説明

液晶シール剤およびそれを用いた液晶表示セル

液晶に対する汚染性が低く、基板への塗布作業性と貼り合わせ性に優れ、可使時間が長く、ポットライフが長く、強い接着強度を有する液晶シール剤を開発すること。(A)硬化性樹脂として(a)エポキシ基を含有する硬化性樹脂と(b)(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂との混合物、又は(c)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂、(B)ラジカル発生型光重合開始剤、(C)平均粒径3μm以下のイソフタル酸ジヒドラジド、及び(D)平均粒径3μm以下の充填剤を含有することを特徴とする液晶シール剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セルに関する。より詳しくは、一方の基板上に形成された光熱硬化併用型の液晶シール剤堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、光照射、熱処理を経て該液晶シール剤を硬化させることにより液晶が封止された液晶表示セルを製造する方法に用いることを主要な用途とする液晶シール剤及びそれを用いて製造された液晶表示セルに関する。
【背景技術】
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されている(特開昭63−179323号公報、特開平10−239694号公報を参照)。それらの方法においては、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止された液晶表示セルが製造される。
しかし、液晶滴下工法は、液晶シール剤が未硬化の状態で液晶に接触するため、液晶表示セル製造時に液晶シール剤の成分が液晶に溶解して液晶の比抵抗を低下させてしまうという問題点があり、液晶表示セルの量産方法としては多くの問題点を有している。
液晶滴下工法において、液晶シール剤の貼り合わせ後の硬化方法として、熱硬化法、光硬化法、光熱硬化併用法の3つの方法が考えられている。熱硬化法では、加熱による液晶の膨張により低粘度化した硬化途中の液晶シール剤から液晶が漏れてしまうという問題と低粘度化した液晶シール剤の成分が液晶に溶解してしまうという問題があり、これらの問題は解決が困難であり、いまだ実用化されていない。
一方、光硬化法に用いられる液晶シール剤としては、光重合開始剤の種類によりカチオン重合型とラジカル重合型の2種類が挙げられる。カチオン重合型の液晶シール剤については、光硬化の際にイオンが発生するため、これを液晶滴下工法に使用した場合、接触状態の液晶中にイオン成分が溶出し、液晶の比抵抗を低下させるという問題がある。又、ラジカル重合型の液晶シール剤については光硬化時の硬化収縮が大きいために、接着強度が十分でないという問題がある。更に、カチオン重合型とラジカル重合型の両方の光硬化法に関わる問題点として、液晶表示セルのアレイ基板のメタル配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリックス部分により液晶シール剤に光が当たらない遮光部分が生じるため、遮光部分が未硬化になるという問題が生じる。
このように熱硬化法、光硬化法は様々な問題点を抱えており、現実には光熱硬化併用法が最も実用的な工法と考えられている。光熱硬化併用法は、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。光熱硬化併用法に用いる液晶シール剤に要求される特性としては、光照射前後、加熱硬化前後の各工程において液晶シール剤が液晶を汚染しないことが重要であり、特に先に述べた遮光部分に対する対策、すなわち、光硬化しなかった部分が熱硬化する際のシール剤成分の液晶溶出に対する対策が必要になってくる。その解決方法としては、▲1▼シール剤成分が溶出する前に低温速硬化させる、▲2▼シール剤を液晶組成物に溶出し難い成分で構成する等が考えられる。当然、低温速硬化とすることは同時に使用時のポットライフが悪くなることを意味するので実用上大きな問題となる。故にポットライフが長く液晶汚染性の低い液晶シール剤を実現する為には、液晶組成物に溶出し難い成分で構成することが必要になってくる。しかしながら、一般によく知られているエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAエポキシ樹脂やビスフェノールFエポキシ樹脂は液晶との相溶性が良いため、汚染性の観点からシール剤構成成分として適しているとは言い難い。
特開2001−133794号公報、特にその請求項1及び0021段落では、液晶滴下工法用液晶シール剤として、樹脂主成分に特開平5−295087号公報記載の部分(メタ)アクリレート化したビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用する提案がなされている。しかしながら(メタ)アクリレート化することにより液晶への溶解性は低下するものの、その程度は充分とは言い難く、また未反応で残存した原料エポキシ樹脂が液晶を汚染する問題も解決することが困難である。
以上述べてきたように、従来提案されてきた液晶滴下工法用の光熱硬化併用型液晶シール剤は、液晶汚染性、接着強度、室温での可使時間、低温硬化性等のすべてについて満足の得られるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液晶滴下工法による液晶表示装置に用いられる液晶シール剤の開発、特に一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせて、液晶シール部に光照射後、加熱硬化する液晶滴下工法による液晶表示装置に用いられる液晶シール剤の開発にある。すなわち、本発明は、製造工程を通して液晶に対して極めて汚染性が低く、基板への塗布作業性、貼り合わせ性、接着強度、室温での可使時間(ポットライフ)、低温硬化性に優れる液晶シール剤を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有する樹脂組成物が前記目的を達するものであることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、
