説明

液化ガス用タンク

【課題】 液化ガス用タンクに差圧式液面計を使用する場合、導圧管内に気泡が発生することに起因して液面表示の変動が生じるが、その変動を小さくして正確で安定した液面表示を可能にする。
【解決手段】 液化ガス用タンク1には、低圧側および高圧側の各導圧管11・13を介して差圧式液面計10が接続されている。高圧側導圧管13のうち開口端14aを含む先端部14を、上記タンク1の底部付近の内部に水平に差し入れる。その導圧管13の先端部14における上半部に、当該導圧管13の壁面を貫通する小孔14bを複数設けるととくに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項に係る発明は、液体窒素や液体水素等を入れる液化ガス用タンクであって、導圧管を介して差圧式液面計が接続されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
液体窒素や液体水素等を入れる液化ガス用タンクにおいて、内部の液化ガスの量を知る手段として差圧式液面計が多用されている。図10は、液化ガス用タンク6における差圧式液面計60の一般的な使用態様を示す。図のようにタンク6は内槽6aと外槽6bとを有し、両槽間に断熱層としての真空層6cが設けられている。差圧式液面計60はタンク6の外に取り付けられ、タンク6の内槽6aのうち上部の気相と下部の液相の底部とに対し、それぞれ低圧側および高圧側の導圧管61・63にて接続される。それぞれの導圧管61・63における圧力の差が上記液面計60において検知され、液面高さとして表示される。液化ガス用タンクにおけるこうした差圧式液面計の使用は、たとえば下記の特許文献1・2に記載されている。
【0003】
特許文献1・2の例を含めて、従来、差圧式液面計において、差圧検出部と液相底部とを接続する高圧側導圧管は、タンクの底部に対し図11または図12(a)のように取り付けられている。すなわち、図11のように高圧側導圧管63の先端部64に鉛直部分64dを設け、その鉛直部分64dをタンク6の内槽6aの内部に差し入れて上向きに開口させるか、または図12(a)のように、内槽6a内に差し入れた鉛直部分64dの先に逆U字状の管64fをつなぐかするが従来の一般的な取付け形態である。図11の例だと導圧管63内に開口端64eから不純物が入りやすいが、それを改めたのが図12(a)の例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−139425号公報
【特許文献2】特開2000−310396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液化ガス用タンクでは、液面計がタンク外に設けられるため、導圧管の表面からその内側に向けて入熱があり、その結果、液相に接続された高圧側導圧管の内部にガスが発生する。すなわち図11に示すように、高圧側導圧管63のうち液面計寄りの部分にはガス部Yができ、先端部64付近においては液化ガス中に導入管の入熱による気泡Zが発生する。それは図12(a)の例においても同様であり、逆U字状の管64fの頂部から液面計にかけての部分にはガス部Yができ、その逆U字状の管の先の部分では、液化ガス中に気泡Zが発生する。
【0006】
高圧側導圧管を図11や図12(a)のように設ける従来の液化ガス用タンクでは、差圧式液面計が検知する差圧に脈動が生じる結果、その表示する液面が不安定に変動しがちである。その現象は、常温にて液相に保たれる一般液体用のタンクにおいては発生し得ない、液化ガス用タンクに特有のものだが、上記した気泡の発生と関連があるものと推測される。すなわち、図11の例において導圧管63の鉛直部分64dに気泡Zが発生してその量が変わると、液面計に伝わる圧力も変動する。とくに、気泡Zがそれぞれ大きくなったり気泡Z同士がつながってスラグ状になったりすると、圧力の変化は大きくなる。図12(a)の例では、逆U字状の管64fにガスが多く溜まって開口端64gから抜け出ると、検知される差圧(液位)は同(b)に示すように変化するものと考えられる。
【0007】
請求項に係る発明は、液化ガス用タンクに差圧式液面計を使用する場合の上記のような差圧変動を小さくし、正確で安定した液面表示を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項に係る発明は、高圧側および低圧側の各導圧管を介して差圧式液面計が接続された液化ガス用タンクであって、高圧側導圧管のうち開口端を含む先端部が、上記タンクの底部付近の内部に水平(ほぼ水平である場合を含む。以下同様)に差し入れられていることを特徴とする。たとえば図1・図2のように、液化ガス用タンク(2槽構造のタンクであればその内槽)に差し入れられる高圧側導圧管の先端部を水平にし、少なくともタンクの内壁よりも内側の部分、すなわちタンクの内部に鉛直部分や逆U字状の部分がないようにするのである。なお、タンク内の気相に接続する低圧側の導圧管は、開口端を含む先端部を気相内に任意の向きに設け、それより任意の経路で差圧式液面計に接続すればよい。
