説明

液晶ポリマー銅張積層板及び当該積層板に用いる銅箔

【課題】銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理を施した銅箔と液晶ポリマーを貼り合わせた銅張積層板において、銅箔回路エッチング後に液晶ポリマー樹脂表面上の粗化粒子残渣のない、銅張積層板を提供する。
【解決手段】銅箔と液晶ポリマーを貼り合わせた銅張積層板であって、当該銅箔は液晶ポリマーとの接着面に、銅の一次粒子層と、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層とが形成されており、該一次粒子層の平均粒子径が0.25−0.45μmであり、該二次粒子層の平均粒子径が0.05−0.25μmである銅張積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマー銅張積層板に関し、特に高周波プリント配線板用の液晶ポリマー銅張積層板に関する。また、本発明は当該液晶ポリマー銅張積層板に用いる銅箔に関する。
【0002】
銅及び銅合金箔(以下銅箔と称する)は、電気・電子関連産業の発展に大きく寄与しており、特に印刷回路材として不可欠の存在となっている。プリント配線板用銅箔は一般に、合成樹脂ボード、フィルム等の基材に接着剤を介して、又は接着剤を使用せずに高温高圧下で積層接着して銅張積層板を製造し、その後目的とする回路を形成するために、レジスト塗布及び露光工程を経て必要な回路を印刷した後、不要部を除去するエッチング処理が施される。
【0003】
最終的に、所要の素子が半田付けされて、エレクトロニクスデバイス用の種々の印刷回路板を形成する。プリント配線板用銅箔は、樹脂基材に接着される面(粗化面)と非接着面(光沢面)とで異なるが、それぞれ多くの要望に応えなければならない。
【0004】
例えば、銅箔に形成される粗化面に対する要求としては、主として、1)保存時における酸化変色のないこと、2)基材との引き剥し強さが高温加熱、湿式処理、半田付け、薬品処理等の後でも充分なこと、3)基材との積層、エッチング後に生じる、いわゆるエッチング残渣のないこと等が挙げられる。
【0005】
プリント配線板の印刷回路においてファインパターン化が進展すると、すなわち回路が細くなると、塩酸エッチング液により回路が剥離し易くなる傾向が強まり、その防止が必要である。回路が細くなると、半田付け等の処理時の高温により回路がやはり剥離し易くなり、その防止もまた必要である。ファインパターン化が進む現在、例えばCuCl2エッチング液で150μmピッチ回路巾以下の印刷回路をエッチングできることはもはや必須の要件であり、レジスト等の多様化にともないアルカリエッチングも必要要件となりつつある。
【0006】
こうした要望に答えて、本出願人は、銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルトめっき層或いはコバルト−ニッケル合金めっき層を形成することにより、印刷回路銅箔として上述した多くの一般的特性を具備することは勿論のこと、アクリル系接着剤を用いたときの耐熱剥離強度を低下せず、耐酸化性に優れる銅箔処理方法を開発することに成功した(特許文献1参照)。
【0007】
好ましくは、前記コバルトめっき層或いはコバルト−ニッケル合金めっき層を形成した後に、クロム酸化物の単独皮膜処理或いはクロム酸化物と亜鉛及び(又は)亜鉛酸化物との混合皮膜処理を代表とする防錆処理が施される。
【0008】
さらに、電子機器の発展が進む中で銅箔回路基板の耐熱剥離性向上の要求が厳しくなったため、本出願人は、銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルト−ニッケル合金めっき層を形成し、さらに亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成する、耐熱性に優れた印刷用銅箔処理方法を開発することに成功した(特許文献2参照)。これは非常に有効な発明であり、今日の銅箔回路材料の主要製品の一つとなっている。
【0009】
その後、半導体デバイスの小型化、高集積化が発達し、電子機器信号の高周波化が進展した。これまで絶縁樹脂基板として使用されてきたポリイミドフィルムに代わって、高周波基板として誘電特性に優れた液晶ポリマーが使用されるようになった。例えば特許文献3には、液晶ポリマーフィルムと銅箔とをラミネートした銅張積層板を製造し、これにファインパターンを形成することが可能な高周波プリント配線板用銅箔が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平6−54831号公報
【特許文献2】特許第2849059号公報
【特許文献3】特開2006−210689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが上記液晶ポリマーを使用したプリント配線板において、特許文献2に参照される銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルト−ニッケル合金めっき層を形成し、さらに亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成する印刷回路用銅箔を用いた場合、銅張積層板のファインパターン回路において、回路エッチング後の液晶ポリマー樹脂表面に粗化粒子残渣が発生するという問題が発生したため、これを解決することが望ましい。
【0012】
従って、本発明の課題は、銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理を施した銅箔と液晶ポリマーを貼り合わせた銅張積層板において、優れたピール強度を有しながらも銅箔回路エッチング後に液晶ポリマー樹脂表面上の粗化粒子残渣のない、銅張積層板を提供することである。また、本発明の課題はそのような銅張積層板の製造に適した銅箔を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の発明を提供する。
