように、液化ガス容器11部分の製造を簡易化することができ、液化ガス容器11がガス容器12内に収納されていないため、液化ガス容器11のメンテナンスを行うときに、ガス容器12などを大きく分解する必要がない。さらに、液化ガス容器11内に採取した液化ガスを気化させる際には、液化ガス容器11を冷却していた冷媒の導入を停止するだけでよく、液化ガス容器11の外面を従来に比べて短時間で外気温に戻すことができ、採取した液化ガスを迅速に気化させてガス容器12に移すことができる。
【0014】
図2は、本発明の液化ガス採取容器の第2形態例を示す説明図である。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した液化ガス採取容器の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0015】
本形態例に示す液化ガス採取容器は、液化ガス容器11を、採取した液化ガスを貯留する内槽21と、該内槽21を収納した外槽22とからなる二重構造に形成し、前記外槽22を貫通して前記内槽21内に連通する内槽接続管23と前記内槽21と外槽22との間の空間に連通する外槽接続管24とを設け、前記内槽接続管23と前記外槽接続管24とを液化ガス容器11の外部で液化ガス採取弁15の上流側の液化ガス採取管14に接続するとともに、内槽21と外槽22との間に連通する排気管25を設けている。また、ガス容器12には、圧力計26と安全弁27とが設けられている。
【0016】
内槽21内に液化ガスを採取する際には、液化ガス採取弁15を閉じた状態で、液化ガス採取管14に採取した液化ガスを外槽接続管24から内槽21と外槽22との間の外槽内に導入し、気化ガスを排気管25から排気することによって内槽21を所定の温度に予冷した後、液化ガス採取弁15を開いて液化ガス採取管14内の液化ガスを内槽21内に採取して貯留する。
【0017】
内槽21内に液化ガスを採取した後、液化ガス採取弁15を閉じて液化ガス採取管14を液化ガス貯槽などの液化ガス採取部から切り離すと、液化ガス採取管14及び排気管25が開放されることから内槽21と外槽22との間に大気からの熱が供給され、内槽21内で液化ガスの全量が気化し、気化したガスが前記連通管13を通ってガス容器12内に流入する。
【0018】
図3は本発明の液化ガス採取容器の第3形態例を示す説明図である。
【0019】
本形態例に示す液化ガス採取容器は、液化ガス容器11を、採取した液化ガスを貯留する内槽31と、該内槽31を収納した外槽32とからなる二重構造に形成するとともに、内槽21と外槽22との間の空間を真空排気して真空断熱部33を形成している。このように液化ガス容器11を真空断熱構造で形成することにより、外部から内槽21に侵入する熱量を少なくすることができるので、液化ガス採取前における内槽31の予冷時間を短くすることができる。
【0020】
また、各形態例で示したように、液化ガス容器11とガス容器12とを独立した状態で形成する場合、ガス容器12の容積は、液化ガス容器11内に採取した液化ガスの全量が環境温度35℃で気化し、気化したガスをガス容器12内に貯留した際に、その圧力がゲージ圧で1MPa以上にならないように設定することが望ましい。このように、気化ガスの圧力をゲージ圧で1MPa未満に保持することにより、液化ガス採取容器の製造や取り扱いを容易に行うことができる。また、各形態例において、各配管を真空断熱配管で形成することにより、液化ガス採取前の予冷時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の液化ガス採取容器の第1形態例を示す説明図である。
【図2】本発明の液化ガス採取容器の第2形態例を示す説明図である。
【図3】本発明の液化ガス採取容器の第3形態例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
11…液化ガス容器、12…ガス容器、13…連通管、14…液化ガス採取管、15…液化ガス採取弁、16…ガス供給管、17…ガス供給弁、21…内槽、22…外槽、23…内槽接続管、24…外槽接続管、25…排気管、26…圧力計、27…安全弁、31…内槽、32…外槽、33…真空断熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス容器内に液状で採取した液化ガスを気化させてガス容器内に貯留し、該ガス容器内のガスを分析器に供給するための液化ガス採取容器において、前記液化ガス容器と前記ガス容器とを独立した容器でそれぞれ形成するとともに、前記液化ガス容器と前記ガス容器とを連通管で連通させたことを特徴とする液化ガス採取容器。
【請求項2】
前記液化ガス容器は、採取した液化ガスを貯留する内槽と、該内槽を収納した外槽とからなる二重構造に形成し、前記内槽内に連通する内槽接続管と前記内槽と外槽との間に連通する外槽接続管とを設けるとともに、前記内槽接続管と前記外槽接続管とを液化ガス容器の外部で接続したことを特徴とする請求項1記載の液化ガス採取容器。
【請求項3】
前記ガス容器は、前記液化ガス容器内に液状で採取した液化ガスが環境温度35℃で全量気化したときに、気化したガスの圧力がゲージ圧で1MPa未満となる容積に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液化ガス採取容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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