なお、上記の「底部付近」「内部」「ほぼ水平」についてはつぎのとおりとする。
1)底部付近: タンク底面よりも上方であって導圧管取付の都合上特段の支障が生じない底部近傍をいう。ただし、タンク底面から導圧管までの距離Xは、タンク底面と導圧管の溶接部の干渉を避けるために、タンク底面板厚tの5倍以上とする。
2)内部: 高圧側導圧管の先端部をタンクの内部に差し入れるとは、先端部がタンク内部に突出するように差し入れるだけではなく、先端部がタンク内部の内面と面一になるよう差し入れることをも含む。
3)ほぼ水平: 水平だけではなく、上向きに1°〜10°程度傾斜させたものを含む。
高圧側導圧管等が上記のように取り付けられると、高圧側・低圧側の両導圧管の差圧の変動が抑制され、差圧式液面計による液面表示が正確かつ安定したものとなる。それは、後述する試験によって確認されたが、以下のような理由によると考えることができる。すなわち、高圧側導圧管の先端部が水平であると、その内部に気泡が発生したりその量が変化したりしても、導圧管内の液化ガスのヘッドはほとんど変化しない。図11のように導圧管の先端部が鉛直であるなら、その鉛直部分における気泡の量によってヘッドが大きく変化するが、導圧管の先端部が水平であればその変化の幅は小さいわけである。また、図12のように鉛直部分の先に逆U字状の部分があれば、そこにガスが溜まったり抜けたりすることによる圧力変動が生じるが、導圧管の先端部が水平であればガスが溜まることもない。
また、図11や図12(a)の例のように導圧管先端部の鉛直部分がタンクの底部からさらに下方へ続くと、その部分における液面との位置の関係で差圧にドリフト(ずれ)が生じ、結果として液面計による液面表示を補正する必要があるが、先端部に鉛直部分がないなら、当該先端部での圧力が正確に検出されるため、補正をせずに正確な液面を知ることができる。そのほか、先端部が水平であると、図11の例とは違って開口端から不純物が入る恐れもない。
【0009】
上記高圧側導圧管の先端部における上半部(またはその一部)に、当該導圧管の壁面を貫通する小孔が複数設けられていると好ましい。小孔は、当該導圧管の開口端付近の上半部に、たとえば図1(b)や図2(b)のように設ける。
そのように小孔があると、上記導圧管内に発生した気泡が、それら小孔を通じて速やかにタンク内に放出され、その導圧管内に溜まりにくい。導圧管内に気泡が溜まりにくいと、それが一気に抜け出ることによる導圧管内の圧力変化も発生しがたく、したがって差圧式液面計に伝わる差圧の変動がさらに抑制される。
【0010】
上記高圧側導圧管の先端部における開口端に、両端の開口した短管が軸心を縦(鉛直またはほぼ鉛直)にして接続されているのも好ましい。短管は、内径の2〜5倍程度の長さをもつ、たとえば図3(a)のようなものである。
両端の開口した縦向きの短管内では、上記導圧管内で発生した気泡が上へ移動して上端の開口から出るとき、下端の開口から液化ガスが流入して短管内に流れが生じやすい。そしてそれにより、上記導圧管内の気泡は滞留することなく連続的にスムーズに排出され、排出にともなう上記導圧管内での圧力変動がさらに小さくなる。
なお、高圧側導圧管内の気泡が滞留することなく連続的にスムーズに排出されるようにするためには、図3(b)のように、当該導圧管の先端部付近を僅かに上向きに傾斜させるのもよい。つまり、開口端に近い部分が上になるよう、15°程度以下の範囲で先端部に傾斜を付けるのである。
【0011】
上記タンクの底部の一部に、縦向き(鉛直または鉛直に近い)の壁面を有するポット(凹部)が設けられていて、当該ポットの縦向きの壁面から、上記高圧側導圧管の先端部が上記タンクの内部に差し入れられているのも好ましい。図2(a)・(b)はその例である。
タンクの底部に上記のようなポット部を設けると、タンクの形状がどのようなものであっても、高圧側導圧管の先端部をタンク底部の適切な位置に設けることができる。たとえば、上記タンクが図2(a)のように横長のものであってもそれが可能である。
【0012】
上記高圧側導圧管および差圧式液面計が、圧力変動を抑制するためのダンパを有していないようにするのもよい。
液化ガス用タンクに差圧式液面計を設ける場合、従来は、高圧側導圧管または差圧式液面計にダンパを設けて、圧力変動による液面表示の変化を抑制するのが一般的であった。しかし、発明による液化ガス用タンクでは、上記のとおり差圧変動が抑制されて液面表示が安定することから、上記いずれの箇所にもダンパを付設する必要がない。ダンパを設けないなら、タンクに差圧式液面計を取り付けるための構成は大幅に簡素化され、必要なコストも顕著に削減される。
【0013】
