液晶レンズにおける画像安定化およびシフト
液晶層を通過する光の伝播を制御する可変液晶装置は、周波数依存性材料を利用して前記装置内に有効な電極構造を動的に再構築させる。前記装置内で電場を発生させる駆動信号の周波数は可変であり、周波数依存性材料は周波数毎に異なる電荷移動度を有する。周波数依存性材料は、電荷移動度が低いと、現行の電極構造にはほとんど影響を及ぼさないが、電荷移動度が高いと、固定電極を拡張させると考えられる。これを利用すれば、有効な電極構造や、ひいては電場の空間プロファイルを変更することも可能である。更にはこれにより液晶の光学特性が変化して、光学装置の周波数制御が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、液晶レンズ装置を対象にする。
【背景技術】
【0002】
調整可能液晶レンズは、例えば、2009年12月23日公開の自己のPCT出願WO2009/153764に記載され、当該出願では、電場と対応する屈折率勾配とを液晶セル内にて形成するため、調整可能液晶レンズは、レンズを製造するのに適した周波数依存性物質(そこではこのように定義されている)を用いている。
【0003】
「オプティクス コミュニケイションズ」の259(2006)710−722にて発表された、Yeらによる「焦点面における焦点移動可能液晶レンズ」と題された記事にて、液晶レンズが開示されており、4部分孔パターン電極の四半部分の各々に適用される駆動信号の相対振幅を制御することにより、当該レンズの光軸は移動可能となっている。このレンズ設備は、平面電極の下の区画された電極を用いており、これらの電極には、一定周波数の駆動信号の相対振幅の機能として電界を規定するための駆動信号が与えられ、一定周波数の駆動信号は、底部平面電極に対して、上側の前記平面電極および下側の前記区画された電極に用いられる。相対振幅を変化させた際の実験結果は、液晶レンズの光軸のシフトすなわち変化を示している。
【0004】
レンズなどの調整可能液晶(LC)光学装置は、電気的あるいは磁気的な一様な制御場にて作動し、多くは、空間的に変調された場を用いる。電場を用いる場合、電場を空間的に変調するのに用いる先行文献技術が、いくつかある。空間的に不均一な誘電層は、電場の大きさを小さくするために用いられており、所望の空間特性を提供している。電極は、電場の所望の空間特性を提供するために、球形に形成されている。電場を空間的に変調する他の方法は、AC駆動電流を電極に供給したときの電極での電圧降下が、空間変調された電場を引き起こすほどのインピーダンス特性を有する平面電極を利用することである。
【0005】
図1に示すように、ある種の従来式LCセルは、2枚の基板104、106の間に液晶102を挟んで構成されている。基板104、106にはそれぞれ、先ず、酸化インジウムスズ(ITO)等の材料層であり得る透明電極108、110をコーティングされてから、ポリマー層112(一般にはポリイミド)をコーティングされている。前記ポリマー層が所定の方向にラビング処理されることにより、基底状態すなわち制御電場が無い状態でLC分子が整列する。2枚のITO層に電圧を印加すると、一様な電場と、それに対応して一様なLC分子再配向とが生じる。LC分子再配向は、対応して、LC層中に一様な屈折率分布を与える。そのような装置において、屈折率は、分子の横方向よりも、分子の縦方向で異なる。
【0006】
図2には従来技術のLCセル構造が示されており、ここでは、高抵抗の材料から成るディスク状領域205の周囲の、低抵抗の孔パターン電極リング204を利用することで、電場勾配が生じる。この形状の利点は、非常に薄いこと(これは、例えば携帯電話用途などで重要な要件である)と、電極を2つだけ利用する(そのため、制御駆動信号を一つだけ利用する)ことである。残念なことに、高い光学透明性を有する所望の厚さの高抵抗の材料だけでなく、良好な一様性を有するLCセルもが製造され難く、その製造歩留まりも一般に低い。様々なレンズの電極抵抗はわずかに異なることがある。これは、要求される制御が精密なセル厚さにも大きく左右されるという事実と連動して、各レンズをそれぞれ別個に調整しなければならないことを表している。更に、モードレンズの最小直径は約2mmまでに制限されている。この寸法未満では、ITO層の要求される抵抗が約10MΩ/sqを超える。最後に、このような(いわゆる「モード制御型」)レンズは常に凸レンズか凹レンズのどちらかでなければならない。発散レンズと収束レンズを切り替えることはできない。
【0007】
