説明

液晶ラメラ型化粧料用組成物及びそれを含有する化粧料

【課題】高含水系で安定な液晶ラメラ構造を有する化粧料用ゲル組成物及びそれを含む化粧料の提供。
【解決手段】(A)炭素数14〜22の脂肪酸から得られる脂肪酸エステル;2〜10重量部、(B)高級アルコール;1〜8重量部、(C)油分;1〜30重量部、(D)水溶性多価アルコール;10〜40重量部、(E)多糖類を主成分とする動植物性エキス;0.01〜1重量部、及び(F)水;30〜70重量部を配合して液晶ラメラ型化粧料用組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ラメラ型化粧料用組成物及びそれを含有する化粧料に関する。詳しくは、本発明は、高含水系で安定な液晶ラメラ構造を有する液晶ラメラ型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
少量の界面活性剤と水性の担体とにより形成される液晶ラメラ構造は、該液晶ラメラ構造に由来する光干渉作用により多色の虹様の発色をして非常に美麗な外観を呈するため、化粧料分野への応用が試みられてきている(特許文献1)。
【0003】
液晶ラメラ構造は、両親媒性であることからラメラ層間に水分を含むことができるため、使用感に優れ、油性の皮脂汚れとの馴染みが良く、水を加えることにより容易にエマルション化することで水洗性に優れるなどの利点を有する。
さらに、液晶ラメラ構造は、皮膚中の細胞間脂質に類似したバリア機能性(角層バリア機能)を有し、極性の違う大気中の有害(刺激)物質から肌を保護することができることから、特に皮膚への有用性の高いスキンケア製剤などへの応用が期待されている。
【0004】
このような液晶ラメラ構造を有する組成物を含む化粧料としては、例えば界面活性剤として重合度5以上のポリグリセリンの割合がポリグリセリン全体の80%以上であるポリグリセリンから得られるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた油剤が多量に含まれる液晶ラメラ型化粧料用組成物が提案されている(特許文献2)。このものは、ゲル化剤や増粘剤を使用することなく適度な粘性を保つことで使用性が良く、メイクアップ汚れとの馴染みが良好なため、クレンジング化粧料として有用であるとされている。
【0005】
しかしながら、このような従来の液晶ラメラ型化粧料は、肌上に塗布すると皮脂や汗により液晶ラメラ構造が維持できなくなり、長時間安定に構造を維持することが困難であった。これは、ラメラ層を形成する親水部間の面間隔が狭く、汗などに由来する水と皮脂に含まれる油分によりラメラ構造が壊れてしまうためであると考えられる。また、このように皮脂や汗により液晶ラメラ構造が壊れやすいと、角層バリア機能を長時間維持することもできない。このため従来、バリア機能性に優れた液晶ラメラ型化粧料を特にスキンケア用などで安定に製剤化することは容易ではなかった。
【0006】
水を多く含むことのできる(高含水系の)液晶ラメラ型化粧料を容易に製剤化できれば、皮脂や汗などに対する安定性が向上するだけでなく、液晶ラメラ構造を長時間安定に保持できることにより優れた角層バリア機能を維持することが可能となる。さらに、高含水系の化粧料であれば、他の種々の薬剤や化粧料用材料との配合が容易となり、より多様な化粧料への製剤化が可能となるため汎用性が広がるという利点を有する。
【0007】
しかしながら、上述したように、高含水系で且つ肌上に塗布しても長時間液晶ラメラ構造を安定に持続させることができ、それゆえにスキンケア化粧料等の長時間肌上に保持して使用する化粧料に適した液晶ラメラ型化粧料は、未だ見いだされていないのが現状であった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−212716号公報
【特許文献2】特開2006−249011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況下になされたものであって、高含水系で安定な液晶ラメラ構造を有する化粧料用ゲル組成物及びそれを含む化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ペクチンやアミロース、アミロペクチン等に代表されるある種の多糖類又はその誘導体を主成分とする動植物性エキス(リンゴ、モモ、オレンジ、マルメロ、カリン等の果実及び/又は種子抽出物など)を配合することにより、液晶ラメラ構造のラメラ層間の面間隔を広く安定的に保つことができ、それによってラメラ層を形成する親水部間に多量の水を含有することが可能となり含水率を高めることができることを見いだし、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す液晶ラメラ型化粧料用組成物及び液晶ラメラ型化粧料に関する。
(1)以下に示す成分(A)〜(F)を含むことを特徴とする、液晶ラメラ型化粧料用組成物。
(A)炭素数14〜22の脂肪酸から得られる脂肪酸エステル
(B)高級アルコール
(C)油分
(D)水溶性多価アルコール
(E)多糖類又はその誘導体を主成分とする動植物性エキス
(F)水
【0012】
(2)前記脂肪酸エステル(A)のHLBが11.5以上であって、当該液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し2〜10重量部配合されていることを特徴とする、(1)記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【0013】
(3)前記脂肪酸エステル(A)が、重合度5以上のポリグリセリンの割合が全体の80重量%以上であるポリグリセリンと炭素数14〜22の脂肪酸とから得られるポリグリセリン脂肪酸エステルを少なくとも含有することを特徴とする、(1)又は(2)記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【0014】
