説明

液晶パネルの封止方法及び封止装置

【課題】液晶パネルを構成する2枚の基板間に注入した液晶を封止する封止材を塗布後に、基板の表裏面に回り込んだ余剰の封止材を効率よく除去する液晶パネルの封止方法及び封止装置を提供する。
【解決手段】液晶パネル15は2枚のフィルム状の薄型基板16a、16bを、液晶注入口17を除く縁周辺部を囲繞する枠状のシール部を介して貼り合わせられ、内部の空洞部に液晶を注入されたのち液晶注入口17に未硬化液状の硬化性の封止材19を塗布される。スリット板23は液晶パネル15の厚さと近似以上の間隙を有するスリット部21と該スリット部21に連続し外方に末広がり状に形成された案内部22とを形成され、液晶パネル15の塗布部よりパネル表裏面に回りこんだ余剰の封止材19a、19bよりも上方の位置cで、スリット部21に液晶パネル15を挿入される。液晶パネル15を矢印dで示す上方に引き上げると、余剰の封止材19a、19bのみがスリット部21により擦り取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶パネルの封止方法及び封止装置に係り、更に詳しくは、液晶パネルを構成する2枚の基板間に注入した液晶を封止する封止材を塗布後に、基板の表裏面に回り込んだ余剰の封止材を効率よく除去する液晶パネルの封止方法及び封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルは、例えば、図5(a)〜(f)に示すような工程により、2枚のガラス基板を用いて製造される。図5(a)に示す2枚のガラス基板1a、1bは、スペーサを兼ねるシール材によって形成された枠状パターン2を縁周辺部に配置され、枠状パターン2を介して2枚のガラス基板1a、1bが貼り合わせられる。枠状パターン2には液晶注入口3が予め形成されている。
【0003】
図5(b)に示すように、貼り合わせた2枚のガラス基板1a、1bで形成された空洞部分4に、液晶注入装置5により、液晶注入口3から液晶6を注入する。その後、図5(c)に示すように、封止装置7により例えば光硬化性樹脂等からなる封止材8で液晶注入口3を封止する。
【0004】
その後、図5(d)に示すように、例えば紫外線照射装置9により、紫外線11を封止材8に照射して、封止材8を硬化させる。これにより、図5(e)の斜視図、及び図5(f)の側面図に示すように、固化した封止材8によって、図5(b)〜(d)に示した液晶注入口3が封止される。
【0005】
ところで、液晶パネルは基板の軽量化、薄板化が進んでおり、例えば、プラスチック製の液晶パネルでは、一枚のプラスチック基板の厚さが0.1mm〜0.4mm程度と、非常に薄いものが使用されるようになっている。
【0006】
このように基板の厚みが薄くなると、図6(a)の斜視図及び側面図に示すように、封止材8が液晶注入口のある基板端面だけに留まらず、表面張力により基板端面から基板表面へ回り込む状態で基板端面へのはみ出し部分8a、8bを形成し、このはみ出し部分8a、8bがプラスチック製基板12a、12bからなる液晶パネル12の面に付着してしまう。
【0007】
このままでは、基板表面へ回り込んだ封止材8のはみ出し部分8a、8bによって、液晶パネル12の面に部分的な厚みの段差が出来るので種々の不具合が生じる。したがって、そのように液晶パネル面に硬化して付着している封止材を除去する作業が必要となる。
【0008】
ガラス基板のようにパネルの表面が硬いものは、基板表面に回り込んだ封止材8を、研磨したりカッタを用いたりしてガラス基板を傷つけることなく除去することができる。しかし、基板がプラスチック製基板であると、研磨やカッタによる強制除去の方法は、プラスチック製基板が傷付きやすく適当でない。
【0009】
図6(b)に示す斜視図及び側面図は、液晶パネル12の面側に付着している封止材8のはみ出し部分8a、8bのうち、先ず一方の面のはみ出し部分8aを金属製のへら13等を用い、手作業で除去する工程を示している。
【0010】
図6(c)は、図6(b)に示す手作業の工程を液晶パネル12の両面に行って、はみ出し部分8a、8bの両方を除去して封止材8を用いた封止処理が完了した液晶パネル12の側面を示す図である。しかし、このような手作業は能率がよくない。
