説明

液晶ポリエステル含有液状組成物

【課題】流延塗布性が改善された、液晶ポリエステル及び白色顔料を含む液状組成物、及び該液状組成物から得られる樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】液晶ポリエステルと、吸油量が19g/100g未満である白色顔料と、有機溶媒とを含むことを特徴とする液晶ポリエステル含有液状組成物;前記白色顔料の含有量が、液晶ポリエステル100質量部に対して、460〜800質量である前記記載の液晶ポリエステル含有液状組成物;前記いずれかに記載の液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜して得られることを特徴とする樹脂フィルム;前記いずれかに記載の液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜して得られる樹脂フィルムと金属膜が積層して得られることを特徴とする樹脂フィルム積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルと有機溶媒と白色顔料とを含む液晶ポリエステル含有液状組成物、及び該液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜して得られる樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、耐熱性や強度が高く、吸湿性や誘電損失が低いことから、プリント配線板の絶縁層の材料として検討されている。また、この絶縁層に用いられる液晶ポリエステルフィルムを製造する方法として、特定の構造を有する液晶ポリエステルと溶媒とを含む液状組成物を用いる方法が検討されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、前記液状組成物を支持基板上に流延した後、溶媒を除去することにより、液晶ポリエステルフィルムを製造する方法が開示されている。このようにして製造された液晶ポリエステルフィルムは、異方性が小さく、耐屈曲性等の機械的強度に優れている。
【0003】
また、樹脂と白色顔料から得られるフィルムは、反射率が高いことから、発光ダイオード(LED)等の実装用プリント配線板等の光学部材用プリント配線板、発光素子を搭載した基板の表面を保護する導体回路保護用のカバーレイフィルムなど、樹脂回路材料として検討されている。例えば、特許文献3には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、酸化チタン等の白色顔料と、硬化剤と、硬化触媒と、を含有する光学部材のプリント配線板用樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−315678号公報
【特許文献2】特開2005−342980号公報
【特許文献3】特開2010−100800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶ポリエステルに限らず、高反射率の樹脂回路材料を得るための方法としては、樹脂液状組成物に白色顔料を高充填し、支持基板上に流延塗布する方法が挙げられる。しかしながら、白色顔料を樹脂液状組成物に高充填するに際して、吸油量が比較的大きな値を示す白色顔料は、液状組成物へ分散させるとペースト状となり、流延塗布が困難となる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、流延塗布性が改善された、液晶ポリエステル及び白色顔料を含む液状組成物、並びに該液状組成物を成膜して得られる樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、液晶ポリエステルと溶媒とを含む液状組成物に充填される白色顔料を、給油量が特定の範囲内のものとすることにより、該液状組成物がペースト状となることが抑制され、流延塗布性が改善されること見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、液晶ポリエステルと、吸油量が19g/100g未満である白色顔料と、有機溶媒とを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記白色顔料の吸油量が17g/100g未満であることが好ましい。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記白色顔料の含有量が、液晶ポリエステル100質量部に対して、460〜800質量であることが好ましい。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で示される繰返し単位とを有することが好ましい。
【0009】
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【0010】
このような場合においては、前記液晶ポリエステルが、それを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記式(1)で表される繰返し単位を30〜80モル%、前記式(2)で表される繰返し単位を10〜35モル%、前記式(3)で示される繰返し単位を10〜35モル%有することが好ましい。また、前記X及び/又はYが、イミノ基であることが好ましい。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記有機溶媒が、非プロトン性溶媒であることが好ましい。このような場合においては、前記非プロトン性溶媒が、ハロゲン原子を有しない非プロトン性溶媒であることが好ましい。また、前記非プロトン性溶媒が、アミド系溶媒であることも好ましい。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記液晶ポリエステルの含有量が、前記液晶ポリエステル及び前記有機溶媒の合計量に対して、10〜50質量%であることが好ましい。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記白色顔料が酸化チタンを含むことが好ましい。
本発明の樹脂フィルムは、前記いずれかの本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜して得られることを特徴とするものである。
また、本発明の樹脂フィルム積層体は、前記いずれかの本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜して得られる樹脂フィルムと金属膜が積層して得られることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液晶ポリエステルと白色顔料を含み、かつ流延塗布性及び光線反射率に優れた液晶ポリエステル含有液状組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔液晶ポリエステル含有液状組成物〕