(4)前記脂肪酸エステル(A)が、重合度5以上のポリグリセリンの割合が全体の80重量%以上であるポリグリセリンと炭素数14〜22の脂肪酸とから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル及びとショ糖と炭素数14〜22の脂肪酸とから得られるショ糖脂肪酸エステルを少なくとも含有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【0015】
(5)前記水溶性多価アルコール(D)及び水(F)の合計配合量が、当該液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し50重量部以上であり、且つ該水溶性多価アルコール(D)と水(F)の比率が(D):(F)=1:9〜7:3(重量比)であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【0016】
(6)前記高級アルコール(B)が、炭素数14〜22の高級アルコールを2種以上含み、且つ炭素数16の高級アルコール及び炭素数18の高級アルコールが合計で該高級アルコール(B)全量に対し80重量%以上を占めるものであって、当該液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し1〜8重量部配合されていることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【0017】
(7)前記多糖類又はその誘導体を主成分とする動植物性エキス(E)が、当該液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し前記多糖類又はその誘導体として0.01〜1重量部配合されていることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【0018】
(8)25℃での粘度が10,000〜100,000mPa・sのゲル組成物である、(1)〜(7)のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
(9)親水部と親油部とから形成されるラメラ層により構成される液晶ラメラ構造を有し、且つ該ラメラ層間の面間隔が15nm以上であることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【0019】
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物を含むことを特徴とする、液晶ラメラ型化粧料。
(11)スキンケア用であることを特徴とする、(10)記載の液晶ラメラ型化粧料。
【発明の効果】
【0020】
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、ラメラ層間の面間隔が広い液晶ラメラ構造を形成するため、親水部の面間隔が広く多量の水を含有することができる。また、この面間隔の広い液晶ラメラ構造を、長時間安定に保持することができ、温度安定性にも優れている。よって、このような本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、肌上に塗布しても皮脂や汗に強く液晶ラメラ構造が壊れにくい長期安定性に優れた高含水系の化粧料を提供することができる。
【0021】
さらに、本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、使用感が良く且つ他の成分を配合しやすいため、製剤化が容易で汎用性に優れ、またゲル化剤や増粘剤を使用することなく高い粘性を保つことができる。よって、使用性、水分保持性、温度安定性に優れた化粧料が得られる。
また、液晶ラメラ構造のバリア機能により、外部からの有害(刺激)物質(例えばダニ、ホコリ、窒素酸化物等)から肌を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.液晶ラメラ型化粧料用組成物
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、(A)炭素数14〜22の脂肪酸から得られる脂肪酸エステル、(B)高級アルコール、(C)油分、(D)水溶性多価アルコール、(E)多糖類又はその誘導体を主成分とする植物エキス、及び(F)水を含むことを特徴とする。
【0023】
(1)脂肪酸エステル(A)
本発明で用いられる成分(A)は、炭素数14〜22の脂肪酸から得られる脂肪酸エステルであり、液晶ラメラ構造を形成しうる非イオン性系面活性剤として用いられる。脂肪酸エステルとしては1種のみであってもよく、また2種以上を組み合わせても用いてもよい。
【0024】
炭素数14〜22の脂肪酸としては、好ましくは炭素数14〜18の直鎖又は分岐の、飽和もしくは不飽和の脂肪酸が挙げられる。具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
【0025】
また、該脂肪酸とともにエステルを形成するアルコール類としては、グリコール、グリセリン類、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。このうち好ましくは、グリセリン類が挙げられ、特に好ましくは複数のグリセリン単位を有するポリグリセリンが挙げられる。
【0026】
ポリグリセリンの脂肪酸エステルは、食品分野において広く利用されているが、安全性に優れていることから、近年化粧品分野においてもボディシャンプーやクレンジングなどの機能性製剤、O/LC/Wなどのラメラ型液晶構造を用いた皮膚への有用性の高いスキンケア製剤などの応用されている。このような食品分野や化粧品分野で利用されているポリグリセリン脂肪酸エステルは、様々な鎖長のポリグリセリンがエステル化した混合物であり、幅広い重合度分布を持つ。
【0027】