【0011】
そこで、基板の表面へ垂れたりはみ出したりした封止材を、基板を損傷することなく削り落として除去し、品質の安定した液晶表示素子(プラスチック製液晶パネル)の製造を可能とするとともに、生産性の向上を図ることができる液晶表示素子の製造方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
この特許文献1の技術は、封止材により液晶を封止した液晶パネルを固定テーブル上面に対し平行に固定配置し、固定テーブルの上面から所定寸法上方を固定テーブルの上面と平行かつ液晶パネルの液晶注入口の形成辺方向に移動可能に配置されたカッタ部材を液晶パネルの表面に対し所定角度で傾斜させてスライド移動させ、基板表面に硬化・付着した過分な封止材を削り落とすというものである。
【0012】
また、開口が形成されたパネル状部材の開口の封止処理において、パネル状部材の表面に封止材を付着させずにその開口を封止するために用いられる開口封止装置が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
この特許文献2の開口封止装置は、パネル状部材を開口が上方を向くように保持し、パネル状部材の開口に対して光硬化型の未硬化液状の封止材を滴下供給し、封止材流下阻止部材によりパネル状部材の上辺部を厚さ方向に両側から挟んで封止材がパネル状部材の表面に流下するのを阻止した状態で、封止材硬化光で封止材を硬化させるといものです。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−131763号公報
【特許文献2】特開2007−011187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1の技術は、硬化した封止剤を除去する方法であるため、液晶パネルに負荷が掛かり、このため、液晶パネルの欠けや封止部の封止材の剥がれなど封止部に破損が生じる恐れがあるという解決すべき課題がある。また、1枚毎の作業であり、大量生産に適さないという解決すべき課題がある。
【0015】
また、特許文献2の技術も、パネル状部材を1枚毎に処理する作業であり、特許文献1の場合と同様に大量生産には適さないという解決すべき課題がある。
【0016】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、液晶パネルを構成する2枚の基板間に注入した液晶を封止する封止材を塗布後に、基板の表裏面に回り込んだ余剰の封止材を効率よく除去する液晶パネルの封止方法及び封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の液晶パネルの封止方法は、可撓性のある液晶パネルの表裏面に余分に付着した硬化性封止材を硬化前に除去する液晶パネルの封止方法であって、上記液晶パネルの厚さ又は、上記液晶パネルの厚さと近似以上の間隙を有するスリット部と該スリット部に連続し外方に末広がり状に形成された案内部とを形成されたスリット板を、スリット板保持装置により水平に保持する工程と、液晶注入口を除く縁周辺部を枠状のシール部により囲繞され、該シール部を介して貼り合わせられた2枚のフィルム状の基板からなり、上記シール部と該シール部を介して貼り合わせられた2枚の上記基板とで形成される空洞部に上記液晶注入口から液晶を注入されてなる可撓性の液晶パネルを、パネル保持装置により上記液晶注入口を下向きにして保持する工程と、上記液晶注入口に未硬化液状の上記硬化性封止材を、硬化性封止材塗布装置により塗布する工程と、上記スリット板保持装置と上記パネル保持装置とを相対的に近づく方向に移動させて、上記パネル保持装置により保持されている上記液晶パネルの上記表裏面に付着した上記硬化性封止材の付着位置よりも上方において、上記スリット板の上記スリット部に上記案内部を介して上記液晶パネルを挿入させる工程と、上記スリット板保持装置と上記パネル保持装置とを相対的に上下方向に遠のく方向に移動させて、上記スリット板を上記液晶パネルよりも下方に移動させて、上記スリット部により上記液晶パネルの表裏面に余分に付着した上記未硬化液状の上記硬化性封止材を擦りとって除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
