説明

液晶ポリマー、その製造方法、およびその物品

サーモトロピック液晶ポリマーは、芳香族ジカルボン酸およびジオールで作られたポリエステル、1種または複数種のヒドロキシカルボン酸、化学量論的に過剰の芳香族ジオール、およびカルボン酸無水物の反応により生成される。また、この方法により生成される新規の液晶ポリマーも開示する。これらの液晶ポリマーは、鋳造樹脂として有用であり、その成形物品が生成される。詳細には、物品には、これらのLCPを含むフィルム、シート、容器およびその一部が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のサーモトロピック液晶ポリマー、その製造方法、およびその物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)のような部分的芳香族ポリエステル、およびp−ヒドロキシ安息香酸(HBA)のような1種または複数種の芳香族ヒドロキシ−カルボン酸から作られたサーモトロピック液晶ポリマー(LCP)は周知であり、例えば、米国特許公報(特許文献1)および米国特許公報(特許文献2)を参照されたい。
【0003】
米国特許公報(特許文献3)は、部分的芳香族ポリエステル、アシルオキシ芳香族カルボン酸、およびジアシルオキシ芳香族化合物からLCPを作製することを記載している。生成されたポリマーは組成の一様性に優れると言われており、大きな分子量を有することができる。カルボン酸無水物の利用は記載されていない。
【0004】
(非特許文献1)には、酢酸の存在下で部分的芳香族ポリエステル、アセトキシ安息香酸、およびジアセトキシヒドロキノンからのLCPの合成が記載されている。カルボン酸無水物の利用は記載されていない。
【0005】
米国特許公報(特許文献4)には、エチレングリコール(EG)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(HNA)、p−ヒドロキシ安息香酸(HBA)、およびテレフタル酸(T)由来の繰り返し単位を有するLCPが記載されている。EGおよびTは、PETの形で「共に」加えることができる。LCPは、EG、HNAおよびHBAのアシルオキシ誘導体の反応により製造することができるとも、これらの化合物は、カルボン酸無水物を用いることにより原位置でアシル化することができるとも言われているが、後者の場合、高品質LCPを生成するためには、溶媒を存在させる必要がある。化学量論的に過剰の任意の原料を用いて作ることは記載されていない。このLCPは良好な酸素バリア特性を有し、包装時に有用であると報告されている。
【0006】
従来の(非LCP)コポリエステル樹脂は、溶融加工温度が低く、等方性特性を有し、良好な光学特性を有することが知られている。この部類のコポリエステルには、脂肪族成分および脂環式成分が組み込まれており、このため、透過性が高い(>160cm酸素25μm/m・day・atm)。
【0007】
従来のLCPポリエステルは、酸素バリア特性に優れていることが公知であるが、異方性である傾向があり、従って、メルトフローを横切る方向に脆弱であり、破断時の伸びが小さく、不透明である傾向がある。また、多くの場合、溶融加工には高温(>300℃)にすることが必要である。いくつかのLCPのバリア値は、0.3cm酸素μm/m・day・atm程の低さであるが、ダイヘッド温度が320℃である必要がある。これらの特性は、フィルムおよび容器のような多くの包装用途でその有用性を減じる傾向がある。大抵の包装フィルム加工では、構造樹脂と共溶融されるバリア樹脂および275℃で分解を始めることができる共押出し可能な接着剤が必要である。分解生成物により、押出しフィルムゲルに欠点が導入される可能性もあり、または包装された食品に臭気または望ましくない香味が導入される可能性もある。従って、バリア樹脂は、275℃未満、好ましくは230℃未満で、フィルムおよび他の物品に溶融加工可能であることが有利である。
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,778,410号明細書
【特許文献2】米国特許第3,804,805号明細書
【特許文献3】米国特許第4,892,912号明細書
【特許文献4】米国特許第5,326,848号明細書
【特許文献5】米国特許第4,118,372号明細書
【特許文献6】米国特許第6,294,618号明細書
【特許文献7】米国特許第5,408,000号明細書
【特許文献8】米国特許第4,174,358号明細書
【特許文献9】米国特許第3,393,210号明細書
【特許文献10】米国特許第2,512,606号明細書
【特許文献11】米国特許第2,312,966号明細書
【特許文献12】米国特許第2,241,322号明細書
【特許文献13】米国特許第4,076,698号明細書
【特許文献14】米国特許第3,645,992号明細書
【特許文献15】米国特許第5,198,401号明細書
【特許文献16】米国特許第5,405,922号明細書
【特許文献17】米国特許第3,344,014号明細書
【特許文献18】米国特許第5,972,447号明細書
【非特許文献1】B.A.ユルチバエフ(Yul’chibaev)ら、Vysokolekulyarnye Soedineniya、Ser. B、第37巻(1995)166〜171頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
各Rは独立してヒドロカルビレンまたは置換ヒドロカルビレンであり、
各Rは独立して飽和ヒドロカルビレンまたは置換飽和ヒドロカルビレンであり、
各Rは独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
(V)は存在する(I)の合計の約0.4〜約32モルパーセントであり、
(I):[(II)+(V)]のモル比は約1.0:1.0であり、
(I):[(IIIA)+(IIIB)]のモル比は約1.0:1.0〜約1.0:4.0であり、
(IIIA):(IIIB)のモル比は約5:1〜約1:2である)
の繰り返し単位を含む液晶ポリマーを提供する。
【0012】
本発明は、液晶ポリマーの製造方法であって、
(a)加えた溶媒の不在下で、式
【0013】
【化2】

【0014】
の繰り返し単位を有する部分的芳香族ポリエステルを、
式HO−R−COH(III)の1種または複数種の化合物、式HO−R−OH(IV)の1種または複数種の化合物、およびカルボン酸無水物と、前記カルボン酸無水物との反応により(III)および(IV)のエステルを形成する条件で接触させるステップと、
(b)液晶ポリマーを形成する温度およびそれに十分な量の時間で、(a)から得られる混合物を加熱するステップと、を含み、式中、
各Rが独立してヒドロカルビレンまたは置換ヒドロカルビレンであり、
各Rが独立してアルキレンまたは置換アルキレンであり、
各Rが独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
各Rが独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
但し、(IV)が、前記部分的芳香族ポリエステル中に存在する(II)の量を基準にして、総ジオールが0.5〜15モルパーセント化学量論的に過剰となる量で存在する方法を含む。
【0015】
本発明のLCPおよび本発明のLCP製造方法により生成されるLCPは、通常、酸素、水分、ガソリンおよびディーゼル燃料等の自動車用燃料のような有機液体、二酸化炭素に対して良好なバリア特性を有し、また、良好な熱成形能力を有する(即ち、LCPの1つまたは複数の層を含むフィルムまたはシートは容易に熱成形することができる)。更に、これらのLCPは、多くの場合、温度250℃未満で加工することができる。これらの特性により、本発明のLCPは、例えば、品目の包装の一部である多層フィルムの一部(例えば層の1つ)、または単に包装材料または容器(例えばボトルまたはポーチ)の一部または層等の包装用途に特に有用である。
【0016】
従って、本発明は、フィルム、シート、包装材料、容器およびその一部または構成要素等を含む上に記載のLCPを含む成形物品を更に提供する。
【0017】
また、本発明は、紙シートの表面を液晶ポリマーの溶融シートに接触させてコーティング紙シートを形成するステップと、次に、前記コーティング紙シート上の前記液晶ポリマーが依然として少なくとも部分的に溶融状態である間に、コーティング紙シート上の前記液晶ポリマーに接触する表面であって、前記表面の温度が前記液晶ポリマーの固化温度より低く、これがコーティング紙シート上の前記液晶ポリマーに圧力を印加して前記液晶ポリマーが固体である液晶ポリマーコーティング紙シートを生成する表面があることによって圧力を印加するステップを含む、液晶ポリマーを備えたコーティング紙の製造工程に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書では特定の用語を用いるが、以下にこれらを定義する。
【0019】
「液晶ポリマー」とは、米国特許公報(特許文献5)に記載されたTOT試験、またはそれと同等の試験により試験すると異方性であるポリマーを意味する。
【0020】
「ヒドロカルビレン」は、炭素および単一の炭素原子または2つの異なる炭素原子に連結する2つの自由単結合を有する水素を含む二価のラジカルを意味する。
【0021】
「飽和ヒドロカルビレン」は、2つの自由単結合が同じまたは異なる炭素原子であり、これらの結合が付着する炭素原子が飽和である、即ち、この炭素原子には多重(二重または三重)結合が存在しない二価のラジカルを意味する。
【0022】
「アリーレン」とは、2つの自由原子価の各々が1つまたは複数の芳香環の異なる炭素原子に関する二価のラジカルを意味する。2つ以上の芳香環が存在する場合には、存在する他の芳香環にナフタレンのような融合環として連結することもでき、ビフェニルのように共有結合で連結することもでき、またはジフェニルエーテルのように他の基で連結することもでき、またはこれらの任意の組み合わせとすることもできる。
【0023】
本明細書の「アルキレン」は、2つの水素ラジカルが除去されてアルキレンラジカルを形成したアルカン由来の二価のラジカルを意味する。2つの自由原子価は、単結合であり、同じまたは異なる炭素原子とすることができる。
【0024】
本明細書の「置換」(置換ヒドロカルビレン、置換アリーレン、等の場合)とは、1つまたは複数の置換基を含むラジカルであって、これらの基を含む化合物またはポリマーが受ける処理条件下で不活性のラジカルを意味する。また、この置換基は、この処理を実質的に妨げない。置換ラジカルでは、水素の全てが、トリフルオロメチルのように置換基により置換されることができる。
【0025】
本明細書の「化学量論的に過剰」とは、ポリエステルのような縮合ポリマー内に存在するモノマーの種類の過剰を意味する。このようなポリマーに実際に必要な化学量論的量は、ポリマー形成の通常の重合工程および化学的性質により求められる。例えば、1種または複数のジオールおよび1種または複数種のジカルボン酸を含む実質的に線状ポリエステルを作り、通常、高分子量ポリマーにするときには、重合に加えるジオールの全モル数が重合に加えるジカルボン酸の全モル数と等しいことになる。この比率が1:1でなければ、大きなモル量で存在する原料が化学量論的過剰に存在する。詳細には、ジオール成分の全モル量がジカルボン酸の全モル量より大きければ、ジオールは、化学量論的過剰であるとみなされる。このような場合には、化学量論的に過剰なジオールのモル量には、単一のジオールまたは存在するジオールのいずれかまたは全ての組み合わせを含むことができる。ポリエステル中のヒドロキシ酸のような「塊重合」であるモノマーのいくつかの種類は、ポリマーを形成するのに必要な両方の官能基を含むため、決して化学量論的過剰に存在することができない。
