説明

液晶ポリエステル含有液状組成物

【課題】製造工程において、溶媒を除去するために高温下で乾燥させた場合であっても、表面欠陥が顕著に低減されたプリプレグ(樹脂含浸繊維シート)や樹脂フィルムを製造し得る液晶ポリエステル含有液状組成物を提供すること。
【解決手段】液晶ポリエステルと、有機溶媒と、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー及びポリエステル変性ポリジメチルシロキサンからなる群より選択される1種以上からなるレベリング剤とを含み、前記レベリング剤の含有量が、前記液晶ポリエステルと前記有機溶媒との合計100質量部に対して、0.001〜2.0質量部であることを特徴とする液晶ポリエステル含有液状組成物;前記記載の液晶ポリエステル含有液状組成物を支持体上に塗布した後、50℃以上で該支持体上の液晶ポリエステル含有液状組成物から溶媒を除去することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルと有機溶媒とレベリング剤とを含む液晶ポリエステル含有液状組成物、該液晶ポリエステル含有液状組成物から樹脂フィルムを製造する方法、及び該液晶ポリエステル含有液状組成物から液晶ポリエステル含浸繊維シートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、優れた高周波特性、低吸湿性を示すことから、エレクトロニクス基板材料として注目されている。特に、芳香族アミン誘導体由来の構造単位を含む液晶ポリエステルと有機溶媒とを含有する溶液組成物は、支持体上に流延し、該流延物から溶媒を除去することにより異方性の小さい液晶ポリエステルフィルムを製造し得るため、電子部品用フィルムの材料として優れている(例えば、特許文献1又は2参照。)。
【0003】
一方で、樹脂を含有する液状組成物には、必要に応じて、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、難燃化剤等の各種添加剤や、着色用顔料等が含有されている。中でもレべリング剤は、樹脂含有液状組成物から成膜される樹脂フィルムや、樹脂含有液状組成物を含浸して得られる繊維シートの表面が改質されることを期待して添加されている。他の樹脂含有液状組成物と同様に、液晶ポリエステルを含有する液状組成物においても、レベリング剤を添加するといった一般的な記載が開示されている(例えば、特許文献3又は4参照。)。しかしながら、これらの記載には、レべリング剤として用いる化合物やその添加量、得られる効果等に関して、具体的な記載はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−315678号公報
【特許文献2】特開2005−342980号公報
【特許文献3】特開2002−329422号公報
【特許文献4】特開2003−16846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の液晶ポリエステルと溶媒からなる液状組成物を用いて得られる液晶ポリエステル含浸繊維シートやフィルムは、その製造工程において、生産性を上げるために、溶媒の除去を、高温で乾燥することにより行う。しかしながら、高温で乾燥させた際に、溶液粘度の低下及び急激な溶媒の揮発に伴い表面外観が悪くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、製造工程において、溶媒を除去するために高温下で乾燥させた場合であっても、表面欠陥が顕著に低減されたプリプレグ(樹脂含浸繊維シート)や樹脂フィルムを製造し得る液晶ポリエステル含有液状組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、液晶ポリエステルと溶媒とを含む液状組成物に、特定の種類のレベリング剤を特定の濃度範囲で添加することにより、高温下で乾燥させても表面欠陥がないプリプレグやフィルムを与える液状組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、液晶ポリエステルと、有機溶媒と、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー及びポリエステル変性ポリジメチルシロキサンからなる群より選択される1種以上からなるレベリング剤とを含み、前記レベリング剤の含有量が、前記液晶ポリエステルと前記有機溶媒との合計100質量部に対して、0.001〜2.0質量部であることを特徴とするものである。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で示される繰返し単位とを有することが好ましい。
【0009】
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【0010】
このような場合においては、前記液晶ポリエステルが、それを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記式(1)で表される繰返し単位を30〜80モル%、前記式(2)で表される繰返し単位を10〜35モル%、前記式(3)で示される繰返し単位を10〜35モル%有することが好ましい。また、前記X及び/又はYが、イミノ基であることが好ましい。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記有機溶媒が、非プロトン性溶媒であることが好ましい。このような場合においては、前記非プロトン性溶媒が、ハロゲン原子を有しない非プロトン性溶媒であることが好ましい。また、前記非プロトン性溶媒が、アミド系溶媒であることも好ましい。
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物においては、前記液晶ポリエステルの含有量が、前記液晶ポリエステル及び前記有機溶媒の合計量に対して、10〜50質量%であることが好ましい。
本発明の樹脂フィルムの製造方法は、前記いずれかの本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を支持体上に塗布した後、50℃以上で該支持体上の液晶ポリエステル含有液状組成物から溶媒を除去することを特徴とする。
また、本発明の液晶ポリエステル含浸繊維シートの製造方法は、前記いずれかの本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を繊維シートに含浸させた後、50℃以上で該繊維シート中の液晶ポリエステル含有液状組成物から溶媒を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を用いることにより、製造する際に高温で乾燥させた場合であっても、いわゆるゆず肌やオレンジピールと呼ばれる表面の凹凸が顕著に低減され、表面外観に優れた樹脂フィルムやプリプレグを製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔液晶ポリエステル含有液状組成物〕
本発明において用いられる液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよく、液晶ポリエステルエーテルであってもよく、液晶ポリエステルカーボネートであってもよく、液晶ポリエステルイミドであってもよい。本発明において用いられる液晶ポリエステルとしては、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0013】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなるもの、並びにポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるもの等が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0014】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)等が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)等が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)等が挙げられる。