(1)銅箔と液晶ポリマーを貼り合わせた銅張積層板であって、当該銅箔は液晶ポリマーとの接着面に、銅の一次粒子層と、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層とが形成されており、該一次粒子層の平均粒子径が0.25−0.45μmであり、該二次粒子層の平均粒子径が0.05−0.25μmである銅張積層板。
(2)前記一次粒子層及び二次粒子層が、電気めっき層である(1)に記載の銅張積層板。
(3)二次粒子が、前記一次粒子の上に成長した1又は複数個の樹枝状の粒子である(1)又は(2)に記載の銅張積層板。
(4)液晶ポリマーとの接着強度が0.60kg/cm以上である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の銅張積層板。
(5)銅箔の液晶ポリマーとの貼り合わせ面の粗さRzが1.5μm以下である(1)〜(4)のいずれか一項に記載の銅張積層板。
(6)銅箔の液晶ポリマーとの貼り合わせ面の粗さRzが1.0μm以下である(1)〜(5)のいずれか一項に記載の銅張積層板。
(7)高周波プリント配線板用である(1)〜(6)のいずれか一項に記載の銅張積層板。
(8)液晶ポリマーと貼り合わせるための銅箔であって、当該銅箔は液晶ポリマーとの貼り合わせ面に、銅の一次粒子層と、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層とが形成されており、該一次粒子層の平均粒子径が0.25−0.45μmであり、該二次粒子層の平均粒子径が0.05−0.25μmである銅箔。
(9)前記一次粒子層及び二次粒子層が、電気めっき層である(8)に記載の銅箔。
(10)液晶ポリマーとの接着強度が0.60kg/cm以上である(8)又は(9)に記載の銅箔。
(11)液晶ポリマーとの貼り合わせ面の粗さRzが1.5μm以下である(8)〜(10)のいずれか一項に記載の銅箔。
(12)液晶ポリマーとの貼り合わせ面の粗さRzが1.0μm以下である(8)〜(10)のいずれか一項に記載の銅箔。
【0014】
また、前記銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる二次粒子層の上に、コバルト−ニッケル合金めっき層を、また該コバルト−ニッケル合金めっき層の上に、さらに亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成した印刷回路用銅箔を提供することができる。
【0015】
前記コバルト−ニッケル合金めっき層は、コバルトの付着量を200〜3000μg/dm2とし、かつコバルトの比率が60〜66質量%とすることができる。前記亜鉛−ニッケル合金めっき層においては、その総量を150〜500μg/dm2の範囲とし、ニッケル量が50μg/dm2以上の範囲、かつニッケル比率が0.16〜0.40の範囲にある亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成することができる。
【0016】
また、前記亜鉛−ニッケル合金めっき層の上に、防錆処理層を形成することができる。この防錆処理については、例えばクロム酸化物の単独皮膜処理若しくはクロム酸化物と亜鉛及び(又は)亜鉛酸化物との混合皮膜処理層を形成することができる。さらに、前記混合皮膜処理層上には、シランカップリング層を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る銅張積層板は、液晶ポリマー(LCP)との優れたピール強度を有し、かつ回路エッチング後の液晶ポリマー表面に粗化粒子残渣が発生しない特性を有することができる。
【0018】
また、異常成長した粒子が少なくなり、粒子径が揃い、かつ全面を覆うことになるので、エッチング性が良好となり、精度の高い回路形成が可能となる。
【0019】
電子機器の発展が進む中で、半導体デバイスの小型化、高集積化が更に進み、これらの印刷回路の製造工程で行われる処理が一段と厳しい要求がなされているが、本発明をこれらの要求にこたえる技術的効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の銅箔上に、銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理を行った場合のエッチング残渣が生じる原因を示す概念説明図である。
【図2】本発明の、銅箔上に予め一次粒子層を形成し、この一次粒子層の上に銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる二次粒子層を形成したエッチング残渣の抑制された銅箔処理層の概念説明図である。
【図3】従来の銅箔上に、銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理を行った場合の表面の顕微鏡写真である。
【図4】銅箔上に、銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理を行う場合に、電流密度を下げ、処理速度を下げて製造した場合の表面の顕微鏡写真である。
【図5】本発明の、銅箔上に予め一次粒子層を形成し、この一次粒子層の上に銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる二次粒子層を形成したエッチング残渣の抑制された銅箔処理面の層の顕微鏡写真である。
【図6】本発明の、銅箔上に予め一次粒子層を形成し、この一次粒子層の上に銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる二次粒子層を形成したエッチング残渣の抑制された銅箔処理面の層で、さらに粗さを改善した場合の表面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
銅張積層板を構成する絶縁基板として使用する液晶ポリマーとしては、特に制限は無いが、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸等を単独重合又は共重合した全芳香族ポリエステルが挙げられる。液晶ポリマーは一般にはフィルム状に提供される。液晶ポリマーと銅箔の貼り合わせは一般に熱圧着により実施することができる。
【0022】
