説明

液圧マッサージ機

【課題】液流の圧力でマッサージをおこなう液圧マッサージ機のエネルギー消費を減少させ、効果的なマッサージを可能にする。
【解決手段】ノズルを3次元的に制御して生体の近傍の最適の位置まで接近させて液流を噴射する。ノズルから液体を噴出する方向は、載置部2のなす平面に垂直になるように、また、人が載置部に載ったときの人体又は載置部の表面に垂直に、又は垂直に近い角度になるようにする。これにより、エネルギーのロスを最小にし、正確な強さでマッサージをおこなうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液圧マッサージ機に関するもので、特に、液体を吐出するノズルの位置を制御して、消費エネルギの小さな、より効果的且つ効率的なマッサージをおこなう液圧マッサージ機を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
液圧マッサージ機は、液体を吐出し、その圧力で人体をマッサージするものであり、ウォータベッド型やジェット水方式などがある。
【0003】
ウォータベッド型マッサージ機の例を図4に示す。これは、水槽の上部開口部に柔軟な膜(図4の3)を張設し、水槽の内部に水槽の水を圧送するポンプと、ポンプから送られる水槽の内部の水を膜に向けて噴射するノズル(図4の10)を設け、ノズルは水槽の長手方向及び短手方向に2次元的に移動可能にし、水槽内部に水を満たし、ポンプを作動させてノズルから膜に向けて水流を発生させ、この水流の圧力で膜に載った被マッサージ体をマッサージする(例えば、特許文献1参照)。ノズルは、槽の底部で、槽の長手方向(X方向)と短手方向(Y方向)に、2次元的に移動し、図5(A)と図5(B)に示すように、身長方向及び体の幅方向に全身をマッサージすることができる(例えば、特許文献1参照)。
ウォータベッド型マッサージ機には、図6(A)のような、ノズルの位置を固定にして、被マッサージ者の全身をマッサージできるように、多数のノズルをもうけたものもある。タイプもある。
【0004】
ジェット水方式の液圧マッサージ機は、図7に示すように、ベッド上で仰臥位になった人に、下のノズルからシャワーのようにジェット水を噴出してマッサージをおこなうものである(例えば、特許文献2参照)。この装置では、ベッドをなす水槽に、水は少ししか入っておらず、ノズルは空間にある点が、ウォータベッド型マッサージ機と異なる。ノズルは移動し、ウォータベッド型マッサージ機と同様、全身をマッサージできる(例えば、特許文献2参照)。
ベッド上で腹臥位になった人に防水シートをかけ、その上からジェット水をシャワーのように噴出してマッサージをおこなうものである。
以上ではベッド型のマッサージ機について述べたが、椅子式のものもある。
本願発明は、以上のような全てのタイプの液圧マッサージ機に応用することができるが、ここではウォータベッド型マッサージ機を中心に述べる。
【0005】
これらの液圧マッサージ装置では、図4に示すように、ノズルはベッドの底部に、人が乗るベッド面から離れた距離に設けてあり、図4に示すタイプのものは、ベッドの長手(Y)方向と短手(X)方向に移動させながら、槽内の液体を循環させつつ噴射する。ここでは、ベッド面のことを載置部とする。載置部は、ウォータベッド型マッサージ機では柔軟な膜が、ジェット水方式の液圧マッサージ機ではメッシュが多く用いられている。このため、乗る人の体重によってかなり下方へ撓み、人載置部とノズルが干渉(接触)する可能性がある。これを避けるために、図4のように、載置部とノズルの間隔は、十分に大きくとってあり、水槽は深く、このため、液体を噴射するのに大きなエネルギが必要となり、噴射用液体を圧送するためのポンプは、かなり大型なものが要求される。
【0006】
このエネルギを低減し、且つ効果的なマッサージを行うために、噴射ノズル(の噴射口)を極力支持シートに接近させるようにしたものも開示されている(例えば、特許文献3参照)。この実施例を図6に示す。ノズルの位置を固定にしたものでは、図6(A)に示すように、肩や腰などマッサージをする頻度が高い部分に噴流が当たるようにノズルを配置してある。このベッドに人が乗ると、載置部は柔軟な膜であるため、体が沈みこむ。従来は、槽の底部の深い位置にノズルは固定されていたが、この発明では、標準的な体格の人が乗るとどの程度沈み込むかは、ある程度推定できるため、この推定に合わせて、でん部のように体の沈みこみが大きい部分のノズルは深く、足や頭部のように沈みこみが少ない部分のノズルは浅くし、ノズルと載置部の距離が同じになるようにしてある。
【0007】
また、図6(C)のように、身長方向に体の沈みこみの曲線を求めておき、この曲線に沿ってノズルを移動させると、全身で、ノズルと載置部の距離を等しくすることができる。
