説明

液化ジメチルエーテルによる水および脂肪酸含有廃油脂類からの脂肪酸と油脂類の液化・回収方法

【課題】水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂を選択的に脱水・回収する方法を提供すること。
【解決手段】水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテル(DME)を抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収することにより、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収を行う。本発明の方法は、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造原料として用いられている水を含有する食用油脂類、水及び/又は非油脂類を含有する廃食用油脂類或いは廃食用油脂類以外の廃油脂類等に適用することができ、バイオディーゼル燃料の製造に用いられる原料油脂類から、バイオディーゼル燃料の生成反応を阻害する要因となる水分等を簡便、迅速かつ低エネルギーに除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂を選択的に脱水・回収する方法、特に、ディーゼル燃料の製造に際し、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、ディーゼル燃料の製造用の原料油を調製するために、該水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂を選択的に脱水・回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止や資源循環の観点から、廃棄物系バイオマスからバイオエタノールやバイオディーゼル燃料(Bio Diesel Fuel:BDF)などのバイオ燃料の製造技術に関する技術開発に注目が集まっている。バイオディーゼル燃料は、ナタネ油、パーム油、オリーブ油、ヒマワリ油、ココナッツ油、大豆油、コメ油等の植物油、牛脂等の獣脂、魚油や、廃食用油などの生物由来の油脂、或いは、トラップグリース(排水表面に浮かぶ泥状の油脂類)のような低品質廃油脂類を原料として合成されるディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)であり、欧州、北米、中南米、東南アジアなどですでに普及しつつある。
【0003】
バイオディーゼル燃料(BDF)は、油脂類の主成分であるモノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドを、エタノールのような低級アルコールとエステル交換反応を行なうことにより製造されるが、従来、そのエステル交換反応として、種々の方法が提案されている。例えば、一般的には、油脂類を、NaOH、KOHのようなアルカリ触媒の存在で、メタノールのような低級アルコールを用いてエステル交換反応を行なうアルカリ触媒法が用いられている(特開平7−197047号公報、特開平10−245586号公報、特開2005−350630号公報、特開2005−350631号公報、特開2005−350632号公報)。
【0004】
また、温度250〜300℃、圧力3〜15Mpaの温度及び圧力により、アルコールを超臨界状態に保ち、脂肪酸のアルキルエステルを製造する方法(超臨界法)(特開2000−109833号公報、特開2000−143586号公報)、カリウム化合物と酸化ジルコニウムからなる固体塩基性触媒、或いは、ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物を含んでなる触媒のような固定触媒を用いる方法(特開2000−44984号公報、特開2002−294277号公報)、メチルアミン、ジメチルアミンのような揮発性アミンからなる揮発性触媒を用いる方法(特開2002−167356号公報)等のような各種の方法が提案されている。
【0005】
上記のように、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造のために、各種の方法が知られているが、これらの方法を用いてバイオディーゼル燃料(BDF)を製造するに際しては、原料として用いる廃油脂類等のバイオディーゼル燃料(BDF)生成反応の阻害物質の除去が必要となる。特に、該バイオディーゼル燃料(BDF)生成反応の阻害物質としては、廃油脂類に含まれる水分や遊離脂肪酸等が問題となる。例えば、アメリカでは、廃食用油に代えて、トラップグリースのようなより低品質な廃油脂類をBDF原料として利用することが検討されている(Trans. ASAE, 44, 1429-1436,2001)。トラップグリースとは、公共下水道排水の前に設置されている阻集器内の排水表面に浮かぶ泥状の油脂類であり、遊離脂肪酸(Free Fatty Acid:FFA)や水分を多く含んでいる。本発明者らの調査では、トラップグリースの油脂中のFFA含有量は約40〜100質量%と高く、また、水分含有量もトラップグリース全体の約20〜60質量%と高かった。
【0006】
