説明

液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル

【課題】熱による反応が速く、工程を通して液晶に対して極めて汚染性が低く、且つ保存安定性にも優れ、また耐湿信頼性等の硬化物特性にも優れる液晶滴下工法用液晶シール剤を提供することを目的とする。
【解決手段】(a)分子内に活性水素を有するエポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂(ただし活性水素として、ヒドロキシ基に含まれる水素は除く)、(b)熱硬化剤を含有することを特徴とする液晶シール剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱による硬化性が良好である液晶シール剤に関する。より詳細には、熱による良好な硬化性を有し、かつ保存安定性にも優れ、更に硬化物の耐湿性等にも優れる液晶シール剤、及びその硬化物でシールされた液晶表示セルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。具体的には、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止される液晶表示セルの製造方法である。
【0003】
しかし、液晶滴下工法は、未硬化の状態の液晶シール剤が液晶に接触するため、その際に液晶シール剤の成分が液晶に溶解(溶出)して液晶の抵抗値を低下させ、シール近傍の表示不良を発生させるという問題点がある。
【0004】
この課題を解決する為、現在は液晶滴下工法用の液晶シール剤として光熱併用型のものが用いられ、実用化されている(特許文献3、4)。この液晶シール剤を使用した液晶滴下工法では、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。この方法によれば、未硬化の液晶シール剤を光によって速やかに硬化でき、液晶シール剤成分の液晶への溶解(溶出)を抑えることが可能である。さらに、光硬化のみでは光硬化時の硬化収縮等による接着強度不足という問題も発生するが、光熱併用型であれば加熱による二次硬化によって、そういった問題も解消できるという利点を有する。
【0005】
しかしながら、近年では、液晶表示素子の小型化に伴い、液晶表示素子のアレイ基板のメタル配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリックス部分により液晶シール剤に光が当たらない遮光部が生じ、シール近傍の表示不良の問題が以前よりも深刻なものとなっている。すなわち、遮光部の存在によって上記光による一次硬化が不十分となり、液晶シール剤中に未硬化成分が多量に残存する。この状態で熱による二次硬化工程に進んだ場合、当該未硬化成分の液晶への溶解は、熱によって促進されてしまうという結果をもたらし、シール近傍の表示不良を引き起こす。
【0006】
この課題を解決する為、熱反応性を改良する様々な検討がなされている。上記遮光部において、光によって十分に硬化していない液晶シール剤を、低温から速やかに反応させ、液晶汚染を抑えようという試みである。例えば、特許文献5、6では、熱ラジカル開始剤を用いる方法が開示されている。また、特許文献7〜9では、硬化促進剤として多価カルボン酸を用いる方法が開示されている。
【0007】
しかし、一般に、熱ラジカル開始剤は常温においても少しずつラジカルが発生する為、液晶シール剤の保存安定性や作業安定性が悪いという問題を抱えている。また、多価カルボン酸のような硬化促進剤は、触媒として作用する為、それ自体が反応し、硬化物中に化学的結合によって取り込まれることが無い為、液晶中に溶解し、表示不良を引き起こすといった問題がある。
【0008】
以上述べたように、液晶シール剤の開発は非常に精力的に行われているにも拘わらず、優れた熱反応性を有しながら、良好な保存安定性をも併せ持ち、及び低液晶汚染性を有する液晶シール剤は未だ実現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−179323号公報
【特許文献2】特開平10−239694号公報
【特許文献3】特許第3583326号公報
【特許文献4】特開2004−61925号公報
【特許文献5】特開2004−126211号公報
【特許文献6】特開2009−8754号公報
【特許文献7】国際公開2007/138870号
【特許文献8】特開2008−15155号公報
【特許文献9】特開2009−139922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、加熱のみ、又は光熱併用によって硬化する液晶シール剤に関するものであり、熱による反応が速い為、工程を通して液晶に対して極めて汚染性が低く、且つ保存安定性にも優れ、また耐湿信頼性等の硬化物特性にも優れる液晶滴下工法用液晶シール剤を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、分子内に活性水素を有するエポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂(ただし活性水素として、ヒドロキシ基に含まれる水素は除く)を含有する液晶シール剤が上記熱反応性に優れ、その結果液晶汚染性も抑える事が可能であり、更には保存安定性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、次の1)〜13)に関するものである。なお、本明細書中、成分(a)について、「(a)分子内に活性水素を有するエポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂」と記載する煩雑さを避ける為、「成分(a)硬化性樹脂」と記載する場合がある。
【0012】
1)
