説明

液晶シール剤、それを用いた液晶表示装置および該装置の製造方法

樹脂成分として、下記式(1)
【化1】


(式中nは平均重合度を表し、0〜5の正数である。)で表されるエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および無機充填剤を含有する液晶シール剤は、液晶表示装置製造の際の液晶シール剤として、スクリーン印刷性が優れ、かつ、製造された液晶表示装置の耐湿信頼性が優れたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶シール剤、それを用いた液晶表示装置および該装置の製造方法に関する。更に詳細には、液晶表示装置製造の際の液晶シール剤のスクリーン印刷性が優れ、かつ、製造された液晶表示装置の耐湿信頼性が優れた、液晶表示装置のための熱硬化型の液晶シール剤、それを用いた液晶表示装置および該装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を作成するに当たっては、熱硬化型液晶シール剤を使用する場合、液晶シール剤をディスペンサー、或いはスクリーン印刷等の方法より基板に塗布後、通常、加熱してプリキュア(溶剤を揮発)した後に、上下基板をアライメントマークを用いて高精度に貼り合わせて、シール剤を熱プレスするというプロセスで上下基板の貼り合わせを行っている。
【0003】
近年、液晶表示装置製造に関して、より量産性を高めるため基板が大型化し、タクトタイム(1工程あたりの時間)が短くなってきている。プリキュア工程後のカラーフィルター基板とアレイ基板の上下ガラス基板貼り合わせ時の上下基板の位置合わせ工程に関しても高速・高精度化が求められている。基板が大型化していくにつれて特に携帯電話用液晶パネル用等の面取りの場合、液晶シール剤の塗布面積が多くなり、位置合わせ時に大きなトルクを必要とし、タクトタイムも長くなる傾向にあり問題となっている。
【0004】
また、液晶表示装置製造において、カラーフィルター基板とアレイ基板の上下ガラス基板の貼り合わせ、位置合わせ、及びプリキュア工程後、貼り合せた上下基板を液晶シール剤が未硬化のままの状態で次の加工プロセスに搬送する工程がある。その搬送方式がいわゆる真空チャック方式と呼ばれ貼り合せた上下基板の上基板を真空チャックして持ち上げて搬送する方式の場合に液晶シール剤のタック性が劣ることにより貼り合わせた上下基板にずれが生じたり、剥がれたりする問題が発生する場合がある。近年の基板大型化に伴い基板が重くなっていくにつれてこの問題は顕著になってきている。
【0005】
さらに近年、液晶表示装置の高精細化、液晶組成物の応答速度の高速化、パネルの狭額縁化に伴い、接着性、耐湿信頼性を備えた液晶シール剤が求められている。耐湿信頼性に優れた液晶シール剤でないと、液晶シール剤から空気中に含まれる水分が浸入して液晶表示装置内の液晶組成物を汚染し、表示不良が発生したりするためである。
【0006】
接着性、耐湿信頼性に優れた液晶シール剤は、例えば特許文献1に記載されている。しかし特許文献1に示されるような液晶シール剤はプリキュア後の粘度が高いため、基板貼り合わせ後の位置合わせ作業性が不十分であったり、プリキュア後のタック性が劣るため、真空チャック型の搬送方式において上下基板のずれが発生する可能性がある。
このように、接着性や耐湿信頼性に優れ、貼り合わせ時の位置合わせ作業性が高く、真空チャック型搬送方式において基板にずれが生じたり、剥がれが発生しない液晶シール剤の開発が強く望まれている。
【特許文献1】特開平11−15005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スクリーン印刷及びディスペンス塗布に対応し、液晶表示装置製造時の上下基板貼り合わせ時の位置合わせ工程が短時間で可能であり、且つ未硬化の液晶シール剤で貼り合わされた上下基板を真空チャック方式で上基板を真空チャックして持ち上げて搬送した時に上下基板に剥がれが発生せず、また液晶汚染性、耐水耐湿性に対して非常に強い熱硬化型液晶シール剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させたものである。
即ち本発明は、式(1)
【0009】
【化1】


(式中nは平均重合度を表し、0〜5の正数である。)で表されるエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤を含有することを特徴とする液晶シール剤に関する。
また、本発明は、上記の液晶シール剤でシールされた液晶表示装置に関する。
更に、本発明は、カラーフィルター層を設けた基板と、電極層上に液晶配向層を具備した基板とに挟持され、液晶シールにて保持された液晶材を有する液晶表示装置の製造方法において、一方の基板に上記の液晶シール剤をスクリーン印刷により塗布する工程と、他方の基板を熱圧着する工程と、両基板間に液晶材を注入する工程を含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶シール剤で用いられる前記式(1)のエポキシ樹脂は、従来のエポキシ樹脂のガラス転移温度を維持しつつも、低粘度であるという特徴を有している為、これを用いた液晶シール剤は、溶剤が除去された状態での樹脂粘度が低く、かつタック性に優れている。従って、液晶表示装置製造時の上下基板の貼り合わせ時の液晶シール剤の樹脂粘度が低くなり、貼り合わせ時のプレスの負荷が小さく、且つ位置合わせ工程が短縮でき、さらに未硬化の液晶シール剤で貼り合わされた基板を真空チャック方式で基板の上部を持ち上げて搬送した時に上下基板に剥がれが発生せず、またプレス時のギャップ形成が容易となる。また、耐水耐湿性に優れた非常に強い液晶表示装置を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の液晶シール剤は、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および無機充填剤を必須成分とする。
【0012】
本発明の液晶シール剤で用いられる前記式(1)のエポキシ樹脂は5−メチルレゾルシンを常法、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下にエピクロルヒドリンと反応させることにより得ることができる。前記式(1)においてnが0である化合物の含有量が高いと粘度が低くなる傾向があるが、高すぎると結晶化しやすくなる為、前記式(1)においてnが0である化合物が通常50〜95重量%、好ましくは50〜80重量%含有するエポキシ樹脂が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば日本化薬(株)製RE−600NM等が挙げられる。
【0013】
本発明の液晶シール剤で用いられるエポキシ樹脂の液晶シール剤中の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜55重量%、より好ましくは30〜50重量%である。