因みに、水分や遊離脂肪酸(FFA)は、バイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応を阻害するため、例えば、BDF製法として現在主流である上記均相アルカリ法では、原料として用い得る油脂類の遊離脂肪酸(FFA)含有量や水分含有量の基準が設定されている(廃棄物学会論文誌、17、193−203、2006)。しかし、それらの基準値は、上記のトラップグリースにおける遊離脂肪酸(FFA)含有量や水分含有量の値の1桁以上低いレベルに設定されている。したがって、トラップグリース等の低品質な廃油脂類を、廃食用油等の比較的高品質な廃油脂類の代わりにそのまま用いることはできず、低品質な廃油脂類を均相アルカリ法などのBDFの製造法に用いるためには、低品質な廃油脂類から脱水したり、遊離脂肪酸(FFA)を除去するなどの前処理が必要とされる。
【0007】
バイオディーゼル燃料(BDF)生成反応の阻害物質において、例えば、遊離脂肪酸(FFA)の除去は、遊離脂肪酸(FFA)をメタノールなどのアルコールと反応させて、脂肪酸アルキルエステルを生成することにより達成し得ることが知られている。一方、水分含有量の高い廃油脂や汚泥を脱水する従来の方法として、(減圧)加熱脱水法、フィルタープレス法、遠心分離法などが知られているが、フィルタープレス法や遠心分離法単独では、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造法に用い得るレベルまでは脱水することができず、共に(減圧)加熱脱水法を用いる必要がある。また、原料油から遊離脂肪酸を除去するために、原料油を減圧下で温度50〜150℃以下の条件下で遊離脂肪酸を留去する工程を設ける方法も知られている(特開2005−350631号公報)。
【0008】
しかし、実用的なスケールでバイオディーゼル燃料(BDF)を製造するとなると、その原料油脂類は相当な量となり、その原料油脂類に対して(減圧)加熱脱水法を適用する際には、莫大な蒸発潜熱を投入する必要が生じる。そのため、地球環境への影響やコスト面において、十分実用的とはいえなかった。また、低品質な廃油脂類のうち、特にトラップグリースは、泥状やゲル状であることが多く、脱水できたとしても、固体となる場合が多かった。そのため、低品質な廃油脂類を、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造等の反応系に適用するには、脱水した上で、更に、適当な溶媒で液化する必要もあった。このように、バイオディーゼル燃料(BDF)の実用的な生産においては、該バイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応の阻害物質である、水や、遊離脂肪酸等の分離が重要な課題となっているが、バイオディーゼル燃料(BDF)製造における原料油脂類から、該阻害物質を、低エネルギー、かつ、低コストで有効に分離でき、しかも、各種の原料油脂類に対して適用できる有効な除去方法は、開発されていない。
【0009】
他方、エーテル化合物の一種であり、常温常圧(約0.1MPa)下で気体であり、0.5MPa程度の圧力下では液体となる性状の物質として、ジメチルエーテル(DME)が知られている。ジメチルエーテルは、現在エアゾールの噴射剤として利用されており、また近年は、代替ディーゼルや代替プロパンとしても注目されている。最近、このジメチルエーテルを、脱水に用いる技術が開示されている。例えば、国際公開WO2003/101579号パンフレットには、ジメチルエーテル(DME)の液化物を、水分含有固体(石炭等)に接触させて、この液化ジメチルエーテル(DME)に、固体含有水分を溶解させて、固体の水分を除去する方法が開示されている。
【0010】
また、特開2007−83122号公報には、生理用品や紙おむつ、或いはウッドチップや残飯等の含水物質に、ジメチルエーテル等の常温常圧の条件下で気体である物質の液化物を接触させ、該液化物に該含水物質中の水分を溶解させて、含水物質の脱水を行なう方法が開示されている。しかしながら、該開示された方法の対象分野は、バイオディーゼル燃料(BDF)製造に用いられる原料油脂類のようなものとは、全く異なるものであり、その脱水方法そのものもバイオディーゼル燃料(BDF)製造に用いられる原料油脂類に適用されるものとは異なるものである。
【0011】
【特許文献1】特開平7−197047号公報。
【特許文献2】特開平10−245586号公報。
【特許文献3】特開2000−44984号公報。
【特許文献4】特開2000−109833号公報。
【特許文献5】特開2000−143586号公報。
【特許文献6】特開2002−167356号公報。
【特許文献7】特開2002−294277号公報。
【特許文献8】特開2005−350630号公報。
【特許文献9】特開2005−350631号公報。
【特許文献10】特開2005−350632号公報。
【特許文献11】特開2007−83122号公報。
【特許文献12】国際公開WO2003/101579号パンフレット
【非特許文献1】Trans. ASAE, 44, 1429-1436,2001。