(a)分子内に活性水素を有する、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂(ただし活性水素として、ヒドロキシ基に含まれる水素は除く)、(b)熱硬化剤を含有することを特徴とする液晶シール剤。
2)
上記成分(a)が分子内に活性水素を有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂である上記1)に記載の液晶シール剤。
3)
上記成分(a)が、分子内にカルボキシ基、スルファニル基又はアミノ基を有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂である上記1)又は2)に記載の液晶シール剤。
4)
上記成分(a)が分子内にカルボキシ基を有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂である上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
5)
上記成分(a)が分子内にカルボキシ基を有するアクリル化レゾルシノールジグリジルエーテルである上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
6)
更に、(c)分子内に活性水素を有さないエポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂を含有する上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の液晶シール剤(ただし活性水素として、ヒドロキシ基に含まれる水素は除く)。
7)
上記成分(a)の含有量が液晶シール剤の総量を100質量部とした場合に、5質量部〜50質量部である上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
8)
上記成分(b)熱硬化剤が、多価ヒドラジド化合物である上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
9)
上記成分(b)熱硬化剤が、下記式(1)で表される1又は2以上のヒドラジド化合物である上記8)に記載の液晶シール剤。
【化1】

[式中、R〜Rは各々独立して水素原子又は下記式(2)
【化2】

(式中、nは1〜6の整数を示す)
で表される分子骨格を示す]
10)
更に、(d)シランカップリング剤を含有する、上記1)乃至9)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
11)
更に、(e)無機フィラーを含有する上記1)乃至10)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
12)
更に、(f)光重合開始剤を含有する上記1)乃至11)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
13)
上記1)乃至12)のいずれか一項に記載の液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶シール剤は、熱硬化時の反応速度が速い為、光熱併用型液晶滴下工法において、光の届き難い配線下においても充分な硬化性を有し、この為パネルの配線設計の自由度を確保でき、信頼性の高い液晶表示パネルの製造を容易にする事ができ、また更には、熱のみで液晶シール剤を硬化させる液晶滴下工法への応用も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は成分(a)分子内に活性水素を有する、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂を含有する。(ここで「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。以下同様。)ただし、該活性水素の解釈にあたり、ヒドロキシ基に含まれる水素は除かれる。ヒドロキシ基は一般に酸解離定数(pKa)が大きく、またヒドロキシ基自体の求核性も弱い為触媒として機能し難い。実際に通常のエポキシアクリレートは、2級ヒドロキシ基を有するが、熱硬化時に反応触媒として機能しない。本発明では、該硬化性樹脂を有することによって、良好な熱反応性を実現することができる。更に、該硬化性樹脂は(メタ)アクリル基又はエポキシ基といった光又は熱によって反応する官能基を有する為、硬化物中に取り込まれ、液晶に対して溶解する量を劇的に抑えることができ、液晶表示素子の表示特性を損なわない。
【0015】
上記活性水素としては、カルボキシ基、スルファニル基、アミノ基、スルホ基、ホスホ基等に含まれる活性水素が挙げられる。すなわち、上記成分(a)としては、例えば分子内にカルボキシ基、スルファニル基、アミノ基、スルホ基、ホスホ基等を有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び分子内にカルボキシ基、チオール基、アミノ基、スルホ基、ホスホ基等を有するエポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上を含有する硬化性樹脂が挙げられる。中でも、触媒としての機能及び合成の容易さから、カルボキシ基、チオール基、アミノ基が好ましく、更にはカルボキシ基が特に好ましい。例えば、アミノ基を有するエポキシ樹脂としては、アミン変性ビスフェノールA型エポキシアクリレートEBECRYL3703(ダイセル・サイテック株式会社製)等が市販品として容易に入手できる。
【0016】