(1)(A)硬化性樹脂として(a)エポキシ基を含有する硬化性樹脂と(b)(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂との混合物、又は(c)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂、(B)ラジカル発生型光重合開始剤、(C)平均粒径3μm以下のイソフタル酸ジヒドラジド、(D)平均粒径3μm以下の充填剤を含有することを特徴とする液晶シール剤、
(2)(b)(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂が2官能以上のエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートである(1)に記載の液晶シール剤、
(3)(c)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂が2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレートである(1)に記載の液晶シール剤、
(4)2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレートが2官能以上のエポキシ樹脂にそのエポキシ基の20〜80%当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させて得られるものである(3)に記載の液晶シール剤、
(5)2官能以上のエポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂である(2)乃至(4)の何れか一項に記載の液晶シール剤、
(6)ビスフェノール型エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂である(5)に記載の液晶シール剤、
(7)(B)ラジカル発生型光重合開始剤がカルバゾール系開始剤である(1)乃至(6)の何れか一項に記載の液晶シール剤、
(8)(B)ラジカル発生型光重合開始剤がアクリジン系開始剤である(1)乃至(6)の何れか一項に記載の液晶シール剤、
(9)(D)平均粒径3μm以下の充填剤が無機充填剤であり、且つ該無機充填剤の液晶シール剤中の含有量が5〜40重量%である(1)乃至(8)の何れか一項に記載の液晶シール剤、
(10)(E)シランカップリング剤を含有する(1)乃至(9)の何れか一項に記載の液晶シール剤、
(11)(E)シランカップリング剤がアミノ基を有するシランカップリング剤である(10)に記載の液晶シール剤、
(12)(F)コアシェル構造架橋ゴムを含有する(1)乃至(11)の何れか1項に記載の液晶シール剤、
(13)(1)乃至(12)の何れか一項に記載の液晶シール剤の硬化物でシールされた液晶表示セル、
(14)2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された(1)乃至(12)の何れか一項に記載の液晶シール剤堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで硬化することを特徴とする液晶表示セルの製造方法に関する。
【発明の効果】
基板への塗布作業性と貼り合わせ性に優れ、ポットライフが長く、強い接着強度、低液晶汚染性、ギャップ形成能に優れた本発明の液晶シール剤を液晶滴下工法に使用することにより、歩留まり、生産性が向上した液晶表示セルの製造が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、(A)硬化性樹脂として、(a)エポキシ基を含有する硬化性樹脂と(b)(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂との混合物、又は(c)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂が用いられる。
本発明で用いられる、(a)エポキシ基を含有する硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、アルコール性水酸基を有するエポキシ樹脂、スルホン基を有するエポキシ樹脂、エーテル結合を有するエポキシ樹脂等が好ましい。より好ましくはエポキシ樹脂の10倍量の液晶と直接接触させ120℃で1時間静置、室温に戻したときに、液晶に対して1重量%以上溶出しないエポキシ樹脂である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、これらに限定されるものではないが、第一に、一般式(1)

(式中、繰り返し単位数sは1乃至20の整数の範囲である。)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。一般式(1)の中で、より好ましくは、一般式(2)

(式中、繰り返し単位数sは1乃至20の整数の範囲である。)で表されるエポキシ樹脂である。
また、第二に、一般式(3)

(式中、Qは炭素数2〜6の二価炭化水素基を表し、同じであっても異なっていても良い。uは0〜5の正数(平均値)を表し、同じであっても異なっていても良い。)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。なお、Qにおける炭素数2〜6の二価炭化水素基とは、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、等の炭素数2〜6のアルキレン基を示し、本発明においては特にエチレン基であることが好ましい。また、繰り返し単位uは0.5〜3であることが好ましい。一般式(3)の中で、より好ましくは、一般式(4)

(式中、Qは炭素数2〜6の二価炭化水素基を表し、同じであっても異なっていても良い。uは0〜5の正数(平均値)を表し、同じであっても異なっていても良い。)で表されるエポキシ樹脂である。なお、Q及び繰り返し単位uは一般式(3)で説明した通りである。