【0026】
本明細書で用いる「容器」という用語は、主に、食品、医薬品、農薬、工業用液体等の包装または収容に用いるのに適する成形物品を意味し、「容器」には、シートおよびフィルムのほか、ボトル、トレイ、カップ、袋および同様の底付き容器が含まれる。
【0027】
本明細書の「添加溶媒の不在」とは、化合物が、溶媒として作用するように単独で工程に加えられないことを意味する。また、工程で生じる化合物は溶媒であることもあるが、これも「添加溶媒」には含まれない。本明細書の溶媒は、米国特許公報(特許文献4)に記載されているような意味で用いられており、この特許は、本明細書において援用する。これらの溶媒には、酢酸のようなカルボン酸が含まれる。詳細には、「添加溶媒」の部類から除外されるのは、この工程中に化学反応により生じる無水酢酸のようなカルボン酸無水物、および酢酸のようなカルボン酸である。このような反応には、カルボン酸無水物とのアセチル化およびカルボン酸エステルとカルボン酸のエステル交換反応でのポリマーの形成が含まれる。
【0028】
特に記載しなければ、本明細書での炭素原子を含むラジカル(基)は、1〜30炭素原子を含むことが好ましい。特に記載しなければ、種々の基およびラジカルに好ましい構造が、本明細書に記載する工程および組成物に好ましい。
【0029】
好ましくはRはアリーレンであり、更に好ましくは、p−フェニレン、m−フェニレン、2,6−ナフチレン、および4,4’−ビフェニレンのうちの1種または複数種であり、特に好ましくは、p−フェニレンまたは2,6−ナフチレンである。別の好ましい形では、Rの90〜99.5モルパーセントがp−フェニレン、Rの0.5〜10モルパーセントがm−フェニレンである。特に好ましくは、Rは100モルパーセントp−フェニレンである。
【0030】
好ましくは、Rは独立してアルキレンまたは置換アルキレンであり、特に好ましくは、 Rはアルキレン鎖中に2〜10炭素原子を含むアルキレンまたは置換アルキレンであり、更に好ましくは、Rは−(CH−(式中、nは2〜10の整数であり、好ましくはnは2、3または4、更に好ましくはnは2である)である。PETの合成のいくつかでは、ジオール由来の繰り返し単位のいくつかは−CHCHOCHCH−であり、明らかに、重合の副反応の結果として生成されるものであることが公知である。従って、別の好ましい形では、Rの90.0〜99.9モルパーセントが−CHCH−であり、Rの0.1〜10.0モルパーセントが−CHCHOCHCH−である。
【0031】
任意の好ましい形のRが任意の好ましい形のRと任意の方法で組み合わせられて部分的芳香族ポリエステルが形成され、得られるLCPのいずれかに存在することができる。好ましい部分的芳香族ポリエステルはポリ(エチレンテレフタレート)(PET)である。部分的芳香族ポリエステルとして2種以上のポリエステル、例えばPETおよびポリ(エチレン2,6−ナフタレート)の組み合わせを用いることができる。
【0032】
好ましくは、Rはp−フェニレン、m−フェニレン、および2,6−ナフチレンのうちの1種または複数種である。更に好ましい形では、Rはp−フェニレン、2,6ナフチレン、またはp−フェニレンおよび2,6−ナフチレンの組み合わせである。
【0033】
好ましくは、Rはp−フェニレン、m−フェニレン、2,6−ナフチレン、または4,4’−ビフェニレンのうちの1種または複数種、更に好ましくは、p−フェニレンまたは4,4’−ビフェニレン、特に好ましくは、4,4’−ビフェニレンである。Rに対する他の有用な基は、2−メチル−p−フェニレン、および2−t−ブチル−p−フェニレンである。
【0034】
好ましい液晶ポリマーは、式
【0035】
【化3】

【0036】
(式中、
の90〜100モルパーセントはp−フェニレン、0〜10モルパーセントはm−フェニレンであり、
の90.0〜100モルパーセントは−CHCH−であり、0〜10.0モルパーセントは−CHCHOCHCH−であり、
各Rは4,4’−ビフェニレンであり、
(V)は存在する(I)全量の約1〜約3モルパーセントであり、
(I):[(II)+(V)]のモル比は約1.0:1.0であり、繰り返し単位(I+V)+繰り返し単位(I+II)の合計は前記液晶ポリマーの約25〜約35モルパーセントであり、
(IIIA)の量は前記液晶ポリマーの約45〜約55モルパーセントであり、
(IIIB)の量は前記液晶ポリマーの約15〜約25モルパーセントである。)の繰り返し単位を含む。
【0037】
特に好ましいのは、
繰り返し単位(I+V)+繰り返し単位(I+II)の合計量が、前記液晶ポリマーの約28〜約32モルパーセントであり、
(IIIA)の量が前記液晶ポリマーの約48〜約52モルパーセントであり、
(IIIB)の量が前記液晶ポリマーの約18〜約22モルパーセントである、
上の液晶ポリマーである。
【0038】
上に記載するような液晶ポリマーの製造方法では、カルボン酸無水物は、脂肪族カルボン酸無水物である。言い換えると、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等のような脂肪族カルボン酸由来であるであることが好ましい。好ましいカルボン酸無水物は無水酢酸である。加える無水酢酸の量は、例えば(III)および(IV)に含まれるもののような重合の自由ヒドロキシル基の全てをアシル化するのに必要な量の好ましくは約95〜約125モルパーセント、更に好ましくは約100〜約110モルパーセントである。
【0039】
本明細書に記載のLCPを製造する方法では、全般的な手順は、原料の全てを加熱撹拌し、存在するヒドロキシル化合物をアシル化し(例えば約0.25〜5時間潅流する)、ゆっくり温度を上げ、蒸留することにより副生成物のカルボン酸を除去し、予備ポリマー(オリゴマー)の形成を開始することである。ある時点、通常は副生成物のカルボン酸の殆どが除去された時点で、ゆっくりと真空を印加しポリマーを完成させる、即ち、最終分子量にする。仕上げ中に固化しないようにポリマーを融点より高く保つために、ポリマー温度を上げることが必要なこともある。ポリマーが所望の分子量(これは、例えば、撹拌機を回転させるのに必要なトルクを測定することによりにより求めることができる)に達すれば、真空を解除し、ポリマーを冷却して単離する。この作業に必要な時間および温度は、実験により容易に求められ、ある程度は、用いるモノマー、得られるポリマーの最終組成(例えばその融点)、およびポリマーに所望する分子量によって決まる。本明細書の実施例も参照されたい。
【0040】
上に記載したように、好ましい第1の方法には、存在する(II)の量を基準にして(IV)の化学量論的過剰が(自由ジオールの形または部分芳香族ポリマーに組み入れられるかのいずれかで)約0.5〜約15モルパーセント存在することが好ましい。更に好ましくは、この化学量論的過剰は、存在する(II)の量を基準にして約1.0〜約12モルパーセント、更に好ましくは、存在する(II)の量を基準にして約1.0〜約3モルパーセントである。LCP製造の方法では、ジカルボン酸、特に、式HOCRCOH(VIII)(式中、Rはアリーレン、更に好ましくは、Rはp−フェニレン、m−フェニレン、および2,6−ナフチレンのうちの1種または複数種、特に好ましくはRはp−フェニレンである)の芳香族ジカルボン酸が存在することができることに留意されたい。(VIII)が存在する場合には、(VIII)と「釣り合う」(反応する)(IV)の化学量論的量が存在することが「必要」とされることになる。従って、存在する(IV)の化学量論的過剰量を計算する場合には、まず、存在する(IV)の量から(VIII)と反応するのに必要な(IV)の量を引き、存在する(IV)の残りを化学量論的過剰計算に用いることになる。好ましくは、LCP製造工程に用いる(VIII)の量(存在する場合)は、工程に存在する(I)の量の約25モルパーセント以下、更に好ましくは、約10モルパーセント以下である。好ましいLCPでは、(VIII)は、繰り返し単位として(I)の一部であることになる。
【0041】
本明細書で好ましいLCPでは、[特に、LCP製造工程に(VIII)が存在する場合](V)は存在する(I)の総量の約0.5〜約23.0モルパーセントであることが好ましい。また、[特に、LCP製造工程に(VIII)が存在しない場合](V)は存在する(I)の総量の約0.5〜約15.0モルパーセントであることが好ましく、更に好ましくは約1.0〜約12、特に好ましくは約2.0〜約10モルパーセントである。
【0042】
また、(I):[(IIIA)+(IIIB)]のモル比は、約45:55〜約25:75であることも好ましい。また、(IIIA):(IIIB)のモル比が約3:1〜約1:1であることも好ましい。
【0043】
本発明のLCPの種々の構成要素の組成の任意の範囲を他の構成要素の任意の範囲と組み合わせることもできるが、本発明に記載するLCP製造工程およびLCP自身の両方で好ましい特定の構成要素およびその濃度範囲であることが好ましい。
【0044】
当技術分野での問題は、組成が一様な(従って、ゲル様材料が殆どまたは全く存在しないように一様に加工される)本明細書で記載した種類のLCPを生成すること、および分子量が大きな(インヘレント粘度の大きい)ポリマーを製造することであり、特に、これら2つの目的を同時に達成することであった。驚くべきことには、本方法でこれらの目的が達成され、殆どのLCP重合反応に通常加えない酢酸等の溶媒のような材料を加えることなく、インヘレント粘度が高く、一様で容易に加工可能なポリマーが生成される。このことは、必要な反応槽の大きさ、加工時間(蒸留により「溶媒」を除去する時間が必要でない)、必要なエネルギー量、および追加の化学物質を貯蔵する必要性に関して有利である。
【0045】
本発明のおよび/または本工程で作ったLCPは、好ましくは250℃未満で、更に好ましくは約190℃〜約230℃、特に好ましくは約190℃〜約220℃で溶融加工可能である。好ましくは、LCPは、121℃で30分加熱後、酸素透過性が0.25cmミル/100インチ・day・atm未満、および/または水透過性が0.1cmミル/100インチ・day・atm未満、および/または酸素透過性が0.25cmミル/100インチ・day・atm未満である。酸素および水に対する透過性を測定するための方法に関して以下を参照されたい。
【0046】
本発明のLCPは、特に示差走査熱量測定法により融点を試験する場合には、「非晶質」(即ち、結晶レベルが極めて低度)であることが多い。多くの場合、結晶性が全くまたは少ししか見られないような分析法では溶融吸熱が見られない。
【0047】
上に記載の方法または何らかの他の方法で形成した後、望むならば、本発明のLCPは、米国特許公報(特許文献6)(例えば請求項1を参照)に記載されるように、モノマー官能性化合物と反応させることにより分子量を減少させることができる。尚、この特許は、本明細書において援用する。好ましい官能性はヒドロキシルであり、好ましい官能性化合物はジオールであり、好ましいジオールはヒドロキノンまたは4,4’−ビフェノールである。本特許の方法を行うと、分子量(またはインヘレント粘度または溶融粘度、全ての分子量の尺度)は、ポリマーが加熱されたとき、例えばポリマーから有用な物品を形成しているときに安定性が高いと考えられている。本発明の方法により処理されたポリマーは、このようなLCPに対して本明細書に記載した全ての用途および全ての品目に有用である。好ましくはLCPの溶融粘度は、米国特許公報(特許文献6)の分析方法を用いるとせん断速度1000秒−1で少なくとも約10%減少する。
【0048】