図3は、電場勾配を生じさせる別の従来型LCセル構造を表しており、これには、3つの個別電極304、305、307(このうち2つの間にはその同一平面内に孔が形成されている)と、2つの電圧V1及びV2とが、更に追加の個別の弱導電体層(WCL)306とともに用いられている。孔パターン外側電極304(電圧V1が印加された状態)の役割は、レンズの様な電場プロファイルを作り出すことであり、一方、中央のディスク状電極305(電圧V2が印加された状態)の役割は、回位を減らすことと、(例えばレンズ効果を失わせるために)前記勾配値を制御することと、である。WCL306の役割は、V1によって生じた前記プロファイルを和らげて、レンズ全厚を減少させることである。
【0008】
残念なことに、上部電極に係る複雑なパターンや2つの個別電圧と別のWCLとを用いる必要性が、製造を困難にし、しかもこの方法の実際の利用を妨げている。例えば、この方法を利用して偏光無依存型レンズを構成するには6、7枚の厚いガラス素材を用いる必要があるが、これは困難な作業である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
調整可能液晶レンズの焦点の移動の制御を改善すること(有益なものにすること)が、提案された解決方法の目的である。
【0010】
周波数依存性材料を用いて生成された電場の改善された(有益な)制御は、区画された電極を用いることによって提供でき、結果として生じるレンズの焦点の移動が制御されることが、わかった。
【0011】
制御可能な熱源を用いて、電場変調と液晶との少なくとも一つに影響を与えることにより、液晶レンズの光軸を移動させることが可能であることが、わかった。
【0012】
液晶レンズ構造における基板に影響を与える(作用する)、制御可能な圧力源を用いることによって、液晶レンズの光軸を移動させるのが可能であることが、わかった。適切な圧力源は、熱源によって作動させられる、圧電物質あるいは液体が充填されたセルであってもよい。
【0013】
カメラのレンズ設備の一部を形成するレンズにて、光軸をシフトあるいは変化させることは、例えば、カメラの振動を補填する等の画像安定化、他のレンズ要素との位置合わせを行うための画像あるいはレンズ位置の調整、レンズの角度調整(ピッチおよび回転/パンおよび傾斜)、にとって有益なことであり、画像移動をさせることにより、個別のピクセルイメージセンサを用いてサブピクセル画像を得ることができる。このように、光軸の調節機構は、所望のアプリケーションの要求に応じて、一度セットされて、画像取得に先立って調節されあるいは画像取得時に動的に調節される。動的な制御の場合、加速度計センサを用いて、あるいは、取得され且つカメラの移動量を決定する画像を分析することによって、光軸の調整が行われる。
【0014】
提案された解決方法によれば、その中を通過する光の伝播を制御する様々な光学装置であって、周波数依存性材料と複数の異なる周波数を有する駆動信号を発生する電気信号発生器とを利用する光学装置が提供される。前記装置は、光が貫通する液晶(LC)層を備えており、前記LC層によって光の伝播が制御される。更には、電気信号発生器に接続されており、しかもLC層に作用してその光学特性を変える電場を発生させるように配置された、電極システムも提供される。電気信号発生器は、複数の異なる周波数を有する駆動信号を発生し、その駆動信号を電極システムに供給することで電場を発生させる。周波数依存性材料は、電場と相互作用するように前記装置内に配置されている。この周波数依存性材料は、それに適用される駆動信号の周波数によって決まる電荷移動度を有しているため、可変電場の空間プロファイルが駆動信号周波数に応じて提供されることで、代わりに用いられる区間変調された電場が前記LC層の特性を変える。「電荷移動度」を本明細書にて「導電率」の代わりに用いて、周波数依存性材料の特性を説明する。低周波数では、一部の周波数依存性材料が高い電荷移動度を示し、低周波数では電荷が周波数依存性材料内を移動する時間が長くなるためである。同様に、高周波数では、より短い時間に正と負の両方のサイクルの電位があることを考えると、電荷の移動が小さくなる。したがって、「電荷移動度」は、電荷が、与えられる交互の電気信号の制約範囲内で周波数依存性材料中を移動する能力全体を指すのに用いられる。
【0015】
一部の実施態様では、電極システムは、周波数依存性材料本体に接続された固定導電性電極を備えている。電場には、固定導電性電極で実質的に規定される部分と、周波数依存性材料で規定される部分とがあり得る。電場は、実質的には周波数依存性材料で規定できる。電極システムは固定導電性電極を有していてもよく、その場合、電場は、当該固定導電性電極と結合していない周波数依存性材料本体で成形される。
【0016】
一部の実施態様では、電極システムは、実質上平坦な層状の構成要素を用いて作成される。
【0017】