本発明において使用する銅箔は、電解銅箔或いは圧延銅箔いずれでも良い。通常、銅箔の、樹脂基材と接着する面即ち粗化面には積層後の銅箔の引き剥し強さを向上させることを目的として、脱脂後の銅箔の表面に、「ふしこぶ」状の電着を行なう粗化処理が施される。電解銅箔は製造時点で凹凸を有しているが、粗化処理により電解銅箔の凸部を増強して凹凸を一層大きくする。
【0023】
圧延銅箔と電解銅箔とでは処理の内容を幾分異にすることもある。本発明においては、こうした前処理及び仕上げ処理をも含め、銅箔粗化と関連する公知の処理を必要に応じて含め、「粗化処理」と云っている。
【0024】
この粗化処理を、銅−コバルト−ニッケル合金めっきにより行なおうとするのである(以下の説明においては、銅−コバルト−ニッケル合金めっきの粗化処理を、前工程との差異を明確にするために、「二次粒子層」と呼称する。)が、上記の通り、単純に銅箔の上に銅−コバルト−ニッケル合金めっき層を形成しただけでは、液晶ポリマー表面上のエッチング残渣等の問題が発生する。
【0025】
銅箔の上に銅−コバルト−ニッケル合金めっき層を形成した銅箔の表面の顕微鏡写真を図3に示す。この図3に示すように、樹枝状に発達した微細な粒子を見ることができる。一般に、この図3に示す樹枝状に発達した微細な粒子は高電流密度で作製される。
【0026】
このような高電流密度で処理された場合には、初期電着における粒子の核生成が抑制されるため、粒子先端に新たな粒子の核が形成されるため、次第に樹枝状に、細く長く粒子が成長することになる。図3に示す樹枝状粗化粒子を形成した場合、その粒子形状が鋭利なくさび形であるが故に、粗化粒子が液晶ポリマー基板内部に打ち込まれることで、優れた基板密着性を発揮できるようになる。しかしながら一方では、この基板内部まで入り込んだ微細粗化粒子が回路エッチング処理後に樹脂表面に残渣として残ってしまうという問題を生じる。
【0027】
したがって、これを防止するために、電流密度を下げて電気めっきすると、図4に示すように、鋭い立ち上がりがなくなり、粒子が増加し、丸みを帯びた形状の粒子が成長する。しかし、この図4に示すような状況下においては、粉落ちは改善されるが液晶ポリマーとのピール強度が不十分となる。
【0028】
図3に示すような銅−コバルト−ニッケル合金めっき層が形成された場合の、エッチング残渣が生じる原因を、図1の概念説明図に示す。上記の通り銅箔上に樹枝状に微細な粒子が生ずるが、この樹枝状の粒子は、外力により樹枝の一部が折れ易く、又根元から脱落するため、エッチング後に残留しやすい。また、この微細な樹枝状の粒子は、処理中の「こすれ」による剥離、剥離粉によるロールの汚れが生ずる原因にもなる。
【0029】
本発明においては、銅箔の表面に、事前に銅の一次粒子層を形成した後、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層を形成するものである。この概念図を図2に示す。銅箔上に、この一次粒子及び二次粒子を形成した表面の顕微鏡写真を図5−図6に示す(詳細は後述する)。
【0030】
これによって、処理中の「こすれ」による剥離、剥離粉によるロールの汚れ、剥離粉によるエッチング残渣が無くなる。さらに液晶ポリマーとの優れたピール強度を有し、かつ回路エッチング後の液晶ポリマー表面に粗化粒子残渣が発生しない特性を有することのできる高周波プリント配線板用銅箔を得ることができる。ここで、高周波とは概ね1GHz以上を指し、典型的には5〜30GHzである。
【0031】
前記一次粒子層の平均粒子径を0.25−0.45μm、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層の平均粒子径を0.05−0.25μmとするのが、下記に示す実施例から明らかなように、エッチング残渣を防止する最適な条件である。
【0032】
上記一次粒子層及び二次粒子層は、電気めっき層により形成することができる。この二次粒子の特徴は、前記一次粒子の上に成長した1又は複数個の樹枝状の粒子である。
【0033】
上記の通り、二次粒子層の平均粒子径を0.05−0.25μmと小さくしているが、この粒子径は粒子の高さと言い換えることもできる。すなわち、二次粒子の高さを抑制し、エッチング残渣の発生の原因となる粒子の剥離(粉落ち)を抑制したのが、本発明の特徴の一つとも言える。一方で、本発明では一次粒子層と二次粒子層の二重構造にしたことで、優れたピール強度も確保できるようになる。
【0034】
このようにして形成された一次粒子層及び二次粒子層を有する銅箔は、液晶ポリマーとの接着強度が0.60kg/cm以上を達成することができる。
【0035】
また、一次粒子層及び二次粒子層を形成した表面の粗さを見ると、Rzを1.5μm以下さらには、Rzを1.0μm以下とすることができる。表面粗さを低くすることは、エッチング残渣を抑制するのにより有効である。本発明に係る銅箔を用いることで、上記の性状と特性を備えた高周波プリント配線板用銅張積層板を提供することができる。
【0036】
(銅の一次粒子のめっき条件)
銅の一次粒子のめっき条件の一例を挙げると、下記の通りである。なお、このめっき条件はあくまで好適な例を示すものであり、銅の一次粒子は銅箔上に形成される平均粒子径が主にエッチング残渣の原因となる粉落ち防止の役割を担うものである。したがって、平均粒子径が本発明の範囲に入るものであれば、下記に表示する以外のめっき条件であることは何ら妨げるものではない。本発明はこれらを包含するものである。
液組成 :銅10〜20g/L、硫酸50〜100g/L
液温 :25〜50℃
電流密度 :1〜58A/dm2
クーロン量:4〜81As/dm2
【0037】
(二次粒子のめっき条件)
なお、上記と同様に、このめっき条件はあくまで好適な例を示すものであり、二次粒子は一次粒子の上に形成されるものであり、平均粒子径が粉落ち防止の役割を担うものである。したがって、平均粒子径が本発明の範囲に入るものであれば、下記に表示する以外のめっき条件であることは何ら妨げるものではない。本発明はこれらを包含するものである。
液組成 :銅10〜20g/L、ニッケル5〜15g/L、コバルト5〜15g/L
pH :2〜3
液温 :30〜50℃
電流密度 :24〜50A/dm2
クーロン量:34〜48As/dm2
【0038】