【0014】
本発明の液晶シール剤には、液晶シール剤の作業性、物性に影響を与えない範囲で前記式(1)のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を添加してもよい。このエポキシ樹脂としては特に限定されるものではなく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS、4,4−ビフェニルフェノール、2,2,6,6−テトラメチル−4,4−ビフェニルフェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂;キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂;フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物;シクロヘキサン等の脂肪族骨格を有する脂環式エポキシ樹脂;イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂;ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック等のブロム化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、フェニルグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、(3,4−3,4エポキシシクロ)ヘキシルメチルヘキサンカルボキシレート、ヘキサヒドロ無水フタル酸ジグリシジルエステル等の一般に製造、販売されているエポキシ樹脂が挙げられる。その使用量は得られた液晶シール剤の作業性、物性に影響を与えない範囲で用いられる。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
本発明の液晶シール剤においては、前記式(1)のエポキシ樹脂の他に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を併用して使用するのが好ましい。前記式(1)のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂との併用により、スクリーン印刷適性粘度になるとともに、その硬化物性は耐湿信頼性が優れた液晶シール剤になる。用い得るビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば日本化薬(株)製RE−310S等が挙げられる。本発明の液晶シール剤において用いられる前記式(1)で表されるエポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂の重量比は、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂=20:80〜40:60(重量部)が好ましく、より好ましくは25:75〜35:65(重量部)である。
【0016】
本発明の液晶シール剤に用いられる硬化剤としては、通常ノボラック樹脂を用いる。ノボラック樹脂としては、例えばビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4−ビフェニルフェノール、2,2,6,6−テトラメチル−4,4−ビフェニルフェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、アリルフェノール類、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂;キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂等のフェノール系ノボラック樹脂;フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを下記式(2)〜(4)
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリル基、ハロゲン原子を表し、mは1〜4の整数を表す。mが2以上の時、それぞれのRは同一又は異なっていてもよい。)
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリル基、ハロゲン原子を表し、n及びpは1〜4の整数を表す。n又はpが2以上の時、それぞれの、R及びRは同一又は異なっていてもよい。)
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリル基、ハロゲン原子、水酸基を表し、qは1〜5の整数を表す。qが2以上の時、それぞれの、Rは同一又は異なっていてもよい。)
のいずれかの架橋基(アラルキレン基)で結合させたフェノール系ノボラック樹脂が挙げられる。
【0023】
好ましくはフェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、アリルフェノール類、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを下記式(5)〜(7):
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、R1’は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは1〜4の整数を表す。mが2以上の時、それぞれのR1’は同一又は異なっていてもよい。)
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、R2’及びR3’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、n及びpは1〜4の整数を表す。n又はpが2以上の時、それぞれの、R2’及びR3’は同一又は異なっていてもよい。)
【0028】
【化7】

【0029】
(式中、R4’は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、水酸基を表し、qは1〜5の整数を表す。qが2以上の時、それぞれの、R4’は同一又は異なっていてもよい。)
のいずれかの架橋基(アラルキレン基)で結合させたフェノール系ノボラック樹脂が挙げられる。
【0030】
更に好ましくはフェノール、クレゾール類、オクチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノール類を原料とするノボラック樹脂、フェノール、クレゾール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを上記式(5)〜(7)の架橋基(アラルキレン基)で結合させたフェノール系ノボラック樹脂が挙げられる。
【0031】
