説明

液圧成形装置

【課題】ボルスター上の成形型と軸押し及び液圧供給装置との間の連結及び切離しを迅速且つ確実に行うことが可能な液圧成形装置を提供する。
【解決手段】液圧成形装置のジョイント機構は二部(J1,J2)からなる。軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1は、ジョイントベース11、切替え配置可能な把持レバー16及びそれを付勢する復帰バネ17を備える。ボルスター側ジョイント部J2は、後端にジョイントベース28を具備した軸押し体25、把持レバー16の先端を係合させるために軸押し体25に設けられた環状係合溝34及びボルスターB上に設けられたレバーガイド36を備える。レバーガイド36は、軸押し及び液圧供給装置10の軸押し方向移動時には把持レバー16を開位置から閉位置にガイドし、装置10の逆方向移動時には復帰バネ17の付勢力に基づき把持レバー16が開位置に復帰するのを許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の金属素材を保持する成形型を搭載したボルスターと、ボルスターから分離独立した軸押し及び液圧供給装置とを備えた液圧成形装置に関する。特に、液圧成形装置における、ボルスター上の成形型と軸押し及び液圧供給装置との間の連結及び切離しに関与するジョイント機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
管状の金属素材の内部に液圧を付与してこれを膨張させ、金型の内部形状に合致した外形状に成形する液圧成形法(バルジ加工法ともいう)が知られている。液圧成形に際しては、例えば特許文献1に開示されるような装置が使用される(この段落及び次段落中で以下に示す部材番号は特許文献1で使用されている部材番号の引用である)。即ち、特許文献1のバルジ加工装置は、パイプ素材1を収容すると共にそのパイプ素材1を成形するための膨張空間15を具備したバルジ成形型3と、バルジ成形型3内のパイプ素材1に対して高圧流体を供給すると共に当該パイプ素材1の端部を軸方向から押圧する左右一対の軸方向加圧プレス5とを備えている。一対の軸方向加圧プレス5はパイプ素材1の両端部近傍にそれぞれ配設されている。各軸方向加圧プレス5にはシリンダ17によって駆動される軸押しピストン19が設けられ、その軸押しピストン19内には高圧流体通路37が形成されている。そして、バルジ加工時には、軸押しピストン19の高圧流体通路37を介してバルジ成形型3内に収容されたパイプ素材1内に高圧流体を供給すると共に、パイプ素材1の両端部を各軸押しピストン19で成形型3内に向けて押し込むことにより、パイプ素材1に亀裂を生じさせること無く、パイプ素材1を膨張変形させている。
【0003】
このように一般的な液圧成形装置は、成形型と、軸押し及び液圧供給装置(特許文献1の装置では軸方向加圧プレス5がこれに相当する)との二部構成となっており、軸方向加圧プレス5の軸押しピストン19に一体化された前側軸部33でパイプ素材1の端部を直接的に軸押し可能に設計されている。他方、成形型については、型交換を容易にするために移動式のボルスター上に設置されるのが通例である。このため、液圧成形装置の使用時には、ボルスターの成形型と、軸押し及び液圧供給装置との間の連結及び切離しの作業が必要になる。
【0004】
しかしながら、従来の液圧成形装置では、ボルスターの成形型と軸押し及び液圧供給装置とを連結するときには、成形型と軸押しピストンの前側軸部とを正確に位置合せした後に、ボルスターと軸押し及び液圧供給装置との間の位置ずれ防止のためにボルト固定を行う必要があった。また、型替えに際してボルスターの成形型と軸押し及び液圧供給装置とを切り離すときには、上記ボルト固定を解除する必要があった。このように、成形型と軸押しピストンとの間で正確に位置合せする作業や、ボルスターと軸押し及び液圧供給装置との間でボルト締めやボルト外しを行うといった作業が不可避であったために、型替え等に時間がかかり、液圧成形装置の稼動率を低下させる一因となっていた。
【0005】