本発明において用いられる液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよく、液晶ポリエステルエーテルであってもよく、液晶ポリエステルカーボネートであってもよく、液晶ポリエステルイミドであってもよい。本発明において用いられる液晶ポリエステルとしては、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0013】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなるもの、並びにポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるもの等が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0014】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)等が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)等が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)等が挙げられる。
【0015】
本発明において用いられる液晶ポリエステルとしては、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0016】
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
【0017】
式(1)中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。式(2)及び(3)中、Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。式(3)中、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
【0018】
(4)−Ar4−Z−Ar5
【0019】
式(4)中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。
【0020】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1〜10である。前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは6〜20である。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基毎に、それぞれ独立に、好ましくは2個以下であり、より好ましくは1個以下である。
【0021】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は好ましくは1〜10である。
【0022】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1がp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0023】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2がp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2がm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びAr2がジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0024】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0025】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、よりさらに好ましくは30〜40モル%である。繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、よりさらに好ましくは30〜35モル%である。繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、よりさらに好ましくは30〜35モル%である。繰返し単位(1)の含有量が多いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易い。
【0026】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0027】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0028】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び/又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有することが、溶媒に対する溶解性が優れるので、好ましく、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基であるもののみを有することが、より好ましい。
【0029】
液晶ポリエステルは、それを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよい。溶融重合に用いられる触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0030】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは250℃〜350℃、さらに好ましくは260℃〜330℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易かったり、液状組成物の粘度が高くなり易かったりする。
【0031】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0032】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、液晶ポリエステルに加えて、有機溶媒を含むものである。本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物に用いられる有機溶媒としては、用いる液晶ポリエステルが溶解可能なもの、具体的には50℃にて1質量%以上の濃度([液晶ポリエステル]/[液晶ポリエステル+有機溶媒]×100)で溶解可能なものの中から、適宜選択して用いられる。
【0033】