電極システムは、基本的には光学的に隠れていてもよく、そのため光学装置からの光の伝播を妨げない可能性がある。
【0018】
一部の実施態様では、電極システムには、周波数依存性材料層と接触しているパターン電極が備わっていてもよい。
【0019】
一部の実施態様では、前記装置は、調整可能焦点レンズである。前記レンズは屈折性であっても回折性であってもよい。
【0020】
一部の実施態様では、前記装置には、前記装置に光の伝播を制御信号周波数に応じて制御させるように構成された、様々な周波数制御信号回路が備わっている。
【0021】
周波数依存性材料と様々な周波数の駆動信号を利用することで、多種多様な実施態様光学装置が可能である。その実施態様のいくつかの例は、電極の数、形状及び構造、様々な周波数依存性材料の数及び電極に対するその位置やそれら互いの位置、様々な駆動信号周波数及び電圧の適用、並びに前記光学装置構造内での追加材料の使用である。
【0022】
一実施態様では、駆動信号は、単一周波数を含み、当該周波数は、前記装置の光学特性を変化させるために用いられる。これは、駆動信号電圧振幅をほとんど変化させず用いることができ、又は信号振幅の変化を含む場合もある。別の実施態様では、異なった複数の周波数の駆動信号要素を混ぜ合わせて同時に適用することで周波数依存層との特殊な相互作用がもたらされ、そしてそれに応じて所望の電場プロファイルが得られる。
【0023】
提案された解決方法によると、光学装置内で有効な電極構造を変更するために周波数依存性材料が、様々な駆動信号周波数とともに用いられる。電極構造によって電場のプロファイルが決まり、同様に、LC層の光学特性が決まる。
【0024】
周波数依存性材料は、様々な周波数で異なる電荷移動度を示すように選択することができるので、様々な周波数では、選択的に(制御可能に)、導電性材料とみなされる場合も非導電性材料とみなされる場合もある。導体とみなされる(高い電化移動度を有する)周波数では、周波数依存性材料は、固定電極の一つとは異なる位置に、有効な電極構造を形成する場合がある。しかしながら、周波数依存性材料の電荷移動度が比較的低い周波数では、それは導体とはみなされず、有効な電極構造は固定電極の実際の位置によって決定される。したがって、周波数依存性材料を適正に配置し、そして別の駆動周波数を選択すると、有効な導電性構造が変更されて、LC層の光学特性が動的に変化する可能性がある。
【0025】
周波数依存性材料をパターン電極と併用するある種の実施態様では、(別の電極構造がなければ)、空間的に一様でない電場が形成される。このような構造は、空間変調された電場によるLC分子の不均一な再配向に起因する特別な特徴(例えば、レンズ構造)をLC層に形成するために利用できる。しかし、このような実施態様では、LC分子全てに初期の共通の配列傾向を付与する(例えば、回位を無くす)ために、空間的に一様な電場を作り出すことが望ましい場合もある。提案された解決方法のこの実施態様では、周波数依存性材料の高い電荷移動度(電荷がより遠い距離を移動すること)を生じさせる駆動信号周波数を選択したときに、有効な電極構造が形成され、それによって実質的に一様な電場の空間プロファイルが生じるように、周波数依存性材料を配置してもよい。例えば、パターン電極が環状電極であり、そして電極中央の空間を周波数依存性材料で充填してもよい。このような場合、第1周波数、例えば比較的高い周波数で駆動信号を適用すると、周波数依存性材料の電荷移動度は小さく(すなわち、電荷が移動する距離が比較的短い)、その結果、電極表面の有効な拡張は生じず、電極の環構造に基づいて一様でない電場が生じる。しかしながら、ある周波数、例えば周波数依存性材料が比較的高い電荷移動度を示す比較的低い周波数に変えると、前記材料が環状電極の拡張を発現させて、有効な電極構造が平面的となる。このような場合、こうして生じた電場は実質的に(基本的に)一様である。上述の実施態様では、固定電極にディスク状などの他の形状を利用してもよく、周波数依存性材料によって層を形成し、その層の上部又は下部のいずれかの近辺にあるいはそれを同一面内で取り囲むように配置された固定電極と共に形成していてもよい。
【0026】
前述の実施形態では、2009年12月23日に出願された同一出願人による米国仮出願61/289,995に記載されているように、固定パターン電極に他の形状を用いることができ、これは参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0027】