本発明の脂肪酸エステル(A)としては、このような様々な鎖長のポリグリセリンエステルの混合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。特に好ましくは、重合度5以上のポリグリセリンがポリグリセリン全体の80重量%以上を占めるポリグリセリンと炭素数14〜22の脂肪酸とのエステル(以下、「PGFE」と略す場合がある)が用いられる。なお、ここでいうポリグリセリンの平均重合度は、国際的に用いられている水酸基価から算出される平均重合度ではなく、ガスクロマトグラフによる組成分析により検出されるポリグリセリンの重合度である。
【0028】
重合度5以上のポリグリセリンがポリグリセリン全体の80重量%以上を占めるポリグリセリンは、市販のものを使用することができる。市販品の具体例としては、例えば商品名「サンソフトQ−18Y」(太陽化学(株)製)が挙げられる。
【0029】
また、本発明の脂肪酸エステル(A)としては、上記ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)1種のみであっても良いが、該ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の脂肪酸エステルを含めて2種以上の脂肪酸エステルを組み合わせても用いてもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルと組み合わせて用いる脂肪酸エステルとしては、例えば炭素数14〜22の脂肪酸とショ糖とから得られる脂肪酸エステル(ショ糖脂肪酸エステル)、炭素数14〜22の脂肪酸とソルビトールとから得られる脂肪酸エステル(ソルビタン脂肪酸エステル)等を挙げることができる。これらのうち、特に好ましいものはショ糖脂肪酸エステルである。
【0030】
本発明の脂肪酸エステル(A)として特に好ましいものは、重合度5以上のポリグリセリンがポリグリセリン全体の80重量%以上を占めるポリグリセリンと炭素数14〜22の脂肪酸とから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)と、炭素数14〜22の脂肪酸とショ糖とから得られるショ糖脂肪酸エステルと混合物である。ショ糖脂肪酸エステルを併用することにより、液晶ラメラ構造をより安定に形成することができる。
【0031】
その場合、脂肪酸エステル(A)全体におけるポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)とショ糖脂肪酸エステルとの割合は特に限定されないが、好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE):ショ糖脂肪酸エステル=9:1〜5:5(重量比)である。
【0032】
本発明の脂肪酸エステル(A)としては、上記ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)、及び好ましくはショ糖脂肪酸エステルのみからなるものであってもよいが、これら以外の脂肪酸エステルを少量併用することもできる。併用可能なその他の脂肪酸エステルとしては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0033】
また、2種以上の脂肪酸エステルを併用する場合においても、上記ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)は、本発明の脂肪酸エステル(A)全量に対し、50重量%以上の含有割合を有することが好ましい。
【0034】
また、上記脂肪酸エステル(A)は、そのHLBが全体(トータル)として、好ましくは11.5以上であり、より好ましくは12〜18である。すなわち、該脂肪酸エステル(A)として1種のみを使用する場合は、その脂肪酸エステルのHLBが11.5以上であることが好ましく、より好ましくは12〜18である。また、該脂肪酸エステル(A)として2種以上の脂肪酸エステル化合物を組み合わせて用いる場合、各脂肪酸エステル化合物すべてのHLBが11.5以上である必要はなく、脂肪酸エステル(成分A)全体としてHLBが11.5以上であれば、HLBが11.5未満の脂肪酸エステルが少量併用されていても良い。
前記脂肪酸エステル(成分A)全体としてHLBが11.5未満では、高含水系の液晶ラメラ構造が維持できなくなる場合がある。
【0035】
また、本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対する上記脂肪酸エステル(A)の配合割合は、好ましくは2〜10重量部、より好ましくは3〜6重量部である。脂肪酸エステル(A)の配合割合が少なすぎると油剤配合量が制限される場合があり、多すぎると皮膚への刺激性が高くなり、スキンケア製剤として安全性に欠ける場合がある。
【0036】
(2)高級アルコール
本発明で用いられる成分(B)の高級アルコールは、好ましくは炭素数14〜22の高級アルコール、より好ましくは炭素数16〜18の高級アルコールを1種又は2種以上用いるのがよい。
このような高級アルコールの具体例としては、ヘキサデカノール(炭素数16)、オクタデカノール(炭素数18)等が挙げられる。
【0037】
これらのうち、炭素数16の高級アルコール(セタノール又は1−ヘキサデカノール)と炭素数18の高級アルコール(ステアリルアルコール又は1−オクタデカノール)とを併用するのが特に好ましい。またその場合、炭素数16の高級アルコールと炭素数18の高級アルコールの合計割合が、成分(B)の高級アルコール全量に対し80重量%以上となるようにするのが好ましい。炭素数16の高級アルコールと炭素数18の高級アルコールとを併用することにより、α型ゲルの領域が広がり、低温安定性が増すという利点がある。
【0038】
なお、炭素数16の高級アルコール(C16)と炭素数18の高級アルコール(C18)を併用する場合、両者の使用比率は特に制限されないが、C16:C18=3:2(重量比)程度が好ましい。
【0039】
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対する上記高級アルコール(B)の配合割合は、好ましくは1〜8重量部、より好ましくは3〜6重量部である。高級アルコール(B)の配合割合が少なすぎるとゲルの形成が困難となる場合があり、多すぎると過剰な高級アルコールが結晶として析出する場合がある。
