説明

液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法およびその装置

【課題】 発泡剤として液状二酸化炭素を用いて均一なウレタンフォームを発泡することができるとともに、攪拌混合条件を簡便かつ精度よく制御可能なウレタンフォームの製造方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】 二酸化炭素を発泡剤とし、ポリオール化合物とポリイソシアネートとを混合して作製するウレタンフォームの製造方法であって、供給されるポリオール化合物について二酸化炭素の超臨界状態を維持する温度および圧力条件に制御するとともに、液化二酸化炭素を前記圧力以上に加圧し液体状態で該ポリオール化合物に混合後、該混合流体をポリイソシアネートと攪拌混合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法およびその装置に関し、詳しくは、断熱材などに使用されるウレタンフォームの製造工程において、発泡剤として液化二酸化炭素を利用する製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウレタンフォームは、断熱板や断熱粒子、あるいはスプレーによる吹付断熱層などを形成し、種々の用途に対応可能な断熱材料として多用されている。こうしたウレタンフォームは、通常、ポリオール化合物とポリイソシアネート成分と発泡剤とを混合して作製するが、軟質あるいは硬質フォームなど断熱材の仕様によって各成分の配合を設定して作製する。
【0003】
このとき、発泡剤については、従来塩素系化合物あるいは含塩素系フッ素化合物などが一般的であったが、オゾン層破壊等の自然環境問題との関係から素材の見直しが必要となり、種々の方法が検討され実用化を図ってきた。
【0004】
例えば、上記に代えて沸点が低い含フッ素炭化水素、ペンタン等が利用され、ポリオールに発泡剤をプレブレンドして使用していた。また、水発泡や二酸化炭素を発泡剤とする方法についても検討されてきた。
【0005】
特に、二酸化炭素を発泡剤とする方法については、ポリオールとイソシアネートを混合攪拌する際にガスの状態で用い、発泡剤とともに攪拌を目的として一緒に混合する方法が実用化していた。
【0006】
また、発泡剤として液状二酸化炭素を用いる方法として、液状の二酸化炭素を定量供給するとともに、ウレタンフォームを発泡することができる発泡装置の提案などがあった。具体的には、図6に例示するように、二酸化炭素成分210、活性水素基含有化合物成分260、ポリイソシアネート成分110の三成分をそれぞれの流路よりそれぞれのポンプ230,270,120によって計量圧送し、吐出部150にて撹拌後吐出するポリウレタンフォームの発泡装置201であって、前記二酸化炭素成分として液状二酸化炭素を用い、この液状二酸化炭素が貯蔵される液状二酸化炭素貯蔵容器210aと前記二酸化炭素を計量圧送するポンプ230とを接続する流路L10,L21に、当該二酸化炭素を液状に保つ冷却手段220,250を備える装置を挙げることができる(例えば特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−82050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ペンタンなどの有機溶媒を発泡剤とした場合には、その可燃性から作業上の安全性の確保や、作製されたウレタンフォームからの発泡剤の脱気処理などの必要性など新たな課題への対応が必要となる。
【0009】
また、水のみを発泡剤としたものでは、得られるポリウレタンフォームを経済的な密度まで軽量化を図ろうとすると発泡剤の水を多量に使用しなければならず、水とイソシアネートとの反応により発生する反応熱が大きくなり、ポリウレタンフォームにひび割れ(クラック)が生じたり、蓄熱によりヤケなどの品質低下の原因となる欠点が発生する問題があった。また、ポリウレタンフォームを形成するための原料液の粘度が高いため混合不良が発生し、ポリウレタンフォームのセル形状が不均一になり、機械的強度が低下してしまう欠点があった。さらに、軽量化のための多量の水の使用は、ポリウレタンフォームに過剰の尿素結合が形成され、フォームが脆くなってしまうという問題があった(特許文献1参照)。
