説明

液化ガス添加用ノズル

【課題】容器内圧にバラツキが生じないようにヘッドスペースに液化ガスを添加する。
【解決手段】容器6のヘッドスペース2に対向するように配置されるシリンダ17と、シリンダ内にスライド可能に挿入されるプラグ18とを具備する。シリンダの内周面には、液化ガスGを通す複数本の溝19がシリンダ軸に平行に形成される。プラグには、プラグ先端がシリンダ出口側に移動すると全溝を閉じて液化ガスの流れを遮断し、プラグ先端がシリンダ入口側へと移動すると全溝を開いて液化ガスの流れを許容する開閉弁22が設けられる。シリンダの溝が、深さが略一定で、幅がシリンダの入口側から出口側に向かって徐々に狭まるように形成されることにより、プラグ先端がシリンダ入口側から出口側へと移動するに連れて、シリンダ出口側からの液化ガス吐出量が漸減可能とされ、プラグ先端の移動位置の如何を問わずシリンダ出口の各溝から流出する液化ガスがシリンダ軸に略平行な細流となってヘッドスペース内に吐出可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製ボトル等の容器のヘッドスペースに液体窒素等の液化ガスを添加するための液化ガス添加用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化、薄肉化した缶容器内に内容液を充填後液体窒素等の液化ガスを添加することで缶容器内を陽圧化し、缶容器を補強する方法は古くから用いられている。すなわち、缶容器内に充填した内容液の液面と容器天板との間の隙間(ヘッドスペース)内で上記液化ガスを気化させることで缶容器の内圧を高め、これにより缶容器の強度を補強することが可能である。
【0003】
しかし、缶詰等の品質を一定に保つためには、ヘッドスペース内での液化ガスの圧力にバラツキが生じないように液化ガスを一定量ずつ缶容器内に充填する必要がある。しかも、生産性を高めるため缶容器を高速で走行させながら内容液及び液化ガスを缶容器内に正確に充填する必要がある。
【0004】
従来、これを解決するため、一定流量の液化ガスが各々連続流下する複数個の吐出孔を一列又は複数列で並べ、それら吐出孔の下で、内容液が充填された缶容器を走行させ、各缶容器のヘッドスペース内に液化ガスを所定量ずつ添加するようにしている。一列又は複数列で並んだ複数個の吐出孔から細流として流下させることにより、1個の吐出孔から同量の液化ガスを流下させる場合と比較して液面への衝撃が小さくなる。1個の吐出孔から流下させる場合は液面に当たったときの衝撃が大きく液化ガスが缶容器外へ飛散してしまう。液化ガスは気化すると体積が約800倍にもなるので、飛散すると缶容器の内圧のバラツキはそれだけ大きくなる。従って、液化ガス添加時に容器の搬送に伴い容器内の液面が大きく振動する場合や、複数本の細流が維持されず1本になってしまう場合を除けば、液化ガスが液面に当たったときの衝撃は和らげられ、飛散しない。結果として缶詰ごとの内圧のバラツキが小さくなり、過分なガス封入による缶容器の膨出変形や過少なガス封入による缶容器の凹みの発生が防止可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、上記缶容器は、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料により作られ剛性が比較的高いので、液化ガスを添加し、密封した際に、缶容器内の圧力にある程度バラツキが生じても特に問題は生じない。
【0006】
しかし、容器がプラスチック製である場合は金属製の場合に比べ変形しやすいので、内圧のバラツキが大きくなる。内圧が大きい場合は、容器がボトルであるならばその底部が凹から凸に反転(バックリング)したり、甚だしい場合は破裂したりするおそれがある。また、内圧が小さい場合は、ボトルの強度不足となって、搬送中に荷崩れを起こしたり、自動販売機内で詰まったりするといった不具合を引き起こすおそれがある。このような不具合は、特に軽量化、省資源化等を目的として薄肉化されたプラスチック製容器について生じやすい。
【0007】
従って、プラスチック製容器に内容液を充填する際には、金属製容器の場合に比べてより厳密に内圧をコントロールする必要がある。