(耐熱層1を形成するめっき条件)
本発明では、上記二次粒子層の上に、さらに耐熱層を形成することができる。このめっき条件を下記に示す。
液組成 :ニッケル5〜20g/L、コバルト1〜8g/L
pH :2〜3
液温 :40〜60℃
電流密度 :5〜20A/dm2
クーロン量:10〜20As/dm2
【0039】
(耐熱層2を形成するめっき条件)
本発明では、上記二次粒子層の上に、さらに次の耐熱層を形成することができる。このめっき条件を下記に示す。
液組成 :ニッケル2〜30g/L、亜鉛2〜30g/L
pH :3〜4
液温 :30〜50℃
電流密度 :1〜2A/dm2
クーロン量:1〜2As/dm2
【0040】
(防錆層を形成するめっき条件)
本発明では、さらに次の防錆層を形成することができる。このめっき条件を下記に示す。下記においては、浸漬クロメート処理の条件を示したが、電解クロメート処理でも良い。
液組成 :重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH :3〜4
液温 :50〜60℃
電流密度 :0〜2A/dm2(浸漬クロメート処理のため)
クーロン量:0〜2As/dm2(浸漬クロメート処理のため)
【0041】
(耐候性層の種類)
防錆層上の少なくとも粗化面にシランカップリング剤を塗布するシランカップリング処理を施すことができる。
このシランカップリング剤としては、オレフィン系シラン、エポキシ系シラン、アクリル系シラン、アミノ系シラン、メルカプト系シランを挙げることができるが、これらを適宜選択して使用することができる。
塗布方法はシランカップリング剤溶液のスプレーふきつけ、コーター塗布、浸漬、流しかけ等いずれでも良い。これらについては、既に公知の技術なので(例えば、特公昭60−15654号参照)、詳細は省略する。
【0042】
上記二次粒子としての銅−コバルト−ニッケル合金めっきは、電解めっきにより、付着量が10〜30mg/dm2銅−100〜3000μg/dm2コバルト−50〜500μg/dm2ニッケルの3元系合金層を形成することができる。
【0043】
Cu付着量が10mg/dm2未満では、十分な大きさの粗化粒子形成が困難となり、基板密着性が悪くなりやすい。Cu付着量が30mg/dm2を超えると、基板特性における耐熱性や耐薬品性が悪くなりやすい。
【0044】
Co付着量が100μg/dm2未満では、エッチング性が悪くなる。Co付着量が3000μg/dm2を超えると、磁性の影響を考慮せねばならない場合には好ましくなく、耐酸性及び耐薬品性の悪化が考慮され得る。
【0045】
Ni付着量が50μg/dm2未満であると、耐熱性が悪くなる。他方、Ni付着量が500μg/dm2を超えると、エッチング性が低下する。すなわち、エッチング残ができ、またエッチングできないというレベルではないが、ファインパターン化が難しくなる。好ましいCo付着量は500〜2000μg/dm2であり、そして好ましいニッケル付着量は50〜300μg/dm2である。
【0046】
以上から、銅−コバルト−ニッケル合金めっきの付着量は、10〜30mg/dm2銅−100〜3000μg/dm2コバルト−50〜500μg/dm2ニッケルであることが望ましいと言える。この3元系合金層の各付着量はあくまで、望ましい条件であり、この量を超える範囲を否定するものではない。
【0047】
一般に、回路を形成する場合には、下記の実施例の中で説明するようなアルカリ性エッチング液及び塩化銅系エッチング液を用いて行われる。このエッチング液及びエッチング条件は、汎用性のあるものであるが、この条件に限定されることはなく、任意に選択できることは理解されるべきことである。
【0048】
本発明は上記の通り、二次粒子を形成した後(粗化処理後)、粗化面上にコバルト−ニッケル合金めっき層を形成することができる。
【0049】
このコバルト−ニッケル合金めっき層は、コバルトの付着量が200〜3000μg/dm2であり、かつコバルトの比率が60〜66質量%とするのが望ましい。この処理は広い意味で一種の防錆処理とみることができる。
【0050】
このコバルト−ニッケル合金めっき層は、銅箔と基板の接着強度を実質的に低下させない程度に行なう必要がある。コバルト付着量が200μg/dm2未満では、耐熱剥離強度が低下し、耐酸化性及び耐薬品性が悪くなり、また処理表面が赤っぽくなってしまうので好ましくない。
【0051】
また、コバルト付着量が3000μg/dm2を超えると、磁性の影響を考慮せねばならない場合には好ましくなく、また、耐酸性及び耐薬品性の悪化が考慮される。好ましいコバルト付着量は400〜2500μg/dm2である。
【0052】
一方、ニッケル付着量が少ない場合には、耐熱剥離強度が低下し、耐酸化性及び耐薬品性が低下する。また、ニッケル付着量が多すぎる場合には、アルカリエッチング性が悪くなる。
【0053】
本発明では、コバルト−ニッケル合金めっき上に更に、亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成することができる。亜鉛−ニッケル合金めっき層の総量を150〜500μg/dm2とし、かつニッケルの比率を16〜40質量%とする。これは、耐熱防錆層という役割を有するものである。この条件も、あくまで好ましい条件であって、他の公知の亜鉛−ニッケル合金めっきを使用することができる。この亜鉛−ニッケル合金めっきは、本発明においては、好ましい付加的条件であることが理解されるであろう。
【0054】
印刷回路の製造工程で行われる処理が一段と高温となり、また製品となった後の機器使用中の熱発生がある。例えば、樹脂に銅箔を熱圧着で接合する、いわゆる二層材では、接合の際に300°C以上の熱を受ける。このような状況の中でも、銅箔と樹脂基材との間での接合力の低下を防止することが必要であり、この亜鉛−ニッケル合金めっきは有効である。
【0055】
なお、亜鉛−ニッケル合金めっき層の総量が150μg/dm2未満では、耐熱防錆力が低下して耐熱防錆層としての役割を担うことが難しくなり、同総量が500μg/dm2を超えると、耐塩酸性が悪くなる傾向がある。
【0056】