【非特許文献2】廃棄物学会論文誌、17、193−203、2006。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂を選択的に脱水・回収する方法、特に、バイオディーゼル燃料の製造に際し、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、バイオディーゼル燃料の製造用として有効に用いることができる原料油を調製するために、該水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂を、簡便、迅速かつ低エネルギーで、選択的に脱水・回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造に際し、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む廃油脂類等から、バイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応を阻害する要因となる水分等を、簡便かつ効果的に除去し、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造用として有効に用いることができる原料油を調製する方法について、鋭意検討する中で、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテル(DME)を抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル(DME)溶液として、選択的に脱水、回収することにより、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収を行うことができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明において、脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収を行う水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質としては、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造原料として用いられている水を含有する食用油脂類、水及び/又は非油脂類を含有する廃食用油脂類或いは廃食用油脂類以外の廃油脂類等を挙げることができる。本発明の油脂の選択的脱水・回収方法は、水を含有する油脂類が、泥状又はゲル状の脂肪酸及び/又は油脂の固形物を含有しているものに対しても、有効に適用することができる。
【0015】
本発明の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂を選択的に脱水・回収する方法は、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテル(DME)を抽出溶媒として添加、攪拌して、液相の均一相を形成し、その後静置して、液化ジメチルエーテル(DME)相と水相との二液相を形成させ、該相より液化ジメチルエーテル(DME)相を分離することにより行うことができる。本発明においては、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテル(DME)を抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル(DME)溶液として、選択的に脱水、回収するに際し、抽出溶媒に軽油成分を添加することにより、脱水効率を上げ、分離した脂肪酸及び/又は油脂の含水率を1wt%以下の極めて低い含水率とすることができる。かかる場合の軽油成分としては、ヘキサデカン等の炭化水素を挙げることができる。また、軽油成分の添加量としては、抽出処理液全量に対して、10〜50容量%の範囲で添加されることが好ましい。
【0016】
本発明において、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテル(DME)を抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル(DME)溶液として、選択的に脱水、回収する処理は、温度10〜35℃の範囲で行なうことが好ましい。特に、該選択的脱水、回収処理における温度を、30〜35℃の範囲に調節して行なうことにより、脱水効率を上げ、分離した脂肪酸及び/又は油脂の含水率を1〜3wt%低い含水率とすることができる。
【0017】
また、本発明は、本発明の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法により、脱水された脂肪酸及び/又は油脂と、液化ジメチルエーテル(DME)とを含む物質を調製することからなる、バイオディーゼル燃料(BDF)製造のための原料油の調製方法を包含する。該バイオディーゼル燃料(BDF)の製造法としては、特に限定されないが、液化ジメチルエーテル(DME)を添加した均一相系でのエステル交換反応を行なうバイオディーゼル燃料の製造法の原料油の調製方法(別途、特許出願:特願2007−210501)に適用して、極めて有利な効果を得ることができる。すなわち、本発明における選択的に脱水、回収される脂肪酸及び/又は油脂は、液化ジメチルエーテル(DME)の溶液として、回収することができ、かかる油脂類はそのままバイオディーゼル燃料(BDF)製造のための原料油として用いることができ、更に、含有される液化ジメチルエーテル(DME)もそのままバイオディーゼル燃料(BDF)の製造に利用することができるからである。
【0018】
更に、本発明のバイオディーゼル燃料(BDF)製造のための原料油の調製方法は、酸触媒、低級アルコールを用いた遊離脂肪酸のエステル化反応と併用して行なうことができる。該酸触媒、低級アルコールを用いた遊離脂肪酸のエステル化反応により、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造に用いられる原料油脂類に含有される遊離脂肪酸を、エステル化(バイオディーゼル燃料化)して、バイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応を阻害する要因となる水分及び遊離脂肪酸を同時に除去することができる。
【0019】