【0040】
(3)油分(C)
本発明の成分(C)の油分(油性成分)としては、通常化粧品で利用できる常温(例えば15〜25℃程度)で液状及び/又はペースト状の油性成分が挙げられる。
【0041】
このような油分としては、天然動植物油脂類、及び半合成油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油、動植物や合成の精油成分、脂溶性ビタミン等が例示できる。
【0042】
天然動植物油脂類、及び半合成油脂の具体例としては、アボガド油、アマニ油アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、月見草油、トウモロコシ油、菜種油、馬脂、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、ラノリン等が挙げられる。
【0043】
炭化水素としては、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、ワセリン等、エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット等が挙げられる。
【0044】
グリセライド油としては、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリテトラデカン酸グリセリル、ジパラメトキシケイ皮酸・モノイソオクチル酸グリセリル等が挙げられる。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変成シリコーン、アルキル変成シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、脂溶性ビタミンとしてはトコフェロールやその誘導体、レチノールやその誘導体等が挙げられる。
【0045】
本発明の油分は、1種もしくは2種以上を併用しても良い。また、本発明に用いる油分としては上記具体例に限定されるものではなく、また固形状の成分であっても液状の保持に影響がない程度であれば配合することができる。
【0046】
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対する上記油分(C)の配合割合は、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは5〜15重量部である。油分(C)の配合割合が少なすぎるとスキンケア製品としてのエモリエント性が不足する場合があり、多すぎると液晶ラメラ構造の維持が困難となる場合がある。
【0047】
(4)水溶性多価アルコール(D)
本発明の成分(D)の水溶性多価アルコールとしては、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、トレハロースなどの1種もしくは2種以上が挙げられる。これらのうち、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
【0048】
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対する上記水溶性多価アルコール(D)の配合割合は、好ましくは10〜40重量部、より好ましくは10〜30重量部である。水溶性多価アルコール(D)の配合割合が少なすぎても多すぎても液晶ラメラ構造の維持が困難となる場合がある。
【0049】
(5)多糖類を主成分とする動植物性エキス(E)
本発明で用いられる成分(E)の多糖類又はその誘導体を主成分とする動植物性エキスは、多糖類として例えばホモ多糖類(アミロース、キチン、プルラン等)、ヘテロ多糖類(グルコマンナン、ペクチン、アミロペクチン等)、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)等、又は多糖類の誘導体としてカルボキシメチルセルロース、アラビノキシラン等を含むものが挙げられる。
【0050】
このような多糖類又はその誘導体を主成分とする動植物エキスとしては、特に限定されるものではないが、例えばリンゴ、モモ、オレンジ、マルメロ、カリン等の果実及び/又は種子から抽出した植物エキス、鶏のトサカ、カニやエビの甲羅等から抽出した動物エキス等が挙げられる。
【0051】
これらの動植物エキスのうち、より好ましいものは植物エキスである。また、植物エキスのうち特に好ましいものとしては、マルメロの種子から抽出されるクインスシード(quince seed)が挙げられる。クインスシードは、保水性に優れた粘着質のゼリー状物であり、クリーム、化粧水、ファンデーション等に用いられている。
【0052】
本発明においては、このような動植物性エキスを少量配合することにより、液晶ラメラ構造のラメラ層間の面間隔を広くかつ安定に保つことができることを見いだしたものである。
【0053】
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対する上記植物エキス(E)の配合割合は、好ましくは多糖類又はその誘導体として0.01〜1重量部、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。植物エキス(E)の配合割合が少なすぎると液晶ラメラ構造の維持が困難となる場合があり、多すぎるとスキンケア製剤としての好ましい使用感が得られない場合がある。
【0054】
(6)水(F)
本発明の化粧料用組成物における残部を構成する水(水分)の量は特に制限されず、他の成分及びその含有量によって適宜選択されるが、通常は、本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対して30〜70重量部、好ましくは35〜60重量部である。
【0055】
(8)液晶ラメラ型化粧料用組成物