【特許文献1】特開平11−19729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ボルスター上の成形型と軸押し及び液圧供給装置との間の連結及び切離しを迅速且つ確実に行うことが可能な液圧成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、筒状の金属素材を保持する成形型を搭載したボルスター、ボルスターから分離独立した軸押し及び液圧供給装置、並びに、ボルスター上の成形型と軸押し及び液圧供給装置との間の連結及び切離しに関与するジョイント機構を備えた液圧成形装置であって、前記ジョイント機構は、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部と、ボルスター側ジョイント部とからなり、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部は、ボルスター側ジョイント部と連結可能な第1の連結端、前記第1の連結端から離間する開位置と第1の連結端に接近する閉位置との間を切替え配置可能に設けられた把持レバー、及び、把持レバーを開位置に向けて付勢する復帰バネを備えており、ボルスター側ジョイント部は、成形型の開口と軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部の第1の連結端とをつなぐ経路に沿って移動可能にボルスター上に支持されると共に、一方の端部には成形型の開口に進入可能なシール部を、他方の端部には前記第1の連結端に連結可能な第2の連結端を具備した軸押し体、前記閉位置に配置されたときの把持レバーの一部を係合させるために前記軸押し体に設けられたレバー係合部、並びに、前記軸押し体の第2の連結端の近傍にてボルスター上に設けられたレバーガイドを備えており、前記レバーガイドは、成形型、軸押し体、軸押し及び液圧供給装置の三者を相互連結すべく軸押し及び液圧供給装置を軸押し方向に移動させたとき、復帰バネの付勢力に抗して把持レバーを開位置から閉位置にガイドすると共に、成形型から軸押し及び液圧供給装置を切り離すべく軸押し及び液圧供給装置を軸押し方向と逆方向に移動させたとき、復帰バネの付勢力に基づいて各把持レバーが閉位置から開位置に復帰するのを許容することを特徴とする液圧成形装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の液圧成形装置において、前記レバーガイドには、軸押し及び液圧供給装置の動きに追従して移動する把持レバーに接触してこれをガイドするためのガイド面が形成されており、当該ガイド面は、把持レバーを開位置から閉位置に導くようにカーブした湾曲ガイド面と、閉位置に配置された把持レバーが復帰バネの付勢力によって開位置に戻ろうとするのを規制して把持レバーの一部とレバー係合部との係合状態を維持させるためのストレートガイド面とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の液圧成形装置において、前記把持レバーは、前記第1の連結端の周囲に複数設けられており、前記レバーガイドは、把持レバーの数に対応して複数存在すると共に、それらの間に前記軸押し体の第2の連結端が配置されるように設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1,2又は3に記載の液圧成形装置において、前記軸押し体及び第1の連結端の内部には、両者の連結時に軸押し体のシール部から第1の連結端に到る一連の液圧供給通路が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1,2,3又は4に記載の液圧成形装置において、前記軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部又は前記ボルスター側ジョイント部には、前記第1の連結端と第2の連結端との間の連結解除を促進するための補助バネが設けられていることを特徴とする。
【0012】
[作用]
本発明の液圧成形装置において、ボルスター上の成形型に軸押し及び液圧供給装置を連結する場合には、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部の第1の連結端とボルスター側ジョイント部の軸押し体の第2の連結端とを対向配置した状態で、軸押し及び液圧供給装置を軸押し方向に移動させる。この軸押し方向への移動に伴って、第1の連結端が待機位置から前進して第2の連結端に接合すると共に、ボルスター上のレバーガイドのガイド作用により、復帰バネの付勢力に抗して把持レバーが開位置から閉位置に切替え配置され、把持レバーの一部が軸押し体のレバー係合部に係合し、軸押し体と軸押し及び液圧供給装置との連結が完了する。また、軸押し方向移動の進展により、軸押し体のシール部が成形型の開口に進入し、軸押し体を介して成形型と軸押し及び液圧供給装置との連結が完了する。このように本装置によれば、軸押し体と軸押し及び液圧供給装置との連結、並びに、軸押し体シール部の成形型開口への進入(即ち成形型と軸押し体との連結)が、軸押し及び液圧供給装置の軸押し方向移動に伴う一連の動作として達成される。