この液晶パネルの封止方法において、例えば、上記スリット板は2枚で1組となって上記スリット部を形成し、上記スリット板保持装置は、いずれか一方の上記スリット板を他方の上記スリット板に対し上記スリット部の上記間隙の幅方向に移動させて上記スリット部の上記間隙の幅を上記液晶パネルの厚さに近似した幅に調整する、ことを特徴とする。
【0019】
また、例えば、上記スリット部に上記液晶パネルを挿入させた後、上記スリット板を上記液晶パネルよりも下方に相対的に移動させる前に、上記スリット板保持装置と上記パネル保持装置とを相対的に上記スリット板の上記間隙の幅方向に所定の距離を移動させて、上記スリット部を上記液晶パネルに対し上記間隙の幅方向に所定の距離を移動させ、上記スリット部内において上記液晶パネルを屈曲させる、ことを特徴とする。
【0020】
また、例えば、上記スリット板保持装置は複数枚の上記スリット板、又は2枚で1組となる上記複数組の上記スリット板を保持し、上記パネル保持装置は、複数枚の上記液晶パネルを保持する、ことを特徴とする。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の液晶パネルの封止装置は、可撓性のある液晶パネルの表裏面に余分に付着した硬化性封止材を硬化前に除去する液晶パネルの封止装置であって、上記液晶パネルの厚さ又は、上記液晶パネルの厚さと近似以上の間隙を有するスリット部と該スリット部に連続し外方に末広がり状に形成された案内部とを形成されたスリット板を、水平に保持するスリット板保持装置と、液晶注入口を除く縁周辺部を枠状のシール部により囲繞され、該シール部を介して貼り合わせられた2枚のフィルム状の基板からなり、上記シール部と該シール部を介して貼り合わせられた2枚の上記基板とで形成される空洞部に上記液晶注入口から液晶を注入されてなる可撓性の液晶パネルを、上記液晶注入口を下向きにして保持するパネル保持装置と、上記液晶注入口に未硬化液状の上記硬化性封止材を塗布する硬化性封止材塗布装置と、を有し、先ず、上記スリット板保持装置と上記パネル保持装置とは相対的に近づく方向に移動して、上記パネル保持装置により保持されている上記液晶パネルの上記表裏面に付着した上記硬化性封止材の付着位置よりも上方において、上記スリット板の上記スリット部に上記案内部を介して上記液晶パネルを挿入させるよう構成され、次に、上記スリット板保持装置と上記パネル保持装置とは相対的に上下方向に遠のく方向に移動して、上記スリット板を上記液晶パネルよりも下方に移動させて、上記スリット部により上記液晶パネルの表裏面に余分に付着した上記未硬化液状の上記硬化性封止材を擦りとって除去するように構成される、ことを特徴とする。
【0022】
この液晶パネルの封止装置において、例えば、上記スリット板は2枚で1組となって上記スリット部を形成し、上記スリット板保持装置は、いずれか一方の上記スリット板を他方の上記スリット板に対し上記スリット部の上記間隙の幅方向に移動させて上記スリット部の上記間隙の幅を上記液晶パネルの厚さに近似した幅に調整するように構成される、ことを特徴とする。
【0023】
また、例えば、上記スリット部に上記液晶パネルを挿入させた後、上記スリット板を上記液晶パネルよりも下方に相対的に移動させる前に、上記スリット板保持装置と上記パネル保持装置とが相対的に上記スリット部の上記間隙の幅方向に所定の距離を移動して、上記スリット部を上記液晶パネルに対し上記間隙の幅方向に所定の距離を移動させ、上記スリット部内において上記液晶パネルを屈曲させるように構成される、ことを特徴とする。
【0024】
また、例えば、上記スリット板保持装置は複数枚の上記スリット板、又は2枚で1組となる上記複数組の上記スリット板を保持し、上記パネル保持装置は、複数枚の上記液晶パネルを保持するように構成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、除去する余剰の封止材は硬化する前の液状であり、液晶パネルの液晶注入口から回り込んでパネル表裏に付着している封止材のみを、液晶パネルを挟んだスリット部で擦り取るので、液晶パネルに負荷が加わらず、したがって薄型フィルム状の液晶パネルであっても液晶パネルを損傷する恐れがない。
