説明

液圧装置

【課題】シール部材の耐久性を向上させた液圧装置を提供する。
【解決手段】筒部52aの外周面には、その外周面からシリンダボア48aの内周面側に突き出した環状突部52cが一体に形成されており、その環状突部52cは、シリンダボア48aの内周面全周に密接している。このため、ピストン50がシリンダボア48aの内周面を摺動することにより、シリンダボア48aの内周面に金属粉(摩耗粉)62が発生すると、シール部材52がシリンダボア48aの内周面を摺動する際において、シール部材52のテーパ部52bの外周面が金属粉62が発生したシリンダボア48aの内周面を摺動する前に、シール部材52の環状突部52cによってその金属粉62が発生したシリンダボア48aの内周面からその金属粉62が除去される。これにより、金属粉62によるテーパ部52bの外周面の傷付きが抑制されてシール部材52の耐久性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧装置に係り、特にその液圧装置に備えられたシール部材の耐久性を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液圧装置は、たとえば特許文献1または2に示すように、シリンダボアを有するシリンダ本体と、そのシリンダ本体内に油室を形成するシリンダボアの開口内に摺動可能に嵌め入れられたピストンと、そのピストンの前記油室側端部に嵌め着けられた筒状の筒部とその筒部から前記油室側へ向かうほど大径となるテーパ部とを有し、そのテーパ部の外周面が前記シリンダボアの内周面に摺接することにより前記油室内の作動液を封止する弾性変形可能なシール部材とを備えたものである。
【0003】
また、上記のような液圧装置は、たとえば特許文献1に示すように、前記シリンダ本体がドラムブレーキのバッキングプレートに固定され、前記ピストンがそのバッキングプレートに配設されたブレーキシューの一端部に係合させられたホイールシリンダとして使用されることがある。上記のようなホイールシリンダにおいて、前記油室に供給された作動液に圧力が作用されると前記ピストンが前記シリンダボアの前記油室側とは反対側へ移動し、その油室の作動液に圧力が作用されなくなると前記ブレーキシューに張設されたリターンスプリングの付勢力により前記ピストンが前記シリンダボアの前記油室側へ移動して、そのピストンが前記シリンダボアの内周面を摺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−9208号公報
【特許文献2】特開平09−136640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような液圧装置において、その液圧装置の作動時に前記ピストンが前記シリンダボアの内周面を摺動するので、その液圧装置の作動回数が増えると前記ピストンと前記シリンダボアの内周面とが摩耗してそのシリンダボアの内周面に摩耗粉が発生することがあった。このため、前記液圧装置の作動時において、前記シール部材のテーパ部の外周面とシリンダボアの内周面との間に前記摩耗粉を介在した状態で、そのテーパ部の外周面が前記シリンダボアの内周面を摺動することから、そのテーパ部の外周面が前記摩耗粉により傷付けられてしまうため、従来のシール部材は定期的に交換しなければならず、充分な耐久性が得られてないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、シール部材の耐久性を向上させた液圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a) シリンダボアを有するシリンダ本体と、そのシリンダ本体内に油室を形成するシリンダボアの開口内に摺動可能に嵌め入れられたピストンと、そのピストンの前記油室側端部に嵌め着けられた筒状の筒部とその筒部から前記油室側へ向かうほど大径となるテーパ部とを有し、そのテーパ部の外周面が前記シリンダボアの内周面に摺接することにより前記油室内の作動液を封止する弾性変形可能なシール部材とを備えた液圧装置であって、(b) 前記筒部の外周面には、その外周面から前記シリンダボアの内周面側に突き出した環状突部が一体に形成されており、(c) その環状突部は、前記シリンダボアの内周面全周に密接していることにある。
【0008】
また、第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記シリンダボア内に嵌め入れられた状態では、前記テーパ部の前記油室側端部と前記環状突部との間に、潤滑剤を収容する環状凹部が形成されていることにある。
【0009】