特に好ましくはフェノールを原料とするフェノールノボラック樹脂、クレゾール類を原料とするクレゾールノボラック樹脂等に代表されるモノフェノール類を原料とするノボラック樹脂、フェノール、クレゾール類、ビスフェノールAなどの各種フェノールを下記式(8)〜(12):
【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
のいずれかの架橋基で結合させたフェノール系ノボラック樹脂である。
【0038】
本発明で用いられる好ましいノボラック樹脂はモノフェノール類を原料とするフェノール系ノボラック樹脂であり、下記一般式(13)
【0039】
【化13】

【0040】
(式中Rは、水素、低級アルキル、低級アルコキシまたはハロゲンを示し、mは1〜3の整数を示し、mが2または3のときRは異なった種類であってもよい。nは0又は正の整数を示す。)で表されるものである。
【0041】
上記式(2)〜(13)において、炭素数1〜4のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチルなどが挙げられる。低級アルキルとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等の炭素数1〜8のアルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等の炭素数1〜4のアルキルが挙げられる。低級アルコキシとしては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等の炭素数1〜8のアルコキシ、好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシが挙げられる。ハロゲンとしては、例えば臭素、塩素、フッ素等が挙げられる。式(13)において、nにおける正の整数は1〜15が好ましく、より好ましくは1〜10である。
【0042】
これらのノボラック樹脂は単独で又は2種以上を混合して使用される。本発明で用いられるノボラック樹脂の使用量は、液晶シール剤中のエポキシ樹脂のエポキシ当量に対して、ノボラック樹脂中の水酸基の当量として0.2〜1.4化学当量、好ましくは0.3〜1.1化学当量、更に好ましくは0.4〜0.9化学当量である。
【0043】
本発明で好適に用いられるフェノール系ノボラック樹脂からなる硬化剤は、上記式(13)の化合物であり、上記式(13)において、n=1以上である成分は樹脂粘度が高くなるので、n=0である成分(2核体)が存在している方が好ましく、その存在量は、ノボラック樹脂中通常20〜80重量%、好ましくは25〜70重量%、より好ましくは30〜50重量%程度である(残りはn=1以上である成分)。
フェノール系ノボラック樹脂のエポキシ樹脂との反応において、2核体(例えば上記式(13)においてn=0の化合物)のフェノールノボラック樹脂は、3核体以上(例えば上記式(13)においてn=1の化合物)のフェノールノボラック硬化剤の硬化による3次元架橋構造に対して、線形に架橋するために、剛直な構造に可撓性がでるために、ガラス基板との接着性が向上している。
更に、本発明で好適に用いられるフェノール系ノボラック樹脂は樹脂粘度が低いために、スクリーン印刷性に優れ、液晶表示装置製造時の上下ガラス基板の貼り合わせ、ギャップ形成が容易になる。
【0044】
本発明に用いられる硬化促進剤としては、例えばイミダゾール類、イミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類;ジシアンジアミド等のアミド類及び該アミド類とフェノール類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類;1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及び該ジアザ化合物とフェノール類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト等が挙げられる。
【0045】
イミダゾール類としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0046】
これら硬化促進剤のうち好ましいものとしては、例えば2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、イミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、アミンアダクト等があげられる。
硬化促進剤の添加量は、液晶シール剤中のエポキシ樹脂100重量部に対して1〜25重量部好ましくは2〜20重量部であり、更に好ましくは、3〜15重量部である。
【0047】
これら硬化促進剤は、潜在性硬化促進剤の形式で使用した方が、作業性の向上(ポットライフ時間の延長)等のメリットがあり、好ましい。潜在性硬化促進剤は、室温では固体で、加熱されることによって溶解し、初めて硬化促進剤として反応するという性質を有するもので、例えばこれら硬化促進剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤や溶剤やエポキシ樹脂に溶解しにくい固体分散型の硬化促進剤(例えばイミダゾール類)、アミンアダクト等が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂と混合した際の1液保存安定性と加熱時の反応性の高さからアミンアダクトを硬化促進剤として使用することが特に好ましい。
【0048】
これら硬化促進剤のうち、固体分散型の潜在性硬化促進剤の平均粒径はレーザー法の測定で6μm以下、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下程度である。平均粒径が6μmより大きい潜在性硬化促進剤を使用すると、ディスペンサー塗布が難しく、また、塗布後の形状も均一でなく、そのため、基板貼り合わせ後のシール形状も均一でなくなってしまう。そして、平均粒径が6μmより大きい硬化促進剤を使用した液晶シール剤は、シールの硬化が不均一になり、シール部に充填剤の荒い粗密が確認され、しみだしも発生しやすくなる。また、潜在性硬化促進剤の平均粒径については、特に下限なないが、通常1.5〜2.5μmm程度のものが用いられる。
【0049】
本発明で使用する無機充填剤としては、例えばアルミナ、シリカ、タルク、クレー、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム等の珪酸塩等が挙げられ、好ましくはアルミナ、シリカである。これら無機充填剤は単独で用いても、もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本発明で用いられる無機充填剤の平均粒径は10〜2000nmが好ましい。2000nmより無機充填剤の平均粒径が大きいと、液晶表示装置製造時の上下基板貼り合わせ後の熱プレス時に、無機充填剤の比表面積が小さいことから無機充填剤と液晶シール剤の樹脂成分の分離が生じやすくなり、しみだしが発生してしまう。そして、硬化後の接着強度及び吸湿後の接着強度が低下してしまう。10nmより無機充填剤の平均粒径が小さいと無機充填剤の比表面積が大きくなりすぎることから液晶シール剤の粘度が高くなりすぎて、セルギャップの形成が困難になってしまう。