【0010】
一方、ガスの状態で二酸化炭素を混合する場合には、さらに別に発泡剤が必要であり、ボイド(空隙)が多いウレタンフォームしか得られないという問題があった。また、ポリオールに液化二酸化炭素をプレブレンドする場合、常温では液化二酸化炭素がガス状になってしまい発泡剤としての必要量を混合することは困難であり、管理できなかった。
【0011】
さらに、液化二酸化炭素のガス化を防ぐべく、図6のような冷却手段220、250を備えた場合にあっては、構成部品の増加に伴うコストおよび保守の煩雑さを招来するとともに、混合するポリオールの液温によっては混合後の液化二酸化炭素のガス化のおそれもあり、さらに管理が複雑化するなどの課題もあった。また、スプレー式に限定される場合においては、小型冷蔵庫やカークーラー用あるいはコンピュータ関連の断熱板のように比較的容量の大きな断熱層の要求には対応できないという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、発泡剤として液状二酸化炭素を用いて均一なウレタンフォームを発泡することができるとともに、攪拌混合条件を簡便かつ精度よく制御可能なウレタンフォームの製造方法およびその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法およびその装置により前記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、二酸化炭素を発泡剤とし、ポリオール化合物とポリイソシアネートとを混合して作製するウレタンフォームの製造方法であって、供給されるポリオール化合物について二酸化炭素の超臨界状態を維持する温度および圧力条件に制御するとともに、液化二酸化炭素を前記圧力以上に加圧し液体状態で該ポリオール化合物に混合後、該混合流体をポリイソシアネートと攪拌混合することを特徴とする。
【0015】
従来、ポリオール化合物とポリイソシアネートとの混合に際しては、混合比の精度の確保および各溶液の供給の円滑のために、両ラインでの温度および圧力を精度よく制御するとともに、液化二酸化炭素を発泡剤とする場合には、混合する二酸化炭素の液体状態を維持するために精度の高い温度制御を行う必要があった。本発明においては、液化二酸化炭素の温度をコントロールすることなく、ポリオール化合物の温度および圧力をコントロールし混合後の液温および液圧力を二酸化炭素の超臨界状態となる条件に維持することによって、ポリオール化合物との混合流体内における二酸化炭素を超臨界流体として維持し高い相溶性を有する特性を利用できることを検証したものである。その結果、超臨界流体の液体と気体の両方の特性を利用し、発泡剤として必要な二酸化炭素の量を混合することができとともに、攪拌に有効な拡散性も利用することができるので良質なウレタンフォームが得られることを見出した。
【0016】
特に、圧力制御においては、直接二酸化炭素の温度あるいは圧力を制御する場合には、制御範囲に液相と気相との臨界域を含むことから安定した制御を可能とする許容範囲が狭くなるに比べ、ポリオール化合物に対して同じ温度や圧力の範囲で制御する場合には、広く許容範囲をとることが可能となる。従って、ポリオール化合物との混合後において超臨界状態を維持するように流路の温度および圧力を制御することによって、精度が高く安定的な制御を行うことができる点においても本発明は優位である。
【0017】
従って、均一なウレタンフォームを発泡することができるとともに、攪拌混合条件を簡便かつ精度よく制御可能なウレタンフォームの製造方法を提供することが可能となる。また、本発明の適用によって、ウレタンフォームの製造工程における制御機能の簡素化を図ることができるとともに、既設の装置における発泡剤の変更を行う場合にも、設備の僅かな変更によって対応可能となる。
【0018】
本発明は、上記液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法であって、前記ポリオール化合物の温度および圧力条件を、液温31℃以上、液圧力7.4MPa以上とすることを特徴とする。
【0019】