【0008】
このプラスチック製容器の内圧は、主として液化ガスの添加量に由来するので、添加量を一定に保持すると内圧のバラツキを小さくすることができる。しかし、ヘッドスペースが小さいものである場合は、液化ガスが内容液の液面に接触した際の衝撃で容器外へ跳ね出しやすい。また、内容液の温度の高低、液化ガスの添加量の多少等によっても液化ガスの跳ね方が異なる。従って、こうした条件の違いによって、液化ガスの添加量を微調整する必要がある。上述した如く、液化ガスの飛散により液化ガスの添加量が僅かでも変化すると、気化後の体積は約800倍にもなるので、上記条件の違いによって、液化ガスの添加量を細かく調整することで、液化ガスの飛散をできるだけ無くし、容器間の内圧のバラツキを解消する必要がある。
【0009】
従来、このような液化ガスの添加量を微調整する手段として、図7(A)に示すような液化ガス添加用ノズルが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
この液化ガス添加用ノズルは、容器1のヘッドスペース2に対向するように配置されるシリンダ3と、このシリンダ3内にスライド可能に挿入されるプラグ4とを具備する。そして、シリンダ3の内周面には、液化ガスGを通す複数本の溝5がシリンダ軸に沿うように形成され、プラグ4には、このプラグ4の先端がシリンダ3の出口側に移動すると全溝5を閉じて液化ガスGの流れを遮断し、プラグ4の先端がシリンダ3の入口側へと移動すると全溝5を開いて液化ガスGの流れを許容する開閉弁6が設けられる。
【0011】
また、シリンダ3の溝5は、シリンダ周方向での幅が略一定で、シリンダ半径方向での深さがシリンダ入口側から出口側に向かうに連れて浅くなり、その結果図7(A)に示すようにプラグ4がシリンダ入口側にあるときはノズルの開口面積が大きく、液化ガスGの吐出量が大であり、同図(B)に示すようにプラグ4がシリンダ出口側にあるときはノズルの開口面積が小さく、液化ガスGの吐出量が少なくなる。
【0012】
従って、液化ガスGの吐出量を増量側に微調整する場合は、図7(A)に示すようにプラグ4をシリンダ入口側に近づけてノズルの開口面積を大きくし、液化ガスGを多目に吐出するようにし、また、液化ガスGの吐出量を減量側に微調整する場合は、図7(B)に示すようにプラグ4をシリンダ出口側に近づけてノズルの開口面積を小さくし、液化ガスGの吐出量を減らすようにすることで、上記不都合を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭63−44609号公報
【特許文献2】特許第3587647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、特許文献2に記載される液化ガス添加用ノズルは、図7(A)に示すように多量の液化ガスGを吐出するべくノズルの開口面積を大きく設定する場合は、各溝5から流出する液化ガスGの細流は略平行にヘッドスペース2内の液面aに到達するのであるが、図7(B)に示すように液化ガスGの吐出量を減らすべくノズルの開口面積を小さく設定するに連れて、各溝5から流出する液化ガスGの細流はヘッドスペース2内の液面a近くで合流し一本の流れに集束する。これは、プラグ4の先端がノズルの開口面積が小さい所へ行くほど、溝5を通る細流が溝底の斜面からより大きな作用力を受けるためであると考えられる。そして、液化ガスGが液面aに激しく衝突し、ヘッドスペース2の外へと弾き出されるので内圧のバラツキが大きくなる。これでは溝5を複数本にした事による液面衝撃緩和機能が無くなる。
【0015】
また、液化ガスGは、ヘッドスペース2内の空気と置換されることで、内容液Aの酸化を防ぐ働きもするが、溝が複数本の場合は1本の場合と比較して外気に接触する表面積が大きい為それだけ気化量が多く空気と置換され易い。しかし、図7(B)のように複数本の細流が一本に集束してしまうと、表面積が小さくなりそれだけ気化量が低減する。よって、複数本にするとガス置換効果が高くなり結果として初期酸化が低減される。
【0016】
したがって、本発明は、上記問題点を解消することができる液化ガス添加用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は上記課題を解決するため、次のような構成を採用する。