【0051】
本発明で使用される無機充填剤の液晶シール剤中の含有量は、全液晶シール剤中5〜45重量%、より好ましくは15〜35重量%である。無機充填剤の含有量が5重量%より少ない場合、充填剤含有量が少ないため低粘度になり、液晶表示装置作成時の加熱プレス時に液晶シール剤のしみだしが発生してしまう。無機充填剤の含有量が45重量%より多い場合、充填剤含有量が多すぎるため、液晶表示装置作成のプレスの際つぶれにくく、液晶表示装置のギャップ形成ができなくなってしまう。
【0052】
本発明で使用する無機充填剤としては、不定形アルミナ及び/又は破砕シリカを用いるのが好ましく、不定形アルミナと破砕シリカを併用して使用することが好ましい。本発明に用い得る不定形アルミナは、特定の結晶構造を持たない非晶質のアルミナで、形状が不定形であり、その粒子の大きさは0.01μmから5μm程度である。本発明に用いられる好ましい不定形アルミナの平均粒径は、0.01μmから2μmである。本発明に用い得る破砕シリカは、結晶シリカや溶融シリカ等を粉砕することによって得られるため、形状が角ばっており、その粒子の大きさは0.01μmから5μm程度である。本発明に好ましい破砕シリカの平均粒径は、0.01μmから2μmである。
【0053】
本発明で使用される不定形アルミナ及び/又は破砕シリカの液晶シール剤中の含有量は、液晶シール剤中5〜45重量%、より好ましくは15〜35重量%である。無機充填剤の含有量が5重量%より少ない場合、充填剤含有量が少ないため低粘度になり、スクリーン印刷時にシール形状が乱れてしまうことがある。無機充填剤の含有量が45重量%より多い場合、充填剤含有量が多すぎるため、スクリーンマスクのメッシュから液晶シール剤が印刷されにくく、印刷かすれが発生したりする場合がある。また、無機充填剤として不定形アルミナ及び/又は破砕シリカを使用する場合、本発明の液晶シール剤において、好ましい態様としては、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂の含有量が液晶シール剤中の5〜30重量%であり、且つ無機充填剤の含有量が液晶シール剤中の5〜45重量%である。
【0054】
本発明の液晶シール剤には、液晶シール剤の特性に影響を与えない範囲で有機充填剤を添加してもよい。有機充填剤としては、例えばポリマービーズ、コアシェルタイプのゴムフィラー等があげられる。これら充填剤は単独で用いても、もしくは2種以上を混合して用いてもよい。添加できる有機充填剤の平均粒径は、3μm以下であり、好ましくは2μm以下である。平均粒径が3μmより大きい場合は、セルギャップの形成が難しくなってしまう。また、添加できる有機充填剤の添加量は、無機充填剤の重量の50重量%以下であり、50重量%より多い場合では粘度が高くなりセルギャップの形成が難しくなってしまう。
【0055】
本発明の液晶シール剤には、必要に応じてカップリング剤を加えることが出来る。カップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニュウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤、Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤が挙げられる。好ましくはシリコン系カップリング剤であり、更に好ましくはアミノシラン系カップリング剤である。カップリング剤を使用する事により耐湿信頼性が優れ、吸湿後の接着強度の低下が少ない液晶シール剤が得られる。
カップリング剤を加える場合、その使用量は液晶シール剤中に0.1〜15重量%程度である。
【0056】
本発明の液晶シール剤は、基板への塗布作業性を向上させるため、液晶シール剤の塗布時の粘度を低粘度化するために溶剤を添加してもよい。使用しうる溶剤としては、例えばアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アセテート系溶剤、二塩基酸ジメチルエステル溶剤があげられる。これらは1種又は、2種以上を、単独で又は混合して、任意の比率で用いることができる。
【0057】
アルコール系溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等のアルキルアルコール類、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−メチル−3−n−プロポキシブタノール、3−メチル−3−イソプロポキシブタノール、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノール、3−メチル−3−イソブトキシシブタノール、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール、3−メチル−3−tert−ブトキシシブタノール等のアルコキシアルコール類が挙げられる。
【0058】
エーテル系溶剤としては、例えば1価アルコールエーテル系溶剤、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、ジアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤、トリアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0059】
1価アルコールエーテル系溶剤としては、例えば3−メチル−3−メトキシブタノールメチルエーテル、3−メチル−3−エトキシブタノールエチルエーテル、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノールエチルエーテル、3−メチル−3−イソブトキシシブタノールプロピルエーテル、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール−イソプロピルエーテル、3−メチル−3−tert−ブトキシブタノール−n−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0060】
アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0061】
アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤としては、例えばプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジイソブチルエーテル、プロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジイソブチルエーテル、エチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0062】
ジアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤としては、例えばジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0063】
トリアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤としては、例えばトリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジイソブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0064】
アセテート系溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−エトキシブチルアセテート、3−メチル−3−プロポキシブチルアセテート、3−メチル−3−イソプロポキシブチルアセテート、3−メチル−3−n−ブトキシエチルアセテート、3−メチル−3−イソブトキシシブチルアセテート、3−メチル−3−sec−ブトキシシブチルアセテート、3−メチル−3−tert−ブトキシシブチルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、酢酸ブチル等の溶媒が挙げられる。
【0065】
二塩基酸ジメチルエステルとしては、例えば、CHOCO−(−CH−)−COOCH(n=2〜4)で示されるエステルを挙げることができる。このようなエステルとして具体的には、グルタル酸ジメチルエステル、アジピン酸ジメチルエステル、コハク酸ジメチルエステルが挙げられる。また、これら2種以上を混合してもよい。またこれら3種を混合したものとして、例えばローディアソルブRPDE(ローディア日華社製)として市場から入手することもできる。
本発明において、二塩基酸ジメチルエステルと他の溶剤を併用して用いることが出来る。二塩基酸ジメチルエステルと併用して用い得る溶剤として好ましいものとしては、エチレングリコールジブチルエーテルが挙げられる。
【0066】
溶剤の使用量は、液晶シール剤がディスペンサー或いはスクリーン印刷等の方法で塗布できる粘度に調整するのに必要な任意の量を用いることができ、その粘度は、例えば25℃において、20〜40Pa・s程度である、液晶シール剤中の不揮発成分が通常70重量%以上、好ましくは85〜95重量%、さらに好ましくは90〜95重量%になるように溶剤を使用する。溶剤を添加した液晶シール剤を使用した液晶表示装置の作製は、液晶シール剤塗布後の加熱プリキュア時に溶剤を揮発乾燥させてから、上下基板の貼り合わせを行う。
液晶シール剤から溶剤を揮発乾燥させた後の粘度は、動的粘弾性率測定による粘度測定(30℃)において、500〜50000Pa・sが好ましく、800〜10000Pa・sがさらに好ましい。
【0067】
本発明の液晶シール剤を用いて液晶表示装置を製造する際には、液晶シール剤は、通常ダウンフローエアー下でカラーフィルター層を設けた基板に連続でスクリーン印刷される。このようにダウンフローエアー下での製造工程で液晶シール剤を増粘しにくくするために、高沸点と低蒸気圧を併せ持つ溶剤が好ましい。具体的には、1013.25hPaにおいて沸点が200℃以上、且つ、20℃における蒸気圧が20Pa以下であるものが好ましい。該溶剤として好ましくは、例えば、エチレングリコールジブチルエーテル、二塩基酸ジメチルエステル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。二塩基酸ジメチルエステルとしては、グルタル酸ジメチルエステル、コハク酸ジメチルエステル、アジピン酸ジメチルエステル等が挙げられる。これらの化合物を2種以上混合して使用してもよい。これらの化合物は市販されており、具体的な市販品としては、グルタル酸ジメチルエステル、コハク酸ジメチルエステル、アジピン酸ジメチルエステルの混合溶剤であるRPDE(ローディア日華製)が挙げられる。これらの溶剤の使用量は、液晶シール剤中に1〜50重量%程度であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0068】
本発明の液晶シール剤は、前記したエポキシ樹脂、硬化剤、必要に応じて溶剤を添加し、加熱混合撹拌により溶解し、さらに、無機充填剤と必要に応じその他の充填剤を添加し、公知の混合装置、例えばボールミル、サンドミル、3本ロール等により微分散した後、さらに、硬化促進剤と必要に応じカップリング剤、消泡剤、レベリング剤等の所定量を添加して混合することにより製造する事が出来る。
【0069】
本発明の液晶表示装置は、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。なお、液晶表示装置とは、一対の基板間に液晶が封入された液晶パネルに偏光板・駆動用回路・信号入力用ケーブル・バックライトなどが備わったものを言う。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方が光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、例えばまず、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加する。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、製造する液晶表示装置のセルギャップに合わせて選択するが、通常0.5〜10μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100重量部に対し0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に、好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。スペーサーを添加した液晶シール剤を一対の基板の一方にディスペンサー等により塗布した後、例えば90℃10分間の加熱で溶剤を蒸発させ、ついで対抗基板を貼り合わせ、熱プレスにてギャップ出しを行い、120〜160℃で1〜2時間硬化することにより得ることができる。
【0070】
また、カラーフィルター層を設けた基板と、電極層上に液晶配向層を具備した基板とに挟持され、液晶シールにて保持された液晶材を有する液晶表示装置の製造の際に、一方の基板に前記の液晶シール剤をスクリーン印刷により塗布し、他方の基板を熱圧着し、両基板間に液晶材を注入することにより製造することができる。熱圧着は常圧或いは減圧枚葉熱プレスや多段熱プレスで行ってもよい。
長時間連続で安定した液晶シール剤のスクリーン印刷のために、スクリーン印刷前の液晶シール剤の粘度をη1、連続印刷後の粘度をη2とすると、