上記のように、本発明は、発泡剤として使用する液化二酸化炭素を直接制御対象とせずに、液化二酸化炭素と混合流体を形成するポリオール化合物の温度および圧力条件を制御し、混合流体内における二酸化炭素の性状を超臨界の状態として確保することによって、ポリオール化合物との良好な相溶性を得ることができる。つまり、ポリオール化合物の温度および圧力条件を、二酸化炭素の臨界温度である液温31℃以上、臨界圧力である液圧力7.4MPa以上とすることによって、二酸化炭素の性状を超臨界の状態に維持することを担保することが可能となる。
【0020】
本発明は、上記液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法であって、混合前の臨界圧以上に圧縮した液体状態の二酸化炭素の一部あるいは全部によって、前記圧縮のための加圧手段を含む流路において循環系流路を形成することを特徴とする。
【0021】
ポリオール化合物への液化二酸化炭素の投入による混合流体の形成においては、投入される液化二酸化炭素の安定性の高さが求められる。本発明においては、液化二酸化炭素の圧力をコントロールすることによって冷却装置を不要にするとともに、圧縮された液化二酸化炭素を循環流とし、温度や圧力あるいは液内部の温度分布などが安定した状態の液化二酸化炭素をポリオール化合物へ投入することによって、より均一な混合流体を形成することができる。
【0022】
上記のいずれかに記載の液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法を用いたウレタンフォームの製造装置であって、前記流体混合手段がいわゆるスタティックミキサーまたはラモンドミキサーであることを特徴とする。
【0023】
本発明は、上記のウレタンフォームの製造方法を具体化した装置に係るものであって、特に液化二酸化炭素とポリオール化合物との混合を簡易かつ適切に行うことが可能な装置を提供するものである。つまり、液化二酸化炭素とポリオール化合物との混合は、上記のような相溶性を高める手法を用いることによって均一性を上げることが可能となるが、実際の装置においては、両者を合流した直後に流体混合手段を設けることによって、さらに均一な攪拌混合の確実を図ることができる。特に駆動部を有さずに、自流によって攪拌力を生じるスタティックミキサーまたはラモンドミキサーは、強制的な攪拌による気泡の発生や液温の上昇などを未然に防止することができることから、本装置には好ましい手段となる。ここで、スタティックミキサーまたはラモンドミキサーとは、後述するように、駆動部のない静止型の混合手段をいい、流路中に邪魔板を設けて円滑に攪拌混合を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明を適用することによって、発泡剤として液状二酸化炭素を用いて均一なウレタンフォームを発泡することができるとともに、攪拌混合条件を簡便かつ精度よく制御可能なウレタンフォームの製造方法およびその装置を提供することが可能となった。特に超臨界の状態を作り出し維持するために、直接二酸化炭素に対してではなく被混合物であるポリオール化合物に対して温度および圧力条件の制御を行うことによって、精度が高く安定的な制御が可能となり、相溶性の向上を図り、良質なウレタンフォームを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
<本発明に係るウレタンフォームの製造方法の基本的な構成>
図1に示すように、本発明に係るウレタンフォームの製造方法は、ポリオール化合物供給路1と、ポリイソシアネート供給路2と、発泡剤である液化二酸化炭素供給路3と、ポリオール化合物と液化二酸化炭素の混合流体供給路4と、これらを集合し攪拌混合するミキシングヘッド5を基本的な構成要素とする。
【0027】
この基本構成においては、発泡剤として液化二酸化炭素を超臨界状態で使用することによって、ウレタンの主剤であるポリオール化合物およびポリイソシアネートとの均一な混合を確保すること、および、液化二酸化炭素の被混合溶液であるポリオール化合物の温度および圧力を制御することによって、この超臨界状態の確保および制御を行うことに特徴がある。
【0028】
