説明

液圧シリンダ

【課題】凸凹部の損傷や焼付きを防止し、衝撃緩和の効果が大きい液圧シリンダを提供する。
【解決手段】両端にカバー4、7を備えたシリンダ2と、一方側カバーを貫通し先端にピストン部8を備えシリンダを往復動する作動軸5と、作動軸側と反対側のピストン端面またはカバー端面に嵌合可能な凹部9または凸部10を設け、凹部と凸部の嵌合でクッション機構を備える。凹部または凸部を備えた部材をカバーまたはピストンと別部材で構成し、凹部または凸部を備えた部材がピストンまたはカバーの軸芯に対し軸直角方向および軸方向に自在に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液圧シリンダのストロークエンドにおけるピストンの移動速度を減速するクッション機構を備えた液圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダ部材またはピストン部材のいずれかに取り付けられた移動対象物の慣性によるシリンダのストロークエンドにおける衝撃を緩和する方法として、液圧シリンダを軸方向に移動するピストン部材のボトム側端部に軸方向に凹形プランジャ室を設け、クッションプランジャを軸方向に進退自在に挿入するとともに、前記シリンダの作動液室に対応するシリンダボトムに、前記クッションプランジャの軸径よりやや大径の軸方向の挿入穴を開口して、その挿入穴に入り込んだ前記クッションプランジャの先端部分が着座するシート部をその挿入穴の軸方向に連続した通路との間に設けるとともに、前記プランジャ室と作動液室とを小径の連通孔を介して互いに連通するとともに、前記クッションプランジャの長手方向を貫通する通路にオリフィスを設けることによりピストンの移動終端における衝撃を緩和する方法が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
また図6に示すとおり、両端にヘッドカバー41とロッドカバー42を備えたシリンダ(円筒体)43を往復動する作動軸44に固定された気密摺動するピストン45を設け前記ヘッドカバー41とピストン45とで構成される作動液室Kに対応する前記ピストン45の端面に軸方向の凸部46を設け、相対する前記作動液室Kに対応する前記ヘッドカバー41の端面に前記凸部46に嵌合する凹部47を設ける方法が採用されている。すなわち凸部46を凹部47に嵌合させることにより、凸部46と凹部47との隙間の絞り効果によって前記作動液室Kの圧力が高くなりピストン45の移動速度を減速してストロークエンドにおける衝撃を緩和する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−112602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に詳述した従来の液圧シリンダのクッション機構では、クッションによる衝撃緩和の効果を大きくするためにピストンに設けた軸方向の凸部と相対する凹部との隙間を小さくする方式が用いられている。しかし隙間を小さくすれば凹部と凸部の芯ズレにより凸部の外周が凹部の入口部に干渉して嵌合できない場合や強引な嵌合により接触部が焼付くなどの損傷を生じる。また隙間を大きくすれば衝撃緩和の効果が小さくなりピストンのカバー側への衝突による騒音や部品の破損を生じる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
両端にカバーを備えたシリンダと、一方側カバーを貫通し先端にピストン部を備えて前記シリンダを往復動する作動軸と、前記作動軸側と反対側の前記ピストン端面または前記カバー端面に互いに嵌合可能な凹部または凸部を設け、前記凹部と前記凸部の嵌合にてクッション機構を備えた液圧シリンダにおいて、前記凹部または前記凸部を備えた部材を前記ピストンまたは前記カバーと別部材にて構成し、さらに前記凹部または前記凸部を備えた部材が前記ピストンまたは前記カバーの軸芯に対し軸直角方向に自在に移動可能に固定する固定部材を設けた構成とするものである。前記凹部または前記凸部が相手側の軸芯に倣って移動し嵌合時の損傷を回避できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、凹部と凸部の焼付きや損傷の発生を防ぐとともに凹部と凸部との芯ズレ量を規制するための構成部品の幾何公差を緩和し加工時間を短縮する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の液圧シリンダの全体構成図(a)、フランジの取付け部拡大図(b)である。