また、本発明における(a)エポキシ基を含有する硬化性樹脂の加水分解性塩素量は600ppm以下、より好ましくは300ppm以下であるものが好ましい。加水分解性塩素量が600ppmより多くなると液晶に対する液晶シール剤の汚染性が問題になる虞がある。加水分解性塩素量は、例えば約0.5gのエポキシ樹脂を20mlのジオキサンに溶解し、1NのKOH/エタノール溶液5mlで30分還流した後、0.01N硝酸銀溶液で滴定することにより定量することができる。
本発明で用いられる、(b)メタ(アクリロイル)基を含有する硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂を(メタ)アクリロイル化したものが好ましい(ここで「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及び/又は「メタクリロイル」を意味する。以下同様。)。2官能以上のエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶に対する溶解性が小さいものが好ましく、具体的には2官能以上の芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートが好ましく、更に好ましくは2官能の芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、具体的にはビスフェノール型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートである。
本発明で用いられる、(c)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂としては、樹脂成分中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方を含有する樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂等が挙げられる。液晶汚染性の観点から部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂が好ましく用いられる。エポキシ樹脂及び(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂の原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、液晶汚染性の観点から好ましいものは(a)エポキシ基を含有する硬化性樹脂と同様である。
本発明においては、反応性及び粘度の制御のために、硬化性樹脂を形成しうる(メタ)アクリル酸エステルのモノマー及び/又はオリゴマーを併用しても良い。そのようなモノマー、オリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸の反応物、ジペンタエリスリトール・カプロラクトンと(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられるが、液晶に対する汚染性が低いものならば特に制限されるものではない。
本発明で用いられる、(a)エポキシ基を含有する硬化性樹脂と(b)(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂との混合物における各硬化性樹脂の比率は、全硬化性樹脂中のエポキシ基(EP)と(メタ)アクリロイル基(AC)のモル比率で(EP)/((EP)+(AC))として0.1〜0.8程度である。0.8より大きいときは光硬化性が不十分となり、仮接着強度が弱くなったりする虞がある。0.1未満のときは、硬化後のガラス基板に対する接着強度が低下してしまう。
また、本発明において(b)及び(c)の原料として使用するエポキシ樹脂の加水分解性塩素量は600ppm以下、より好ましくは300ppm以下であるものが好ましい。加水分解性塩素量が600ppmより多くなると液晶に対する液晶シール剤の汚染性が問題になる虞がある。加水分解性塩素量は、例えば約0.5gのエポキシ樹脂を20mlのジオキサンに溶解し、1NのKOH/エタノール溶液5mlで30分還流した後、0.01N硝酸銀溶液で滴定することにより定量することができる。
本発明における部分メタ(アクリロイル)化エポキシ樹脂は、前述したエポキシ樹脂に、そのエポキシ基の好ましくは20〜80%当量、更に好ましくは40〜70%当量の(メタ)アクリル酸をエポキシ樹脂に所定の当量比の(メタ)アクリル酸を触媒と重合防止剤の存在下にてエステル化させることにより得ることができる。反応時は希釈溶剤としてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;シクロヘキサノン、シクロヘキサノールなどの脂環式炭化水素及び石油エーテル、石油ナフサなどの石油系溶剤類の1種又は2種以上を加えても良い。これらの希釈溶剤を使用する場合、反応終了後に減圧留去する必要があるため沸点が低く且つ揮発性が高い溶剤が好ましく、具体的にはトルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、カルビトールアセテートの使用が好ましい。反応を促進させる為に触媒を使用することが好ましい。使用しうる触媒としては、例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等が挙げられる。その使用量は反応原料混合物に対して、好ましくは、0.1〜10重量%、特に好ましくは0.3〜5重量%である。反応中(メタ)アクリル基の重合を防止する為に、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。その使用量は反応原料混合物に対して好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。反応温度は、通常60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃である。また、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