上記タンクが、液体窒素、液体水素、液体酸素、液体ヘリウムまたはLNGのうちいずれかを入れたものであると有意義である。
それらの液化ガスは沸点が−160℃以下と低く、そのタンクの外に差圧式液面計を取り付けると高圧側導圧管の内部において活発に気泡が発生する。そのため、従来のように導圧管を設けると差圧式液面計での差圧変動がより激しく、正確で安定した液面表示を得ることは難しい。したがって、上記のような液化ガスのためのタンクにおいては、発明の構成がとくに有意義な作用効果を発揮するといえる。
【発明の効果】
【0014】
発明の液化ガス用タンクによれば、高圧側・低圧側の導圧管を通じて差圧式液面計に伝わる圧力の変動が抑制され、したがって差圧式液面計による液面表示が正確かつ安定したものとなる。鉛直部分の長さ等の関係で生じるドリフトを補正する必要がないうえ、高圧側導圧管の開口端から不純物が入る恐れがないという利点もある。
【0015】
更に、上記タンクの底部に縦向きの壁面を有するポットを設け、当該壁面から高圧側導圧管の先端部を差し入れると、タンクの形状によらず適切に導圧管を設けることができ好ましい液面表示を得ることができる。
また、上記高圧側導圧管および差圧式液面計に圧力変動抑制用のダンパを付設しないようにすると、構成を簡素化して設備コストを削減することができる。
液体窒素、液体水素、液体酸素、液体ヘリウムまたはLNG用のタンクに上記構成を採用する場合にはとくに有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、発明による液化ガス用タンクの一例を示す断面図であり、同(b),(c)は、同(a)における詳細として高圧側導圧管の先端部を示す図である。
【図2】図2(a)は、発明による液化ガス用タンクについて他の例を示す断面図であり、同(b)は、同(a)におけるb部詳細として高圧側導圧管の先端部を示す図である。
【図3】図3(a)・(b)は、高圧側導圧管の先端部について図1・図2の例とは異なる例を示す断面図である。
【図4】各種形式の高圧側導圧管を使用して行った実験について、設備の概要を示す断面図および仕様一覧である。
【図5】図4の設備により行った実験の結果であって、高圧側導圧管の先端部にタイプ1のものを使用した場合に検知された差圧等を示す線図である。
【図6】図4の設備により行った実験の結果であって、高圧側導圧管の先端部にタイプ2のものを使用した場合に検知された差圧等を示す線図である。
【図7】図4の設備により行った実験の結果であって、高圧側導圧管の先端部にタイプ3のものを使用した場合に検知された差圧等を示す線図である。
【図8】図4の設備により行った実験の結果であって、高圧側導圧管の先端部にタイプ4のもの(発明品)を使用した場合に検知された差圧等を示す線図である。
【図9】図4の設備により行った実験の結果であって、上記の各先端部を使用した場合に検知された液面精度を示す線図である。
【図10】従来の一般的な液化ガス用タンクを示す断面図である。
【図11】従来の液化ガス用タンクに使用される高圧側導圧管の先端部の形態を示す断面図である。
【図12】図2(a)は、従来の液化ガス用タンクに使用される、図10のものとは異なる高圧側導圧管の先端部の形態を示す断面図で、同(b)は、その高圧側導圧管を使用する場合に発生する差圧の変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図9に発明の実施の形態を紹介する。まず図1〜図3は、発明による液化ガス用タンクの構成をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示す液化ガス用タンク1は、液体窒素や液体水素等の液化ガスXを保持する縦型円筒形状のもので、内槽1aと外槽1b、およびそれらの間に断熱層として設けられた真空層1cとから構成されている。内部の液化ガスの量を知るために、タンク1の外側には差圧式液面計10が取り付けられ、低圧側および高圧側の導圧管11・13によって内槽1a内に接続されている。すなわち低圧側導圧管11は、液面計10に近い部分から先が真空層1c内に通されており、内槽1aの壁面を貫通してその先端部12が気相の上部に開口している。一方の高圧側導圧管13は、やはり液面計10の近くから先が真空層1c内に配置されていて、先端部14が内槽1aの壁面を貫通して液相の底部に開口している。図10に示した例と同様、双方の導圧管11・13に伝わる圧力の差を上記の液面計10が検知し、その差圧を液化ガスXの液面として表示する。なお導圧管11・13としては、液化ガスへの入熱を少なくするために、直径(内径)が5〜15mm程度の細い管(金属管等)を使用する。
【0019】