このように、ノズルを載置部に近づけるようにしたので、噴流に対する水の抵抗が少なくなり、従来よりも少ないエネルギでマッサージをすることができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO97/29728
【特許文献2】WO90/15585
【特許文献3】特開2008−23147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や2に記載されているような従来の液圧マッサージ装置では、図4に示すように、人載置部(2)とノズル(3)が干渉しないように、その間隔は、十分に大きくとってある。
このため、液体を噴射するのに大きなエネルギが必要となり、噴射用液体を圧送するためのポンプとしてかなり大型なものが要求されていた。このように、大きなエネルギを用いてマッサージをおこなうと、ポンプで液体を循環させ液流を発生させてマッサージをおこなうとき、摩擦によって液体の温度が上昇し、被マッサージ者は不快を覚え、場合によっては熱くて使用できなくなることもあった。
この問題を解決するために、従来の装置には、液温の上昇を抑えて快適なマッサージをおこなうことができるように、図4には記載していないが、ラジエタを設けて、槽内の液体を冷却するようにしていた。
【0010】
このため、従来の装置では、ラジエタ及びその取り付け費用が余分にかかっていた。さらに、市販の装置では、ラジエタに空冷式を用いていたため、槽の液体を冷却すると、ラジエタの熱交換により、液体の熱が室内に放出されるため、室内の温度も上昇し、室内にいる人に不快感を位与え、これを解消するためには別途部屋に設けているエアコンを作動させる必要があり、トータルでさらに大きなエネルギを消費し、コストも上昇していた。
これらの問題点の大部分は、ノズルを槽の底部深くに設置して噴流を発生させるため大きなエネルギが必要である、ということに起因している。
【0011】
このエネルギを低減し、且つ効果的なマッサージを行うために、特許文献3では、噴射ノズルを極力支持シートに接近させるようにしたものが開示されている。
この装置では、図6(A)のように、被マッサージ者の全身をマッサージできるように、固定位置にノズルを配置し、その槽の底部からの高さは、図6(B)に示すように、人が乗ったときに想定される沈み込みを勘案して、部位によって変えてある。
図6(C)に示すように、人の大よその体型に沿ってノズルを移動できるようにもしている。
このようにして、従来よりも、人とノズルの間隔を小さくし、少ないエネルギでマッサージができるようにしている。
【0012】
しかし、図6(B)のノズルの高さは固定であり、これを変化することはできない。このため、身長や体重の違いにより、ノズルと載置部の距離が異なり、均一な刺激をおこなうことができない。また、載置部とノズルの干渉を避けるために、従来よりは少ないが、まだ大きな余裕を取っているため、液体を噴出するエネルギを十分には低くできていない。
図6(C)は、図6(B)のノズルの高さを連続的に実現したものであるが、身長や体重の違いに対応できない、エネルギ効率がまだ良くない等の問題は図6(B)と同じである。
【0013】
一方、ノズルと載置部の間隔が近づくほど、載置部が受ける水圧は強くなるが、非常に接近すると、ノズルが噴射する水流と載置部から反射する水流が干渉し、載置部が受ける水圧は弱くなる。つまり、最も強い水圧を得るにはノズルと載置部の最適な距離がある。従来の装置はこの点は考慮されていなかった。
本願発明の目的はこれらの課題を解決するもので、どのような体型の人であっても、体の全ての面の、最適な距離の位置にノズルを接近させ、少ないエネルギで効果的なマッサージをおこなうことのできる液圧マッサージ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するために、請求項1では、槽(1)と、前記槽(1)の開口部に設けた載置部(2)と、ノズル(3)と、ポンプ(4)を有し、前記槽(1)の中に液体を入れ、前記液体を前記ポンプ(4)で加圧して前記ノズル(3)から前記載置部(2)に向けて前記液体を噴出し、前記液体による圧力で前記載置部(2)に載った被マッサージ者(M)のマッサージをおこなう液圧マッサージ機において、前記ノズル(3)を前記槽(1)の深さ方向に移動可能に設け、前記ノズル(3)を前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)の近傍に接近させて所定距離(S)にし、前記所定距離(S)を維持しながら液圧マッサージをおこなうように前記ノズル(3)を制御するノズル制御手段を設けた。