また、第3発明の要旨とするところは、第1発明または第2発明において、(a) 前記シリンダ本体はドラムブレーキのバッキングプレートに固定されたものであり、(b) 前記ピストンは、そのバッキングプレートに配設されたドラムブレーキのブレーキシューの一端部に係合させられ、そのシリンダ本体内の油室に供給される作動液の圧力に従ってそのブレーキシューを拡開し前記ドラムブレーキを制動状態とするものである。
【発明の効果】
【0010】
第1発明の液圧装置によれば、(b) 前記筒部の外周面には、その外周面から前記シリンダボアの内周面側に突き出した環状突部が一体に形成されており、(c) その環状突部は、前記シリンダボアの内周面全周に密接している。このため、前記ピストンが前記シリンダボアの内周面を摺動することにより前記ピストンと前記シリンダボアの内周面とが摩耗して、そのシリンダボアの内周面に摩耗粉が発生すると、前記シール部材が前記シリンダボアの内周面を摺動する際において、前記シール部材のテーパ部の外周面が前記摩耗粉が発生した前記シリンダボアの内周面を摺動する前に、前記シール部材の前記環状突部によってその摩耗粉が発生した前記シリンダボアの内周面からその摩耗粉が除去される。これにより、前記シール部材の環状突部によって前記テーパ部の外周面と前記シリンダボアの内周面との間に前記摩耗粉が介在しない状態で、そのテーパ部の外周面が前記シリンダボアの内周面を摺動するので、前記摩耗粉による前記テーパ部の外周面の傷付きが抑制されて前記シール部材の耐久性が向上する。
【0011】
第2発明の液圧装置によれば、前記シリンダボア内に嵌め入れられた状態では、前記テーパ部の前記油室側端部と前記環状突部との間に、潤滑剤を収容する環状凹部が形成されているため、前記テーパ部の外周面と前記シリンダボアの内周面との間が前記潤滑剤によって好適に潤滑されるので、前記シール部材の耐久性が更に向上する。
【0012】
第3発明の液圧装置によれば、(a) 前記シリンダ本体はドラムブレーキのバッキングプレートに固定されたものであり、(b) 前記ピストンは、そのバッキングプレートに配設されたドラムブレーキのブレーキシューの一端部に係合させられ、そのシリンダ本体内の油室に供給される作動液の圧力に従ってそのブレーキシューを拡開し前記ドラムブレーキを制動状態とするものである。このため、前記液圧装置をドラムブレーキのホイールシリンダに適用することができ、そのドラムブレーキのホイールシリンダのシール部材の耐久性を好適に向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用された一実施例のホイールシリンダを備えたドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のホイールシリンダを拡大した拡大図である。
【図3】図1のホイールシリンダに備えられたシール部材を示す図である。
【図4】図3のシール部材の一部を拡大した拡大図である。
【図5】図2のホイールシリンダの作動回数が増えることによって、ピストンの摺動部とシリンダボアの内周面とが摩耗してその摺動部の外周面およびシリンダボアの内周面に金属粉が発生した状態において、その図2のホイールシリンダにおける一点鎖線で円状に示された部分を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の一実施例のホイールシリンダ(液圧装置)10を備えたシュー間隙自動調節機構付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)12であって、ブレーキドラム14を取り外して示す正面図である。このブレーキドラム14は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ12の中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0016】
ドラムブレーキ12には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置等の非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18と、そのバッキングプレート18の左右の外周部に円弧形状の凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された一対のブレーキシュー20および22と、その一対のブレーキシュー20および22の一端部間すなわち図1における上端部間に配設されたホイールシリンダ10と、一対のブレーキシュー20および22の一端部との間に張設されそれら一端部を互いに接近する方向に常時付勢させてホイールシリンダ10に当接させるリターンスプリング24と、一対のブレーキシュー20および22の一端部間に架け渡された長手板状のストラット26と、一対のブレーキシュー20および22の他端部間すなわち図1における下端部間に位置固定に設けられたアンカ部材28と、一対のブレーキシュー20および22の下端部間に張設されそれら下端部をアンカ部材28に常時当接させたスプリング30とが備えられている。