有機溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;p−クロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール等のハロゲン化フェノール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環芳香族化合物;アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒(アミド結合を有する有機溶媒)、テトラメチル尿素等の尿素化合物;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物;及びヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン化合物が挙げられる。また、2種以上の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
有機溶媒としては、腐食性が低く、取り扱い易いことから、非プロトン性化合物、特にハロゲン原子を有しない非プロトン性化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める非プロトン性化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。また、前記非プロトン性化合物としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒を用いることが好ましく、ハロゲン原子を有しないアミド系溶媒を用いることがより好ましい。
【0035】
また、有機溶媒としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、双極子モーメントが3〜5である化合物を主成分とする溶媒が好ましい。溶媒全体に占める双極子モーメントが3〜5である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。本発明においては、特に、前記非プロトン性化合物として、双極子モーメントが3〜5である化合物を用いることが好ましい。
【0036】
また、有機溶媒としては、除去し易いことから、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を主成分とするとする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める1気圧における沸点が220℃以下である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、前記非プロトン性化合物として、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を用いることが好ましい。
【0037】
液晶ポリエステル含有液状組成物中の液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル及び有機溶媒の合計量に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜45質量%であり、所望の粘度の液状組成物が得られるように、適宜調整される。
【0038】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物に充填される白色顔料としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化珪素、アルミナ、酸化チタン等が挙げられる。中でも、屈折率の高いものが好ましく、酸化チタンが好ましい。より屈折率の高い白色顔料を使用することで、より反射率の高いフィルムを得ることが可能となる。
【0039】
白色顔料として用いられる酸化チタンの結晶形は特に限定されず、ルチル型であってもよく、アナターゼ型であってもよく、両者が混在していてもよい。光反射性能及び耐候性の観点からルチル型の酸化チタンを含むものが好ましく、実質的に全てがルチル型酸化チタンであるものを用いることがより好ましい。
【0040】
酸化チタンフィラーに使用される酸化チタンの製造法は特に限定されるものではなく、イルメナイトを原料として硫酸を作用させる硫酸法や、ルチル鉱等を原料とし、塩素ガスを作用させる塩素法等を用いることができる。これらの中でも、塩素法で製造した酸化チタンは、硫酸法で製造した酸化チタンに比べて、鉄、クロム、バナジウム等の着色性の金属材料不純物の含有量が極めて低いため、反射率及び半田耐熱温度がより良好になる傾向があり、本発明において白色顔料として用いられる酸化チタンとして好ましい。
【0041】
本発明において用いられる白色顔料は、表面処理されたものであってもよい。表面処理を行うことにより、液晶ポリエステル含有液状組成物中における白色顔料の分散性を向上させる効果があり、その結果として、該液晶ポリエステル含有液状組成物から成膜されて得られる樹脂フィルムの反射率を高くすることが可能となる。例えば、本発明で用いられる好適な酸化チタンは、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、及びシロキサン等の有機物からなる群より選択される1種以上で表面処理してなるものである。
【0042】
液晶ポリエステル含有液状組成物中の白色顔料の充填量としては、液晶ポリエステル100質量部に対して100〜900質量部が好ましく、より好ましくは200〜850質量部、さらに好ましくは300〜800質量部であり、よりさらに好ましくは460〜800質量部であり、特に好ましくは500〜750質量部である。白色顔料の充填量が少ないと充分な反射率が得られないことがある。一方で充填量が多いと、流延塗布後、溶剤を乾燥して得られる樹脂フィルムの強度が低くなる傾向にある。
【0043】
液晶ポリエステル含有液状組成物中における分散性を高め、液晶ポリエステル含有液状組成物中において白色顔料をほぼ均一に分散させるためには、白色顔料の粒子径(平均粒径)は0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましく、0.1〜0.5μmであることがさらに好ましい。また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物から成膜されて得られる樹脂フィルムの反射率をより高くするためには、白色顔料の粒子径は0.15〜0.28μmであることがよりさらに好ましい。
【0044】
なお、ここでいう粒子径は、例えば、以下のようにして測定されたものである。まず、白色顔料の外観を走査形電子顕微鏡(SEM)で測定し、得られたSEM写真を画像解析装置(例えば、株式会社ニレコ社製「ルーゼックスIIIU」)を用いて、一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求める。続いて、該分布曲線から累積分布曲線を求め、この累積分布曲線における累積度50%の値を読み取って、粒子径(体積平均粒径)が求められる。
