説明

液晶パネルの製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は石英板あるいはソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等の透明基板上に多結晶シリコン、あるいはアモルファスシリコンの薄膜シリコン卜ランジスタを有する液晶パネルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年情報化社会といわれる中でコンビューター関連機器の発展には目ざましいものがあり、これにともない表示装置も従来からのCRTにかわるものとして平面ディスプレイの開発も盛んに行なわれている。
【0003】特に平面ディスプレイでは液晶を用いたものが低電力、低電圧ならびに受光タイプとしての見易さの面で時計電卓にはもとより家電製品、自動車用バネルとしても巾広く用いられてきている。又現在CRTに替わる安価な平面ディスプレイとして注目されているものに薄膜トランジスタのアクティプマ卜リクスによって液晶を駆動する方式が検討されている。
【0004】これは透明基板上にスイッチング用薄膜トランジスタ回路をマ卜リクス状に形成しこの基板と他の透明ガラス板間に液晶を封入した画像表示用のディスプレイバネルである。
【0005】従来報告されている一般的な薄膜シリコントランジスタの構造は図1の如く先ず透明基板1上に多結晶シリコンあるいはアモルファスシリコン等の薄膜シリコン2を形成後ホ卜エッテングによりトランジスタ形成部のみを残し他の薄膜シリコンを除去する。
【0006】次に該薄膜シリコン表面に酸化膜3を熱酸化方式あるいはCVD方式にて形成し該酸化膜上にゲート電極用の薄膜シリコンを堆積しホトエッチングによりゲート電極を形成する。ゲート電極は不純物を含有する薄膜シリコンを直接堆積する方法か、あるいは薄膜シリコンを堆積後不純物を熱拡散し配線抵抗を下げる工夫がなされる。
【0007】次にイオン打込みを前記ゲート電極をマスクに行ないソース、ドレイン部を形成後基板主面上に絶縁膜4を堆積する。
【0008】次にホ卜エッチングによりコンタクトホールを開孔した後金属配線5を形成する。
【0009】以上の如く従来の一般的な薄膜シリコントランジスタの製法は透明基板が石英板あるいはガラス等の絶縁基板を用いることからトランジスタ形成用の薄膜シリコンを基板主面に直接形成していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこれら透明基板表面は表面研磨に使用されるアルミナ粉未あるいは酸化セリウム等の研磨材が研磨キズ等の表面凹凸部に付着しておりしかも石英板は別としてその他のガラス製基板はナトリウムイオンを始めとする種々の可動イオン及び鉄イオン、銅イオン等の金属イオンが含有されているため、透明基板表面を一般的な洗浄をほどこしても前記汚染物等を完全に除去せしめることは不可能である。
【0011】このため透明基板上に薄膜トランジスタを形成する際に加わる幾多の熱処理過程においてこれら不純物が薄膜シリコン内に浸入しTFT特性に悪影響を及ぼしON電流の低下あるいはOFF電流の異状な増加等初期歩留りの低下は勿論長期信頼性の面でも問題となる。
【0012】しかも純度の悪い透明基板においては不純物による基板の表面リークも問題視される。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、透明なガラス基板上に薄膜トランジスタを有する液晶パネルの製造方法において、該ガラス基板の表面を洗浄する工程と、洗浄されたガラス基板の表面をエッチング除去する工程と、表面がエッチング除去されたガラス基板上に該ガラス基板とは組成を異にする絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜上に薄膜トランジスタのソース・ドレイン領域となるシリコン薄膜を形成する工程と、該ソース・ドレイン領域の一方に電気的に接続される透明導電膜を該絶縁膜上に形成する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
【0015】
【発明の実施の形態】
実施例1図2は本発明による透明基板上に薄膜シリコン卜ランジスタを絶縁膜6を介して形成したものである。