提案された解決方法の他の実施態様では、様々な光学装置は、2つのLC層の間に配置された中心層を備えている。中心層は、特定の構造配置の固定電極(例えば孔パターン電極)と周波数依存性材料とを備えており、各LC層で見られる電場を左右対称に形成することで勾配制御層として働く。液晶層それぞれのLC分子配向方向は異なっていてもよい。駆動信号が適用される電極は、それぞれ、各LC層と隣接し、中心層を避けて横に配置されている。電場形成は、駆動信号の周波数によって決まり、同一周波数依存層内での電荷移動度も決定する。低い電荷移動度に対応する周波数では、勾配制御層は、固定された中心層電極の形に応じて電場を形成する。しかし、高い電荷移動度に対応する周波数では、周波数依存層が有効な電極表面を形成し、勾配制御層は、電極と周波数依存層の両方に起因する、中心層の電極形状全体に準じて電場を形成する。
【0028】
本発明の別の実施態様では、光学装置は、特定の周波数で様々な電荷移動度を示す複数の周波数依存性材料を有している。これら材料を併せて特別な幾何学形状で配置すると、動的に調節可能な有効な電極構造が形成される場合がある。例えば、この2つの周波数依存性材料は、共通する層内に、一方の材料がレンズ様(レンズ状)の形状を呈してもう一方の材料で取り囲まれた状態に配置することができる。この共通周波数依存性材料層とLC層とが一緒に2つの平面電極の間に配置されている場合、駆動信号電圧の周波数を変え、それにより、有効な電極構造が周波数依存性材料で形成された形(例えば2つの前記材料間の境界線に沿って形成され得るようなもの)を受け入れるかどうかを変えることで、電場プロファイルを変化させることもできる。
【0029】
また、所望により光効率を更に高めるために、装置の光軸と垂直な表面を持つように別々の材料(全て周波数依存性である必要はない)を配置してもよく、同様に、非導電性材料を一緒に用いて、所望の有効な電極形状を構成してもよい。
【0030】
提案された解決方法の別の変更態様では、層間の勾配に沿って変化する周波数依存性の電荷移動度を有する周波数依存層を利用している。そのため、層の一部は、第1周波数に応じて層の別の部分よりも高い電荷移動度を示す。このように、装置に適用される駆動信号の周波数の調整によって、導体として働く勾配層の部分が変更(選択)される。したがって、勾配層の勾配形状を利用すると、駆動信号周波数を変更するにつれて変化する有効な電極形状を形成することができる。更には、この種の勾配層を、様々な固定電極構造(例えば、パターン電極)と組み合わせることで、より複雑な有効電極形状を製造することもできる。
【0031】
周波数依存性材料は、利用可能な多種多様の材料から成っていてよい。一実施態様では、前記材料は熱重合性導電性材料であり、また、別の実施態様では、前記材料は光重合性導電性材料である。その他の利用可能な材料としては、真空(あるいは、例えばゾルゲル)蒸着薄膜、高誘電率の液体、電解質ゲル、導電性イオン液体、導電性ポリマー、又は導電性ナノ粒子を有する材料が挙げられる。前記周波数依存性材料の重要な特徴は、周波数依存性の電荷移動度である。
【0032】
周波数依存性材料が熱又は光重合性導電性材料である場合、それは、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する重合性モノマー化合物と、UV−可視光若しくはNIR感応性又は感熱性の分子の組み合わせである反応開始剤と、これら混合物の誘電率を変化させる添加物であって、有機イオン性化合物及び無機イオン性化合物からなる群より選択されるものと、前記混合物の粘度を変化させる充填剤とを含んでいてよい。前記材料には更に、UV−可視光感応性接着剤、NIR感応性接着剤、及び熱反応開始剤を用いて重合した接着剤からなる群より選択される接着剤が含まれていてもよい。光学エラストマーを更に含んでいてもよい。
【0033】
周波数依存性材料が高誘電率の液体であれば、それとして、比較的低い周波数ではεが2.0〜180.0までの、周波数に依存して電荷を移動させることができる透明液状物質を挙げることができる。
【0034】
周波数依存性材料は、電解質ゲル物質である場合、高分子材料、イオン性組成物、及びイオン輸送体を含むことができる。
【0035】
周波数依存性材料が導電性イオン液体であれば、それとして、塩素酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、及び炭酸塩からなる群より選択されるイオン種を挙げることができる。
【0036】
