液晶を使用する空間変調電界の発生および電気光学的チューニング(electro−opticaltuning)のための方法および装置
光の伝搬を制御するための可変光学デバイスは、液晶層(1)と、液晶層に作用する電界を発生するように配置された電極(4)と、前記光学デバイスを通過する光の伝搬を制御するように、前記電界を空間変調するために、電極の間に液晶層に隣接して配置された電界変調層(3、71)とを有する。電界変調層は、基本的に空間的に均一な光屈折率、または極性液体もしくはゲル、または20より高く、好ましくは1000より高い誘電率を有する、非常に高い低周波誘電率の材料のいずれかを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に制御可能な光学デバイスに関し、特に、液晶(LC)を用いての空間的に不均一な電界の形成ならびに屈折および回折光学要素の光学特性の電気光学的チューニングにおけるその使用のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当業界で周知の通り、インテリジェント(自己調整可能型)光学撮像システムの実現を成功させるには、それらの光学特性を制御可能に変化させることのできるデバイスが必要である。調整可能であるために要求される最も重要な光学機能の1つは、集束能力および集束距離である。これらの特性は、例えば高品質携帯電話カメラ、格納/読出しシステム、調整可能なコンタクトガラス(adjustable glass of contact)、およびその他の視覚システムの製造に不可欠である。
【0003】
最新の高性能光学撮像システムでは、光学ズームは機械的な動きの使用によって得られる。これは、これらの撮像システムが比較的大きく(例えばステップモータを収容するため)、重く、かつ一般的に遅いズーム(秒台)を有することを暗に示す。
【0004】
電気機械式ズームに代る幾つかの方法が探求されてきた。変化する口径を使用する可変焦点液体レンズが実演されたことがある[H.Ren、S‐T Wu、「Variable‐focus liquid lens by changing aperture」、Appl.Phys.Lett.、v.86、211107、2005]。焦点チューニング(focus tuning)を得るために、導電性非混和液中のエレクトロウェッティング効果も使用されたことがある[S.Kuiper、B.H.W.Hendriks、「Variable‐focus liquid lens for miniature cameras」、Appl.Phys.Letters、V.85、No.7、1128、2004]。しかし、どちらの方法でも、セルに供給される可変電圧が形状の機械的変化を引き起こす。したがって、たとえ自由空間の明確な可動構成要素(free-space distinct moving components)が無い場合でも、依然として機械的な動きに基づく焦点変動が存在する。そのようなシステムの動作は環境振動および温度変化の影響を受け易いので、非常に望ましくない。
【非特許文献1】H.Ren、S‐T Wu、「Variable‐focus liquid lens by changing aperture」、Appl.Phys.Lett.、v.86、211107、2005
【非特許文献2】S.Kuiper、B.H.W.Hendriks、「Variable‐focus liquid lens for miniature cameras」、Appl.Phys.Letters、V.85、No.7、1128、2004
【0005】
LCは電気的に制御される大きい屈折率変化をもたらすことがよく知られている[L.M.Blinov、V.G.Chigrinov、「Electrooptic effects in Liquid Crystal Materials、Springer‐Verlag、N.Y.459pp、1994]。しかし、焦点チューニング(光学ズームのために必要である)は、LCの空間的に変動する屈折率変化の発生を必要とする。これは次に、通常、空間的に不均一なLC層(例えばLCセル中に浸漬されたレンズ、またはグラディエントポリマネットワーク安定化LC[V.V.Presnyakov、K.E.Asatryan、およびT.Galstian、A.Tork、「Tunable polymer‐stabilized liquid crystal microlens」、Optics Express、Vol.10、No.17、August 26、pp.865‐870、2002])または空間的に変動する電界のいずれかを必要とする。
【非特許文献3】L.M.Blinov、V.G.Chigrinov、「Electrooptic effects in Liquid Crystal Materials、Springer‐Verlag、N.Y.459pp、1994
【非特許文献4】V.V.Presnyakov、K.E.Asatryan、およびT.Galstian、A.Tork、「Tunable polymer‐stabilized liquid crystal microlens」、Optics Express、Vol.10、No.17、August 26、pp.865‐870、2002
【0006】
空間的に不均一なLC層の略図を図1aに示す(先行技術)[L.G.Commander、S.E.Day、D.R.Selviah、「Variable focal length micro lenses」、Optics Communications、V.177、pp.157‐170、2000]。ここで、LC(1)は均一な透明電極(4)で被覆された2つの透明なガラス基板(2)の間に挟まれる。基板(2)は、LCが充填された厚さdのギャップにより分離される。LCセルの内部には、屈折率nmの半球状プロファイルの透明な光学材料(3)が存在する。LCの実効屈折率neff(分子長軸の平均方向であるそのダイレクタnの配向によって定義される)は、LC層に電圧Vを印加することによって、nmに対して変化させることができる。かくして、屈折率の相対的コントラストneff(V)−nmを変化させ、その結果としてシステム全体の焦点距離F(V)を変化させることができる。しかし、LC配向は一般的に機械的ラビングによって得られ、この方法を工業生産に適用するのは非常に難しい。また、電圧を印加すると、ディスクリネーションラインが容易に現われる。我々がそのような解決策についてそれ以上解析しないのは、これらの理由による。
【非特許文献5】L.G.Commander、S.E.Day、D.R.Selviah、「Variable focal length micro lenses」、Optics Communications、V.177、pp.157‐170、2000
【0007】
不均一なLCの配向を得るための別の方法として、LCマトリクスを安定化させる不均一なポリマネットワークの導入がある[T.Galstian、V.Presniakov、A.Tork、K.Asatryan、「Electrically variable focus polymer-stabilized liquid crystal lens」、米国特許出願公開第20050018127‐A1号]。しかし、(小規模の不均一なLCの再配向ゆえの)比較的高い光散乱のため、この方法の実用化への関心は低い。
【非特許文献6】T.Galstian、V.Presniakov、A.Tork、K.Asatryan、「Electrically variable focus polymer-stabilized liquid crystal lens
【特許文献1】米国特許出願公開第20050018127‐A1号
【0008】
空間的に変動する電界を得るための最も単純な(製造の観点からではなく)方法は、LCセル基板上に分配された複数(3つ以上)の透明電極(例えばインジウムスズ酸化物/ITO)を使用するものである[S.T.Kowel、P.G.Kornreich、D.S.Cleverly、「Adaptive liquid crystal lens」、米国特許第4,572,616号、1986(1982年8月出願)]および[N.A.Riza、M.C.DeJuIe、「Three‐terminal adaptive nematic liquid‐crystal lens device」、Opt.Lett.19、pp.1013‐1015、1994]。しかし、そのような構造の製造はサブマイクロメートルの精度を必要とし、それらの電気駆動はかなり複雑な電子的マイクロプロセッサによる処理を必要とし、それらの動作は光回折および散乱によって低下する。
【非特許文献7】S.T.Kowel、P.G.Kornreich、D.S.Cleverly、「Adaptive liquid crystal lens
【非特許文献8】N.A.Riza、M.C.DeJuIe、「Three‐terminal adaptive nematic liquid‐crystal lens device」、Opt.Lett.19、pp.1013‐1015、1994
【特許文献2】米国特許第4,572,616号
【0009】
平面電極および湾曲電極の組合せは参考文献[「Liquid Crystal Lens with Spherical Electrode」、B.Wang、M.Ye、M.Honma、T.Nose、S.Sato、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41(2002)、pp.L1232‐L1233、Part 2、No.11A、1 November]に記載されており、それは標準(透明)電極および2つの平面状内面を有するLCセル(図1b、先行技術)の使用を可能にする。不均一な(中心対称な)電界は、上部電極(4)によって被覆された湾曲「外」面の幾何学的レンズ状の形状(31)のおかげで得られる。実際、平面LC(1)層は、2つのガラス基板(2)の間に挟まれる。平面ITO電極は1つの基板の底(平)面上に被覆される一方、第2電極は湾曲領域(31)の上に作製される。そのような構造は作製することが難しく、かつ零電圧レンズ特性(我々が「零電圧時の作動」と呼ぶもの)を有し、それは予期しない電圧障害が発生した場合に問題を引き起こすかもしれない。
【非特許文献9】「Liquid Crystal Lens with Spherical Electrode」、B.Wang、M.Ye、M.Honma、T.Nose、S.Sato、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41(2002)、pp.L1232‐L1233、Part 2、No.11A、1 November
【0010】
この零電圧レンズ効果は、湾曲したITO被覆面上に配置されかつ平坦な上面を有する追加ポリマ層を用いることによって除去することができる[H.Ren、Y.H.Fan、S.Gauza、S.T.Wu、「Tunable‐focus flat liquid crystal spherical lens」、Applied Phys.Lett.、V.84、No.23、pp.4789‐4791、(2004)]。この方法は、実際、零電圧レンズ効果を永久に「隠蔽」する(「零電圧時の無作動」をもたらす)ことを可能にするが、その作製は複雑かつ高コストのままである。
【非特許文献10】H.Ren、Y.H.Fan、S.Gauza、S.T.Wu、「Tunable‐focus flat liquid crystal spherical lens」、Applied Phys.Lett.、V.84、No.23、pp.4789‐4791、(2004)
【0011】
回折チューナブルレンズ(tunable lens)の作製のために、同様の解決策が参考文献[米国特許第6,859,333号:H.Ren、Y.‐H Fan、S.‐T.Wu、「Adaptive liquid crystal lenses」、2005年2月、出願2004年1月)]に記載されている。これは、少なくとも2つの平面基板および少なくとも1つの均質なネマチック液晶(NLC)層から構成される、適応光学レンズデバイスである。1つの平面基板は球状または円環状フレネル溝透明電極を内部に有し、他の基板は、内面を被覆された透明電極を有する。NLC層の厚さは均一である。LC層に電圧が印加されると、LC層内の屈折率の中心対称な傾斜分布が生じる。したがって、LC層は光を集束させる。印加される電圧を制御することにより、レンズの焦点距離は連続的にチューニング可能である。
【特許文献3】米国特許第6,859,333号
【0012】
LCセルの平坦な内面は作製がより容易であるが、「外側」表面の複雑な湾曲した形状およびこれらの表面上の電極の堆積は、そのようなレンズの作製を困難にする。
【0013】