【図2】本発明の第2実施例の部分構成図である。
【図3】本発明の変形例の部分構成図である。
【図4】本発明の変形例の部分構成図である。
【図5】本発明の変形例の部分構成図である。
【図6】従来の液圧シリンダの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
両端にカバーを備えたシリンダと、一方側カバーを貫通し先端にピストン部を備えて前記シリンダを往復動する作動軸と、前記作動軸側と反対側の前記ピストン端面または前記カバー端面に互いに嵌合可能な凹部または凸部を設け、前記凹部と前記凸部の嵌合にてクッション機構を備えた液圧シリンダにおいて、前記凹部または前記凸部を備えた部材を前記ピストンまたは前記カバーと別部材にて構成し、さらに前記凹部または前記凸部を備えた部材が前記ピストンまたは前記カバーの軸芯に対し軸直角方向に自在に移動可能に固定する固定部材を設けた構成とする。以下図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明が提供する実施例1を図1に示す。図1(a)は本発明の液圧シリンダの全体構成を示す縦断面図であり図1(b)は図1(a)のA部拡大図を示す。
【0011】
本発明の液圧シリンダ1は図1(a)に示すとおり、シリンダ(円筒体)2の一端に流体の出入口3aと連通する軸方向に穿孔された凹部9を備えたヘッドカバー4と、他端に後述の作動軸5を支受するブッシュ6を設けた流体の出入口3bを備えたロッドカバー7と、シリンダ(円筒体)2を進退自在に気密摺動するピストン8から構成されている。
【0012】
前記ピストン8の前記ロッドカバー7側端面の中心に前述の作動軸5を一体的に設けるとともに前記ヘッドカバー4と前記ピストン8とで構成される作動液室Bに対応する前記ピストン8の端面には、中心部に軸方向に突出する凸部10を一体的に設けたフランジ11を取り付けている。
【0013】
前記凸部10の先端部は、図1(a)に示すとおり前記凹部9への嵌合を容易にするため頭部が円錐状に面取りされている。また前記フランジ11には前記凸部10の周囲に軸方向に貫通した後述する取付けボルト穴12が周設されている。さらに前記フランジ11が取り付けられる前記ピストン8の端面には、前記取付けボルト穴12に対応した位置に雌ネジ13が螺刻されている。
【0014】
前記取付けボルト穴12は、図1(b)に示すとおりショルダーボルト15の胴体Cとの間に軸直角方向隙間Sを確保する内径に穿孔されており、さらに取付けボルト穴12の長さは前記ショルダーボルト15のネジ部Dを肩部Eが前記雌ネジ13の口元に当接するまでねじ込んだ位置で前記ショルダーボルト15の頭部端面Fとの間に軸方向隙間Hを確保する長さに穿孔されている。従って、前記フランジ11は前記ショルダーボルト15によって前記ピストン8に固定された状態で軸方向隙間H、軸直角方向隙間Sだけ自在に移動可能である。
【0015】
かかる構成のフランジ11は、凹部9と凸部10との芯ズレに対し軸直角方向隙間Sおよび軸方向隙間Hにより前記ピストン8の移動にともない凹部9に倣って移動しながらラジアル方向に無理な荷重を負荷することなく前記凸部10を前記凹部9に嵌合可能に構成されている。
【実施例2】
【0016】
本発明が提供する第2の実施例は、第1の実施例における液圧シリンダの基本的な構成であって、すなわち凸部を凹部に嵌合する液圧シリンダである。
【0017】
具体的には図2に示すとおり本発明の液圧シリンダ20は、シリンダ(円筒体)21の一端に設けられた流体の出入口22aを備えたヘッドカバー23と前記シリンダ(円筒体)21内を進退自在に気密摺動するピストン24とで構成される作動液室Bに対応する前記ヘッドカバー23の端部に軸方向に凹形のクッションリング室Gを設け、前記流体の出入口22aに連通する貫通孔25を備えた後述のクッションリング26を挿入するとともに、前記ピストン24の前記作動液室Bに対応する端部に前記貫通孔25に嵌合する凸部27を一体的に設けたものである。
【0018】
前述のクッションリング26は、前記クッションリング室Gの内径に対し軸直角方向隙間Sだけ小さい外径と、軸方向深さに対し軸方向隙間Hだけ小さい長さの形状をしており、外周に弾性シール材28と奥底側端面に弾性シール材29を介して前記クッションリング室Gに挿入されている。さらに前記クッションリング26は、前記クッションリング室Gの開口部端面にボルト30で締着された固定部材31により、軸直角方向隙間Sと軸方向隙間Hだけ自在に移動可能に固定されている。