図1の例では、高圧側導圧管13の先端部14を水平にし、タンク1における内槽1aの鉛直壁面を貫通させて取り付けている。内槽1aのその壁面から開口端14aまでの突出長さは、たとえば0〜100mm程度とする。水平にしたこの先端部14には、液面計10に近い側が高位となる鉛直な部分を連続させて液面計10に接続し、図11の例のように開口端に近い側が上になるような鉛直部分は設けていない。
そして図1(b)のように、導圧管13の先端部14のうち開口端14aに近い部分における上半部の一部に、導圧管13の壁面を貫通する小孔14bを複数形成している。小孔14bは直径を1〜3mm程度とし、その数はたとえば5〜30個程度とする。
【0020】
この例では、導圧管13の先端部14が水平であることから、その内部に気泡が発生したり気泡の量が変化したりしても導圧管13内の圧力はほとんど変化しない。そのため、高圧側導圧管13と低圧側導圧管11との間の差圧の変動が小さく、差圧式液面計による液面表示が正確かつ安定したものとなる。
また、先端部14に複数の小孔14bがあるため、発生した気泡が小孔14bを通じてスムーズにタンク1内に放出され、導圧管13内には溜まりにくい。したがって、気泡が抜け出ることによる導圧管13内の圧力変化が小さく、液面計10に伝わる上記差圧の変動がさらに抑制される。導圧管13の先端部14の作用で差圧の変動が抑制されるため、導圧管11・13にも差圧式液面計10にも、圧力変動抑制用のダンパを付設する必要はない。
【0021】
図2(a)・(b)に示す液化ガス用タンク2も液化ガスXを保持するもので、中心線を水平にした横型円筒形状のものである。このタンク2も内槽2aと外槽2b、および断熱層としての真空層2cとで構成されている。外側に差圧式液面計20が取り付けられ、図1の例と同様、低圧側および高圧側の導圧管21・23によって内槽2a内の気相および液相底部にそれぞれ接続されている。導圧管21・23の直径についても、図1の例と同様である。
【0022】
この例では、図2(b)のように、タンク2の底部の一部に鉛直壁面を有するポット2dを設け、当該鉛直壁面を貫通させることにより、高圧側導圧管23の先端部24を内槽2a内に突き出させている。内槽2a内に入れた先端部24は、開口端24aを含めて水平とし、やはり0〜100mm程度が内槽2a内に突出するようにする。この水平の先端部24には、図2(a)のように水平の部分をつづけ、さらには次第に高位となる部分を設けて液面計20に接続している。開口端24aに近い側が上になるような鉛直部分等は、この導圧管23にも設けていない。
そしてこの導圧管23の先端部24においても、図2(b)のように、開口端24aに近い部分の上半部に、導圧管23の壁面を貫通する小孔24bを複数形成している。小孔24bの直径や個数は、図1(b)の例と同様である。
【0023】
この図2の例でも、先端部24が水平であるうえその上半部に複数の小孔14bがあるため、導圧管13内の圧力変化が抑制され、差圧式液面計10に伝わる差圧の変動が小さく、したがって液面計10による液面表示が正確かつ安定したものとなる。
【0024】
高圧側導圧管において発生する気泡をスムーズにタンク内に放出するためには、高圧側導圧管の先端部を図1(b)・図2(b)のようにするばかりでなく、図3(a)または(b)のようにすることも好ましい。
図3(a)の例は、高圧側導圧管33の先端部34における開口端34aに、両端の開口した短管34cを鉛直向きに接続したものである。短管34cは、導圧管33と同程度の内径をもち、その内径の2〜5倍程度の長さを有するものにするとよい。短管34c内では、気泡Zの上向きの移動にともなって液化ガスの流れが生じるため、導圧管33内の気泡Zも連続的にスムーズに排出され、導圧管33内の圧力変動が効果的に抑制される。
【0025】
また図3(b)の例は、高圧側導圧管43の先端部44を、開口端44a寄りの部分がほぼ水平となるよう上向きに1〜10°程度傾斜させたものである。このようにすることによっても気泡Zが連続的にスムーズに排出されやすくなり、気泡Zの動きにともなう導圧管43内の圧力変動が小さくなる。
【実施例1】
【0026】
図4〜図9に、差圧式液面計の計測精度を確認するために行った実験について示す。まず図4は、実験に用いた小型の液化ガス用タンク3の縦断面図に、低圧導圧管51と高圧側導圧管53の仕様を併記したものである。図示のタンク3は、直径200mm・高さ400mmの内槽3aを外槽3b内に収容して両者間に真空層3cを設けたもので、内槽3aには試験液として液体窒素を貯留させる。内槽3a内の気相部分に低圧導圧管51を接続するとともに、内槽3aの底部の液相部分に高圧導圧管53を接続し、両導圧管51・53を差圧式液面計(図示省略)につないでいる。
【0027】
実験用の装置本体および使用した計測系の概要を表1および表2に示す。内槽3aの多数箇所に温度測定用のポイントセンサーを配置し、上記差圧式液面計による計測精度は、それらポイントセンサーによるデータに基づいて評価する。
【表1】