η2<60(Pa・s) 且つ η2/η1<1.5
の物性を有する液晶シール剤の使用が好ましい。なお、粘度はE型粘度計にて測定した値である。
【0071】
液晶シール剤のスクリーン印刷では、スクリーン版上に液晶シール剤がキャストされているが、当然クリーンルーム内での製造であるのでダウンフローエアーにさらされ、液晶シール剤表面から添加されている溶剤が除々に揮発していき、液晶シール剤が増粘する。この液晶シール剤の粘度が60Pa・s以上になると、印刷シール形状の劣化(カスレ・細り太り・切れ)、スクリーン版のメッシュ目詰まりによるシール切れ、又、印刷後の仮焼き工程により液晶シール剤の表面が硬くなり過ぎ、対向基板との接着性低下等の問題が生じる場合がある。印刷初期粘度η1より連続印刷後の粘度η2が1.5倍以上になると、印刷速度等のスクリーン印刷条件が初期に設定した条件から変更しないとカスレ、細り、切れ等が生じてしまう場合がある。連続印刷時の印刷条件の変更は、製造を一旦停止し新たに印刷条件を検討しなければならないので、生産効率が悪くなってしまい好ましくない。
【0072】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0073】
実施例1
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂(RE−600NM、日本化薬製:このエポキシ樹脂は式(1)においてnが0である化合物を65重量%から80重量%含有する)100g、硬化剤として2核体が30〜50重量%のフェノールノボラック樹脂(PN−152、日本化薬製)30gを溶剤のローディアソルブRPDE(グルタル酸ジメチル57重量%から63重量%、コハク酸ジメチル21重量%から27重量%、アジピン酸ジメチル12重量%から20重量%、ローディア日華社製)10gに加熱溶解させた。この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤としてN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン10gをサンドミルにより混合分散した後、硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMYH−K(アミンアダクト:味の素ファインテクノ製)8gを添加して本発明の液晶シール剤を得た。
【0074】
比較例1
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬製)100g、硬化剤として2核体が30〜50重量%のフェノールノボラック樹脂(PN−152、日本化薬製)30gを溶剤のローディアソルブRPDE30gに加熱溶解させた。この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤としてN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン10gをサンドミルにより混合分散した後、硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMYH−K(アミンアダクト:味の素ファインテクノ製)8gを添加して液晶シール剤を作成した。
【0075】
比較例2
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬製)100g、硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジド10g、ローディアソルブRPDE20g、無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤としてN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン10gを混合分散し液晶シール剤を得た。尚混合分散には3本ロールを用いた。比較例2の液晶シール剤はサンドミルで発生する熱により硬化するおそれがある為、代わりに熱の発生が少ない3本ロールを用いた。
【0076】
試験例1
(A)溶剤の揮発後の粘弾性率測定
液晶シール剤をガラス基板に塗布し、クリアランスが25μmであるアプリケーターを使用してシール剤を25μmの厚さに引き伸ばした。その後シール剤を塗布したガラス基板を90℃に加熱しておいたホットプレートに5分間放置した。その後ガラス基板からシール剤を掻き取り、直径20mm厚さ1mmの円柱状にしたサンプルを動的粘弾性率測定装置(Rheosol−G5000、株式会社ユービーエム)にて複素粘性率を測定した。動的粘弾性率測定装置の設定は、以下のとおりである。
コーン:直径20mmのパラレルコーン、周波数:0.1Hz、歪み角度:0.1deg.、測定温度30℃。結果を表1に示す。
【0077】
(B)液晶シール剤をプリキュア後、荷重をかけたときのシール幅測定テスト
得られた液晶シール剤100gにスペーサーとして直径5μmのグラスファイバー(PF−50S、日本電気硝子製)1gを添加して混合撹拌を行った。この液晶シール剤を50mm×50mmのガラス基板上に5μmのギャップを形成したときのシールの広がりが1mmになるようにディスペンサーで塗布し、ホットプレート90℃5分加熱により、プリキュアを行った後、25℃でそのガラス基板に同サイズのガラス基板を重ね合わせ、2kg/cmの荷重をかけつぶして、顕微鏡にてシール幅が何mmまで広がったかを確認した。その結果を表1に示す。
表1においては、良好:シール幅が0.3mm以上、悪:シール幅が0.3mm以下とする。
【0078】
(C)液晶シール剤吸水率テスト
得られた液晶シール剤をガラス基板上に厚さ25μmの厚さになるように塗布した。100℃10分の加熱で溶剤乾燥させ、150℃60分で硬化させた。その後60℃90%の雰囲気下の恒温恒湿槽に24時間投入し、恒温恒湿槽投入前後の重量比から吸水率を算出した。その結果を表1に示す。
【0079】
(D)液晶シール剤透湿度テスト
JISZ0208に準じてテストした。得られた液晶シール剤をポリイミドフィルム上に50μmの厚さになるように塗布し、100℃10分の加熱で溶剤乾燥させ、150℃60分で硬化させた。その後液晶シール剤をポリイミドフィルムから剥がし、さらに150℃60分硬化させた。透湿カップに塩化カルシウムを適量入れ、硬化させた液晶シール剤を透湿カップにあわせて切り取ってカップにセットし、パラフィンで封蝋した。その後透湿カップを後60℃90%の雰囲気下の恒温恒湿槽に24時間投入し、恒温恒湿槽投入前後の重量比から吸水率を算出した。その結果を表1に示す。
【0080】
表1:液晶シール剤の評価結果
テスト項目 実施例1 比較例1 比較例2
(A)粘弾性率(Pa・s) 1110 107000 1020
(B)シール幅テスト 良好 悪 良好
(C)吸水率(%) 1.0 1.0 3.7
(60℃90%Rh、24h)
(D)透湿度(%) 40 42 80
(g/m・24h)
【0081】