本発明で用いられる、(B)ラジカル発生型光重合開始剤としては、液晶の特性に比較的影響が小さいi線(365nm)付近に感度を持ち、なお且つ液晶汚染性が低い開始剤であれば、いずれも使用できる。使用しうるラジカル発生型光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、3,6−ビス(d2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール、1,7−ビス(9−アクリジル)ヘプタン等を挙げることができる。これらのうち、好ましいものとしては、3,6−ビス(d2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾールや1,7−ビス(9−アクリジル)ヘプタン等を挙げることが出来る。
本発明の液晶シール剤中、(b)又は(c)成分に対する(B)ラジカル発生型光重合開始剤の配合比は、通常(b)又は(c)成分100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。ラジカル発生型光重合開始剤の量が0.1重量部より少ないと光硬化反応が充分でなくなり、10重量部より多くなると開始剤の量が多すぎても液晶に対する開始剤による汚染や硬化樹脂特性の低下が問題になる。
液晶滴下方式の液晶シール剤の熱硬化成分は、光照射後、加熱した時に液晶シール剤が液晶を汚染することなく均一に速やかに反応を開始すること、使用時には室温下における粘度変化が少なく可使時間が良好(長いこと)であることが重要である。熱硬化条件としては封入される液晶の特性低下を最小限に留める為、一般に120℃、1時間程度での低温硬化能が求められる。
これらの要求特性を同時に満たす為には固体分散タイプの潜在性硬化剤を用いるのが良いが、固体分散タイプの潜在性熱硬化剤の場合、粒径が不均一で大きな粒径のものがあったり、分散が不充分で偏りが生じていたりすると、硬化が均一に行われず未硬化成分が液晶中に溶出したりして液晶の表示不良が発生してしまう。そのため、熱硬化剤の分散は充分に行う必要があるが、熱硬化剤の粒径を細かくして均一に分散すると固体分散タイプの潜在性硬化剤であっても室温において熱硬化剤が樹脂に溶解して硬化反応が開始してしまうためポットライフが悪くなる。
硬化温度を下げる方法として、硬化促進剤を添加することが一般に行われ、イミダゾール誘導体、ホスフィン系化合物、第三級アミン等の添加がしばしば行われるが、低電圧駆動性、高速応答性の液晶組成物においては、これら硬化促進剤成分が液晶中に溶出して液晶の比抵抗値を下げる為使用するのは好ましくない。
これらの点を鑑み、本発明の液晶シール剤は熱硬化成分として(C)平均粒径3μm以下に微粉砕されたイソフタル酸ジヒドラジドを使用する。イソフタル酸ジヒドラジドを使用したシール剤は室温においては良好なポットライフを有する一方で、120℃、1時間の条件においても良好な硬化性を示す。イソフタル酸ジヒドラジドは液晶への溶解性も殆ど無いことから、封入された液晶の汚染性は極めて低いものとなる。イソフタル酸ジヒドラジドの平均粒径が大きすぎると、狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため平均粒径3μm以下とする必要があり、好ましくは平均粒径2μm以下である。また、同様の理由から最大粒径は8μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。硬化剤の粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定した。尚、平均粒径は極端に小さく(例えば、0.1μm以下)ならないように調製するのが好ましい。また、硬化剤の平均粒径はより小さい方が硬化後の液晶シール剤のガラス転移点が高くなるため、シール剤の信頼性の観点からも平均粒径は3μm以下が好ましい。
本発明の液晶シール剤中、成分(C)成分の配合比は、活性水素当量で、(a)又は(c)成分のエポキシ基に対して0.8〜3.0当量が好ましく、より好ましくは0.9〜2.0当量である。(C)成分の量が0.8当量より少ないと熱硬化反応が不十分となり、接着力、ガラス転移点が低くなる虞がある。一方、当量が3.0より多いと、硬化剤が残留して接着力が低下し、ポットライフが悪化する懸念がある。
本発明で使用する充填剤(D)としては無機充填剤が好ましい。使用しうる無機充填剤の具体例としては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム等が挙げられ、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。前記の充填剤は2種以上を混合して用いても良い。
本発明で用いられる充填剤の平均粒径は、3μm以下のものであり、平均粒径が3μmより大きいと、液晶セル製造時の上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成が適切に出来ない。
本発明で使用される充填剤の液晶シール剤中の含有量は、通常5〜40重量%、好ましくは15〜25重量%である。充填剤の含有量が5重量%より低い場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる。又、充填剤の含有量が40重量%より多い場合、充填剤含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなる虞がある。
本発明の液晶シール剤は、その接着強度を向上させるために、(E)シランカップリング剤を含有することが好ましい。使用しうるシランカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらシランカップリング剤は2種以上を混合して用いても良い。これらのうち、より良好な接着強度を得るためにはシランカップリング剤がアミノ基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤を使用する事により接着強度が向上し、耐湿信頼性が優れた液晶シール剤が得られる。