すなわち具体的には本発明は、(1)水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収することを特徴とする水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法や、
(2)水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質が、水を含有する食用油脂類、水及び/又は非油脂類を含有する廃食用油脂類或いは廃食用油脂類以外の廃油脂類であることを特徴とする上記(1)記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法や、
(3)水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質が、泥状又はゲル状の脂肪酸及び/又は油脂の固形物を含有していることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法や、
(4)水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加、攪拌して、液相の均一相を形成し、その後静置して、液化ジメチルエーテル相と水相との二液相を形成させ、該相より液化ジメチルエーテル相を分離することよりなる上記(1)〜(3)のいずれか記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法や、
(5)水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収するに際し、抽出溶媒に軽油成分を添加することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法や、
(6)軽油成分の添加が、抽出処理液全量に対して、10〜50容量%の範囲で添加されることを特徴とする上記(5)記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法や、
(7)水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収する処理を、温度10〜35℃の範囲で行なうことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法や、
(8)水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収する処理を、温度30〜35℃の範囲に調整して行なうことを特徴とする上記(7)記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法からなる。
【0020】
また本発明は、(9)上記(1)〜(8)のいずれか記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法により、脱水された脂肪酸及び/又は油脂と、液化ジメチルエーテルとを含む物質を調製することを特徴とする、バイオディーゼル燃料製造のための原料油の調製方法や、
(10)バイオディーゼル燃料の製造が、液化ジメチルエーテルを添加した均一相系でのエステル交換反応を行なう方法によるものであることを特徴とする上記(9)記載のバイオディーゼル燃料製造のための原料油の調製方法や、
(11)バイオディーゼル燃料製造のための原料油の調製が、酸触媒、低級アルコールを用いた遊離脂肪酸のエステル化反応と併用して行なわれることを特徴とする上記(9)又は(10)記載のバイオディーゼル燃料製造のための原料油の調製方法からなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造に際し、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む廃油脂類等から、バイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応を阻害する要因となる水分等を、従来のような加熱処理や減圧処理を用いることなく、低エネルギーで、簡便かつ効果的に除去することが可能であり、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造における実用化技術として、極めて高い有用性を有する。特に、本発明の方法は、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造原料として用いられている水を含有する食用油脂類、水及び/又は非油脂類を含有する廃食用油脂類或いは廃食用油脂類以外の廃油脂類等の広い範囲の油脂類に適用することができ、トラップグリースなどの特に低品質な廃油脂類からも、バイオディーゼル燃料を製造することが可能な原料油を、迅速かつ低エネルギーで調製することができ、環境対策の点でも非常に有用である。
【0022】