つまり、前者については、物質混合においては同相の物質間での混合が混合の均一性および迅速性の向上に有効であることから、二酸化炭素とポリオール化合物との混合を、超臨界状態の液化二酸化炭素を用いることとしたものである。具体的には、第1混合処理として、液化二酸化炭素供給路3とポリオール化合物供給路1を接続し、両者の攪拌混合を行い、その後第2混合処理として、その混合流体供給路4とポリイソシアネート供給路2をミキシングヘッド5に接続し、両者の攪拌混合を行うことによって、相溶性の高い条件で迅速かつ均一な攪拌混合が可能となった。
【0029】
また、後者については、以下の知見に基づくものである。つまり、二酸化炭素自体の温度および圧力を直接制御することは、臨界状態という物質自体の性状および特性が大きく変化する条件下では困難性が高い。一方、二酸化炭素の被混合物質であるポリオール化合物については、こうした二酸化炭素の超臨界状態を維持形成する温度および圧力条件においても、十分に安定な溶液状態を保持することができる。従って、混合前の液化二酸化炭素は臨界圧以上に制御する一方、ポリオール化合物との混合流体に対して、二酸化炭素の超臨界状態を維持形成する温度および圧力で制御することとしたものである。
【0030】
具体的には、混合流体供給路4に温度センサ15bおよび圧力センサ16を配設し、その出力を基に二酸化炭素とポリオール化合物の混合流体の温度および圧力を制御することによって、混合流体中の二酸化炭素の超臨界状態を確保することができる。つまり、ポリオール化合物の温度管理を液化二酸化炭素混合直前部で実施することによって液化二酸化炭素を超臨界の状態とすることができ、液化二酸化炭素を超臨界の状態でポリオール化合物に混合することにより相溶性をよくすることが可能となった。検証の結果によれば、通常1〜2%の混合が限界であったのが、本発明の適用によって3〜4%の混合が可能となった。
【0031】
ポリオール化合物供給路1においては、ポリオール用タンク11に貯留したポリオール化合物を、ポリオール用高圧ポンプ12によって流体混合手段13を介してミキシングヘッド5に供給するとともに、ミキシングヘッド5における攪拌混合前においては、その準備としてポリオール化合物の温度あるいは圧力の安定を図るために、ポリオール用熱交換器14を経由してポリオール用タンク11へ全量を還流する循環流路を形成する。このとき、液化二酸化炭素供給路3との接合点Mから流体混合手段13を介してミキシングヘッド5に繋がる流路は、重複して混合流体供給路4を形成する。また、本流路における温度を制御するために流体混合手段13の前段および後段に温度センサ15aおよび15bを設け、圧力を制御するために流体混合手段13の後段に圧力センサ16、流量を制御するために流体混合手段13の後段に流量圧力調節部17を設けている。
【0032】
ポリイソシアネート供給路2においても同様に、ポリイソシアネート用タンク21に貯留したポリイソシアネートを、ポリイソシアネート用高圧ポンプ22によってミキシングヘッド5に供給するとともに、ミキシングヘッド5において余剰となったポリイソシアネートあるいは攪拌混合操作を行わない場合には全量を、ポリイソシアネート用熱交換器24を経由してポリイソシアネート用タンク21へ還流する循環流路を形成する。このとき、本流路における温度、圧力、および流量を制御するために、温度センサ25、圧力センサ26、および流量圧力調節部27を設けている。
【0033】
液化二酸化炭素供給路3においては、背圧供給口31から供給された不活性ガス(例えば窒素など)によって貯留槽33を加圧し、液化二酸化炭素用高圧ポンプ32によって貯留槽33の液層部から取り出した液化二酸化炭素をアキュームタンク34、停止弁38a、および流量圧力調節部37を介してミキシングヘッド5に圧送する流路を形成する。このとき、本流路における圧力を制御するために圧力センサ36を設けるとともに、ポリオール化合物との混合直前の状態を管理するために温度センサ35を設けることが好ましい。また、ポリオール化合物供給路1への供給圧を確保するために、流量圧力調節部37の制御圧力は、ポリオール化合物供給路1よりも高圧であることが好ましい。さらに、図1では、アキュームタンク34は、サクション不良を防止するために液化二酸化炭素用高圧ポンプ32の吸引側に設けられているが、脈動を防止するために吐出側に設けることも好ましい。