【0013】
他方、ボルスター上の成形型から軸押し及び液圧供給装置を切り離す場合には、軸押し及び液圧供給装置を軸押し方向と逆方向に移動させる。この逆方向移動に伴って、上記待機位置に向けて第1の連結端と共に把持レバーが後退し、これに追従して、把持レバーとレバー係合部との係合に基づき把持レバーによって把持された軸押し体も後退し、成形型開口からシール部が離脱する。また、逆方向移動の進展に伴い、ボルスター上のレバーガイドの復帰許容作用とあいまった復帰バネの付勢作用に基づいて、把持レバーが閉位置から開位置に復帰し、把持レバーの一部と軸押し体のレバー係合部との係合が解除され、軸押し体からの軸押し及び液圧供給装置の切離しが完了する。このように本装置によれば、軸押し体シール部の成形型開口からの離脱(即ち成形型からの軸押し体の切離し)、並びに、軸押し体からの軸押し及び液圧供給装置の切離しが、軸押し及び液圧供給装置の逆方向移動に伴う一連の動作として達成される。
【0014】
[付記]本発明の更に好ましい態様や追加的構成要件を以下に列挙する。
請求項1〜5において、前記把持レバーは鉤状の先端部を有しており、その鉤状先端部の背側には、湾曲ガイド面が形成されていること。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液圧成形装置によれば、軸押し及び液圧供給装置の軸押し方向への移動に伴って、軸押し体と軸押し及び液圧供給装置との連結、並びに、成形型と軸押し体との連結を一連の動作として達成することができると共に、軸押し及び液圧供給装置の軸押し方向と逆方向への移動に伴って、成形型からの軸押し体の切離し、並びに、軸押し体からの軸押し及び液圧供給装置の切離しを一連の動作として達成することができる。つまり、従来例のような成形型と軸押しピストン前側軸部との位置合せ作業や、従来例のようなボルスターと軸押し及び液圧供給装置との間でのボルト締めやボルト外しといった作業を一切必要としない。本発明によれば、ボルスター上の成形型と軸押し及び液圧供給装置との間の連結及び切離しを迅速且つ確実に行うことが可能となり、型替え等の時間を短縮して液圧成形装置の稼動率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図1〜図4では、断面部分であり本来ならハッチングを付すべき箇所であっても、細かな線の交錯を避けて図面を見やすくするために、あえてハッチングを省略している場合がある。
【0017】
図1及び図4に示すように、本実施形態の液圧成形装置は、移動式のボルスターBと、その左右両側に配設された一対の軸押し及び液圧供給装置10(右側の装置のみ図示)とを備えている。軸押し及び液圧供給装置10はボルスターBから分離独立した装置であり、ボルスターB並びに軸押し及び液圧供給装置10には、ボルスターB上の成形型22と軸押し及び液圧供給装置10との間の連結及び切離しに関与するジョイント機構(J1,J2)が設けられている。ジョイント機構(J1,J2)は、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1と、ボルスター側ジョイント部J2とから構成されている。
【0018】
[軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1]
図1及び図2に示すように、軸押し及び液圧供給装置10の端部には、概して円柱状のジョイントベース11が設けられている。このジョイントベース11の先端部(図2では左端部)の端面には、円形に凹んだ嵌合凹部12が設けられている。この嵌合凹部12はボルスター側ジョイント部J2のジョイントベース28との連結にかかわる部位であり、嵌合凹部12の底には環状シール材としてのOリング13が装着されている。また、ジョイントベース11の内部には、その中心を軸方向に貫通する液圧供給通路14が設けられている。この液圧供給通路14は、前記嵌合凹部12を図示しない液圧供給源につないでいる。