更に、本発明の方法によって、調製されるバイオディーゼル燃料(BDF)の製造用原料油は、バイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応を阻害する要因となる水分等を、簡便かつ効果的に除去したということにとどまらず、該原料油を用いたバイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応を促進し、更に、該バイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応によって、生成された反応液からのバイオディーゼル燃料(BDF)成分の分離、回収を簡便かつ容易に行うことを可能とするという、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造における極めて高い実用上の効果をもたらすものである。したがって、本発明の技術は、バイオディーゼル燃料(BDF)の実用化に、多大の貢献を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収することを特徴とする水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法からなる。なお、本発明における「脱水」には、水分を完全に除去する場合だけでなく、水分を減少させる場合も包含される。
【0024】
本発明の脱水方法に用いる、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質としては、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含んでいる物質である限り特に制限されないが、
バイオディーゼル燃料(BDF)の製造原料として用いられている水を含有する食用油脂類、水及び/又は非油脂類を含有する廃食用油脂類或いは廃食用油脂類以外の廃油脂類等が例示される。また、該廃油脂類としては、固体状、液体状、ゲル状、泥状等のいずれの前記物質であっても用いることができ、具体的には、トラップグリース(公共下水道排水の前に設置されている阻集器内の排水表面に浮かぶ泥状の油脂含有物)や、水を含んだ廃食用油(液体状、固体状、ゲル状等)などを例示することができる。
【0025】
上記脂肪酸としては、特に制限されず、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、分岐脂肪酸、ヒドロキシル脂肪酸等のいずれであってもよいが、C12〜C28の脂肪酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸を好ましく例示することができ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸等を好適に例示することができる。
【0026】
上記油脂としては、特に制限されず、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド等のいずれであってもよいが、トリグリセリドであることが好ましく、トリグリセリンの構成脂肪酸がC12〜C28の脂肪酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸であるトリグリセリドをより好ましく例示することができる。上記油脂として具体的には、大豆油、ゴマ油、ナタネ油、コメ油、ヌカ油、ツバキ油、サフラワー油 (ベニバナ油)、パーム油、パーム殻油、ヤシ油、綿実油、ヒマワリ油、荏油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、魚油、肝油、鮫油等の油や、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)、鶏油、シュマルツ、ショートニング、バター、マーガリン、カカオバター、硬化油等の脂肪を例示することができる。この他、非食用の植物油脂も用いることができる。
【0027】
上記の本発明の物質には、水と脂肪酸及び/又は油脂以外に、繊維質等の固形分などの任意の成分をさらに含んでいてもよい。なお、上記本発明の物質の含水率は特に制限されないが、本発明の脱水方法のメリットをより多く享受する観点からは、本発明の物質全量に対して10wt%以上であることが好ましく、20wt%以上であることがより好ましく、40wt%以上であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明において、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質から、脂肪酸及び/又は油脂を選択的に脱水・回収するには、水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加、攪拌して、液相の均一相を形成し、その後静置して、液化ジメチルエーテル相と水相との二液相を形成させ、該相より液化ジメチルエーテル相を分離することにより行われるが、本発明の脱水・回収方法の工程におけるエーテル相と水相との二液相の形成は、例えば、本発明の物質にエーテル化合物を含有させた後、静置や遠心するなどして下相の水相と、上相のエーテル相に分離させることによって行うことができるが、より高い脱水効率をより簡便に得る観点からは、本発明の物質にエーテル化合物を含有させた後に攪拌してから静置することが好ましい。また、本発明の物質中に固形物が含まれている場合は、通常沈殿し、下相である水相に移行する。
【0029】
上記脱水・回収方法の工程において、本発明の物質に含有させるエーテル化合物の量は、特に制限されないが、一方で、本発明の物質中の脂肪酸や油脂を溶解するのに十分な量であることが好ましく、他方で、多すぎると脱水効率が若干低下する場合があるため、両方をバランスさせることが好ましく、本発明の物質中の脂肪酸や油脂を飽和濃度近傍で溶解する量であることが最も好ましい。
【0030】
本発明の脱水・回収方法の工程における水相を除去する方法は特に制限されず、エーテル相を二液相から回収してもよいし、二液相から水相を除去してもよい。二液相から水相を除去することによって、加熱処理や減圧処理を用いることなく、本発明の物質を簡便、迅速かつ低エネルギーで脱水することができる。また、水相を除去して得られたエーテル相において、本発明の物質中の脂肪酸及び/又は油脂を極めて高い収率で抽出することができる。