上記の通り、本発明は、二次粒子層としての銅−コバルト−ニッケル合金めっき層上に、必要に応じてコバルト−ニッケル合金めっき層、さらには亜鉛−ニッケル合金めっき層を順次形成することができる。これら層における合計量のコバルト付着量及びニッケル付着量を調節することもできる。コバルトの合計付着量が300〜4000μg/dm2、ニッケルの合計付着量が150〜1500μg/dm2とすることが望ましい。
【0057】
コバルトの合計付着量が300μg/dm2未満では、耐熱性及び耐薬品性が低下し、コバルトの合計付着量が4000μg/dm2 を超えると、エッチングシミが生じることがある。また、ニッケルの合計付着量が150μg/dm2未満では、耐熱性及び耐薬品性が低下する。ニッケルの合計付着量が1500μg/dm2を超えると、エッチング残が生じる。
【0058】
好ましくは、コバルトの合計付着量は1500〜3500μg/dm2であり、そしてニッケルの合計付着量は500〜1000μg/dm2である。上記の条件を満たせば、特にこの段落に記載する条件に制限される必要はない。
【0059】
この後、必要に応じ、防錆処理が実施される。本発明において好ましい防錆処理は、クロム酸化物単独の皮膜処理或いはクロム酸化物と亜鉛/亜鉛酸化物との混合物皮膜処理である。クロム酸化物と亜鉛/亜鉛酸化物との混合物皮膜処理とは、亜鉛塩または酸化亜鉛とクロム酸塩とを含むめっき浴を用いて電気めっきにより亜鉛または酸化亜鉛とクロム酸化物とより成る亜鉛−クロム基混合物の防錆層を被覆する処理である。
【0060】
めっき浴としては、代表的には、K2Cr27、Na2Cr27等の重クロム酸塩やCrO3等の少なくとも一種と、水溶性亜鉛塩、例えばZnO 、ZnSO4・7H2Oなど少なくとも一種と、水酸化アルカリとの混合水溶液が用いられる。代表的なめっき浴組成と電解条件例は次の通りである。
【0061】
こうして得られた銅箔は、液晶ポリマーとの優れたピール強度を有し、回路エッチング処理後の液晶ポリマー表面の耐酸化性及び耐塩酸性を有する。また、CuCl2エッチング液で150μmピッチ回路巾以下の印刷回路をエッチングでき、しかもアルカリエッチングも可能とする。
【0062】
アルカリエッチング液としては、例えば、NH4OH:6モル/リットル、NH4Cl:5モル/リットル、CuCl2:2モル/リットル(温度50°C)等の液が知られている。
【0063】
最後に、必要に応じ、銅箔と液晶ポリマーとの接着力の改善を主目的として、防錆層上の少なくとも粗化面にシランカップリング剤を塗布するシラン処理が施される。
このシラン処理に使用するシランカップリング剤としては、オレフィン系シラン、エポキシ系シラン、アクリル系シラン、アミノ系シラン、メルカプト系シランを挙げることができるが、これらを適宜選択して使用することができる。
【0064】
塗布方法は、シランカップリング剤溶液のスプレーによる吹付け、コーターでの塗布、浸漬、流しかけ等いずれでもよい。例えば、特公昭60−15654号は、銅箔の粗面側にクロメート処理を施した後シランカップリング剤処理を行なうことによって銅箔と樹脂基板との接着力を改善することを記載している。詳細はこれを参照されたい。この後、必要なら、銅箔の延性を改善する目的で焼鈍処理を施すこともある。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。すなわち、本発明に含まれる他の態様または変形を包含するものである。
【0066】
(実施例1−実施例9)
厚み12μmの圧延銅箔に、下記に示す条件範囲で、一次粒子層(Cu)、二次粒子層(銅−コバルト−ニッケル合金めっき)形成した。
使用した浴組成及びめっき条件は、次の通りである。
[浴組成及びめっき条件]
【0067】
(A)一次粒子層の形成(Cuめっき)
液組成 :銅15g/L、硫酸75g/L
液温 :35°C
電流密度 :48〜60A/dm2 および1〜10A/dm2
クーロン量:70〜90As/dm2 および5〜20As/dm2
(B)二次粒子層の形成(Cu−Co−Ni合金めっき)
液組成 :銅15g/L、ニッケル8g/L、コバルト8g/L
pH :2
液温 :40°C
電流密度 :10〜33A/dm2
クーロン量:30〜45As/dm2
【0068】
(比較例1−比較例9)
比較例において、使用した浴組成は実施例と同じである。めっき条件は、次の通りである。
[比較例1−比較例4におけるめっき条件]
(A)一次粒子層の形成(銅めっき)
電流密度 :30〜47A/dm2 および1〜5A/dm2
クーロン量:40〜69As/dm2 および1〜5As/dm2
(B)二次粒子層の形成(Cu−Co−Ni合金めっき条件)
電流密度 :10〜34A/dm2
クーロン量:30〜48As/dm2
[比較例5−比較例7におけるめっき条件]
(A)一次粒子層の形成(銅めっき)
電流密度 :48〜60A/dm2 および1〜10A/dm2
クーロン量:70〜90As/dm2 および5〜20As/dm2
(B)二次粒子層の形成(Cu−Co−Ni合金めっき条件)
電流密度 :34〜50A/dm2
クーロン量:46〜55As/dm2
【0069】
上記実施例8及び9については、粗化処理を施した銅箔の粗化処理面上に、以下の手順で更に耐熱層1、耐熱層2、防錆層、及び耐候性層を形成した。
【0070】
(1)耐熱層1
粗化処理を施した銅箔の粗化処理面上に、耐熱層1を形成した。耐熱層1の形成条件を下記に示す。
液組成 :ニッケル5〜20g/L、コバルト1〜8g/L
pH :2〜3
液温 :40〜60℃
電流密度 :5〜20A/dm2
クーロン量:10〜20As/dm2
【0071】
(2)耐熱層2
上記耐熱層1を施した銅箔上に、耐熱層2を形成した。耐熱層2の形成条件を下記に示す。
液組成 :ニッケル2〜30g/L、亜鉛2〜30g/L
pH :3〜4
液温 :30〜50℃
電流密度 :1〜2A/dm2
クーロン量:1〜2As/dm2
(3)防錆層
上記耐熱層1および2を施した銅箔上に、さらに防錆層を形成した。防錆層の形成条件を下記に示す。
液組成 :重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH :3〜4
液温 :50〜60℃
電流密度 :0〜2A/dm2(浸漬クロメート処理のため)
クーロン量:0〜2As/dm2(浸漬クロメート処理のため)
