説明

液晶ディスプレイ用カラーフィルタ

【課題】 高温高圧下における変形が小さく耐擦過性に優れた着色層を備え表示品質に優れた液晶ディスプレイの製造を可能とするカラーフィルタを提供する。
【解決手段】 平均粒径が10〜20nmの範囲内にある無機粉体、色材および樹脂成分を少なくとも含有した複数色からなる着色層を基板上に所定のパターンで形成してカラーフィルタとする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示品質に優れた液晶ディスプレイの製造が可能なカラーフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、フラットディスプレイとして、カラー液晶ディスプレイが注目されている。カラー液晶ディスプレイの一例として、ブラックマトリックス、複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)からなる着色層、透明導電層(共通電極)および配向層を備えたカラーフィルタと、薄膜トランジスタ(TFT素子)、画素電極および配向層を備えたTFTアレイ基板とを所定の間隙をもたせて向かい合わせ、この間隙部に液晶材料を注入して液晶層としたものがある。着色層は、一般に色材を樹脂成分で保持したものであり、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法、インキジェット法等の種々の方法によりR、G、Bのパターン形成が行なわれる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のカラーフィルタでは、配向層のラビング処理時に着色層に傷がついたり、TFTアレイ基板との組み立て(セル圧着)時の高温高圧下において着色層の変形が生じ易く、これにより液晶ディスプレイの表示画像に色むら等が発生して画像品質の低下を来たすという問題があった。本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高温高圧下における変形が小さく耐擦過性に優れた着色層を備え表示品質に優れた液晶ディスプレイの製造を可能とするカラーフィルタを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明の液晶ディスプレイ用カラーフィルタは、基板と、該基板上に所定のパターンで形成された複数色からなる着色層とを備え、該着色層は少なくとも色材、無機粉体および樹脂成分を含有し、前記無機粉体の平均粒径は10〜20nmの範囲内であるような構成とした。また、本発明の液晶ディスプレイ用カラーフィルタの好ましい態様は、前記着色層が前記無機粉体を5〜20重量%の範囲で含有するような構成とした。
【0005】このような本発明では、含有される無機粉体によって着色層の硬度が高くなり、セル圧着時の高温高圧下における着色層の変形量が小さいものとなり、また、着色層の耐擦過性が向上する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明のカラーフィルタの実施形態の一例を示す縦断面図である。図1において、本発明のカラーフィルタ1は、基板2と、この基板2上に形成されたブラックマトリックス3および着色層4を備え、着色層4は赤色パターン4R、緑色パターン4Gおよび青色パターン4Bが所望のパターン形状で配列されている。
【0007】上記のカラーフィルタ1を構成する基板2としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製1737ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶ディスプレイ用のカラーフィルタに適している。
【0008】また、カラーフィルタ1を構成するブラックマトリックス3は、着色層4からなる表示画素部の間および着色層4の形成領域の外側に設けられている。このようなブラックマトリックス3は、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングして形成したもの、カーボン微粒子等の遮光性粒子を含有させたポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂層を形成し、この樹脂層をパターニングして形成したもの、カーボン微粒子、金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層をパターニングして形成したもの等、いずれであってもよい。
【0009】着色層4は、少なくとも無機粉体、色材および樹脂成分を含有する。使用する無機粉体は、平均粒径が10〜20nmのものであり、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。無機粉体の平均粒径が10nm未満であると、本発明の効果の更なる向上がほとんど得られずに無機粉体のコストが高くなるので好ましくない。また、無機粉体の平均粒径が20nmを超えると、着色層4の光透過性が低下する。
【0010】着色層4における無機粉体の含有量は5〜20重量%、好ましくは10〜20重量%の範囲で設定することができる。無機粉体の含有量が20重量%を超えると、着色パターンの形成精度、光透過性が低下する。一方、無機粉体の含有量が5重量%未満であると、着色層4の硬度が不充分となり、変形量が大きくなったり、傷がつきやすくなり好ましくない。
【0011】ここで、着色層の硬度について図2を参照しながら説明する。着色層にダイナミック硬さ用三角圧子(1150)で厚み方向に0.23mN/秒の割合で5mNまで荷重をかけ、5秒間保持したときの変形量は、図2に示されるようになり、実線は本発明のカラーフィルタにおける着色層の変形量を示すグラフであり、破線は無機粉体を含有しない従来の着色層の変形量を示すグラフである。本発明では、ダイナミック硬さ用三角圧子(1150)で厚み方向に0.23mN/秒の割合で5mNまで荷重をかけ、5秒間保持したときのダイナミック硬さ(Pa)を(株)島津製作所製 島津ダイナミック超微小硬度計にて測定する。本発明のカラーフィルタ1では、着色層4のダイナミック硬さが、従来のカラーフィルタの着色層のダイナミック硬さよりも大きいので、着色層4の変形量が、従来のカラーフィルタの着色層の変形量に比べて小さいものとなる。