【0034】
このとき、ミキシングヘッド5には、ポリオール化合物、ポリイソシアネート、および発泡剤としての二酸化炭素以外に、アミン系触媒を代表とする反応触媒、乳化剤や安定剤などの界面活性剤、などを投入することが好ましく、こうした補助剤を使用することによって良質なウレタンフォームを得ることができる。
【0035】
また、供給する液化二酸化炭素の温度あるいは圧力の安定性を確保するために、圧縮された液化二酸化炭素の循環流を形成することが好ましい。液化二酸化炭素用高圧ポンプ32の吐出側の流路を分岐し一方の流路を吸引側に接続することによって、ポリオール化合物との混合開始前においても液化二酸化炭素用高圧ポンプ32を液供給状態で駆動することができることから、液化二酸化炭素用高圧ポンプ32の負荷を大幅に低減でき圧力の安定性を高めることができる。
【0036】
具体的には、図2(A)に示すように、3方切換弁38bを液化二酸化炭素供給路3の分岐手段としての機能を兼ねるように用いる。ポリオール化合物との混合開始前においては、3方切換弁38bの通常時開口部を流路3aと接続し、圧縮された液化二酸化炭素が循環流を形成することによって、圧力あるいは液内部の温度分布などが安定した状態とすることができ、この状態でポリオール化合物へ投入することによって、均一な混合流体を形成することができる。ポリオール化合物との混合開始後においては、3方切換弁38bの通常時閉口部が開状態となり、圧縮された液化二酸化炭素が接合点Mに供出することによって均一な混合流体を形成することができる。
【0037】
図2(B)は、図2(A)と同様の流路であるが、流路3aをアキュームタンク34に接続したことを特徴とする。これによって、アキュームタンク34が循環流の変動を緩衝する働きをすることにより、一層均一な混合流体を形成することができる。
【0038】
図2(C)は、停止弁38aの直前で流路3bを分岐し循環流路を形成することによって、液化二酸化炭素用高圧ポンプ32から供出される液化二酸化炭素用のうち混合開始後において必要量のみを接合点Mに供給し、過剰分は循環流とすることによって均一な混合流体を形成することが可能となる。
【0039】
図2(D)は、流量圧力調節部37を接合点Mと停止弁38aの中間から流路3bに移行し循環するポリオール化合物の流量を調整することによって、混合する液化二酸化炭素の流量を調節することが可能となる。液化二酸化炭素用高圧ポンプ32の負荷を混合開始前後においてほぼ同じ条件にすることができることから、高い安定性を有する液化二酸化炭素供給路3を形成することが可能となる。
【0040】
ミキシングヘッド5には、例えば断熱板の作製などを目的とする低圧条件で攪拌するタイプ(低圧タイプ)や、例えば吹付断熱層などを目的とする高圧条件で攪拌混合するタイプ(高圧タイプ)などがある。図3(A)〜(D)にその構造を例示する。
【0041】
低圧タイプとしては、例えば、図3(A)におけるポリイソシアネート供給路2と混合流体供給路4とが接続しない混合前の状態(循環系)から、切換ボール5aによって切換えられて、図3(B)における両ラインが接続する混合状態(混合系)に移行する構造のものがある。各流路から通常は約0.3〜4Mpaあるいは1MPa以下の低圧で送り込まれた溶液が、スクリュー5bによって攪拌混合しながら吐出口5cから吹出しあるいは吐出される。
【0042】
高圧タイプとしては、例えば、図3(C)における状態(循環系)から、油圧5dおよび5eによって駆動されるピストン5fによって切換えられて、図3(D)における混合状態(混合系)に移行する構造のものを挙げることができる。各流路から約10〜15Mpaの圧力で送り込まれた溶液が、攪拌混合しながら吐出口5cから注入あるいは吐出される。
【0043】
また、流体混合手段13は、液化二酸化炭素とポリオール化合物との混合を簡易かつ適切に行うことが可能なものが好ましく、特に気泡の発生や液温の上昇などの生じにくい、駆動部を有さずに、自流によって攪拌力を生じるものが好ましい。具体的には、図4(A)に例示するスタティックミキサー、あるいは図4(B)に例示するラモンドミキサーなどが好ましい。ここで、入口は混合流体を導入するように1つの口を設けているが、2つの導入口を設け内部で混合流体を形成することも可能である。