【0015】
本発明において用いられる液晶ポリエステルとしては、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0016】
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
【0017】
式(1)中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。式(2)及び(3)中、Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。式(3)中、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
【0018】
(4)−Ar4−Z−Ar5
【0019】
式(4)中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。
【0020】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1〜10である。前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは6〜20である。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基毎に、それぞれ独立に、好ましくは2個以下であり、より好ましくは1個以下である。
【0021】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は好ましくは1〜10である。
【0022】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1がp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0023】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2がp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2がm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びAr2がジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0024】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0025】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、よりさらに好ましくは30〜40モル%である。繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、よりさらに好ましくは30〜35モル%である。繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、よりさらに好ましくは30〜35モル%である。繰返し単位(1)の含有量が多いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易い。
【0026】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0027】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0028】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び/又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有することが、溶媒に対する溶解性が優れるので、好ましく、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基であるもののみを有することが、より好ましい。
【0029】
液晶ポリエステルは、それを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよい。溶融重合に用いられる触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0030】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは250℃〜350℃、さらに好ましくは260℃〜330℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易かったり、液状組成物の粘度が高くなり易かったりする。
【0031】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0032】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、液晶ポリエステルに加えて、有機溶媒を含むものである。本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物に用いられる有機溶媒としては、用いる液晶ポリエステルが溶解可能なもの、具体的には50℃にて1質量%以上の濃度([液晶ポリエステル]/[液晶ポリエステル+有機溶媒]×100)で溶解可能なものの中から、適宜選択して用いられる。
【0033】
有機溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;p−クロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール等のハロゲン化フェノール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環芳香族化合物;アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒(アミド結合を有する有機溶媒)、テトラメチル尿素等の尿素化合物;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物;及びヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン化合物が挙げられる。また、2種以上の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
有機溶媒としては、腐食性が低く、取り扱い易いことから、非プロトン性化合物、特にハロゲン原子を有しない非プロトン性化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める非プロトン性化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。また、前記非プロトン性化合物としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒を用いることが好ましく、ハロゲン原子を有しないアミド系溶媒を用いることがより好ましい。
【0035】
また、有機溶媒としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、双極子モーメントが3〜5である化合物を主成分とする溶媒が好ましい。溶媒全体に占める双極子モーメントが3〜5である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。本発明においては、特に、前記非プロトン性化合物として、双極子モーメントが3〜5である化合物を用いることが好ましい。