本発明のLCPは、従来のポリマーに対する公知の工程により溶融加工して種々の成形物品にすることができ、シートおよびフィルムを形成するのに特に適する。中空の成形物品は、押出工程または詳細にはブローンフィルム工程、射出伸張吹込成形、押出吹込成形、1軸または2軸延伸、押出鋳造、引抜成形、押出コーティング、熱成形、シート折り曲げおよびヒートシール(フォームフィルシール)または同様の工程として知られる工程により生成することができる。
【0049】
本発明のLCPは、他のポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−コ−ビニルアセテート、けん化ポリエチレン−コ−ビニルアセテート、ポリエチレン−コ−メタクリレート、ポリエチレン−コ−メタクリル酸のようなポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートコポリマーおよびポリエチレンナフタレートのようなポリエステル樹脂、およびナイロン66/6コポリマーのようなポリアミド樹脂と共に多層構造に形成することができる。従って、多層フィルム、シート、チューブ、ホース等は、共押出、シート押出および軸ヒートシール、押出コーティング、パウダーコーティングおよび焼結、熱ラミネート、または同様の工程により生成することができる。トレイ、カップおよびボトルのようなラミネート容器は、射出成形、吹込成形、射出伸張吹込成形、熱成形、真空成形、圧縮成形または同様の鋳造または成形工程により生成することができる。
【0050】
本発明の液晶ポリマーから得られるフィルムは、薄い場合には接触透明であるように作ることができ、例えば厚さが25μm以下の殆どの押出フィルムは十分な透明度を有する。このような透明フィルムは、先に記載した液晶ポリエステルからは殆ど得ることができない。
【0051】
本発明のLCPから得られるチューブ材料、フィルムまたはシートのような成形物品は、1軸または2軸に加熱延伸することができる。大抵の場合、フィルムは、同時または順次に少なくとも2×2倍または少なくとも3×3倍加熱延伸することができる。本明細書に記載のLCPは、多くの場合、従来の液晶ポリエステルより優れた鋳造性、成形性および延伸適性を有する。
【0052】
良好な熱成形能力を有することに加え、本発明のLCPおよび本発明のLCP製造工程で生成されたLCPは、酸素、水分、二酸化炭素、ガソリンおよびディーゼル燃料等の自動車燃料のような有機液体および着香料に対して良好なバリア特性を有する。
【0053】
その結果、本発明のLCPは、炭酸飲料、オレンジジュース、リンゴジュース、ブドウジュース、他のフルーツジュースおよび牛乳のような飲料;肉、チーズ、魚、家禽、ナッツ、コーヒー、アップルソースまたは他のソース、シチュー、乾燥フルーツ、食用ペースト、スープおよび濃縮スープおよび他の食品のような固形食糧;香辛料;ケチャップ、マスタード、およびマヨネーズのような調味料;ペットフード;化粧品;練り歯磨き、シェービングフォーム、石鹸、シャンプー、ローション等のようなパーソナルケア製品;医薬品;芳香剤;電子部品;工業用化学薬品または香料入り洗濯用洗剤、香料入り衣料用柔軟剤のような家庭用化学薬品;農薬、医療用装置;薬用液体;燃料;および生物学的物質を包装する用途に有用である。
【0054】
容器および包装材料は、シートから真空または圧力成形により作製されたトレイ、カップ、キャップ、または蓋;非延伸シートを深絞りすることにより作製される形状(即ち熱成形);押出吹込成形または2軸延伸吹込みパリソン(射出伸張吹込成形)等により作製される形状;射出成形、圧縮成形または他の鋳造工程により作製される形状;および山形ダンボール箱のようにシートを折り曲げおよびその縁をヒートシールすることにより作製される形状を含む種々の形状とすることができる。
【0055】
本発明のLCPを含む容器または包装材料には、LCP単独で形成されたものに加え、LCPおよび別の樹脂のブレンドを含むもの、他の樹脂の層を含む多層構造を含むもの、LCPを含む層状構造を含むもの、およびLCPでコーティングしたものが含まれる。他の樹脂の例は、ポリエチレンおよびポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、およびナイロンおよび熱可塑ポリアミドエラストマーのようなポリアミド樹脂である。
【0056】
従って、本発明のLCPは、以下の容器または容器の一部、フィルムおよびシートを含むがこれに限定されない包装用途で用いられる各種の成形物品に有用である。これらに「含む」という用語は、LCPおよび/または他の名前を挙げた原料が単独で存在することもでき、または他の(名前を挙げていない)材料と共に存在することもできることを意味する。
1)これらのLCPを含む容器。
2)これらのLCPがフィルムまたはシートの形である1)の容器。このフィルムまたはシートは、全てまたは部分的にこれらのLCPである単層の形とすることもでき、または本発明のLCPを含む1つまたは複数の層を含み、LCP含有層が全てLCPまたは一部LCPである多層フィルムとすることもできる。
3)全てこれらのLCPで構成される厚さが250μm未満のフィルム。
4)これらのLCPをブレンドとして含むか、またはLCP含有層が全てLCPまたは部分的にLCPである厚さが250μm未満の多成分フィルム。
5)紙、板紙、アルミホイル、布、不織材料からなる群から選択される基板に、またはポリ(フッ化ビニリデン)またはポリアミド(ナイロン)66、2軸延伸ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレート)、およびポリイミドからなる群から選択される別のポリマーを含むフィルム基板に、ラミネート、押出コーティングまたは共押出コーティングにより結合された2)のフィルムまたはシート。
6)これらのLCPが、フィルムの表面の外側の片側または両側の層を構成する4)の多構成要素フィルム。
7)90℃を超えて加熱されると全体構造が少なくとも4%収縮するように(任意の方向に)延伸されて部分的にヒートセットされた少なくとも1つの層を有する3)または4)のフィルム。
8)フィルムを破断させることなく少なくとも5%伸張することができる3)または4)のフィルム。
9)これらのLCPがヒートシール可能な層であるかまたはその一部である1)の容器。
10)これらのLCPが、同様の引張り係数により示されるように横方向対機械方向にほぼ釣り合う分子配向を有する3)または4)のフィルム。
11)スクイーズ管、ポーチまたはボトルの形の1)の容器。
12)ポーチまたは袋の形の1)の容器。
13)円筒形、導管、パイプ、ホースまたは管の形の1)の容器。
14)これらのLCPを含む厚さが10ミルより厚い単層シート。
15)これらのLCPをブレンドとして含むことができるか、またはLCP含有層が全てLCPまたは部分的にLCPである厚さが250μmより厚い多構成成分シート。
16)少なくとも1つの開口部を有し、(例えば15のシートから熱成形により、またはLCPを別のポリマーと共に射出成形または圧縮成形することにより、または3)または4)で裏打ちすることにより)LCPの層を含む容器であって、トレイ、タブ、カップ、ボウル、缶、バケツ、ペール缶、およびボトルを含むがこれに限定されない容器。
17)4)または5)で形成されるかまたはそれで裏打ちされた容器であって、箱、カートン、管、ポーチ、ボウル、トレイを含むがこれに限定されない容器。
18)これらのLCPを含む硬い容器である1)の容器であって、トレイ、カップ、缶、バケツ、タブ、箱、パイプ、ボウル、管、パリソン、およびカートンを含むがこれに限定されない容器。
19)これらのLCPを含む容器(例えばカップ、カップライナ、蓋、ねじ蓋、または他のクロージャ)の成分。
20)金属または電子部品を酸化から保護することを含むがこれに限定されない、これらのLCPで構成される保護コーティング。
21)カップ、ボウル、ポーチおよび管を含むがこれに限定されないレトルト可能で、蒸気殺菌されおよび/または電子レンジ可能な1)の容器。
22)ガソリン、メタン、メタノール、酸素のような燃料構成成分を含む1)の容器。
23)酸素、水分または臭気を掃気するための掃気層も含む1)の容器。
24)金属ホイル層;金属、シリカ、アルミナ、または炭素コーティングフィルム層;ポリ塩化ビニリデン;またはポリグリコール酸のような別のバリア層を含む1)の容器。
25)真空下にあるかまたは真空を含む1)の容器。
26)気体または各気体を含む1)の容器。
27)バルーン、膨張体、または枕である26)の容器。
28)付加的に含量を含む1)の容器または容器構成要素19)またはシート14)または15)。
29)接触透明またはリードスルー透明である3)または4)のフィルム。
30)ヒートシール可能層がこれらのLCPを含む18)の硬い容器。
31)これらのポリマーの連続層でコーティングされた物品。
32)これらのポリマーの層で部分的にコーティングされた物品。
33)ワイン、医療用流体、または乳児用ミルクのような液体を分取する硬い容器内の12)の袋またはポーチ。
34)ブリスターパックである1)の容器。
35)3)または4)のフィルムで裏打ちされた袋。
36)ケチャップ、マスタード、チーズ、またはマヨネーズを含むがこれに限定されない食品、練り歯磨き、クリーム、ローションまたは石鹸を含むがこれに限定されないパーソナルケア製品、またはコーキングまたは接着剤を含むがこれに限定されない工業材料を含む11)のスクイーズ管。
37)オレンジジュース、フルーツジュース、ミルク、スープ、ベビーフード、濃縮スープ、スープ、またはペットフードを含む17)の箱またはカートン。
38)肉、チーズ、魚、家禽類、ナッツ、コーヒー、または他の食品を包む4)のフィルム。
39)ペットフード、アップルソース、シチュー、またはスープのような食品を入れるか、または医薬品を入れる21)の容器。
40)洗剤、芳香剤または農薬を入れる1)の容器。
41)ベビーフード、薬味、ケチャップ、マヨネーズ、マスタード、酢、調味料、ハーブを入れる18)の容器。
42)医薬品または医療用装置を入れる1)の容器。
43)ペットフード、乾燥フルーツ、食用ペースト、肉、または他の食品を入れる1)の容器。
44)ビール、ソーダ、炭酸水、シェービングクリーム、膨張性発泡体、殺虫剤を含むがこれに限定されない加圧製品を入れる18)の容器。
【0057】
更に、本発明のLCPは、繊維を生成するため、およびコーティング剤として用いることができ、また、接着剤および塗料としても用いることができる。
【0058】
(フィルム製造)
本発明によるフィルム、多層フィルム、および対応するフィルム構造の実際の製造は、当技術分野で実施されるような任意の方法によることもできる。従って、フィルムおよびフィルム構造は、典型的には、種々の方法(例えば、キャストフィルム、キャストフィルム後延伸、または泡吹込み技術)により延伸(1軸または2軸のいずれか)されたキャスト、ラミネート、押出、共押出等とすることができる。
【0059】
本発明のパッケージを製造するのに用いられたポリマー材料のフィルムまたはシートは、原則的には、ポリマー材料および非ポリマー材料を含む単層または多層ポリマー構造または多構成要素構造のいずれかとすることができる。また、原則的に、包装の技術分野で一般に公知のこのようなフィルム等級のポリマー樹脂または材料のいずれを用いることもできる。典型的には、多層ポリマー構造が用いられることになる。典型的には、多層ポリマーフィルムまたはシートは、最外側構造または乱用層、内側バリア層、および包装物の意図する内容物に接触して共存し、包装物に入れることになっている製品を取り囲むのに必要な密封を形成することができる最内側層を含むがこれに限定されない少なくとも3つの分類に属する層を含むことになる。密封は、ヒートシール可能なポリマーで形成されることが好ましい。また、接着剤として働く、即ち層を「連結」してこれらの層を結合させるのに役立つ他の層も存在させることができる。