【0018】
なお、図面の参照符号を括弧付きで付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
すなわち、請求項1に係る発明は、容器(6)のヘッドスペース(2)に対向するように配置されるシリンダ(17)と、このシリンダ(17)内にスライド可能に挿入されるプラグ(18)とを具備し、上記シリンダ(17)の内周面には、液化ガス(G)を通す複数本の溝(19)がシリンダ軸に平行に形成され、上記プラグ(18)には、このプラグ(18)の先端が上記シリンダ(17)の出口側に移動すると上記全溝(19)を閉じて液化ガス(G)の流れを遮断し、プラグ先端が上記シリンダ(17)の入口側へと移動すると上記全溝(19)を開いて液化ガス(G)の流れを許容する開閉弁(22)が設けられた液化ガス添加用ノズルにおいて、上記シリンダ(17)の溝(19)が、深さが略一定で、幅が上記シリンダ(17)の入口側から出口側に向かって徐々に狭まるように形成されることにより、上記プラグ先端が上記シリンダ(17)の入口側から出口側へと移動するに連れて、シリンダ出口側からの液化ガス吐出量が漸減可能とされ、かつ、上記プラグ先端の移動位置の如何を問わずシリンダ出口の各溝(19)から流出する液化ガス(G)がシリンダ軸に略平行な細流となって上記ヘッドスペース(2)内に吐出可能とされた液化ガス添加用ノズルを採用する。
【0020】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の液化ガス添加用ノズルにおいて、上記シリンダ(17)の各溝(19)は、シリンダ(17)の内面円筒形の母線を対称軸として左右対称に形成されたものとすることができる。
【0021】
請求項3に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載の液化ガス添加用ノズルにおいて、上記各溝(19)は、その両側壁間の挟角αが0°<α<20°となるように形成されたものとすることができる。
【0022】
請求項4に記載されるように、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液化ガス添加用ノズルにおいて、上記溝(19)の本数は、32本以下とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液化ガス添加用ノズル(12)の開度の如何を問わず、シリンダ出口の各溝(19)から流出する液化ガス(G)の細流のすべてをシリンダ軸に平行にヘッドスペース(2)内へと吐出することができる。従って、液化ガス(G)の吐出量の多い少ないを問わず細流の平行状態を維持出来るので、液面に接触した際の衝撃が小さく、容器(6)間における内圧のバラツキを小さくすることができる。このため、薄肉のプラスチック製容器(6)に内容液(A)を充填した場合であっても、容器(6)間の形状の均一性を保つことができ、飲料詰め容器の品質を一定に維持することができる。
【0024】
また、液化ガス(G)の吐出量の多い少ないを問わず細流の平行状態を維持出来るので、外気に接触する表面積が大きく気化量が多くなることから、ヘッドスペース(2)内の空気を液化ガス(G)と円滑に置換することができる。従って、ヘッドスペース(2)内の空気の残留をそれだけ低減し、内容液(A)の酸化を防止し、飲料詰め容器の品質を長期にわたり維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】内容液が充填され、ヘッドスペース内に液化ガスが添加され、キャップで密封されたプラスチック製ボトルの正面図である。
【図2】本発明に係る液化ガス添加用ノズルを備えた液化ガス添加装置の概略垂直断面図である。
【図3】本発明に係る液化ガス添加用ノズルのシリンダを示し、(A)はこのシリンダの平面図、(B)は垂直断面図である。
【図4】本発明に係る液化ガス添加用ノズルのプラグを示し、(A)はこのプラグの部分切欠正面図、(B)は底面図である。
【図5】ノズルを閉じた状態で示す液化ガス添加装置の要部の部分切欠垂直断面図である。