【0016】先ず、透明基板(ソーダガラスを使用)7を充分洗浄した後表面をフッ酸の希釈液にて約1000Å除去する。そしてCVD法にて酸化膜6を5000Å形成する。そしてこのCVD酸化膜6上に多結晶シリコン膜8を3000Å形成しホトエッテングにより該多結晶シリコン膜をトランジスタ形成部のみ残し他を除去する。
【0017】次に前記多結晶シリコン膜上にCVD法にてゲート酸化膜9を2000Å堆積し、つづいてゲート電極用のリンドープ多結晶シリコンを堆積し、ホトエッチングにてゲー卜電極を形成する。
【0018】次に前記ゲー卜電極をマスクにリンを高濃度にてイオン打込みする。
【0019】ソースドレインの形成されたトランジスタ部を含む透明基板主面上にCVD法にて酸化膜を5000Å堆積したのちホトエッチングによりソースドレイン部のコンタクトを開孔する。
【0020】次に金属配線材としてアルミシリコン合金を基板主面にスパッタリングしたのちホトエッチングにて金属配線10を形成する。
【0021】以上説明の如く本発明は透明基板上に薄膜シリコントランジスタを形成するに際し先ず透明基板表面層をわずかエッチング除去したのち純度の高いしかも透明基板とは組成の異なるCVD酸化膜を介して薄膜シリコントランジスタを作り込むため基板中の汚染物の侵入を防ぐとともに基板表面の不純物による表面リークの防止とも合わせ特に初期TFT特性の安定化に大きな効果が得られている。
【0022】なお上記ソーダガラス基板の他ホウケイ酸ガラスあるいは他の透明ガラス基板上についても実施例1と同様の方法にて薄膜シリコン卜ランジスタ(多結晶シリコン及びアモルファスシリコントランジスタ)を形成した場合でもやはり同様の特性安定化の確認が得られている。
【0023】実施例2透明基板7’を充分洗浄した後表面層をフッ酸希釈液にて1000Åエッチング除去し、しかる後基板主面上にホスヒンガスを用いて約8モルのリンシリケー卜ガラスをCVD法にて5000Å堆積し、さらに多結晶シリコン膜8’を3000Å形成する。以下の工程は実施例1と同様である。
【0024】絶縁膜としてリンシリケートガラスを用いることにより、リンのゲッタ作用により実施例1に増してパシべーション膜としての効果が大きく初期TFT特性の安定化は勿論のこと畏期安定性でも大きな効果を得た。
【0025】実施例3透明基板7”を先ず充分に洗浄した後フッ酸希釈液にて基板表面を約1000Åエヅチング除去し、しかる後プラズマチッカ膜形成炉にてアルゴンべース1%モノシランガスとN2 ガスを用いて約350℃温度にてチッカ膜を2000Å堆積し、さらに多結晶シリコン膜8”を形成し以下実施例1と同一工程にて薄膜トランジスタを形成した。
【0026】本チッカ膜はプラズマ中においてモノシランガスを用いて形成されるものであり低温にてしかもチッカ膜特有のち密な膜の形成が可能なことから汚染物の侵入を防止する目的として非常に有効な手段であり実施例1、2と同様又はそれ以上の効果が得られている。
【0027】実施例1、2、3の他透明基板上に形成する絶縁膜としてシリカ拡散塗布剤として知られている液状塗布剤を用いてスピンコートした後400℃前後の温度にて加熱し絶縁膜を形成する方法あるいは、液状のポリイミド樹脂をスビンコートし絶縁膜を形成する方法についても試みてみたがそれぞれ持性安定化への効果がみられている。
【0028】実施例4本発明による薄膜シリコントランジスタを用いてアクティブマトリクスを構成した例を説明する。
【0029】図3の如く透明基板11をフッ酸希釈液にて約1000Å表面エッチングした後CVD法にて酸化膜12を堆積したのち多結晶シリコン膜13を堆積したのちホトエッチングにてトランジスタ部を除き他の多結晶シリコン膜を除去する。
【0030】次に前記多結晶シリコン膜の上層にCVD法にてゲー卜酸化膜14を形成し、つづいてゲート電極用のリンドープ多結晶シリコン膜15を形成したのちホ卜エッチングにてゲー卜配線部を形成する。
【0031】次に高濃度のリンをイオン打込みしソースドレイン部を形成する。
【0032】次に基板主面上にCVD法にて酸化膜16を堆積後ホトエッチングにてコンタクトホールを開孔する。
【0033】次に透明導電膜を約500Åスパッタリングしてホトエッチングののち透明電極17を形成する。
【0034】次に金属配線用のアルミシリコン合金をスパツタリングしたのちホトエッチングを行ないソースラインのみ金属配線18を形成する。
【0035】
【発明の効果】本願発明は上記の構成要件を具備することにより、以下に述べる如き顕著な効果を奏することができる。