複数の複雑な電極の使用を回避するために、様々な幾何学的解決策が提案されてきた。それらの1つは、2次元の幾何学的形状の電極の使用に基づく。例えば、孔パターン電極(hole patterned electrode)は参考文献[M.Ye、S.Sato、Jpn.J.Appl.Phys.、V.41、(2002)、L571;米国特許第6,768,536号:D.Okuwaki、S.Sato、「Liquid crystal microlens」、2004年7月、出願2002年11月)]、および参考文献[B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Liquid‐crystal lens with stacked structure of liquid‐crystal layers」、Optics Communications、250(2005)、pp.266‐273]で使用されている。この方法の基本的概念を図2a(先行技術)に示す。これはLC(1)が2つの基板(2)の間に挟まれたむしろ標準的なセルであり、基板の1つ(底側の基板)はITO(4)で被覆される。しかし、上部電極(41)に孔(5)がある。(4)と(41)との間の電圧を印加すると中心対称な電界(42)が発生し、それはLCダイレクタnを空間的に不均一に(中心対称に)再配向させる。これは次に、空間xに対応する形状を有するneff(V,x)を発生させる。この構造の主な欠点は、LC層における電界の希望する空間プロファイルを得、かつレンズの良好な光学品質を維持する(特に光学収差を回避する)ことができるために、非常に厚いLC層(大きいd)を使用する必要があることである。
【非特許文献11】M.Ye、S.Sato、Jpn.J.Appl.Phys.、V.41、(2002)、L571
【非特許文献12】B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Liquid‐crystal lens with stacked structure of liquid‐crystal layers」、Optics Communications、250(2005)、pp.266‐273
【特許文献4】米国特許第6,768,536号
【0014】
この方法の改善版([B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Liquid‐crystal lens with stacked structure of liquid‐crystal layers」、Optics Communications、250(2005)、pp.266‐273]、図2b(先行技術)を参照されたい)は複数の透明な基板(2)と、上部基板(40)の底面および下部基板(4)の上面に設けられた1対の均一な透明電極とを含む。これらの電極(4)の間に、円形の孔(5)を持つ中間電極(41)が導入される。受入れ可能なレンズ状屈折率勾配(低収差のため)およびディスクリネーションの無いLC再配向を得るために、孔パターン電極(41)と均一な電極4との間の距離は、500〜1300μm(直径が4〜5mmのレンズの場合)より大きくしなければならず、それは高電圧の必要性につながる。最初に高い固定補助Vo(およそ150V)および次いで制御電圧Vc(およそ175V)が(電極4と電極41および40それぞれとの間に)同時に印加されたときに、LCはレンズ状構造を生成する。次いで、特定の最適遅延T後に、制御電圧Vcは所望の値まで低下される)。要求される高電圧および複雑な動力学はこの方法の実用化をかなり困難にしている。同じ方法に基づく複雑な複数セル解決策は、製造コストおよび駆動の複雑さを増大している。
【非特許文献13】B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Liquid‐crystal lens with stacked structure of liquid‐crystal layers」、Optics Communications、250(2005)、pp.266‐273]
【0015】
いわゆる「モード制御」液晶レンズは、文献[A.F.Naumov、M.Yu.Loktev、I.R.Guralnik、G.Vdovin、「Liquid‐crystal adaptive lenses with modal control」、Opt.Lett.23、992‐994、1998;G.D.Love、A.F.Naumov、「Modal liquid crystal lenses」、Liq.Cryst.Today、10(1)、pp1‐4、2000;M.Yu.Loktev、V.N.Belopukhov、F.L.Vladimirov、G.V Vdovin、G.D.Love、A.F.Naumov、「Wave front control systems based on modal liquid crystal lenses」、Review of Scientific Instruments、V.71、No.9、pp.3290‐3297、(2000)]に掲載されている。前述の孔パターン電極とは対照的に、ここでは高抵抗環状電極(40)が使用される(図2c、先行技術)。底部基板の均一な電極(4)と上部基板の環状電極(40)との間に電圧が印加される。高抵抗電極(40)およびLC層(1)によって形成される複合インピーダンスのおかげで、セル全体のrms電圧(ならびに対応する制御電界(42)および(43))の分布は中心対称であるが、不均一である(中心は電極40の中心と一致する)。電界(42)および(43)はベッセル関数によって表され、電圧‐光学遅延特性依存性はほぼ逆対数関数である。この方法の問題は、高抵抗電極(40)による強い光吸収、光学収差(任意の大きさおよび位相の電圧がセルに印加されると、結果的に生じる位相分布が放物線からほど遠くなるため)、および電気的制御(電圧および周波数)の複雑さである。
【非特許文献14】A.F.Naumov、M.Yu.Loktev、I.R.Guralnik、G.Vdovin、「Liquid‐crystal adaptive lenses with modal control」、Opt.Lett.23、992‐994、1998
【非特許文献15】G.D.Love、A.F.Naumov、「Modal liquid crystal lenses」、Liq.Cryst.Today、10(1)、pp1‐4、2000
【非特許文献16】M.Yu.Loktev、V.N.Belopukhov、F.L.Vladimirov、G.V Vdovin、G.D.Love、A.F.Naumov、「Wave front control systems based on modal liquid crystal lenses」、Review of Scientific Instruments、V.71、No.9、pp.3290‐3297、(2000)
【0016】
前述の全ての例(そこでは、湾曲もしくは孔パターン電極の幾何学的形状を使用することによって、またはインピーダンス誘起傾斜を介して、不均一な電界が得られる)とは対照的に、低周波数(例えば1kHz)の電界における材料の誘電率εDC(ここでは駆動電界を表わすために「DC」と呼ぶ)の傾斜を使用する、洗練された解決策が提案された。すなわち、駆動電界の所望の傾斜を発生させるために、2つの制御電極(4)の間に中間層(3)が挿入される[B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Lens of electrically controllable focal length made by a glass lens and liquid crystal layers」、Applied Optics、V.43、No.17、pp.3420‐3425、2004]図3(先行技術))。実際、中間層(3)はガラス(ε(g)DCを持つ)で構成され、空間的に不均一な厚さを有する。中間空間の残りの部分(7)にはε(a)DC≒1の空気が充填される。(電極4を通して)低周波電圧を印加すると、中間媒体の誘電率の不均一性(ε(g)DC>ε(a)DC)のため、LCセルの内部に空間的に不均一な電界が発生する。かくして、セルの中心部の電界43は境界付近の電界42とは異なる(より弱い)。図3(先行技術)の特定の事例では、効果を増強するために2つのLCセルが使用される。この方法の利点は、適切な形状の中間材料(例えばレンズ)を使用することによって、所望の空間形状(傾斜)が得られることである。
【非特許文献17】B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Lens of electrically controllable focal length made by a glass lens and liquid crystal layers」、Applied Optics、V.43、No.17、pp.3420‐3425、2004
【0017】
しかし、3つの主要な問題は、この方法でも依然として解決されないままである。それらの1つは、内在する零電圧レンズ効果(「零電圧時の作動」)である。第2の問題は、(光周波数では、屈折率がガラス(ng≒1.5)および空気(na≒1)で全く異なるので)、複数のガラス‐空気表面でのフレネル反射によるこの形状の高い光学的損失を回避するために、複数の反射防止コーティングを持つ必要性に関係する。最後に、電界(およびしたがってneff(V,x))の達成可能なコントラストは、ε(g)DC(ガラスの種類によって3.8から14.5まで変動することができる)とε(a)DC≒1(実際には、高n材料のレンズを使用することができるが、それは著しいフレネル損失を発生する)と間の達成可能な最大コントラストのため、厳しく制限される。
【0018】
したがって、低損失、効率的、かつ電気的にチューニング可能な集束光学デバイスは依然として非常に望ましい。
【発明の開示】
【0019】
したがって、本発明の目的は、均一な電極および平面(標準)LCセルを使用して空間的に不均一な電界を形成するための方法および装置、ならびに液晶(LC)を用いて屈折および回折光学要素の集束特性の電気光学的チューニングを発生させるためのその使用を提供することであり、デバイスは低損失を有し、かつ構成および/または製造が簡単である。一部の実施形態では、効率的な制御を有し、かつ「零電圧の無作動」を可能にする、そのようなデバイスを作製するための方法および装置を提供する。
【0020】
本発明の第1態様では、一見して非論理的に見えるアーキテクチャを提案する。我々の提案の非自明性を示すために、単なる実施例として前述の幾何学的形状を使用する(図4)。
【0021】
(LCセルと中間ガラス3との間の)残部空間に特定の材料(71)を充填することを提案する(かつ我々の提案を実験で実現する(後述参照))。そのような材料の例として、低周波誘電率ε(s)DCおよび高(光学)周波屈折率nSを持つ水性溶液がある。特定の双極性分子特性のため、水は大きいε(s)DC(およそ78)を有する一方で、かなり低いnS(およそ1.33)を有することが当業界で周知である。かくして、n(3)=nSを有する中間材料(3)を使用することによって、「零電圧時の無作動」特性を提供することもできる。そのような材料の例として、適切な形状および大きさの(一般的に非常に低nPを有する)フッ素化ポリマが挙げられる(後述参照)。かくして、光周波数で、「零電圧時の無作動」をもたらす平面均一性が得られる。加えて、追加的なフレネル反射および光学的損失は生じない。他方、(制御に使用される)低周波電界では、誘電率の極めて大きいコントラストが存在する
【0022】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面に関連して掲げる、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【好適な実施形態の詳細な説明】
【0023】
本発明は、均一な電極によって空間的に不均一な電界を発生する方法、および光の伝搬を制御するためにこの方法を使用するデバイスを提供する。本発明のデバイスは、チューニング可能な集束、回折、ステアリング等に使用することができる。
【0024】
簡潔を期すために、以下の説明は単純な屈折および回折構造に重点を置くが、他の型の構造、および要素のより複雑な組合せも同等に使用することができる。同様に、静的または電気光学的材料を使用する実施形態を説明するが、同じ目標を達成するために、代わりに他の材料を使用することができることを理解されたい。目標とは、低損失高効率の動作であり、一部の実施形態では「零電圧時の無作動」特性である。
【0025】
図1aを参照すると、LC(1)が透明電極(4)を持つ2つのガラス基板(2)の間に挟まれて成る、先行技術のレンズが示されている。不均一なプロファイルの要素(3)は、デバイスの屈折率の空間的に均一な変調を得るために、LC層内に浸漬される。そのようなチューナブルレンズを作成しかつ制御することは非常に難しいと思われる。
【0026】
図1bを参照すると、LC(1)が透明電極(4)を持つ2つのガラス基板(2)の間に挟まれて成る、先行技術のレンズが示されている。ここでは、前の事例とは対照的に、均一なLC層が使用される。しかし、上部基板の上に不均一なプロファイルの要素(31)が使用され、それは湾曲表面(31)上に堆積された透明電極(4)によって被覆される。これは、デバイスの屈折率の空間的に均一な変調を得ることを可能にする。しかし、そのようなチューナブルレンズを作成しかつ制御することは非常に難しいと思われ、加えて、そのような装置は「零電圧時の作動」が不可避である。
【0027】
図2aを参照すると、均一なLC層(1)が距離dだけ離れた2つのガラス基板(2)の間に挟まれて成る、先行技術のレンズが示されている。デバイスを駆動するために、2つの透明電極が使用される。底部電極(4)は均一であるが、頂部電極(41)は直径(5)の真ん中に孔を有する。均一な電極と不均一な電極との組合せは、セルの境界(42)と中心部(43)とで異なる、空間的に不均一な電界を発生させる。これにより、対応する空間的に不均一なダイレクタ再配向および光の集束が発生する。しかし、強い収差を回避するために、非常に厚いLC層を使用しなければならず、それは駆動電圧およびスイッチング時間(数十秒)を著しく増大させる。