【0036】
また、有機溶媒としては、除去し易いことから、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を主成分とするとする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める1気圧における沸点が220℃以下である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、前記非プロトン性化合物として、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を用いることが好ましい。
【0037】
液晶ポリエステル含有液状組成物中の液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル及び有機溶媒の合計量に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜45質量%であり、所望の粘度の液状組成物が得られるように、適宜調整される。
【0038】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物に用いられるレベリング剤は、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー及びポリエステル変性ポリジメチルシロキサンからなる群より選択される1種以上からなる。レベリング剤としては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー、及びポリエステル変性ポリジメチルシロキサンからなる群より選択される少なくとも1種のレベリング剤を含むことにより、高温下で乾燥させても表面欠陥がない液晶ポリエステル含浸繊維シートや樹脂フィルムを与える液状組成物を得ることができる。
【0039】
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンはポリアルキレンオキシド基をポリジメチルシロキサンの末端に導入した構造を有するものが用いられる。また、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンは、ジメチルシロキサンのメチル基の一部にポリエステル基を導入したものがあげられる。本発明において用いられるポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン及びポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとしては、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0040】
【化1】

【0041】
前記式(5)中、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立にH、CH、C、C、OCH、又はOCを表す。本発明においては、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立にCH、C、OCH、又はOCであることが好ましく、それぞれ独立にCH又はOCであることがより好ましい。
また、前記式(5)中、x、y、zはそれぞれ独立に1〜20の整数である。本発明においては、x、y、zは、それぞれ独立に1〜10の整数であることが好ましく、それぞれ独立に1〜5の整数であることがより好ましい。
さらに、前記式(5)中、Rは下記式(6)又は(7)で表される基である。
【0042】
【化2】

【0043】
前記式(6)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、カチオン重合性基を含む基、又はエチレン性不飽和基を含む基を表す。カチオン重合性基を含む基としては、具体的には、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。また、エチレン性不飽和基を含む基としては、具体的には、ビニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。本発明においては、前記式(6)中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0044】
前記式(6)及び(7)中、nは1〜5の整数である。本発明においては、前記式(6)及び(7)中、nは1〜3の整数であることが好ましい。
また、前記式(6)中のbと前記式(7)中のcは、それぞれ独立に1〜20の整数である。本発明においては、前記式(6)及び(7)中、b及びcはそれぞれ独立に1〜10の整数であることが好ましく、それぞれ独立に1〜5の整数であることがより好ましい。
【0045】
前記式(5)で表される化合物の中でも、R、R、R、R、R、R、Rがそれぞれ独立にCH又はOCであり、x、y、zがそれぞれ独立に1〜10の整数であり、Rが下記式(6’)又は(7’)で表される基である化合物が、本発明において用いられるポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン及びポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとしてより好ましい。下記式(6’)及び(7’)中、n’は1〜3の整数であり、下記式(6’)中のb’と下記式(7’)中のc’は、それぞれ独立に1〜10の整数である。
【0046】
【化3】

【0047】
前記式(5)で表される化合物の中でも、本発明において用いられるレベリング剤としては、下記式(8)で表される化合物がさらに好ましい。なお、下記式(8)中、x’、y’、z’、b”はそれぞれ独立に1〜5の整数であり、n’は1〜3の整数である。
【0048】
【化4】

【0049】
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとしては、市販のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを用いることができる。具体的には、ビッグケミージャパン株式会社製のBYK−300、BYK−306、BYK−307、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、及びBYK−378、共栄社化学株式会社製のグラノール410、信越化学株式会社製のKF−351等が挙げられる。同じく、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとしては、市販のポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることができる。具体的には、ビッグケミージャパン株式会社製のBYK−310、共栄社化学株式会社製のグラノール410等が挙げられる。これらの化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いることもできる。
【0050】
フッ素変性ポリマーは、少なくとも1の水素原子がフッ素原子に置換されているポリマーである。本発明において用いられるフッ素変性ポリマーとしては、下記式(9)で表される化合物であることが好ましい。
【0051】
(9) R−(OAd−(OAe−OR10
【0052】
前記式(9)中、d及びeは、それぞれ独立して0以上の整数を表す。dが0の場合には、前記式(9)中の「−(OAd−」は単結合であり、eが0の場合には、前記式(9)中の「−(OAe−」は単結合である。d及びeの両方が0の場合、前記式(9)で表される化合物は、「R−OR10」となる。本発明においては、dとeのいずれか一方が0であり、他方が1以上の整数であることが好ましい。