【0031】
本発明の脱水方法は、バイオディーゼル燃料(BDF)製造用の原料油脂及び/又は原料脂肪酸の前処理方法として好適に用いることができる。すなわち、上記本発明の物質にエーテル化合物を含有させて、エーテル相と水相の二液相を形成させ、水相を除去すること等によって、バイオディーゼル燃料(BDF)製造用の原料油脂及び/又は原料脂肪酸溶液としてのエーテル相溶液を得ることができる。この前処理によって得られた原料油脂及び/又は原料脂肪酸を含むこのエーテル相溶液に、メタノール及び適当な触媒を含有させてメチルエステル化反応を行うことによって、バイオディーゼル燃料(BDF)(脂肪酸メチルエステル)を好適に製造することができる。
【0032】
上記前処理方法における上記エーテル相溶液のエーテルとしては、相分離性に優れ、毒性もより低く、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造の際のコスト及び環境対策の点でより優れ、また、液化ジメチルエーテル(DME)は代替軽油としても用いられるため、バイオディーゼル燃料(BDF)中に仮に混入したとしても問題が少ないと考えられることから、ジメチルエーテル(DME)であることが特に好ましい。例えば、原料油脂及び/又は原料脂肪酸を含む液化ジメチルエーテル(DME)相を用いてバイオディーゼル燃料(BDF)の製造を行うと、バイオディーゼル燃料(BDF)を含む液化ジメチルエーテル(DME)相中のジメチルエーテル(DME)を気化させてジメチルエーテル(DME)を容易に回収することができ、副生物であるグリセリンを含むグリセリン相中のメタノールを、前述の回収した液化ジメチルエーテル(DME)を用いて減圧蒸留を行うことなく抽出することができる点で、コスト及び環境対策の点でより優れている。
【0033】
本発明において、低品質廃油脂類のように、エステル交換反応に用いる原料油中に、多量の遊離脂肪酸及び水を含む廃油脂類の場合には、本発明の脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法と併用して、酸触媒、低級アルコールを用いた遊離脂肪酸のエステル化反応を行ない、原料油脂類に含有される遊離脂肪酸を、エステル化(バイオディーゼル燃料化)して、バイオディーゼル燃料(BDF)の生成反応を阻害する要因となる水分及び遊離脂肪酸を同時に除去することができる。すなわち、廃油脂類を、酸触媒の存在下、遊離脂肪酸を液化ジメチルエーテル(DME)を添加した均一相にて、低級アルコールによりエステル化反応を行い、遊離脂肪酸等から脂肪酸メチルエステルを生成して原料物質中の遊離脂肪酸濃度を低下させることができ、次いで、液化ジメチルエーテルで溶媒抽出を行なうことにより、エーテル相(上相)と水相(下相)の二液相を形成させ、前記水相を除去することによって、脱水処理を行うことにより、蒸発潜熱を加えることなく、低エネルギー、低コストにて原料物質を脱水し、遊離脂肪酸の除去と脱水を行なって、エステル交換反応に用いる原料油を調製することができる。
【0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
[水及び脂肪酸を高濃度で含有する廃油脂の液化DMEを用いた脱水、並びに、脂肪酸及び油脂の選択的回収 1]
(実験方法)
エーテル化合物の1種である液化DMEを用いて、水及び脂肪酸を高濃度で含有する廃油脂(高含水及び高脂肪酸含有廃油脂)から、脂肪酸及び油脂を回収し得るかを調べるために、図1に示した一連の装置を使用して以下の実験を行った:まず、トリオレイン9g、パルミチン酸6g及び水3.75gを混合して、高含水及び高脂肪酸含有廃油脂モデル溶液(以下、「廃油脂モデル溶液」ともいう)を調製した。この廃油脂モデル溶液18.75gを、耐圧ガラスセル(A)に添加し、該セルを氷水に浸して、廃油脂モデル溶液を10℃以下程度に冷却した。その後、バルブ(C)を開いて、ガラスシリンダー(B)中の液化DMEをガラスセル(A)内に導入し、液化DMEがガラスセル(A)に約11g入ったところでバルブ(C)を閉めた。次に、温度コントローラー(D)の温度を25℃に設定し、ガラスセル(A)内の溶液が設定温度になるまで加熱攪拌した。水相の生成と固体のパルミチン酸が完全に溶解することを確認した後、ガラスセル(A)内の溶液を15分静置した。ガラスセル(A)内の溶液は、上相の液化DME相と、下相の水相に分かれた。
【0036】
次いで、バルブ(E)を開くことによって液化DME回収ライン(F)から流出した液化DME相に抽出された固体状の油脂や脂肪酸をサンプルびん(G)にてサンプリングした。その後、サンプリングした固体(固体サンプル)の水分量を、カールフィッシャー水分計にて測定した。一方、バルブ(H)を開いて、水相回収ライン(I)から流出した水相をサンプルびん(J)にサンプリングした。サンプリングした水溶液をイソプロパノールで希釈し、高速液体クロマトグラフにてトリオレイン及びパルミチン酸の濃度を測定した。
【0037】
(結果)
上記水分計の測定の結果、この固体サンプルの含水率は約2.5wt%〜3.0wt%程度であった。実験前の廃油脂モデル溶液の含水率(20wt%)と比較すると水分量が1/7〜1/8へ減少したこととなり、液化DMEによる液化抽出によって、廃油脂モデル溶液を効率よく脱水し得ることが明らかとなった。また、温度コントローラー(D)の温度を35℃に設定し、液化DMEの添加量を9.75gとしたこと以外は同じ手順で実験を行ったところ、固体サンプルの含水率は約1.4wt%であった。さらに、温度コントローラー(D)の温度を35℃に設定し、液化DMEの添加量を7.5gとし、液化DMEに加えて軽油を添加したこと以外は同じ手順で実験を行ったところ、固体サンプルの含水率は1.0wt%以下となった。