【0019】
ジョイントベース11の外周部であってジョイントベース11の先端寄り位置には、一対のヒンジ15が設けられている。二つのヒンジ15は180°の角度間隔を隔てて対向配置されており、各々のヒンジ15にはそれぞれ把持レバー16が回動可能に支持されている。このため、ジョイントベース11の先端部における二つの把持レバー16は、各レバー16の先端部が互いに離間すると共に両レバー16の本体部が傾斜状態となる開位置(図2参照)と、各レバー16の先端部が互いに接近すると共に両レバー16の本体部が略平行状態となる閉位置(図3参照)との間を切替え配置可能となっている。各把持レバー16の先端部は、ジョイントベース11の先端面よりも更に前方(図の左方)に延び出ると共に、最先端が内側に曲がった鉤状に形成されている。また、把持レバー16の鉤状先端部の背側には、カーブした湾曲ガイド面16aが形成されている。
【0020】
更に、ジョイントベース11の先端外周部には、各把持レバー16にそれぞれ対応して復帰バネ17が設けられている。復帰バネ17は、例えば圧縮コイルバネからなっており、把持レバー16を閉位置から開位置に向けて付勢する。復帰バネ17による付勢を受けた把持レバー16は、それぞれの先端部が互いに離間する方向に回動するが、各レバー16の後端部がジョイントベース11の外周面に当接することでそれ以上の回動が規制される結果、待機時には図2に示すような開位置に保持される。
【0021】
このように、ジョイントベース11と、それに設置又は装着された各種の要素(12〜17)によって、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1が構築されている。なお、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1のジョイントベース11は、「ボルスター側ジョイント部J2と連結可能な第1の連結端」を構成する。
【0022】
[ボルスター側ジョイント部J2]
図1に示すように、平面長方形状のボルスターBの中央部には、ダイプレート21を介して成形型22が搭載されている。成形型22は下型及び上型からなっており、上下両型の接合により成形型22の内部には液圧成形用の成形室23が構築される。この成形室23は、加工対象となる筒状の金属素材(例えば金属パイプ、図示略)を液圧膨張の余地を残しながら収容すべく概ねトンネル形状に形成されている。成形型22の左右両側には、トンネル状成形室23を外部に連通させる左右一対の開口24が設けられている。液圧成形時、成形型22の各開口24には、筒状金属素材の両端部がそれぞれ嵌入状態で配置される。
【0023】
ボルスターB上には上記成形型22の左右両側において、一対のボルスター側ジョイント部J2が配設されている。成形型22の右側に位置するボルスター側ジョイント部J2に着目すると(図1参照)、このボルスター側ジョイント部J2は、概してシャフト状の軸押し体25と、レバーガイド36とを備えている。
【0024】
軸押し体25は、略短円柱状のシール部26、やや長い軸部27及び略円柱状のジョイントベース28からなるものであり、先端にシール部26を、後端にジョイントベース28を配した状態で両者間に軸部27を介在させ、これら(26,27,28)をボルトで連結することにより概略シャフト状の一体物として構成したものである。軸押し体25の内部には、その中心を軸方向に貫通する液圧供給通路29が設けられている。そして、軸押し体25は、ボルスターB上に設けられた支持手段(図示略)によって、成形型22の右側の開口24と、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1のジョイントベース11の先端部とをつなぐ経路に沿って移動可能に(即ち進退自在に)支持されている。待機時(装置の未使用時)には、図1及び図2に示すように、軸押し体25は、その後端部がボルスターBの右辺付近に位置すると共に、先端部が成形型22の開口24から離れた位置となるように配置される。
【0025】
軸押し体25の先端部を構成する略短円柱状のシール部26は、成形型22の開口24に進入可能となっている。このシール部26は、当該開口24を閉塞して成形室23の液密性を確保するための栓材として機能することはもちろんのこと、成形室23内に保持された筒状金属素材の端部に対して軸押し方向の押圧力を伝達するための押圧具としても機能する。シール部26の先端面には液圧供給通路29の先端が開口する。