【0053】
また、A、Aは、それぞれ独立してフルオロアルキレン基又はアルキレン基を表す。AとAは、同一であってもよく、異なっていてもよい。フルオロアルキレン基は、アルキレン基の少なくとも1の水素原子がフッ素原子に置換されていればよく、全ての水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、1又は数個の水素原子のみがフッ素原子に置換されていてもよい。本発明においては、A、Aは、同一又は異なるアルキレン基であることが好ましく、同一又は異なる炭素数2〜40のアルキレン基であることがより好ましく、同一又は異なる炭素数4〜20のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0054】
さらに、R10は、フルオロアルキル基を表す。フルオロアルキル基は、アルキル基の少なくとも1の水素原子がフッ素原子に置換されていればよく、全ての水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、1又は数個の水素原子のみがフッ素原子に置換されていてもよい。本発明においては、R10は、炭素数1〜10のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数3〜7のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3〜7であり、かつ全ての水素原子がフッ素原子に置換されているフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。
【0055】
また、前記式(9)中、Rは、下記式(10)、(11)又は(12)で表される基である。
【0056】
【化5】

【0057】
本発明において用いられるフッ素変性ポリマーとしては、下記式(13)で表される化合物であることが好ましい。下記式(13)中、Rは前記式(9)と同じである。
下記式(13)中、mは1〜10の整数である。本発明においては、mは3〜7の整数であることが好ましい。
また、下記式(13)中、aは1〜20の整数である。本発明においては、aは2〜10の整数であることが好ましい。
【0058】
【化6】

【0059】
フッ素変性ポリマーとしては、市販のフルオロ化合物を使用することができる。例えば大日本インキ株式会社製のF−116、F−120、F−144D、F−150、F−160、F−171、F−172、F−178K、F−179、F−191、ビッグケミージャパン株式会社製のBYK−340等を好ましいものとして挙げることができる。これらの化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いることもできる。
【0060】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物中のレベリング剤の含有量は、液晶ポリエステルと有機溶媒との合計100質量部に対して、0.001〜2.0質量部である。レベリング剤の含有量が0.001質量部未満では外観改善の効果が低く、2.0質量部を超過すると表面改質に対する効果及び機械強度が低下してしまう。本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物中のレベリング剤の含有量は、液晶ポリエステルと有機溶媒との合計100質量部に対して、0.001〜0.5質量部であることが好ましく、0.005〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0061】
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、レベリング剤以外の添加剤を1種又は2種以上含んでいてもよい。該添加剤の例としては、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料及び顔料等が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
【0062】
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、充填材を含んでいてもよい。該充填材は、無機充填材であってもよく、有機充填材であってもよく、両方であってもよい。無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、有機充填材の例としては、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機充填材が挙げられる。充填材の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
【0063】
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、液晶ポリエステル以外の樹脂を含んでいてもよい。液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル(非液晶性ポリアリレート)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンとの共重合体等のエラストマー;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。液晶ポリエステル以外の樹脂の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
【0064】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、液晶ポリエステル、有機溶媒、レベリング剤及び必要に応じて用いられる他の成分を、一括で又は適当な順序で混合することにより調製することができるが、液晶ポリエステルを有機溶媒に溶解させて、液晶ポリエステル溶液を得、この液晶ポリエステル溶液にレベリング剤を分散させることにより調製することが好ましい。必要に応じて用いられる他の成分は、液晶ポリエステルを有機溶媒に溶解させる際、又はその前若しくは後に、有機溶媒に溶解又は分散させてもよく、液晶ポリエステル溶液にレベリング剤分散させる際、又はその前若しくは後に、液晶ポリエステル溶液に溶解又は分散させてもよい。
【0065】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物から、他の樹脂を含有する液状組成物と同様に、公知の手法により、樹脂フィルムや樹脂含浸繊維シートを製造することができる。本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、樹脂フィルムや樹脂含浸繊維シートの製造に用いる前に、予め、必要に応じて、フィルターなどによってろ過し、液状組成物中に含まれる微細な異物を除去してもよい。
【0066】
なお、明細書中において使用される用語「フィルム」とは、シート状の極薄のフィルムから肉厚のフィルムまでを含有するものであり、シート状のみならず、瓶状の容器形態などを含有するものである。
【0067】
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物から得られる液晶ポリエステル含浸繊維シートや樹脂フィルムは、製造する際に高温で(例えば、50℃以上で)乾燥した場合であっても、ゆず肌が解消され、平坦な表面形状を備える。このため、液晶ポリエステル含浸繊維シートや樹脂フィルムは、表面外観に優れるのみならず、引張強度等の機械強度も向上している。さらに、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、特定のレベリング剤を少量添加することによって表面改質効果が発揮される。このため、添加されたレベリング剤は、得られた液晶ポリエステル含浸繊維シートや樹脂フィルムから導体を形成する際のめっき性にも悪影響を及ぼさない