【0019】
かかる構成の前記クッションリング26は、前記貫通孔25と前記凸部27との芯ズレに対し軸直角方向隙間Sおよび軸方向隙間Hにより前記ピストン24の軸方向の移動にともない凸部27に倣って移動しながらラジアル方向に無理な荷重を負荷することなく凸部27を嵌合することができる。
【0020】
本発明が提供する液圧シリンダのクッション機構の特徴は以上のとおりであるが、上記ならびに図示例に限定されるものではなく種々の変形例を挙げることができる。
【0021】
例えば図3に示すとおり、前記ショルダーボルト15に代えて、前記ピストン8の作動液室Bに対応する端部に軸方向に凹形のフランジ室Jを設け、該フランジ室Jの内径より軸直角方向隙間Sだけ小さいフランジ外径と軸方向深さに対し軸方向隙間Hだけ小さいフランジ厚さのフランジ32を挿入するとともに、前記フランジ室Jの開口部端面にボルト33で締着された固定部材34を設けることも可能である。
【0022】
また図4に示すとおり、前記ピストン8の作動液室Bに対応する端部に軸方向の凹部35を形成し、相対する前記ヘッドカバー4の作動液室Bに対応する端部に凹形のフランジ室Lに、中心に流体の出入口3aに連通する通路36を備えたフランジ37を外周に弾性シール材38と奥底側端面に弾性シール材39を介して挿入し、前記フランジ室Lの開口部端面にボルト33で締着された固定部材34を設けることも可能である。
【0023】
また図5に示すとおり、前記ピストン8の作動液室Bに対応する端部に凹形のフランジ室Mを設け実施例2のクッションリング26を挿入し、相対する前記ヘッドカバー4の作動液室Bに対応する端部に、中心に流体の出入口3aに連通する通路36を備えた凸部40を一体的に設けることも可能である。本発明はこれらの変形例をすべて包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、汎用技術と部品の構成で実施でき、安全性の向上と騒音の減少をさせる上で産業上利用可能なものである。
【符号の説明】
【0025】
1 液圧シリンダ
2 シリンダ(円筒体)
3a 流体の出入口
3b 流体の出入口
4 ヘッドカバー
5 作動軸
6 ブッシュ
7 ロッドカバー
8 ピストン
9 凹部
10 凸部
11 フランジ
12 取付けボルト穴
13 雌ネジ
15 ショルダーボルト
20 液圧シリンダ
21 シリンダ(円筒体)
22a 流体の出入口
23 ヘッドカバー
24 ピストン
25 貫通孔
26 クッションリング
27 凸部
28 弾性シール材
29 弾性シール材
30 ボルト
31 固定部材
32 フランジ
33 ボルト
34 固定部材
35 凹部
36 通路
37 フランジ
38 弾性シール材
39 弾性シール材
40 凸部
41 ヘッドカバー
42 ロッドカバー
43 シリンダ
44 作動軸
45 ピストン
46 凸部
47 凹部
B 作動液室
C 胴体
D ネジ部
E 肩部
F 頭部端面
G クッションリング室
H 軸方向隙間
J フランジ室
K 作動液室
L フランジ室
M フランジ室
S 軸直角方向隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にカバーを備えたシリンダと、一方側カバーを貫通し先端にピストン部を備えて前記シリンダを往復動する作動軸と、前記作動軸側と反対側の前記ピストン端面または前記カバー端面に互いに嵌合可能な凹部または凸部を設け、前記凹部と前記凸部の嵌合にてクッション機構を備えた液圧シリンダにおいて、前記凹部または前記凸部を備えた部材を前記ピストンまたは前記カバーと別部材の構成とし、前記カバーの軸芯に対し軸直角方向に移動可能としたことを特徴とする液圧シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79727(P2013−79727A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−286436(P2012−286436)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3159227号
【原出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】