本発明の液晶シール剤は、その接着強度を向上させるために、(F)コアシェル構造架橋ゴムを含有することが好ましい。本発明で使用する(F)コアシェル構造架橋ゴムは、2層又は3層構造であり、コア層がゴム弾性を示す架橋ゴムであり、コア層をゴム弾性を示さない架橋ポリマーで被覆した構造であればどのようなものでも良い。コア層としては架橋ポリブタジエン、架橋アクリル酸アルキル共重合物、架橋ポリイソプレンなどが挙げられ、シェル層してはアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル共重合物、メタクリル酸アルキル−スチレン共重合物、アクリル酸アルキル共重合物などが挙げられる。
これらのうちコア層とシェル層の好ましい組み合わせとしては、コア層が架橋ポリブタジエンであり、シェル層がアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル共重合物又はメタクリル酸アルキル−スチレン共重合物である組み合わせ、コア層が架橋アクリル酸アルキル共重合物であり、シェル層がアクリル酸アルキル共重合物である組み合わせが挙げられる。
コアシェル構造架橋ゴムの平均粒子径は、好ましくは1μm以下である。平均粒子径が1μmより大きいと熱接着時に接着層のフローが大きくなる傾向がある。また、粒子径が小さすぎると凝集しやすくなるため、平均粒子径は0.1μm以上がより好ましい。
コアシェル構造架橋ゴムとしては、パラロイドEXL−2602(呉羽化学工業株式会社製)、パラロイドEXL−2655(呉羽化学工業株式会社製)等が一般に入手可能である。
本発明の液晶シール材中の(F)コアシェル構造架橋ゴムの添加量は樹脂組成物中、樹脂分総量に対して好ましくは0.5重量%以上10重量%以下であり、更に好ましくは1重量%以上5重量%以下である。0.5重量%より少ない場合、液晶シール材の接着力の向上が充分ではなく、10重量%より多い場合、粘度が著しく高くなり実用に供することが出来ない虞がある。
本発明による液晶シール剤には、さらに必要に応じて、有機溶媒、有機充填剤、ならびに顔料、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。
本発明の液晶シール剤は、各成分を公知の混合装置、例えばロールミル、サンドミル、ボールミル等により均一に混合することにより製造することができる。必要により、混合が終わったあと夾雑物を除く為に、濾過処理を施してもよい。
本発明の液晶セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板としてはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法は、例えば本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー等により該液晶シール剤を堰状に塗布した後、該液晶シール剤堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、紫外線照射機により液晶シール部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、通常500mJ/cm〜6000mJ/cm、好ましくは1000mJ/cm〜4000mJ/cmの照射量である。その後、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100重量部に対し通常0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に、好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。
本発明の液晶シール剤は、製造工程を通して液晶に対して極めて汚染性が低く、基板への塗布作業性、貼り合わせ性、接着強度、室温での可使時間(ポットライフ)、低温硬化性に優れる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明する。
合成例1:DRGE(レゾルシンジグリシジルエーテル多量体)の合成
レゾルシングリシジルエーテル化物の合成
レゾルシン5500g、エピクロルヒドリン37000g、テトラメチルアンモニウムクロライド500gを加え撹拌下で溶解し70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム4000gを100分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間、後反応を行った。反応終了後、水15000gを加えて水洗した後油層から130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン22200gを加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30%の水酸化ナトリウム水溶液1000gを加え、1時間反応を行った後、水5550gで水洗を3回行い、180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、レゾルシンのジグリシジル化物10550gを得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は129g/eqであった。このレゾルシンのグリシジル化物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;検出器UV254nm)で分析した結果、レゾルシンジグリシジルエーテル(以下「RGE」または「1核体」という)が73面積%生成しており、15面積%が構造中にアルコール性水酸基を有する2核体及び3核体以上であった(2核体以上をDRGEとする)。
(2)分子蒸留による精製