【0060】
構造的または乱用層は、典型的には、延伸ポリエステルまたは延伸ポリプロピレンであるが、延伸ポリアミドを含むこともできる。包装物は多層構造の全厚さを通して密封されることが多いため、これらの層は、反転印刷可能であることが好ましく、包装物を作るのに用いる密封温度により影響を受けないことが有利である。また、これらの層は、二酸化チタンのような顔料を加えることにより不透明にすることもできる。
【0061】
内側層には、容器内部の製品に影響を及ぼす可能性がある大気条件(酸素、湿度、エチレン、二酸化炭素)により1つまたは複数のバリア層を含むことができるが、これらの層のうち少なくとも1つは、本LCPを含む必要がある。従来の酸素バリア層には、約20〜約40モル%エチレンを有するポリ(コ−エチレン/ビニルアルコール)(「EVOH」)、ポリ(メタ−キシリレンアジパミド)、およびポリ塩化ビニリデンが含まれる。EVOHおよびポリ(メタ−キシリレンアジパミド)両方の気体バリア特性は、相対湿度に依存するが、本発明のLCPは、比較的湿度に感受性が無く、水分透過に対するバリアとして働く。本発明のLCPは、通常、PVDCコポリマーより熱的安定性に優れる。従って、本発明のLCPは、包装用途でのバリア層としてEVOH、ポリ(メタ−キシリレンアジパミド)、またはPVDCと取替えるのに有用である。他のバリア層は、例えば、PVDCホモポリマー、金属化ポリプロピレン(PP)またはアルミホイル、ケイ酸、アルミナ、炭素またはその複合体のほか、その関連コポリマーとすることができる。バリア層の厚さは、製品の感受性および所望の貯蔵寿命によって決まることになる。
【0062】
構造およびバリア層を組み合わせて、明澄度、靱性および耐穿孔性のような製品の加工および/または包装に適する効果的なバリアおよび嵩機械的特性をもたらすポリマーのいくつかの層を含むことができる。
【0063】
いくつかの場合では、本発明のLCPを含むシートは、トレイ、カップ、ボトル等のような成形物品に形成され、キャップ、蓋またはフィルムのような追加の閉鎖手段を用いて容器を完成し、内容物を閉じ込めることができる。このような場合には、シーラント層は必要で無い場合もあり、または閉鎖手段に組み込むこともできる。
【0064】
他の場合には、本発明のLCPを含む多層構造は、それ自体で密封して本発明の容器または包装物を形成するフィルムまたはシートとすることができる。このような場合には、包装物の最内側層はシーラントである。シーラントは、内容物の味または色に最低限の影響しか及ぼさず、製品により影響されず、密封条件(例えば液滴、油、ほこり等)に耐えるようにように選択する。シーラントは、典型的には、他の層のうちの少なくとも1つ、好ましくは、最外側層の外観が、密封工程により影響を受けず、密封バーの顎にくっつかないように、最外側層の融点より実質的に低い温度でそれ自体に結合(密封)することができるポリマー層またはコーティングである。本発明に有用な多層包装フィルムに用いられる典型的なシーラントには、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンポリエチレン(mPE)、またはエチレンとビニルアセテート(EVA)またはメチルアクリレートのコポリマー、またはエチレンおよびアクリル酸(EA)またはメタクリル酸(EMA)のコポリマーのようなエチレンポリマーが、任意的にアイオノマーとして(即ち、Na、Zn、またはMgのような金属イオンで部分的に中和されて)含まれる。また、典型的なシーラントには、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)またはポリプロピレンコポリマーを含むことができる。シーラント層は、典型的には約10〜約60μm厚さである。いくつかの場合には、酸素バリアとして機能することに加え、本発明のLCPは、シーラント層としても適する。従来のLCPは実用的なヒートシール条件下では困難であるが、本発明のLCPは、約210℃〜約240℃の範囲の温度で密封することができる。
【0065】
本発明で用いるのに適するポリアミドには、脂肪族ポリアミド、非晶質ポリアミド、またはその混合物が含まれる。本明細書で用いる用語としての「脂肪族ポリアミド」は、脂肪族ポリアミド、脂肪族コポリアミド、およびこれらのブレンドまたは混合物を言うことができる。本発明で用いるのに好ましい脂肪族ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン−6.6/6コポリマー、そのブレンドおよび混合物である。ナイロン6.6/6のようなポリアミドは、商品名「ウルトラミド(Ultramid)C4」および「ウルトラミド(Ultramid)C35」でBASFから、または商品名「ウベ(Ube)5033FXD27」で宇部興産株式会社(Ube Industries Ltd.)から市販されている。
【0066】
フィルムは、更に、米国特許公報(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)、米国特許公報(特許文献9)、米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)および米国特許公報(特許文献12)に記載されているような他のポリアミドを含むことができる。尚これらの特許の内容は、本明細書において参照により援用する。
【0067】
また、フィルムは、部分芳香族ポリアミドを含むこともできる。本発明に用いるのに適切な部分芳香族コポリアミドのいくつかは、例えば、商品名セラー(Selar)(登録商標)PAで本願特許出願人から、または商品名グリボリー(Grivory)(登録商標)G21でEMS−ケミー(Chemie)AGから市販されている非晶質ナイロン樹脂である。
【0068】
本発明に用いるのに適するポリオレフィンは、ポリプロピレンまたはポリエチレンポリマーおよびエチレンまたはプロピレンを含むコポリマーから選択される。本発明に用いるのに有用なポリエチレンは、公知のチーグラーナッタ触媒重合(例えば米国特許公報(特許文献13)および米国特許公報(特許文献14)参照)、メタロセン触媒重合(例えば米国特許公報(特許文献15)および米国特許公報(特許文献16)参照)および遊離基重合を含む種々の方法で作製することができる。本発明で有用なポリエチレンポリマーには、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、極低密度または超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)のような線状ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン(LDPE)のような分枝ポリエチレンを含むことができる。本発明に用いるのに適するポリエチレンの密度は、0.865g/cm〜0.970g/cmの範囲である。本発明で用いる線状ポリエチレンには、ブテン、ヘキセンまたはオクテンのようなα−オレフィンコモノマーを組み込み、記載した密度範囲内に密度を減少させることができる。
【0069】
本発明を実施するのに有用なポリプロピレンポリマーには、プロピレンホモポリマー、耐衝撃性改良ポリプロピレン、およびプロピレンおよびα−オレフィンのコポリマーが含まれる。特に有用なポリプロピレンは、見かけの溶融粘度が、100 1/sの見かけのせん断で、190℃で550Pa−s、230℃で380Pa−sであり、融点吸熱が167℃であるバセル・ポリオレフィンズ・インク(Basell Polyolefins Inc.)のプロファックス(PROFAX)(登録商標)6323ポリプロピレン樹脂である。
【0070】
アイオノマー樹脂(「アイオノマー」)は、エチレンのようなオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸、またはマレイン酸のような不飽和カルボン酸の金属塩と、任意的に軟化モノマーとのイオン性コポリマーである。ナトリウム、カリウムまたは亜鉛のような少なくとも1種または複数種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属陽イオンを用いてコポリマー中の酸性基をある程度中和し、熱可塑樹脂の特性を改良する。例えば、「エチレン/(メタ)アクリル酸(E/(M)AAと短縮)」とは、エチレン(Eと短縮)/アクリル酸(AAと短縮)および/またはエチレン/メタクリル酸(MAAと短縮)のコポリマーが、1種または複数種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属陽イオンで少なくとも部分的に中和し、アイオノマーを形成したものを意味する。また、エチレンのようなオレフィン、不飽和カルボン酸、およびアルキル(メタ)アクリレートのような他のコモノマーから、ターポリマーを作って「柔らかい」樹脂を生成し、これを中和して柔らかいアイオノマーを形成することができる。アイオノマーは、従来から知られており、その作製方法は、例えば、米国特許公報(特許文献17)に記載されている。
【0071】
無水物または酸修飾エチレンおよびプロピレンホモポリマーおよびコポリマーは、押出可能な接着層(「つなぎ」層としても知られる)として用い、ポリマーが互いに良好に接着しない場合に、ポリマーの層が互いに結合することを改善し、従って、多層構造内での層−層接着を改善することができる。つなぎ層の組成物は、多層構造内で結合する必要がある隣接層の組成物により決まることになる。ポリマー業者は、構造に用いる他の材料に基づき、適切なつなぎ層を選択することができる。種々のつなぎ層組成物は、例えば商品名バイネル(Bynel)(登録商標)で本願特許出願人から市販されている。特に有用なつなぎ層は、100 1/s見かけのせん断での見かけの溶融粘度が190℃で650Pa−s、230℃で500Pa−sであり、融点吸熱が50〜72℃であるバイネル(BYNEL)(登録商標)38E536共押出可能接着剤である。
【0072】
それが存在することによりバリアフィルムまたはフィルム構造の特性が実質的に変わらなければ、当技術分野で一般に用いられているような種々の接着剤を個々のフィルム層に存在させることができることは当然理解される。従って、本発明のフィルムまたはシートには、ポリマーフィルムに用いられる種々の従来の添加剤を存在させることができ、これには、可塑剤、安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填剤、難燃剤、潤滑剤、グラスファイバーおよびフレークのような強化剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、離型剤、および/またはその混合物を含むことを意図する。
【0073】
本発明で有用な多層フィルムは、次のように共押出しすることにより作製することができる。即ち、種々の構成要素の乾燥粒を一軸スクリュー押出機内で溶融する。溶融温度を上げ下げしてダイ内にポリマー溶融物が安定流または層流になるように調節する。本発明のLCPは、190℃以下で溶融加工することができるが、220℃を超える溶融物内で無水マレイン酸を含むつなぎ層の接着剤レベルが高くなる。溶融ポリマーは、平坦または円形ダイを通過して積層溶融ポリマーフィルム、シートまたは管材料を形成する。溶融ポリマーは、ダイを出ると、溶けているため直ちに機械方向および/または横方向に伸張し、目的の厚さを達成することができる。次に、冷却空気または水または急冷ドラムに接触させることにより溶融物を冷却する。ポリマーは、他の適切な変換技術を用いてフィルムまたはシートに変換することもできる。例えば、本発明に有用なフィルムは、フィルムを共押出しした後、1つまたは複数の他の層にラミネートすることにより作ることもできる。