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物の調製方法は特に制限されず、例えば上記必須成分(A)〜(E)及び水(F)並びに必要に応じて用いられる任意成分を全て配合し混合する、あるいは上記必須成分(A)〜(E)と任意成分とを予め混合したのち水を添加混合する、等の方法で調製することができるが、特に好ましいものとして、まず(A)と(D)を先に混合しておき、その中に予め(C)と(D)を混合して得られる油相を攪拌混合しながら徐々に添加し、さらに予め(E)と(F)を混合して得られる水相を攪拌混合しながら添加することにより調製する方法が挙げられる。
【0056】
(i)配合割合
各成分の配合割合については上述した通り、液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対する成分(A)の脂肪酸エステルの好ましい配合量は2〜10重量部、より好ましくは3〜6重量部である。成分(B)の高級アルコールの好ましい配合量は1〜8重量部、好ましくは3〜6重量部である。成分(C)の油分の好ましい配合量は1〜30重量部、好ましくは5〜15重量部である。成分(D)の水溶性多価アルコールの好ましい配合量は10〜40重量部、好ましくは10〜30重量部である。成分(E)の多糖類を主成分とする植物エキスの好ましい配合量は0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部である。成分(F)の水の好ましい配合量は30〜70重量部、好ましくは35〜60重量部である。
【0057】
このうち、成分(D)の水溶性多価アルコールと成分(F)の水は、その合計の配合量が液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し50重量部以上であることが好ましく、より好ましくは60重量部以上である。一方、水溶性多価アルコール(D)と水(F)の合計配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは80重量部以下であり、より好ましくは75重量部以下である。水溶性多価アルコール(D)と水(F)の合計配合量が50重量部未満では、低温で高級アルコールが析出する場合がある。
【0058】
また、水溶性多価アルコール(D)と水(F)の比率は、(D):(F)=1:9〜7:3(重量比)が好ましく、より好ましくは(D):(F)=4:6〜6:4(重量比)である。水溶性多価アルコールがこの範囲を超えて多くても少なくても液晶構造を維持するのが困難となる場合がある。
【0059】
(ii)粘度
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、25℃での粘度が10,000〜100,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは15,000〜30,000mPa・sである。すなわち、液晶ラメラ型化粧料用組成物は、α型ゲルを長時間安定的に保持しうるゲル組成物であり、ゲル化剤や増粘剤を添加することなく適度な粘性を保つため、使用性、水分保持性、及び製剤性に優れている。液晶ラメラ型化粧料用組成物の粘度が低すぎると液晶構造を維持できない場合があり、粘度が高すぎるとスキンケア製剤として好ましい使用性及び使用感が得られない場合がある。
【0060】
(iii)ラメラ層間の面間隔
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、そのラメラ層間の面間隔が15nm以上である。本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、このように液晶ラメラ構造のラメラ層間の面間隔を、従来の液晶組成物に比べてより広く且つ長時間安定に維持することができる。そして、これにより高含水系の液晶組成物を得ることが可能となる。ラメラ層間の面間隔が狭すぎると水分保持性が著しく劣り、使用性、使用感に優れた化粧料用組成物が得られる。
【0061】
一方、前記ラメラ層間の面間隔の上限は特に限定されないが、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは25nm以下である。ラメラ層間の面間隔が広すぎると、液晶ラメラ構造自体を維持するのが困難となる場合がある。
【0062】
ここで、液晶ラメラ構造は、両親媒性分子(非イオン性界面活性剤)の親水部同士と親油部同士が結びつき交互に規則性的に配列して層状の2分子膜(ラメラ層)を形成することで構成される。本発明におけるラメラ層間の面間隔とは、非イオン性界面活性剤である成分(A)(脂肪酸エステル)の親水部同士と親油部同士が形成するラメラ層の面間隔であり、小角X線散乱スペクトル解析により測定することができる。このうち、親油部の面間隔は脂肪酸の種類によりほぼ一定となる。例えば、脂肪酸として炭素数18のステアリン酸が用いられる場合は、Lc=2.472nmであり、該脂肪酸2分子で構成される親油部の面間隔は約5nmとなる。
【0063】
非イオン性界面活性剤の親水基2分子により構成されるラメラ層間の親水部の面間隔は、非イオン性界面活性剤と組み合わせる他の成分などにより左右される場合がある。本発明においては、この親水部の面間隔を広く且つ安定的に保持することができる。このため、ラメラ層間の親水部に多量の水を含有することができ、使用性、水分保持性、温度安定性に優れた化粧料用組成物が得られる。
【0064】
2.液晶ラメラ型化粧料
本発明の液晶ラメラ型化粧料は、上記液晶ラメラ型化粧料用組成物を含有してなることを特徴とする。
【0065】
液晶ラメラ型化粧料としては、スキンケア化粧料のうち、洗浄料としてクレンジング化粧料、保湿料としてジェル、エッセンス、栄養保護料として乳液、クリーム、美容液等を挙げることができる。このうち、本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物が液晶ラメラ構造を長時間安定に保持しうるものであり、バリア機能性に優れていることから、特にスキンケア化粧料に適している。
【0066】
化粧料とする場合、上記液晶ラメラ型化粧料用組成物に、更に薬剤(美白剤、抗炎症剤、保湿剤等を含む)等を加えることができる。また、本発明の化粧料には必要に応じて、通常の化粧料に用いられる色素、香料、顔料、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜配合することができる。