【0028】
図2bを参照すると、厚いLC層の使用を回避するように前の方法(図2a)を改変した、先行技術のレンズが示されている。孔パターン電極(41)の上に追加の均一な電極(40)が使用される。これらの電極は、追加中間ガラス層(2)によって相互に分離される。また、厚さ(6)の追加ガラス層が、孔パターン電極(41)と、LC層にて要求される電界形状を提供するLC層(1)との間に導入される。しかし、強いディスクリネーションを回避するために、非常に複雑な動的励起が使用される(最初に電極(4)と(41)との間に電圧が印加され、次いで電極(4)と(40)との間に別の電圧が加えられる。これにより制御回路が非常に複雑になり、かつ非常に高い電圧(150〜170V)が必要になる。
【0029】
図2cを参照すると、LC(1)が透明電極(4)および(40)を持つ2つのガラス基板(2)の間に挟まれて成る、先行技術レンズが示されている。この方法の特殊性は、(前の事例で使用された孔パターン電極とは対照的に)直径(5)の頂部電極(40)の円形の形状である。また、電極(40)の高抵抗材料およびパラメータは、(LC層(1)と組み合わせて)LC(1)の層内の電界を強力に減衰させ、かつ周辺(42)および中心(43)の電界の間に強力な差異を導入させる、強力な電気インピーダンスがもたらされるように選択される。これは空間的に不均一なLC再配向、および光の収束を発生させる。そのようなデバイスの制御(周波数および振幅)は非常に難しく、かつ頂部の高抵抗電極のため、光学的損失は非常に高い。
【0030】
図3を参照すると、均一なLC層(1)ならびに頂部および底部基板(2)上に堆積された均一な電極(4)を使用した、チューナブルレンズが提示される、先行技術のレンズが示されている。中間のレンズ状構造(3)および空気を含む自由空間(7)があり、それは中間基板(2)によってLC層(1)から分離されている。均一な電極(4)間に電圧を印加すると、デバイスの周辺(42)および中心部(43)で異なる電界が発生し、かくして不均一なダイレクタ再配向および光集束が発生する。
【0031】
この方法には幾つかの欠点がある。最初に、印加電圧の予期しない障害が発生した場合のレンズ効果(「零電圧時の作動」)がある。これは、LC層(1)に不均一な電界を発生するために必要とされる、ガラスレンズ(3)と空気(7)との間の不可避のコントラストに関係している。
【0032】
この方法の第2の欠点は、フレネル反射損失である。このため、層(3)の頂面および中間基板(2)の低面に反射防止コーティングを使用することが必要になるが、それは生産コストを増大させる。
【0033】
この方法の第3の欠点は、電界の限定された空間変調である。これは、ガラス/空気誘電率比がかなり限定されているためである(一般的にε(g)DC/ε(a)DC<8)。かくして、電界の強力な空間変調を得るために、ガラス(3)のプロファイルを強く湾曲させなければならず、それは第1の問題をさらにいっそう悪化させる。
【0034】
一部の実施形態では、上記の3つの欠点の無いデバイスを得ることを可能にする材料の組合せを提案する。成功するために、我々は、電界vの周波数に対する材料の誘電率εの依存性という基本的特性を使用する。
【0035】
最初に、前の先行技術のレンズの動作、およびこの方法の欠点の原因について解析しよう。そこで不均一な電界が得られるのは、低周波電界(v≒0.5〜100kHz、添え字「DC」で表わされる)におけるガラスおよび空気の誘電率の差異のおかげである(ε(g)DC)≠ε(a)DC)。前の方法の第3の欠点は、実際には(低駆動周波数時の)比較的低い比ε(g)DC/ε(a)DCである。同時に、前の方法の第1および第2の欠点は、高い(光)周波数におけるガラスおよび空気の電気感受率(単純にε(g)opt)およびε(a)optと表わされる)が異なるという事実に由来する。
【0036】
しかし、依存性ε(v)は、材料の特徴(誘電体、半導体、金属)およびその幾何学的形状によって異なる形を取ることがある。かくして、我々は、上述した3つの欠点を全部解消する材料(3)および(7)の組合せを見つけることを提案する。
【0037】
かくして、本発明の第1実施形態では、図4Aに示すように、光学的に均一であるが、LC配向を駆動するために使用される低周波電界に対しては非常に不均一である、隠蔽構造を提案する(かつ、実験で我々の提案を実現する(後述参照))。実際、材料3および71は特に、種々の電位の2つの均一な電極4間(図4A)に挿入されたときに強力な集束が可能になるが、電圧無しでは集束特性を持たないように選択される。図4Aの隠蔽構造を使用する効果は、残部空気空間(図4AのLCセルと中間ガラス(3)との間)に特定の材料(71)を充填することである。そのような材料の例として、特定低周波数誘電率ε(s)DCおよび高(光)周波数誘電率ε(s)optを持つ水性溶液が挙げられる(この材料の光屈折率nSはnS=[ε(s)opt]0.5と定義されることを思い出そう)。非常に独特の双極性分子特性のため、水は非常に大きいε(s)DC(およそ78)を有する一方、非常に低いnS(およそ1.3)を有する。
【0038】
かくして、(ε(s)DC≒78およびnS≒1.3の)水性溶液と非常に低い光屈折率n(3)およびε(3)DCを有する中間材料(3)との組合せを(要素(71)として)使用することによって、我々は3つの問題を全部解決することができる。そのような材料の例として、フッ素化ポリマ(一般的に非常に低い値のnpol≒1.3およびε(3)DC≒3を有する)が挙げられる。かくして、構造(3)は光波(npol≒nS)に対して「隠蔽」されるので、光周波数で平面均一性および零電圧時の無レンズ効果がもたらされる。加えて、追加的なフレネル反射および光学的損失は生じない(npol≒nS)。一方、(前の事例のε(g)DC−ε(e)DC≒75とは対照的に)低周波電界では誘電率の極めて大きいコントラスト(ε(s)DC−ε(pol)DC≒75)が生じる。このコントラストは、必要なときにだけ光波を集束させるために必要な、空間的に不均一な電界およびLCダイレクタの再配向の発生を容易にする。
【0039】
水は高い低周波誘電率を生じる液体の1例にすぎないことは、理解されるであろう。極性液体およびゲルは一般的に高い誘電値を有する。グリセロールは、可視スペクトルで透明であり、かつ広い温度範囲にわたって液体であり続ける一方、望ましい屈折率値を有するので、望ましいことが明らかになった。
【0040】
一部の実施形態では、零電圧時のレンズ効果は望ましく、かつnpol≠nSである。例えば、結像光学系の一部である固定レンズは、(3)および(71)の組合せによって提供することができる。そのような場合、構造(3)を中間ガラス層(2)に組み込むことも可能であるかもしれない。
【0041】
一部の実施形態では、電界変調層(3、71)の設計によって、電界の強度および向きを適切に変調させることができる。図4Bは、複雑な非球形の隠蔽層を示す。図4Cでは、可変焦点液晶レンズは、71の低い誘電率および3の高い誘電率のため、電界線をレンズの中心方向に向ける、コアレンズ構造および周囲の液体を持つ電界変調層を有する。一方、図4Dでは、可変焦点液晶レンズは、71の低い誘電率および3の高い誘電率のため、電界線をレンズの中心から遠ざかる方向に向ける、コアレンズ構造および周囲の液体を持つ電界変調層を有する。71の誘電率が3の誘電率よりずっと大きければ、図4Cの場合と全く同様に、図4Dの実施形態における誘電体の全体的なプロファイルが改善されることは理解されるであろう。
【0042】
図5を参照すると、上記方法に従って、水を材料(71)として使用し、かつフッ素化ポリマまたは他の種類の材料とすることのできるポリマであって、液体の屈折率と適合すると共に低周波誘電率の強力な差異を有するポリマを要素(3)として使用して、作製されたそのようなチューナブルレンズの具体的な実施例が示されている。
【0043】
図5の平面構造は、多くの理由から有利である。液晶を含みかつ液晶層を形成する平坦な透明板は、当業界で公知の通り、液晶を受容するように作製するのが簡単である。液晶は電界に応答し、電極間の距離が小さいほど電界は大きいので、平坦な形状は構造を小型に維持するのに有用である。一部の実施形態では、透明板の1つを、隣接する電界変調層の構成要素と一体化することができる。
【0044】
「隠蔽構造」、すなわち光学デバイスの像形成部分内で基本的に空間的に均一な光屈折率を提供する電界変調層(3、71)を有することは、多くの場合に望ましいが、電界変調層が光の伝搬を、例えばレンズシステムの集束力をある程度静的に制御することも有利であり得る。これらの場合、一緒に電界変調層を形成する2つの材料の間に屈折率の差があるかもしれず、もしくは光学システムに組み込まれる光学特性または効果を有する単一の材料があるかもしれない。
【0045】
極性液体またはゲルである単一材料の場合、液体またはゲルは光学エンベロープ内に包封される。例えばグリセロールのブリスタは、所望の形状の電界を提供することができ、画像の形成に対するその光学的な効果はレンズシステム全体に補償/統合することができ、すなわち他のレンズ構成要素がブリスタの光学的結像効果を補完して、像平面に正しい像を提供することができる。
【0046】
また、電界を変調するために利用することのできる他の型の固体材料も存在する。灰チタン石(チタン酸バリウムストロンチウム)、(Ba,Sr)TiO3もしくはCaCu3Ti4O12もしくは(Li,Ti)ドープトNiOに基づく材料、またはCa1-xLaxMn3(x<=0.03)またはポリマ−セラミックナノ複合材料の薄膜等のような、103から106の低周波誘電率値を有する種々の高誘電率のセラミック材が公知である。そのような材料は、固体物体として単独で、または所望の高誘電率材料を達成するために、透明なプラスチック、ゲル、または液体への添加剤として使用することができる。単独で使用する場合、電界の有意の変調を達成するために必要な厚さは最小限であり、したがって集束(または収差)効果は最小限または無視できるほど小さくすることができる。
【0047】
図6Aは、上述のレンズを使用することによって得られた実験データを示す。チューナブルレンズは、垂直および水平方向にそれぞれ向けられた交差した偏光子とアナライザとの間に、(ダイレクタが45度に向けられた状態で)配置される。均一な電圧を印加すると、LC層に空間的に不均一な電界が形成され、かくして対応するダイレクタ再配向が発生する。この再配向は、(図6Aに「水無し」の破線曲線として表わされた)レンズの中心部の再配向、および次いで(図6Aで「水有り」実線として表わされた)周辺部の再配向を試験する、(小径の)プローブビームによって検出される。見て分かる通り、LCの再配向は空間的に非常に不均一である。
【0048】
図6Bは、液晶の配向に対する電界の変動の効果、および可変焦点レンズの場合の光パワーに対して結果的に生じる効果を示す。見て分かる通り、電圧が零から上昇するにつれて、電界はレンズの像形成部分で、空間的に多様な向きの変化を生じる。しかし、特定の電圧時に、レンズの中心部分で液晶の配向の完全な変化が達成され、電圧がさらに上昇しても飽和を生じるだけとなり、電圧が上昇し続けると、像形成部分全体が向きの完全な変化を達成し、したがって屈折率の値が同一になるので、レンズは最終的に失われる。電圧の関数としてプロットされた光パワーを、図6Cにグラフで示す。
【0049】
得られたLC再配向の円対称特性を図7に示す。ここに、印加電圧に対する円環構造の依存関係が提示される。各円環は、LC層内を伝搬する定常波「o」と異常波「e」との間の2π差動位相偏移に対応する。かくして、電圧による円環の展開は、LC層の異常屈折率neの実効空間湾曲の展開を示す
【0050】
図8は、像平面の電気的にチューニング可能なずれを示す。光学システムは平行白色光、固定レンズ、および図5のチューナブルレンズから構成される。
【0051】
本発明の別の実施形態で、図9を参照すると、本発明で提案した基本原理を使用したチューナブル回折構造が概略的に示されており、それは、特定の形状を持つ1つの材料(3)および第1の材料を包囲するもう1つの材料(71)の2つの材料システムの組合せから構成される。本例の場合、要素3は空間周期的な形状を有する。それは平面周期的または円周期的な形状とすることができ、例えばスイッチング可能なフレネルレンズ動作がもたらす。均一な電圧を均一な電極(4)の対に印加すると、LC層(1)に周期的に変調する電界が発生する。これは周期的に変調するダイレクタ再配向および回折構造の形成を生じる。
【0052】
本発明の1実施形態では、回折構造は、対称な正弦曲線状、方形、または三角形の断面のみならず、非対称な回折パターンを提供するために非対称な(例えば「ブレーズド」格子のような傾斜した非対称な)断面を持つこともできる。
【0053】