【0012】着色層4に含有される色材としては、赤色顔料として、C.I.No.9、97、122、123、149、168、177、180、192、215等、緑色顔料として、C.I.No.7、36等、青色顔料として、C.I.No.15、20、60、64等、黄色顔料として、C.I.No.20、24、86、93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、168等、オレンジ顔料として、C.I.No.36、43、51、55、59、61等、バイオレット顔料として、C.I.No.19、23、29、30、37、40、50等を使用することができる。これらのうち、1種のみで使用してもよく、あるいは、複数を組み合わせて使用してもよく、カラーフィルタの分光調整には、2〜3種を組み合わせて使用することが多い。着色層4における色材の含有量は20〜50重量%の範囲で設定することができる。
【0013】着色層4は、所望の色材と無機粉体を含有した感光性樹脂組成物を使用して、フォトリソグラフィー法、印刷法、転写法、インクジェット法等の公知の方法により形成することができる。感光性樹脂が硬化された樹脂成分は、無機粉体および色材のバインダとしての作用をなすものである。また、着色層4を、例えば、赤色パターン4Rが最も薄く、緑色パターン4G、青色パターン4Bの順に厚くすることにより、着色層4の各色ごとに最適な液晶層厚みの設定が可能なようにしてもよい。
【0014】本発明のカラーフィルタ1では、上述のように着色層4が平均粒径10〜20nmの範囲内にある無機粉体を含有しているのでダイナミック硬さが大きく、上述の図2による説明のように、TFTアレイ基板との組み立て(セル圧着)時の高温高圧下においても、変形量が小さいものとなる。また、着色層4は透明性に優れるとともに、硬度が高く優れた耐擦過性をもつので、配向層のラビング処理等による傷の発生が防止される。
【0015】ここで、本発明のカラーフィルタの着色層形成に使用できる感光性樹脂組成物の一例について説明する。感光性樹脂組成物は、少なくともポリマー、モノマー、光重合開始剤、および、平均粒径が10〜20nmの範囲にある無機粉体を含有するものである。
【0016】感光性樹脂組成物を構成するポリマーとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等、および、重合可能なモノマーであるメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの1種以上と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体(例えば、東亜合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの酸無水物等の1種以上からなるポリマーまたはコポリマー等が挙げられる。
【0017】また、上記のコポリマーにグリシジル基または水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなポリマーの含有量は、感光性樹脂組成物の総固形分において20〜50重量%の範囲で設定することができる。
【0018】感光性樹脂組成物を構成するモノマーとしては、少なくとも1つの重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を用いることができる。具体的には、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、フェノール−エチレンオキサイド変性アクリレート、フェノール−プロピレンオキサイド変性アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ビスフェノールA−エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリレートモノマー、および、これらのアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたエポキシアクリレートオリゴマー、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたウレタンメタクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたポリエステルメタクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたエポキシメタクリレートオリゴマー、アクリレート基を有するポリウレタンアクリレート、アクリレート基を有するポリエステルアクリレート、アクリレート基を有するエポキシアクリレート樹脂、メタクリレート基を有するポリウレタンメタクリレート、メタクリレート基を有するポリエステルメタクリレート、メタクリレート基を有するエポキシメタクリレート樹脂等が挙げられる。これらは使用することができるモノマーの一例であり、これらに限定されるものではない。また、このようなモノマーの含有量は、感光性樹脂組成物の総固形分に対して10〜50重量%の範囲で設定することができる。
【0019】感光性樹脂組成物を構成する光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフォノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ(株)製N1717、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられる。本発明では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上使用することができる。このような光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物の総固形分において3〜10重量%の範囲で設定することができる。