【0045】
本発明において用いられる白色顔料の吸油量は19g/100g未満であり、17g/100g未満の範囲であることが好ましい。吸油量が大きい場合には、白色顔料混合前の液晶ポリエステル溶液(液晶ポリエステルと有機溶媒との混合物)と白色顔料の分散性が低く、液晶ポリエステル含有液状組成物の粘度が上昇し、ペースト状と成り易い。一方で、吸油量の下限に関しては特に限定はされないが、例えば、14以上であることが好ましい。なお、作製出来る範囲において白色顔料の吸油量は低い方が好ましい。吸油量が少ない方が、液晶ポリエステル含有液状組成物に含有させる有機溶媒の量を少なくすることが可能となり、該液晶ポリエステル含有液状組成物から樹脂フィルムを製造する際に、流延塗布後の溶媒除去工程にかかる時間を短縮することが可能となる。
【0046】
なお、ここで示される吸油量とは、JIS K 5101 13−2「顔料試験方法―第13部:吸油量―第2節:煮あまに油法」に記載の吸油量の測定方法により測定された吸油量である。該測定方法を簡単に述べると、以下のようになる。まず、試料100gを測定板上の中央部に取り、煮あまに油(JIS K 5421に規定するもの)をビュレットから1回に4、5滴ずつ徐々に試料中央に滴下し、その都度全体をパレットナイフで十分に練り合わせる。滴下及び練合せを繰り返し、全体が硬いパテ状の塊となったら1滴ごとに練り合わせて、最後の1滴で、パレットナイフを用いてらせん形に巻くことができる状態になったときを終点とする。ただし、らせん状に巻くことができない場合は、煮あまに油の1滴で急激に柔らかくなる直前を終点とする。滴下開始から終点に達するまでの操作時間は、7〜15分間とする。以上の操作で試料に終点までに滴下した煮あまに油の量(質量)を、吸油量とする。
【0047】
白色顔料の吸油量は、例えば、白色顔料の表面積を調整することによって所望の範囲内に調整することができる。白色顔料の表面積を広げることにより、吸油量を高めることが可能であり、逆に白色顔料の表面積を低下させることにより、吸油量を低減することが可能となる。また、白色顔料が凝集構造を有すると、凝集構造内にも油分が取り込まれるため、凝集しやすい白色顔料を用いることにより、吸油量を高めることが可能となり、逆に凝集を抑制出来る白色顔料を用いることにより、吸油量を低減することが可能となる。凝集を抑制する方法としては、白色顔料に表面処理を施すことが知られているが、有機溶媒を用いる系においては、表面処理剤として疎水性を向上させるシロキサン等の有機物等を選択すると好適である。
【0048】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、液晶ポリエステル、白色顔料、及び有機溶剤の他にも、充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでもよい。
【0049】
その他の充填材の例としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材;及び硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機充填材が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
【0050】
添加剤の例としては、レべリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤及び着色剤が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
【0051】
液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
【0052】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、液晶ポリエステル、有機溶媒、白色顔料及び必要に応じて用いられる他の成分を、一括で又は適当な順序で混合することにより調製することができる。他の成分として充填材を用いる場合は、液晶ポリエステルを有機溶媒に溶解させて液晶ポリエステル溶液を得、この液晶ポリエステル溶液に充填材を分散させることにより調製することが好ましい。
【0053】
〔樹脂フィルム及び樹脂フィルム積層体〕
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜することにより、樹脂フィルムが得られる。本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は流延塗布性に優れているため、公知の成膜方法により容易に樹脂フィルムを形成することができる。また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は光線反射率にも優れているため、該液晶ポリエステル含有液状組成物から得られた樹脂フィルムは、光線反射率が高く(例えば76%以上、好ましくは78%以上)、さらに液晶ポリエステルが本来有する高周波特性、低吸水性などの性能にも優れていることから、プリント配線板等の電子部品用フィルム用途(例えば、プリント配線板の絶縁層の材料等)に好適に使用することができる。特に、前記繰返し単位(1)、前記繰返し単位(2)、及び前記繰返し単位(3)を有する液晶ポリエステルを含有させた液晶ポリエステル含有液状組成物から得られた樹脂フィルムは、異方性が小さく、機械的強度にも優れている。
【0054】
なお、明細書中において使用される用語「フィルム」とは、シート状の極薄のフィルムから肉厚のフィルムまでを含有するものであり、シート状のみならず、瓶状の容器形態などを含有するものである。
【0055】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、必要に応じて、フィルターなどによってろ過し、液状組成物中に含まれる微細な異物を除去する。このようにして得られた液状組成物をフィルム状に流延した後に、溶媒を除去することにより、樹脂フィルムが得られる。
【0056】
液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延する方法としては、支持体上にローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段により流延する方法が挙げられる。
【0057】
また、溶媒を除去する方法は特に限定されないが、溶媒の蒸発により行うことが好ましい。溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられるが、中でも生産効率、取り扱い性の点から加熱して蒸発せしめることが好ましく、通風しつつ加熱して蒸発せしめることがより好ましい。この時の加熱条件としては、60〜200℃で10分ないし2時間予備乾燥を行う工程と、200〜400℃で30分ないし5時間熱処理を行う工程とを含むことが好ましい。