【0068】
また、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物から得られる液晶ポリエステル含浸繊維シートや樹脂フィルムは、表面外観や引張強度に優れるのみならず、液晶ポリエステルが本来有する高周波特性、低吸水性などの性能にも優れていることから、プリント配線板等の電子部品用フィルム用途に好適に使用することができる。特に、前記繰返し単位(1)、前記繰返し単位(2)、及び前記繰返し単位(3)を有する液晶ポリエステルを含有させた液晶ポリエステル含有液状組成物から得られた樹脂フィルムは、異方性が小さく、機械的強度にも優れている。
【0069】
〔樹脂フィルムの製造方法〕
本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を成膜することにより、樹脂フィルムが得られる。すなわち、本発明の樹脂フィルムの製造方法は、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を支持体上に塗布した後、50℃以上で該支持体上の液晶ポリエステル含有液状組成物から溶媒を除去することを特徴とする。
【0070】
液晶ポリエステル含有液状組成物を支持体上に塗布する方法としては、支持体上にローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段によりフィルム状に流延塗布する方法が挙げられる。
【0071】
液晶ポリエステル含有液状組成物が塗布された支持体を50℃以上、好ましくは80℃以上で加熱することにより、該支持体上の液晶ポリエステル含有液状組成物から溶媒を除去する。この時の加熱条件としては、60〜200℃で10分ないし2時間予備乾燥を行う工程と、例えば、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、200〜400℃で30分ないし5時間熱処理を行う工程とを含むことが好ましい。また、通風しつつ加熱して溶媒を蒸発せしめることがより好ましい。
【0072】
また、このようにして得られた樹脂フィルムと金属膜とを積層させることにより、樹脂フィルム積層体を形成することができる。前記のように、液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延する際に、金属膜を支持体として用いて、該金属膜上に溶液をフィルム状に流延した後に、50℃以上で溶媒を除去することにより、樹脂フィルム積層体は得られる。また、前記のように、液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延する際に、該液晶ポリエステル含有液状組成物に含まれている溶媒に膨潤しない基板を支持体として用いて、該基板上に溶液をフィルム状に流延した後に50℃以上で溶媒を除去し、該基板から成膜された樹脂フィルムを剥し、得られた樹脂フィルムを金属膜に積層させることによっても、樹脂フィルム積層体は得られる。
【0073】
具体的には、樹脂フィルム積層体は、例えば以下のような方法で得ることができる。
[方法1]
前記の液晶ポリエステル含有液状組成物を金属膜(金属箔として知られるものを用いることができる)上にローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段により表面平坦かつ均一にフィルム状に流延し、その後、50℃以上で溶媒を除去して、樹脂フィルム及び金属膜の積層体を得る方法。
【0074】
[方法2]
液晶ポリエステル含有液状組成物に含まれている溶媒に膨潤しない表面平坦な基板上に、前記各種手段により液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延した後に、50℃以上で溶媒を除去し、その後該基板から剥離して樹脂フィルムを得、得られた樹脂フィルムと金属膜(金属箔として知られるものを用いることができる)を、該液晶ポリエステル含有液状組成物中に含まれていた液晶ポリエステルの流動開始温度付近でプレス機または加熱ロールにより熱圧着させ積層する方法。
【0075】
[方法3]
液晶ポリエステル含有液状組成物に含まれている溶媒に膨潤しない表面平坦な基板上に、前記各種手段により液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延した後に、50℃以上で溶媒を除去し、その後該基板から剥離して樹脂フィルムを得、得られた樹脂フィルムにスパッタリング、めっき、蒸着などの方法で金属膜を積層する方法。
【0076】
[方法4]
液晶ポリエステル含有液状組成物に含まれている溶媒に膨潤しない表面平坦な基板上に、前記各種手段により液晶ポリエステル含有液状組成物をフィルム状に流延した後に、50℃以上で溶媒を除去し、その後該基板から剥離して樹脂フィルムを得、得られた樹脂フィルム及び金属膜(金属箔として知られるものを用いることができる)をホットメルト接着剤などの公知の接着剤を用いて積層する方法。
【0077】
このようにして得られる樹脂フィルムの厚みは、特に限定されることはないが、製膜性や機械特性の観点から、0.5〜200μmであることが好ましく、取り扱い性の観点から5〜75μmであることがより好ましい。
【0078】
該樹脂フィルムには必要に応じて表面処理を施すことができる。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、溶剤処理、UV処理、プラズマ処理などが挙げられる。
【0079】
本発明の樹脂フィルム積層体において、金属膜として用いられる金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられ、中でも、銅が好んで使用される。金属膜としての厚みは1〜75μmの範囲が好ましく、5〜50μmの範囲がより好ましい。
【0080】
〔液晶ポリエステル含浸繊維シートの製造方法〕
本発明の液晶ポリエステル含浸繊維シートの製造方法は、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を繊維シートに含浸させた後、50℃以上で該繊維シート中の液晶ポリエステル含有液状組成物から溶媒を除去することを特徴とする。
【0081】
繊維シートを構成する繊維の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維等の無機繊維;及び液晶ポリエステル繊維その他のポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維等の有機繊維が挙げられ、その2種以上を用いてもよい。中でもガラス繊維が好ましい。
【0082】
繊維シートは、織物(織布)であってもよいし、編物であってもよいし、不織布であってもよい。液晶ポリエステル含浸繊維シートの寸法安定性が向上し易いことから、繊維シートは織物であることが好ましい。
【0083】
繊維シートの厚さは、好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜180μm、さらに好ましくは10〜100μmである。
【0084】
液晶ポリエステル含有液状組成物の繊維シートへの含浸は、典型的には、液晶ポリエステル含有液状組成物を仕込んだ浸漬槽に、繊維シートを浸漬することにより行われる。ここで、繊維シートを浸漬する時間や、液晶ポリエステル含有液状組成物が含浸された繊維シートを浸漬槽から引き上げる速度を、液晶ポリエステル含有液状組成物中の液晶ポリエステルの含有量に応じて適宜調整することにより、繊維シートへの液晶ポリエステルの付着量を調整することができる。この液晶ポリエステルの付着量は、得られる液晶ポリエステル含浸繊維シートの全質量に対して、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