【0020】感光性樹脂組成物における上記無機粉体の含有量は、総固形分において5〜20重量%、好ましくは10〜20重量%の範囲で設定することができる。無機粉体の含有量が20重量%を超えると、着色パターンの形成性、光透過性が低下する。一方、無機粉体の含有量が5重量%未満であると、形成された着色パターンの変形量が大きくなり好ましくない。
【0021】感光性樹脂組成物には、更にエポキシ樹脂を含有することができる。使用するエポキシ樹脂としては、三菱油化シェル(株)製エピコートシリーズ、ダイセル(株)製セロキサイドシリーズ、エポリードシリーズ、または、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールグリシジルエステル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートとラジカル重合可能なモノマーとの共重合エポキシ化合物等を挙げることができる。本発明では、上記のエポキシ樹脂を単独で、または2種以上の混合物として使用することができる。このようなエポキシ樹脂の添加量は、感光性樹脂組成物の総固形分において0〜20重量%の範囲で設定することができる。
【0022】また、感光性樹脂組成物に用いる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられる。
【0023】
【実施例】次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
【0024】[実施例1]まず、赤色パターン用の感光性樹脂組成物として、下記の表1に示すように含有する酸化ケイ素粉体の平均粒径を変えた下記組成の6種の感光性樹脂組成物R−I、R−II、R−III、R−IV、R−V、R−VIを調製した。同様に、緑色パターン用の感光性樹脂組成物として、下記組成の6種の感光性樹脂組成物G−I、G−II、G−III、G−IV、G−V、G−VIを調製した。また、青色パターン用の感光性樹脂組成物として、下記組成の6種の感光性樹脂組成物B−I、B−II、B−III、B−IV、B−V、B−VIを調製した。
【0025】
赤色パターン用の感光性樹脂組成物の組成 ・酸化ケイ素(コロイダルシリカ) … 2重量部 (日産化学工業(株)製スノーテックスNPC−ST) (固形分表示)
・色材(キノフタレンレッド系顔料) … 36重量部 ・ポリマー … 32重量部 (スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸の共重合体)
・モノマー … 16重量部 (ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤 … 6重量部 (チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)
・溶剤 … 200重量部 (プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0026】
緑色パターン用の感光性樹脂組成物の組成 ・酸化ケイ素(コロイダルシリカ) … 5重量部 (日産化学工業(株)製スノーテックスNPC−ST) (固形分表示)
・色材(ハロゲン化銅フタロシアニン系顔料) … 36重量部 ・ポリマー … 32重量部 (スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸の共重合体)
・モノマー … 16重量部 (ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤 … 6重量部 (チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)
・溶剤 … 200重量部 (プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0027】
青色パターン用の感光性樹脂組成物の組成 ・酸化ケイ素(コロイダルシリカ) … 10重量部 (日産化学工業(株)製スノーテックスNPC−ST) (固形分表示)
・色材(フタロシアニンブルー顔料) … 36重量部 ・ポリマー … 32重量部 (スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸の共重合体)
・モノマー … 16重量部 (ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤 … 6重量部 (チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)
・溶剤 … 200重量部 (プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0028】次に、上記の各着色パターン用の感光性樹脂組成物(I、II、III、IV、V、VI)をガラス基板上にスピンコーターにより塗布し、所定形状の開口部を設けたフォトマスクを介して100mJ/cm2の露光量で露光を行い、現像、加熱処理(200℃、30分間)を行った。次いで、各パターン試料に対し、厚み方向に0.23mN/秒の割合で5mNまで荷重をかけ、5秒間保持したときのダイナミック硬さ(Pa)を(株)島津製作所製 島津ダイナミック超微小硬度計にて測定し、図2に示されるダイナミック硬さ(Pa)を下記の表1に示した。
【0029】次に、カラーフィルタ用の基板として、300mm×400mm、厚さ0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがって洗浄した後、基板の片側全面にスパッタリング法により金属クロムからなる遮光層(厚さ0.1μm)を成膜した。次いで、この遮光層に対して、通常のフォトリソグラフィー法によって感光性レジスト塗布、マスク露光、現像、エッチング、レジスト層剥離を行ってブラックマトリックスを形成した。
