説明

液封防止機構内蔵逆止弁

【課題】集合管が液封状態になることを防止する液封防止機構内蔵逆止弁を提供する。
【解決手段】液封防止機構内蔵逆止弁1の逆止弁17は、貫通孔29が形成され、リリーフ弁19は、逆止弁17の貫通孔29に移動自在に配置された弁体31を有している。リリーフ弁19は、上記圧力差が第2の設定値を超えない場合にコイルスプリング41により第1小径部29aへ押しつけられて貫通孔29の一端を封止するように位置し、圧力差が第2の設定値を超える場合にコイルスプリング41の付勢力に抗して第1小径部29aから第2小径部29b側へ移動して貫通孔29の一端を開放する方向へ移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、集合住宅などで、複数のLPガス容器から集合管と自動切替調整器とを介してLPガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas:液化ガス)を消費側(例えば、各家庭)に供給するLPガス供給システムに用いられる液封防止機構内蔵逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に「高圧ガス容器の安全装置」が記載されている。この装置はガス容器へのガスの逆流を防止する逆止弁で実施されている。
【0003】
図6は、業務用、あるいは、集合住宅などにおいて、複数のLPガス容器から集合管と自動切替調整器とを介してLPガスを消費側に供給するLPガス供給システムに用いられている逆止弁301を示している。この逆止弁301は、弁体303と、弁座305と、弁体303を弁座305から離れる方向に付勢するスプリング307とを備えている。
【0004】
この逆止弁301は、各LPガス容器に設けられた開閉弁に一端が連結された高圧ホースの他端と集合管との間に設置され、開閉弁と高圧ホースとが未接続状態の時に逆止弁の上流側と下流側に所定の差圧が生じると、弁体303がスプリング307の付勢力に抗して弁座305に押圧され、LPガスが大気放出することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−139800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の逆止弁301を用いたLPガス供給システムでは、消費側がLPガスを使用していない場合、下記のような不具合が発生する虞れがある。
【0007】
例えば、晴天の昼間にLPガス供給システムが日光に晒されると、集合管より集熱面積の広いLPガス容器の温度と圧力(蒸気圧)が先に上昇し、集合管との間に温度差が生じる。LPガスの場合は、温度差が3°以上になると飽和蒸気圧を超えた分だけガスが液化する再液化現象が生じることが知られており、LPガス容器より低温の集合管では、再液化現象によって生じたLPガスが下部に滞留し、この状態が30分〜1時間続くと、集合管は内部がLPガスで充満した状態になる虞れがある。
【0008】
LPガス供給システムにおいて、LPガス容器は所定の配送計画に従って交換されるから、上記のように集合管がLPガスで充満した状態でLPガス容器の交換作業が行われることがあり、その際、手動の開閉弁309を閉止し、高温の使用済みLPガス容器を取り外し、新しいLPガス容器を取り付けた後、開閉弁309を開放する。
【0009】
使用済みのLPガス容器のように長時間日光に晒されていない新しいLPガス容器は集合管より低温で低圧の状態にあり、一般に、逆止弁301は集合管とLPガス容器との圧力差が0.02MPa以上になると閉止されるように設定されており、高圧側の集合管から低圧側のLPガス容器に向かって流入するLPガスによって逆止弁301が瞬間的に閉止される。逆止弁301は集合管と各LPガス容器との間にそれぞれ取り付けられており、交換された全てのLPガス容器で逆止弁301が閉止されるから、集合管は各逆止弁301によって閉塞され、LPガスが充満する液封状態になる。
【0010】
閉塞されて液封状態になった集合管は、日光に晒され続けると内圧(液圧)が異常に上昇して5MPaを超える高圧に達する虞れがあり、集合管に接続された自動切替調整器にこのような高圧が掛かると、精密な調整部がダメージを受けて圧力調整機能などに不具合が生じる可能性がある。
【0011】
従来の逆止弁301は、集合管が液封状態になることを防止する機能を備えていない。
【0012】
