説明

液晶ポリマーの製造方法

エステル結合を含み、過剰のジオールの存在下で作製された液晶ポリマー(LCP)の特性は、LCPをジカルボン酸で高温において処理することによって改善される。得られたLCPは、成形用樹脂としておよびフィルム用に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマーの生成方法に関する。該方法は、改善された特性を有する液晶ポリマーを提供する。該方法は、ジカルボン酸と、ジオールおよび任意選択的にヒドロキシカルボン酸の脂肪族エステルとを、過剰のジオール(エステル)の存在下で反応させるステップと、得られたLCPをジカルボン酸で処理するステップとを含む。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリマー(LCP)は、商品であり、年間何千トンも作製されている。これらは、成形用樹脂およびフィルムとして無数の方法で使用して、例えば電気および電子部品、自動車部品、ならびに医療部品が作製される。LCPは大半の場合ポリエステルとして提供されるが、ポリ(エステル−アミド)としても利用可能である。ポリエステル結合を形成する縮合反応は、最も一般的に、高温で1つまたは複数のジカルボン酸を1つまたは複数のジオールの脂肪族エステルおよび/または1つまたは複数のヒドロキシカルボン酸の脂肪族モノエステルを縮合させることによって行われる。脂肪族エステルを「予備成形する」ことができる、すなわち成分を脂肪族エステルとして重合プロセスに添加することができるが、経済的理由で、脂肪族エステルは通常適切な量の脂肪族カルボン酸無水物を重合混合物に添加して、脂肪族エステルを形成することによって現場で作製される。
【0003】
通常は、LCPを形成するのに必要とされたモノマーをすべて、エステル基中に存在するジオールおよびヒドロキシカルボン酸モノマーの全ヒドロキシル基を有するエステル基を形成する量の脂肪族カルボン酸無水物、通常は無水酢酸と共に、反応器に添加する。混合物を加熱してエステル形成を完結させ、形成されたカルボン酸を蒸留によって除去する。加熱を継続して、カルボン酸を同時に蒸留しながら、縮合重合を行い、最終的に通常は真空を適用して重合を完結させる。あるいは、溶融重合をある点で中断し、その(プレ)ポリマーを、いわゆる固相重合を使用して所望の分子量にさらに重合することができる。特に使用するジオールのうちの1つが幾分揮発性である場合、過剰のジオールを重合で使用して、重合物からの偶発的な揮発および除去によるジオール(またはそのジエステル)の考えられ得る損失を埋め合わせることが望ましい場合がある。しかし、得られたLCPは、所望の使用に最適の特性を有することができず、特にいくつかの用途に望ましいものより脆性となる恐れがある。
【0004】
米国特許公報(特許文献1)では、LCPを様々な官能性化合物で処理して、LCPの粘度を低減することが記述されている。
【0005】
引張伸びや曲げ伸びなど改善された特性を有するLCPが望ましい。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,294,618号明細書
【特許文献2】米国特許第4,075,262号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液晶ポリマー(LCP)の作製方法に関する。存在する過剰のジオールで作製されたLCPについても、〜についても記述がない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
(a)液晶ポリマーを、1つまたは複数の第1のジカルボン酸、1つまたは複数の第1のジオールの脂肪族ジエステル、および任意選択的に1つまたは複数のヒドロキシカルボン酸の脂肪族エステルを含む成分から形成するステップと、
(b)液晶ポリマーを、前記液晶ポリマー1kg当たり約2〜約200ミリ当量の第2のジカルボン酸と、第2のジカルボン酸と液晶ポリマーとに反応させるのに十分な温度で、液晶ポリマーの引張伸びを少なくとも約10%増大させるのに十分な時間接触させるステップとを含み、
存在する第1のジオール全体と第1のジカルボン酸全体のモル比が1.01以上であることを条件とする、方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書では、いくつかの用語を使用し、下記に説明する。
【0010】
液晶ポリマーは、参照により本明細書に援用される米国特許公報(特許文献2)に記載されるようにポリマーがTOTまたは同様の試験方法で異方性を示すことを意味する。好ましいポリマーは、液晶ポリエステルであり、液晶ポリエステルは芳香族ポリエステルであることがさらに好ましい。芳香族ポリエステルは、エステル結合の−C(O)O−基の末端の炭素および酸素原子はそれぞれ、芳香族環の一部分である炭素原子に結合していることを意味する。
【0011】
ジオールは、2つのヒドロキシル基を有し、好ましくはエステル結合を形成することができる他の官能基をもたない有機化合物を意味する。好ましいジオールは芳香族ジオールであり、ヒドロキシル基は両方とも、1つまたは2つの異なる芳香族環の炭素原子に結合している。
【0012】
ジカルボン酸は、2つのカルボキシル基を有し、好ましくはエステル結合を形成することができる他の官能基をもたない有機化合物を意味する。好ましいカルボン酸は芳香族ジカルボン酸であり、カルボキシル基は両方とも、1つまたは2つの異なる芳香族環の炭素原子に結合している。