【図6】ノズルを所望の開度で開いた状態で示す液化ガス添加装置の要部の部分切欠垂直断面図である。
【図7】従来のノズルを示し、(A)は比較的大開度で開いた状態の垂直断面図、(B)は比較的小開度で開いた状態の垂直断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明を実施するための形態について説明する。
【0027】
最初に、この液化ガス添加用ノズルを用いて液化ガスが添加された容器の一例について説明する。
【0028】
図1に示すように、この容器は飲料等の内容液Aが充填された壜詰容器であり、プラスチック製のボトル6とプラスチック製の蓋であるキャップ7とを備え、ボトル6はキャップ7により密封される。
【0029】
ボトル6は、略試験管状のプリフォームをブロー成形することにより形成される。ボトルの主材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PLA(ポリ乳酸)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン等種々の樹脂を用いることが可能である。
【0030】
ボトル6の上側には円形の開口を有した首部6aが設けられる。首部6aには雄ネジ8が形成され、この雄ネジ8にキャップ7の雌ネジ9が螺合することによりボトル6の首部6aの開口が密封される。
【0031】
ボトル6の首部6a内又はボトル6の本体内には内容液Aの液面aが存在し、この液面aとキャップ7の天板との間のヘッドスペース2内に不活性ガスの液化ガスGが充満している。
【0032】
液化ガスGは、例えば液体窒素であり、ボトル6に内容液Aが充填された後にヘッドスペース2内に添加され、同時にガスとなってヘッドスペース2内に充満する。また、同時にヘッドスペース2内の空気が窒素ガスと置換されることで、ヘッドスペース2内から酸素が排除される。
【0033】
その他、ボトル6の首部6aには、雄ネジ8の下方においてサポートリング10が設けられる。ボトル6はサポートリング10を図示しないグリッパーにより把持されて内容液Aの充填装置内を走行しつつ、首部6aの開口から内容液Aを充填され、次いで液化ガスGがヘッドスペース2内に添加され、キャップ巻締め装置にて密封される。
【0034】
次に、上記内容液Aが充填されたボトル6のヘッドスペース2内に液化ガスGを添加する液化ガス添加装置について説明する。
【0035】
図2に示すように、液化ガス添加装置は、液化ガス貯留槽11を有し、この液化ガス貯留槽11の底部に液化ガス添加用ノズル12を備える。
【0036】
液化ガス貯留槽11の槽壁は真空断熱壁で形成され、液化ガス貯留槽11内に例えば液体窒素である液化ガスGが貯留される。液化ガス貯留槽11内には、液化ガス供給管13と液面計14が挿入される。液面計14に設定される液化ガスGの所定の液高を槽11内の液化ガスGが常時保持するように、液化ガス供給管13から液化ガスGが槽11内に供給される。
【0037】
液化ガス貯留槽11の底部には、液化ガス添加用ノズル12の結露を防止するためのノズルヒーター23が筒状に設けられる。
【0038】
液化ガス供給管13には、気液分離器15が取り付けられる。液化ガス供給管13を通って槽11内に供給される液化ガスGからガス分が気液分離器15によって分離され、このガスが液化ガス貯留槽11に接続された排気管16から槽11外に排出される。また、液分は気液分離器15の下部の小孔15aから、槽11内に貯留された液化ガスG上に滴下する。
【0039】
液化ガス添加用ノズル12は、図2に示すように、容器であるボトル6のヘッドスペース2に対向するように配置されるシリンダ17と、このシリンダ17内にスライド可能に挿入されるプラグ18とを具備する。
【0040】
図3(A)(B)に示すように、シリンダ17の内周面には、液化ガスGを通す複数本の溝19がシリンダ軸に平行に形成される。図示例では、溝19の本数は四本であるが、二本、三本であってもよいし、四本より多くてもよい。複数本の溝19は、望ましくはシリンダ17の内周面にその周方向に等しい角度間隔で形成される。
【0041】