そこで、この発明は、複数個のLPガス容器から集合管と自動切替調整器とを介してLPガスを消費側に供給するLPガス供給システムにおいて、集合管が液封状態になることを防止する液封防止機構内蔵逆止弁の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の液封防止機構内蔵逆止弁は、LPガスを供給する複数のLPガス容器と、LPガス容器からのガスが集合する集合管と、集合管上に配置されLPガスを消費側に供給する自動切替調整器とを有するLPガス供給システムのLPガス容器と集合管との間に配置される液封防止機構内蔵逆止弁であって、LPガス容器側の圧力が集合管側の圧力より低くなり、LPガス容器側の圧力と集合管側の圧力との圧力差が第1の設定値を超えると作動してLPガス容器側への逆流を防止する逆止弁と、圧力差が第1の設定値より大きい第2の設定値を超えると作動して逆流を許容するリリーフ弁と、を備え、逆止弁は、第1小径部と第2小径部と当該第1及び第2小径部よりも内径が大きい大径部とを有した貫通孔が形成され、リリーフ弁は、逆止弁の貫通孔に移動自在に配置されたリリーフ用弁体と、リリーフ用弁体に取り付けられたシートパッキンと、リリーフ用弁体を貫通孔の一端側に付勢する付勢手段と、を有し、圧力差が第2の設定値を超えない場合、付勢手段によりシートパッキンが第1小径部へ押しつけられて貫通孔の一端を封止するように位置し、圧力差が第2の設定値を超える場合、付勢手段の付勢力に抗してリリーフ用弁体及びシートパッキンが第1小径部から第2小径部側へ移動して貫通孔の一端を開放する方向へ移動することを特徴とする。
【0014】
この液封防止機構内蔵逆止弁によれば、逆止弁は第1小径部と第2小径部と大径部とを有した貫通孔が形成され、リリーフ弁は、LPガス容器側の圧力が集合管側の圧力より低くなり、LPガス容器側の圧力と集合管側の圧力との圧力差が第2の設定値を超えない場合、付勢手段によりシートパッキンが第1小径部へ押しつけられて貫通孔の一端を封止するように位置し、その圧力差が第2の設定値を超える場合、付勢手段の付勢力に抗してリリーフ用弁体及びシートパッキンが第1小径部から第2小径部側へ移動して貫通孔の一端を開放する方向へ移動する。このため、圧力差が第2の設定値を超えない場合には付勢手段によりシートパッキンが第1小径部に押しつけられて貫通孔が閉じられることとなる。よって、圧力差が第1の設定値を超える場合に逆止弁によって逆流が防止される。一方、圧力差が第2の設定値を超える場合にはリリーフ用弁体及びシートパッキンが付勢手段の付勢力に抗して第1小径部から第2小径部側へ移動して貫通孔の一端が開放されるため、貫通孔を介して逆流が許容される。これらより、逆流を防止しつつ、集合管内が液封状態になってより高圧となると逆流が許容される。従って、複数個のLPガス容器から集合管と自動切替調整器とを介してLPガスを消費側に供給するLPガス供給システムにおいて、集合管が液封状態になることを防止することができる。
【0015】
また、本発明の液封防止機構内蔵逆止弁において、付勢手段は、コイルスプリングであって、リリーフ用弁体は、コイルスプリングのコイルが挿入される凹部を有することが好ましい。
【0016】
この液封防止機構内蔵逆止弁によれば、リリーフ用弁体は、コイルスプリングのコイルが挿入される凹部を有するため、凹部によりリリーフ用弁体とコイルスプリングとの位置関係が安定することとなり、コイルスプリングの位置がずれてリリーフ用弁体に対する付勢力が不安定となってしまう事態を防止することができる。
【0017】
また、本発明の液封防止機構内蔵逆止弁において、逆止弁は、第1小径部が形成されると共に貫通孔の一端側に固定された弁座をさらに有し、弁座は、貫通孔の他端側へテーパ状に突起する突起形状であって、第1小径部は、弁座の突起先端部から貫通孔の一端側に向かって貫通して形成されていることが好ましい。
【0018】
この液封防止機構内蔵逆止弁によれば、弁座は、貫通孔の他端側へテーパ状に突起する突起形状であって、第1小径部は、突起先端部から貫通孔の一端側に向かって貫通して形成されているため、リリーフ用弁体が貫通孔の一端側に押しつけられる場合には、シートパッキンがテーパ状の突起に食い込んで、第1小径部を封止することとなる。これにより、圧力差が第1の設定値を超える場合に弁座とシートパッキンとの間の密閉度をより一層高めることができる。
【0019】
また、本発明の液封防止機構内蔵逆止弁において、リリーフ弁は、リリーフ用弁体にシートパッキンを固着する構成となっており、シートパッキンの固着に際してリリーフ用弁体とシートパッキンとの間に介在するエアーを抜くためのエアー抜き用孔が形成されていることが好ましい。
【0020】