本請求項記載の発明により、槽の深さ方向にノズルを移動させ、ノズル(3)から載置部(2)又は載置部に乗った人までの距離が所定距離(S)になるようにノズル(3)を接近させて、この距離を一定に保ちながらマッサージをおこなうことができるようにした。
【0015】
請求項2では、請求項1の装置において、前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)に作用する液流の液圧や音圧を含むエネルギーのいずれかを検出するエネルギー検出部を設け、前記ノズル(3)と前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)の間隔を所定距離(S)にしたときの前記エネルギー検出部で検出したエネルギーを一定に維持するように前記ノズル(3)を制御するようにした。つまり、載置部(2)又は被マッサージ者(M)に作用するエネルギー(液圧や音圧など)を指標に、前記ノズル(3)と前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)の間隔を所定距離(S)に保つようにして、液圧マッサージをおこなうようにした。
【0016】
請求項3記載の発明では、請求項1の装置において、前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)に作用する液流の液圧や音圧を含むエネルギーを検出するエネルギー検出部を設け、前記エネルギー検出部で検出したエネルギーが最大になるように前記ノズル(3)を制御するノズル制御を設けた。
【0017】
請求項4記載の発明では、請求項1の装置において、前記ノズル(3)から前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)までの距離を測定する距離測定部を設け、前記距離測定部で得られた距離が前記所定距離(S)になるように前記ノズル(3)を制御するようにした。
【0018】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の装置において、前記距離測定部は、ノズル(3)から前記載置部(2)又は被マッサージ者までの距離を測定する超音波や光ファイバを含む距離センサで構成した。
本請求項記載の発明により、距離センサを用い、その出力を用いて載置部又は被マッサージ者とノズルの距離を一定に保つようにした。
【0019】
請求項6記載の発明では、請求項4記載の装置において、槽(1)内にCCDカメラやC-MOSイメージセンサなどの画像センサを1個もしくは複数個設置し、それより得られる画像を解析し、人体又は載置部とノズルの距離を求め、人体又は載置部とノズルの距離を一定の所定距離(S)に保つようにした。
【0020】
請求項7記載の発明では、請求項4記載の装置において、前記距離測定部は、前記ノズル(3)の先端に設けた、前記所定距離(S)の長さを有するスペーサ(6)とした。
スペーサ(6)を載置部に当接すると、ノズルと載置部の距離をSにすることができる。
【0021】
請求項8記載の発明では、請求項1〜請求項7のいずれかに記載した液圧マッサージ機において、前記槽(1)の内部に水密されたモータ、又はモータで駆動するスプライン軸や動力ケーブル、又はバネのいずれかを用いて前記ノズル(3)を駆動するようにした。
【0022】
請求項9記載の発明では、請求項8記載の液圧マッサージ機において、前記ノズル(3)の先端に所定距離(S)の長さを有するスペーサ(6)を設け、前記スペーサ(6)が前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)に当接するように前記ノズル(3)を駆動し、前記ノズル(3)と前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)の距離を所定距離(S)に保ちながらマッサージをおこなうようにした。
【0023】
請求項10記載の発明では、請求項1から請求項9のいずれかに記載した液圧マッサージ機において、前記ノズル(3)を前記載置部(2)の方向に押す力と、前記ノズル(3)から噴出した液流が前記載置部(2)で反射して前記ノズル(3)を押す力が平衡する位置で液圧マッサージをおこなうようにした。
【0024】
請求項11記載の発明では、請求項1から請求項10のいずれかに記載した液圧マッサージ機において、前記ノズル(3)を、前記槽(1)の短手方向(X)と長手方向(Y)のなす平面方向に2次元的に移動させるようにした。
【0025】