本発明の別の実施形態で、図10を参照すると、中間構造(3)は、線形的または非線形的に変化する厚さ(例えばくさび)のような、空間的に不均一な非対称であるが非周期的な形状を持つことができる。この場合、均一な電圧を電極(4)に印加すると、(構造(3)の形状によって影響される)空間的に不均一な電界が発生し、それは対応する空間内の屈折率の変化を生じる。これにより、電気的に可変の光伝搬がもたらされる。くさび形構造の場合、電圧を印加すると、LC層(1)の空間的に変化する屈折率変調が生じ、それによりチューニング可能なくさびおよび対応するチューナブルビーム偏向(ステアリング)を得ることが可能になる。このようにして、ビーム(8)は印加電圧に応じてビーム(81)内に偏向する。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態で、図11を参照すると、2つの要素(3)+(71)の組合せと同じ原理を使用して、偏光独立デバイスを得ることもできる。かくして、第1のLC層(1)に加えて、別のLC層(11)を使用し、これらの層のダイレクタが交差する(例えば層(1)のダイレクタが図の面内に存在する一方、層(11)のダイレクタが該面に垂直である)ように構成することができる。組み合わされた構造は、これらの2つの層(1)および(11)の間に挿入される。製造中に、それは、各々1つの電極、例えば上部セルの頂部基板の底面に堆積された1つだけの電極(4)、および下部セルの底部基板の頂面に堆積された別の電極(41)しか持たない、2つのLCセルの間に単純に挟みこむことができる。構造(3)の形状(概略的に(51)で提示される)は、空間的に不均一、対称、周期的などの形状とすることができる。このようにして、電極(4)および(41)の間に電圧を印加すると、上部および下部LCセルの両方に、(形状(51)によって影響される)空間的に不均一な電界が発生する。これは次に、ダイレクタ再配向および対応する両交差方向の屈折率変化を生じ、かくして両方の光学偏光に影響を及ぼす。
【0055】
上述の全ての場合に、要素(3)および(71)の材料組成は、高(光)周波数の波に対して空間的に均一な組合せ構造(3)+(71)が得られるように選択することができる。かくして構造(3)は、この場合、「隠蔽」される。明らかに、デバイスの残部(ガラス基板(2)、LC層(1)、および電極(4))も、横方向に均一となるように選択することができる。この場合、デバイス全体が、光の偏向または集束無く、空間的に(横方向に、かつ必要な場合には縦方向にも)均一なデバイスとして作動する(「零電圧時の無作動」)。
【0056】
同時に、一部の特定の用途では、材料の組合せおよび形状の選択は、零電圧の場合に特定の光学機能(レンズ効果、回折、偏向等)が得られるように行なうことができ(「零電圧時の作動」)、次いで電圧を印加することによってそれを変化させることができる。
【0057】
図12は、ビームステアリングおよび可変焦点の両方を実行するレンズシステムの主要な要素を概略的に示す。レンズ10は可変焦点レンズであり、レンズ12は屈折可変ステアリング光学デバイスであり、レンズ14は、1回に固定角度ずつステアリングを変化させる回折ステアリングデバイスである(それはアクティブまたは非アクティブである)。フルパン、チルト、およびズーム(PTZ)カメラレンズシステムは、希望する様々な方向およびレンジが得られるように、そのようなチューナブル光学デバイスを組み合わせることによって達成することができることは理解されるであろう。回折デバイスは、光パワーまたはステアリング角度の有意の変化を提供することができる一方、屈折デバイスは可変的にチューニング可能である。LC層間の透明板および/または電極を共用することによって、レンズシステム全体の厚さを低減することができる。
【0058】
図13は、携帯またはセルラ電話機の小型カメラおよびレンズ組立体15の分解図を示す。チューナブルLCレンズ10は固定レンズ光学システム組立体に組み込まれる。図14は携帯電話機内の組立体15を示す。
【0059】
提示したデバイスの電気的制御機構についてのみ詳細に説明した。しかし、デバイスを駆動し、またはその特性を変化させるために、同じ原理を他の励起機構(磁気、熱等)にも使用することができる。例えば、本発明のさらに別の実施形態では、(セル電極または追加手段によって発生する)熱を使用して、組合せ構造(3)+(71)の材料特性を変化させ、零電圧時にそれを「隠蔽」または「顕現」させることができる。例えば、2つの材料(3)および(71)の屈折率温度変化係数dn/dTは、所与の温度T0でそれらの屈折率がn3=n71となるように選択されるが、条件dn3/dT=dn71/dTが満たされない限り、他の温度に対してはそれが当てはまらない。かくして、材料を適切に選択することにより、単に加熱するだけで隠蔽条件を制御することができる。これにより、追加的レンズ効果の形成、および例えばレンズ全体の収差の制御が可能になる。
【0060】
光波に対する「隠蔽」状態を提供し、かつ低周波電界に対して非常に強い誘電率コントラストを提供することのできる、要素(3)および(71)の組合せを主要な要素として有し、本発明で請求する同じデバイスを作製するために、種々の材料組成、種々のLC層、種々の電極、種々のダイレクタアラインメント、種々の形状等を使用することができることを読者は理解されるであろう。
【0061】
また、上述したデバイスの1つまたはそれ以上の組合せを使用して、種々の光学デバイスを開発することができることも、読者は理解されるであろう。
【0062】
上述した本発明の実施形態は、単なる例証として意図されたものである。したがって本発明の範囲は、付属の特許請求の範囲のみによって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1a】図1aは、不均一なLC層を使用する先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図1b】図1bは、零電圧レンズ効果を持つ不均一な外部基板を設けた、均一なLC層を使用する先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図2a】図2aは、均一なLC層および均一な基板を使用するが、不均一な孔パターンを持つ2つの制御電極を使用する、先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図2b】図2bは、均一なLC層および均一な基板を使用するが、不均一な孔パターンを持つ3つの制御電極を使用する、先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図2c】図2cは、均一なLC層および均一な基板を使用するが、不均一な孔パターンを持つ円形制御電極をも使用する、先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す。
【図3】図3は、均一なLC層および均一な電極を使用するが、(電極間に)不均一な中間物体を使用して低周波誘電率の傾斜を形成する、先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図4A】図4Aは、空間的に不均一な電界の発生を可能にする隠蔽された構造(a)の主要な要素、および高効率の「零電圧時の無作動」および低損失動作を可能にする均一なLC層および均一な電極を使用するチューナブルレンズ(b)を概略的に示す図である。
【図4B】図4Bは、複雑な非球面形状の隠蔽層を示す図である。
【図4C】図4Cは、レンズの中心に向かう方向の電界線の向きを導く、コアレンズ構造および周囲の液体を持つ電界変調層を有する可変焦点液晶レンズを示す図である。
【図4D】図4Dは、レンズの中心から遠ざかる方向の電界線の向きを導く、コアレンズ構造および周囲の液体を持つ電界変調層を有する可変焦点液晶レンズを示す図である。
【図5】図5は、図4に示したチューナブルレンズを実証するために作製された実験サンプルの主要な要素を示す図である。
【図6A】図6Aは、図5のサンプルを使用して実験的に得られた分子再配向の空間的に不均一な遅延を示す図である。
【図6B】図6Bは、光パワーの対応する変化を導く、電圧の関数としての液晶配向の変化を概略的に示す図である。
【図6C】図6Cは、図6Bの情報をグラフで表わした、電圧の関数としてのチューナブルレンズの光パワーのプロットを示すグラフである。
【図7】図7は、図5のサンプルを0V、17.4V、および67Vの3つの選択電圧で使用して、実験的に得られた空間的に不均一な位相遅延リングの顕微鏡写真である。
【図8】図8は、図5のサンプルを用いて実験的に得られた像平面のずれの写真である。
【図9】図9は、均一なLC層および均一な電極を使用するが、回折中間物体をも使用するチューナブル回折レンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図10】図10は、均一なLC層および均一な電極を使用するが、不均一な中間物体をも使用するチューナブルビームステアリングデバイスの主要な要素を概略的に示す図である。
【図11】図11は、2つの均一なLC層と、均一な電極の間に配置された不均一な中間要素とを使用する、偏光不感受性チューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図12】図12は、ビームステアリングおよび可変焦点の両方を実行するレンズシステムの主要な要素を概略的に示す図である。
【図13】図13は、回路基板上のカメラシステムのCCDまたはCMOS撮像チップの実装が、液晶レンズ、他の固定レンズ、および外部筐体と共に示される、本発明の1実施形態に係る可変焦点液晶レンズを組み込んだ携帯電話機の断面図である。
【図14】図14は、図13に係るチューナブル液晶レンズを含む携帯電話機を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に制御可能な光学デバイスに関し、特に、液晶(LC)を用いての空間的に不均一な電界の形成ならびに屈折および回折光学要素の光学特性の電気光学的チューニングにおけるその使用のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当業界で周知の通り、インテリジェント(自己調整可能型)光学撮像システムの実現を成功させるには、それらの光学特性を制御可能に変化させることのできるデバイスが必要である。調整可能であるために要求される最も重要な光学機能の1つは、集束能力および集束距離である。これらの特性は、例えば高品質携帯電話カメラ、格納/読出しシステム、調整可能なコンタクトガラス(adjustable glass of contact)、およびその他の視覚システムの製造に不可欠である。
【0003】
最新の高性能光学撮像システムでは、光学ズームは機械的な動きの使用によって得られる。これは、これらの撮像システムが比較的大きく(例えばステップモータを収容するため)、重く、かつ一般的に遅いズーム(秒台)を有することを暗に示す。
【0004】
電気機械式ズームに代る幾つかの方法が探求されてきた。変化する口径を使用する可変焦点液体レンズが実演されたことがある[H.Ren、S‐T Wu、「Variable‐focus liquid lens by changing aperture」、Appl.Phys.Lett.、v.86、211107、2005]。焦点チューニング(focus tuning)を得るために、導電性非混和液中のエレクトロウェッティング効果も使用されたことがある[S.Kuiper、B.H.W.Hendriks、「Variable‐focus liquid lens for miniature cameras」、Appl.Phys.Letters、V.85、No.7、1128、2004]。しかし、どちらの方法でも、セルに供給される可変電圧が形状の機械的変化を引き起こす。したがって、たとえ自由空間の明確な可動構成要素(free-space distinct moving components)が無い場合でも、依然として機械的な動きに基づく焦点変動が存在する。そのようなシステムの動作は環境振動および温度変化の影響を受け易いので、非常に望ましくない。
【非特許文献1】H.Ren、S‐T Wu、「Variable‐focus liquid lens by changing aperture」、Appl.Phys.Lett.、v.86、211107、2005
【非特許文献2】S.Kuiper、B.H.W.Hendriks、「Variable‐focus liquid lens for miniature cameras」、Appl.Phys.Letters、V.85、No.7、1128、2004
【0005】
LCは電気的に制御される大きい屈折率変化をもたらすことがよく知られている[L.M.Blinov、V.G.Chigrinov、「Electrooptic effects in Liquid Crystal Materials、Springer‐Verlag、N.Y.459pp、1994]。しかし、焦点チューニング(光学ズームのために必要である)は、LCの空間的に変動する屈折率変化の発生を必要とする。これは次に、通常、空間的に不均一なLC層(例えばLCセル中に浸漬されたレンズ、またはグラディエントポリマネットワーク安定化LC[V.V.Presnyakov、K.E.Asatryan、およびT.Galstian、A.Tork、「Tunable polymer‐stabilized liquid crystal microlens」、Optics Express、Vol.10、No.17、August 26、pp.865‐870、2002])または空間的に変動する電界のいずれかを必要とする。
【非特許文献3】L.M.Blinov、V.G.Chigrinov、「Electrooptic effects in Liquid Crystal Materials、Springer‐Verlag、N.Y.459pp、1994
【非特許文献4】V.V.Presnyakov、K.E.Asatryan、およびT.Galstian、A.Tork、「Tunable polymer‐stabilized liquid crystal microlens」、Optics Express、Vol.10、No.17、August 26、pp.865‐870、2002