表1の(A)からわかるように、実施例1の液晶シール剤は、比較例1の液晶シール剤に比べて、溶剤の揮発後の粘弾性率が低く、比較例1の液晶シール剤では、非常に高粘度であることがわかる。従って、実施例1の液晶シール剤は、比較例1の液晶シール剤に比べて、液晶表示装置製造の上下基板貼り合わせ時のプレスの負荷が小さく、位置合わせ工程が短時間で済むことが示唆できる。また、表1の(B)からわかるように、実施例1の液晶シール剤は、比較例1の液晶シール剤に比べて、プリキュア後常温の状態で良好であることがわかる。さらに表1の(C)、(D)からわかるように、実施例1は、吸水率及び透湿度が比較例2に比べて良好であることがわかる。
【0082】
実施例2
(1)液晶シール剤の合成
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂(RE−600NM、日本化薬製:このエポキシ樹脂は式(1)においてnが0である化合物を65重量%から80重量%含有する)100g、硬化剤として2核体が30〜50重量%のフェノールノボラック樹脂(PN−152、日本化薬製)30gを溶剤としてのローディアソルブRPDE(1013.25hPaにおける沸点200〜230℃、20℃における蒸気圧6Pa;グルタル酸ジメチル57〜63重量%、コハク酸ジメチル21〜27重量%、アジピン酸ジメチル12〜20重量%;ローディア日華社製)10gに加熱溶解させた。この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤としてN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン10gをサンドミルにより混合分散した後、硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMYH−K(味の素ファインテクノ製アミンアダクト)8gを添加して本発明の液晶シール剤を得た。
【0083】
(2)液晶表示装置の製造
ガラスからなり所定の能動素子、配線、透明電極が形成されたアレイ基板と、その対向基板として赤、青、緑からなるカラーフィルター、遮光用ブラックマトリックス、ITOからなる透明電極が形成されたカラーフィルター側基板にポリイミド材に代表される液晶配向材をオフセット印刷法により塗布した。その後、ホットプレートにより50℃〜100℃で1〜10分仮焼きし、160〜220℃で0.5〜3時間本焼成し液晶配向層を得た。更に、ラビング法に代表される液晶分子配向処理を両基板に施した。
【0084】
その後、カラーフィルター側基板にスクリーン印刷法にて前記液晶シール剤を塗布した。液晶シール剤にはセル厚維持用に所望の径を持つガラスファイバーを適量添加した。液晶シール剤Aの初期粘度η1は22.5Pa・sであった。液晶パネル用基板を約7時間連続スクリーン印刷で製造し、連続印刷後の液晶シール剤粘度η2は28.4Pa・sであった。即ち、η2<60、η2/η1=1.26であった。
【0085】
シール連続印刷後のシール形状は切れ、かすれ等の発生もなく良好で、スクリーン版にもスクリーン目詰まりの発生もなかった。
シール印刷後50〜100℃にて1〜30分間ホットプレートにて仮焼きをし、シール剤の脱溶剤化(残溶媒が10ppm以下)を施した。
一方、アレイ側基板にはセル厚形成用プラスチック製球状スペーサーを乾式散布法にて散布した。
その後、前記のカラーフィルター側基板とアレイ側基板を仮接着し、位置アラインメント後、対基板を150〜200℃、0.5〜3時間で熱圧着処理し、該対基板を所定の範囲で均一な厚みとなるように接合固定した。
【0086】
該対基板は所定の形状に分断後、真空注入法によりネマティック液晶材を注入し、紫外線硬化型樹脂で注入口を封口し液晶表示装置とした。
本発明の製造方法にて製造された液晶表示装置は、シール切れ、細り、かすれ等シール印刷起因の不具合は発生しなかった。
【0087】
比較例3
(1)液晶シール剤の合成
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬製)100g、硬化剤として2核体が30〜50重量%のフェノールノボラック樹脂(PN−152、日本化薬製)30gを溶剤としてのプロピレングリコールジアセテート(1013.25hPaにおける沸点190℃、20℃における蒸気圧31Pa)30gに加熱溶解させた。この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤としてN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン10gをサンドミルにより混合分散した後、硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMYH−K(味の素ファインテクノ製)8gを添加して液晶シール剤を作成した。
【0088】
(2)液晶表示装置の製造
実施例2と同様にアレイ側基板とカラーフィルター側基板に液晶配向層形成、配向処理を施した。
その後、カラーフィルター側基板にスクリーン印刷法にて前記液晶シール剤Bを塗布した。液晶シール剤にはセル厚維持用に所望の径を持つガラスファイバーを適量添加した。液晶シール剤の初期粘度η1は30.5Pa・sであった。液晶パネル用基板を約7時間連続スクリーン印刷で製造し、連続印刷後の液晶シール剤粘度η2は102Pa・sであった。即ち、η2<60、η2/η1=3.34であった。
【0089】
シール連続印刷後のシール形状はシール幅にガタツキ、くびれが発生した。又、局所的にはシール切れが発生し、スクリーン版には部分的に目詰まりが発生していた。
その後、実施例2に示す方法にて貼り合わせ、分断注入後液晶表示装置を得たが、約5%の割合でシール切れ、細り、セル厚むらのシール不良が発生した。
【0090】
実施例3
(1)液晶シール剤の合成
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂(RE−600NM、日本化薬製:このエポキシ樹脂は式(1)においてnが0である化合物を65重量%から80重量%含有する)30g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬製)70g、硬化剤として2核体30〜50重量%のフェノールノボラック樹脂(PN−152、日本化薬製)30gを溶剤のローディアソルブRPDE(グルタル酸ジメチル57〜63重量%、コハク酸ジメチル21〜27重量%、アジピン酸ジメチル12〜20重量%、ローディア日華社製)7gとエチレングリコールジブチルエーテル(和光純薬工業製)3gに加熱溶解させた。
この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの不定形アルミナ(アルミクロンFAL−0.05B、フジミインコーポレイテッド製)25g、平均粒径が0.5μmの破砕シリカ(クリスタライト1FF、龍森製)25g、カップリング剤としてN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン9gをサンドミルにより混合分散した後、硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMYH−K(味の素ファインテクノ製)7gを添加して本発明の液晶シール剤を得た。