【0044】
スタティックミキサーとは、図4(A)に例示する構造を有する、駆動部のない静止型の混合手段をいい、流路中に邪魔板を設けて流れを分割し、流線を変更することにより流体を混合する装置をいう(「改定3版 化学工学辞典」化学工学会編(平成9年)p.264)。図中では流路軸方向にねじれた所定の長さの邪魔板41および42を、それぞれの端部41aおよび42aが直交あるいは所定の角度ずれるように突合せ配設することによって、攪拌および混合を迅速に行うことが可能となる。
【0045】
ラモンドミキサーとは、図4(B)に例示するように、相互に対向する面に前面開放の多角形の小室43をハニカム状に多数配列した大小2枚の円板44aおよび44bが、一の円板の小室43aと対向する他の円板の小室43bとを連通する位置をずらして配設され、同心状態に積み重ねられた導流単位体45を6個を配設した流体混合装置をいう(特開平7−194301)。
【0046】
上記の構成においては、温度センサなどを必要とされる最小限の数量を配設した場合を例示したが、例えば熱交換器を追加配設し、温度センサなどを貯留タンクやミキシングヘッド5などに別途配設することによって、システムの構成要素である温度・圧力・流量をさらに精度よく制御することも可能である。
【0047】
また、接合点Mを、ポリオール用タンク11とポリオール用高圧ポンプ12との中間に配設することも可能である。ポリオール用高圧ポンプ12の吸引側から液化二酸化炭素を供給することによって、液化二酸化炭素供給3の制御圧力を低くすることができるとともに、比較的ラフな圧力制御であっても同等の機能をする点において優位性がある。
【0048】
<本発明に係るウレタンフォームの製造手順>
次に、図1に示した基本構成例を基にウレタンフォームの製造手順を説明する。
【0049】
(1)製造条件の設定
予め構成例における設定条件を確定し、各構成要素を制御する手段(図示せず。以下「制御手段」という。)に入力する。具体的には、(a)ポリオール化合物の流量・温度・圧力、(b)ポリイソシアネートの流量・温度・圧力、(c)液化二酸化炭素の流量・圧力、(d)その他、反応触媒、界面活性剤などの流量、が該当する。
【0050】
(2)ポリオール化合物溶液の準備
ポリオール化合物供給路1において、ポリオール用熱交換器14を始動し、ミキシングヘッド5を循環系にセットした状態でポリオール用高圧ポンプ12を始動する。このときミキシングヘッド5はウレタンフォームの形成に必要な温度に加熱し温度調整することが好ましい。具体的には、32〜35℃となるように調整する。
温度センサ15aおよび/または15bの出力を基に、制御手段によってポリオール用熱交換器14を制動し、所定の温度、つまり二酸化炭素の臨界温度31℃以上に調整する。具体的には、32〜35℃となるように調整する。
圧力センサ16の出力を基に、制御手段によってポリオール用高圧ポンプ12を制動し、流量圧力調節部17によって所定の圧力、つまり二酸化炭素の臨界圧力7.4MPa以上に調整する。具体的には、10〜15MPaとなるように調整する。
また、流量圧力調節部17は、予めポリオール化合物における上記圧力との相関を求めておき、圧力に応じ、所定の流量となるように調整する。
この状態において、ポリオール化合物は、ポリオール用タンク11を含むポリオール化合物供給路1において、循環流を形成し、徐々に温度・圧力・流量が設定された条件で安定した状態となる。
【0051】
(3)ポリイソシアネート溶液の準備
ポリイソシアネート供給路2において、ポリイソシアネート用熱交換器24を始動し、ミキシングヘッド5を循環系にセットした状態でポリイソシアネート用高圧ポンプ22を始動する。
温度センサ25の出力を基に、制御手段によってポリイソシアネート用熱交換器24を制動し、所定の温度、具体的には、20〜25℃となるように調整する。
圧力センサ26の出力を基に、制御手段によってポリイソシアネート用高圧ポンプ22を制動し、流量圧力調節部27によって所定の圧力、具体的には、10〜15MPaとなるように調整する。このとき、ポリオール化合物との均一な混合を確保するためには、混合流体供給流路4あるいはポリオール化合物供給流路1と略同じ圧力に調整することが好ましい。