【0074】
本発明に用いるのに適する多層バリア構造の例には、最外側から最内側へ、
ポリエチレン/つなぎ層/LCP/つなぎ層/ポリエチレン−コ−メチルメタクリレート、
ポリプロピレン/つなぎ層/LCP/つなぎ層/ポリエチレン、
ポリプロピレン/つなぎ層/LCP/つなぎ層/ポリプロピレン、
ポリプロピレン/つなぎ層/LCP、
板紙/LCP、および
ポリアミド/つなぎ層/LCP/つなぎ層/ポリエチレン
が含まれる。
【0075】
また、熱可塑フィルムは、ホイル、紙、板紙または不織繊維材料のような基板にラミネートまたは押出しされ、本発明に有用な包装材料を生成することもできる。例えば、本発明のLCPは、次のように、板紙上に押出しコーティングすることができる。即ち、一軸スクリュー押出機内で乾燥粒を溶融する。本発明のLCPは、190℃以下で溶融加工することができるが、300℃を超える溶融体で板紙のような多孔性材料の接着レベルが高くなる。溶融ポリマーは平坦ダイを通過して溶融ポリマーカーテンを形成する。溶融カーテンは移動する多孔性基板内に落ちて直ちに基板内に押し込まれ、急冷ドラムにより急冷される。
【0076】
LCPコーティング板紙は、折り畳むことにより成形物品に形成し、箱またはカートンのような硬い容器にすることができる。本発明のLCPで押出コーティングした板紙で作製したカートンは、フレームシーリングにより密封することができる。カートンまたは箱が板紙の代わりに高温フィルムの構造から形成される場合には、本発明のLCPのヒートシールは、約240℃で達成することができる。このように組み立てられたカートンは、例えば、オレンジジュースまたは他のフルーツジュース、およびミルクまたは乳製品を入れるのに用いることができる。
【0077】
EVOHバリア層では、熱成形多層カップの底面角部(即ち、実質的に円筒形のカップの円形底部と側面との間の移行部分)が著しく薄くなることはよく知られている。この問題を緩和するためにいくつかの技術を用いる。例えば、米国特許公報(特許文献18)では、EVOHとポリエチレン−コ−メタクリレート樹脂のブレンドを用いて角部でのEVOHバリアが薄くなる量を減少させる。これと対照的に、本発明のLCPは、驚くべきことには、角部で僅かしか薄くならず、EVOHの適所でバリア層として有用である。
【0078】
驚くべきことには、紙、板紙または厚紙(集合的に紙)は、紙にLCPの溶融物(融点より高温、または非晶質であればガラス転移温度より高温)フィルムを接触させ、次に、急冷ロールのような加圧装置の間に紙を接触させてLCPを急冷(冷却)することにより連続工程でコーティングすることができる。例えば、LCPは、スリットダイを通して押出して溶融LCPフィルムを形成し、次に、溶融物を移動する紙と接触させ、LCPが紙をコーティングするようにすることができる。LCPが完全に固化する前に、LCPでコーティングした紙を急冷ロールに通すか、または紙に張力を加えながらLCP(側面)を単一の急冷ロールに接触させ、[LCPに接触するロールの温度はLCPの凝固点(融点または非晶質であればガラス転移温度)未満であるため、LCPはロールにくっつかない]、この間、コーティングされた紙にロールで圧力をかける。圧力により、LCPと紙との間の接触が改善し、および/または紙への接着性が改善すると考えられている。必要とされる圧力の量は、LCP溶融物を紙上にプレスするのに十分高いが、LCP溶融物がニップの上流側に蓄積または「バンク」を築かないほどの低さであることになる。LCPにこのようなバンキングがおこれば、LCPの厚さが不規則になりおよび/またはニップの下流側および最終的な押出生成物でのLCPの外観が不良とされることになる。一般に、溶融物が高温である場合、ポリマー溶融物スループット率の紙引取り率に対する比率が高い場合、および紙の有孔率が高い場合には低圧力を用いることになり、これは実験により容易に決められる。紙の片面または両面を同時または連続的にLCPでコーティングすることができる。適切に接着させるために紙および/またはLCPに官能基を生成する必要はないが、いくつかの例ではそれが有用である可能性がある。例えば、紙の表面を燃やして表面上の官能基を増やすことができる。LCPコーティング紙は、容器を含むことが好ましい。本明細書の実施例11および実施例12には、この方法を更に説明する。
【0079】
また、包装材料は、例えば、印刷、エンボス加工および/または着色することにより、包装材料に内部の製品に関する消費者への情報を備えるおよび/または包装材料を魅力的な外観にするように更に加工することができるが、これに限定されない。
【0080】
融点およびガラス転移点は、ASTM法D3418を用い、加熱率10℃/分で示差走査熱量計(DSC)により測定する。融点は、溶融吸熱のピークとして取り、ガラス転移点は、測定した転移の中点として取った。溶融粘度は、長さ30−mm、直径1−mm、入り口角度180度の毛管を有するケイネス(Kayeness)毛管流量計で測定した。
【0081】
実施例では、以下の材料を用いる。
AP−「接着剤」ポリマー、バイネル(Bynel)(登録商標)38F586、無水物修飾エチレン/ビニルアセテート共押出し可能コポリマー。190℃でのメルトインデックス(ASTM D1238)が3.0、融点が75℃であり、本願特許出願人から入手可能。
【0082】
PE−低密度ポリエチレン、メルトインデックスが5、密度が0.92のデュポン(DuPont)DPE1640。本願特許出願人から入手可能。
【0083】
PP−ポリプロピレン、MFR12、プロファックス(Profax)(登録商標)6323。米国メリーランド州エルクトン21921(Elkton,MD 21921)のバセルUSA社(Basell USA,Inc.)から入手可能。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
p−ヒドロキシ安息香酸(378.6g)、ポリ(エチレンテレフタレート)315.8g、4,4’−ビフェノール20.4g、ヒドロキシナフトエ酸206.3g、および無水酢酸434.9gを室温で撹拌しつつ3−リットル反応槽に入れた。撹拌機は、螺旋リボン型であった。反応槽には、蒸留カラム(Vigreaux column)および還流スプリッタを装備し、反応副産物を除去することができるようにした。この混合物には、真空を印加し、窒素ガスを補充することにより撹拌下で3回脱気した。脱気して撹拌した混合物は、外部電気ヒータにより温度を170℃に設定して保持した液体金属浴の温度を上げることにより加熱して還流した。還流混合物は、全還流下で1時間保持し全ての利用可能なヒドロキシル基をアセチル化した。1時間後、液体金属加熱浴の温度コントローラ設定点を設定点が300℃になるまで20分毎に20℃上げた。温度を上げる間に、還流比を制御し、ほぼ2:1の還流:引取り比にした。300℃浴温度設定点で酢酸副産物の発生が減速すると、蒸留カラムおよび還流スプリッタを除去し、真空引取りを備えた三口フラスコと置き換えた。フラスコには、ドライアイスでカバーをし、この時点から工程の最後までに反応混合物から除去された全ての酢酸に対する凝縮器/トラップとして働かせた。一定の300℃浴温度コントローラ設定点を維持しつつ、反応槽および真空トラップ内の絶対圧力は、槽内の圧力が約130〜260kPa(絶対)になるまで真空をかけることにより15分毎に約17kPa減少させた。残りの工程の間、圧力はこのレベルに維持した。この真空は、ほぼ3時間維持した。撹拌機を回転させるのに必要なトルクが増大するにつれ、撹拌機回転速度/分(RPM)は、最初の50RPMから最終値の30RPMまで減少した。3時間の終わりに、真空を遮断し、窒素で槽に再加圧して大気圧にし、槽からスパチュラでこすり落とすことによりポリマーを回収した後、水で急冷した。
【0085】
DSCで測定すると、ポリマーのガラス転移温度は75℃であったが、融点はなかった。190℃での溶融粘度は、見かけのせん断速度100秒−1で3100Pa・s、見かけのせん断速度1000秒−1で600Pa・sであった。圧縮成形機の高温(200℃)プラテンの間にポリマー3gをプレスすることによりほぼ95μm厚さのフィルムを作製し、次に、フィルムを23℃まですばやく急冷した。透過性(方法に対しては以下を参照)は、2.7cm酸素−25μm/m−day−atm、1.4g水−25μm/m−dayであった。
【0086】
(実施例2)
実施例1と同様の一般的方法により同様のポリマーを作った。19℃での50/50トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(v/v)のインヘレント粘度は、1.16dl/g、見かけのせん断100 1/sでの溶融粘度は、190℃で2700Pa−s、230℃で380Pa−sであった。DSCによれば、樹脂は20℃と350℃との間では溶融吸熱が無かった。このポリマーは、本明細書ではポリマー2Aと呼ぶ。
【0087】
溶融粘度(分子量、米国特許公報(特許文献6)参照)を減少させるために、このポリマーに0.75%4,4’−ビフェノール粉末をドライブレンドした。このブレンドを9kg/時で30−mmW&P3突起押出機に送り込んだ。スクリューを150rpmに設定した。溶融温度を300〜315℃にするために10バレル区域を250〜280℃に設定した。得られるポリマーの1001/s見かけのせん断での見かけの粘度は、190℃で1300Pa−s、230℃で180Pa−sであった。インヘレント粘度は0.97dl/gであった。ポリマーのガラス転移温度(Tg)は72℃であった。TOT試験によれば、ポリマーは異方性であった。このポリマーは本明細書ではポリマー2Bと呼ぶ。
【0088】
(実施例3)
PP、AP、およびポリマー2Bから5層のキャストシート(PP/AP/LCP/AP/PPシート)を作った。ポリマー2Bポリマーは、使用前に気温65℃で6時間乾燥した。樹脂は、直径3.8−cm〜6.4−cmの一軸スクリュー押出機から合計速度約70kg/時で送り出した。PPおよびAPの温度設定点は各々210℃〜240℃および200℃であった。ポリマー2Bは195℃で流した。溶融流は、7.5−cm×1.7−cm楕円形断面の15−cm長さのネックで合流し、このネックは先細で幅61cmのコートハンガーダイになった。溶融カーテン(公称15−cm降下長さ)は、21℃水で冷却された2つの急冷ロール間のニップ内で終結した。引取り速度によって、シート厚さは600〜750μmまで変化した。PPプラスAP層の厚さは、片側では280〜360μmであり、反対側では230〜300μmであった。シート内のポリマー2Bの層は、100〜200μm厚さであった。物理試験のためにポリマー2B層をAPおよびPPから分離した。2.54cm幅フィルム試料を複製し、インストロン(Instron)(登録商標)汎用試験器具型番1122号(米国マサチューセッツ州カントンのインストロン・コーポレーション(Instron Corp,Canton,MA)で、初期2.54cm顎間隔から2.54cm/分伸長速度で試験した。2B層の周囲割線係数は、2%ストレインで1.9GPaであり、破断時の伸びがフィルム方向を横切る方向に46(±6)%であった。機械方向には、個々の引張試験値は0.85GPa、18(±3)%であった。これらの結果は、殆どの包装用途に必要な所望のじん性を示す。シート内のAP層とポリマー2B層との間の接着性は、2.54cm幅の試料を用い、インストロン(Instron)汎用試験器具(Universal Test Instrument)を用いて測定した。PPおよびAPを組み合わせた層は、非分離部分を伸長方向に対して90度の角度に保持しつつ、ポリマー2B層から5.08cm/分伸長率で引いた。最大力を試料幅で割ったものがAP層とポリマー2B層との間の接着性の90度T−引張値であった。この値は、0.05kgf/cmであった。このレベルの接着性は、シートを下流で加工して物品にするのに十分な高さであることが証明された。