請求項12記載の発明では、請求項1から請求項11のいずれかに記載した液圧マッサージ機において、前記ノズル(3)から噴出した液流が、前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)の表面にほぼ垂直に当るように、前記ノズル(3)の方向を制御するようにした。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明で、ノズルを槽の深さ方向に制御して載置部又は被マッサージ者に接近させてマッサージをおこなうことができる。このため、従来の装置よりも小さなエネルギでマッサージをおこなうことができる。また、ノズルと載置部又は被マッサージ者の距離を所定距離(S)に一定にすることができるので、全身を所定の強さのマッサージをおこなうことができる。つまり、マッサージ力を制御できる。このため、十分に効果的なマッサージが可能になる。
【0027】
請求項2記載の発明で液圧や音圧などのエネルギーをモニタしながらズルと載置部又は被マッサージ者の距離を所定距離(S)に一定に維持することができる。
【0028】
請求項3記載の発明で、最大の液圧が得られる最適な距離にノズルを移動させてマッサージをおこなうことができる。このため、最小のエネルギで、十分に効果的なマッサージが可能になる。
【0029】
請求項4記載の発明で、距離センサを用いてノズルと載置部の距離を求め、ノズルと載置部の間隔が一定になるように又は最適になるように、ノズルの位置を制御することができる。このため、従来の装置よりも小さなエネルギで、又は最小のエネルギで、十分に効果的なマッサージが可能になる。
【0030】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、距離センサに超音波や光ファイバなどを用いた距離センサを用いた。本請求項記載の発明でも請求項4記載の発明と同じ効果が得られる。
【0031】
請求項6記載の発明で、画像センサで載置部又は被マッサージ者の形状を3次元的に測定し、ノズルと載置部の距離が最適に、又は一定になるように、ノズルを制御することができる。
【0032】
請求項7記載の発明により、ノズル先端にガイドを設けたため、ガイドによりノズルと載置部の距離を一定に保つことができる。このため、簡単な構成で、請求項1と請求項4の発明を、低コストで実現できる。
【0033】
請求項8記載の発明により、スプライン軸、動力ケーブル、モータなどにより、ノズルを槽の垂直方向に移動させることができる。
【0034】
請求項9記載の発明は、ノズル3の先端にスペーサ6を設け、請求項8又は請求項9の駆動源を用いてノズル3を移動させ、スペーサ6が載置部2に当接するので、ノズル3を前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)から所定距離Sにして、適切なマッサージをおこなうことができる。
【0035】
請求項10記載の発明は、ノズルを載置部近傍に移動させる手段を設け、このノズルから液体を噴出したとき、ノズル3を移動させる駆動力と、載置部で反射した液体がノズルを押す力がバランスする距離で、マッサージをおこなう。
ノズルから液体を噴出させると、液圧はノズル面で最大になり、ノズル面からの距離が大きくなるにつれて、液圧は小さくなる。載置部から反射した液体の圧も、載置部から離れるに連れて弱くなる。載置部に作用する圧力はこの両者の和になり、両者の和が最大になるのは、両者のバランスが取れる、本請求項記載のノズル位置となる。液流は物体に直角に当たるとき、液圧は最大になる。本請求項記載の発明によるときの距離で液圧は最も高くなり、エネルギ効率が最も良くなる。つまり、ノズルと載置部の最適な距離になる。
【0036】
請求項11記載の発明は、請求項1〜請求項10記載の液圧マッサージ機において、
前記ノズル(3)を、前記槽(1)の短手方向(X)と長手方向(Y)のなす平面方向に2次元的に移動させるようにした。
請求項1〜請求項10記載の液圧マッサージ機において、ノズルを3次元方向に移動させることができるため、被マッサージ者Mがどのような体格の人であっても、その体型に沿って、載置部2又は被マッサージ者Mから所定距離Sに接近させることができる。このため、少ないエネルギーで効果的なマッサージをおこなうことができる。
【0037】
請求項12記載の発明で、ノズルから液体を噴出する方向は、載置部2又は被マッサージ者Mの面にほぼ垂直になるように、ノズルの方向を3次元的に制御することができる。液圧は、シャワーや噴流により物体が受ける圧力のことであり、これは、液流は物体に直角に当たるとき、液圧は最大になる。
このため、得られる液圧はさらに大きくなり、小さなエネルギでより効率的・効果的なマッサージをおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】液圧マッサージ機のノズルの位置を示す図である。