【0030】次に、ブラックマトリックスが形成された基板全面に、赤色パターン用の感光性樹脂組成物(R−I)をスピンコート法により塗布して赤色感光性樹脂層を形成し、プレベーク(100℃、3分間)を行った。その後、所定の着色パターン用フォトマスクを用いて赤色感光性樹脂層をアライメント露光し、現像液(水酸化カリウム水溶液)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(200℃、30分間)を行って、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に赤色パターン(厚み1μm)を形成した。
【0031】同様に、緑色パターン用の感光性樹脂組成物(G−I)を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に緑色パターン(厚み1μm)を形成した。さらに、青色パターン用の感光性樹脂組成物(B−I)を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に青色パターン(厚み1μm)を形成した。次に、着色層上に酸化インジウムスズ(ITO)からなる共通透明電極層を形成した。これにより、図1に示されるような構造のカラーフィルタ(試料I)を得た。
【0032】また、各色の感光性樹脂組成Iの代わりに、各色の感光性樹脂組成物II、III、IV、V、VIを用いた他は、カラーフィルタ試料Iと同様にして、カラーフィルタ(試料II、III、IV、V、VI)を得た。
【0033】一方、透明基板として300mm×400mm、厚さ0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがって洗浄した後、基板上の所定の複数の個所に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTのドレイン電極に接続するように透明画素電極を酸化インジウムスズ(ITO)により形成して、対向電極基板を作製した。
【0034】次に、上記のカラーフィルタ(試料I、II、III、IV、V、VI)の共通透明電極層を覆うように、また、対向電極基板の透明画素電極を覆うように、ポリイミド樹脂塗料(日産化学(株)製SE−7492)を塗布、乾燥して配向層(厚み0.07μm)を設け、ラビング処理を施した。
【0035】次いで、これらのカラーフィルタと対向電極基板を用いて液晶ディスプレイを作製(セル圧着時の温度=180℃)し、表示画像の色むらの有無を観察し、また、コントラスト比を測定して、結果を下記の表1に示した。
【0036】
【表1】


【0037】表1に示されるように、各色の感光性樹脂組成物I、II、IIIを用いて形成されたパターン試料は、いずれもダイナミック硬さが大きく、これらの感光性樹脂組成物を用いて着色層を形成したカラーフィルタを使用した液晶ディスプレイは、着色層の変形量が小さいものであり、色むらがなく、コントラスト比の高い画像表示が可能であった。
【0038】また、感光性樹脂組成物IV、Vを用いて形成したカラーフィルタは、セル組み時の着色層の変形量が小さく、ラビング処理時に傷が発生することはなかった。しかし、着色層の光透過性が悪く、このカラーフィルタIV、Vを使用した液晶ディスプレイの画像品質はコントラスト比が低く、カラーフィルタI、II、IIIを使用した液晶ディスプレイの画像品質よりも悪いものであった。さらに、酸化ケイ素を含有しない感光性樹脂組成物VIを用いて着色層を形成したカラーフィルタは、セル組み時の着色層の変形量が大きく、また、ラビング処理時に傷が発生し、画像表示が良好な液晶ディスプレイの製造が困難であった。
【0039】[実施例2]まず、平均粒径が20nmである酸化ケイ素が形成後の着色層中に下記表2に示す含有量で含有されるように、赤色パターン用の感光性樹脂組成物として下記の5種の感光性樹脂組成物R−1、R−2、R−3、R−4、R−5を調製した。尚、赤色の色材としてキノフタレンレッド系顔料を用いた。
【0040】同様に、緑色パターン用の感光性樹脂組成物として、下記組成の5種の感光性樹脂組成物G−1、G−2、G−3、G−4、G−5を調製した。尚、緑色の色材としてハロゲン化銅フタロシアニン系顔料を用いた。また、青色パターン用の感光性樹脂組成物として、下記組成の5種の感光性樹脂組成物B−1、B−2、B−3、B−4、B−5、を調製した。尚、青色の色材としてフタロシアニンブルー顔料を用いた。
【0041】
感光性樹脂組成物R−1、G−1、B−1の組成 ・酸化ケイ素(コロイダルシリカ) … 3重量部 (日産化学工業(株)製スノーテックスNPC−ST) (固形分表示)
・色材 … 37重量部 ・ポリマー … 35重量部 (スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸の共重合体)
・モノマー … 18重量部 (ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤 … 7重量部 (チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)
・溶剤 … 200重量部 (プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0042】
感光性樹脂組成物R−2、G−2、B−2の組成 ・酸化ケイ素(コロイダルシリカ) … 10重量部 (日産化学工業(株)製スノーテックスNPC−ST) (固形分表示)
・色材 … 33重量部 ・ポリマー … 34重量部 (スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸の共重合体)
・モノマー … 17重量部 (ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤 … 6重量部 (チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)
・溶剤 … 200重量部 (プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0043】