【0017】
一対のブレーキシュー20および22は、何れも、バッキングプレート18の内周部に位置する平坦な平板部18aと略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ32および34と、それらの円弧形状を成すシューウェブ32および34の外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すようにそのシューウェブ32および34に一体的に固設された帯板状のシューリム36および38と、それらシューリム36および38の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング40および42とを備えてそれぞれ構成されている。また、バッキングプレート18、シューウェブ32および34、シューリム36および38は、いずれも鋼板から打ち抜かれ且つ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。
【0018】
また、一対のブレーキシュー20および22は、シューウェブ32およびシューウェブ34にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置44および46によってバッキングプレート18に接近する方向に押圧されることによりそのバッキングプレート18に対して面方向の相対移動が可能に保持されている。
【0019】
図2に示すように、ホイールシリンダ10は、バッキングプレート18に固定された例えば鋳鉄等の金属製のシリンダ本体48と、そのシリンダ本体48を円柱形状に貫通したシリンダボア48aと、そのシリンダボア48aの両端の開口内に互いに反対向きに摺動可能に嵌め入れられた例えば鋳鉄等の金属製の一対のピストン50と、その一対のピストン50の互いに接近する側の端部に形成された外周溝50aにそれぞれ嵌め着けられたシール部材52と、一対のピストン50の間に介在されてその一対のピストン50をそれぞれ離間させる方向に付勢するコイルスプリング54と、シリンダボア48aの内周面とシール部材52が嵌め着けられた一対のピストン50との間の空間に形成されて作動油(作動液)が供給される油室56と、シリンダ本体48におけるシリンダボア48aのそれぞれ開口部と一対のピストン50との間に装着された弾性変形可能な材質例えば合成ゴムで構成された一対のシリンダカバー58とを備えている。また、一対のピストン50の間におけるシリンダボア48aの内周面には、図示しないマスターシリンダから油室56内へ作動油を供給或いはそのマスターシリンダへ油室56内の作動油を戻す図示されていない連通穴が形成されている。
【0020】
シール部材52は、弾性変形可能な材質例えば合成ゴムで構成されている。そして、図2乃至図4に示すように、シール部材52は、ピストン50の外周溝50aにその外周溝50aの溝幅全体に嵌め着けられた段付円筒状の筒部52aと、その筒部52aの油室56側とは反対側の大径端部から油室56側の端部へ向かうほど大径となるテーパ部52bとを一体に備えている。図2および図5に示すように、シール部材52がホイールシリンダ10に組み付けられた状態において、テーパ部52bの油室56側の外周面は、油室56内に供給された作動油を封止するようにシリンダボア48aの内周面全周に密接している。
【0021】
また、図2乃至図4に示すように、シール部材52の筒部52aの大径端部の外周面には、その筒部52aの油室56側とは反対側の端部の外周面からシリンダボア48aの内周面側に突き出した環状の環状突部52cが一体に形成されている。図2および図5に示すように、シール部材52がホイールシリンダ10に組み付けられた状態において、シール部材52の環状突部52cの先端部は、シリンダボア48aの内周面全周に密接している。尚、図4に示されている一点鎖線は、従来のホイールシリンダのシール部材の形状を示すものであり、従来のシール部材には環状突部52cが備えられていない。
【0022】
また、図2乃至図4に示すように、シール部材52の外周面におけるテーパ部52bの油室56側の端部と環状突部52cとの間には、環状に連なるように凹んだ環状凹部52dが形成されている。図2および図5に示すように、シール部材52がホイールシリンダ10に組み付けられた状態において、シール部材52の環状凹部52dには、潤滑剤60例えばグリースが収容される。
【0023】