上記(1)で得られたレゾルシンのジグリシジル化物5692gを(有)旭製作所製、分子蒸留装置により、RGEとDRGEに分離した。分子蒸留装置の条件は真空度4Pa、蒸留温度(ジャケット内温度)188℃、冷却コンデンサ温度15℃とした。本条件にて3パス処理することにより低沸点成分であるRGEが留出しなくなった。3パス処理後の高沸点成分は847g(15重量%)得られ、これをGPC及びGC−MSにより分析したところRGEは除かれておりDRGEのみが分離できていることが確認された。DRGEの2核体(前記一般式(2)においてsが1である化合物)は80面積%、DRGEの3核体(前記一般式(2)においてsが2である化合物)は20面積%であった。なお、参考までに、低沸点側の成分はGPC分析より99%以上がRGEであった。液晶;MLC−6866−100(メルクジャパン製)への溶解性は0.5%であった。
合成例2:EOBisS−EP(エチレンオキサイド付加ビスフェノールS型エポキシ樹脂)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコにエチレンオキサイド付加ビスフェノールS(日華化学株式会社製;商品名SEO−2、融点183℃、純度99.5%)169重量部、エピクロルヒドリン370重量部、ジメチルスルホキシド185重量部、テトラメチルアンモニウムクロライド5重量部を加え撹拌下で溶解し、50℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム60重量部を100分かけて分割添加した後、更に50℃で3時間、後反応を行った。反応終了後水400重量部を加えて水洗を行った。油層からロータリーエバポレーターを用いて130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン450重量部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30%の水酸化ナトリウム水溶液10重量部を加え、1時間反応を行った後、水洗を3回行い、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、下記式(5)で表される液状エポキシ樹脂B212重量部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は238g/eq、25℃における粘度は113400mPa・sであった(室温に放置すると結晶化した)。液晶;MLC−6866−100への溶解性は0.05%であった。

合成例3:ビスフェノールFエポキシ樹脂エポキシアクリレートの合成
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)をトルエンに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライドを添加して、98℃で約50時間攪拌した。得られた反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、ビスフェノールFエポキシのエポキシアクリレートを得た。25℃における粘度は140Pa・sであった。液晶;MLC−6866−100への溶解性は0.3%であった。
【実施例1】
合成例1のエポキシ樹脂DRGE20重量部、合成例3のビスフェノールFエポキシ樹脂エポキシアクリレート80重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)0.2重量部、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)9.3重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)10重量部、球状シリカ(大阪化成(株)製、SS−15、平均粒径0.5μm)10重量部、タルク(巴工業(株)製、HTPultra5C、平均粒径0.5μm)10重量部を添加して3本ロールで混練、プラネタリーミキサーで攪拌脱泡、ろ過して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は350Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
【実施例2】
合成例2のEOBisS−EP20重量部、合成例3のビスフェノールFエポキシ樹脂エポキシアクリレート80重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)0.2重量部、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)9.3重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)10重量部、球状シリカ(大阪化成(株)製、SS−15、平均粒径0.5μm)10重量部、タルク(巴工業(株)製、HTPultra5C、平均粒径0.5μm)10重量部を添加して3本ロールで混練、プラネタリーミキサーで攪拌脱泡、ろ過して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は400Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
【実施例3】
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、RE−310P、エポキシ当量170g/eq、加水分解性塩素量120ppm)に対して、エポキシ基の60%当量のアクリル酸を反応させ、イオン交換水/トルエンの分液処理により精製後、トルエンを留去して60%部分アクリル化エポキシ樹脂を得た。得られた部分アクリル化エポキシ樹脂のエポキシ当量は540g/eqであった。こうして得られた部分アクリル化エポキシ樹脂100重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)1.2重量部、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)9.3重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)10重量部、球状シリカ(大阪化成(株)製、SS−15、平均粒径0.5μm)10重量部、タルク(巴工業(株)製、HTPultra5C、平均粒径0.5μm)10重量部を添加して3本ロールにより混練して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は300Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