一方、上記の高速液体クロマトグラフの測定の結果、サンプリングした水溶液中のトリオレイン濃度は13ppm、パルミチン酸濃度は14ppmであった。この結果に基づいて、廃油脂モデル溶液から上記固体サンプル中へのトリオレイン及びパルミチン酸の回収率を算出したところ、いずれも99.99%以上であることが分かった。
【実施例2】
【0038】
[水及び脂肪酸を高濃度で含有する廃油脂の液化DMEを用いた脱水、並びに、脂肪酸及び油脂の選択的回収 2]
(実験方法)
実施例1の実験において、添加する液化DME量を約11gから約16gに代えたことは同一の方法により実験を行った。液化DME相からサンプリングした固体サンプルの含水率を測定したところ、含水率は3.8wt%であった。
【0039】
(結果)
この結果と実施例1の結果から、添加する液化DMEの量を多くすればするほど固体サンプルの含水率が低下するというわけではなく、比較的少量を添加することが好ましいことが示された。
【実施例3】
【0040】
[水及び脂肪酸を高濃度で含有する廃油脂の液化DMEを用いた脱水、並びに、脂肪酸及び油脂の選択的回収 3]
(実験方法)
実施例1の実験で用いた廃油脂モデル溶液に代えて、より含水率の高い廃油脂モデル溶液(トリオレイン6g、パルミチン酸4g、水15gを混合したもの:含水率60wt%)を用い、更に、添加する液化DME量を18.75gから12.4gへと変更したこと以外は、実施例1の実験と同一の方法により実験を行った。
【0041】
(結果)
液化DME相からサンプリングした固体サンプルの含水率を測定したところ、含水率は3.5wt%であった。一方、水相中のトリオレイン及びパルミチン酸濃度を測定したところ、トリオレイン濃度は32ppm、パルミチン酸濃度は33ppmであった。この結果に基づいて、廃油脂モデル溶液から上記液化DME相へのトリオレイン及びパルミチン酸の回収率を算出したところ、いずれも99.99%以上であることが分かった。 以上の結果から、液化DMEは、含水率60wt%と、かなり含水率が高い廃油脂モデル溶液に対しても、非常に優れた脱水効果を示すと同時に、油脂や脂肪酸の回収率も非常に優れていることが示された。
【0042】
〔参考例1〕
[廃食用油ゲルの液化DME処理物からのディーゼル燃料の製造]
本発明の脱水処理方法が、ディーゼル燃料(BDF)製造用の原料油脂及び/又は原料脂肪酸の前処理方法として好適であるかを調べるために、図2に示した一連の装置を使用して以下の実験を行った。
【0043】
(実験方法)
まず、トリオレイン100mLと、脂肪酸系の食用油固化剤3gとを混合して、廃食用油モデルゲルを調製した。廃食用油モデルゲル15gを、耐圧ガラスセル(A)に添加し、該セルを氷水に浸して、廃食用油モデルゲルを10℃以下程度に冷却した。その後、バルブ(C)を開いて、ガラスシリンダー(B)中の液化DMEをガラスセル(A)内に導入し、液化DMEがガラスセル(A)に約13g程度入ったところでバルブ(C)を閉めた。次に、温度コントローラー(D)の温度を25℃に設定し、ガラスセル(A)内の溶液が設定温度になるまで加熱攪拌した。
【0044】
ガラスセル(A)内の溶液が設定温度に到達した後、攪拌速度を450rpmとして、バルブ(E)を開くとともに、送液ポンプ(F)によって3.5gのKOH含有メタノール溶液をガラスセル(A)内に送液して、エステル交換反応(BDF生成反応)を行った。なお、送液したKOH含有メタノール溶液の量は、そのKOH量が上記トリオレインに対して1wt%の量と固化剤中の脂肪酸を調度中和しうる量との和であり、そのメタノール量が上記トリオレインの6倍モルに相当する量であった。
【0045】
上記KOH含有メタノールの送液終了後、すぐにバルブ(G)を開いて、送液ポンプ(H)によって8.9gのメタノールをガラスセル(A)に添加した。それから10分間経過後に、バルブ(I)を開いて、ガラスセル(A)内から液化DMEをDMEガスとして抜いた。その後、ガラスセル(A)内に速やかに1NのHCl水溶液を15mL添加してエステル交換反応を停止させ、次いで、ガラスセル(A)内にテトラヒドロフラン10mLとヘキサン10mLを添加した。ガラスセル(A)内の溶液を15分間ほど攪拌した後、2時間程度静置して相分離し、上相を回収して高速液体クロマトグラフにてトリオレイン(TO)、ジオレイン(DO)、モノオレイン(MO)、及び、BDFの1種であるオレイン酸メチル(OAME)の各濃度を測定した。
【0046】
(結果)
その結果、上相中のトリオレインは0.0モル%、ジオレインも0.0モル%、モノオレインは1.6モル%、オレイン酸メチルは98.4モル%であった。脂肪酸系の固化剤によってゲル状になった油脂であっても、本発明の脱水処理方法による前処理を行った後、BDF生成反応を行えば、常温という低い温度条件下でも高い反応収率が得られることが示された。
【0047】