【0026】
軸押し体25の後端部を構成する略円柱状ジョイントベース28の外径は、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1のジョイントベース11の先端部の外径とほぼ一致している。そして、ジョイントベース28の後端部には、前記ジョイントベース11の嵌合凹部12に嵌入可能な嵌合凸部32が設けられている。この嵌合凸部32の端面には液圧供給通路29の後端が開口しており、嵌合凸部32の外周部には環状シール材としてのOリング33が装着されている。なお、軸押し体25後端のジョイントベース28は、「軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1の第1の連結端(ジョイントベース11)に連結可能な第2の連結端」を構成する。
【0027】
更に、前記嵌合凸部32の近傍においてジョイントベース28の外周部には、レバー係合部としての環状の係合溝34が形成されている。この環状係合溝34は、ジョイントベース28の嵌合凸部32とジョイントベース11の嵌合凹部12とが相互嵌合すると共に各把持レバー16が前記閉位置に配置されたときに、各把持レバー16の鉤状先端部を係合させるためのレバー係合部として機能するものである。それ故、閉位置に配置された把持レバー16の鉤状先端部と環状係合溝34との係合に基づいて、軸押し及び液圧供給装置10側のジョイントベース11が軸押し方向と逆方向に後退するときには、それに追従してジョイントベース11共々、シャフト状軸押し体25の全体が強制後退される。
【0028】
なお、軸押し体25のジョイントベース28の後端部には、嵌合凸部32を取り囲むように補助バネ35が設けられている。この補助バネ35は、例えば嵌合凸部32よりも大径のコイルバネで構成される。補助バネ35には、ジョイントベース28の嵌合凸部32とジョイントベース11の嵌合凹部12とが相互嵌合した際に両者を離間させる方向に作用するバネ力が蓄力される。このため、補助バネ35は両ジョイントベース11,28間の連結状態の解除を促すための連結解除促進バネ又は切離し促進バネとして機能する。
【0029】
図1及び図2に示すように、ボルスターB上には軸押し体25のジョイントベース28の近傍において、一対のレバーガイド36が固定設置されている。特に図2に示すように、一対のレバーガイド36は、これらの間にジョイントベース28を挟むように配置されており、各レバーガイド36の内側には、軸押し及び液圧供給装置10の動きに追従して移動する把持レバー16に接触してこれをガイドするための一連のガイド面(37,38)が形成されている。この一連のガイド面は、湾曲ガイド面37と、それに連続するストレートガイド面38とから構成されている。
【0030】
各レバーガイド36の後端部に形成された湾曲ガイド面37は、それに対応する把持レバー16の鉤状先端部の湾曲ガイド面16aに接触して、当該把持レバー16を開位置から閉位置に導くようにカーブしている。また、各レバーガイド36の内側に形成されたストレートガイド面38は、前記湾曲ガイド面37によって閉位置に誘導された把持レバー16の本体背面に接触して、閉位置に配置された把持レバー16が復帰バネ17の付勢力によって開位置に戻ろうとするのを規制する(図3参照)。従って、成形型22、軸押し体25、軸押し及び液圧供給装置10の三者を相互連結すべく軸押し及び液圧供給装置10を軸押し方向に移動させたとき、両レバーガイド36は、復帰バネ17の付勢力に抗して各把持レバー16を開位置から閉位置にガイドする働きをする。他方、成形型22から(軸押し体25を介して)軸押し及び液圧供給装置10を切り離すべく軸押し及び液圧供給装置10を軸押し方向と逆方向に移動させたとき、両レバーガイド36は復帰バネ17の付勢力に基づいて各把持レバー16が閉位置から開位置に復帰するのを許容する。
【0031】
[実施形態の作用及び効果]:本実施形態の液圧成形装置を用いた液圧成形手順(即ち液圧成形装置の使用方法)について以下に説明する。
【0032】
ボルスターB上の成形型22に対し軸押し体25を介して軸押し及び液圧供給装置10を連結する際には、先ず図1に示すように、左右の軸押し及び液圧供給装置10(右の装置のみ図示)の間にボルスターBを移動させると共に、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1のジョイントベース11とボルスター側ジョイント部J2の軸押し体25のジョイントベース28とを対向させる。そして、この対向状態から軸押し及び液圧供給装置10を軸押し方向(即ち成形型22に接近する方向)に移動(前進)させる。