【0013】
ヒドロキシカルボン酸は、1つのヒドロキシル基および1つのカルボキシル基を有し、好ましくはエステル結合を形成することができる他の官能基をもたない有機化合物を意味する。好ましいヒドロキシカルボン酸は芳香族ヒドロキシカルボン酸であり、このヒドロキシルおよびカルボキシル基は、1つまたは2つの異なる芳香族環の炭素原子に結合している。
【0014】
ジオールの脂肪族ジエステルは、ジオールと、脂肪族カルボン酸から誘導された2つのカルボキシル基(RCO2−、ただしRはアルキルまたは置換アルキルである)とから形成されたジエステルを意味する。ヒドロキシカルボン酸の脂肪族エステルは、ヒドロキシカルボン酸と、脂肪族カルボン酸から誘導された1つのカルボキシル基とから形成されたモノエステルを意味する。好ましくはこのようなエステルの一部または全部が酢酸エステルである。
【0015】
「引張伸び」は、ASTM方法 D638によって、伸長速度5.1mm/分(0.2インチ/分)で、タイプIバーを使用して測定した場合の破断伸びを意味する。歪ゲージを使用して測定を行って、通常の小破断歪を精確に測定する。
【0016】
LCPを処理するのに有用なジカルボン酸には、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、4,4’−ビベンゾイック酸、2−メチルテレフタル酸、およびアジピン酸が挙げられる。好ましいジカルボン酸は、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびテレフタル酸であり、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が特に好ましい。他の好ましい第2のジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸であり、カルボキシル基は両方とも、芳香族環の炭素原子に直接結合している。
【0017】
LCP用のモノマーとして有用なジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビベンゾイック酸、および1,8−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。LCP用のモノマーとして有用なジオールには、エチレングリコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノール−A、およびビスフェノール−Sが挙げられる。ヒドロキノン、および4,4’−ビフェノールが好ましいジオールであり、ヒドロキノンが特に好ましい。LCP用のモノマーとして有用なヒドロキシカルボン酸には、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、およびt−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。好ましいヒドロキシカルボン酸は、4−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸であり、4−ヒドロキシ安息香酸が特に好ましい。
【0018】
LCPを作製する場合、ジオール全体とジカルボン酸全体のモル比は、1.01以上(ジオールは、少なくとも1%モル過剰に存在している)、好ましくは1.02以上、特に好ましくは1.03以上である。好ましくは、ジオール全体とジカルボン酸全体のモル比は、約1.5以下、より好ましくは約1.10以下である。ジオールの任意の下限値および任意の上限値を組み合わせて、好ましい範囲を形成することができる。
【0019】
LCPを調製する好ましい一方法では、LCPを完全に溶融して調製し、次いでジカルボン酸で処理する。別の好ましい方法では、LCPを初期に溶融して調製し、次いでLCPの分子量を固相重合により上昇させる。固相重合した後、LCPをジカルボン酸で処理する。
【0020】
ジカルボン酸によるLCPの処理は、LCPが溶融物中に存在する場合に最も効果的に実施される。好ましい一方法では、LCPを溶融し、単軸もしくは二軸押出機またはニーダなどポリマー用に使用される溶融ミキサーでジカルボン酸と混合する。混合物を、LCPの融点を超える温度に加熱する。この温度では、LCPの伸びが、混合物をミキサー中で加熱し混合する時間で所望の量増大する。本発明は特定の理論または機構に拘泥するものではないが、LCPの伸びは、ジカルボン酸が溶融物中に存在する他の種と反応することができる温度に到達する場合に増大すると考えられる。LCPおよびジカルボン酸を、ミキサーに入れる前に固体で予め混合することができ、あるいは別々に添加しミキサー中で混合する。
【0021】
充填剤、補強剤、滑沢剤、顔料など他の材料、およびLCPの作製における使用で知られている他の材料を、ジカルボン酸と同時にLCP中に混合することができる。試験測定では、LCPの伸び(LCP中に混合された他の成分を含めて)を、同じ組成物を有し、同じ方式で作製されるが、ジカルボン酸が存在しないLCPの伸びと比べる。あるいは、LCPおよび他の成分を含む組成物をまず調製し、次いでジカルボン酸で処理することができる。得られたLCPの伸びを、同じ方式で処理された、ジカルボン酸を添加していない同じ組成物の伸びと比べる。「純」LCPをジカルボン酸で処理することができ、その伸びを、同じ方式で処理された、ジカルボン酸を含まない「純」LCPの伸びと比べる。