【0006】
空間的に不均一なLC層の略図を図1aに示す(先行技術)[L.G.Commander、S.E.Day、D.R.Selviah、「Variable focal length micro lenses」、Optics Communications、V.177、pp.157‐170、2000]。ここで、LC(1)は均一な透明電極(4)で被覆された2つの透明なガラス基板(2)の間に挟まれる。基板(2)は、LCが充填された厚さdのギャップにより分離される。LCセルの内部には、屈折率nmの半球状プロファイルの透明な光学材料(3)が存在する。LCの実効屈折率neff(分子長軸の平均方向であるそのダイレクタnの配向によって定義される)は、LC層に電圧Vを印加することによって、nmに対して変化させることができる。かくして、屈折率の相対的コントラストneff(V)−nmを変化させ、その結果としてシステム全体の焦点距離F(V)を変化させることができる。しかし、LC配向は一般的に機械的ラビングによって得られ、この方法を工業生産に適用するのは非常に難しい。また、電圧を印加すると、ディスクリネーションラインが容易に現われる。我々がそのような解決策についてそれ以上解析しないのは、これらの理由による。
【非特許文献5】L.G.Commander、S.E.Day、D.R.Selviah、「Variable focal length micro lenses」、Optics Communications、V.177、pp.157‐170、2000
【0007】
不均一なLCの配向を得るための別の方法として、LCマトリクスを安定化させる不均一なポリマネットワークの導入がある[T.Galstian、V.Presniakov、A.Tork、K.Asatryan、「Electrically variable focus polymer-stabilized liquid crystal lens」、米国特許出願公開第20050018127‐A1号]。しかし、(小規模の不均一なLCの再配向ゆえの)比較的高い光散乱のため、この方法の実用化への関心は低い。
【非特許文献6】T.Galstian、V.Presniakov、A.Tork、K.Asatryan、「Electrically variable focus polymer-stabilized liquid crystal lens
【特許文献1】米国特許出願公開第20050018127‐A1号
【0008】
空間的に変動する電界を得るための最も単純な(製造の観点からではなく)方法は、LCセル基板上に分配された複数(3つ以上)の透明電極(例えばインジウムスズ酸化物/ITO)を使用するものである[S.T.Kowel、P.G.Kornreich、D.S.Cleverly、「Adaptive liquid crystal lens」、米国特許第4,572,616号、1986(1982年8月出願)]および[N.A.Riza、M.C.DeJuIe、「Three‐terminal adaptive nematic liquid‐crystal lens device」、Opt.Lett.19、pp.1013‐1015、1994]。しかし、そのような構造の製造はサブマイクロメートルの精度を必要とし、それらの電気駆動はかなり複雑な電子的マイクロプロセッサによる処理を必要とし、それらの動作は光回折および散乱によって低下する。
【非特許文献7】S.T.Kowel、P.G.Kornreich、D.S.Cleverly、「Adaptive liquid crystal lens
【非特許文献8】N.A.Riza、M.C.DeJuIe、「Three‐terminal adaptive nematic liquid‐crystal lens device」、Opt.Lett.19、pp.1013‐1015、1994
【特許文献2】米国特許第4,572,616号
【0009】
平面電極および湾曲電極の組合せは参考文献[「Liquid Crystal Lens with Spherical Electrode」、B.Wang、M.Ye、M.Honma、T.Nose、S.Sato、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41(2002)、pp.L1232‐L1233、Part 2、No.11A、1 November]に記載されており、それは標準(透明)電極および2つの平面状内面を有するLCセル(図1b、先行技術)の使用を可能にする。不均一な(中心対称な)電界は、上部電極(4)によって被覆された湾曲「外」面の幾何学的レンズ状の形状(31)のおかげで得られる。実際、平面LC(1)層は、2つのガラス基板(2)の間に挟まれる。平面ITO電極は1つの基板の底(平)面上に被覆される一方、第2電極は湾曲領域(31)の上に作製される。そのような構造は作製することが難しく、かつ零電圧レンズ特性(我々が「零電圧時の作動」と呼ぶもの)を有し、それは予期しない電圧障害が発生した場合に問題を引き起こすかもしれない。
【非特許文献9】「Liquid Crystal Lens with Spherical Electrode」、B.Wang、M.Ye、M.Honma、T.Nose、S.Sato、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41(2002)、pp.L1232‐L1233、Part 2、No.11A、1 November
【0010】
この零電圧レンズ効果は、湾曲したITO被覆面上に配置されかつ平坦な上面を有する追加ポリマ層を用いることによって除去することができる[H.Ren、Y.H.Fan、S.Gauza、S.T.Wu、「Tunable‐focus flat liquid crystal spherical lens」、Applied Phys.Lett.、V.84、No.23、pp.4789‐4791、(2004)]。この方法は、実際、零電圧レンズ効果を永久に「隠蔽」する(「零電圧時の無作動」をもたらす)ことを可能にするが、その作製は複雑かつ高コストのままである。
【非特許文献10】H.Ren、Y.H.Fan、S.Gauza、S.T.Wu、「Tunable‐focus flat liquid crystal spherical lens」、Applied Phys.Lett.、V.84、No.23、pp.4789‐4791、(2004)
【0011】
回折チューナブルレンズ(tunable lens)の作製のために、同様の解決策が参考文献[米国特許第6,859,333号:H.Ren、Y.‐H Fan、S.‐T.Wu、「Adaptive liquid crystal lenses」、2005年2月、出願2004年1月)]に記載されている。これは、少なくとも2つの平面基板および少なくとも1つの均質なネマチック液晶(NLC)層から構成される、適応光学レンズデバイスである。1つの平面基板は球状または円環状フレネル溝透明電極を内部に有し、他の基板は、内面を被覆された透明電極を有する。NLC層の厚さは均一である。LC層に電圧が印加されると、LC層内の屈折率の中心対称な傾斜分布が生じる。したがって、LC層は光を集束させる。印加される電圧を制御することにより、レンズの焦点距離は連続的にチューニング可能である。
【特許文献3】米国特許第6,859,333号
【0012】
LCセルの平坦な内面は作製がより容易であるが、「外側」表面の複雑な湾曲した形状およびこれらの表面上の電極の堆積は、そのようなレンズの作製を困難にする。
【0013】
複数の複雑な電極の使用を回避するために、様々な幾何学的解決策が提案されてきた。それらの1つは、2次元の幾何学的形状の電極の使用に基づく。例えば、孔パターン電極(hole patterned electrode)は参考文献[M.Ye、S.Sato、Jpn.J.Appl.Phys.、V.41、(2002)、L571;米国特許第6,768,536号:D.Okuwaki、S.Sato、「Liquid crystal microlens」、2004年7月、出願2002年11月)]、および参考文献[B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Liquid‐crystal lens with stacked structure of liquid‐crystal layers」、Optics Communications、250(2005)、pp.266‐273]で使用されている。この方法の基本的概念を図2a(先行技術)に示す。これはLC(1)が2つの基板(2)の間に挟まれたむしろ標準的なセルであり、基板の1つ(底側の基板)はITO(4)で被覆される。しかし、上部電極(41)に孔(5)がある。(4)と(41)との間の電圧を印加すると中心対称な電界(42)が発生し、それはLCダイレクタnを空間的に不均一に(中心対称に)再配向させる。これは次に、空間xに対応する形状を有するneff(V,x)を発生させる。この構造の主な欠点は、LC層における電界の希望する空間プロファイルを得、かつレンズの良好な光学品質を維持する(特に光学収差を回避する)ことができるために、非常に厚いLC層(大きいd)を使用する必要があることである。
【非特許文献11】M.Ye、S.Sato、Jpn.J.Appl.Phys.、V.41、(2002)、L571
【非特許文献12】B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Liquid‐crystal lens with stacked structure of liquid‐crystal layers」、Optics Communications、250(2005)、pp.266‐273
【特許文献4】米国特許第6,768,536号
【0014】
この方法の改善版([B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Liquid‐crystal lens with stacked structure of liquid‐crystal layers」、Optics Communications、250(2005)、pp.266‐273]、図2b(先行技術)を参照されたい)は複数の透明な基板(2)と、上部基板(40)の底面および下部基板(4)の上面に設けられた1対の均一な透明電極とを含む。これらの電極(4)の間に、円形の孔(5)を持つ中間電極(41)が導入される。受入れ可能なレンズ状屈折率勾配(低収差のため)およびディスクリネーションの無いLC再配向を得るために、孔パターン電極(41)と均一な電極4との間の距離は、500〜1300μm(直径が4〜5mmのレンズの場合)より大きくしなければならず、それは高電圧の必要性につながる。最初に高い固定補助Vo(およそ150V)および次いで制御電圧Vc(およそ175V)が(電極4と電極41および40それぞれとの間に)同時に印加されたときに、LCはレンズ状構造を生成する。次いで、特定の最適遅延T後に、制御電圧Vcは所望の値まで低下される)。要求される高電圧および複雑な動力学はこの方法の実用化をかなり困難にしている。同じ方法に基づく複雑な複数セル解決策は、製造コストおよび駆動の複雑さを増大している。
【非特許文献13】B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Liquid‐crystal lens with stacked structure of liquid‐crystal layers」、Optics Communications、250(2005)、pp.266‐273]
【0015】
いわゆる「モード制御」液晶レンズは、文献[A.F.Naumov、M.Yu.Loktev、I.R.Guralnik、G.Vdovin、「Liquid‐crystal adaptive lenses with modal control」、Opt.Lett.23、992‐994、1998;G.D.Love、A.F.Naumov、「Modal liquid crystal lenses」、Liq.Cryst.Today、10(1)、pp1‐4、2000;M.Yu.Loktev、V.N.Belopukhov、F.L.Vladimirov、G.V Vdovin、G.D.Love、A.F.Naumov、「Wave front control systems based on modal liquid crystal lenses」、Review of Scientific Instruments、V.71、No.9、pp.3290‐3297、(2000)]に掲載されている。前述の孔パターン電極とは対照的に、ここでは高抵抗環状電極(40)が使用される(図2c、先行技術)。底部基板の均一な電極(4)と上部基板の環状電極(40)との間に電圧が印加される。高抵抗電極(40)およびLC層(1)によって形成される複合インピーダンスのおかげで、セル全体のrms電圧(ならびに対応する制御電界(42)および(43))の分布は中心対称であるが、不均一である(中心は電極40の中心と一致する)。電界(42)および(43)はベッセル関数によって表され、電圧‐光学遅延特性依存性はほぼ逆対数関数である。この方法の問題は、高抵抗電極(40)による強い光吸収、光学収差(任意の大きさおよび位相の電圧がセルに印加されると、結果的に生じる位相分布が放物線からほど遠くなるため)、および電気的制御(電圧および周波数)の複雑さである。