【0026】
また、同様に封止材は硬化する前の液状であるため、液晶パネルの表裏面に付着した余分の封止材のみが擦り取られて除去され、封止口の封止材は封止口に付着した状態で残留するので、封止口の封止材までスリット部の除去動作に連れて除去されるような恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)〜(d)は本発明の実施例1〜3に係る液晶パネルの封止方法を行う装置の基本構成と動作を説明する図である。
【図2】(a)は実施例1に係る液晶パネルの封止方法を行う液晶パネルとスリット板の一部分を拡大して配置関係を示す図、図2(b)はその全体装置を示す図、図2(c)はその側面図で動作状態を示す図である。
【図3】(a)は実施例2に係る液晶パネルの封止方法を行うスリット板の構成を説明する図、(b),(c)はスリット板と液晶パネルとの配置関係と動作状態を示す斜視図である。
【図4A】(a)〜(f)は実施例3に係る液晶パネルの封止方法を行う装置の基本構成と動作を説明する図(その1)である。
【図4B】(g),(h)は実施例3に係る液晶パネルの封止方法を行う装置の基本構成と動作を説明する図(その2)である。
【図5】図5(a)〜(f)は従来の2枚のガラス基板を用いてを製造される液晶パネルの液晶注入口を封止材で封止する工程を示す図である。
【図6】(a),(b),(c)は従来の厚さの薄い2枚のプラスチック製フイルム状基板を用いてを製造される液晶パネルの液晶注入口を封止材で封止する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)〜(d)は、本発明の実施例1〜3に係る液晶パネルの封止方法を行う装置の基本構成と動作を説明する図である。
【0029】
尚、図1(a)〜(d)には、液晶パネル15については液晶注入口17の近傍のみを切り欠いて取り出して示し、スリット板23についてもスリット部21と案内部22の近傍のみを切り欠いて取り出して示している。
【0030】
先ず、図1(a)に示す液晶パネル15は、2枚のフィルム状の薄型基板16(16a、16b)が、液晶注入口17を除く縁周辺部を枠状のシール部(図示省略)により囲繞され該シール部を介して貼り合わせられて形成されている可撓性のある液晶パネルである。
【0031】
そして、シール部と、このシール部を介して貼り合わせられた上記2枚の薄型基板16とで形成される空洞部18に、液晶注入口17から既に液晶を一般的な方法で注入されている。そして、液晶パネル15の液晶注入口17は、不図示の封止材塗布装置により、光硬化性または熱硬化性の未硬化液状の封止材19が塗布されている。
【0032】
図1(a)は、上記未硬化液状の封止材19を液晶注入口17に塗布されて液晶注入口17を封止された液晶パネル15が、不図示のパネル保持装置により、液晶注入口17を下向きにして、つまり、封止材19の塗布部を下向きにして保持されている状態を示している。
【0033】
一方では、液晶パネル15の厚さ又は、厚さと近似以上の間隙aを有するスリット部21と、このスリット部21に連続し、外方に末広がり状の開口bを有する案内部22とを形成されたスリット板23が、不図示のスリット板保持装置により水平に保持されている。
【0034】
そして、スリット板保持装置とパネル保持装置とを相対的に近づく方向に移動させて、パネル保持装置により保持されている液晶パネル15の表裏面に付着した封止材19a、19b(19bは図の陰になって見えない)の付着位置よりも上方の位置cにおいて、スリット板23のスリット部21に、案内部22を介して液晶パネル15を、図1(c)に示すように、挿入させる。
【0035】
その後、スリット板保持装置とパネル保持装置とを相対的に上下方向に遠のく方向に移動させる。例えば、図1(c)の矢印dで示すように、液晶パネル15を上方に移動させる。つまり、スリット板23を相対的に液晶パネル15よりも下方に移動させる。
【0036】
これにより、スリット板23のスリット部21により、液晶パネル15の表裏面に余分に付着していた未硬化液状の封止材19a、19b(図1(b)及び説明参照)が擦り取られて、図1(d)に示すように、除去される。