【0089】
(実施例4)
PP、AP、およびポリマー2Bから5層のキャストシート(PP/AP/LCP/AP/PPシート)を作った。PPは、200℃で直径3.8−cmの一軸スクリュー押出機から送り出した。APは、190℃で直径3.2−cmの一軸スクリュー押出機から送り出した。ポリマー2Bは、190℃で直径2.5−cm一軸スクリュー押出機から送り出した。合計スループット率は、約5.9kg/時間であった。溶融量は、長さ15−cm、直径1.9cmネックに合流した。コートハンガーダイは、380−μm隙間のある幅36−cmのランド部を有するものであった。溶融カーテン(公称5cm垂直降下長さ)は、20℃の水で冷却した2つの急冷ロールの間のニップで終結した。引き取り速度によって、シート厚さは、480〜540μmまで変化した。PPプラスAP層の厚さは、外側および内側に225〜250μmであった。ポリマー2B層は、15〜30μm厚さであった。得られるポリマー2B層は、残りの構造から分離されており、その透過性を測定した。水蒸気透過率は、片側に液体水を有するASTM F1249を用いて、モコン(MOCON)(米国ミネソタ州ミネアポリス55428(Minneapolis,MN 55428))製パーマトラン(Permatran)(登録商標)Wユニットで測定した。ポリマー2B層の水蒸気透過率は、38℃、100%相対湿度(RH)水駆動力で1.1(±0.5)g水25μm/m・dayであった。酸素透過性は、モコン(MOCON)製オクストラン(Oxtran)(登録商標)ユニットでASTM法D3985を用いて測定した。この値は、23℃、90%RHで2.4(±0.6)cm酸素25μm/m・day・atmであった。破断時の伸びは、10と17%との間であり、強靱なフィルムであることを示している。
【0090】
(実施例5)
実施例3の多層シートを53.3平方センチメートルに裁断した。シートは、バッチモードで熱成形性を試験するために、米国ニューヨーク州W.ナイアック(W.Nyack,NY)のハイドロトリム・コーポレーション(Hydrotrim Corp.)から入手される実験室用熱成形機(ラブフォーム(Labform)(登録商標)型番1620号)に水平位置に取り付けた。熱は、30〜40−秒ドエル時間にシートの表面温度をポリプロピレンの名目上の形成温度である165℃に向けて上昇させる間に315℃の黒体放射体でシートの上および下から加えた。鋳型は非加熱非冷却セラミック鋳型とし、深さ3.5−cm、直径7.5−cmのペットフード缶を擬した成形物品とした。加熱サイクルの最後で、直ちに、シートを鋳型の上に位置決めし、鋳型周囲に締め付けた。2秒の間、鋳型内からの真空でシートを鋳型内に引いた。15秒後に鋳造シートを取り出した。シートは、型の内側形状を完全に複製した。本来のシートに印をつけたグリッドパターンにより、缶の新しい表面積が缶鋳型の直径内の本来のシートの部分から生じることができることが示された。
【0091】
熱成形缶を一方の縁から他方の縁まで中心を通して半分に切断した。PPプラスAP層の内側および外側の厚さは、表面照明と、デジタルマイクロメータを備えた光学顕微鏡とを用いてポリマー2B層の厚さと比較した。表1は、ポリマー2Bが缶の底角部(3〜5mmおよび9.6〜11mmの位置)が著しく薄くならなかったことを示す。
【0092】
【表1】

【0093】
(実施例6)
実施例5の熱成形カップは、湿潤冷却サイクルを用いて121℃で30分間蒸気加圧滅菌する前に高さおよび直径を測定した。驚くべきことには、121℃ではポリマー2Bが柔らかいのに、得られるカップの直径および高さは変化しなかった。また、121℃で30分間蒸気加圧滅菌で処理した後に、ポリマー2Bの酸素バリア特性も本質的に変化しなかった。
【0094】
(実施例7)
実施例3の多層シートを53.3cmの正方形に裁断し、330℃黒体放射加熱、ドエル時間40秒を用いて、各正方形を深さ5.5−cm、直径8.5−cmのカップに熱成形した。鋳型の内側形状が完全に複製された。カップの1つの縁から中心までの種々の層の厚さの分析により、ポリマー2B層が、成形カップ(表2)の底角部(5〜6mmの位置)で著しく薄くなってはいないことがわかった。
【0095】
【表2】

【0096】
(実施例8)
ポリマー2Bと同様であるが、溶融粘度が、全てせん断速度100秒−1で、190℃で1000Pa−s、230℃で83P−sであるポリマーは、直径1.9−cmの一軸スクリュー押出機を通して210℃で押出した。溶融物は、直径2.5−cmの環状ダイを通して流れた。溶融物を吹き込んで直径約5cmの上向き気泡にした。得られたフィルムは厚さ76μmであった。
【0097】
(実施例9)
PE、AP、およびポリマー2Bを用い、ブランプトン・エンジニアリング(Brampton Engineering)ブローンフィルム試験工場で5層のブローンフィルムを作った。フィルム構造は、外側がPE、中間がポリマー2B、APがポリマー2BをPE層に結合するものであった。合計スループット率は約20kg/時間であり、樹脂は、溶融温度が190℃であるように別個の一軸スクリュー押出機から送り込んだ。溶融流は、直径15−cmで隙間が1.68−mmの環状ダイに流入した。フィルムを上向きに押出し、直径が約30cmになるまで空気で膨張させた。合計フィルム厚さは100μmであった。ポリマー2Bの厚さは、5〜6μmで一様な外観であった。多層フィルムの酸素透過性は、23℃で3.5cm酸素−25μmのポリマー2B/m−day−atmであり、これは、欠点のない一様なポリマー2B層であることを示す。多層フィルムの試料は、ユニットを特定の数のサイクル走らせて停止させたことを除いてASTM方法F392−93条件Aを用い、実験室用ゲルボ・フレックス・テスタ(Gelbo Flex Tester)で試験した。酸素透過率は、各10倍回曲げた後に測定した。0、10、100、1000回曲げた後、酸素透過性は、3、5.8、3、および320cm酸素−25μm/m−day−atmであった。これらの結果は、ポリマー2B層の耐久性が優れていることを実際に示している。
【0098】
(実施例10)
単層のポリマー2Bフィルムを実施例3の多層シートから分離した。予め設定した温度まで加熱した0.6−cm厚さの銅ブロックを両側に接触させつつ、2.5−cm幅の試料を一軸延伸した。急速冷却の間、フィルムに高度張力を維持した。延伸の前後に幅および厚さを測定した。表3に示した結果を見ると、延伸温度が105℃より高いとフィルムが実質的に伸張することができた。
【0099】
【表3】

【0100】
上の延伸フィルムの試料を100℃に加熱した空気に暴露した。試料の長さを加熱の前後に各々測定すると、試料の1つは加熱前に5cm、加熱後に3cm、別の試料では加熱前に4.9cm、加熱後に2.9cmであった。この結果は2%〜5%の収縮率を実際に示している。
【0101】
(実施例11)
以下の連続押出コーティングラインで、クラフト紙にポリマー2Bを押出しコーティングした。クラフト紙(89−μm厚さ)をオフラインで炎処理した。ポリマー2Bは、溶融温度225℃、約220kg/時で一軸スクリュー押出機を通して押出した。溶融物は、1000−μm幅開口部を有する61cm幅コートハンガーダイを通って流れた。溶融カーテンは、3と8m/分との間で移動するクラフト紙の移動ウェブ内に15cm落ちた。接触した直後、溶融/紙は、60℃の急冷ドラムを有するニップに入った。遅い引取り速度では、ポリマー2Bの163μmコーティングを有する試料が生成された。速い速度では、ポリマー2Bの66μmコーティングを有する試料が生成された。インストロン(Instron)汎用試験器具での2.54cm幅の試料片を用いたポリマー2B間の接着性および90度T−引張力の試験では、66−および163−μm厚さの試料に対して各々0.11kgf/cmおよび0.43kgf/cmが得られた。
【0102】
(実施例12)
ポリマー2Bの代わりにポリマー2Aを用い、溶融温度が300℃であることを除けば.実施例11と同様の押出コーティング試験を行った。48μmのポリマー2Aを有するコーティングクラフト紙の試料の接着性は、0.09kgf/cmであり、33μmポリマー2Aでコーティングした試料の接着性は、0.08kgf/cmであった。両方の場合で、剥離の失敗は、クラフト紙内の粘着不良によるものであった。
【0103】
(実施例13)
片側にポリマーの層を有する薄いシートまたはフィルムを折り曲げまたは成形することにより生成した物品は、通常、ポリマーがフィンシールでそれ自身に密封することが必要であることになる。このような密封には、対向する側の一方または両方から熱を与えることにより密封層を加熱することが必要である。ポリマー2Bでコーティングした紙は、210℃で35MPa圧力を1分間用いてポリマー2Bの127μm厚さのフィルムを99μm厚さの紙にプレスすることにより実験室内で作製した。コーティング紙は、ポリマーが豊富なコーティングを有していた。ポリマーが豊富な側は、卓上センチネル(Sentinel)(登録商標)ヒートシーラー型番12ASL(米国マサチューセッツ州ハイアニス(Hyannis,MA)のパッケージング・インダストリーズ・インク(Packaging Industries,Inc.))で、2.54−cm幅のバーおよび280kPa圧力を用いて互いに結合させた。バーの制御温度が210℃でドエル時間が3秒以上である場合には、ポリマーは、紙層の粘着不良により示されるようにそれ自身に結合した。バー温度が230℃でドエル時間が1.5秒である場合には、ポリマーはそれ自身に結合した。
【0104】
(実施例14)
カートンのためのコーティング板紙のような厚いシートから生成した物品には、ヒートシール層に熱を直接与えることにより、通常、炎を直接作用させることにより、ヒートシールすることが必要である。ポリマー2Bは、プロパントーチを用いることにより、この方法でヒートシールした。ポリマー2Bコーティング板紙は、210℃で、120MPa圧力を1分間用いて127μm厚さのポリマー2Bシートを463μm厚さの板紙にプレスすることにより実験室で作製した。コーティング板紙は、ポリマーの豊富なコーティングを有していた。板紙を2.5cm幅ストリップに裁断し、これを各々折り曲げてポリマーが豊富な側が互いに面するようにした。プロパンの炎を折り目の内側に1秒作用させ、その直後に2.5cm正方形部分に3秒間軽い圧力をかけ、溶融ポリマーを結合した。試料のT−引張り試験(上を参照)により、0.6kgf/cm引張り力が得られた。この結果から、ポリマー2Bがそれ自身に密封されていたことが示される。
【0105】
(実施例15)
重なり密封には、フィルム内側が外側にヒートシールされることが必要である。この種類の密封を実際に示すために、エチレンと28モルパーセントのn−ブチルアクリレートおよび8.8モルパーセントのグリシジルメタクリレートとのターポリマーの1320μm厚さのシートをポリマー2Bの152−ミクロンフィルムと接触させつつ溶融した。プレス条件は、210℃または230℃のいずれかで1分予備加熱および1分維持であった。試料を周囲温度まで素早く急冷した後、インストロン(Instron)(登録商標)汎用試験器具で5.08cm/分の速度でポリマー2Aからターポリマーを引張った。90度T−引張りの結果は、210℃および230℃のプレス条件で各々0.9kgf/cmおよび3kgf/cmであった。これらの結果は、本発明のLCPが別のポリマーにヒートシールすることができることおよび本発明のLCPのための共押出し可能な接着剤のベースを形成するのにグリシジルメタクリレートが有用であることを実際に示している。
【0106】