【0058】
また、このようにして得られた樹脂フィルムと金属膜とを積層させることにより、樹脂フィルム積層体を形成することができる。前記のように、液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延する際に、金属膜を支持体として用いて、該金属膜上に溶液をフィルム状に流延した後に溶媒を除去することで、本発明の樹脂フィルム積層体は得られる。また、前記のように、液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延する際に、該液晶ポリエステル含有液状組成物に含まれている溶媒に膨潤しない基板を支持体として用いて、該基板上に溶液をフィルム状に流延した後に溶媒を除去し、該基板から成膜された樹脂フィルムを剥し、得られた樹脂フィルムを金属膜に積層させることによっても、本発明の樹脂フィルム積層体は得られる。
【0059】
具体的には、本発明の樹脂フィルム積層体は、例えば以下のような方法で得ることができる。
[方法1]
前記の液晶ポリエステル含有液状組成物を金属膜(金属箔として知られるものを用いることができる)上にローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段により表面平坦かつ均一にフィルム状に流延し、その後、溶媒を除去して、樹脂フィルム及び金属膜の積層体を得る方法。
【0060】
[方法2]
液晶ポリエステル含有液状組成物に含まれている溶媒に膨潤しない表面平坦な基板上に、前記各種手段により液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延した後に、溶媒を除去し、その後該基板から剥離して樹脂フィルムを得、得られた樹脂フィルムと金属膜(金属箔として知られるものを用いることができる)を、該液晶ポリエステル含有液状組成物中に含まれていた液晶ポリエステルの流動開始温度付近でプレス機または加熱ロールにより熱圧着させ積層する方法。
【0061】
[方法3]
液晶ポリエステル含有液状組成物に含まれている溶媒に膨潤しない表面平坦な基板上に、前記各種手段により液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延した後に、溶媒を除去し、その後該基板から剥離して樹脂フィルムを得、得られた樹脂フィルムにスパッタリング、めっき、蒸着などの方法で金属膜を積層する方法。
【0062】
[方法4]
液晶ポリエステル含有液状組成物に含まれている溶媒に膨潤しない表面平坦な基板上に、前記各種手段により液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延した後に、溶媒を除去し、その後該基板から剥離して樹脂フィルムを得、得られた樹脂フィルム及び金属膜(金属箔として知られるものを用いることができる)をホットメルト接着剤などの公知の接着剤を用いて積層する方法。
【0063】
本発明の樹脂フィルム及び樹脂フィルム積層体において、このようにして得られる樹脂フィルムの厚みは、特に限定されることはないが、製膜性や機械特性の観点から、0.5〜200μmであることが好ましく、取り扱い性の観点から5〜125μmであることがより好ましい。
【0064】
該樹脂フィルムには必要に応じて表面処理を施すことができる。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、溶剤処理、UV処理、プラズマ処理などが挙げられる。
【0065】
本発明の樹脂フィルム積層体において、金属膜として用いられる金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられ、中でも、銅が好んで使用される。金属膜としての厚みは1〜150μmの範囲が好ましく、5〜125μmの範囲がより好ましい。
【0066】
このようにして得られた樹脂フィルム積層体は、積層体の反りが少なく、耐折曲性に優れることから、特にフレキシブルプリント配線板などの電子部品用フィルム用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度及び樹脂フィルム積層体の反射率は以下の方法により測定した。
【0068】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター(株式会社島津製作所の「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000P)の粘度を示す温度を測定した。
【0069】
〔樹脂フィルム積層体の反射率測定〕
反射率は、樹脂フィルム面に対して、自記分光光度計(株式会社日立製作所製“U−3500”)を用いて、各波長光(測定波長:410〜800nmを6nm間隔)に対する拡散反射率の平均値とした。なお、反射率は硫酸バリウムの標準白板の拡散反射率を100%とした時の相対値である。
【0070】
[実施例1]
〔液晶ポリエステルの製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)及び無水酢酸2374g(23.25モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで15分かけて昇温し、150℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで2時間50分かけて昇温し、300℃で1時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、235℃であった。次いで、このプレポリマーを、窒素雰囲気下、室温から223℃まで6時間かけて昇温し、223℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、270℃であった。
【0071】
〔液状組成物の調製〕
液晶ポリエステル22質量部を、通風オーブンにより120℃で2時間乾燥した後、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)78質量部に加え、窒素雰囲気下、100℃で2時間加熱した後、冷却して、液晶ポリエステル溶液を得た。
【0072】
〔液晶ポリエステル溶液への酸化チタンの混合〕
液晶ポリエステル溶液113gに、酸化チタン(石原産業株式会社製の「PF-740」、吸油量:16g/100g、粒径:0.25μm、主要表面処理剤:アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、有機化合物)を175g、及び分散メディアであるガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ株式会社製の「EGB503MM」)29gを混合容器に投入し、攪拌脱泡機(株式会社シンキーの「AR−500」)で混合を行い、液状組成物(液晶ポリエステル含有液状組成物)を得た。