提案された解決方法の様々な実施態様としては更に、信号周波数を変化できる駆動信号発生器が挙げられる。駆動信号発生器は、周波数を変更できるように単一周波数駆動信号を出力することも、異なる周波数の異なる個別の駆動信号要素の混合(結合)である駆動信号を出力することも、又は周波数成分を変更できるように幾つかの他の形態の駆動信号を出力することもできる。一実施態様では、駆動信号発生器は、曲線因子を変えることができるようにパルス幅変調駆動信号を発生させる。このような場合、曲線因子を調節することで、結合駆動信号の高周波数成分の量を変えることができる。別の実施態様では、駆動信号発生器は、基本モードで、又は第1周波数の信号が第2周波数の信号要素で変調されるモードで、振幅変調駆動信号を発生させる。更に別の実施態様では、駆動信号発生器は、所定の相対周波数と振幅とを有するいくつかの異なる個別の周波数信号を組み合わせた駆動信号を発生させる。適切な駆動信号を選択するには、特定用途の具体的な電極と周波数依存層の構成を考慮に入れる場合もある。
【0037】
提案された解決方法のある特定種の実施態様では、非平面形状の固定導電性電極を備えた電極構造(電極システム)を利用する。非平面形状の周波数依存性材料はまた、非平面固定電極と交互に用いても、又はこれと組み合わせて用いてもよい。本実施態様では構造体の構成は様々であり、レンズ様(レンズ状)のポリマー構造上にコーティングした湾曲した導電性材料層から構成される固定導電性電極を備えていてもよい。別の実施態様では、固定導電性電極は、平面開口ポリマー構造上にコーティングした、多層の平面な導電性材料層である。周波数依存性材料はまた、LC層と固定導電性電極との間に配置された平坦な材料層であってもよい。変更態様では、平面ポリマー構造は、対向する合わせ曲面を有する一対のレンズ様のポリマー構造から構成することができる。周波数依存性材料の湾曲層としては、整合する曲面同士を付着させる光学的に透明な接着剤層を挙げることもできる。
【0038】
提案された解決方法の更に別の実施態様では、様々な光学装置として、それ自体が周波数依存性の電荷移動度を有するLC層が挙げられる。本実施態様の一変更態様では、LC層自体が駆動周波数の変化につれて電荷移動度を変化させるので、外部の周波数依存性材料を必要としない。したがって、LC層と相互作用する電場の空間プロファイルは周波数依存性であり、その結果、LC層は、その光学特性が駆動信号の周波数成分を変えることで調整可能なものとなる可能性がある。本実施態様の一変更態様では、電極構造(アセンブリ)は空間的に一様でない電場を発生し、LC層に高い電荷移動度を付与する周波数が発生すると、電場が空間的に更に一様なものへと調節される。別の変更態様では、電極構造(システム)には、光学上透明な材料を含む孔パターン電極が電極の中心領域に備わっている。
【0039】
本明細書に記載の様々な原則や実施態様を更に調和及び適合させることで、様々な電場生成特徴を有する光学装置が作製できることが当業者には分かるであろう。様々な形状及び構成の電極、様々な種類、形状及び位置の周波数依存性材料、様々な駆動信号発生器、並びに本明細書に記載の他の変更態様を組み合わせて用いると、特別な特徴を有する光学装置が作製できる。前記装置は更に、周波数制御型、電圧制御型、又はこれら2つの組み合わせであってよい。
【0040】
例えば、低角のプレチルトアライメント層を有するLC層を利用してよく、また第1周波数は、均一な有効電極構造に適用してよい。この周波数では、その後電圧を、LC分子全てが均一な傾きで初期再配向を示すレベルまで上げてもよい。そのとき、電圧の周波数を変更することで、液晶の光学特性が変化する(例えば、レンズ構造を形成する)ように有効な電圧構造を調節して電場に不一様性を導入することができる。初期の一様な電場強度を液晶に適用してから電場不均一性を導入することで、LC層の回位を最小限にする(無くならせる)。駆動信号はまた、液晶モジュールを基底状態付近に留まらせないために適用してもよく、それによって光学(像)収差を軽減することもできる。別の例では、周波数制御を利用してLCレンズの屈折力を変更する場合もあるが、駆動信号の電圧は、前記レンズの性能を高めるために別々の屈折力で、あるレベルから別のレベルまで変化させてもよい。多数の他の同様の制御パラダイムも同様に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来技術の調整可能液晶(LC)レンズ構造体の概略図である。
【図2】孔パターン電極を有する、従来技術の調整可能LCレンズ構造体の概略図である。
【図3】2区画の上部電極を有する、従来技術の調整可能LCレンズ構造体の概略図である。
【図4】提案された解決方法にかかる、周波数依存性材料層とその上部付近に配置された孔パターン上部電極とを有する、調整可能LCレンズ構造体の概略図である。
【図5】提案された解決方法にかかる、周波数依存性材料層とその底部付近に配置された孔パターン上部電極とを有する、調整可能LCレンズ構造体の概略図である。
【図6】提案された解決方法にかかる、図4の構造において比較的高い周波数の駆動信号を利用した場合の等電位面を表すグラフである。