【0037】
このように、除去する余剰の封止材19aは硬化する前の液状であり、液晶パネル15の液晶注入口17から回り込んでパネル表裏に付着している余剰の封止材19a、19bのみを、液晶パネル15を挟んだスリット部21で擦り取るので、液晶パネル15に負荷が加わらず、したがって薄型フィルム状の液晶パネルであってもパネルを損傷する恐れがない。
【0038】
また、同様に封止材19は硬化する前の液状であるため、液晶パネル15の表裏面に付着した余分の封止材19a、19bのみが擦り取られて除去され、封止口17の封止材19は封止口17に付着した状態で残留するので、封止口17の封止材19までスリット部の除去動作に連れて除去されるような恐れがない。
【実施例1】
【0039】
図2(a)は、実施例1に係る液晶パネルの封止方法を行う液晶パネルとスリット板の一部分を拡大して配置関係を示す図であり、図2(b)はその全体装置を示す図、図2(c)はその側面図で動作状態を示す図である。
【0040】
尚、図2(a)には、液晶パネル15については液晶注入口17の近傍のみを切り欠いて取り出して示し、スリット板24についてもスリット部21と案内部22の近傍のみを切り欠いて取り出して示している。
【0041】
図2(a)に示すように、本例では、スリット板24は、複数のスリット部21と、これら複数のスリット部21にそれぞれ連続して形成された複数の案内部22を備えている。一方、液晶を注入された後の液晶注入口17を未硬化液状の封止材19で封止さて、液晶注入口17を下に向けた液晶パネル15が、複数のスリット部21に対応する数だけ、配置されている。
【0042】
図2(b),(c)は、図2(a)の全体構成を示している。図2(b)において、複数の案内部22にそれぞれ連続して形成された複数のスリット部21を有するスリット板24は、不図示のスリット板保持装置により水平に保持されている。
【0043】
このスリット板保持装置に保持されたスリット板24に対向して、図2(b),(c)に示すように、液晶パネル15を収容するカセット状の液晶パネル保持装置25と液晶注入口受け台26とを有する治具27が配置されている。
【0044】
この治具27において、各液晶パネル15は、スリット板24のスリット部21の配列間隔に対応する間隔で位置決めされて液晶パネル保持装置25に保持されている。そして各液晶パネル15の液晶注入口17は液晶注入口受け台26の中に突出して配置されている。
【0045】
ここで、スリット板24を、液晶注入口受け台26の前部(図の左方)に形成されている開口部より、図2(c)に矢印fで示すように挿入する。これにより、各液晶パネル15の液晶注入口17のパネル表裏面に付着した封止材19a、19b(図1(b)及び説明参照)の付着位置よりも上方において、各液晶パネル15がスリット板23の各スリット部21に、図1(c)に示したと同様に挿入される。
【0046】
その後、スリット板保持装置とパネル保持装置25とを相対的に上下方向に遠のく方向に移動させる。例えば、図2(c)の矢印eで示すように、パネル保持装置25、つまり液晶パネル15を上方に移動させる。
【0047】
これにより、スリット板24は相対的に液晶パネル15よりも下方に移動し、パネル保持装置25に保持された全ての液晶パネル15の液晶注入口17の周囲から、図1(d)に示したと同様に、パネル表裏面に付着した封止材19a、19bのみが除去される。
【0048】
この場合も、硬化する前の液状の封止材19のパネル表裏面に付着した封止材19a、19bのみを液晶パネル15を挟んだスリット部21で擦り取るので、薄型フィルム状の液晶パネルを損傷する恐れがない。また、封止口17の封止材19までスリット部21の除去動作に連れて除去されるような恐れもない。
【実施例2】
【0049】
図3(a)は、実施例2に係る液晶パネルの封止方法を行うスリット板の構成を説明する図であり、図3(b),(c)はスリット板と液晶パネルとの配置関係と動作状態を示す斜視図である。
【0050】
尚、図3(b),(c)には、スリット板保持装置と液晶パネル保持装置や治具の図示は省略し、液晶パネル15については液晶注入口17の近傍のみを切り欠いて取り出して示している。
【0051】