成分(a)の硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂や部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂よりも(メタ)アクリル化エポキシ樹脂が好ましい。(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、光によって速やかに反応する為、液晶への溶解をより抑えることが可能である。この硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の周知の反応により得ることができる(メタ)アクリル化エポキシ樹脂に酸無水物、多価カルボン酸等を反応させて得ることができる。
【0017】
具体的には、まずエポキシ樹脂に所定の当量比の(メタ)アクリル酸と触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)と、重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)を添加して、例えば80℃〜110℃でエステル化反応を行うことにより得られる。得られた(メタ)アクリル化エポキシ樹脂に、例えば特開昭49−2601、特開平3−143911、特開平5−32746号公報等に記載の方法で酸無水物を反応させ、分子内に活性水素を有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂を得ることができる。ここで原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばレゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。この中でも、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0018】
成分(a)は、本発明の液晶シール剤の総量を100質量部とした場合に、5質量部〜50質量部含有することが好ましく、5質量部〜30質量部であることが特に好ましい。成分(a)が少なすぎると十分な熱硬化性が得られず、逆に多すぎると液晶シール剤を高粘度化する為、その他の成分の配合に制約を生じることになる。
【0019】
本発明の液晶シール剤で用いられる(b)成分である熱硬化剤は特に限定されるものではなく、多価アミン類、多価フェノール類、ヒドラジド化合物等を挙げる事ができるが、多価ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、上記式(1)で表される化合物等を挙げることができる。上記(1)で表される化合物としては、例えばトリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができるが、式(1)の構造であればこれらに限定されるものではない。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。かかる(b)熱硬化剤を使用する場合の使用量としては、本発明の液晶シール剤総量を100質量部とした場合に、1質量部〜20質量部含有する場合が好ましく、更に好ましくは2質量部〜15質量部であり、2種以上を混合して用いても良い。
【0020】
本発明の液晶シール剤は、成分(c)として、分子内に活性水素を有さないエポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂を含有しても良い(ただし活性水素として、ヒドロキシ基に含まれる水素は除く)。例えば、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル化エポキシ樹脂の混合物、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂等が挙げられる。本発明で用いる成分(c)は、何れも液晶に対する汚染性、溶解性が低いものが好ましく、好適なエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の周知の反応により得ることができる。例えば、エポキシ樹脂に所定の当量比の(メタ)アクリル酸と触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)と、重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)を添加して、例えば80℃〜110℃でエステル化反応を行うことにより得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、より好ましいものはビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂である。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性及び液晶汚染性の観点から適切に選択される。
【0021】
本発明の液晶シール剤が成分(c)を含有する場合、その使用量は、得られる液晶シール剤の作業性、物性を考慮して適宜決定される。通常、液晶シール剤総量を100質量部とした場合に、20質量部〜80質量部含有する場合が好ましく、更に好ましくは30質量部〜70質量部である。
【0022】
本発明の液晶シール剤では成分(d)シランカップリング剤を用いて、接着強度向上や耐湿信頼性向上を図ることができる。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤(d)の液晶シール剤に占める含有量は、本発明の液晶シール剤の総量を100質量部とした場合、0.05質量部〜3質量部が好適である。
【0023】
本発明の液晶シール剤では成分(e)無機フィラーを用いて、接着強度向上や耐湿信頼性向上を図ることができる。この(e)無機フィラーとしては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、3μm以下が適当であり、好ましくは2μm以下である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定した。