【図2】本発明の液圧マッサージ機のノズルの軌跡を示す図であり、従来の装置のノズルの軌跡と比較したものである。
【図3】本発明のノズルの実施例である、
【図4】従来の液圧マッサージ機の例である。
【図5】従来の液圧マッサージ機による、マッサージ軌跡の図である。
【図6】特許文献2の実施例である。
【図7】特許文献3の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に実施例を示す。
【実施例1】
【0040】
本発明の実施例を図1、図2及び図3に示す。
図1は、本発明をベッド型の液圧マッサージ機に応用した例である。装置は、槽(1)と、槽(1)の開口部に設けた載置部(2)と、ノズル(3)と、ポンプ(4)を有し、槽(1)の中に液体を入れ、この液体をポンプ(4)で加圧してノズル(3)から載置部(2)に向けて液流を発生し、前記液流による圧力で載置部(2)に載った人のマッサージをおこなう。
【0041】
図では、ノズルある位置にあるが、請求項11記載の発明により、ノズルの位置を、槽(1)の短手方向(X)と長手方向(Y)のなす平面の方向に2次元方向(X,Y方向)に移動させることができる。
【0042】
従来の装置でも、ノズルは槽の底部で、X,Y両方向に2次元的に移動できるものは存在した。
さらに本発明では、請求項1記載の発明により、前記X-Y平面と垂直なZ方向にも移動できる。
本願発明は、ノズルを槽内部で、X-Y-Zの3次元方向に移動させ、被マッサージ者の体表面、又は載置部に、所定距離Sに接近させて、一定の距離に保ちながら、液体を噴出し、マッサージをおこなう。
図2に、実際のマッサージの様子を示す。
被マッサージ者(M)は、ベッド型マッサージ機の上部に張設された載置部(2)に横になる。載置部は、液圧を人体に伝えやすいように、柔軟な膜が使用される。ジェット水方式では、柔軟性のもう少し少ないメッシュが載置部に用いられる。
被マッサージ者が載置部(2)に乗ると、図2のように、体重と載置部(2)の張力の関係で、臀部を中心に、体が沈み込む。
【0043】
図2(A)は、本発明と特許文献1等の従来の装置とのノズル位置を比較したものである。本例では、ノズル(3)は移動軌跡(N)に沿って、身長方向に、実際には体幅方向にも、移動しながら、マッサージをおこなう。この図では、ノズルと被マッサージ体において所定距離をSに保っているときの様子を示している。Mはマッサージを受ける人(被マッサージ体)である。
3oは従来の装置のノズルで、図のように、槽の底部を、槽の短手方向(X)と長手方向(Y)に、直線的に移動する。この場合、ノズルから被マッサージ体までの距離(So)が大きいため、前述のように、同じ圧力のマッサージをおこなうにも、大きなエネルギが必要であった。また、体の部位により、沈み込みの量が異なるため、ノズルからの距離も異なり、一定の圧力で液体を噴出させると、得られる液圧が部位により異なり、一部で適度のマッサージが得られても、他の部位ではマッサージ力に過不足があり、効果的なマッサージができなかった。
本願発明は、これらの課題を解決することができる。
【0044】
図2(B)は、特許文献2のノズルとのノズル位置を比較したものである。特許文献2の装置は、ノズルを従来よりも被マッサージ体に近づけて(距離(Sr)にして)いるため、エネルギ消費は小さくすることができる。しかし、標準的な体格の人を想定して、槽の底部からのノズルの高さを決定しており、しかも固定にしている。このため、ノズルと載置部が干渉しないように、余裕を持たせてあり、まだ、十分にはエネルギの低減が進んでいない。
また、ノズルの高さが固定であるため、身長や体重が異なると、距離(Sr)が一定ではなくなり、均一なマッサージ力が得られない。
図2(C)は、本発明の請求項12記載の発明と特許文献1等の従来の装置とのノズル位置を、頭側からみて、比較したものである。
【0045】
ノズルと被マッサージ体の距離(S)は、請求項2では圧力又は音又は消費エネルギを指標として最適な値にする。
ノズルから液体を噴射すると、ノズルから離れるほど、液圧は小さくなる、このため、液圧マッサージでは、ノズルを被マッサージ体に接するほど近づけるほうが、エネルギ効率は良い。しかし、ノズルから噴射された液体は被マッサージ体で反射し、ノズルからの液体と干渉する。ノズルからの噴射液体とその被マッサージ体から反射した液体が重ね合わされて、ノズルからある距離で被マッサージ体に最も強い圧力をあたえる。
載置部に液圧又は音圧、又はその他のエネルギーを検出するエネルギー検出部をもうけ、エネルギー検出部で検出したエネルギーを指標としてノズル(3)と載置部又は被マッサージ者(M)の距離を所定距離(S)にするようにノズル(3)を制御するのが請求項2である。