【0033】
軸押し及び液圧供給装置10の軸押し方向への移動に伴い、ジョイントベース11が図1及び図2に示す待機位置から前進してボルスターB側のジョイントベース28に接合する。このとき、ジョイントベース11の嵌合凹部12に対してジョイントベース28の嵌合凸部32が嵌入すると共に、Oリング13及び33のシール作用によってジョイントベース11側の液圧供給通路14と軸押し体25側の液圧供給通路29とが確実に接続される。また、両ジョイントベース11,28の相互接触に同期して、補助バネ35には両者を離間させる方向に作用するバネ力(反発力)が蓄えられる。
【0034】
また、ボルスターB側のジョイントベース28に軸押し及び液圧供給装置10側のジョイントベース11が接触するのにほぼ同期して、各把持レバー16の鉤状先端部の湾曲ガイド面16aが、その把持レバー16に対応するボルスターB側レバーガイド36の湾曲ガイド面37に当接する。軸押し及び液圧供給装置10の前進に呼応して、ジョイントベース11がジョイントベース28を軸押し方向に押すことに伴い、把持レバー16の湾曲ガイド面16aとレバーガイド36の湾曲ガイド面37との相互ガイド作用に基づき、各把持レバー16は図2に示すような傾斜姿勢から図3に示すような水平姿勢に姿勢を変化させる。つまり、各把持レバー16は、レバーガイド36のガイド作用により、復帰バネ17の付勢力に抗して開位置から閉位置に切替え配置される。こうして図3に示すように、各把持レバー16の鉤状先端部が環状係合溝34内に進入し、ジョイントベース11に設けられた2本の把持レバー16によってジョイントベース28が把持され、軸押し及び液圧供給装置10と軸押し体25との連結が完了する。
【0035】
図3の状態から軸押し及び液圧供給装置10を軸押し方向に更に前進させることで、図4に示すように、軸押し体25のシール部26が成形型22の開口24内に進入し、開口24を閉塞する。その結果、成形型22は軸押し体25を介して軸押し及び液圧供給装置10と連結され、成形室23に収容保持されたワークとしての管状金属素材(図示略)の内部に、液圧供給通路14,29を介して液圧を供給することが可能になる。なお、軸押し及び液圧供給装置10並びに軸押し体25を一体的に前進させる間、各レバーガイド36のストレートガイド面38が各把持レバー16の本体部背面に接触し続けるため、復帰バネ17の作用に基づいて各把持レバー16が開位置に戻ろうとする動きを規制される。それ故、図3から図4の状態に到る間、両把持レバー16は閉位置に保たれる。
【0036】
続いて、図4に示すように成形型22の左右の開口24が左右の軸押し体25のシール部26によって塞がれた状態で、液圧成形が行われる。その際には、軸押し及び液圧供給装置10から前記液圧供給通路14,29を介して成形室23内に液圧が供給される。また、成形型22内に保持された筒状金属素材の各端部に対しては、それぞれの軸押し及び液圧供給装置10から軸押し体25を介して軸押し方向の押圧力が伝達される。
【0037】
液圧成形の完了後、成形型22から(軸押し体25を介して)軸押し及び液圧供給装置10を切り離す際には、軸押し及び液圧供給装置10を軸押し方向と逆方向に移動(後退)させる。軸押し及び液圧供給装置10の後退動作に伴い、ジョイントベース11及び把持レバー16が待機位置(図2参照)に向けて後退する。また、これに追従して、把持レバー16に把持されることでジョイントベース11に連結された軸押し体25も後退する。すると、成形型の開口24から軸押し体25のシール部26が離脱する。
【0038】
ジョイントベース11及び軸押し体25の後退に伴って、両把持レバー16はレバーガイド36のストレートガイド面38によって規制を受ける区間を通過し、その後、各復帰バネ17の付勢作用に基づいて各把持レバー16は閉位置から開位置に復帰する。特に、各把持レバー16の鉤状先端部がストレートガイド面38との対向区間から湾曲ガイド面37との対向区間に移行した後は、湾曲ガイド面37のカーブに沿って把持レバー16は図3の水平姿勢から次第に傾斜を強め、最終的には図2の傾斜姿勢にまで復帰する。把持レバー16の図2の開位置への配置替えが完了する頃には、各把持レバー16の鉤状先端部が環状係合溝34から離脱し、把持レバー16と係合溝34との係合が解除される。