【実施例4】
イソフタル酸ジヒドラジドとして平均粒径1.4μm、最大粒径5μmに調整したものを使用した他は実施例3と同様の組成、製造方法にて液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は300Pa・sであった。
【実施例5】
合成例1のエポキシ樹脂DRGE20重量部、合成例3のビスフェノールFエポキシ樹脂エポキシアクリレート80重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)0.2重量部、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)9.3重量部、アルミナ(シーアイ化成株式会社製、SPC−Al、平均粒径1.0μm)20重量部、ゴム(呉羽化学工業株式会社製、パラロイドEXL−2655、平均粒径200μm)5重量部を、ミルで分散混練して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は350Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
比較例1
硬化剤としてイソフタル酸ジヒドラジドとして市販のジェットミル粉砕グレード(大塚化学(株)製、商品名:IDH−S、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径3.9μm、最大粒径13μm)をそのまま使用した他は実施例3と同様の組成、製造方法にて液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は300Pa・sであった。
比較例2
硬化剤としてイソフタル酸ジヒドラジドの代わりにアジピン酸ジヒドラジド(大塚化学(株)製、融点180℃、活性水素当量43.5g/eq、ジェットミル粉砕にて平均粒径2μmに調整したもの)8.1重量部を用いた他は実施例3と同様の組成、製造方法にて液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は280Pa・sであった。
比較例3
硬化剤としてイソフタル酸ジヒドラジドの代わりに2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド(日本ヒドラジン工業(株)製、融点300℃以上、活性水素当量61.0g/eq、ジェットミル粉砕にて平均粒径3μmに調整したもの)11.3重量部を用いた他は実施例3と同様の組成、製造方法にて液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は300Pa・sであった。
比較例4
硬化剤としてイソフタル酸ジヒドラジドの代わりに1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(味の素ファインテクノ(株)製、商品名アミキュアーVDH、融点120℃、活性水素当量78.5g/eq、ジェットミル粉砕にて平均粒径2.3μmに調整したもの)14.5重量部を用いた他は実施例3と同様の組成、製造方法にて液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は350Pa・sであった。
液晶汚染性テスト(UV照射及び熱硬化)
液晶に対する汚染性の指標である接触液晶の比抵抗の測定は、サンプル瓶に液晶シール剤を0.1g入れ、液晶(メルク社製、MLC−6866−100)1mlを加えた後、UV照射機により3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃オーブンに1時間投入し、その後、1時間室温にて放置する。処理が終ったサンプル瓶から液晶のみを取り出し液体電極LE21(安藤電気(株)製)に入れて、アドバンテスト製エレクトロメーターR−8340により測定電圧10Vで4分後の液晶の比抵抗を測定して行った。その結果を表1に示した。ここで、液晶シール剤に接触させて処理した液晶の比抵抗値が、液晶シール剤を接触させないで同様に処理した液晶の比抵抗値との比較において、接触液晶の比抵抗値の桁数が1桁以上低下しないものを良好、1桁以上低下するものを不良と判定した。また試験後の液晶を目視で観察し、溶出・析出物の有無を観察した。
液晶汚染性テスト(熱硬化のみ)
液晶に対する汚染性の指標である接触液晶の比抵抗の測定は、サンプル瓶に液晶シール剤を0.1g入れ、液晶(メルク社製、MLC−6866−100)1mlを加えた後、120℃オーブンに1時間投入し、その後、1時間室温にて放置する。処理が終ったサンプル瓶から液晶のみを取り出し液体電極LE21(安藤電気(株)製)に入れて、アドバンテスト製エレクトロメーターR−8340により測定電圧10Vで4分後の液晶の比抵抗を測定して行った。その結果を表1に示した。ここで、液晶シール剤に接触させて処理した液晶の比抵抗値が、液晶シール剤を接触させないで同様に処理した液晶の比抵抗値との比較において、接触液晶の比抵抗値の桁数が1桁以上低下しないものを良好と判定した。また試験後の液晶を目視で観察し、溶出・析出物の有無を観察した。
接着強度テスト
得られた液晶シール剤100gにスペーサーとして5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌を行う。この液晶シール剤を50mm×50mmのガラス基板上に塗布し、その液晶シール剤上に1.5mm×1.5mmのガラス片を貼り合わせUV照射機により3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃オーブンに1時間投入して硬化させた。そのガラス片のせん断接着強度を測定した。その結果を表1に示した。
ポットライフテスト
得られた液晶シール剤を30℃にて24時間放置し、初期粘度に対しての粘度増加率(%)を測定した。
ガラス転移点