【0024】
本発明の液晶シール剤で使用しうる無機フィラー(e)の液晶シール剤中の含有量は、本発明の液晶シール剤の総量を100質量部とした場合、通常3〜60質量部、好ましくは5〜50質量部である。無機フィラーの含有量が少なすぎる場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機フィラーの含有量が多すぎると、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0025】
本発明の液晶シール剤は、光熱併用硬化型の液晶シール剤とする為に、成分(f)光ラジカル重合開始剤を含有しても良い。光ラジカル重合開始剤は、UVや可視光の照射によって、ラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用する事が好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開WO2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
【0026】
本発明の液晶シール剤で使用しうる成分(f)光重合開始剤の液晶シール剤中の含有量は、本発明の液晶シール剤の総量を100質量部とした場合、通常0.5質量部〜20質量部、好ましくは1質量部〜15質量部である。
【0027】
本発明の液晶シール剤には、さらに必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステルのモノマー及び/又はオリゴマーを使用しても良い。そのようなモノマー、オリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸の反応物、ジペンタエリスリトール・カプロラクトンと(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられるが、液晶に対する汚染性が低いものならば特に制限されるものではない。
【0028】
本発明の液晶シール剤には、さらに必要に応じて、有機酸やイミダゾール等の硬化促進剤、有機フィラーならびに顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。
【0029】
本発明の液晶シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、(a)成分に必要に応じ、(c)成分、(f)成分を加熱溶解する。次いで室温まで冷却後、(b)成分を添加し、必要に応じて(d)成分、(e)成分、並びに有機フィラー、消泡剤、及びレベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0030】
本発明の液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80℃〜120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90℃〜130℃で1時間〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。また光熱併用型として使用する場合は、紫外線照射機により液晶シール剤部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500mJ/cm〜6000mJ/cm、より好ましくは1000mJ/cm〜4000mJ/cmの照射量が好ましい。その後必要に応じて、90℃〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2μm〜8μm、好ましくは4μm〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量部に対し通常0.1質量部〜4質量部、好ましくは0.5質量部〜2質量部、更に、好ましくは0.9質量部〜1.5質量部程度である。
【0031】
本発明の液晶シール剤は、熱硬化性が非常に良好であり、液晶滴下工法における加熱工程において速やかに硬化する。従って、構成成分の液晶への溶出も極めて少なく、液晶表示セルの表示不良を低減することが可能である。また、保存安定性にも優れる為、液晶表示セルの製造に適している。更に、その硬化物は接着強度、耐熱性、耐湿性等の各種硬化物特性にも優れる為、本発明の液晶シール剤を用いることにより、信頼性に優れる液晶表示セルを作成することが可能である。また、本発明の液晶シール剤を用いて作成した液晶表示セルは、電圧保持率が高く、イオン密度が低いという液晶表示セルとして必要な特性も充足される。
【実施例】
【0032】
以下合成例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0033】
[合成例1]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシアクリレートの合成
ビスフェノールA型エポキシ樹脂282.5g(製品名:YD−8125、新日鉄化学株式会社製)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするビスフェノールA型のエポキシアクリレート(アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂)395gを得た(KAYARADRTMR−93100)。
【0034】
[合成例2]
ビスフェノールA型エポキシアクリレートの酸無水物付加物の合成