【0091】
(2)液晶表示装置の製造
ガラスからなり所定の能動素子、配線、透明電極が形成されたアレイ基板とその対向基板として赤、青、緑からなるカラーフィルター、遮光用ブラックマトリックス、ITOからなる透明電極が形成されたカラーフィルター基板にポリイミド材に代表される液晶配向材をオフセット印刷法により塗布した。その後、ホットプレート等により50℃〜100℃で1〜10分仮焼きし、160〜220℃で0.5〜3時間で本焼成し液晶配向層を得た。更にラビング法に代表される液晶分子配向処理を両基板に施した。
【0092】
その後、カラーフィルター側基板にスクリーン印刷法にて前記液晶シール剤を塗布した。シール剤にはセル厚維持用に所望の径を持つガラスファイバーを適量添加した。液晶パネル用基板を大量に製造するに際し、クリーンルームでダウンフロー下で連続でスクリーン印刷を行った。処理時間は約7時間であった。
シール印刷初期及び連続印刷後のシール形状は、泡、切れ、かすれ等の発生もなく良好であった(図1参照)。また、連続印刷後にスクリーン版にもスクリーン目詰まりの発生もなく良好であった。
【0093】
シール印刷後50〜100℃にて1〜30分間ホットプレートにて仮焼きした。仮焼きは、シールの脱溶剤化目的である。含有する溶剤分の少なくとも10ppm以下で脱溶剤でき、かつ含有する硬化剤の熱活性温度以下の仮焼き温度を選択することが好ましい。100℃を超えた仮焼き温度であっても脱溶剤化は可能であるが、増粘、硬化反応の進行でセル厚の加工精度が低下する傾向にあり注意が必要である。
【0094】
一方、アレイ側基板にはセル厚形成用プラスティック製球状スペーサーを乾式散布法にて散布した。その後、シール仮焼き済カラーフィルター基板と球状スペーサー散布済み基板を仮接着、位置アラインメント後、対基板を150〜200℃、0.5〜3時間で熱圧締処理して、該対基板所定の範囲で均一な厚みになるように接合固定させた。
また、前記の熱圧締・接着工程を常圧或いは減圧枚葉熱プレス等とは別に多段熱プレスで行っても何ら問題なかった。
該対基板は所定の形状に分断後、真空注入法により例えばネマティック液晶材を注入し紫外線硬化型樹脂で注入口を封口した。本発明の製造方法にて製造された液晶表示装置は、シール切れ、細り、かすれ等シール印刷起因の不具合は発生しなかった。
【0095】
以上より本発明の液晶シール剤を使用することでシール形状が問題なく、効率的で再現性よく液晶表示装置を製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の熱硬化型液晶シール剤は、液晶表示装置製造の上下基板貼り合わせ時の位置合わせ工程が短時間で可能であり、且つ未硬化の液晶シール剤で貼り合わされた基板を真空チャック方式で上基板を持ち上げて搬送した時に上下基板に剥がれが発生せず、かつ、耐湿信頼性が優れた液晶表示装置を製造するのに極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施例3記載の液晶シール剤をガラス基板にスクリーン印刷したものをガラス基板上部から撮影した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】


(式中nは平均重合度を表し、0〜5の正数である。)で表されるエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤を含有することを特徴とする液晶シール剤。
【請求項2】
エポキシ樹脂が、式(1)におけるnが0である化合物を50〜95重量%含有するエポキシ樹脂である請求項1の液晶シール剤。
【請求項3】
エポキシ樹脂とともにビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いる請求項1または2の液晶シール剤。
【請求項4】
硬化剤がノボラック樹脂である請求項1から3のいずれかの液晶シール剤。
【請求項5】
ノボラック樹脂が二核体を20〜80重量%含むノボラック樹脂である請求項4の液晶シール剤。
【請求項6】
硬化促進剤が潜在性硬化促進剤である請求項1から5のいずれかの液晶シール剤。
【請求項7】
潜在性硬化促進剤がアミンアダクトで、かつその平均粒径が6μm以下である請求項6の液晶シール剤。
【請求項8】
無機充填剤がアルミナ及び/又はシリカである請求項1から7のいずれかの液晶シール剤。
【請求項9】
無機充填剤が不定形アルミナ及び/又は破砕シリカである請求項1から8のいずれかの液晶シール剤。
【請求項10】
有機溶剤を含有している請求項1から9のいずれかの液晶シール剤。
【請求項11】
有機溶剤の沸点が1013.25hPaにおいて200℃以上、かつ、有機溶剤の20℃における蒸気圧が20Pa以下である請求項10の液晶シール剤。
【請求項12】
有機溶剤が二塩基酸ジメチルエステルである請求項10または11の液晶シール剤。
【請求項13】
更に有機溶剤として、エチレングリコールジブチルエーテルを含有する請求項12の液晶シール剤。
【請求項14】
カップリング剤を含有している請求項1から13のいずれかの液晶シール剤。
【請求項15】
カップリング剤がアミノシラン系カップリング剤である請求項14の液晶シール剤。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかの液晶シール剤でシールされた液晶表示装置。
【請求項17】
カラーフィルター層を設けた基板と、電極層上に液晶配向層を具備した基板とに挟持され、液晶シールにて保持された液晶材を有する液晶表示装置の製造方法において、一方の基板に請求項1から15のいずれかの液晶シール剤をスクリーン印刷により塗布する工程と、他方の基板を熱圧着する工程と、両基板間に液晶材を注入する工程を含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項18】
液晶シール剤が、スクリーン印刷により塗布する前の粘度をη1、連続印刷後の粘度をη2として、
η2<60(Pa・s) 且つ η2/η1<1.5
の液晶シール剤である請求項17の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/038519
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514787(P2005−514787)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015232
【国際出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】