得られた液晶シール剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み厚み60μmの薄膜としたものにUV照射機により3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃オーブンに1時間投入して硬化させ、硬化後PETフィルムを剥がしてサンプルとした。TMA試験機(真空理工株式会社製)引っ張りモードにてガラス転移点を測定した。
表1からわかるように、実施例1〜5とも、粘度変化が少なく作業性良好なシール剤であると言える。また、熱硬化時の液晶汚染性も比抵抗値変化、目視観察とも良好な結果であった。
一方、比較例1〜3とも、粘度変化が少なく作業性の観点からは良好なシール剤であると言える。しかし、比較例2は熱硬化時に硬化剤のアジピン酸ジヒドラジドが液晶中に溶け出し、更に冷却されることによって白い析出物が生成した。比抵抗の変化率は小さかったものの、不純物の液晶への溶出は表示不良に繋がる為、好ましくない。比較例3は硬化剤の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドが120℃における反応性に乏しい為、未反応成分が液晶を汚染し、同時に接着力が得られなかったものと考えられる。また、比較例4はポットライフが非常に短く作業性に難があり実用には適さない。また、実施例3、4、比較例1の比較よりイソフタル酸ジヒドラジドの平均粒子径が小さいほど高いガラス転移点が得られシール剤の信頼性が増していることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性樹脂として(a)エポキシ基を含有する硬化性樹脂と(b)(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂との混合物、又は(c)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂、(B)ラジカル発生型光重合開始剤、(C)平均粒径3μm以下のイソフタル酸ジヒドラジド、及び(D)平均粒径3μm以下の充填剤を含有することを特徴とする液晶シール剤。
【請求項2】
(b)(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂が2官能以上のエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートである請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項3】
(c)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性樹脂が2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレートである請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項4】
2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレートが2官能以上のエポキシ樹脂にそのエポキシ基の20〜80%当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させて得られるものである請求項3に記載の液晶シール剤。
【請求項5】
2官能以上のエポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項2乃至4の何れか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項6】
ビスフェノール型エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項5に記載の液晶シール剤。
【請求項7】
(B)ラジカル発生型光重合開始剤がカルバゾール系開始剤である請求項1乃至6の何れか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項8】
(B)ラジカル発生型光重合開始剤がアクリジン系開始剤である請求項1乃至6の何れか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項9】
(D)平均粒径3μm以下の充填剤が無機充填剤であり、且つ該無機充填剤の液晶シール剤中の含有量が5〜40重量%である請求項1乃至8の何れか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項10】
(E)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至9の何れか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項11】
(E)シランカップリング剤がアミノ基を有するシランカップリング剤である請求項10に記載の液晶シール剤。
【請求項12】
(F)コアシェル構造架橋ゴムを含有する請求項1乃至11の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の液晶シール剤の硬化物でシールされた液晶表示セル。
【請求項14】
2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された請求項1乃至12の何れか一項に記載の液晶シール剤堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで硬化することを特徴とする液晶表示セルの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/041900
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549612(P2004−549612)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014100
【国際出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】