(4)耐候性層
上記耐熱層1、2および防錆層を施した銅箔上に、さらに耐候性層を形成した。形成条件を下記に示す。
アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらのシランカップリング剤を単独もしくは2種以上の組み合わせで、塗布・乾燥を行い、耐候性層を形成した。
【0072】
上記実施例により形成した銅箔上の一次粒子層(Cuめっき)及び二次粒子層(Cu−Co−Ni合金めっき)を形成した場合の、一次粒子の平均粒径、二次粒子の平均粒径、ピール強度、粗さ(Rz)、粗化粒子の残渣の有無の結果を表1に示す。ここでピール強度評価用サンプルは実施例、比較例の厚み12μm銅箔と厚み25μmの株式会社クラレ製液晶ポリマーフィルム(VECSTAR CT-25N)を熱プレスで張り合わせて銅張積層板を作製した後、回路エッチングを行い、ピール評価を行った。ピール強度の評価は、上記回路エッチング処理により3mm幅の直線回路を形成し、液晶ポリマーフィルムに対して90°方向に向けて引き剥がす方法により行った。一次粒子の平均径は銅箔に粗化処理を行ったサンプルの粗化処理面の表面を電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S4700)を用いて30000倍の倍率で観察を行い、切断法により平均粒子径を測定した。具体的には顕微鏡画像上で、測定線を粒界が鮮明で測定しやすい箇所に縦横に4本ずつ引き、測定線と交わる粒子の数から平均粒子径を測定した。二次粒子の平均径は銅箔に粗化処理を行ったサンプルの粗化処理面の表面を電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S4700)を用いて30000倍の倍率で観察を行い、切断法により平均粒子径を測定した。具体的には顕微鏡画像上で、測定線を粒界が鮮明で測定しやすい箇所に縦横に4本ずつ引き、測定線と交わる粒子の数から平均粒子径を測定した。粗さ(Rz)は(株)小坂研究所製の粗さ測定器を用いて、粗化処理を行った銅箔表面について接触式粗さを測定した。
また上記の銅張積層板を一般的な回路エッチング処理用の塩化銅溶液にて銅箔をエッチング除去した後、液晶ポリマーフィルム表面を光学顕微鏡にて観察することで粗化粒子の残渣の有無による変色具合を観察した。
また、比較例として、同様の結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、本発明の実施例の結果は、次の通りである。
実施例1は、一次粒子を形成する電流密度を51A/dm2と2A/dm2とし、クーロン量を72As/dm2と8As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を24A/dm2とし、クーロン量を34As/dm2とした場合である。
【0075】
なお、一次粒子を形成する電流密度とクーロン量が2段階になっているが、通常一次粒子を形成する場合には、2段階の電気めっきが必要となる。すなわち、第1段階の核粒子形成のめっき条件と第2段階の核粒子の成長の電気めっきである。最初のめっき条件は、第1段階の核形成粒子形成のための電気めっき条件であり、次のめっき条件は、第2段階の核粒子の成長のための電気めっき条件である。以下の実施例及び比較例についても同様なので、説明は省略する。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.25μmで、二次粒子の平均粒子径が0.05μmであり、常態ピール強度が0.62kg/cmと高く、さらに表面粗さRzが0.98μmであり、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
【0076】
実施例2は、一次粒子を形成する電流密度を51A/dm2と2A/dm2とし、クーロン量を72As/dm2と8As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を28A/dm2とし、クーロン量を39As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.25μmで、二次粒子の平均粒子径が0.15μmであり、常態ピール強度が0.63kg/cmと高く、表面粗さRzが0.98μmで、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
【0077】
実施例3は、一次粒子を形成する電流密度を51A/dm2と2A/dm2とし、クーロン量を72As/dm2と8As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を31A/dm2とし、クーロン量を44As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.25μmで、二次粒子の平均粒子径が0.25μmであり、常態ピール強度が0.64kg/cmと高く、表面粗さRzが1.02μmで、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
【0078】
実施例4は、一次粒子を形成する電流密度を55A/dm2と3A/dm2とし、クーロン量を77As/dm2と12As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を24A/dm2とし、クーロン量を34As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.35μmで、二次粒子の平均粒子径が0.05μmであり、常態ピール強度が0.65kg/cmと高く、表面粗さRzが1.20μmで、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
【0079】
実施例5は、一次粒子を形成する電流密度を55A/dm2と3A/dm2とし、クーロン量を77As/dm2と12As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を28A/dm2とし、クーロン量を39As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.35μmで、二次粒子の平均粒子径が0.15μmであり、常態ピール強度が0.66kg/cmと高く、表面粗さRzが1.20μmで、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