図1および図2に示すように、一対のピストン50は、略円柱形状に成形されており、その一対のピストン50には、何れも、そのピストン50の油室56側の端部の外周に設けられた外周溝50aと、ピストン50の油室56側とは反対側の端部に成形されたリターンスプリング24の付勢力によってブレーキシュー20,22の一端部と当接する当接面50bと、ピストン50の中間部においてピストン50がそのピストン50の軸心C方向の移動可能にシリンダボア48a内に嵌め入れられたシリンダボア48aの径Rより僅かに小さい径を有する円柱形状の摺動部50cとが備えられている。
【0024】
以上のように構成されたドラムブレーキ12によれば、ホイールシリンダ10は、図示しないブレーキペダルが操作されることによって油室56の作動油に圧力が作用されると、一対のピストン50がそれぞれシリンダボア48aの油室56側とは反対側に移動して、シリンダ本体48の開口部から一対のピストン50の油室56側とは反対側の端部が突き出される。これにより、一対のブレーキシュー20および22が拡開してその一対のブレーキシュー20および22がブレーキドラム14の内周面16に当接する。そして、上記ブレーキペダルの操作が解除されて油室56の作動油に圧力が作用されなくなると、リターンスプリング24の付勢力によって一対のピストン50がそれぞれシリンダボア48aの油室56側に移動させられて元の位置に戻されると共に一対のブレーキシュー20および22がブレーキドラム14の内周面16から離間させられる。
【0025】
ここで、ホイールシリンダ10の作動時において、そのホイールシリンダ10のピストン50は、上述のようにブレーキペダルが操作されることやそのブレーキペダルの操作が解除されることによって図2に示す矢印F方向に移動するものであり、そのピストン50の摺動部50cの外周面がシリンダボア48aの内周面上を摺動するものである。そのため、ホイールシリンダ10の作動回数が増えると、ピストン50の摺動部50cの外周面とシリンダボア48aの内周面とが摩耗してシリンダボア48aの内周面に摩耗粉すなわち金属粉62が発生することがある。以下において、シリンダボア48aの内周面に金属粉62が発生した状態における本実施例のホイールシリンダ10の作動を説明する。また、図5は、ホイールシリンダ10の作動回数が増えることによって、ピストン50の摺動部50cとシリンダボア48aの内周面とが摩耗してその摺動部50cの外周面およびシリンダボア48aの内周面に金属粉62が発生した状態を示すホイールシリンダ10の拡大図である。
【0026】
図5に示すように、ホイールシリンダ10は、ブレーキペダルが操作されることによって油室56の作動油に圧力が作用すると、シール部材52は、そのテーパ部52bの外周面および環状突部52cの先端部がシリンダボア48aの内周面全周に押し付けられた状態で、ピストン50と共にシリンダボア48aの油室56側とは反対側に摺動する。シール部材52が金属粉62が発生したシリンダボア48aの内周面を摺動する際において、シール部材52のテーパ部52bの外周面が金属粉62が発生したシリンダボア48aの内周面を摺動する前に、シール部材52の環状突部52cによって金属粉62が発生したシリンダボア48aの内周面からその金属粉62が除去される。
【0027】
また、図5に示すように、シール部材52は、そのテーパ部52bの外周面および環状突部52cの先端部がシリンダボア48aの内周面に押し付けられた状態で、すなわち、シール部材52の外周面における環状凹部52dに収容された潤滑剤60とシリンダボア48aの内周面とが接触した状態である。そのため、ホイールシリンダ10の作動によりシール部材52と共にピストン50が矢印F方向へ移動すると、環状凹部52dに収容された潤滑剤60がシリンダボア48aの内周面を摺動し、テーパ部52bの外周面とシリンダボア48aの内周面との間がその潤滑剤60によって好適に潤滑される。
【0028】
本実施例のホイールシリンダ(液圧装置)10によれば、筒部52aの油室56側とは反対側の大径端部の外周面には、その外周面からシリンダボア48aの内周面側に突き出した環状突部52cが一体に形成されており、その環状突部52cは、シリンダボア48aの内周面全周に密接している。このため、ピストン50がシリンダボア48aの内周面を摺動することによりピストン50とシリンダボア48aの内周面とが摩耗して、そのシリンダボア48aの内周面に金属粉(摩耗粉)62が発生すると、シール部材52がシリンダボア48aの内周面を摺動する際において、シール部材52のテーパ部52bの外周面が金属粉62が発生したシリンダボア48aの内周面を摺動する前に、シール部材52の環状突部52cによってその金属粉62が発生したシリンダボア48aの内周面からその金属粉62が除去される。これにより、シール部材52の環状突部52cによってテーパ部52bの外周面とシリンダボア48aの内周面との間に金属粉62が介在しない状態で、そのテーパ部52bの外周面がシリンダボア48aの内周面を摺動するので、金属粉62によるテーパ部52bの外周面の傷付きが抑制されてシール部材52の耐久性が向上する。