合成例1で得られたビスフェノールA型エポキシアクリレート4.84g、4−ジメチルアミノピリジン0.049g、トリエチルアミン6.07g、塩化メチレン1000mlを加え、室温にて撹拌して溶解させた後、テトラヒドロ無水フタル酸18.3gを加え室温で3時間撹拌した。得られた反応液を6回水洗した後、塩化メチレンを留去することにより分子内にカルボキシ基を有するビスフェノールA型エポキシアクリレート7gを得た。LC MS(m/z)=787(M−H)、IR 1709cm−1(COOH)。
【0035】
[合成例3]
アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルの合成
レゾルシンジグリシジルエーテル181.2g(ナガセケムテックス株式会社)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするレゾルシンジグリシジルエーテルのエポキシアクリレート(アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテル)253gを得た。
[合成例4]
アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルの酸無水物付加物の合成
合成例3で得られたレゾルシンジグリシジルエーテルのエポキシアクリレート3.66g、4−ジメチルアミノピリジン0.049g、トリエチルアミン6.07g、塩化メチレン1000mlを加え、室温にて撹拌して溶解させた後、無水マレイン酸11.8gを加え室温で2時間撹拌した。得られた反応液を6回水洗した後、塩化メチレンを留去することにより分子内にカルボキシ基を有するアクリル化レゾルシノールジグリシジルエーテル5gを得た。LC MS(m/z)=561(M−H)、IR 1705cm−1(COOH)。
【0036】
[実施例1〜3、比較例1〜4]
下記表1に示す割合で各硬化性樹脂成分(成分(a)、(c))を混合攪拌した後、90℃で加熱溶解した。そこへ、光ラジカル重合開始剤(成分(f))を加熱溶解させた後、室温まで冷却し、シランカップリング剤(成分(d))、無機フィラー(成分(e))、熱硬化剤(成分(b))を添加し、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、液晶滴下工法用シール剤実施例1〜3を調製した。
また、同様に下記表1に示す割合で硬化性樹脂成分(成分(c))を90℃で加熱した。そこへ、光ラジカル重合開始剤(成分(f))を加熱溶解させた後、室温まで冷却し、シランカップリング剤(成分(d))、無機フィラー(成分(e))、熱硬化剤(成分(b))、硬化促進剤を添加し、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、液晶滴下工法用シール剤比較例1〜4を調製した。
【0037】
評価試験は下記の方法で実施した。
【0038】
(接着強度測定)
得られた液晶シール剤100gにスペーサとして5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌を行う。この液晶シール剤を50mm×50mmのガラス基板上に塗布し、その液晶シール剤上に1.5mm×1.5mmのガラス片を貼り合わせUV照射機により3000mJ/cmの紫外線を照射後、オーブンに投入して120℃1時間熱硬化させた。ガラス片のせん断接着強度をボンドテスター(SS−30WD:西進商事株式会社製)にて測定した。結果を表1に示す。
【0039】
(耐湿接着強度測定)
上記の液晶シール剤接着強度テストと同一の測定サンプルを作成する。その測定サンプルを121℃、2気圧、湿度100%の条件で、プレッシャークッカー試験機(TPC−411:タバイエスペック株式会社製)に12時間投入したサンプルを上記ボンドテスターにて測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
(吸湿率測定)
得られた液晶シール剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み厚み100μmの薄膜としたものにUV照射機により3000mJ/cmの紫外線を照射後、オーブンに投入して120℃1時間熱硬化させ、硬化後PETフィルムを剥がしてサンプルとした。サンプルの重量を測定した後、60℃90%RHの環境下に12時間放置し、再度重量測定をする。初期重量に対する重量変化率(%)を表1に示す。
【0041】
(ポットライフ測定)
得られた液晶シール剤の25℃における粘度変化を測定した。25℃50RH%の条件下で72時間放置した後の粘度測定を行い、初期粘度に対する粘度増加率(%)を表1に示す。
【0042】
(評価用液晶セルの作成)
透明電極付き基板に配向膜液(PIA−5540−05A;チッソ株式会社製)を塗布、焼成し、ラビング処理を施した。この基板に得られた液晶シール剤を貼り合せ後の線幅が1mmとなるようにメインシールおよびダミーシールをディスペンスし、次いで液晶(JC−5015LA;チッソ株式会社製)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。更にもう一枚のラビング処理済み基板に面内スペーサ(ナトコスペーサKSEB−525F;ナトコ株式会社製;貼り合せ後のギャップ幅5μm)を散布、熱固着し、貼り合せ装置を用いて真空中で先の液晶滴下済み基板と貼り合せた。大気開放してギャップ形成した後、シールパターン枠内のみマスクをしてUV照射機により50mJ/cmの紫外線を照射後、オーブンに投入して120℃1時間熱硬化させ評価用液晶テストセルを作成した。
【0043】
作成した評価用液晶セルのシールの耐差込み性およびシール近傍の液晶配向乱れを偏光顕微鏡にて観察し、耐差込み性及びシール近傍の液晶配向について以下に示す基準に従って評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
(耐差込み性の評価)
◎:シールへの液晶の差込みが0.2mm未満であり、液晶の封止には問題が無いレベルである。