この液封防止機構内蔵逆止弁によれば、シートパッキンの固着に際してリリーフ用弁体とシートパッキンとの間に介在するエアーを抜くためのエアー抜き用孔が形成されているため、リリーフ用弁体にシートパッキンを密着させた状態で組み付けることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液封防止機構内蔵逆止弁によれば、集合管が液封状態になることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る液封防止機構内蔵逆止弁を含むLPガス供給システムの構成図である。
【図2】図1に示した液封防止機構内蔵逆止弁1の詳細を示す外観図である。
【図3】図2に示した液封防止機構内蔵逆止弁1のA−A断面図である。
【図4】図2に示した液封防止機構内蔵逆止弁1のA−A断面図であって、逆止弁17が閉止された状態を示す断面図である。
【図5】図2に示した液封防止機構内蔵逆止弁1のA−A断面図であって、リリーフ弁19が開放された状態を示す断面図である。
【図6】従来例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る液封防止機構内蔵逆止弁の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る液封防止機構内蔵逆止弁を含むLPガス供給システムの構成図である。
【0024】
図1に示すように、LPガス供給システム15は、複数のLPガス容器3,5,7,9と、集合管11と、自動切替調整器13と、液封防止機構内蔵逆止弁1とを備えている。
【0025】
複数のLPガス容器3,5,7,9は、それぞれLPガスが納められた容器であって、LPガスを消費側(例えば、各家庭)に供給するものである。集合管11は、LPガス容器3,5,7,9からのLPガスが集合する配管である。
【0026】
自動切替調整器13は、集合管11上に配置され、自動切替調整器13は流出ポートを介して各家庭側に接続されている。この自動切替調整器13は、集合管11の中央部に配置されており、左右の集合管11(LPガス容器3,5とLPガス容器7,9)の切替を行うと共に、圧力調整機能によって家庭に送られるLPガスの圧力を適正に維持する。
【0027】
液封防止機構内蔵逆止弁1は、各LPガス容器3,5,7,9と集合管11との間に配置された弁であって、詳細には各LPガス容器3,5,7,9の開閉弁37から伸びる高圧ホース39と、集合管11との間に配置されている。作業員等は、LPガス容器3,5,7,9の交換の際に、液封防止機構内蔵逆止弁1を操作して逆流を防止した状態とし、この状態でLPガス容器3,5,7,9を取り換えることとなる。
【0028】
なお、図1に示す例においてLPガス供給システム15は、4つのLPガス容器3,5,7,9を備えているが、特に4つに限らず、3個以下であってもよいし、5個以上であってもよい。
【0029】
図2は、図1に示した液封防止機構内蔵逆止弁1の詳細を示す外観図である。図2に示すように、液封防止機構内蔵逆止弁1は、プラグ23と、ケース本体45とを備えている。プラグ23及びケース本体45はそれぞれ別部材であって、これら別部材を組み合わせることで、液封防止機構内蔵逆止弁1が構成される。また、ここで、プラグ23と、ケース本体45とは一体型ボディであってもよい。
【0030】
また、ケース本体45は、開閉弁51と、レバー53とを備えている。作業者等は、レバー53を操作することにより、開閉弁51を弁閉して液封防止機構内蔵逆止弁1を操作して逆流を防止した状態とし、この状態でLPガス容器3,5,7,9を取り換えることとなる。
【0031】
図3は、図2に示した液封防止機構内蔵逆止弁1のA−A断面図である。図3に示すように、液封防止機構内蔵逆止弁1は、逆止弁17と、リリーフ弁19とを備えている。逆止弁17は、LPガス容器3,5,7,9側の圧力が集合管11側の圧力より低くなり、LPガス容器3,5,7,9側の圧力と集合管11側の圧力との圧力差が第1の設定値を超えると作動してLPガス容器3,5,7,9側への逆流を防止するものである。リリーフ弁19は、液封状態の場合など、上記圧力差が第1の設定値より大きい第2の設定値を超える場合に作動して逆流を許容するものである。
【0032】
以下、逆止弁17及びリリーフ弁19について詳細に説明する。逆止弁17は、弁体21とコイルスプリング27とパッキン43とを備えている。弁体21は、逆止弁17の本体部位であって、略円錐形状となっている。この弁体21の円錐先端側は、プラグ23に形成された弁座25に合致する形状となっている。コイルスプリング27は、弁座25に形成された切り欠き部25aと弁体21との間に配置された付勢部材である。また、パッキン43は弁体21の先端側に設けられたゴム等の弾性部材である。