また、流量圧力調節部27は、予めポリイソシアネートにおける上記圧力との相関を求めておき、圧力に応じ、所定の流量となるように調整する。
この状態において、ポリイソシアネートは、ポリイソシアネート用タンク21を含むポリイソシアネート供給路2において、循環流を形成し、徐々に温度・圧力・流量が設定された条件で安定した状態となる。
【0052】
(4)液化二酸化炭素の準備
液化二酸化炭素供給路3において、停止弁38aを閉にした状態で液化二酸化炭素用高圧ポンプ32を始動する。
圧力センサ36の出力を基に、制御手段によって液化二酸化炭素用高圧ポンプ32を制動し、流量圧力調節部37によって所定の圧力、つまり二酸化炭素の臨界圧力7.4MPa以上で、かつポリオール化合物供給路1の設定圧力以上に調整する。具体的には、15〜18MPaとなるように調整する。
また、流量圧力調節部37は、予め液化二酸化炭素における上記圧力との相関を求めておき、圧力に応じ、所定の流量となるように調整する。
ここで、液化二酸化炭素供給路3を図2(A)〜(D)のように構成した場合には、予め循環用の流路3aあるいは3bに液化二酸化炭素を全量流すことによって、循環流を形成し、素早く安定した温度、および設定された条件で安定した圧力・流量を形成することができる。
【0053】
(5)ポリオール化合物と液化二酸化炭素の混合
液化二酸化炭素供給路3に設けられた停止弁38aを開状態にする。なお、図2(A)および(B)の構成の場合には3方切換弁38bの通常時閉口部を開状態にする。
このとき、安定した温度・圧力・流量を有する液化二酸化炭素が、停止弁38aあるいは3方切換弁38bを介して接合部Mにおいてポリオール化合物と混合する混合流体供給路4に導入される。混合流体は、流体混合手段13、例えばラモンドミキサー(ホーマー・テクノロジー株式会社製。RM−01−10)において、上記(2)において述べたように所定の温度・圧力・流量に制御されたポリオール化合物と効率よく混合されることによって、相溶性の高い混合溶液となる。
このときの混合溶液の温度は、温度センサ15bの出力を基に、上記の通り制御手段によって制御し、再度調整が必要な場合には、ポリオール用熱交換器14を制動し、所定温度となるように調整する。
また、混合溶液の圧力は、圧力センサ16の出力を基に、上記の通り制御手段によって制御し、再度調整が必要な場合には、ポリオール用高圧ポンプ12を制動し、流量圧力調節部17によって所定の圧力となるように調整する。同時に、液化二酸化炭素供給路3においても、再度調整が必要な場合には、圧力センサ36の出力を基に、制御手段によって液化二酸化炭素用高圧ポンプ32を制動し、流量圧力調節部37によって所定の圧力となるように調整する。
この状態において、ミキシングヘッド5への混合流体の供給流量は、所定の圧力に調整することによって、所定の流量を確保することが可能となる。
なお、上述のように、発泡剤以外に反応触媒、乳化剤や安定剤などを投入する場合には、停止弁38aあるいは3方切換弁38bを駆動した時点において、液化二酸化炭素と一緒に投入することが好ましく、流体混合手段13において均一に混合され、良質なウレタンフォームを得ることができる。
【0054】
(6)混合液とポリイソシアネート溶液との混合
次に、ミキシングヘッド5を循環系から混合系に切換える。ここでは、図3(C)および(D)に示す高圧タイプを用いた場合を具体例として説明する。
油圧5dによる駆動状態から油圧5eによる駆動状態に切換えることによって、ピストン5fを図3(C)の状態から図3(D)の状態に切換えて、それぞれ安定した温度・圧力・流量を有する混合溶液とポリイソシアネート溶液が、吐出口5cの上部空間に導入される。
両溶液は、その空間で混合溶液を形成し、混合した溶液は、加熱されたミキシングヘッド5内部において徐々に反応し、発泡剤によって作られた細孔を有する反応原液を形成し、吐出口5cから吹出しあるいは吐出される。