市販のPETボトルは、注出口の外径が概ね28mmφ〜65mmφであるから、シリンダ17の口径を大きくすることで、溝19の本数を32本程度まで増加することが可能である。
【0042】
また、各溝19は、図3(B)に示すように、深さが略一定で、幅がシリンダ17の入口側(図3(B)の紙面の上側)から出口側(図3(B)の紙面の下側)に向かって徐々に狭まるように形成される。深さが略一定であることから、図3(B)に示すように、溝底の傾斜角βは略90°である。
【0043】
各溝19は、図3(B)に示すように、望ましくはシリンダ17の内面円筒形の母線を対称軸として左右対称に形成される。また、各溝19は、望ましくはその両側壁間の挟角αが0°<α20°となるように形成される。
【0044】
図2に示すように、液化ガス添加用ノズル12の下側へと、上記ノズルヒーター23の下部がスリット24を介して回り込んでいる。このスリット24に導通するフローガス導入管25が、ノズルヒーター23の筒壁を貫通している。フローガス導入管25から供給されるフローガスがスリット24を通ってノズル12の前方に吹き出す様になっている。このフローガスは例えば窒素ガスであり、ガスは乾燥(ドライ)状態である方がより好ましい。このフローガスがノズル12の前方に吹き出すことで、外気の侵入が防止される。
【0045】
図4(A)(B)に示すように、プラグ18は円柱形であり、その外周面はシリンダ17の内周面に接しつつスライド可能である。
【0046】
プラグ18の上方には、上記シリンダ17の全溝5を同時に開閉するための開閉弁22が設けられる。また、開閉弁22に対応して上記シリンダ17の上部にはすり鉢状の弁座
26が形成される。図5に示すように、このプラグ18の先端がシリンダ17の出口側に移動すると、開閉弁22が全溝19を閉じて液化ガスGの流れを遮断し、図6に示すように、プラグ18の先端がシリンダ17の入口側へと移動すると、開閉弁22が全溝19を開いて液化ガスGの流れを許容する。
【0047】
図2に示すように、プラグ18は操作棒27に吊下げられ、操作棒27は液化ガス貯留槽11の天壁を上方に貫通する。天壁上には操作棒27を往復動させるためのサーボモータ28が設置される。
【0048】
このサーボモータ28の駆動により、プラグ18は操作棒27を介して、図5に示す位置に停止するほか、図5に示す位置よりも上方の例えば図6に示す所望の位置に停止可能である。これにより、プラグ18の先端がシリンダ17の出口側から入口側へと移動するに連れて、全溝19の開度が大きくなるのでシリンダ出口側からの液化ガス吐出量を漸増調節可能であり、逆にプラグ18の先端がシリンダ17の入口側から出口側へと移動するに連れて、全溝19の開度が小さくなるのでシリンダ出口側からの液化ガス吐出量は漸減調節可能である。
【0049】
また、上述したようにシリンダ17内の溝19は、深さが略一定で、幅がシリンダ17の入口側から出口側に向かって徐々に狭まるように形成されることから、プラグ先端の移動位置の如何を問わずシリンダ出口の各溝19から流出する液化ガスGはシリンダ軸に略平行な細流となって交わることなく上記ヘッドスペース2内に吐出可能となる。すなわち、プラグ先端の位置の如何を問わず、液化ガスGの細流は、図6に示すような流れの状態を保つ。
【0050】
従来は図7(B)に示したように、液化ガスGの吐出量を減らすべくノズル12の開度すなわち全溝19の開口面積を小さく設定すると、各溝19から流出する液化ガスGの細流はヘッドスペース2内の液面aの近くで合流して一本になり、液面aに激しく衝突する。その結果、液化ガスGがヘッドスペース2外へと弾かれ容器間での内圧のバラツキが大きくなる。また、液流が一本に集束するので、外気に接触する表面積が小さくなり、それだけ気化量が減る結果、ヘッドスペース2内に空気が残留し、内容液Aが酸化されやすくなるという問題があった。しかし、上記本発明のノズル12を用いることにより、ノズル12の開度の如何を問わず、各溝19から流出する液化ガスGの流れはシリンダ軸に平行な細流のまま内容液Aの液面aに均等に当たるので、液面への衝撃が小さく内圧のバラツキは小さくなる。また、液化ガスGの細流は平行状態を維持したままヘッドスペース2内に流入するので、外気に接触する表面積が大きくなり、それだけ気化量が増加し、ヘッドスペース2内への空気の残留が防止される。
