説明

液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法

【課題】溶融重合による液晶ポリマーの製造方法において、溶融重合装置を効率よく洗浄する方法を提供すること。
【解決手段】液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを含む洗浄液を使用し、260〜350℃の温度下にて洗浄することを特徴とする、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリマーは、耐熱性、剛性等の機械物性や耐薬品性、寸法精度等に優れており、成形品用途のみならず、繊維やフィルムといった各種用途にその使用が拡大しつつある。
【0003】
液晶ポリマーは、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ヒドロキシカルボン酸などから選択される単量体を、目的とする液晶ポリマーの物性に合わせて適宜組み合わせて用い、これらを重縮合して得られる。
【0004】
液晶ポリマーを製造するための重縮合方法としては、以下の工程(1)および(2)を含む脱酢酸重合による溶融重合法が広く知られている(特許文献1および2を参照)。
(1)単量体の混合物を無水酢酸等のアシル化剤と反応させ、単量体に含まれる水酸基およびアミノ基をアシル化する工程、
(2)工程(1)でアシル化された単量体の混合物を溶融状態で加熱し、酢酸等の低級脂肪酸を留去しながら重縮合を行う溶融重合工程。
【0005】
一般に液晶ポリマーは、脱酢酸による溶融重合をバッチ式重合装置で繰り返し行うことにより製造されている。しかし、バッチ式重合装置で繰り返し溶融重合を行う液晶ポリマーの製造方法においては、溶融重合装置内に残留するポリマーやオリゴマーが繰り返し加熱されることにより、非常に融点の高い異物となって残存することが知られている。
【0006】
このような異物を洗浄除去するために、液晶ポリマーの製造工程における溶融重合装置の洗浄方法について多くの検討がなされている(特許文献3〜6を参照)。しかしながら、これらの洗浄方法では、アミン類などの高価な薬剤を使用する必要があったり、洗浄工程が煩雑になるという問題や、あるいは洗浄効果が十分でないという問題があった。
【0007】
したがって、簡単かつ速やかな方法で、十分な洗浄効果が得られる液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法が求められている。
【特許文献1】特開平3−59067号公報
【特許文献2】特開平3−281656号公報
【特許文献3】特開平5−295392号公報
【特許文献4】特開2007−238889号公報
【特許文献5】特開2002−265577号公報
【特許文献6】特開2002−265578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、溶融重合による液晶ポリマーの製造方法において、溶融重合装置を効率よく洗浄する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法に関して鋭意検討した結果、洗浄液として洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを使用した場合、驚くことに洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを使用した場合よりも、速やかに溶融重合装置内の液晶ポリマーが溶解されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを含む洗浄液を使用し、260〜350℃の温度下にて洗浄することを特徴とする、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において「洗浄履歴がある」とは、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄液として少なくとも1回以上洗浄に使用されたことがあることを意味する。また、「洗浄履歴のない」とは、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄液として1回も使用されたことがないことを意味する。
【0012】
本発明において、洗浄される溶融重合装置は液晶ポリマーの溶融重合に使用される装置である。かかる溶融重合装置としては特に限定されず、縦型反応装置や横型反応装置のいずれも使用されるが、具体的には、装置内に撹拌翼、バッフル、原料投入口、留出管、減圧口、窒素導入口およびポリマーの吐出口等を有する溶融重合装置が好適に使用される。溶融重合装置の材質は、アシル化反応生成物等に対して耐腐食性を有することが好ましく、具体的には、SUS316、SUS316L、SUS317、2相ステンレス等のステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)B、ハステロイ(登録商標)C等のニッケル−モリブデン系合金、不浸透黒鉛、チタン、ジルコニウム、GLおよびタンタル等が挙げられる。
【0013】
本発明の液晶ポリマー溶融重合装置において、製造される液晶ポリマーは異方性溶融相を形成するポリエステルまたはポリエステルアミドであり、当業者にサーモトロピック液晶ポリエステルまたはサーモトロピック液晶ポリエステルアミドと呼ばれるものである。
【0014】
異方性溶融相の性質は直交偏向子を利用した通常の偏向検査法、すなわちホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で観察することにより確認できる。
【0015】
液晶ポリマーを構成する繰返し単位としては、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族アミノカルボニル繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位、芳香族オキシジカルボニル繰返し単位、および脂肪族ジオキシ繰返し単位などが挙げられる。
【0016】
これらの各繰返し単位から構成される液晶ポリマーは構成成分およびポリマー中の組成比、シークエンス分布によっては、異方性溶融相を形成するものとしないものが存在するが、本発明の方法が使用される方法において製造される液晶ポリマーは異方性溶融相を形成するものに限られる。
【0017】
芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、たとえばパラヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、オルトヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではパラヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が得られる液晶ポリマーの特性や融点を調整しやすいという点から好ましい。
【0018】
芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、たとえばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル等の芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が得られる液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、融点温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
【0019】
芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、たとえばハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエ−テル等の芳香族ジオール、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルが重合時の反応性、得られる液晶ポリマーの特性などの点から好ましい。
【0020】
芳香族アミノオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、たとえばp−アミノフェノール、m−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシアミン、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0021】
芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、たとえばp−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸等の芳香族アミノカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0022】
芳香族ジアミノ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、たとえばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン等の芳香族ジアミン、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0023】
芳香族オキシジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、たとえば3−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジカルボン酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、および5−ヒドロキシイソフタル酸等のヒドロキシ芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0024】
脂肪族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、たとえばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、ならびにそれらのアシル化物が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオキシ繰返し単位を含有するポリエステルを、前記の芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させることによっても、脂肪族ジオキシ繰返し単位を含む液晶ポリマーを得ることができる。
【0025】
以上、本発明において、溶融重合装置で製造される液晶ポリマーに含まれる繰返し単位とそれを与える単量体について説明したが、本発明において溶融重合法により製造される液晶ポリマーは、耐熱性や機械的性質に優れることから、芳香族オキシカルボニル繰返し単位である、4−オキシベンゾイル繰返し単位および/または6−オキシ−2−ナフトイル繰り返し単位を含むものであるのがより好ましい。
【0026】
以下、溶融重合法による液晶ポリマーの製造方法について説明する。
【0027】
本発明において、液晶ポリマーの製造方法は、以下の工程(1)および(2)を含む溶融アシドリシス法による溶融重合法である。
(1)単量体の混合物を無水酢酸等のアシル化剤と反応させ、単量体に含まれる水酸基およびアミノ基をアシル化する工程、
(2)工程(1)でアシル化された単量体の混合物を溶融状態で加熱し、酢酸等の低級脂肪酸を留去しながら重縮合を行う溶融重合工程。
【0028】
単量体のアシル化に用いるアシル化剤としては、無水酢酸等の酸無水物等が好適に用いられる。アシル化剤の使用量は、単量体に含まれる水酸基およびアミノ基の量に対して、1〜1.1倍モル、好ましくは1.01〜1.08倍モル、より好ましくは1.02〜1.05倍モルが良い。
【0029】
単量体をアシル化剤と反応させてアシル化を行う際の条件は、アシル化反応が良好に進行する限り特に制限されない。アシル化反応は、例えば、所望の組成の単量体の混合物を、アシル化剤とともに反応槽に仕込んだ後に、80〜150℃で0.5〜3時間反応させることにより行う。アシル化反応時の圧力条件は特に制限されないが、大気圧下で行うのが好ましい。
【0030】
このようにしてアシル化された単量体は、次いで、溶融重合工程に供される。
【0031】
溶融重合を行うに当たり、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(たとえばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;三酸化アンチモン;二酸化チタン;アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩(たとえば酢酸カリウム);無機酸塩類(たとえば硫酸カリウム);ルイス酸(例えば三フッ化硼素);ハロゲン化水素(例えば塩化水素)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
【0032】
触媒の使用割合は、通常モノマー重量に対して10〜1000ppm、好ましくは20〜200ppmである。
【0033】
触媒は溶融重合を開始する前の任意の時点で加えればよく、単量体のアセチル化工程の前に単量体とともに反応槽に加えるのが好ましい。
【0034】
溶融アシドリシス法による溶融重合は、公知の液晶ポリマーの製造方法に従って行えばよく、例えば、80〜150℃のアシル化された単量体の混合物を、副生する酢酸等の低級脂肪酸を反応槽から留去しながら、得られるポリマーの融点+10〜50℃まで、10〜50℃/分の速度で昇温して行えばよい。なお溶融重合の最終段階では、副生する酢酸の除去を容易にするため真空を適用してもよい。
【0035】
このようにして、製造された液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状または粉末状に加工される。
【0036】
本発明は、以上説明した溶融アシドリシス法による溶融重合法によって液晶ポリマーを製造した後に、洗浄液として、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを使用し、260〜350℃の温度下にて洗浄するものである。
【0037】
本発明に用いる洗浄液は、洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを含むものである。すなわち、本発明者らは、驚くべきことに、洗浄履歴のない洗浄液を使用するよりも、洗浄履歴のある洗浄液を使用した方が、溶融重合装置内に残留する液晶ポリマーを容易に溶解し、洗浄に要する時間が著しく短縮されることを見いだした。
【0038】
洗浄履歴のあるトリエチレングリコールとテトラエチレングリコールの混合比率は任意であるが、洗浄効果を考慮すると、テトラエチレングリコールを50重量%以上含むものが好ましく、70重量%以上含むものがより好ましく、90重量%以上含むものが特に好ましく、テトラエチレングリコールを単独で用いるものが最も好ましい。
【0039】
洗浄液中のトリエチレングリコール/テトラエチレングリコールの含有量は、ガスクロマトグラフィーなどの公知の手段により測定することができる。
【0040】
洗浄液の使用量は特に制限されないが、洗浄温度における比率として、溶融重合装置の空間部容積に対して、50〜95vol%用いるのが好ましく、80〜90vol%用いるのがより好ましい。