【0080】
実施例6は、一次粒子を形成する電流密度を55A/dm2と3A/dm2とし、クーロン量を77As/dm2と12As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を31A/dm2とし、クーロン量を44As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.35μmで、二次粒子の平均粒子径が0.25μmであり、常態ピール強度が0.67kg/cmと高く、表面粗さRzが1.51μmで、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
【0081】
実施例7は、一次粒子を形成する電流密度を58A/dm2と4A/dm2とし、クーロン量を81As/dm2と16As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を24A/dm2とし、クーロン量を34As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.45μmで、二次粒子の平均粒子径が0.05μmであり、常態ピール強度が0.66kg/cmと高く、表面粗さRzが1.21μmで、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
【0082】
実施例8は、一次粒子を形成する電流密度を58A/dm2と4A/dm2とし、クーロン量を81As/dm2と16As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を28A/dm2とし、クーロン量を39As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.45μmで、二次粒子の平均粒子径が0.15μmであり、常態ピール強度が0.67kg/cmと高く、表面粗さRzが1.54μmで、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
また、実施例8は耐熱層、防錆層及び耐候性層を形成しているが、実施例1〜7と同程度の結果が得られた。
【0083】
実施例9は、一次粒子を形成する電流密度を58A/dm2と4A/dm2とし、クーロン量を81As/dm2と16As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を31A/dm2とし、クーロン量を44As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.45μmで、二次粒子の平均粒子径が0.25μmであり、常態ピール強度が0.67kg/cmと高く、表面粗さRzが1.60μmで、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がないという特徴を備えていた。
また、実施例9は耐熱層、防錆層及び耐候性層を形成しているが、実施例1〜7と同程度の結果が得られた。
【0084】
これに対して、比較例は、次の結果となった。
比較例1は、一次粒子を形成する電流密度を47A/dm2と1A/dm2とし、クーロン量を66As/dm2と4As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を24A/dm2とし、クーロン量を34As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.15μmで、二次粒子の平均粒子径が0.05μmであった。回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がなかったが、常態ピール強度が0.49kg/cmと低く、さらに表面粗さRzが0.87μmと低かった。
【0085】
比較例2は、一次粒子を形成する電流密度を47A/dm2と1A/dm2とし、クーロン量を66As/dm2と4As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を28A/dm2とし、クーロン量を39As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.15μmで、二次粒子の平均粒子径が0.15μmであり、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色がなかったが、常態ピール強度が0.49kg/cmと低く、さらに表面粗さRzが0.88μmと低かった。
【0086】
比較例3は、一次粒子を形成する電流密度を47A/dm2と1A/dm2とし、クーロン量を66As/dm2と4As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を31A/dm2とし、クーロン量を44As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.15μmで、二次粒子の平均粒子径が0.25μmであった。常態ピール強度が0.51kg/cmと低く、さらに表面粗さRzが0.90μmであった。回路エッチング後に粗化粒子の残渣による黒色変色が観察され、不良であった。
【0087】
比較例4は、一次粒子を形成する電流密度を47A/dm2と1A/dm2とし、クーロン量を66As/dm2と4As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を34A/dm2とし、クーロン量を48As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.15μmで、二次粒子の平均粒子径が0.35μmと大きくなった。常態ピール強度が0.52kg/cmと低く、さらに表面粗さRzが0.91μmであった。回路エッチング後に粗化粒子の残渣による黒色変色が観察され、不良であった。