【0039】
その後、軸押し及び液圧供給装置10を軸押し方向と逆方向に更に後退させることで、ジョイントベース11がジョイントベース28の後端部から離れる。このとき、ジョイントベース28に設けられた補助バネ35は、連結動作時に蓄えられたバネ力(反発力)に基づいてジョイントベース11を離間方向に押し出し、両ジョイントベース11,28間の連結解除を促進する。こうして、ジョイントベース11の嵌合凹部12とジョイントベース28の嵌合凸部32との相互嵌合関係が解消され、軸押し体25からの軸押し及び液圧供給装置10の切離しが完了する。
【0040】
このように本実施形態によれば、ボルスターB上の成形型22に対し軸押し体25を介して軸押し及び液圧供給装置10を連結する際、軸押し及び液圧供給装置10と軸押し体25との連結動作、並びに、軸押し体25のシール部26による成形型の開口24の閉塞動作を、軸押し及び液圧供給装置10の軸押し方向移動に起因する一連の動作として達成することができる。また、ボルスターB上の成形型22から(軸押し体25を介して)軸押し及び液圧供給装置10を切り離す際には、軸押し体シール部26の成形型開口24からの離脱動作、並びに、軸押し体25からの軸押し及び液圧供給装置10の切離し動作を、軸押し及び液圧供給装置10の逆方向移動に起因する一連の動作として達成することができる。従って、従来例のような成形型と軸押しピストン前側軸部との位置合せ作業や、従来例のようなボルスターと軸押し及び液圧供給装置との間でのボルト締めやボルト外しといった作業を一切必要とすることなく、成形型22と軸押し及び液圧供給装置10との間の連結及び切離しを迅速且つ確実に行うことができ、型替え等の時間を短縮して液圧成形装置の稼動率を高めることができる。
【0041】
本実施形態によれば、軸押し及び液圧供給装置10の連結又は切離し時における両把持レバー16の配置切替えは、軸押し及び液圧供給装置10の進退動作に呼応したレバー16、復帰バネ17及びレバーガイド36の三者の協働に基づいて、自動的又は自律的に行われる。つまり、軸押し及び液圧供給装置10の進退動作を利用して、把持レバー16の配置切替えが行われている。このため、把持レバー16の切替えのためだけの特別な動力機構を必要とせず、ジョイント機構(J1,J2)を比較的簡素な構造とすることができる。
【0042】
[変更例]上記実施形態では、把持レバー16を2本としたが、把持レバーの数は1つ(単数本)又は3つの以上の複数本であってもよい。
【0043】
[変更例]上記実施形態では、互いに所定間隔を隔てて一対のレバーガイド36を設けたが、これに代えて、二つのレバーガイド部分を連設するようにレバーガイド36を環状又はアーチ状に形成してもよい。また、上記実施形態では、把持レバー16の本数(2本)に対応させてレバーガイド36の数を2つとしたが、レバーガイド36の数は特に限定されるものでない。要するに、レバーガイド36又はそれに相当するものが把持レバー16を上述の如くガイドする機能を果たすことができる限り、レバーガイド36の数が必ずしも把持レバー16の本数に一致する必要はない。
【0044】
[変更例]上記実施形態では、補助バネ35をボルスター側ジョイント部J2に設けたが、これを軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部J1に設けてもよい。また、補助バネ35は任意的な要素であるので、省略されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】液圧成形装置(切離し時)の平面図。
【図2】液圧成形装置(切離し時)の要部の拡大平断面図。
【図3】液圧成形装置(連結動作中)の要部の拡大平断面図。
【図4】液圧成形装置(連結完了時)の平面図。
【符号の説明】
【0046】