本例においては、図3(a)に示すように、スリット板30は、複数のスリットを有する2枚のスリット板31(31a、31b)が1組となって、これら2枚のスリット板31を、矢印gで示すように重ねて、図3(b)に示すように、スリット部32を形成するように構成される。
【0052】
図示を省略したスリット板保持装置は、2枚のスリット板31のうちいずれか一方のスリット板31a又は31bを、他方のスリット板31b又は31aに対し、矢印hで示すように、スリット部32の間隙33の幅方向に移動させて、スリット部32の間隙33の幅を液晶パネル15の厚さ又は、厚さと近似以上の幅に調整する。
【0053】
この場合も、図示を省略した治具27(図2(b),(c)参照)において、各液晶パネル15は、上記調整後のスリット部32の間隙33の配列間隔に対応する間隔で位置決めされて液晶パネル保持装置25に保持されている。
【0054】
ここで、スリット板30を、図2(c)に示したと同様に、液晶注入口受け台26の前部開口部より挿入する。これにより、各液晶パネル15の液晶注入口17のパネル表裏面に付着した封止材19a、19bの付着位置よりも上方において、各液晶パネル15が、スリット板30の液晶パネル15の厚さ又は、厚さと近似以上の幅iに調整されていたスリット部32に、図1(c)に示したと同様に挿入される。
【0055】
その後、図示を省略したスリット板保持装置とパネル保持装置とを相対的に上下方向に遠のく方向に移動させる。これにより、図1(d)に示したと同様に、パネル保持装置に保持された全ての液晶パネル15の液晶注入口17の周囲から、パネル表裏面に付着した封止材19a、19bのみが擦り取られて除去される。
【0056】
この場合も、硬化する前の液状の封止材19のパネル表裏面に付着した封止材19a、19bのみを液晶パネル15を挟んだスリット部32で擦り取るので、薄型フィルム状の液晶パネルを損傷する恐れがない。また、封止口17の封止材19までスリット部の除去動作に連れて除去されるような恐れもない。
【実施例3】
【0057】
図4A(a)〜(f)及び図4B(g),(h)は、実施例3に係る液晶パネルの封止方法を行う装置の基本構成と動作を説明する図である。尚、図4A(a)〜(f)及び図4B(g),(h)には、スリット板保持装置と液晶パネル保持装置や治具の図示は省略している。
【0058】
また、図4A(a)〜(f)及び図4B(g),(h)には、図2(b),(c)と同様に液晶パネル保持装置に多数保持されている液晶パネル15のうちの1枚について、液晶注入口17の近傍のみを切り欠いて取り出して示している。
【0059】
また、図4A(a)〜(f)及び図4B(g),(h)に示すスリット板28は、スリット板保持装置に保持されている図2(a)に示したと同様のスリット板24のスリット部21と案内部22が形成されている近傍の部分のみを切り欠いて取り出して示したものである。
【0060】
尚、本例におけるスリット板28のスリット部21のスリット幅は、図2(a)に示したスリット板24のスリット部21のスリット幅よりやや広く形成さている。
【0061】
これにより、図4A(b)に示すように、液晶パネル15の封止材19よりも上方において、液晶パネル15がスリット板24のスリット部21を挿入されたとき、図4A(c)に示すように、スリット部21と液晶パネル15との間に間隙が形成される。
【0062】
本例では、図4A(b),(c)に示すようにスリット部21に液晶パネル15を挿入させた後、スリット板保持装置とパネル保持装置とをスリット部21の間隙の幅方向に所定の距離だけ相対的に移動させる。例えば、図4A(d)の矢印pで示すように、スリット板28を液晶パネル15に対し間隙の幅方向(図4A(d)では右方向)に所定の距離移動させる。
【0063】
この移動は、図4A(d)に示すように、スリット部21内において液晶パネル15を矢印qで示す方向に屈曲させる。液晶パネル15が屈曲すると、スリット板28の上面ではスリット部21の破線丸kで示す角部に液晶パネル15の一方(図4A(d)では左側)の面が当接し、スリット板28の下面ではスリット部21の破線丸mで示す角部に液晶パネル15の他方(図4A(d)では右側)の面が当接する。
【0064】