【0051】
次に、上記装置の作用について説明する。
【0052】
(1)当初、図2に示す液化ガス添加装置のノズル12は、図5に示すように閉じられる。すなわち、ノズル12内でプラグ18の先端がシリンダ17の出口側に移動し、プラグ18と一体の開閉弁22がシリンダ17内の全溝19を閉じ、これにより液化ガスGの流れを遮断している。
【0053】
液化ガス添加装置の液化ガス貯留槽11内では、例えば液体窒素である液化ガスGが一定の液高で溜められている。
【0054】
(2)ボトル6のヘッドスペース2の容量、内容液Aの種類等諸種の条件に応じて液化ガスGの添加量を定め、液化ガス添加装置のサーボモータ28を駆動してプラグ18をシリンダ17内で所望の位置へと移動させ、例えば図6に示す位置に停止させる。これにより、プラグ18の先端とシリンダ17の内周面との間で画定される全溝19の断面積に対応して液化ガスGの添加量が定められる。
【0055】
また、プラグ18の移動に伴い開閉弁22が弁座26から離れてシリンダ17の全溝19と液化ガス貯留槽11との間を開き、これにより、液化ガス貯留槽11内の液化ガスGが全溝19を通って吐出する。
【0056】
(3)上記開閉弁22が開く前に、内容液Aがすでに充填されているボトル6がノズル12の下方を一定速度で連続走行する。
【0057】
ノズル12からは上記プラグ18の停止位置により設定した一定流量の液化ガスGが常時吐出される。すなわち、各溝19から各々一定流量の液化ガスGが細流となってヘッドスペース2内の液面aに向かって噴射される。
【0058】
この液化ガスGの細流は、図6に示すように、各々シリンダ軸に平行な細流となって、交わることなくヘッドスペース2内の内容液Aの液面aに到達する。
【0059】
このため、液化ガスGの細流は内容液Aの液面aに当たっても大きな衝撃を受けることなくヘッドスペース2内に留まり、ヘッドスペース2外への飛散が防止される。従って、すべてのボトル6について定量ずつ液化ガスGが供給される。また、液化ガスGがヘッドスペース2内に複数本の平行な細流となって供給されることから、ヘッドスペース2内の空気が液化ガスGと円滑に置換される。
【0060】
(4)上記ヘッドスペース2の容量、内容液の種類等、諸種の条件が変わった場合は、変化後の条件に応じて液化ガスGの添加量を定め、液化ガス添加装置のサーボモータ28を駆動してプラグ18をシリンダ17内で移動させ添加量に対応した位置に停止させる。
【0061】
この場合、液化ガスGの添加量を減らすときは、図6中プラグ18をシリンダ17の出口側へと降下させる。しかし、この場合でもシリンダ17の溝19が深さ一定で幅がシリンダ17の入口側から出口側に向かって徐々に狭まるように形成されることから、シリンダ出口の各溝19から流出する液化ガスGはシリンダ軸に略平行な細流となって交わることなくヘッドスペース2内の液面aに向かって吐出される。
【0062】
それゆえ、従来と異なり液化ガスGの流量を絞った場合であっても、液化ガスGの細流は内容液Aの液面aに当たった際に大きな衝撃を受けず、ヘッドスペース2外への飛散が防止され、すべてのボトル6について定量ずつ液化ガスGが供給される。また、液化ガスGは複数本の平行な細流となってヘッドスペース2内に供給されるため、ヘッドスペース2内の空気は液化ガスGと円滑に置換される。
【0063】
(5)液化ガスGがヘッドスペース2内に添加されたボトル6は、ノズル12の直下から離脱した後、キャッピングされ、図1のごとき飲料の瓶詰品が完成する。
【実施例】
【0064】
実施例1及び比較例1〜6について各々液化ガス添加用ノズルを作成し、都合7種類のノズルを用意した。
【0065】
また、実施例1及び比較例1〜6について、緑茶(緑茶中の酸素濃度:1.0ppm、緑茶の温度:22℃(常温))を充填した500mLのPET製ボトルを100本ずつ用意した。
【0066】
そして、各液化ガス添加用ノズルを用いてヘッドスペース内に目標内圧を60kPaとして液体窒素を添加した。
【0067】
その後、各ボトルの内圧を圧力計によって測定し、実施例1及び比較例1〜6の各々について、ボトル100本の内圧の平均値、バラツキ(最大値−最小値)を評価した。また、実施例1及び比較例1〜6の各々について、ボトル100本から無作為に10本抜き取り、酸素濃度計によりヘッドスペース内の酸素濃度を測定した。