一方、バルブ(G)からのメタノールの添加を行わず、かつ、上記エステル交換反応(BDF生成反応)の反応時間を15分間としたこと以外は、上記実施例4の実験と同一の方法で実験を行った。上相中のトリオレイン(TO)、ジオレイン(DO)、モノオレイン(MO)、及び、BDFの1種であるオレイン酸メチル(OAME)の各濃度を高速液体クロマトグラフにて測定したところ、トリオレインは4.6モル%、ジオレインは2.4モル%、モノオレインは5.2モル%、オレイン酸メチルは87.8モル%であった。この結果、メタノールをより多く添加すると、BDF生成反応の速度が上昇することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】水及び脂肪酸を高濃度で含有する廃油脂の液化DMEを用いた脱水、並びに、脂肪酸及び油脂の選択的回収実験に用いた実験装置を示す図である。図1中の各符号はそれぞれ以下のものを示す。A:耐圧セル、B:ガラスシリンダー(液化DME)、C:バルブ、D:コントローラー(温度及び回転数)、E:バルブ、F:液化DME相回収ライン、G:サンプルびん、H:バルブ、I:水相回収ライン、J:サンプルびん、K:攪拌モーター、L:熱電対、M:攪拌翼、N:バルブ
【図2】廃食用油ゲルの液化DME処理物からのディーゼル燃料の製造実験に用いた実験装置を示す図である。図2中の各符号はそれぞれ以下のものを示す。A:耐圧セル、B:ガラスシリンダー(液化DME)、C:バルブ、D:コントローラー(温度及び回転数)、E:バルブ、F:送液ポンプ、G:バルブ、H:送液ポンプ、I:バルブ、J:攪拌モーター、K:攪拌翼、L:熱電対、M:KOH含有メタノール溶液、N:メタノール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収することを特徴とする水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法。
【請求項2】
水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質が、水を含有する食用油脂類、水及び/又は非油脂類を含有する廃食用油脂類或いは廃食用油脂類以外の廃油脂類であることを特徴とする請求項1記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法。
【請求項3】
水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質が、泥状又はゲル状の脂肪酸及び/又は油脂の固形物を含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法。
【請求項4】
水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加、攪拌して、液相の均一相を形成し、その後静置して、液化ジメチルエーテル相と水相との二液相を形成させ、該相より液化ジメチルエーテル相を分離することよりなる請求項1〜3のいずれか記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法。
【請求項5】
水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収するに際し、抽出溶媒に軽油成分を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法。
【請求項6】
軽油成分の添加が、抽出処理液全量に対して、10〜50容量%の範囲で添加されることを特徴とする請求項5記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法。
【請求項7】
水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収する処理を、温度10〜35℃の範囲で行なうことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法。
【請求項8】
水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質に、液化ジメチルエーテルを抽出溶媒として添加し、脂肪酸及び/又は油脂を液化ジメチルエーテル溶液として、選択的に脱水、回収する処理を、温度30〜35℃の範囲に調整して行なうことを特徴とする請求項7記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか記載の水と脂肪酸及び/又は油脂とを含む物質からの脂肪酸及び/又は油脂の選択的脱水・回収方法により、脱水された脂肪酸及び/又は油脂と、液化ジメチルエーテルとを含む物質を調製することを特徴とする、バイオディーゼル燃料製造のための原料油の調製方法。
【請求項10】
バイオディーゼル燃料の製造が、液化ジメチルエーテルを添加した均一相系でのエステル交換反応を行なう方法によるものであることを特徴とする請求項9記載のバイオディーゼル燃料製造のための原料油の調製方法。
【請求項11】
バイオディーゼル燃料製造のための原料油の調製が、酸触媒、低級アルコールを用いた遊離脂肪酸のエステル化反応と併用して行なわれることを特徴とする請求項9又は10記載のバイオディーゼル燃料製造のための原料油の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−40980(P2009−40980A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210517(P2007−210517)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(501273886)独立行政法人国立環境研究所 (30)
【出願人】(507272614)
【出願人】(507271318)
【出願人】(507272625)
【出願人】(507272636)
【Fターム(参考)】