【表2】

【0028】
高圧側導圧管53には、内槽3aの液相底部に取り付ける先端部として4種類のものを用意し、いずれか1つを導圧管53につないで使用することとしている。その4種類とは図4に示すつぎのものである。すなわち、
タイプ1:曲げ半径70mmの逆U字状の管を鉛直部分の先に接続した先端部54A
タイプ2:曲げ半径30mmの逆U字状の管を鉛直部分の先に接続した先端部54B
タイプ3:上を向いた開口端につづく鉛直部分を有する先端部54C
タイプ4:内槽3aの側壁に取付けられた水平な先端部54D(本発明によるもの)
【0029】
高圧側導圧管53の先端部として、上記各タイプのものを接続した場合の差圧式液面計の差圧変動(つまり液面表示の変化)を、図5〜図8に示す。
タイプ1およびタイプ2の先端部(54A・54B)を使用した場合には、上記差圧はそれぞれ図5および図6のように、1〜2分前後の周期と0.1〜0.5kPa前後の振幅をもって大きく振動した。その周期・振幅は、先端部の曲げ形状に基づく気泡の動きに影響されるようで、曲げ半径の大きいタイプ1を使用する場合の周期は、曲げ半径の小さいタイプ2の場合の約2倍である。また、タイプ3の先端部(54C)を使用する場合には、図7のように、タイプ1・2の場合よりは短い周期にて0.05kPa前後の振幅で振動した。しかし、発明によるタイプ4の先端部(54D)を高圧側導圧管53に使用する場合には、図8のとおり、他のタイプのものと比べて差圧の振動はきわめて小さくなった。このタイプ4の場合は気泡が早く抜けるために液位精度がよいものと考えられ、タイプ3のものは、鉛直部分での気泡による液位振動を拾うことからタイプ4のものより精度が低くなると想像される。
【0030】
図9には、上記各タイプの先端部を使用した場合の、差圧式液面計が示す液面のドリフト(ずれ)について実測値を示す。図5〜図8の実験とは別に、図4のタンク3において内槽3aの液面高さを300mmに設定したうえ、高圧側導圧管53の先に各タイプの先端部を接続し、それぞれの場合における差圧式液面計の表示データを描いて図9の結果を得た。
【0031】
図9に表れた表示液面のドリフトについて平均値をとり、上記先端部のタイプ別に整理すると表3のようになる。発明によるタイプ4の先端部(54D)を使用する場合には、ドリフトについても、他の先端部を使用する場合より好ましい結果が得られた。
【表3】

【符号の説明】
【0032】
1・2・3 液化ガス用タンク
2d ポット
10・20 差圧式液面計
11・21・51 低圧側導圧管
13・23・33・43・53 高圧側導圧管
14・24・34・44・54(54A〜54D) 先端部
14a・24a・34a・44a 開口端
14b・24b 小孔
34c 短管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導圧管を介して差圧式液面計が接続された液化ガス用タンクであって、
高圧側導圧管のうち開口端を含む先端部が、上記タンクの底部付近の内部に水平またはほぼ水平に差し入れられていることを特徴とする液化ガス用タンク。
【請求項2】
上記高圧側導圧管の先端部における上半部に、当該導圧管の壁面を貫通する小孔が複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス用タンク。
【請求項3】
上記高圧側導圧管の先端部における開口端に、両端の開口した短管が軸心を鉛直に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液化ガス用タンク。
【請求項4】
鉛直方向の壁面を有するポットが上記タンクの底部の一部に設けられていて、当該ポットの鉛直方向の壁面から、上記高圧側導圧管の先端部が上記タンクの内部に差し入れられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液化ガス用タンク。
【請求項5】
上記高圧側導圧管および差圧式液面計が、圧力変動を抑制するためのダンパを有していないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液化ガス用タンク。
【請求項6】
液体窒素、液体水素、液体酸素、液体ヘリウムまたはLNGのうちいずれかを入れたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液化ガス用タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−243210(P2010−243210A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89471(P2009−89471)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】