【0085】
次いで、液晶ポリエステル含有液状組成物が含浸された繊維シートから、液晶ポリエステル含有液状組成物中の溶媒を除去することにより、液晶ポリエステル含浸繊維シートを得ることができる。溶媒の除去は、液晶ポリエステル含有液状組成物が含浸された繊維シートを50℃以上、好ましくは80℃以上に加熱することにより行う。この時の加熱条件は、樹脂フィルムの製造方法と同様とすることができる。
【0086】
溶媒を除去した後、さらに加熱処理を行ってもよい。この加熱処理により、液晶ポリエステルをさらに高分子量化することができる。この加熱処理は、例えば、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、240〜330℃で、1〜30時間行われる。
【0087】
こうして得られる液晶ポリエステル含浸繊維シートを、必要に応じて複数枚積層した後、その少なくとも一方の面に導体層を形成することにより、導体層付き液晶ポリエステル含浸繊維シートを得ることができる。
【0088】
導体層の形成は、金属箔を接着剤による接着、熱プレスによる融着等により積層することにより行ってもよいし、金属粒子をメッキ法、スクリーン印刷法、スパッタリング法等によりコートすることにより行ってもよい。金属箔又は金属粒子を構成する金属の例としては、銅、アルミニウム及び銀が挙げられるが、導電性やコストの点から、銅が好ましく用いられる。
【0089】
こうして得られる導体層付き液晶ポリエステル含浸繊維シートは、導体層に所定の配線パターンを形成し、必要に応じて複数枚積層することにより、液晶ポリエステル含浸繊維シートを絶縁層とするプリント配線板として好適に用いることができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度は以下の方法により測定した。
【0091】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター(株式会社島津製作所の「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0092】
[製造例1]
〔液晶ポリエステルの合成〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸658.6g(3.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド491.3g(3.25モル)、イソフタル酸539.9g(3.25モル)及び無水酢酸791.2g(7.75モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで15分かけて昇温し、150℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで3時間50分かけて昇温し、300℃に達した時点で反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、187℃であった。次いで、このプレポリマーを、窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間35分かけて昇温し、220℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、固形状の液晶ポリエステルを得た。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。液晶ポリエステルの流動開始温度は、235℃であった。この液晶ポリエステルを窒素雰囲気下、室温から215℃まで6時間50分かけて昇温し、215℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。液晶ポリエステルの流動開始温度は、272℃であった。
【0093】
〔液晶ポリエステル溶液の調製〕
上記で得た液晶ポリエステル22gを、N,N−ジメチルアセトアミド78gに加え、窒素雰囲気下、100℃で2時間攪拌して、液晶ポリエステル溶液1として得た。
【0094】
[製造例2]
〔液晶ポリエステルの合成〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸941g(5.0モル)、4−アミノフェノール273g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)及び無水酢酸1123g(11モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から290℃まで4時間15分かけて昇温し、290℃で30分保持した後に反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、181℃であった。次いで、このプレポリマーを、窒素雰囲気下、室温から250℃まで6時間かけて昇温し、250℃で10時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、固形状の液晶ポリエステルを得た。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。液晶ポリエステルの流動開始温度は、240℃であった。この液晶ポリエステルを窒素雰囲気下、室温から255℃まで6時間かけて昇温し、255℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。液晶ポリエステルの流動開始温度は、325℃であった。
【0095】
〔液晶ポリエステル溶液の調製〕
上記で得た液晶ポリエステル8gを、N−メチルピロリドン92gに加え、窒素雰囲気下、140℃で4時間攪拌して、液晶ポリエステル溶液2として得た。
【0096】
[製造例3]
〔液晶ポリエステル溶液の調製〕
製造例1で製造した液晶ポリエステル溶液1に、充填剤としてシリカ(龍森株式会社製「MP−8FS」、体積平均粒径:0.5μm)を加え、遠心脱泡機(株式会社キーエンスの「HM−500」)で分散させて、液晶ポリエステル溶液3を得た。ここで、シリカの使用量は、液晶ポリエステル及びシリカの合計量に対して20体積%とした。
【0097】
[実施例1]
〔液状組成物の製造〕
製造例1で製造した液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK307(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.15質量部添加し、室温で200rpm、2時間撹拌して液状組成物(液晶ポリエステル含有液状組成物)を調製した。
【0098】
〔液状組成物の評価基板作製〕
自動塗工装置I型(テスター産業製)に電解銅箔(三井金属鉱業製「3EC−VLP」、18μ)を設置し、マイクロメーター付フィルムアプリケーター(SHEEN製)の設定を350ミクロンにして、上記で製造した液状組成物を銅箔光沢面に塗布し、樹脂フィルム積層体を作製した。
【0099】
〔樹脂フィルム積層体の外観評価〕
作製された樹脂フィルム積層体を温度100℃の通風オーブンにて10分乾燥させた後、該樹脂フィルム積層体の表面を目視で観察し、欠陥がないものを○、欠陥(ピンホール、オレンジピール、皮膜割れ、流れ)があるものを×とした。
【0100】
〔樹脂フィルムの強度測定〕
作製された樹脂フィルム積層体を塩化第二鉄水溶液(ボーメ度40°、木田株式会社製)に浸漬することで、銅箔をエッチングした後、水洗することにより、液晶ポリエステルの樹脂フィルムを得た。JIS K 7127「プラスチック−引張特性の試験方法−第3部:フィルム及びシートの試験条件」に準拠して、得られた樹脂フィルムの引張強度(最大点応力)を室温23℃、試験速度5mm/分の条件で測定した。強度上昇率は、レベリング剤未添加の強度を基準に求めた。
【0101】
得られた樹脂フィルム積層体の外観評価及び樹脂フィルムの強度測定の結果を表1に示す。