載置部(2)又は被マッサージ者(M)に最大のエネルギーを与える位置にノズルを置くのが、請求項3記載の発明である。
【0046】
図3は、本発明のノズルの例である。
図3(A)は請求項7の実施例である。このノズル部(35)には、請求項7記載の発明によりスペーサ6が付けられており、ノズルが被マッサージ体に押し付けられたとき、ノズルと被マッサージ体の間には所定距離(S)の間隔が確保される。ノズルに体重がかかると、シリンダが縮んで、そのままマッサージを続行できる。
つまり、一定の所定距離(S)にしてマッサージをおこなうことができる。
図3(B)は請求項9の実施例である。ノズルの駆動に、バネ37を使用している。
【0047】
図3(C)は、請求項10実施例である。構造上は図3(A)と類似しているが、こちらにはスペーサ3を設けていない。このノズルに液流を通すと、図3(A)と同様に、ノズルは被マッサージ体に当接するように移動する。しかし、ノズルから出た液流は被マッサージ体で反射して、ノズルを押し戻すように作用し、この両方向の力のバランスが取れた位置で、作動する。この位置は、被マッサージ体に与えられる圧力が最も強く、液圧を発生するエネルギー効率の最も良い位置である。
図3(D)は、請求項4〜6の実施例である。ノズルには、ノズルを被マッサージ体に接近させる機構38を設けており、これをスプライン軸、動力ケーブル、モータなどで駆動する。一方、超音波や光ファイバその他の距離センサ(37)又は画像センサ(37)が設けられている。
【0048】
請求項4の発明では、距離センサ(37)でノズルと被マッサージ体の距離を測定し、ノズル駆動機構38を駆動し、ノズルと被マッサージ体の距離が設定した値になるように、制御する。請求項5の発明では超音波や光などを用いた距離センサ(37)を、請求項6の発明では、画像センサで被マッサージ体の形状を測定し、ノズル駆動機構(38)を駆動し、ノズルと被マッサージ体の距離が設定した値になるように、制御する。
【0049】
これらのノズル位置制御は、身長方向、体幅方向、槽の深さ方向におこなわれ、どのような体型の場合でも、体型に合わせて、全ての部位で、正確にノズルと被マッサージ体の距離を一定に、又は最適に保ち、マッサージをおこなう。
このため、所定に強さのマッサージをおこなうのに、装置のエネルギ消費を小さく、又は最小うにすることができる。
一方、どのような体格の人でも、体の全ての部位を一定に圧力でマッサージすることができるため、より効果的なマッサージをおこなうことができる。
単に、漫然とマッサージするのではなく、医学的のコントロールされた治療をおこなうことが可能となる。
【0050】
さらに、請求項12記載の発明により、ノズルの液体噴射方向を制御することができるため、被マッサージ体に常に直角又はそれに近い角度で液体を噴射できる。
従来の装置では、ノズルから噴射する液流は、常に載置部に直角であった。このため、体側部では体表面に対して、液流が斜めから当たることになり、このため、同じ圧力の噴射を与えても、マッサージ力は低下していた。
本発明によると、ノズルの噴射圧は同じにしても、常に体表面に直角に、一定の液圧をあたえることができるため、より高いマッサージ効果と治療効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1:槽
2:載置部
3:ノズル
4:ポンプ
X:槽の長手方向の軸
Y:槽の端手方向の軸
Z:槽の深さ方向の軸
M:被マッサージ者(体)
N:本発明のノズルの軌跡
3o:特許文献1等従来装置のノズル
3r:特許文献3のノズル
S:本発明のノズルと被マッサージ体の距離
So:特許文献1等従来装置のノズルと被マッサージ体の距離
Sr:特許文献3のノズルと被マッサージ体の距離
O:特許文献1等従来装置のノズルの軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽(1)と、前記槽(1)の開口部に設けた載置部(2)と、ノズル(3)と、ポンプ(4)を有し、前記槽(1)の中に液体を入れ、前記液体を前記ポンプ(4)で加圧して前記ノズル(3)から前記載置部(2)に向けて前記液体を噴出し、前記液体による圧力で前記載置部(2)に載った被マッサージ者(M)のマッサージをおこなう液圧マッサージ機において、前記ノズル(3)を前記槽(1)の深さ方向に移動可能に設け、前記ノズル(3)を前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)の近傍に接近させて所定距離(S)にし、前記所定距離(S)を維持しながら液圧マッサージをおこなうように前記ノズル(3)を制御するノズル制御手段を設けたことを特徴とする、液圧マッサージ機。