B…ボルスター、J1…軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部、J2…ボルスター側ジョイント部(J1及びJ2はジョイント機構を構成する)、10…軸押し及び液圧供給装置、11…ジョイントベース(第1の連結端)、14…液圧供給通路、15…ヒンジ、16…把持レバー、16a…把持レバーの鉤状先端部の湾曲ガイド面、17…復帰バネ、22…成形型、23…成形室、24…成形室の開口、25…軸押し体、26…シール部、27…軸部、28…ジョイントベース(第2の連結端)、29…液圧供給通路、34…環状の係合溝(レバー係合部)、35…補助バネ、36…レバーガイド、37…湾曲ガイド面、38…ストレートガイド面(37及び38はガイド面を構成する)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の金属素材を保持する成形型を搭載したボルスター、ボルスターから分離独立した軸押し及び液圧供給装置、並びに、ボルスター上の成形型と軸押し及び液圧供給装置との間の連結及び切離しに関与するジョイント機構を備えた液圧成形装置であって、
前記ジョイント機構は、軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部と、ボルスター側ジョイント部とからなり、
軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部は、
ボルスター側ジョイント部と連結可能な第1の連結端、
前記第1の連結端から離間する開位置と第1の連結端に接近する閉位置との間を切替え配置可能に設けられた把持レバー、及び、
把持レバーを開位置に向けて付勢する復帰バネを備えており、
ボルスター側ジョイント部は、
成形型の開口と軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部の第1の連結端とをつなぐ経路に沿って移動可能にボルスター上に支持されると共に、一方の端部には成形型の開口に進入可能なシール部を、他方の端部には前記第1の連結端に連結可能な第2の連結端を具備した軸押し体、
前記閉位置に配置されたときの把持レバーの一部を係合させるために前記軸押し体に設けられたレバー係合部、並びに、
前記軸押し体の第2の連結端の近傍にてボルスター上に設けられたレバーガイドを備えており、
前記レバーガイドは、成形型、軸押し体、軸押し及び液圧供給装置の三者を相互連結すべく軸押し及び液圧供給装置を軸押し方向に移動させたとき、復帰バネの付勢力に抗して把持レバーを開位置から閉位置にガイドすると共に、成形型から軸押し及び液圧供給装置を切り離すべく軸押し及び液圧供給装置を軸押し方向と逆方向に移動させたとき、復帰バネの付勢力に基づいて各把持レバーが閉位置から開位置に復帰するのを許容する
ことを特徴とする液圧成形装置。
【請求項2】
前記レバーガイドには、軸押し及び液圧供給装置の動きに追従して移動する把持レバーに接触してこれをガイドするためのガイド面が形成されており、当該ガイド面は、把持レバーを開位置から閉位置に導くようにカーブした湾曲ガイド面と、閉位置に配置された把持レバーが復帰バネの付勢力によって開位置に戻ろうとするのを規制して把持レバーの一部とレバー係合部との係合状態を維持させるためのストレートガイド面とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の液圧成形装置。
【請求項3】
前記把持レバーは、前記第1の連結端の周囲に複数設けられており、
前記レバーガイドは、把持レバーの数に対応して複数存在すると共に、それらの間に前記軸押し体の第2の連結端が配置されるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液圧成形装置。
【請求項4】
前記軸押し体及び第1の連結端の内部には、両者の連結時に軸押し体のシール部から第1の連結端に到る一連の液圧供給通路が設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の液圧成形装置。
【請求項5】
前記軸押し及び液圧供給装置側ジョイント部又は前記ボルスター側ジョイント部には、前記第1の連結端と第2の連結端との間の連結解除を促進するための補助バネが設けられていることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の液圧成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−29951(P2007−29951A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212028(P2005−212028)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)