(実施例16)
1つのPE層の代わりに、エチレンと、1.5%ナトリウム陽イオンで中和した10モルパーセントのメタクリル酸とのコポリマーを用いた(即ちアイオノマー)ことを除けば、実施例9の多層ブローンフィルムと同様の多層ブローンフィルムを作った。他のPE層の代わりにPPを用いた。アイオノマー+つなぎ層の厚さは93μmであり、合計厚さは144μm、ポリマー2Bの厚さは4.5μmであった。これらの多層フィルムの2つから、3つの縁に圧力および外側表面に当てられた100℃の顎からの熱を印加することによりコポリマーとコポリマーのフィンシールをヒートシールすることにより5cm×10cm長方形ポーチを作った。ほぼ0.5mlのペパーミントオイル(米国オレゴン州ポートランド(Portland,OR)のエッセンシャル・オイル・カンパニー(Essential Oils Co.)から入手可能))をポーチの内部に入れた。別の同一のポーチにスペアミントオイルを入れた。次に、ポーチの第4の縁を密封した。100μm厚さのPEフィルムで同様のポーチを組み立て、ペパーミントおよびスペアミントオイルを満たした。ポーチを密封して1時間後、ポリエチレンポーチから強い芳香が発散した。ポリマー2Bを含む多層ポーチからは臭気が発散しなかった。この結果は、本発明のLCPを含む物品が芳香および臭気バリアとして働くのに有用であることを実際に示している。
【0107】
(実施例17)
実施例16に記載した多層フィルムで、大きさがほぼ13cm×15cmであることを除けば上の実施例と同様にポーチを作った。各ポーチの3辺をインパルスシーラーを用いて密封し、約500mlの水を満たした後、第4の辺を密封した。少量の空気が閉じ込められた。ポーチの1つはアイオノマー層を通して密封した。別のポーチはPP層を通して密封した。ポーチは、スターリス・コーポレーション(Steris Corp)(米国ペンシルベニア州エリー(Erie,PA))実験室のフィン−アクア(Finn−Aqua)(登録商標)蒸気混合滅菌器を用い、121℃、350kPa圧力で30分間蒸気滅菌または加圧滅菌した。アイオノマー層を通して密封したポーチは、滅菌サイクルの間に破裂した。PP層を通して密封したポーチは、漏れもなく無傷のままであった。これらの結果は、本発明のLCPが酸素に敏感な内容物を有する蒸気滅菌可能なポーチに有用であることを実際に示している。
【0108】
(実施例18)
p−ヒドロキシ安息香酸(452.7g)、ポリ(エチレンテレフタレート)419.6g、4,4’−ビフェノール40.7g、および無水酢酸405.8gを室温で撹拌しながら3−リットル反応槽に入れた。撹拌機は螺旋状リボン型であった。反応槽には蒸留カラムおよび還流スプリッタを装備し、反応副産物を除去できるようにした。この混合物に、撹拌しながら真空を作用させ窒素ガスを補充することにより3回脱気した。脱気して撹拌した混合物は、外部電気ヒータにより温度を170℃に設定して維持した液体金属浴の温度を上げることにより加熱して還流した。還流混合物は、1時間全還流し、原料中の全ての利用可能なヒドロキシル基をアセチル化した。1時間後、液体金属加熱浴の温度制御設定点を10分毎に20℃上げて設定点を230℃にした。浴温度制御設定点は、230℃に1時間保持し、その後、設定点を再び10分毎に20℃上げて浴温度設定点を305℃にした。温度を上昇させる間に、還流比を制御し、ほぼ2:1の還流:引取り比にした。305℃の浴温度設定点で酢酸副産物の発生が弱まったら、蒸留カラムおよび還流スプリッタを除去し、真空引取りを備えた三つ口フラスコと取替えた。フラスコをドライアイスで覆い、工程のこの時点から最後までに反応混合物から除去される全ての酢酸のための凝縮器/トラップとして働かせた。一定の305℃浴温度制御装置設定点を維持しつつ、真空を加えることにより、反応槽および真空とラップ内の絶対圧力を15分毎に約17kPaずつ減少させ、槽内の圧力を約130〜260kPa(絶対)にした。圧力は、残りの作業の間このレベルに維持した。ほぼ3時間真空を維持した。撹拌機を回転させるのに必要なトルクを増大させると、初期の30RPMから最終値10RPMまで撹拌機回転/分(RPM)が減少した。3時間が終わると、真空を遮断して窒素で槽を大気圧まで再加圧し、槽からスパチュラで擦り落とすことによりポリマーを回収し、その後水で急冷した。
【0109】
グッドイヤー(Goodyear)技術によりトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン中で測定すると、ポリマー生成物のインヘレント粘度は1.049dl/gであった。ポリマー溶融粘度は、230℃、せん断速度1000/秒で測定すると173Pa−秒であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、
各Rは独立してヒドロカルビレンまたは置換ヒドロカルビレンであり、
各Rは独立して飽和ヒドロカルビレンまたは置換飽和ヒドロカルビレンであり、
各Rは独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
(V)は存在する(I)の合計の約0.4〜約32モルパーセントであり、
(I):[(II)+(V)]のモル比は約1.0:1.0であり、
(I):[(IIIA)+(IIIB)]のモル比は約1.0:1.0〜約1.0:4.0であり、
(IIIA):(IIIB)のモル比は約5:1〜約1:2である)
の繰り返し単位を含むことを特徴とする液晶ポリマー。
【請求項2】
の90〜100モルパーセントがp−フェニレンであり、Rの0〜10モルパーセントがm−フェニレンであり、
の90.0〜100モルパーセントが−CHCH−であり、Rの0〜10.0モルパーセントが−CHCHOCHCH−であり、
各Rが4,4’−ビフェニレンであり、
(V)が存在する(I)の合計の約1〜約3モルパーセントであり、
(I):[(II)+(V)]のモル比が約1.0:1.0であり、繰り返し単位(I+V)+繰り返し単位(I+II)の総量が前記液晶ポリマーの約25〜約35モルパーセントであり、
(IIIA)の量が前記液晶ポリマーの約45〜約55モルパーセントであり、
(IIIB)の量は前記液晶ポリマーの約15〜約25モルパーセントであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリマー。
【請求項3】
繰り返し単位(I+V)+繰り返し単位(I+II)の総量が前記液晶ポリマーの約28〜約32モルパーセントであり、
(IIIA)の量が前記液晶ポリマーの約48〜約52モルパーセントであり、
(IIIB)の量が前記液晶ポリマーの約18〜約22モルパーセントであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶ポリマー。
【請求項4】
モノマー官能性化合物で処理し、せん断速度1000秒−1でその溶融粘度を少なくとも10%減少させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶ポリマー。
【請求項5】
(a)加えた溶媒の不在下で、式
【化2】

の繰り返し単位を有する部分的芳香族ポリエステルを、
式HO−R−COH(III)の1種または複数種の化合物、式HO−R−OH(IV)の1種または複数種の化合物、およびカルボン酸無水物と、前記カルボン酸無水物との反応により(III)および(IV)のエステルを形成する条件で接触させるステップと、
(b)液晶ポリマーを形成する温度およびそれに十分な量の時間で、(a)から得られる混合物を加熱するステップと、を含む液晶ポリマーの製造方法であって、式中、
各Rが独立してヒドロカルビレンまたは置換ヒドロカルビレンであり、
各Rが独立してアルキレンまたは置換アルキレンであり、
各Rが独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
各Rが独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
但し、(IV)が、前記部分的芳香族ポリエステル中に存在する(II)の量を基準にして、総ジオールが0.5〜15モルパーセント化学量論的に過剰となる量で存在することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記カルボン酸無水物が無水酢酸であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
の90〜100モルパーセントがp−フェニレンであり、Rの0〜10モルパーセントがm−フェニレンであり、
の90.0〜100モルパーセントが−CHCH−であり、Rの0〜10.0モルパーセントが−CHCHOCHCH−であり、
各Rが4,4’−ビフェニレンであり、
(III)が
【化3】

の混合物であり、
(I):[(II)+(V)]のモル比が約1.0:1.0であり、
(I):[(IIIA)+(IIIB)]のモル比が約1.0:1.0〜約1.0:4.0であり、
(IIIA):(IIIB)のモル比が約5:1〜約1:2であり、
化学量論的過剰が1〜3パーセントであることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5、6または7のいずれか一項に記載の方法の生成物。
【請求項9】
液晶ポリマーをモノマー官能性化合物で処理してその溶融粘度をせん断速度1000秒−1で少なくとも10%まで減少させる追加のステップを含むことを特徴とする請求項5、6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリマーを含むことを特徴とする容器。
【請求項11】
請求項8に記載の生成物を含むことを特徴とする容器。
【請求項12】
ポーチまたは袋であることを特徴とする請求項10または11に記載の容器。
【請求項13】
トレイ、カップ、缶、バケツ、タブ、箱、パイプ、ボウル、チューブ、パリソン、およびカートンからなる群から選択される硬い容器である前記液晶ポリマーを含むことを特徴とする請求項10または11に記載の容器。
【請求項14】
前記液晶ポリマーで押出コーティングした板紙で作製したカートンであることを特徴とする請求項13に記載の容器。
【請求項15】
バリア層として前記液晶ポリマーを含む熱成形多層カップであることを特徴とする請求項13に記載の容器。
【請求項16】
ポリプロピレンを含む外側層および前記液晶ポリマーを含む内側層を含み、共押出し可能な接着層が前記ポリプロピレン層を前記液晶ポリマー層に結合する多層構造から形成される請求項15に記載の容器。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリマーを含むことを特徴とするフィルムまたはシート。
【請求項18】
請求項5、6または7のいずれか一項に記載の生成物を含むことを特徴とするフィルムまたはシート。
【請求項19】
前記液晶ポリマーを含む単層ブローンフィルムであることを特徴とする請求項17または18に記載のフィルムまたはシート。
【請求項20】
前記液晶ポリマーを含む少なくとも1つの層を含む多層構造であることを特徴とする請求項17または18に記載のフィルムまたはシート。
【請求項21】
前記多層構造がポリプロピレンを含む外側層および前記液晶ポリマーを含む内側層を含み、共押出し可能な接着層が前記ポリプロピレン層を前記液晶ポリマー層に結合することを特徴とする請求項20に記載のフィルムまたはシート。
【請求項22】
紙、板紙、アルミホイル、布、不織材料、およびフィルム基板からなる群から選択される基板に、ラミネート、押出コーティングまたは共押出コーティングにより結合され、前記フィルム基板が、ポリ(フッ化ビニリデン)、ナイロン−6,6、2軸延伸ポリプロピレン、2軸延伸ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリイミドからなる群から選択される別のポリマーを含むことを特徴とする請求項17または18に記載のフィルムまたはシート。