【非特許文献14】A.F.Naumov、M.Yu.Loktev、I.R.Guralnik、G.Vdovin、「Liquid‐crystal adaptive lenses with modal control」、Opt.Lett.23、992‐994、1998
【非特許文献15】G.D.Love、A.F.Naumov、「Modal liquid crystal lenses」、Liq.Cryst.Today、10(1)、pp1‐4、2000
【非特許文献16】M.Yu.Loktev、V.N.Belopukhov、F.L.Vladimirov、G.V Vdovin、G.D.Love、A.F.Naumov、「Wave front control systems based on modal liquid crystal lenses」、Review of Scientific Instruments、V.71、No.9、pp.3290‐3297、(2000)
【0016】
前述の全ての例(そこでは、湾曲もしくは孔パターン電極の幾何学的形状を使用することによって、またはインピーダンス誘起傾斜を介して、不均一な電界が得られる)とは対照的に、低周波数(例えば1kHz)の電界における材料の誘電率εDC(ここでは駆動電界を表わすために「DC」と呼ぶ)の傾斜を使用する、洗練された解決策が提案された。すなわち、駆動電界の所望の傾斜を発生させるために、2つの制御電極(4)の間に中間層(3)が挿入される[B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Lens of electrically controllable focal length made by a glass lens and liquid crystal layers」、Applied Optics、V.43、No.17、pp.3420‐3425、2004]図3(先行技術))。実際、中間層(3)はガラス(ε(g)DCを持つ)で構成され、空間的に不均一な厚さを有する。中間空間の残りの部分(7)にはε(a)DC≒1の空気が充填される。(電極4を通して)低周波電圧を印加すると、中間媒体の誘電率の不均一性(ε(g)DC>ε(a)DC)のため、LCセルの内部に空間的に不均一な電界が発生する。かくして、セルの中心部の電界43は境界付近の電界42とは異なる(より弱い)。図3(先行技術)の特定の事例では、効果を増強するために2つのLCセルが使用される。この方法の利点は、適切な形状の中間材料(例えばレンズ)を使用することによって、所望の空間形状(傾斜)が得られることである。
【非特許文献17】B.Wang、M.Ye、S.Sato、「Lens of electrically controllable focal length made by a glass lens and liquid crystal layers」、Applied Optics、V.43、No.17、pp.3420‐3425、2004
【0017】
しかし、3つの主要な問題は、この方法でも依然として解決されないままである。それらの1つは、内在する零電圧レンズ効果(「零電圧時の作動」)である。第2の問題は、(光周波数では、屈折率がガラス(ng≒1.5)および空気(na≒1)で全く異なるので)、複数のガラス‐空気表面でのフレネル反射によるこの形状の高い光学的損失を回避するために、複数の反射防止コーティングを持つ必要性に関係する。最後に、電界(およびしたがってneff(V,x))の達成可能なコントラストは、ε(g)DC(ガラスの種類によって3.8から14.5まで変動することができる)とε(a)DC≒1(実際には、高n材料のレンズを使用することができるが、それは著しいフレネル損失を発生する)と間の達成可能な最大コントラストのため、厳しく制限される。
【0018】
したがって、低損失、効率的、かつ電気的にチューニング可能な集束光学デバイスは依然として非常に望ましい。
【発明の開示】
【0019】
したがって、本発明の目的は、均一な電極および平面(標準)LCセルを使用して空間的に不均一な電界を形成するための方法および装置、ならびに液晶(LC)を用いて屈折および回折光学要素の集束特性の電気光学的チューニングを発生させるためのその使用を提供することであり、デバイスは低損失を有し、かつ構成および/または製造が簡単である。一部の実施形態では、効率的な制御を有し、かつ「零電圧の無作動」を可能にする、そのようなデバイスを作製するための方法および装置を提供する。
【0020】
本発明の第1態様では、一見して非論理的に見えるアーキテクチャを提案する。我々の提案の非自明性を示すために、単なる実施例として前述の幾何学的形状を使用する(図4)。
【0021】
(LCセルと中間ガラス3との間の)残部空間に特定の材料(71)を充填することを提案する(かつ我々の提案を実験で実現する(後述参照))。そのような材料の例として、低周波誘電率ε(s)DCおよび高(光学)周波屈折率nSを持つ水性溶液がある。特定の双極性分子特性のため、水は大きいε(s)DC(およそ78)を有する一方で、かなり低いnS(およそ1.33)を有することが当業界で周知である。かくして、n(3)=nSを有する中間材料(3)を使用することによって、「零電圧時の無作動」特性を提供することもできる。そのような材料の例として、適切な形状および大きさの(一般的に非常に低nPを有する)フッ素化ポリマが挙げられる(後述参照)。かくして、光周波数で、「零電圧時の無作動」をもたらす平面均一性が得られる。加えて、追加的なフレネル反射および光学的損失は生じない。他方、(制御に使用される)低周波電界では、誘電率の極めて大きいコントラストが存在する
【0022】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面に関連して掲げる、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【好適な実施形態の詳細な説明】
【0023】
本発明は、均一な電極によって空間的に不均一な電界を発生する方法、および光の伝搬を制御するためにこの方法を使用するデバイスを提供する。本発明のデバイスは、チューニング可能な集束、回折、ステアリング等に使用することができる。
【0024】
簡潔を期すために、以下の説明は単純な屈折および回折構造に重点を置くが、他の型の構造、および要素のより複雑な組合せも同等に使用することができる。同様に、静的または電気光学的材料を使用する実施形態を説明するが、同じ目標を達成するために、代わりに他の材料を使用することができることを理解されたい。目標とは、低損失高効率の動作であり、一部の実施形態では「零電圧時の無作動」特性である。
【0025】
図1aを参照すると、LC(1)が透明電極(4)を持つ2つのガラス基板(2)の間に挟まれて成る、先行技術のレンズが示されている。不均一なプロファイルの要素(3)は、デバイスの屈折率の空間的に均一な変調を得るために、LC層内に浸漬される。そのようなチューナブルレンズを作成しかつ制御することは非常に難しいと思われる。
【0026】
図1bを参照すると、LC(1)が透明電極(4)を持つ2つのガラス基板(2)の間に挟まれて成る、先行技術のレンズが示されている。ここでは、前の事例とは対照的に、均一なLC層が使用される。しかし、上部基板の上に不均一なプロファイルの要素(31)が使用され、それは湾曲表面(31)上に堆積された透明電極(4)によって被覆される。これは、デバイスの屈折率の空間的に均一な変調を得ることを可能にする。しかし、そのようなチューナブルレンズを作成しかつ制御することは非常に難しいと思われ、加えて、そのような装置は「零電圧時の作動」が不可避である。
【0027】
図2aを参照すると、均一なLC層(1)が距離dだけ離れた2つのガラス基板(2)の間に挟まれて成る、先行技術のレンズが示されている。デバイスを駆動するために、2つの透明電極が使用される。底部電極(4)は均一であるが、頂部電極(41)は直径(5)の真ん中に孔を有する。均一な電極と不均一な電極との組合せは、セルの境界(42)と中心部(43)とで異なる、空間的に不均一な電界を発生させる。これにより、対応する空間的に不均一なダイレクタ再配向および光の集束が発生する。しかし、強い収差を回避するために、非常に厚いLC層を使用しなければならず、それは駆動電圧およびスイッチング時間(数十秒)を著しく増大させる。
【0028】
図2bを参照すると、厚いLC層の使用を回避するように前の方法(図2a)を改変した、先行技術のレンズが示されている。孔パターン電極(41)の上に追加の均一な電極(40)が使用される。これらの電極は、追加中間ガラス層(2)によって相互に分離される。また、厚さ(6)の追加ガラス層が、孔パターン電極(41)と、LC層にて要求される電界形状を提供するLC層(1)との間に導入される。しかし、強いディスクリネーションを回避するために、非常に複雑な動的励起が使用される(最初に電極(4)と(41)との間に電圧が印加され、次いで電極(4)と(40)との間に別の電圧が加えられる。これにより制御回路が非常に複雑になり、かつ非常に高い電圧(150〜170V)が必要になる。
【0029】
図2cを参照すると、LC(1)が透明電極(4)および(40)を持つ2つのガラス基板(2)の間に挟まれて成る、先行技術レンズが示されている。この方法の特殊性は、(前の事例で使用された孔パターン電極とは対照的に)直径(5)の頂部電極(40)の円形の形状である。また、電極(40)の高抵抗材料およびパラメータは、(LC層(1)と組み合わせて)LC(1)の層内の電界を強力に減衰させ、かつ周辺(42)および中心(43)の電界の間に強力な差異を導入させる、強力な電気インピーダンスがもたらされるように選択される。これは空間的に不均一なLC再配向、および光の収束を発生させる。そのようなデバイスの制御(周波数および振幅)は非常に難しく、かつ頂部の高抵抗電極のため、光学的損失は非常に高い。
【0030】
図3を参照すると、均一なLC層(1)ならびに頂部および底部基板(2)上に堆積された均一な電極(4)を使用した、チューナブルレンズが提示される、先行技術のレンズが示されている。中間のレンズ状構造(3)および空気を含む自由空間(7)があり、それは中間基板(2)によってLC層(1)から分離されている。均一な電極(4)間に電圧を印加すると、デバイスの周辺(42)および中心部(43)で異なる電界が発生し、かくして不均一なダイレクタ再配向および光集束が発生する。
【0031】
この方法には幾つかの欠点がある。最初に、印加電圧の予期しない障害が発生した場合のレンズ効果(「零電圧時の作動」)がある。これは、LC層(1)に不均一な電界を発生するために必要とされる、ガラスレンズ(3)と空気(7)との間の不可避のコントラストに関係している。
【0032】
この方法の第2の欠点は、フレネル反射損失である。このため、層(3)の頂面および中間基板(2)の低面に反射防止コーティングを使用することが必要になるが、それは生産コストを増大させる。
【0033】
この方法の第3の欠点は、電界の限定された空間変調である。これは、ガラス/空気誘電率比がかなり限定されているためである(一般的にε(g)DC/ε(a)DC<8)。かくして、電界の強力な空間変調を得るために、ガラス(3)のプロファイルを強く湾曲させなければならず、それは第1の問題をさらにいっそう悪化させる。
【0034】
一部の実施形態では、上記の3つの欠点の無いデバイスを得ることを可能にする材料の組合せを提案する。成功するために、我々は、電界vの周波数に対する材料の誘電率εの依存性という基本的特性を使用する。
【0035】
最初に、前の先行技術のレンズの動作、およびこの方法の欠点の原因について解析しよう。そこで不均一な電界が得られるのは、低周波電界(v≒0.5〜100kHz、添え字「DC」で表わされる)におけるガラスおよび空気の誘電率の差異のおかげである(ε(g)DC)≠ε(a)DC)。前の方法の第3の欠点は、実際には(低駆動周波数時の)比較的低い比ε(g)DC/ε(a)DCである。同時に、前の方法の第1および第2の欠点は、高い(光)周波数におけるガラスおよび空気の電気感受率(単純にε(g)opt)およびε(a)optと表わされる)が異なるという事実に由来する。
【0036】
しかし、依存性ε(v)は、材料の特徴(誘電体、半導体、金属)およびその幾何学的形状によって異なる形を取ることがある。かくして、我々は、上述した3つの欠点を全部解消する材料(3)および(7)の組合せを見つけることを提案する。
【0037】
かくして、本発明の第1実施形態では、図4Aに示すように、光学的に均一であるが、LC配向を駆動するために使用される低周波電界に対しては非常に不均一である、隠蔽構造を提案する(かつ、実験で我々の提案を実現する(後述参照))。実際、材料3および71は特に、種々の電位の2つの均一な電極4間(図4A)に挿入されたときに強力な集束が可能になるが、電圧無しでは集束特性を持たないように選択される。図4Aの隠蔽構造を使用する効果は、残部空気空間(図4AのLCセルと中間ガラス(3)との間)に特定の材料(71)を充填することである。そのような材料の例として、特定低周波数誘電率ε(s)DCおよび高(光)周波数誘電率ε(s)optを持つ水性溶液が挙げられる(この材料の光屈折率nSはnS=[ε(s)opt]0.5と定義されることを思い出そう)。非常に独特の双極性分子特性のため、水は非常に大きいε(s)DC(およそ78)を有する一方、非常に低いnS(およそ1.3)を有する。
【0038】