その後、スリット板保持装置とパネル保持装置とを相対的に上下方向に遠のく方向に移動させる。例えば、図4A(d),(e)の矢印nで示すように、液晶パネル15を上方に移動させる。
【0065】
これにより、スリット板28が相対的に液晶パネル15よりも下方に離れていく際、図4A(d)に示す上面角部kに液晶パネル15の一方(図4A(d)では左側)の面が摺接して、パネル裏面の余剰の封止材19bが擦り取られ、下面角部mに液晶パネル15の他方(図4A(d)では右側)の面が摺接して、パネル表面の余剰の封止材19aが擦り取られる。
【0066】
これにより、スリット板28のスリット部21により、液晶パネル15の表裏面に余分に付着していた未硬化液状の封止材19a、19bが擦り取られて、図4A(f)に示すように、除去される。また、図4B(g),(h)のように、スリット21を中心にスリット部を傾斜させ、パネル15本体側から見たスリット幅が狭くし、スリット21の内側角(図4B(h)でk,mで示される部分)との接触で封止剤19a,19bのみを除去できるようにしても良い。
【0067】
本例の場合も、封止材19(19、19a、19b)は、硬化する前の液状の封止材であり、スリット部21の上下2箇所の角部k及びmでパネル表裏面に付着した封止材19a、19bのみが擦り取られる。また、液晶パネル15は2枚のフィルム状の薄型基板から構成された可撓性のあるパネルであるので屈曲によって過剰な負荷が掛ることはない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、液晶パネルの封止方法及び封止装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1a、1b ガラス基板
2 枠状パターン
3 液晶注入口
4 空洞部分
5 液晶注入装置
6 液晶
7 封止装置
8 封止材
8a、8b はみ出し部分
9 紫外線照射装置
11 紫外線
12 液晶パネル
12a、12b プラスチック製基板
13 金属製のへら
15 液晶パネル
16(16a、16b) フィルム状の薄型基板
17 液晶注入口
18 空洞部
19 硬化性封止材
19a、19b 表裏面に付着した封止材
21 スリット部
22 案内部
23、24 スリット板
25 液晶パネル保持装置
26 液晶注入口受け台
27 治具
28 スリット板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある液晶パネルの表裏面に余分に付着した硬化性封止材を硬化前に除去する液晶パネルの封止方法であって、
前記液晶パネルの厚さ又は、前記液晶パネルの厚さと近似以上の間隙を有するスリット部と該スリット部に連続し外方に末広がり状に形成された案内部とを形成されたスリット板を、スリット板保持装置により水平に保持する工程と、
液晶注入口を除く縁周辺部を枠状のシール部により囲繞され、該シール部を介して貼り合わせられた2枚のフィルム状の基板からなり、前記シール部と該シール部を介して貼り合わせられた2枚の前記基板とで形成される空洞部に前記液晶注入口から液晶を注入されてなる可撓性の液晶パネルを、パネル保持装置により前記液晶注入口を下向きにして保持する工程と、
前記液晶注入口に未硬化液状の前記硬化性封止材を、硬化性封止材塗布装置により塗布する工程と、
前記スリット板保持装置と前記パネル保持装置とを相対的に近づく方向に移動させて、前記パネル保持装置により保持されている前記液晶パネルの前記表裏面に付着した前記硬化性封止材の付着位置よりも上方において、前記スリット板の前記スリット部に前記案内部を介して前記液晶パネルを挿入させる工程と、
前記スリット板保持装置と前記パネル保持装置とを相対的に上下方向に遠のく方向に移動させて、前記スリット板を前記液晶パネルよりも下方に移動させて、前記スリット部により前記液晶パネルの表裏面に余分に付着した前記未硬化液状の前記硬化性封止材を擦りとって除去する工程と、
を含むことを特徴とする液晶パネルの封止方法。
【請求項2】
前記スリット板は2枚で1組となって前記スリット部を形成し、前記スリット板保持装置は、いずれか一方の前記スリット板を他方の前記スリット板に対し前記スリット部の前記間隙の幅方向に移動させて前記スリット部の前記間隙の幅を前記液晶パネルの厚さに近似した幅に調整する、ことを特徴とする請求項1記載の液晶パネルの封止方法。