(a)透明基板の表面を洗浄して、洗浄されたガラス基板の表面をエッチングした後、ガラス基板上に薄膜トランジスタを形成しているため、基板表面の汚れが後工程にて形成されるトランジスタ内部に進入することを防止することができる。
【0036】(b)さらに基板表面にあらかじめ形成される絶縁膜により、透明基板内部より拡散されるNaイオンあるいはFe,Cu等の金属イオンがはトランジスタ内部とともに液晶に拡散されるのを防止することができる。
【0037】又上記の方法にて形成した薄膜シリコントランジスタを用いてなるアクティブマトリクス基板において薄膜シリコン卜ランジスタのTFT特性は安定しており信号電流のON/OFF比は104 以上と良好であった。しかもアクティブマトリクス基板を用いた液晶パネルによる評価においても表示持性は良好であり特に従来方式にて製造された液晶パネルと比べて表面リークは皆無であり、画素ごとの明暗のむら、あるいは画面の場所による表示むら等及び欠陥の発生等において、顕著な差が見られることからも本発明は薄膜シリコントランジスタの特性安定化に及び長期信頼性の向上に大きく寄与するものといえる。
【0038】なお実施例において透明基板上に形成する絶縁膜はすべて単層にて用いているが例えばCVD法による酸化膜を単層で用いるより先ずリンシリケートガラスを形成後連続してノンドープの酸化膜を形成した2層絶縁膜の方が不純物のパシぺーション効果はより効果が得られることは云うまでもなく、さらにノンドープ酸化膜にてリンシリケートガラスを両面からはさみ込み3層方式ではさらにその効果をあげることも確認されている。
【0039】さらに透明基板表面のエッチングに関しては基板の研磨状態により除去する量を加減する必要があるが基板表面の凹凸を考慮し1000Å程度が良好と思われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の製造方式による透明基板上に形成された薄膜シリコントランジスタの断面構造である。
【図2】本発明によるところの透明基板上に形成された薄膜シリコントランジスタの断面構造である。
【図3】本発明による薄膜トランジスタをマトリクス状に透明基板上に構成してなるアクティブマトリクス基板の1部断面構造である。
【符号の説明】
1・・・透明基板
2・・・薄膜シリコン
3・・・酸化膜
4・・.絶縁膜
5・・・金属配線
6・・・絶縁膜(酸化膜)
7、7’、7”・・・透明基板
8、8’、8”・・・多結晶シリコン膜
9・・・ゲート酸化膜
1o・・・金属配線
11・・.透明基板
12・・・酸化膜
13・・・多結晶シリコン膜
14・・・ゲート酸化膜
15・・・多結晶シリコン膜
16・・・酸化膜
17・・・透明電極
18・・・金属配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】透明なガラス基板上に薄膜トランジスタを有する液晶パネルの製造方法において、該ガラス基板の表面を洗浄する工程と、洗浄されたガラス基板の表面をエッチング除去する工程と、表面がエッチング除去されたガラス基板上に該ガラス基板とは組成を異にする絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜上に薄膜トランジスタのソース・ドレイン領域となるシリコン薄膜を形成する工程と、該ソース・ドレイン領域の一方に電気的に接続される透明導電膜を該絶縁膜上に形成する工程とを有することを特徴とする液晶パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2659008号
【登録日】平成9年(1997)6月6日
【発行日】平成9年(1997)9月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−192451
【分割の表示】特願平3−343440の分割
【出願日】昭和57年(1982)3月25日
【公開番号】特開平9−15652
【公開日】平成9年(1997)1月17日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【参考文献】
【文献】特開 昭56−107825(JP,A)
【文献】特開 昭50−29620(JP,A)
【文献】特開 昭50−45465(JP,A)
【文献】特開 昭56−135968(JP,A)
【文献】特開 昭56−27114(JP,A)