【請求項23】
前記液晶ポリマーで押出コーティングされたクラフト紙を含むことを特徴とする請求項22に記載のフィルムまたはシート。
【請求項24】
前記液晶ポリマーで押出コーティングされた板紙を含むことを特徴とする請求項22に記載のフィルムまたはシート。
【請求項25】
ヒートシールも含み、前記液晶ポリマーが前記ヒートシールの両側を形成することを特徴とする請求項14に記載の容器。
【請求項26】
90℃まで加熱されると4%を超えて収縮することを特徴とする請求項20に記載のフィルムまたはシート。
【請求項27】
紙に液晶ポリマーをコーティングするための方法であって、紙シートの表面に液晶ポリマーの溶融シートを接触させてコーティング紙シートを形成するステップと、次に、前記コーティング紙シート上の前記液晶ポリマーが依然として少なくとも部分的に溶融状態である間に、コーティング紙シート上の前記液晶ポリマーに接触する表面があることによって圧力を印加するステップと、を含み、前記表面の温度が前記液晶ポリマーの固化温度未満であり、前記表面によりコーティング紙シート上の前記液晶ポリマーに圧力が印加され、前記液晶ポリマーが固体である液晶ポリマーコーティング紙シートを生成することを特徴とする方法。
【請求項28】
前記液晶ポリマーが請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリマーを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記装置が1つまたは2つの急冷ロールであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法の生成物。
【請求項31】
請求項30に記載の生成物を含むことを特徴とする容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、
各Rは独立してヒドロカルビレンまたは置換ヒドロカルビレンであり、
各Rは独立して飽和ヒドロカルビレンまたは置換飽和ヒドロカルビレンであり、
各Rは独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
(V)は存在する(I)の合計の約0.4〜約32モルパーセントであり、
(I):[(II)+(V)]のモル比は約1.0:1.0であり、
(I):[(IIIA)+(IIIB)]のモル比は約1.0:1.0〜約1.0:4.0であり、
(IIIA):(IIIB)のモル比は約5:1〜約1:2である)
の繰り返し単位から本質的になることを特徴とする液晶ポリマー。
【請求項2】
の90〜100モルパーセントがp−フェニレンであり、Rの0〜10モルパーセントがm−フェニレンであり、
の90.0〜100モルパーセントが−CHCH−であり、Rの0〜10.0モルパーセントが−CHCHOCHCH−であり、
各Rが4,4’−ビフェニレンであり、
(V)が存在する(I)の合計の約1〜約3モルパーセントであり、
(I):[(II)+(V)]のモル比が約1.0:1.0であり、繰り返し単位(I+V)+繰り返し単位(I+II)の総量が前記液晶ポリマーの約25〜約35モルパーセントであり、
(IIIA)の量が前記液晶ポリマーの約45〜約55モルパーセントであり、
(IIIB)の量は前記液晶ポリマーの約15〜約25モルパーセントであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリマー。
【請求項3】
繰り返し単位(I+V)+繰り返し単位(I+II)の総量が前記液晶ポリマーの約28〜約32モルパーセントであり、
(IIIA)の量が前記液晶ポリマーの約48〜約52モルパーセントであり、
(IIIB)の量が前記液晶ポリマーの約18〜約22モルパーセントであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶ポリマー。
【請求項4】
モノマー官能性化合物で処理し、せん断速度1000秒−1でその溶融粘度を少なくとも10%減少させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶ポリマー。
【請求項5】
(a)加えた溶媒の不在下で、式
【化2】

の繰り返し単位を有する部分的芳香族ポリエステルを、
式HO−R−COH(III)の1種または複数種の化合物、式HO−R−OH(IV)の1種または複数種の化合物、およびカルボン酸無水物と、前記カルボン酸無水物との反応により(III)および(IV)のエステルを形成する条件で接触させるステップと、
(b)液晶ポリマーを形成する温度およびそれに十分な量の時間で、(a)から得られる混合物を加熱するステップと、を含む液晶ポリマーの製造方法であって、式中、
各Rが独立してヒドロカルビレンまたは置換ヒドロカルビレンであり、
各Rが独立してアルキレンまたは置換アルキレンであり、
各Rが独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
各Rが独立してアリーレンまたは置換アリーレンであり、
但し、(IV)が、前記部分的芳香族ポリエステル中に存在する(II)の量を基準にして、総ジオールが0.5〜15モルパーセント化学量論的に過剰となる量で存在することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記カルボン酸無水物が無水酢酸であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
の90〜100モルパーセントがp−フェニレンであり、Rの0〜10モルパーセントがm−フェニレンであり、
の90.0〜100モルパーセントが−CHCH−であり、Rの0〜10.0モルパーセントが−CHCHOCHCH−であり、
各Rが4,4’−ビフェニレンであり、
(III)が
【化3】

の混合物であり、
(I):[(II)+(V)]のモル比が約1.0:1.0であり、
(I):[(IIIA)+(IIIB)]のモル比が約1.0:1.0〜約1.0:4.0であり、
(IIIA):(IIIB)のモル比が約5:1〜約1:2であり、
化学量論的過剰が1〜3パーセントであることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5、6または7のいずれか一項に記載の方法の生成物。
【請求項9】
液晶ポリマーをモノマー官能性化合物で処理してその溶融粘度をせん断速度1000秒−1で少なくとも10%まで減少させる追加のステップを含むことを特徴とする請求項5、6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記化学量論的過剰が1%〜12%であることを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項8に記載の生成物を含むことを特徴とする容器。
【請求項12】
ポーチまたは袋であることを特徴とする請求項10または11に記載の容器。
【請求項13】
トレイ、カップ、缶、バケツ、タブ、箱、パイプ、ボウル、チューブ、パリソン、およびカートンからなる群から選択される硬い容器である前記液晶ポリマーを含むことを特徴とする請求項10または11に記載の容器。
【請求項14】
前記液晶ポリマーで押出コーティングした板紙で作製したカートンであることを特徴とする請求項13に記載の容器。
【請求項15】
障壁層として前記液晶ポリマーを含む熱成形多層カップであることを特徴とする請求項13に記載の容器。
【請求項16】
ポリプロピレンを含む外側層および前記液晶ポリマーを含む内側層を含み、共押出し可能な接着層が前記ポリプロピレン層を前記液晶ポリマー層に結合する多層構造から形成される請求項15に記載の容器。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリマーを含むことを特徴とするフィルムまたはシート。
【請求項18】
請求項5、6または7のいずれか一項に記載の生成物を含むことを特徴とするフィルムまたはシート。
【請求項19】
前記液晶ポリマーを含む単層ブローンフィルムであることを特徴とする請求項17または18に記載のフィルムまたはシート。
【請求項20】
前記液晶ポリマーを含む少なくとも1つの層を含む多層構造であることを特徴とする請求項17または18に記載のフィルムまたはシート。
【請求項21】
前記多層構造がポリプロピレンを含む外側層および前記液晶ポリマーを含む内側層を含み、共押出し可能な接着層が前記ポリプロピレン層を前記液晶ポリマー層に結合することを特徴とする請求項20に記載のフィルムまたはシート。
【請求項22】
紙、板紙、アルミホイル、布、不織材料、およびフィルム基板からなる群から選択される基板に、ラミネート、押出コーティングまたは共押出コーティングにより結合され、前記フィルム基板が、ポリ(フッ化ビニリデン)、ナイロン−6,6、2軸延伸ポリプロピレン、2軸延伸ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリイミドからなる群から選択される別のポリマーを含むことを特徴とする請求項17または18に記載のフィルムまたはシート。
【請求項23】
前記液晶ポリマーで押出コーティングされたクラフト紙を含むことを特徴とする請求項22に記載のフィルムまたはシート。
【請求項24】
前記液晶ポリマーで押出コーティングされた板紙を含むことを特徴とする請求項22に記載のフィルムまたはシート。
【請求項25】
ヒートシールも含み、前記液晶ポリマーが前記ヒートシールの両側を形成することを特徴とする請求項14に記載の容器。
【請求項26】
90℃まで加熱されると4%を超えて収縮することを特徴とする請求項20に記載のフィルムまたはシート。
【請求項27】
紙に液晶ポリマーをコーティングするための方法であって、紙シートの表面に液晶ポリマーの溶融シートを接触させてコーティング紙シートを形成するステップと、次に、前記コーティング紙シート上の前記液晶ポリマーが依然として少なくとも部分的に溶融状態である間に、コーティング紙シート上の前記液晶ポリマーに接触する表面があることによって圧力を印加するステップと、を含み、前記表面の温度が前記液晶ポリマーの固化温度未満であり、前記表面によりコーティング紙シート上の前記液晶ポリマーに圧力が印加され、前記液晶ポリマーが固体である液晶ポリマーコーティング紙シートを生成することを特徴とする方法。
【請求項28】
前記液晶ポリマーが請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリマーを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記装置が1つまたは2つの急冷ロールであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法の生成物。
【請求項31】
請求項30に記載の生成物を含むことを特徴とする容器。

【公表番号】特表2006−511632(P2006−511632A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−521694(P2004−521694)
【出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/021752
【国際公開番号】WO2004/007590
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】