【請求項2】
前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)に作用する液流の液圧や音圧を含むエネルギーのいずれかを検出するエネルギー検出部を設け、前記ノズル(3)と前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)の間隔を所定距離(S)にしたときの前記エネルギー検出部で検出したエネルギーを一定に維持するように前記ノズル(3)を制御するようにしたことを特徴とする、請求項1記載の液圧マッサージ機。
【請求項3】
前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)に作用する液流の液圧や音圧を含むエネルギーを検出するエネルギー検出部を設け、前記エネルギー検出部で検出したエネルギーが最大になるように前記ノズル(3)を制御するノズル制御を設けたことを特徴とする、請求項1記載の液圧マッサージ機。
【請求項4】
前記ノズル(3)から前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)までの距離を測定する距離測定部を設け、前記距離測定部で得られた距離が前記所定距離(S)になるように前記ノズル(3)を制御するようにしたことを特徴とする、請求項1記載の液圧マッサージ機。
【請求項5】
前記距離測定部は、前記ノズル(3)から前記載置部(2)又は被マッサージ者までの距離を測定する超音波や光ファイバを含む距離センサで構成したことを特徴とする、請求項4記載の液圧マッサージ機。
【請求項6】
前記槽(1)の内部にCCDカメラやC-MOSイメージセンサを含む画像センサを1個もしくは複数個設置し、前記画像センサで得られたデータから、ノズル(3)から前記載置部(2)又は被マッサージ者までの距離を求めるようにして、前記距離測定部を構成したことを特徴とする、請求項4記載の液圧マッサージ機。
【請求項7】
前記距離測定部は、前記ノズル(3)の先端に設けた、前記所定距離(S)の長さを有するスペーサ(6)であることを特徴とする請求項4記載の液圧マッサージ機。
【請求項8】
前記槽(1)の内部に水密されたモータ、又はモータで駆動するスプライン軸や動力ケーブル、又はバネのいずれかを用いて前記ノズル(3)を駆動するようにしたことを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載した液圧マッサージ機。
【請求項9】
前記ノズル(3)の先端に所定距離(S)の長さを有するスペーサ(6)を設け、
前記スペーサ(6)が前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)に当接するように前記ノズル(3)を駆動し、前記ノズル(3)と前記載置部(2)又は前記被マッサージ者(M)の距離を所定距離(S)に保ちながらマッサージをおこなうようにした、請求項8記載の液圧マッサージ機。
【請求項10】
前記ノズル(3)を前記載置部(2)の方向に押す力と、前記ノズル(3)から噴出した液流が前記載置部(2)で反射して前記ノズル(3)を押す力が平衡する位置で液圧マッサージをおこなうようにしたことを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれかに記載した液圧マッサージ機。
【請求項11】
前記ノズル(3)を、前記槽(1)の短手方向(X)と長手方向(Y)のなす平面方向に2次元的に移動させるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載した液圧マッサージ機。
【請求項12】
前記ノズル(3)から噴出した液流が、前記載置部(2)又は被マッサージ者(M)の表面にほぼ垂直に当るように、前記ノズル(3)の方向を制御するようにしたことを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれかに記載した液圧マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−39424(P2013−39424A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237298(P2012−237298)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2008−51557(P2008−51557)の分割
【原出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000114190)ミナト医科学株式会社 (31)
【Fターム(参考)】