【0068】
この評価結果は、表1の通りである。
【0069】
【表1】

【0070】
表1において、比較例1ではプラグの位置を変更しても溝の断面積が変わらないため、液化ガスの添加量の調整をすることができなかった。
【0071】
比較例2では水頭圧が低いため、図7(B)に示したと同様に液化ガスの細流が1本に集束した。
【0072】
比較例3では溝1本当たりの液化ガスの流量が多いため、内容液の液面で液化ガスに液跳ねを生じた。
【0073】
比較例4、5では溝の本数が多いため、細流が隣同士で接触し1本になった。
【0074】
また、比較例2〜6ではヘッドスペース内の酸素濃度が高く、満足できるものではなかった。
【0075】
以上の結果より、実施例1が、液化ガスの添加量の調整が可能であり、ボトルの内圧のバラツキが最も小さく、ヘッドスペース内の窒素置換効果が最も高いことが分かる。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施の形態及び実施例に限定されることなく種々の形態にて実施可能である。
【0077】
例えば、本発明の液化ガス添加用ノズルが適用される容器はボトルに限定されず、その他の種々の容器に適用することができる。また、液化ガスは窒素ガスのほか、アルゴンガス等他の不活性ガスとすることができる。また、液化ガス添加装置も図示例のものに限定されず、他の方式の液化ガス添加装置とすることができる。
【符号の説明】
【0078】
2…ヘッドスペース
6…ボトル
12…液化ガス添加用ノズル
17…シリンダ
18…プラグ
19…溝
22…開閉弁
G…液化ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のヘッドスペースに対向するように配置されるシリンダと、このシリンダ内にスライド可能に挿入されるプラグとを具備し、上記シリンダの内周面には、液化ガスを通す複数本の溝がシリンダ軸に平行に形成され、上記プラグには、このプラグの先端が上記シリンダの出口側に移動すると上記全溝を閉じて液化ガスの流れを遮断し、プラグ先端が上記シリンダの入口側へと移動すると上記全溝を開いて液化ガスの流れを許容する開閉弁が設けられた液化ガス添加用ノズルにおいて、上記シリンダの溝が、深さが略一定で、幅が上記シリンダの入口側から出口側に向かって徐々に狭まるように形成されることにより、上記プラグ先端が上記シリンダの入口側から出口側へと移動するに連れて、シリンダ出口側からの液化ガス吐出量が漸減可能とされ、かつ、上記プラグ先端の移動位置の如何を問わずシリンダ出口の各溝から流出する液化ガスがシリンダ軸に略平行な細流となって上記ヘッドスペース内に吐出可能とされたことを特徴とする液化ガス添加用ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の液化ガス添加用ノズルにおいて、上記シリンダの各溝は、シリンダの内面円筒形の母線を対称軸として左右対称に形成されたことを特徴とする液化ガス添加用ノズル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液化ガス添加用ノズルにおいて、上記各溝は、その両側壁間の挟角αが0°<α<20°となるように形成されたことを特徴とする液化ガス添加用ノズル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液化ガス添加用ノズルにおいて、上記溝の本数は、32本以下とすることを特徴とする液化ガス添加用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−101839(P2012−101839A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253843(P2010−253843)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(598164599)株式会社シーティーシー (3)
【Fターム(参考)】