【0022】
有用な他の成分の例には、ガラス繊維、ミルドガラス繊維、中空または中実ガラス球体、マイカ、タルク、二酸化チタン、カーボンブラック、炭素繊維およびアラミド繊維、ならびにポリエチレンワックスなどの滑沢剤が挙げられる。
【0023】
使用する(第2の)ジカルボン酸の量は、少なくとも約2、好ましくは少なくとも約5(meq)/kgLCP(LCPのみに基づく)である。LCPの処理において添加される(第2の)ジカルボン酸の量は、約200以下、好ましくは約100以下、より好ましくは約50(meq)/kgLCP(組成物中のLCPのみ)以下である。「当量」は、カルボン酸官能基の当量を意味し、1ミリモルのジカルボン酸は、2meqのカルボキシル基を含む。ジカルボン酸含有量の任意の下限値および任意の上限値を組み合わせて、好ましい範囲を形成することができる。
【0024】
他のタイプの二官能性化合物を、LCPの処理に使用するジカルボン酸に加えて使用することができる。このような化合物中の官能基には、ヒドロキシ、カルボキシレート、エステル、および第一級または第二級アミンが挙げられ、ヒドロキシが好ましい。有用なヒドロキシ化合物には、ジオールおよび水(本明細書では定義上、二官能性化合物)が挙げられ、ジオールのうち、芳香族ジオールが特に好ましい。有用な芳香族ジオールには、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノール−A、およびビスフェノール−Sが挙げられる。このような好ましい芳香族ジオールは、ヒドロキノンおよび4,4’−ビフェノールであり、4,4’−ビフェノールが特に好ましい。
【0025】
水も特に好ましいヒドロキシ化合物であり、単独でまたはジオール、特に芳香族ジオールと組み合わせて使用することができる。水は、水としてまたはプロセス条件下で水を生じる形でプロセスに添加することができる。例えば、水和物、またはプロセス(温度)条件下で水を「喪失する」他の化合物として、水を添加することができる。このような水和物および他の化合物には、酸化アルミニウム三水和物、硫酸銅五水和物、塩化バリウム二水和物、および硫酸カルシウム二水和物が挙げられる。
【0026】
好ましくは、他の二官能性化合物の(水が存在する場合それを含まない)全モル量は、LCPを処理するために添加するジカルボン酸の全モル量の2倍を超えず、より好ましくは添加されたこのようなジカルボン酸の量の約20〜約100(モル)パーセントである。水が存在する場合は、添加する他のいかなる二官能性化合物に関係なくかつそれを含むことなく、添加する第2のジカルボン酸の全モル量に比べてはるかに多量を添加することができる。水を使用する場合には、添加するジカルボン酸に対して0.2:1〜約10:1のモル比で使用することが好ましい。すなわち、水の量は、第2のジカルボン酸のモル数に対して約20〜約1000モルパーセントであることが好ましい。水和物としての水の量は、プロセス条件下で「遊離される」すなわち放出される量しか考慮されない。例えば、三水和物は、ある種の温度条件下で三水和物1モル当たり水2モルしか生じないことがある。添加する水がすべて、プロセスにおいて有効であるとは限らないので、より多い量の水を必要とすることがある。現場で生成するのではなく、水として添加する場合、水は揮発しかつ/またはプロセス成分に非常に可溶とはなり得ないので、ほとんどではないがかなりの水を喪失する可能性がある。水和物中に包含される水についても、同じことが(ことによると、より少ない程度に)真実となり得る。所与の一連のプロセス条件下で一定の粘度低減を実現するのに必要な水(または、水は水和水として存在することができるので水和物)の量を、簡単な実験で決定することができる。水(必要とされた水和物)の量を、使用する装置の規模および/またはその装置の「気密度」(水蒸気を喪失する性向)によってある程度決定することが注記されている。
【0027】
本明細書の先に記載する量など適度な量で存在する場合、他の二官能性化合物、特にヒドロキシ化合物は、LCPの溶融粘度を、LCPの他の物理的諸特性に多大な悪影響を及ぼすことなく低下させると考えられる。より低い溶融粘度は、特に金型が狭いもしくは薄い開口部または通路を有する場合、より容易にかつ/またはより完全に金型充填を可能にするので、射出成形などいくつかの溶融成形操作において有利である。
【0028】
LCPをジカルボン酸で処理する場合、LCPの引張伸びが、好ましくは少なくとも約10パーセント、より好ましくは少なくとも約20パーセント増大する。伸びの増加の百分率は、次の数式を使用して算出する。
【0029】
【数1】

【0030】
式中、EATは、(ジカルボン酸で)処理した後の引張伸びパーセントであり、EBTは、処理する前の引張伸びパーセントである。
【0031】