かくして、(ε(s)DC≒78およびnS≒1.3の)水性溶液と非常に低い光屈折率n(3)およびε(3)DCを有する中間材料(3)との組合せを(要素(71)として)使用することによって、我々は3つの問題を全部解決することができる。そのような材料の例として、フッ素化ポリマ(一般的に非常に低い値のnpol≒1.3およびε(3)DC≒3を有する)が挙げられる。かくして、構造(3)は光波(npol≒nS)に対して「隠蔽」されるので、光周波数で平面均一性および零電圧時の無レンズ効果がもたらされる。加えて、追加的なフレネル反射および光学的損失は生じない(npol≒nS)。一方、(前の事例のε(g)DC−ε(e)DC≒75とは対照的に)低周波電界では誘電率の極めて大きいコントラスト(ε(s)DC−ε(pol)DC≒75)が生じる。このコントラストは、必要なときにだけ光波を集束させるために必要な、空間的に不均一な電界およびLCダイレクタの再配向の発生を容易にする。
【0039】
水は高い低周波誘電率を生じる液体の1例にすぎないことは、理解されるであろう。極性液体およびゲルは一般的に高い誘電値を有する。グリセロールは、可視スペクトルで透明であり、かつ広い温度範囲にわたって液体であり続ける一方、望ましい屈折率値を有するので、望ましいことが明らかになった。
【0040】
一部の実施形態では、零電圧時のレンズ効果は望ましく、かつnpol≠nSである。例えば、結像光学系の一部である固定レンズは、(3)および(71)の組合せによって提供することができる。そのような場合、構造(3)を中間ガラス層(2)に組み込むことも可能であるかもしれない。
【0041】
一部の実施形態では、電界変調層(3、71)の設計によって、電界の強度および向きを適切に変調させることができる。図4Bは、複雑な非球形の隠蔽層を示す。図4Cでは、可変焦点液晶レンズは、71の低い誘電率および3の高い誘電率のため、電界線をレンズの中心方向に向ける、コアレンズ構造および周囲の液体を持つ電界変調層を有する。一方、図4Dでは、可変焦点液晶レンズは、71の低い誘電率および3の高い誘電率のため、電界線をレンズの中心から遠ざかる方向に向ける、コアレンズ構造および周囲の液体を持つ電界変調層を有する。71の誘電率が3の誘電率よりずっと大きければ、図4Cの場合と全く同様に、図4Dの実施形態における誘電体の全体的なプロファイルが改善されることは理解されるであろう。
【0042】
図5を参照すると、上記方法に従って、水を材料(71)として使用し、かつフッ素化ポリマまたは他の種類の材料とすることのできるポリマであって、液体の屈折率と適合すると共に低周波誘電率の強力な差異を有するポリマを要素(3)として使用して、作製されたそのようなチューナブルレンズの具体的な実施例が示されている。
【0043】
図5の平面構造は、多くの理由から有利である。液晶を含みかつ液晶層を形成する平坦な透明板は、当業界で公知の通り、液晶を受容するように作製するのが簡単である。液晶は電界に応答し、電極間の距離が小さいほど電界は大きいので、平坦な形状は構造を小型に維持するのに有用である。一部の実施形態では、透明板の1つを、隣接する電界変調層の構成要素と一体化することができる。
【0044】
「隠蔽構造」、すなわち光学デバイスの像形成部分内で基本的に空間的に均一な光屈折率を提供する電界変調層(3、71)を有することは、多くの場合に望ましいが、電界変調層が光の伝搬を、例えばレンズシステムの集束力をある程度静的に制御することも有利であり得る。これらの場合、一緒に電界変調層を形成する2つの材料の間に屈折率の差があるかもしれず、もしくは光学システムに組み込まれる光学特性または効果を有する単一の材料があるかもしれない。
【0045】
極性液体またはゲルである単一材料の場合、液体またはゲルは光学エンベロープ内に包封される。例えばグリセロールのブリスタは、所望の形状の電界を提供することができ、画像の形成に対するその光学的な効果はレンズシステム全体に補償/統合することができ、すなわち他のレンズ構成要素がブリスタの光学的結像効果を補完して、像平面に正しい像を提供することができる。
【0046】
また、電界を変調するために利用することのできる他の型の固体材料も存在する。灰チタン石(チタン酸バリウムストロンチウム)、(Ba,Sr)TiO3もしくはCaCu3Ti4O12もしくは(Li,Ti)ドープトNiOに基づく材料、またはCa1-xLaxMn3(x<=0.03)またはポリマ−セラミックナノ複合材料の薄膜等のような、103から106の低周波誘電率値を有する種々の高誘電率のセラミック材が公知である。そのような材料は、固体物体として単独で、または所望の高誘電率材料を達成するために、透明なプラスチック、ゲル、または液体への添加剤として使用することができる。単独で使用する場合、電界の有意の変調を達成するために必要な厚さは最小限であり、したがって集束(または収差)効果は最小限または無視できるほど小さくすることができる。
【0047】
図6Aは、上述のレンズを使用することによって得られた実験データを示す。チューナブルレンズは、垂直および水平方向にそれぞれ向けられた交差した偏光子とアナライザとの間に、(ダイレクタが45度に向けられた状態で)配置される。均一な電圧を印加すると、LC層に空間的に不均一な電界が形成され、かくして対応するダイレクタ再配向が発生する。この再配向は、(図6Aに「水無し」の破線曲線として表わされた)レンズの中心部の再配向、および次いで(図6Aで「水有り」実線として表わされた)周辺部の再配向を試験する、(小径の)プローブビームによって検出される。見て分かる通り、LCの再配向は空間的に非常に不均一である。
【0048】
図6Bは、液晶の配向に対する電界の変動の効果、および可変焦点レンズの場合の光パワーに対して結果的に生じる効果を示す。見て分かる通り、電圧が零から上昇するにつれて、電界はレンズの像形成部分で、空間的に多様な向きの変化を生じる。しかし、特定の電圧時に、レンズの中心部分で液晶の配向の完全な変化が達成され、電圧がさらに上昇しても飽和を生じるだけとなり、電圧が上昇し続けると、像形成部分全体が向きの完全な変化を達成し、したがって屈折率の値が同一になるので、レンズは最終的に失われる。電圧の関数としてプロットされた光パワーを、図6Cにグラフで示す。
【0049】
得られたLC再配向の円対称特性を図7に示す。ここに、印加電圧に対する円環構造の依存関係が提示される。各円環は、LC層内を伝搬する定常波「o」と異常波「e」との間の2π差動位相偏移に対応する。かくして、電圧による円環の展開は、LC層の異常屈折率neの実効空間湾曲の展開を示す
【0050】
図8は、像平面の電気的にチューニング可能なずれを示す。光学システムは平行白色光、固定レンズ、および図5のチューナブルレンズから構成される。
【0051】
本発明の別の実施形態で、図9を参照すると、本発明で提案した基本原理を使用したチューナブル回折構造が概略的に示されており、それは、特定の形状を持つ1つの材料(3)および第1の材料を包囲するもう1つの材料(71)の2つの材料システムの組合せから構成される。本例の場合、要素3は空間周期的な形状を有する。それは平面周期的または円周期的な形状とすることができ、例えばスイッチング可能なフレネルレンズ動作がもたらす。均一な電圧を均一な電極(4)の対に印加すると、LC層(1)に周期的に変調する電界が発生する。これは周期的に変調するダイレクタ再配向および回折構造の形成を生じる。
【0052】
本発明の1実施形態では、回折構造は、対称な正弦曲線状、方形、または三角形の断面のみならず、非対称な回折パターンを提供するために非対称な(例えば「ブレーズド」格子のような傾斜した非対称な)断面を持つこともできる。
【0053】
本発明の別の実施形態で、図10を参照すると、中間構造(3)は、線形的または非線形的に変化する厚さ(例えばくさび)のような、空間的に不均一な非対称であるが非周期的な形状を持つことができる。この場合、均一な電圧を電極(4)に印加すると、(構造(3)の形状によって影響される)空間的に不均一な電界が発生し、それは対応する空間内の屈折率の変化を生じる。これにより、電気的に可変の光伝搬がもたらされる。くさび形構造の場合、電圧を印加すると、LC層(1)の空間的に変化する屈折率変調が生じ、それによりチューニング可能なくさびおよび対応するチューナブルビーム偏向(ステアリング)を得ることが可能になる。このようにして、ビーム(8)は印加電圧に応じてビーム(81)内に偏向する。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態で、図11を参照すると、2つの要素(3)+(71)の組合せと同じ原理を使用して、偏光独立デバイスを得ることもできる。かくして、第1のLC層(1)に加えて、別のLC層(11)を使用し、これらの層のダイレクタが交差する(例えば層(1)のダイレクタが図の面内に存在する一方、層(11)のダイレクタが該面に垂直である)ように構成することができる。組み合わされた構造は、これらの2つの層(1)および(11)の間に挿入される。製造中に、それは、各々1つの電極、例えば上部セルの頂部基板の底面に堆積された1つだけの電極(4)、および下部セルの底部基板の頂面に堆積された別の電極(41)しか持たない、2つのLCセルの間に単純に挟みこむことができる。構造(3)の形状(概略的に(51)で提示される)は、空間的に不均一、対称、周期的などの形状とすることができる。このようにして、電極(4)および(41)の間に電圧を印加すると、上部および下部LCセルの両方に、(形状(51)によって影響される)空間的に不均一な電界が発生する。これは次に、ダイレクタ再配向および対応する両交差方向の屈折率変化を生じ、かくして両方の光学偏光に影響を及ぼす。
【0055】
上述の全ての場合に、要素(3)および(71)の材料組成は、高(光)周波数の波に対して空間的に均一な組合せ構造(3)+(71)が得られるように選択することができる。かくして構造(3)は、この場合、「隠蔽」される。明らかに、デバイスの残部(ガラス基板(2)、LC層(1)、および電極(4))も、横方向に均一となるように選択することができる。この場合、デバイス全体が、光の偏向または集束無く、空間的に(横方向に、かつ必要な場合には縦方向にも)均一なデバイスとして作動する(「零電圧時の無作動」)。
【0056】
同時に、一部の特定の用途では、材料の組合せおよび形状の選択は、零電圧の場合に特定の光学機能(レンズ効果、回折、偏向等)が得られるように行なうことができ(「零電圧時の作動」)、次いで電圧を印加することによってそれを変化させることができる。
【0057】
図12は、ビームステアリングおよび可変焦点の両方を実行するレンズシステムの主要な要素を概略的に示す。レンズ10は可変焦点レンズであり、レンズ12は屈折可変ステアリング光学デバイスであり、レンズ14は、1回に固定角度ずつステアリングを変化させる回折ステアリングデバイスである(それはアクティブまたは非アクティブである)。フルパン、チルト、およびズーム(PTZ)カメラレンズシステムは、希望する様々な方向およびレンジが得られるように、そのようなチューナブル光学デバイスを組み合わせることによって達成することができることは理解されるであろう。回折デバイスは、光パワーまたはステアリング角度の有意の変化を提供することができる一方、屈折デバイスは可変的にチューニング可能である。LC層間の透明板および/または電極を共用することによって、レンズシステム全体の厚さを低減することができる。
【0058】
図13は、携帯またはセルラ電話機の小型カメラおよびレンズ組立体15の分解図を示す。チューナブルLCレンズ10は固定レンズ光学システム組立体に組み込まれる。図14は携帯電話機内の組立体15を示す。
【0059】
提示したデバイスの電気的制御機構についてのみ詳細に説明した。しかし、デバイスを駆動し、またはその特性を変化させるために、同じ原理を他の励起機構(磁気、熱等)にも使用することができる。例えば、本発明のさらに別の実施形態では、(セル電極または追加手段によって発生する)熱を使用して、組合せ構造(3)+(71)の材料特性を変化させ、零電圧時にそれを「隠蔽」または「顕現」させることができる。例えば、2つの材料(3)および(71)の屈折率温度変化係数dn/dTは、所与の温度T0でそれらの屈折率がn3=n71となるように選択されるが、条件dn3/dT=dn71/dTが満たされない限り、他の温度に対してはそれが当てはまらない。かくして、材料を適切に選択することにより、単に加熱するだけで隠蔽条件を制御することができる。これにより、追加的レンズ効果の形成、および例えばレンズ全体の収差の制御が可能になる。
【0060】
光波に対する「隠蔽」状態を提供し、かつ低周波電界に対して非常に強い誘電率コントラストを提供することのできる、要素(3)および(71)の組合せを主要な要素として有し、本発明で請求する同じデバイスを作製するために、種々の材料組成、種々のLC層、種々の電極、種々のダイレクタアラインメント、種々の形状等を使用することができることを読者は理解されるであろう。
【0061】
また、上述したデバイスの1つまたはそれ以上の組合せを使用して、種々の光学デバイスを開発することができることも、読者は理解されるであろう。
【0062】