【0088】
比較例5は、一次粒子を形成する電流密度を51A/dm2と2A/dm2とし、クーロン量を72As/dm2と8As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を34A/dm2とし、クーロン量を48As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.25μmで、二次粒子の平均粒子径が0.35μmと大きくなった。常態ピール強度が0.64kg/cmと実施例レベルであり、さらに表面粗さRzが1.15μmであった。しかしながら、回路エッチング後に粗化粒子の残渣による黒色変色が観察され、不良であった。
【0089】
比較例6は、一次粒子を形成する電流密度を55A/dm2と3A/dm2とし、クーロン量を77As/dm2と12As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を34A/dm2とし、クーロン量を48As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.35μmで、二次粒子の平均粒子径が0.35μmと大きくなった。常態ピール強度が0.66kg/cmと実施例レベルであり、さらに表面粗さRzが1.50μmであった。回路エッチング後に粗化粒子の残渣による黒色変色が観察され、不良であった。
【0090】
比較例7は、一次粒子を形成する電流密度を58A/dm2と4A/dm2とし、クーロン量を81As/dm2と16As/dm2とした場合で、二次粒子を形成する電流密度を34A/dm2とし、クーロン量を48As/dm2とした場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.45μmで、二次粒子の平均粒子径が0.35μmと大きくなった。常態ピール強度が0.66kg/cmと実施例レベルであるが、さらに表面粗さRzが1.55μmと大きくなった。回路エッチング後に粗化粒子の残渣による黒色変色が観察され、不良であった。
【0091】
比較例8は、銅箔の上に一次粒子を形成する電流密度を51A/dm2と2A/dm2とし、クーロン量を72As/dm2と8As/dm2とした場合で、一次粒子層のみを形成し、二次粒子径がない場合である。
この結果、一次粒子の平均粒子径が0.25μmで、粉落ちはなく、常態ピール強度が0.57kg/cmと低かった。さらに表面粗さRzが1.10μmであった。回路エッチング後に粗化粒子の残渣による変色は観察されなかった。
【0092】
比較例9は、一次粒子径が存在せず、二次粒子層のみの従来例を示すものである。すなわち、二次粒子を形成する電流密度を50A/dm2とし、クーロン量を25As/dm2とした場合である。
この結果、二次粒子の平均粒子径が0.60μmと大きくなった。常態ピール強度が0.65kg/cmと実施例レベルであり、さらに表面粗さRzが0.78μmであった。回路エッチング後に粗化粒子の残渣による黒色変色が観察され、不良であった。
【0093】
上記実施例及び比較例の対比から明らかなように、本発明の銅張積層板は、液晶ポリマーとのピール強度が高く、かつ回路エッチング後に樹脂表面に粗化粒子の残渣がないという優れた効果を有することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔と液晶ポリマーを貼り合わせた銅張積層板であって、当該銅箔は液晶ポリマーとの接着面に、銅の一次粒子層と、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層とが形成されており、該一次粒子層の平均粒子径が0.25−0.45μmであり、該二次粒子層の平均粒子径が0.05−0.25μmである銅張積層板。
【請求項2】
前記一次粒子層及び二次粒子層が、電気めっき層である請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項3】
二次粒子が、前記一次粒子の上に成長した1又は複数個の樹枝状の粒子である請求項1又は2に記載の銅張積層板。
【請求項4】
液晶ポリマーとの接着強度が0.60kg/cm以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の銅張積層板。
【請求項5】
銅箔の液晶ポリマーとの貼り合わせ面の粗さRzが1.5μm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の銅張積層板。
【請求項6】
銅箔の液晶ポリマーとの貼り合わせ面の粗さRzが1.0μm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の銅張積層板。
【請求項7】
高周波プリント配線板用である請求項1〜6のいずれか一項に記載の銅張積層板。
【請求項8】
液晶ポリマーと貼り合わせるための銅箔であって、当該銅箔は液晶ポリマーとの貼り合わせ面に、銅の一次粒子層と、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層とが形成されており、該一次粒子層の平均粒子径が0.25−0.45μmであり、該二次粒子層の平均粒子径が0.05−0.25μmである銅箔。
【請求項9】
前記一次粒子層及び二次粒子層が、電気めっき層である請求項8に記載の銅箔。
【請求項10】
液晶ポリマーとの接着強度が0.60kg/cm以上である請求項8又は9に記載の銅箔。
【請求項11】
液晶ポリマーとの貼り合わせ面の粗さRzが1.5μm以下である請求項8〜10のいずれか一項に記載の銅箔。
【請求項12】
液晶ポリマーとの貼り合わせ面の粗さRzが1.0μm以下である請求項8〜10のいずれか一項に記載の銅箔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255180(P2012−255180A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127772(P2011−127772)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】