【0102】
[実施例2]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK307(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.001質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0103】
[実施例3]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK300(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.3質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0104】
[実施例4]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK306(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.025質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0105】
[実施例5]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK306(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.5質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0106】
[実施例6]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK306(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.1質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0107】
[実施例7]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK306(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を2.0質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0108】
[実施例8]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK310(ビックケミー社製:ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン)を0.05質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0109】
[実施例9]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK310(ビックケミー社製:ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン)を0.002質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0110】
[実施例10]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK340(ビックケミー社製:フッ素変性ポリマー)を0.1質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0111】
[実施例11]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK333(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.3質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0112】
[実施例12]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK333(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.002質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0113】
[実施例13]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK331(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.001質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0114】
[実施例14]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK331(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.002質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0115】
[実施例15]
製造例2で製造した液晶ポリエステル溶液2の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK340(ビックケミー社製:フッ素変性ポリマー)を2.0質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0116】
[実施例16]
製造例2で製造した液晶ポリエステル溶液2の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK306(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を2.0質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0117】
[比較例1]
液晶ポリエステル溶液1にレベリング剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0118】
[比較例2]
液晶ポリエステル溶液2にレベリング剤を添加しなかった以外は、実施例15と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0119】
[比較例3]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK306(ビックケミー社製:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を5.0質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0120】
[比較例4]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK350(ビックケミー社製:アクリル系重合物)を1.0質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0121】
[比較例5]
液晶ポリエステル溶液1の100質量部に対して、レベリング剤としてBYK361N(ビックケミー社製:アクリル系重合物)を0.5質量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価、及び樹脂フィルムの強度測定を行った。結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