【0033】
上記のような構成であるため、上記圧力差が第1の設定値以下である場合、図3に示すように弁体21と弁座25はコイルスプリング27の付勢力により離間状態となる。このため、LPガス容器3,5,7,9側からのガスは集合管11に供給されることとなる。
【0034】
図4は、図2に示した液封防止機構内蔵逆止弁1のA−A断面図であって、逆止弁17が閉止された状態を示す断面図である。図4に示すように、上記圧力差が第1の設定値を超える場合、コイルスプリング27の付勢力に抗して弁体21が弁座25側に移動して流路を塞ぐこととなる。これにより、集合管11側からの逆流が防止されることとなる。
【0035】
ここで、逆止弁17の弁体21には貫通孔29が形成されている。また、リリーフ弁19は弁体(リリーフ用弁体)31と、シートパッキン32とを備えている。弁体31は、貫通孔29に移動自在に配置された部材であって、例えば真鍮により構成されている。この弁体31は、貫通孔29の一端側に第1凹部31aと他端側に第2凹部31bが形成されている。第1凹部31aには、シートパッキン32が密着状態で取り付けられている。シートパッキン32は、円柱形状の合成ゴム等により構成されている。このような弁体31は、上記圧力差が第2の設定値を超えない場合、シートパッキン32が貫通孔29の一端を封止するように位置し、上記圧力差が第2の設定値を超える場合、シートパッキン32が貫通孔29の一端を開放する方向へ移動する。
【0036】
貫通孔29は、第1小径部29aと、第2小径部29bと、大径部29cとを有している。第1小径部29aは貫通孔29の一端に形成され、第2小径部29bは貫通孔の他端に形成されている。大径部29cは第1小径部29aと第2小径部29bとの間に位置し、両者よりも内径が大きくされている。また、逆止弁17は筒形状の弁座35を備えており、第1小径部29aは筒の内側部分として弁座35に形成されている。この弁座35は、例えば真鍮により構成されている。
【0037】
また、リリーフ弁19は、コイルスプリング(付勢手段)41を有している。コイルスプリング41は、弁体31を貫通孔29の一端側に付勢する付勢部材である。具体的に、コイルスプリング41の一端は、第2小径部29bと開口部29dとの境界部分に位置する段差に当接され、他端は弁体31の第2凹部31bに挿入された状態となっている。
【0038】
このような構成であるため、弁体31は、上記圧力差が第2の設定値を超えない場合、コイルスプリング41によって貫通孔29の一端側に付勢されることとなり、シートパッキン32が第1小径部29aへ押しつけられて貫通孔29の一端を封止するように位置する。
【0039】
図5は、図2に示した液封防止機構内蔵逆止弁1のA−A断面図であって、リリーフ弁19が開放された状態を示す断面図である。図5に示すように、弁体31及びシートパッキン32は、上記圧力差が第2の設定値を超える場合にコイルスプリング41の付勢力に抗して第1小径部29aから第2小径部29b側へ移動して貫通孔29の一端を開放する。これにより、液封状態となったLPガスは貫通孔29の一端(集合管側)から侵入し、大径部29c及び小径部29bを介して、貫通孔29の他端(容器側)へ抜けることとなる。これにより、集合管11が液封状態になることを防止することができる。
【0040】
さらに、図3〜図5に示すように、弁座35は、貫通孔29の他端側へテーパ状に突起する突起形状となっている。第1小径部29aは突起先端部から貫通孔29の一端側に向かって貫通して形成されている。このため、図4に示すように、上記圧力差が第1の設定値を超えた場合、シートパッキン32がテーパ状の突起に食い込んで第1小径部29aを封止状態に保持することとなり、弁座35とシートパッキン32との間の密閉度をより一層高めることができる。
【0041】
加えて、弁体31には、第1凹部31aと第2凹部31bとをつなぐエアー抜き孔31cが形成されている。このエアー抜き孔31cは、シートパッキン32を弁体31の第1凹部31aに固着する際に両者に介在するエアーを抜くための孔である。これにより、両者を密着させた状態で組み付けることができる。シートパッキン32を弁体31に固着する際には、焼き付け加工や接着剤を用いた接着が行われる。特に焼き付けの際には、第1凹部31aに薬品と合成ゴムのコンパウンドを塗り、シートパッキン32を第1凹部31aに取り付け、例えば180℃の炉で10分間程度加熱する。これにより、合成ゴムのコンパウンドが溶け、弁体31にシートパッキン32が密着する。なお、シートパッキン32を弁体31に固着する際には、焼き付け加工や接着剤を用いた接着を行わず、そのまま密着させるだけでもよい。そうすることで焼き付け加工や接着加工に要する工数を削減することができる。