【請求項3】
前記スリット部に前記液晶パネルを挿入させた後、前記スリット板を前記液晶パネルよりも下方に相対的に移動させる前に、前記スリット板保持装置と前記パネル保持装置とを相対的に前記スリット板の前記間隙の幅方向に所定の距離を移動させて、前記スリット部を前記液晶パネルに対し前記間隙の幅方向に所定の距離を移動させ、前記スリット部内において前記液晶パネルを屈曲させる、ことを特徴とする請求項1又は2記載の液晶パネルの封止方法。
【請求項4】
前記スリット板保持装置は複数枚の前記スリット板、又は2枚で1組となる前記複数組の前記スリット板を保持し、前記パネル保持装置は、複数枚の前記液晶パネルを保持する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の液晶パネルの封止方法。
【請求項5】
可撓性のある液晶パネルの表裏面に余分に付着した硬化性封止材を硬化前に除去する液晶パネルの封止装置であって、
前記液晶パネルの厚さ又は、前記液晶パネルの厚さと近似以上の間隙を有するスリット部と該スリット部に連続し外方に末広がり状に形成された案内部とを形成されたスリット板を、水平に保持するスリット板保持装置と、
液晶注入口を除く縁周辺部を枠状のシール部により囲繞され、該シール部を介して貼り合わせられた2枚のフィルム状の基板からなり、前記シール部と該シール部を介して貼り合わせられた2枚の前記基板とで形成される空洞部に前記液晶注入口から液晶を注入されてなる可撓性の液晶パネルを、前記液晶注入口を下向きにして保持するパネル保持装置と、
前記液晶注入口に未硬化液状の前記硬化性封止材を塗布する硬化性封止材塗布装置と、
を有し、
先ず、前記スリット板保持装置と前記パネル保持装置とは相対的に近づく方向に移動して、前記パネル保持装置により保持されている前記液晶パネルの前記表裏面に付着した前記硬化性封止材の付着位置よりも上方において、前記スリット板の前記スリット部に前記案内部を介して前記液晶パネルを挿入させるよう構成され、
次に、前記スリット板保持装置と前記パネル保持装置とは相対的に上下方向に遠のく方向に移動して、前記スリット板を前記液晶パネルよりも下方に移動させて、前記スリット部により前記液晶パネルの表裏面に余分に付着した前記未硬化液状の前記硬化性封止材を擦りとって除去するように構成される、
ことを特徴とする液晶パネルの封止装置。
【請求項6】
前記スリット板は2枚で1組となって前記スリット部を形成し、前記スリット板保持装置は、いずれか一方の前記スリット板を他方の前記スリット板に対し前記スリット部の前記間隙の幅方向に移動させて前記スリット部の前記間隙の幅を前記液晶パネルの厚さに近似した幅に調整するように構成される、
ことを特徴とする請求項5記載の液晶パネルの封止装置。
【請求項7】
前記スリット部に前記液晶パネルを挿入させた後、前記スリット板を前記液晶パネルよりも下方に相対的に移動させる前に、前記スリット板保持装置と前記パネル保持装置とが相対的に前記スリット部の前記間隙の幅方向に所定の距離を移動して、前記スリット部を前記液晶パネルに対し前記間隙の幅方向に所定の距離を移動させ、前記スリット部内において前記液晶パネルを屈曲させるように構成される、
ことを特徴とする請求項5又は6記載の液晶パネルの封止装置。
【請求項8】
前記スリット板保持装置は複数枚の前記スリット板、又は2枚で1組となる前記複数組の前記スリット板を保持し、前記パネル保持装置は、複数枚の前記液晶パネルを保持するように構成される、
ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1つに記載の液晶パネルの封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114064(P2013−114064A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260568(P2011−260568)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】