この結果、レベリング剤未添加の液状組成物から得られた樹脂フィルム積層体は、表面に欠陥が観察された。これに対して、液晶ポリエステル溶液100質量部に対して、レベリング剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はフッ素変性ポリマーを0.001〜2.0質量部添加した液状組成物から得られた樹脂フィルム積層体は、表面に欠陥がなく表面外観が良好であり、かつレベリング剤未添加のものよりも、樹脂フィルム自体の引張強度が上昇していた。一方で、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを液晶ポリエステル溶液100質量部に対して、5.0質量部と多く添加した液状組成物から得られた樹脂フィルム積層体は、表面に欠陥が観察され、表面改質効果は得られなかった上に、レベリング剤未添加のものよりも、樹脂フィルム自体の引張強度が低かった(比較例3)。また、レベリング剤としてアクリル系共重合体物を用いた液状組成物から得られた樹脂フィルム積層体は、表面に欠陥が観察され、かつ樹脂フィルム自体の引張強度が低かった(比較例4、5)。以上の結果から、液晶ポリエステルと有機溶媒を含む液状組成物に、特定の種類のレベリング剤を濃度が特定の範囲内となるように添加することにより、成膜工程において高温で溶媒を除去した場合であっても、該液状組成物から表面外観と機械強度に優れた樹脂フィルムが得られることが明らかである。
【0124】
[実施例17]
樹脂フィルム積層体の外観評価において、樹脂フィルム積層体の乾燥温度を50℃とした以外は、実施例6と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】
[実施例18]
樹脂フィルム積層体の外観評価において、樹脂フィルム積層体の乾燥温度を200℃とした以外は、実施例6と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
[比較例6]
樹脂フィルム積層体の外観評価において、樹脂フィルム積層体の乾燥温度を50℃とした以外は、比較例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
[比較例7]
樹脂フィルム積層体の外観評価において、樹脂フィルム積層体の乾燥温度を200℃とした以外は、比較例1と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
【表2】

【0129】
この結果、実施例6と同様に、実施例17及び18で得られた樹脂フィルム積層体は、いずれも表面に欠陥がなく表面外観が良好であった。一方、レベリング剤を添加しなかった比較例6及び7で得られた樹脂フィルム積層体は、比較例1と同様に表面に欠陥が観察された。以上の結果から、液晶ポリエステルと有機溶媒を含む液状組成物に、特定の種類のレベリング剤を特定の量添加することにより、成膜工程において50℃以上で溶媒を除去した場合であっても、該液状組成物から表面外観と機械強度に優れた樹脂フィルムが得られることが明らかである。
【0130】
[実施例19]
液晶ポリエステル溶液1に代えて、製造例3で製造した液晶ポリエステル溶液3を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価を行った。結果を表3に示す。
【0131】
[比較例8]
液晶ポリエステル溶液3にレベリング剤を添加しなかった以外は、実施例19と同様の操作を行い、得られた樹脂フィルム積層体の外観評価を行った。結果を表3に示す。
【0132】
【表3】

【0133】
この結果、シリカが充填された液晶ポリエステル溶液を用いた実施例19で得られた樹脂フィルム積層体は、シリカを含有していない液晶ポリエステル溶液を用いた実施例6と同様に、表面に欠陥がなく表面外観が良好であった。以上の結果から、その他の添加剤の有無にかかわらず、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物から、成膜工程において50℃以上で溶媒を除去した場合であっても、該液状組成物から表面外観と機械強度に優れた樹脂フィルムが得られることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上説明したように、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物を用いることにより、表面外観や引張強度に優れた樹脂フィルムや液晶ポリエステル含浸繊維シートを製造し得ることから、本発明の液晶ポリエステル含有液状組成物は、通信用、電源用、車載用など各種の用途に用いられるプリント配線板(多層型であると単層型であるとを問わない。)に広く適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルと、有機溶媒と、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー及びポリエステル変性ポリジメチルシロキサンからなる群より選択される1種以上からなるレベリング剤とを含み、前記レベリング剤の含有量が、前記液晶ポリエステルと前記有機溶媒との合計100質量部に対して、0.001〜2.0質量部であることを特徴とする液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項2】
前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で示される繰返し単位とを有する請求項1に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【請求項3】
前記液晶ポリエステルが、それを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記式(1)で表される繰返し単位を30〜80モル%、前記式(2)で表される繰返し単位を10〜35モル%、前記式(3)で示される繰返し単位を10〜35モル%有する請求項2に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項4】
前記X及び/又はYが、イミノ基である請求項2又は3に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒が、非プロトン性溶媒である請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項6】
前記非プロトン性溶媒が、ハロゲン原子を有しない非プロトン性溶媒である請求項5に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項7】
前記非プロトン性溶媒が、アミド系溶媒である請求項5又は6に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項8】
前記液晶ポリエステルの含有量が、前記液晶ポリエステル及び前記有機溶媒の合計量に対して、10〜50質量%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物を支持体上に塗布した後、50℃以上で該支持体上の液晶ポリエステル含有液状組成物から溶媒を除去することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル含有液状組成物を繊維シートに含浸させた後、50℃以上で該繊維シート中の液晶ポリエステル含有液状組成物から溶媒を除去することを特徴とする液晶ポリエステル含浸繊維シートの製造方法。

【公開番号】特開2012−149127(P2012−149127A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7131(P2011−7131)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】