感光性樹脂組成物R−3、G−3、B−3の組成 ・酸化ケイ素(コロイダルシリカ) … 20重量部 (日産化学工業(株)製スノーテックスNPC−ST) (固形分表示)
・色材 … 32重量部 ・ポリマー … 29重量部 (スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸の共重合体)
・モノマー … 14重量部 (ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤 … 5重量部 (チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)
・溶剤 … 200重量部 (プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0044】
感光性樹脂組成物R−4、G−4、B−4の組成 ・酸化ケイ素(コロイダルシリカ) … 25重量部 (日産化学工業(株)製スノーテックスNPC−ST) (固形分表示)
・色材 … 30重量部 ・ポリマー … 26重量部 (スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸の共重合体)
・モノマー … 14重量部 (ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤 … 5重量部 (チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)
・溶剤 … 200重量部 (プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0045】
感光性樹脂組成物R−5、G−5、B−5の組成 ・酸化ケイ素(コロイダルシリカ) … 0重量部 (日産化学工業(株)製スノーテックスNPC−ST) (固形分表示)
・色材 … 40重量部 ・ポリマー … 35重量部 (スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸の共重合体)
・モノマー … 18重量部 (ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤 … 7重量部 (チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)
・溶剤 … 200重量部 (プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0046】次に、上記の各着色パターン用の感光性樹脂組成物(1、2、3、4、5)について、実施例1と同様にして、ダイナミック硬さを測定し下記の表2に示した。
【0047】次に、実施例1と同様にして、ガラス基板上にブラックマトリックスと着色層を形成し、着色層上に酸化インジウムスズ(ITO)からなる共通透明電極層を形成した。これにより、図1に示されるような構造のカラーフィルタ(試料1、2、3、4、5)を得た。次に、上記のカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして、液晶ディスプレイを作製し、表示画像の色むらの有無を観察して、結果を下記の表2に示した。
【0048】
【表2】


【0049】表2に示されるように、着色層中に酸化ケイ素を5〜20重量%の範囲で含有するカラーフィルタ2、3は、着色層のダイナミック硬さが十分に大きく、このため、セル組み時の着色層の変形量が小さく、ラビング処理時に傷が発生することはなく、画像表示が良好な液晶ディスプレイの製造を可能とすることが確認された。
【0050】しかし、着色層中の酸化ケイ素の含有量が3重量%であるカラーフィルタ1、着色層中に酸化ケイ素を含有しないカラーフィルタ5は、着色層のダイナミック硬さが小さく、このため、セル組み時の着色層の変形量が大きく、また、ラビング処理により傷つきが生じ、画像表示が良好な液晶ディスプレイの製造が困難であった。また、着色層中に酸化ケイ素を25重量%含有するカラーフィルタ5は、着色層のダイナミック硬さが大きく、このため、セル組み時の着色層の変形量が小さいものの、着色パターンの形成精度が悪いものであった。
【0051】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば着色層に含有された無機粉体によって着色層の硬度が高くなるので、着色層の耐擦過性が向上し、配向層のラビング処理時の着色層の傷つきが防止され、また、セル圧着時の高温高圧下における着色層の変形量が小さいものとなり、表示品質に優れ信頼性の高い液晶ディスプレイが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカラーフィルタの実施形態の一例を示す縦断面図である。
【図2】荷重と変形量との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…カラーフィルタ
2…基板
3…ブラックマトリックス
4…着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板と、該基板上に所定のパターンで形成された複数色からなる着色層とを備え、該着色層は少なくとも色材、無機粉体および樹脂成分を含有し、前記無機粉体の平均粒径は10〜20nmの範囲内であることを特徴とする液晶ディスプレイ用カラーフィルタ。
【請求項2】 前記着色層は前記無機粉体を5〜20重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ用カラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−162517(P2002−162517A)
【公開日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−362175(P2000−362175)
【出願日】平成12年11月29日(2000.11.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】