【0041】
溶融重合装置の洗浄温度は、高温であるほど洗浄効率がよいが、トリエチレングリコールの沸点が287℃であり、テトラエチレングリコールの沸点が314℃であることを考慮すると、260〜350℃が好ましく、280〜320℃がより好ましい。洗浄温度が洗浄液の沸点を超える場合には、溶融重合装置を密閉し加圧状態で洗浄を行えばよい。また、洗浄時間をより短縮するために、撹拌下で洗浄を行うのが好ましい。
【0042】
洗浄時間は特に制限されないが、典型的には、1〜10時間、より好ましくは2〜8時間で行うのが良い。ここで、洗浄時間とは260〜350℃の温度範囲で、任意に定めた所定の洗浄温度に到達してからの時間を意味する。
【0043】
洗浄時の温度は、260〜350℃の間で変動してもよいが、洗浄中の最高温度と最低温度の差が、30℃以下、好ましくは20℃以下であるのが良い。
【0044】
本発明の液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄で使用された洗浄液は、洗浄工程終了後に回収され、次回の洗浄時に備えて保存される。
【0045】
回収された洗浄液は、そのまま次回洗浄時の洗浄液の全部または一部として用いることができるが、大気圧下または減圧下に蒸留を行い、不揮発性の成分を蒸留残渣として除去した後に用いてもよく、また、大気圧下で洗浄温度以下の沸点を示す低沸点留分を除去した後に用いても良い。低沸点留分を除去することにより、高温での洗浄が行いやすいという利点がある。なお、低沸点留分の除去は洗浄工程中に行っても良い。
【0046】
回収された洗浄液は、次回洗浄時に単独で、あるいは洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールと混合して再び洗浄液として使用する。
【0047】
本発明の洗浄方法を実施するに際して、洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールがない場合、最初の洗浄は必然的に洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを用いることになるが、この場合、3〜10回程度の洗浄であれば、さらに洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを混合することなく、単独での繰り返し使用が可能となる。
【0048】
洗浄履歴が10回程度を超えると、洗浄液の洗浄能力が低下する傾向があるため、洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを混合して洗浄液とするのが良い。
【0049】
洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを混合して洗浄液とする場合、洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコール100重量部に対して、洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを1〜100重量部、好ましくは5〜70重量部、より好ましくは10〜60重量部混合するのが良い。
【0050】
本発明の洗浄方法を実施する間隔は、バッチ式重合装置で溶融重合を行うバッチ数が少ないほど洗浄効率が高いことから好ましいが、液晶ポリマーの生産性と洗浄効率のバランスを考慮すれば、15〜30バッチ繰り返し行った後、洗浄を実施するのがよい。
【0051】
本発明による洗浄を実施し、溶融重合装置から洗浄液を排出した後に装置内に洗浄液が残存する場合は、水、温水および/またはスチーム等で残存液を洗い流し、乾燥させた後、次回の溶融重合を行うのがよい。
【0052】
本発明の液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法を行うことにより、洗浄工程に要する時間を短縮することが可能となり製造コスト低減に寄与すると共に、液晶ポリマー製品への異物混入量の低減により製品の品質向上にも寄与するものである。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
本発明の液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法の効果を確認するために、以下の液晶ポリマー(A)及び(B)の試験片(12mm×12mm×3mm)を作成した。
(A)パラヒドロキシ安息香酸/6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸共重合体
(B)パラヒドロキシ安息香酸/6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸/ハイドロキノン/テレフタル酸共重合体
【0055】
これらの液晶ポリマーの試験片を、パドル4枚を有する攪拌翼、トの字型の留出管及び温度計を備えたガラス製筒状容器に入れ、表1に示す洗浄液280gを仕込み、70rpmの速度で攪拌しながら、255℃の温度下で30分間保持した。
【0056】
その後、90分かけて300℃まで昇温し、攪拌しながら同温度にて保持し、300℃に達してから試験片が完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0057】
なお、洗浄履歴のあるテトラエチレングリコールの列において、履歴1回とは洗浄履歴のないテトラエチレングリコールを用いて1回洗浄を実施して回収した洗浄液、履歴2回とは洗浄履歴のないテトラエチレングリコールを用いて1回目の洗浄を実施して回収した後、洗浄履歴のないテトラエチレングリコールを加えることなく、再度(2回目の)洗浄を実施して回収した洗浄液を意味する。
結果を表1に示す。
【表1】

【0058】
洗浄履歴のある洗浄液を用いた場合、洗浄履歴のない洗浄液を用いた場合に比べて、試験片の溶解時間が半分程度以下であり、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄液として使用した場合、洗浄時間が大幅に短縮されることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを含む洗浄液を使用し、260〜350℃の温度下にて洗浄することを特徴とする、液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法。
【請求項2】
さらに洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコールを含む洗浄液を使用する、請求項1に記載の液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄履歴のあるトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコール100重量部に対し、洗浄履歴のないトリエチレングリコールおよび/またはテトラエチレングリコール1〜100重量部を含む洗浄液を使用する、請求項2に記載の液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法。
【請求項4】
洗浄液がテトラエチレングリコールを含む、請求項1〜3の何れかに記載の液晶ポリマー溶融重合装置の洗浄方法。

【公開番号】特開2010−142685(P2010−142685A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319637(P2008−319637)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000189659)上野製薬株式会社 (76)
【Fターム(参考)】