【図7】提案された解決方法にかかる、図4の構造において比較的低い周波数の駆動信号を利用した場合の等電位面を表すグラフである。
【図8】提案された解決方法にかかる、図5の構造において比較的高い周波数の駆動信号を利用した場合の等電位面を表すグラフである。
【図9】提案された解決方法にかかる、図5の構造において比較的低い周波数の駆動信号を利用した場合の等電位面を表すグラフである。
【図10A】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図10B】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図10C】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図10D】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図10E】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図11A】図4の構造における屈折力対RMS電圧についての実験データを表すグラフを示している。
【図11B】図4と同様の構造におけるRMS収差対RMS電圧についての実験データを表すグラフを示している。
【図12A】図4と同様の構造における屈折力対周波数についての実験データを表すグラフを示している。
【図12B】図4と同様の構造における屈折力対周波数についての実験データと、同じ周波数範囲での対応する収差の兆候と、を表すグラフを示している。
【図13A】孔パターン電極と周波数依存性材料とを有する勾配制御構造部が2つのLCセル間に挟まれている、提案された解決方法にかかる構造体の概略図である。
【図13B】光に直交する2つの偏光を制御するためのLCセル構造の概略図である。
【図13C】図13BのようなLCセル構造であり、可変電極構造がLCセル両方を制御する単一の一体化されたものの概略図である。
【図13D】図13CのようなLCセル構造であり、可変電極構造が交差する方向を向いた2つのセルの間に配置されたものの概略図である。
【図14】パルス幅変調された信号のパラメータを表すグラフである。
【図15】パルス幅変調された信号の周波数領域特性を表すグラフである。
【図16】3つの異なる周波数で駆動したLCレンズの伝達関数(屈折力対RMS電圧)を表すグラフである。
【図17】周波数調整可能LCレンズにおける、3つの異なる制御電圧に関する伝達関数(屈折力対周波数)を概略的に表すグラフである。
【図18】周波数調整可能LCレンズを有するカメラシステムの概略図である。
【図19】一様な平面状の上面電極と、上面電極の下に配置された区画された四半電極と、液晶セルの底部に配置された底部一様平面状電極と、を用いる従来技術の液晶レンズを示す。
【図20A】周波数依存性材料が区画された孔パターン電極上にある実施形態にかかる、区画された上面電極の差し込み上面図とともに、可変液晶レンズの側断面図を示している。
【図20B】周波数依存性材料が区画された孔パターン電極の開口内にある実施形態にかかる、区画された上面電極の差し込み上面図とともに、可変液晶レンズの側断面図を示している。
【図20C】周波数依存性材料が区画された孔パターン電極下にある実施形態にかかる、区画された上面電極の差し込み上面図とともに、可変液晶レンズの側断面図を示している
【図21】光学ビーム形成モードを示す概略図を示している。
【図22】全ての区画された電極部分に適用された駆動信号の周波数に対する屈折力を表す実験結果を示している。
【図23】角度に関する光軸再配向を表す実験結果を示している。
【図24A】区画された電極を用いて光軸をシフトする様々な状態の一つにおける、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示している。
【図24B】区画された電極を用いて光軸をシフトする様々な状態の一つにおける、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示している。
【図24C】区画された電極を用いて光軸をシフトする様々な状態の一つにおける、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示している。
【図24D】区画された電極を用いて光軸をシフトする様々な状態の一つにおける、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示している。
【図25】図21に示した波面に対応する、LC層における屈折率分布を示す。