LCPは、例えば自動車両、医療装置における電気および電子装置に有用な造形部品、および包装に使用するためのフィルムを作製するための成形用樹脂として有用である。造形部品は、LCP含有組成物を、例えば射出成形、押出、ブロー成形、ラム式射出成形、回転成形、および圧縮成形によって溶融成形することによって作製することができる。フィルムは、ストレートダイまたは回転ダイを通して押出によって作製することができる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例では、溶融粘度は、米国ペンシルベニア州モーガンタウンのケイネスコープ(Kayness Corp., Morgantown PA, U.S.A.)のケイネスモデル(Kayness Model)8052粘度計を使用して、(別段の注記のない限り)350℃、せん断速度1000/秒で決定した。引張特性は、ASTM D638の方法によって、タイプIの試験サンプル形状を使用して、サンプル厚さ0.32cm(1/8インチ)、伸び速度0.51cm/分(0.2インチ/分)で決定した。通常は小破断歪が精確に測定できるように歪ゲージを使用して、試験を行った。
【0033】
実施例では、注記されている場合を除いて、部はすべて重量部である。
【0034】
実施例では、以下の材料を使用する。
ATH−アルミナ三水和物
BP−4,4’−ビフェノール
GF−米国ペンシルベニア州バレーフォージのサンゴバンベトロテックスアメリカ(Saint−Gobain Vetrotex America, Valley Forge, PA 19482, USA.)から市販のベトロテックス(Vetrotex)(登録商標)991ガラス繊維
LCP1−ヒドロキノンとジカルボン酸の初期比率が1.05であり、無水酢酸を重合物に添加して脂肪族アセテートを現場形成した、ヒドロキノン/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸100/30/70/150モル部から作製された液晶ポリマー
LCP2−配合する前に、より高い分子量に重合したLCP1である液晶ポリマー
Lube−米国ノースカロライナ州シャーロットのクラリアントコープ(Clarient Corp., Charlotte, NC 28205, USA.)から市販のリコワックス(Licowax)(登録商標)V PE190ポリエチレンワックス
NDA−2,6−ナフタレンジカルボン酸
MV−せん断速度1000秒−1での溶融粘度(単位Pa.s)
Ten.Elong.−破断引張伸び(%)
Ten.Mod.−引張弾性率(GPa)
Ten.Str.−引張強さ(MPa)
TiO−米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington, DE 19898, USA)の本願特許出願人から市販のタイピュア(TiPure)(登録商標)R−100二酸化チタン
TPA−テレフタル酸
【0035】
(実施例1〜11および比較例A〜E)
組成物はすべて、2.0%のTiO(実施例11は4.0%のTiOを有した)、0.2%のLube、45.0%のGF、表1に示す量(全組成物に対する重量パーセント)のBPおよびTPA、ならびに残部のLCP1を含有した。組成物を、30mmのワーナーアンドフライダー(Werner and Pfleiderer)二軸押出機を用いて、スクリュー速度275rpmで混合した。バレル温度は、実施例1〜7および比較例AとBの場合、360、370、370、320、300、300、320、330℃(バレル2〜8およびダイ)、ならびに実施例8〜11および比較例C〜Eの場合、バレル2〜8については310℃(ダイ330℃)であった。組成物を、押出機から出ると同時に造粒した。ペレットを、1.5オンスのアルバーグ(Arberg)射出成形機を用いて、試験片に成形した。バレル温度は、実施例1〜7および比較例AとBの場合、330℃、実施例8〜11および比較例C〜Eの場合、320℃であった。金型温度はすべて70℃であった。引張特性を決定したように、組成物の溶融粘度を決定し、結果を表1に報告した。
【0036】
【表1】

【0037】
曲げ特性試験は、引張試験で得られたものと対応する傾向を示した。TPAもBPも存在していない対応する組成物より低い溶融粘度を有するにもかかわらず、TPAを含有する組成物は、BPが存在していようとなかろうと、TPAを含有していないまたはBPのみを含有する組成物より高い破断引張伸びを有した。これは、TPAを含有する組成物が、他の組成物より靭性が高いことを示唆している。さらに、TPAとBPをともに含有する組成物は、色が幾分より明るい(より白い)。
【0038】
(実施例12〜19および比較例F)
組成物はすべて、2.0%のTiO、0.2%のLube、45.0%のGF、表2に示す量(全組成物に対する重量パーセント)のNDA、BP、およびATH、ならびに残部のLCP2を含有した。組成物を、30mmのワーナーアンドフライダー(Werner and Pfleiderer)二軸押出機を用いて、スクリュー速度225rpmで混合した。バレル温度は、360、360、360、360、360、330、330、330、330℃(バレル2〜9およびダイ)であった。組成物を、押出機から出ると同時に造粒した。ペレットを、1.5オンスのアルバーグ(Arberg)射出成形機を用いて、試験片に成形した。バレル温度は330℃であり、金型温度はすべて70℃であった。引張特性を決定したように、組成物の溶融粘度(340℃で測定)を決定し、結果を表2に報告した。
【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)液晶ポリマーを、1つまたは複数の第1のジカルボン酸、1つまたは複数の第1のジオールの脂肪族ジエステル、および任意選択的に1つまたは複数のヒドロキシカルボン酸の脂肪族エステルを含む成分から形成するステップと、次いで