上述した本発明の実施形態は、単なる例証として意図されたものである。したがって本発明の範囲は、付属の特許請求の範囲のみによって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1a】図1aは、不均一なLC層を使用する先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図1b】図1bは、零電圧レンズ効果を持つ不均一な外部基板を設けた、均一なLC層を使用する先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図2a】図2aは、均一なLC層および均一な基板を使用するが、不均一な孔パターンを持つ2つの制御電極を使用する、先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図2b】図2bは、均一なLC層および均一な基板を使用するが、不均一な孔パターンを持つ3つの制御電極を使用する、先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図2c】図2cは、均一なLC層および均一な基板を使用するが、不均一な孔パターンを持つ円形制御電極をも使用する、先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す。
【図3】図3は、均一なLC層および均一な電極を使用するが、(電極間に)不均一な中間物体を使用して低周波誘電率の傾斜を形成する、先行技術のチューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図4A】図4Aは、空間的に不均一な電界の発生を可能にする隠蔽された構造(a)の主要な要素、および高効率の「零電圧時の無作動」および低損失動作を可能にする均一なLC層および均一な電極を使用するチューナブルレンズ(b)を概略的に示す図である。
【図4B】図4Bは、複雑な非球面形状の隠蔽層を示す図である。
【図4C】図4Cは、レンズの中心に向かう方向の電界線の向きを導く、コアレンズ構造および周囲の液体を持つ電界変調層を有する可変焦点液晶レンズを示す図である。
【図4D】図4Dは、レンズの中心から遠ざかる方向の電界線の向きを導く、コアレンズ構造および周囲の液体を持つ電界変調層を有する可変焦点液晶レンズを示す図である。
【図5】図5は、図4に示したチューナブルレンズを実証するために作製された実験サンプルの主要な要素を示す図である。
【図6A】図6Aは、図5のサンプルを使用して実験的に得られた分子再配向の空間的に不均一な遅延を示す図である。
【図6B】図6Bは、光パワーの対応する変化を導く、電圧の関数としての液晶配向の変化を概略的に示す図である。
【図6C】図6Cは、図6Bの情報をグラフで表わした、電圧の関数としてのチューナブルレンズの光パワーのプロットを示すグラフである。
【図7】図7は、図5のサンプルを0V、17.4V、および67Vの3つの選択電圧で使用して、実験的に得られた空間的に不均一な位相遅延リングの顕微鏡写真である。
【図8】図8は、図5のサンプルを用いて実験的に得られた像平面のずれの写真である。
【図9】図9は、均一なLC層および均一な電極を使用するが、回折中間物体をも使用するチューナブル回折レンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図10】図10は、均一なLC層および均一な電極を使用するが、不均一な中間物体をも使用するチューナブルビームステアリングデバイスの主要な要素を概略的に示す図である。
【図11】図11は、2つの均一なLC層と、均一な電極の間に配置された不均一な中間要素とを使用する、偏光不感受性チューナブルレンズの主要な要素を概略的に示す図である。
【図12】図12は、ビームステアリングおよび可変焦点の両方を実行するレンズシステムの主要な要素を概略的に示す図である。
【図13】図13は、回路基板上のカメラシステムのCCDまたはCMOS撮像チップの実装が、液晶レンズ、他の固定レンズ、および外部筐体と共に示される、本発明の1実施形態に係る可変焦点液晶レンズを組み込んだ携帯電話機の断面図である。
【図14】図14は、図13に係るチューナブル液晶レンズを含む携帯電話機を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、
前記液晶層に作用する電界を発生するように配置された電極と、
光学デバイスを通過する光の伝搬を制御するように、前記電界を空間変調するために、前記電極の間に、前記液晶層に隣接して配置された電界変調層と、を備える、光の伝搬を制御するための可変光学デバイスであって、
前記電界変調層が、
基本的に空間的に均一な光屈折率、
極性液体またはゲル、
20より大きく、好ましくは1000より大きい誘電率を有する、非常に高い低周波誘電率の材料、の1つを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記変調層が、前記電界の所望の変調をもたらすように選択された形状で第1の低周波誘電率を有する固体物体と、前記固体物体の周囲のまたはそれに隣接する第2の低周波誘電率材料を備え、前記固体物体および前記第2の材料が層形状を成すようにした、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記電界変調層が基本的に空間的に均一な光屈折率を備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の材料が極性液体またはゲルである、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記極性液体またはゲルがグリセロールである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記液晶層が、液晶を包含する2つの透明板を持つ平面形状を有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記電界変調層が、前記平板の1つと一体化された少なくとも1つの構成要素を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記液晶層がその屈折率を前記電界の関数として変化させる、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記デバイスがアクティブ状態と非アクティブ状態との間で制御可能な回折光学デバイスとなるように、前記電界変調層が前記電界の周期的段階空間変調をもたらす、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスが種々にチューニング可能な屈折光学デバイスとなるように、前記電界変調層が前記電界の周期的な空間可変変調をもたらす、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイスが可変焦点レンズである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスがビームステアリングデバイスである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが可変焦点レンズ兼ビームステアリングデバイスである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
光の伝搬の制御が最小限の偏光依存性を持つように、前記デバイスが、異なる偏光を有する少なくとも2つの前記液晶層を備える、請求項1ないし13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記電界変調層が固定された低周波誘電率空間分布を有し、前記電極に印加される電圧を変調することによって、前記電界が変調される、請求項1ないし14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
結像レンズを含むカメラを有する携帯電話機であって、前記結像レンズが請求項1ないし15のいずれか一項に記載の可変光学デバイスを含むことを特徴とする携帯電話機。
【請求項1】
液晶層と、
前記液晶層に作用する電界を発生するように配置された電極と、
光学デバイスを通過する光の伝搬を制御するように、前記電界を空間変調するために、前記電極の間に、前記液晶層に隣接して配置された電界変調層と、を備える、光の伝搬を制御するための可変光学デバイスであって、
前記電界変調層が、
基本的に空間的に均一な光屈折率、
極性液体またはゲル、
20より大きく、好ましくは1000より大きい誘電率を有する、非常に高い低周波誘電率の材料、の1つを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記変調層が、前記電界の所望の変調をもたらすように選択された形状で第1の低周波誘電率を有する固体物体と、前記固体物体の周囲のまたはそれに隣接する第2の低周波誘電率材料を備え、前記固体物体および前記第2の材料が層形状を成すようにした、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記電界変調層が基本的に空間的に均一な光屈折率を備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の材料が極性液体またはゲルである、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記極性液体またはゲルがグリセロールである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記液晶層が、液晶を包含する2つの透明板を持つ平面形状を有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記電界変調層が、前記平板の1つと一体化された少なくとも1つの構成要素を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記液晶層がその屈折率を前記電界の関数として変化させる、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記デバイスがアクティブ状態と非アクティブ状態との間で制御可能な回折光学デバイスとなるように、前記電界変調層が前記電界の周期的段階空間変調をもたらす、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスが種々にチューニング可能な屈折光学デバイスとなるように、前記電界変調層が前記電界の周期的な空間可変変調をもたらす、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイスが可変焦点レンズである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスがビームステアリングデバイスである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが可変焦点レンズ兼ビームステアリングデバイスである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
光の伝搬の制御が最小限の偏光依存性を持つように、前記デバイスが、異なる偏光を有する少なくとも2つの前記液晶層を備える、請求項1ないし13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記電界変調層が固定された低周波誘電率空間分布を有し、前記電極に印加される電圧を変調することによって、前記電界が変調される、請求項1ないし14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
結像レンズを含むカメラを有する携帯電話機であって、前記結像レンズが請求項1ないし15のいずれか一項に記載の可変光学デバイスを含むことを特徴とする携帯電話機。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−528558(P2009−528558A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556625(P2008−556625)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000335
【国際公開番号】WO2007/098602
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508263969)ユニヴェルシテ ラヴァル (1)
【氏名又は名称原語表記】Universite Laval
【住所又は居所原語表記】Pavillon des Sciences de l’Education, 2323 rue des Biblioteques, Local 1434, Quebec, Quebec G1V 0A6, CANADA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000335
【国際公開番号】WO2007/098602
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508263969)ユニヴェルシテ ラヴァル (1)
【氏名又は名称原語表記】Universite Laval
【住所又は居所原語表記】Pavillon des Sciences de l’Education, 2323 rue des Biblioteques, Local 1434, Quebec, Quebec G1V 0A6, CANADA
【Fターム(参考)】
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