なお、図1の構成においては、停止弁38aあるいは3方切換弁38bを開状態にしてから瞬時をおいて、ミキシングヘッド5を混合系に切換えることが好ましい。ポリオール化合物と液化二酸化炭素の混合流体がミキシングヘッド5に到達したときに合わせてポリイソシアネート溶液との混合を開始することによって、ロスとなる未混合の溶液を最小限にすることが可能となる。
【0055】
(7)ウレタンフォームの作製
上記のようにミキシングヘッド5の吐出口5cから吹出しあるいは吐出された反応原液は、反応が進み徐々に硬化して形状が固定化されるが、フォームの仕様によって種々の形状に成型等の処理がされる。
具体的には、図5に示すようなスラブフォームの作製装置を例として挙げることができる。ミキシングヘッド5からコンベア51上に吐出された反応原液50は、コンベア51上で反応し移動しながら徐々に硬化する。このとき上下にトップペーパ52およびボトムペーパ53と挟み込まれながらプラテン54によって抑えることによって所定の形状のウレタンスラブフォーム55ができ上がる。
【0056】
以上のように、本発明に係るウレタンフォームの製造方法およびその装置によれば、簡便な制御方法によって、均一な発泡状態を有するウレタンフォームを作製することができる。なお、本発明は、上記のような基本構成における各構成要素の配置あるいは制御方法に限定されるものではなく、種々の要素の組合せや新たな要素を追加した製造方法およびその製造装置の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るウレタンフォームの製造装置の基本的な構成を例示する説明図
【図2】本発明に係るウレタンフォームの製造装置の他の構成例を示す説明図
【図3】ミキシングヘッドの構造を例示する説明図
【図4】流体混合手段の構造を例示する説明図
【図5】スラブフォームの作製装置を例示する説明図
【図6】従来のウレタンフォーム発泡装置を例示する説明図
【符号の説明】
【0058】
1 ポリオール化合物供給路
2 ポリイソシアネート供給路
3 液化二酸化炭素供給路
3a,3b 流路
4 混合流体供給路
5 ミキシングヘッド
12 ポリオール用高圧ポンプ
13 流体混合手段
14 ポリオール用熱交換器
15a,15b,25,35 温度センサ
16,26,36 圧力センサ
17,27,37 流量圧力調節部
22 ポリイソシアネート用高圧ポンプ
24 ポリイソシアネート用熱交換器
32 液化二酸化炭素用高圧ポンプ
38a 停止弁
38b 3方切換弁
M 接合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を発泡剤とし、ポリオール化合物とポリイソシアネートとを混合して作製するウレタンフォームの製造方法であって、
供給されるポリオール化合物について二酸化炭素の超臨界状態を維持する温度および圧力条件に制御するとともに、液化二酸化炭素を前記圧力以上に加圧し液体状態で該ポリオール化合物に混合後、該混合流体をポリイソシアネートと攪拌混合することを特徴とする液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記ポリオール化合物の温度および圧力条件を、液温度31℃以上、液圧力7.4MPa以上とすることを特徴とする請求項1記載の液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
混合前の臨界圧以上に圧縮した液体状態の二酸化炭素の一部あるいは全部によって、前記圧縮のための加圧手段を含む流路において循環系流路を形成することを特徴とする請求項1または2記載の液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造方法を用いたウレタンフォームの製造装置であって、前記流体混合手段がいわゆるスタティックミキサーまたはラモンドミキサーであることを特徴とする液化二酸化炭素を利用したウレタンフォームの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−328232(P2006−328232A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154167(P2005−154167)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】