【0067】
本発明の化粧料に配合し得る薬剤としては、従来の化粧料等の製剤に使用されるものはもとより、従来の製剤では安定的に配合しにくく製剤からの放出性が期待できなかった油溶性薬剤が挙げられる。
【0068】
例えば、ビタミンA1、ビタミンA2、プロビタミンA類及びこれらの誘導体、ビタミンB2 、ビタミンB6 とその誘導体及び類縁体、ビタミンH、ビタミンC誘導体、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンK類縁体、クリチルレチン酸とその誘導体、リノール酸、リノレン酸アラキドン酸等の必須脂肪酸、ビタミンH等のビタミン類の他にレゾルシン、レゾルシンモノアセテート、ユビキノン類、コエンザイム、タクロリムスなどが挙げられる。
【0069】
また、副腎皮質ホルモン、例えばコルテゾン、ハイドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、パラメタゾン、トリアムシノロン、フルオシノロンアセトニドなどのエステル化合物などを挙げることができる。
【0070】
また、女性ホルモン、例えばエストロン、エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベステロール、エストラジオール、ビタミン類、例えばビタミンE、ビタミンE誘導体、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビタミンCテトライソパルミテートなどを挙げることができる。
【0071】
本発明において使用することができる薬剤としては、上記油溶性薬剤の他に水溶性薬剤、例えばハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体(アルブチン等)、グリチルリチン酸及びその誘導体、カルニチン、ビタミンC誘導体、ビタミンB6塩酸塩、パントテニルエチルエーテルなどについても、安定に配合することができる。
【実施例】
【0072】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示し、発明の内容を詳細に示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0073】
<実施例1>
1.液晶ラメラ型組成物の原料
各成分として、以下の原料を表1に示す割合で使用した(なお、表1中の数値は重量部を表す)。
【0074】
(1)成分(A);脂肪酸エステル
デカグリセリンモノステアレート(DGMS:商品名「サンソフトQ−18Y」;太陽化学(株)製;グリシドール脱水重合法により製造されたもの;重合度5以上のポリグリセリン=90%、HLB=16.5)
ショ糖モノステアリン酸エステル(SSE::商品名「S−190」;第一工業製薬(株)製)
(2)成分(B);高級アルコール
1−ヘキサデカノール(HDOH:和光純薬工業(株)製)
1−オクタデカノール(ODOH:和光純薬工業(株)製)
【0075】
(3)成分(C);油分
トリオクタン酸グリセリル(TOG:商品名「TIO」;日清オイリオ(株)製)
ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン(DMSHS:商品名「シリコンDC−246」;東レ・ダウコーニング(株)製)
(4)成分(D);水溶性多価アルコール
グリセリン(GLY:和光純薬(株)製)
ジプロピレングリコール(DPG:和光純薬(株)製)
(5)成分(E);植物エキス
クインスシードエキス(QSEX:太陽化学(株)製)
(6)成分(F);精製水
【0076】
2.液晶ラメラ型化粧料用組成物(ゲル組成物)の調製
70℃に加熱したDGMS、SSE、DPG、GLY、及び所定量の水を混合溶解した組成中に、同じく70℃に加熱したTOG、DMSHS、HDOH、ODOHを撹拌しながら添加し、次いでQSEXを溶解した70℃の水を撹拌しながら加えた後、10℃の冷却層の中で室温まで冷却し、表1に示す組成の7種のゲル組成物(SLC1〜7)を得た。
【0077】
3.ゲル組成物の構造解析
得られた7種のゲル組成物(SLC1〜7)について、小角及び広角X線解析(X線散乱測定)及び偏光顕微鏡観察を行った。セルに各試料を詰め、X線を15分間照射したときのX線散乱スペクトルを得た。
【0078】
ここで、小角及び広角X線散乱測定は、Anton paar/PANalytical社製の高輝度小角X線散乱装置(SAXSess)を用いた。偏光顕微鏡観察は、商品名「ECLIPSE E600」(Nikon社製)を用いて行った。ラメラ層間の面間隔は、小角X線散乱測定の結果から求めた。
【0079】
【表1】

【0080】
5.実験結果
各ゲル組成物のX線散乱スペクトルを図1に示す。図1からわかるように、広角側の散乱スペクトルq=15nm-1(2θ=21°)付近にピーク(図1中、ピークa)が観測されたことから、高級アルコールが六方晶状に配列するα型ゲルを形成していることがわかる。
【0081】
これらのうち、成分(A)〜(F)を配合した本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物であるSLC2,3,5,7は、いずれも小角側にラメラ構造を示すピーク(図1中、ピークb)が明確に観測された。
【0082】
一方、水溶性多価アルコール(D)を配合しなかったSLC1、植物エキス(F)を配合しなかったSLC4、及び水(F)を配合しなかったSLC6は、小角側にラメラ構造を示すピークが観測されず、液晶ラメラ構造を形成することができなかったことがわかる。
また、QSEXを0.25重量部添加したSLC2,3,5に対し、QSEX配合量を増やしたSLC7も小角側にラメラ構造のピークが明確に観測された。このことから、QSEXの存在により親水部の結合が強まり、構造が安定化したと考えられる。
【0083】