【0073】
〔銅箔付き樹脂フィルムの作製〕
得られた液状組成物を、支持基材としての銅箔(三井金属鉱業製の「3EC−VLP」)のシャイン面(平滑面)上にフィルムアプリケーターを用いて流延塗布し、送風乾燥機で50℃、2時間乾燥した。該液状組成物は、何の問題もなく流延塗布することができた。
さらに、窒素雰囲気の熱風オーブン中で、昇温速度約0.7℃/分で、室温から290℃まで6.3時間かけて昇温し、さらに、290℃で3時間保持する熱処理を行った。その後、室温に戻すことで、樹脂層厚み100μm、銅箔厚み18μmの銅箔付き樹脂フィルム(樹脂フィルム積層体)が得られた。
上記条件で、得られた銅箔付き樹脂フィルムの反射率を測定したところ、反射率は81%であった。液状組成物の組成や流延塗布性、及び銅箔付き樹脂フィルムの反射率を表1に示す。
【0074】
[実施例2]
酸化チタンの充填量を変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた液状組成物は、何の問題もなく流延塗布することができ、樹脂層厚み100μm、銅箔厚み18μmの銅箔付き樹脂フィルムを得られた。
上記条件で、得られた銅箔付き樹脂フィルムの反射率を測定したところ、反射率は79%であった。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例3]
酸化チタンの充填量を変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた液状組成物は、何の問題もなく流延塗布することができ、樹脂層厚み100μm、銅箔厚み18μmの銅箔付き樹脂フィルムを得られた。
上記条件で、得られた銅箔付き樹脂フィルムの反射率を測定したところ、反射率は78%であった。結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
酸化チタンを、石原産業株式会社製の「CR−58」(吸油量:19g/100g、粒径:0.28μm、主要表面処理剤:アルミニウム化合物)に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた液状組成物はペースト状であり、フィルムアプリケーターを用いて流延塗布することができず、樹脂フィルムは得られなかった。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
酸化チタンを、石原産業株式会社製の「CR−58」(吸油量:19g/100g、粒径:0.28μm、主要表面処理剤:アルミニウム化合物)に変更した以外は実施例2と同様に行った。得られた液状組成物はペースト状であり、フィルムアプリケーターを用いて流延塗布することができず、樹脂フィルムは得られなかった。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例3]
酸化チタンを、石原産業株式会社製の「CR−58」(吸油量:19g/100g、粒径:0.28μm、主要表面処理剤:アルミニウム化合物)に変更した以外は実施例3と同様に行った。得られた液状組成物は流延塗布することができ、樹脂層厚み100μm、銅箔厚み18μmの銅箔付き樹脂フィルムを得られた。
上記条件で、得られた銅箔付き樹脂フィルムの反射率を測定したところ、反射率は75%であった。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、流延塗布性及び光線反射率に優れているため、光学部材用プリント配線板等の樹脂回路材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルと、吸油量が19g/100g未満である白色顔料と、有機溶媒とを含むことを特徴とする液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項2】
前記白色顔料の吸油量が17g/100g未満である請求項1に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項3】
前記白色顔料の含有量が、液晶ポリエステル100質量部に対して、460〜800質量である請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項4】
前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で示される繰返し単位とを有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【請求項5】
前記液晶ポリエステルが、それを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記式(1)で表される繰返し単位を30〜80モル%、前記式(2)で表される繰返し単位を10〜35モル%、前記式(3)で示される繰返し単位を10〜35モル%有する請求項4に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項6】
前記X及び/又はYが、イミノ基である請求項4又は5に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項7】
前記有機溶媒が、非プロトン性溶媒である請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項8】
前記非プロトン性溶媒が、ハロゲン原子を有しない非プロトン性溶媒である請求項7に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項9】
前記非プロトン性溶媒が、アミド系溶媒である請求項7又は8に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項10】
前記液晶ポリエステルの含有量が、前記液晶ポリエステル及び前記有機溶媒の合計量に対して、10〜50質量%である請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項11】
前記白色顔料が酸化チタンを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜して得られることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜して得られる樹脂フィルムと金属膜が積層して得られることを特徴とする樹脂フィルム積層体。

【公開番号】特開2012−149123(P2012−149123A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6988(P2011−6988)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】