【0042】
なお、上記において、第1の設定値はコイルスプリング27の付勢力を調整することによって設定され、第2の設定値はコイルスプリング41の付勢力を調整することによって設定される。また、第1の設定値は従来の逆止弁と同様の設定値(例えば、0.01〜0.02MPa程度)であり、第2の設定値は第1の設定値より適度に大きい値(例えば、1.5〜3.0MPa程度)に設定されている。
【0043】
次に、本実施形態に係る液封防止機構内蔵逆止弁1の作用を説明する。まず、消費側でLPガスが使用されている場合など、上記圧力差が第1の設定値以下である場合、コイルスプリング27により逆止弁17が開放されてLPガス容器3,5,7,9から集合管11にLPガスが供給される(図3参照)。
【0044】
そして、上記圧力差が第1の設定値を超えたとすると、コイルスプリング27の付勢力に抗して逆止弁17が閉止され、集合管11からLPガス容器3,5,7,9への逆流が防止される(図4参照)。
【0045】
さらに、上記圧力差が第2の設定値を超えたとすると、コイルスプリング41の付勢力に抗してリリーフ弁19が開放され、集合管11からLPガス容器3,5,7,9への逆流を許容する(図5参照)。このため、集合管11内が液封状態になることが回避され、集合管11が日光に晒されても内圧が異常に上昇することはなく、自動切替調整器13の機能がダメージを受けることはない。
【0046】
このようにして、本実施形態に係る液封防止機構内蔵逆止弁1によれば、逆止弁21は第1小径部29aと第2小径部29bと大径部29cとを有した貫通孔29が形成され、リリーフ弁19は、LPガス容器3,5,7,9側の圧力が集合管11側の圧力より低くなり、LPガス容器3,5,7,9側の圧力と集合管11側の圧力との圧力差が第2の設定値を超えない場合、コイルスプリング41によりシートパッキン32が第1小径部29aへ押しつけられて貫通孔29の一端を封止するように位置し、その圧力差が第2の設定値を超える場合、コイルスプリング41の付勢力に抗して弁体31及びシートパッキン32が第1小径部29aから第2小径部29b側へ移動して貫通孔29の一端を開放する方向へ移動する。このため、圧力差が第2の設定値を超えない場合にはコイルスプリング41によりシートパッキン32が第1小径部29aに押しつけられて貫通孔29が閉じられることとなる。よって、圧力差が第1の設定値を超える場合に逆止弁17によって逆流が防止される。一方、圧力差が第2の設定値を超える場合には弁体31及びシートパッキン32がコイルスプリング41の付勢力に抗して第1小径部29aから第2小径部29b側へ移動して貫通孔29の一端が開放されるため、貫通孔29を介して逆流が許容される。これらより、逆流を防止しつつ、集合管11内が液封状態になってより高圧となると逆流が許容される。従って、複数個のLPガス容器3,5,7,9から集合管11と自動切替調整器13とを介してLPガスを消費側に供給するLPガス供給システム15において、集合管11が液封状態になることを防止することができる。
【0047】
また、弁体31は、コイルスプリング41のコイルが挿入される第2凹部31bを有するため、第2凹部31bにより弁体31とコイルスプリング41との位置関係が安定することとなり、コイルスプリング41の位置がずれて弁体31に対する付勢力が不安定となってしまう事態を防止することができる。
【0048】
また、弁座35は、貫通孔29の他端側へテーパ状に突起する突起形状であって、第1小径部29aは、突起先端部から貫通孔29の一端側に向かって貫通して形成されているため、弁体31が貫通孔29の一端側に押しつけられる場合には、シートパッキン32がテーパ状の突起に食い込んで、第1小径部29aを封止することとなる。これにより、圧力差が第1の設定値を超える場合でも逆止弁17によって逆流を一層防止することができる。
【0049】
また、シートパッキン32の固着に際して弁体31とシートパッキン32との間に介在するエアーを抜くためのエアー抜き用孔31cが形成されているため、弁体31にシートパッキン32を密着させた状態で組み付けることができる。
【0050】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0051】