【0029】
また、本実施例のホイールシリンダ10によれば、シール部材52を嵌め着けたピストン50がシリンダボア48a内に嵌め入れられた状態では、シール部材52の外周においてそのテーパ部52bの油室56側の端部と環状突部52cとの間に、潤滑剤60を収容する環状凹部52dが形成されているため、テーパ部52bの外周面とシリンダボア48aの内周面との間が潤滑剤60によって好適に潤滑されるので、シール部材52の耐久性が更に向上する。
【0030】
また、本実施例のホイールシリンダ10によれば、シリンダ本体48はドラムブレーキ12のバッキングプレート18に固定されたものであり、ピストン50は、そのバッキングプレート18に配設されたドラムブレーキ12のブレーキシュー20,22の一端部に係合させられ、そのシリンダ本体48内の油室56に供給される作動油(作動液)の圧力に従ってそのブレーキシュー20,22を拡開しドラムブレーキ12を制動状態とするものである。このため、ドラムブレーキ12のホイールシリンダ10のシール部材52の耐久性を好適に向上させられる。
【0031】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0032】
たとえば、本願発明の液圧装置は、前述の実施例においてホイールシリンダ10として適用されていたが、本願発明の液圧装置は、ホイールシリンダ10に限られるものではなく、たとえば、ブレーキマスターシリンダ等にも適用される。
【0033】
また、前述の実施例のホイールシリンダ10は、一対のピストン50つまり2個のピストンによって構成されていたが例えば1個のピストンで構成されても良く、ピストンの個数を制限するものではない。
【0034】
また、前述の実施例のホイールシリンダ10において、シール部材52は、ピストン50の外周溝50aにその外周溝50a幅全体に嵌め着けられた段付円筒状の筒部52aを一体に備えていたが、筒部52aの形状は必ずしも段付円筒状である必要はなくその筒部52aの形状は筒状であればどのような形状であっても良い。
【0035】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10:ホイールシリンダ(液圧装置)
12:ドラムブレーキ
18:バッキングプレート
20,22:ブレーキシュー
48:シリンダ本体
48a:シリンダボア
50:ピストン
52:シール部材
52a:筒部
52b:テーパ部
52c:環状突部
52d:環状凹部
56:油室
60:潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボアを有するシリンダ本体と、該シリンダ本体内に油室を形成するシリンダボアの開口内に摺動可能に嵌め入れられたピストンと、該ピストンの前記油室側端部に嵌め着けられた筒状の筒部と該筒部から前記油室側へ向かうほど大径となるテーパ部とを有し、該テーパ部の外周面が前記シリンダボアの内周面に摺接することにより前記油室内の作動液を封止する弾性変形可能なシール部材とを備えた液圧装置であって、
前記筒部の外周面には、その外周面から前記シリンダボアの内周面側に突き出した環状突部が一体に形成されており、
該環状突部は、前記シリンダボアの内周面全周に密接していることを特徴とする液圧装置。
【請求項2】
前記シリンダボア内に嵌め入れられた状態では、前記テーパ部の前記油室側端部と前記環状突部との間に、潤滑剤を収容する環状凹部が形成されていることを特徴とする請求項1の液圧装置。
【請求項3】
前記シリンダ本体はドラムブレーキのバッキングプレートに固定されたものであり、
前記ピストンは、該バッキングプレートに配設されたドラムブレーキのブレーキシューの一端部に係合させられ、該シリンダ本体内の油室に供給される作動液の圧力に従って該ブレーキシューを拡開し前記ドラムブレーキを制動状態とするものであることを特徴とする請求項1または2の液圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−229709(P2012−229709A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96624(P2011−96624)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】