(b)前記液晶ポリマーと、前記液晶ポリマー1kg当たり約2〜約200ミリ当量の第2のジカルボン酸を、前記第2のジカルボン酸と前記液晶ポリマーとに反応させるのに十分な温度で、前記液晶ポリマーの引張伸びを少なくとも約10%増大させるのに十分な時間接触させるステップとを含み、
(a)において、存在する第1のジオールの脂肪族ジエステル全体と存在する第1のジカルボン酸全体のモル比が1.01以上であることを条件とすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記モル比が約1.03〜約1.5であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液晶ポリマー1kg当たり約5〜約50ミリ当量の第2のジカルボン酸が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビベンゾイック酸、および1,8−ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−S、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ならびにt−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸の1つまたは複数から誘導される繰返し単位を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヒドロキノンおよび4,4’−ビフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸、ならびに6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の1つまたは複数からから誘導される繰返し単位を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪族エステルが酢酸エステルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪族エステルを現場形成することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のジカルボン酸が芳香族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のジカルボン酸が、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、4,4’−ビベンゾイック酸、2−メチルテレフタル酸、およびアジピン酸の1つまたは複数であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のジカルボン酸がテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の1つまたは両方であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記引張伸びが少なくとも約20パーセント増大することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第2のタイプの二官能性化合物も存在することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のタイプの二官能性化合物が、前記第2のジカルボン酸の約20〜約100モルパーセントの量で存在することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のタイプの二官能性化合物がジオールまたは水であることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のタイプの二官能性化合物が水であることを特徴とする請求項12、13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記水が水和物の形態で存在することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水和物がアルミナ三水和物であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
存在する前記水の量が、第2のジカルボン酸のモル数に対して約20〜約1000モルパーセントであることを特徴とする請求項15、16、または17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法に従って作製されたポリマーで形成された造形部品。
【請求項20】
請求項1に記載の方法に従って作製されたポリマーで形成されたフィルム。

【公表番号】特表2007−504327(P2007−504327A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525491(P2006−525491)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/028919
【国際公開番号】WO2005/035619
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】