○:シールへの液晶の差込みが0.2mm以上0.4mm未満であり、液晶の封止には問題が無いレベルである。
△:シールへの液晶の差込みが0.4mm以上0.6mm未満であり、液晶の封止には問題が無いレベルである。
×:シールへの液晶の差込みが0.6mm以上1.0mm未満であり、液晶の封止には問題が無いレベルである。
××:シールが決壊しセルが形成できない。
【0045】
(シール近傍の液晶配向の評価)
◎:液晶の配向乱れがシールから0.2mm未満である。
○:液晶の配向乱れがシールから0.2mm以上0.4mm未満である。
△:液晶の配向乱れがシールから0.4mm以上0.6mm未満である。
×:液晶の配向乱れがシールから0.6mm以上1.0mm未満である。
××:シールが決壊しセルが形成出来ない。
【0046】
(硬化速度測定)
得られた液晶シール剤を動的粘弾性率測定装置(Rheosol−G5000、株式会社ユービーエム製)にて複素粘性率を測定した。動的粘弾性率測定装置の設定は、以下のとおりである。コーン:直径20mmのパラレルコーン、周波数:1Hz、歪み角度:3deg.、測定温度30℃から120℃まで18℃/分の速度で昇温させ、その後120℃を維持させた。粘度が10000Pa・sに到達したときの時間を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1の結果より、硬化促進剤成分を含有しない比較例1は硬化性に劣り、その結果パネル表示特性において配向不良を生じている。また、硬化促進剤としてCIC酸やドデカン二酸、熱ラジカル開始剤を用いたものは、硬化性の向上は達成しているものの、液晶汚染性や耐湿接着性に不具合を生じている。これに対し、本願発明に係る実施例1〜3については、硬化性向上を実現しながら、他の特性も使用可能レベルであることが確認される。特に実施例1、2においては全ての特性において非常に優れた結果を示している。この結果より、本願発明の液晶シール剤は、保存安定性、硬化性に優れることから作業性に優れることが言え、また液晶汚染性、耐湿接着性、パネル表示特性に優れることから、液晶表示セルの高信頼性を実現できることが言える。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明の液晶シール剤は、作業性に優れる為、液晶表示セルの安定生産を可能とし、さらには液晶表示セルの長期信頼性確保にも貢献するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子内に活性水素を有する、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂(ただし活性水素として、ヒドロキシ基に含まれる水素は除く)、(b)熱硬化剤を含有することを特徴とする液晶シール剤。
【請求項2】
前記成分(a)が分子内に活性水素を有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂である請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項3】
前記成分(a)が、分子内にカルボキシ基、スルファニル基又はアミノ基を有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂である請求項1又は2に記載の液晶シール剤。
【請求項4】
前記成分(a)が分子内にカルボキシ基を有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項5】
前記成分(a)が分子内にカルボキシ基を有するアクリル化レゾルシノールジグリジルエーテルである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項6】
更に、(c)分子内に活性水素を有さないエポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される1種もしくは2種以上からなる硬化性樹脂を含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液晶シール剤(ただし活性水素として、ヒドロキシ基に含まれる水素は除く)。
【請求項7】
前記成分(a)の含有量が液晶シール剤の総量を100質量部とした場合に、5質量部〜50質量部である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項8】
前記成分(b)熱硬化剤が、多価ヒドラジド化合物である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項9】
前記成分(b)熱硬化剤が、下記式(1)で表される1又は2以上のヒドラジド化合物である請求項8に記載の液晶シール剤。
【化1】

[式中、R〜Rは各々独立して水素原子又は下記式(2)
【化2】

(式中、nは1〜6の整数を示す)
で表される分子骨格を示す]
【請求項10】
更に、(d)シランカップリング剤を含有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項11】
更に、(e)無機フィラーを含有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項12】
更に、(f)光ラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。

【公開番号】特開2013−15645(P2013−15645A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147813(P2011−147813)
【出願日】平成23年7月3日(2011.7.3)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】