また、上記SLC2,3,5,7において示された液晶ラメラ構造におけるラメラ層間の面間隔は、いずれもq=0.41〜0.25nm-1(面間隔;15nm以上)と、比較的広い長距離の規則構造が観測された。親油部の面間隔が約5nm(C=18の場合、Lc=2.472nm)であることから、親水部の面間隔が広い高含水系のラメラ構造であると推測される。
【0084】
また、QSEXを0.25重量部添加し、水溶性多価アルコール(D)と水(F)の比率を変化させた系(SLC2,3,5)では、(D):(F)の比率がほぼ5:5〜6:4であるSLC2,3において特に20nm以上と広い面間隔を有することがわかる。
【0085】
<実施例2>
成分(A)としてDGMSを5重量部、成分(B)としてHDOHを2.5重量部、成分(C)としてドデカメチルシクロヘキサシロキサンを1重量部、成分(E)としてQSEXを0.01重量部用い、残部の成分(D)(水溶性多価アルコール;DPGを使用)と成分(F)(水)の比率(D/F比率)を、D:F=2:8〜8:2(重量比)の範囲で適宜変化させ、実施例1と同様の方法で組成物を得た。
【0086】
得られた各組成物について、水と多価アルコールの比率の違いによる相挙動の変化を図2に示す。図2中の横軸は成分(D)(水溶性多価アルコール)と成分(F)(水)との合計に対する成分(D)(水溶性多価アルコール)の比率(D/(D+F))である。なお、相挙動は、所定のD/F比率を有する組成物(溶液)の温度を上昇させ、相変化を起こす温度を直行ニコル下での目視により確認する方法で測定することによって観察した。
【0087】
図2からわかるように、成分(D)(水溶性多価アルコール)と成分(F)(水)の比率(D/F比率)が、D:F=4:6〜6:4の領域で、液晶ラメラ構造を示すI−b相が出現した。
【0088】
I−b相の領域は、低粘度の透明な溶液であるが、流動複屈折を示した。II相は、等方性の液相と流動複屈折を示す液相の2相に分離する領域である。I−b相からIIの領域への変化は曇点に類似した現象と思われる。DPGは曇点を上げることが知られており、また高級アルコールなどのように界面に吸着する親油的な両親媒性物質は一般に曇点を下げる。高級アルコールの添加によって親油化したDGMSが多量のDPGによって逆に親水化して、I−b相が出現したものと思われる。I−b相を冷却すると、HDOHが結晶化するため、系全体がゲル状になる。ゲル化点は45℃〜50℃付近で、水溶性多価アルコールの比率とともにわずかに低下した。
【0089】
これらのことから、特に水溶性多価アルコールと水の比率(D/F比率)が一定範囲内において、液晶ラメラ構造を形成しやすいことがわかる。
成分(D)(水溶性多価アルコール)と成分(F)(水)の比率(D/F比率)が、D:F=5:5の時のサンプルを電子顕微鏡(ミクロトーム切断により撮影)で観察した結果、液晶ラメラ構造を確認した。
【0090】
<実施例3>
本実施例では、本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物と、従来のO/W製剤とについて、角層バリア機能を評価した。
【0091】
1.使用製剤
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物としては、実施例1で調製したSLC7を用いた。また、従来のO/W製剤としては、以下の処方により得られる製剤を用いた。なお、このO/W製剤は液晶ラメラ構造を示さない。また、従来のO/W製剤において増粘剤及び中和剤を配合したのは、粘性等の物性においてSLC7と同様のレベルを有するよう調整するためである。
【0092】
[O/W製剤の処方]
(A)1.5重量部;DGMS
(B)1.0重量部;HDOH:ODOH=3:2
(C)15.0重量部;DMSHS:TOG=2:1
(D)15.0重量部;GLY:DPG=1:1
(E);なし
(F)65.8重量部;水
(その他)増粘剤0.2重量部;(商品名「カーボポール・Ultrez・10」(日光ケミカルズ(株)製)
(その他)中和剤1.5重量部;(5%KOH水溶液;KOH:東京応化工業(株)製)
【0093】
2.評価方法
2.5cm×2.5cmにカットしたYMP皮膚(ユカタンマイクロブタ皮膚セット;日本チャールズ・リバー製)表面に、20mgの実施例1のSLC4と前記O/W製剤とを均一に塗布し、製剤無塗布のものとともに、生理食塩水を含ませたペーパータオル(36℃保温)上で5分間静置した。次いで、2.0cm×2.0cmにカットした脱脂綿を皮膚表面に乗せてリボフラビン水溶液(0.5mg/10mL)を1mL含ませ、皮膚に水溶液が十分接触していることを確認し、3分間静置した。3分後脱脂綿を除去し、皮膚表面をペーパータオルで軽く拭き取った。
【0094】
2.0cm×2.0cmにカットしたスコッチテープ(3M)を用いて3回ストリッピングを行い、角層中に浸透したリボフラビンを角層ごと採取した。
ストリッピング後の前記スコッチテープを1%−SDS水溶液2mL中に入れ、超音波処理によりリボフラビンを回収し、これを0.45μmのメンブランフィルターにて濾過した。回収されたリボフラビン量を、分光蛍光光度計(Fluoroskan Ascent FL, Labsystem)を用いて励起波長485nm、測定波長538nmにて測定することにより、皮膚表面からのリボフラビン水溶液の浸透量を求め、角層バリア機能を評価した。
【0095】
3.評価結果
上記角層バリア機能評価の結果を図3に示す。ここで、図3中、*印は、p<0.05を示し、**印はp<0.01を示す。なお、p値とは、もしある事象が全く偶然に起こりうるとした時に、その偶然が起こりうる確率のことであり、p<0.05とは、その確率が5%以下であることを示す。慣例的にp<0.05であれば、統計的に有意であると言われている。
【0096】