例えば弁座35は1部材であるが、これに限らず、2部材を組み合わせて構成してもよい。
【0052】
さらに、本実施形態において弁体31と大径部29cとの摺動寸法(摺動面積)は、長い方が好ましい。これにより、両者間のガタを抑制でき、シートパッキン32と弁体31との密着性を向上させることができる。具体的には両者の摺動寸法を2.8mm以上とすることが好ましい。2.8mm未満とするとガタが発生する可能性が高まるためである。
【0053】
また、本実施形態において貫通孔29は、一端側から第1小径部29a、大径部29c、及び第2小径部29bの順に並んでいるが、この並びについても適宜変更可能である。また、圧力差に応じて移動する逆止弁17とリリーフ弁19との移動方向についても逆となっていてもよい。例えば、リリーフ弁19は、圧力差が第2の設定値を超えた場合に、貫通孔29の他端側に移動するが、一端側に移動して貫通孔29を開放するような構成となっていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 液封防止機構内蔵逆止弁
3,5,7,9 LPガス容器
11 集合管
13 自動切替調整器
15 LPガス供給システム
17 逆止弁
19 リリーフ弁
21 弁体
23 プラグ
25 弁座
27 コイルスプリング
29 貫通孔
29a 第1小径部
29b 第2小径部
29c 大径部
29d 開口部
31 弁体(リリーフ用弁体)
31a 第1凹部
31b 第2凹部(凹部)
31c エアー抜き用孔
35 弁座
41 コイルスプリング(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPガスを供給する複数のLPガス容器と、前記LPガス容器からのガスが集合する集合管と、前記集合管上に配置されLPガスを消費側に供給する自動切替調整器とを有するLPガス供給システムの前記LPガス容器と集合管との間に配置される液封防止機構内蔵逆止弁であって、
前記LPガス容器側の圧力が前記集合管側の圧力より低くなり、前記LPガス容器側の圧力と前記集合管側の圧力との圧力差が第1の設定値を超えると作動して前記LPガス容器側への逆流を防止する逆止弁と、
前記圧力差が第1の設定値より大きい第2の設定値を超えると作動して逆流を許容するリリーフ弁と、を備え、
前記逆止弁は、第1小径部と第2小径部と当該第1及び第2小径部よりも内径が大きい大径部とを有した貫通孔が形成され、
前記リリーフ弁は、前記逆止弁の前記貫通孔に移動自在に配置されたリリーフ用弁体と、前記リリーフ用弁体に取り付けられたシートパッキンと、前記リリーフ用弁体を前記貫通孔の一端側に付勢する付勢手段と、を有し、前記圧力差が前記第2の設定値を超えない場合、前記付勢手段により前記シートパッキンが前記第1小径部へ押しつけられて前記貫通孔の一端を封止するように位置し、前記圧力差が前記第2の設定値を超える場合、前記付勢手段の付勢力に抗して前記リリーフ用弁体及び前記シートパッキンが前記第1小径部から前記第2小径部側へ移動して前記貫通孔の一端を開放する方向へ移動する
ことを特徴とする液封防止機構内蔵逆止弁。
【請求項2】
前記付勢手段は、コイルスプリングであって、
前記リリーフ用弁体は、前記コイルスプリングのコイルが挿入される凹部を有する
こと特徴とする請求項1に記載の液封防止機構内蔵逆止弁。
【請求項3】
前記逆止弁は、前記第1小径部が形成されると共に前記貫通孔の一端側に固定された弁座をさらに有し、
前記弁座は、前記貫通孔の他端側へテーパ状に突起する突起形状であって、
前記第1小径部は、前記弁座の突起先端部から前記貫通孔の一端側に向かって貫通して形成されている
こと特徴とする請求項1に記載の液封防止機構内蔵逆止弁。
【請求項4】
前記リリーフ弁は、前記リリーフ用弁体に前記シートパッキンを固着する構成となっており、前記シートパッキンの固着に際して前記リリーフ用弁体と前記シートパッキンとの間に介在するエアーを抜くためのエアー抜き用孔が形成されている
こと特徴とする請求項1に記載の液封防止機構内蔵逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251592(P2012−251592A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124051(P2011−124051)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)
【出願人】(000141794)株式会社宮入バルブ製作所 (12)
【Fターム(参考)】