図3からわかるように、本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、無塗布時及び従来のO/W製剤と比較して、有意にリボフラビンの浸透を抑制した。これらの結果より、本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物が皮膚表面上で疑似角層として機能することで、外部からの水溶性物質の浸透を抑制すると同時に、皮膚内部からの水分蒸散を抑止することが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、ラメラ層間の面間隔が広い液晶ラメラ構造を形成するため、親水部の面間隔が広く多量の水を含有することができる。また、この面間隔の広い液晶ラメラ構造を、長時間安定に保持することができ、温度安定性にも優れている。よって、このような本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、肌上に塗布しても皮脂や汗に強く液晶ラメラ構造が壊れにくい長期安定性に優れた高含水系の化粧料を提供することができる。さらに、本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物は、使用感が良く且つ他の成分を配合しやすいため、製剤化が容易で汎用性に優れ、またゲル化剤や増粘剤を使用することなく高い粘性を保つことができる。よって、使用性、水分保持性、温度安定性に優れた化粧料が得られる。また、液晶ラメラ構造のバリア機能により、外部からの有害(刺激)物質(例えばダニ、ホコリ、窒素酸化物等)から肌を保護することができる。このような本発明の液晶ラメラ型化粧両用組成物は、特にスキンケア用化粧料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施例1におけるX線散乱スペクトル図である。
【図2】本発明の実施例2における相挙動の変化を示す図である。
【図3】本発明の実施例3における角層バリア機能評価の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
a X線散乱スペクトルのピークa
b X線散乱スペクトルのピークb

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示す成分(A)〜(F)を含むことを特徴とする、液晶ラメラ型化粧料用組成物。
(A)炭素数14〜22の脂肪酸から得られる脂肪酸エステル
(B)高級アルコール
(C)油分
(D)水溶性多価アルコール
(E)多糖類又はその誘導体を主成分とする動植物性エキス
(F)水
【請求項2】
前記脂肪酸エステル(A)のHLBが11.5以上であって、当該液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し2〜10重量部配合されていることを特徴とする、請求項1記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸エステル(A)が、重合度5以上のポリグリセリンの割合が全体の80重量%以上であるポリグリセリンと炭素数14〜22の脂肪酸とから得られるポリグリセリン脂肪酸エステルを少なくとも含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸エステル(A)が、重合度5以上のポリグリセリンの割合が全体の80重量%以上であるポリグリセリンと炭素数14〜22の脂肪酸とから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル及びとショ糖と炭素数14〜22の脂肪酸とから得られるショ糖脂肪酸エステルを少なくとも含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【請求項5】
前記水溶性多価アルコール(D)及び水(F)の合計配合量が、当該液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し50重量部以上であり、且つ該水溶性多価アルコール(D)と水(F)の比率が(D):(F)=1:9〜7:3(重量比)であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【請求項6】
前記高級アルコール(B)が、炭素数14〜22の高級アルコールを2種以上含み、且つ炭素数16の高級アルコール及び炭素数18の高級アルコールが合計で該高級アルコール(B)全量に対し80重量%以上を占めるものであって、当該液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し1〜8重量部配合されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【請求項7】
前記多糖類又はその誘導体を主成分とする動植物性エキス(E)が、当該液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対し前記多糖類又はその誘導体として0.01〜1重量部配合されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【請求項8】
25℃での粘度が10,000〜100,000mPa・sのゲル組成物である、請求項1〜7のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【請求項9】
親水部と親油部とから形成されるラメラ層により構成される液晶ラメラ構造を有し、且つ該ラメラ層間の面間隔が15nm以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の液晶ラメラ型化粧料用組成物を含むことを特徴とする、液晶ラメラ型化粧料。
【請求項11】
スキンケア用であることを特徴とする、請求項10記載の液晶ラメラ型化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−298748(P2009−298748A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157351(P2008−157351)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(504401994)株式会社セプテム総研 (11)
【Fターム(参考)】