【図26】非点収差エラーを補填するように構成された部分電極TLCレンズを示している。
【図27】コマ収差エラーを補填するように構成された部分電極TLCレンズを示している。
【図28A】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図28B】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図28C】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図28D】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図28E】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図29A】上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、実施形態にかかる上面孔パターン電極の下には追加の横電極が配置されている。
【図29B】上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、実施形態にかかる上面孔パターン電極の外周の外方において追加の横電極が配置されている。
【図30】上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、実施形態にかかる上面孔パターン電極の下には追加の抵抗熱源が配置されている。
【図31】上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、実施形態にかかる液晶セルの基板の間でそれの隅に追加の圧電素子が配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
提案された解決方法は、周波数依存性材料を用いて周波数調整によって与えられた電場の空間プロファイルを調節する、調整可能液晶(LC)レンズを対象としている。したがって、レンズの調整は周波数で制御することができる。提案された解決方法にかかる装置は、調整可能焦点調節、回折、ステアリング等に利用可能である。提案された解決方法にかかる装置はまた、固定型のLC光学装置を制御するのにも利用可能である。
【0043】
図4は、周波数依存特性を有する材料の層506を用いた調整可能LCレンズの概略図を表している。この材料は例えば高誘電率の材料であっても弱導電性材料であってもよい。以降、簡潔にするためにこの材料を「周波数依存性材料」と呼ぶ。前記材料は機能上、その中で限定的な電荷移動度を実現する特性を有しており、また、その電荷移動度は、装置に適用される電気信号の周波数によって決まる。そのため、ある特定の周波数依存性材料では、例えば、比較的低い周波数の電気信号が大きな程度の電荷移動度(侵入/移動距離)を材料内で生じさせ、一方、比較的高い周波数が比較的小さな程度の電荷移動度を生じさせる。与えられた駆動信号に応じて電場を発生させる電極構造(対)と併せて周波数依存性材料を利用すると、電荷移動度によって、周波数依存性材料への電荷の侵入深さが決定される。その結果、電場形成の情況において、「良い」導電層のように機能する材料の部分と、「不良な」導体のように機能する部分と、が決定される。したがって、電荷移動度が大きい場合、前記周波数依存性材料の大部分は、導体と考えることができ、隣接する電極が拡大しているようにふるまう。その結果、提案された解決方法ではこの周波数依存特性は、動的に設定可能な有効な電極表面を形成するのに利用され、当該有効な電極表面は、駆動信号の周波数を変えることで変化しうる。有効な電極プロファイルをこの方法で変更すると、前記電極構造における2つの電極間の電場のプロファイル(空間変調)に対応する変化がもたらされる。LC層を電極間に配置した場合、動的に変更可能な電場プロファイルをこのようにして利用することで、LC層の光学特性を動的に変更させることができる。
【0044】
更に図4に関して、液晶セル(LCC)520はLC材料521の層から構成されており、これは、ラビング処理したポリイミド等の材料で形成された「配向」コーティング522の間に挟まれている。LCC520の下面は、比較的一様な透明導電層(すなわち、電極)523を備えており、当該透明電極層は、酸化インジウムスズ(ITO)等の好適な材料で形成されている。前記下面には基板524(例えばガラス)が備えられており、前記透明導電層を支持している。必要に応じて、前記LCCの上面で、上方の配向コーティング522の上に、中間(緩衝)層525を設けてもよい。
【0045】
提案された解決方法にしたがって、調整可能LCレンズにおける勾配制御構造502は、隠れ電極を用い、周波数調整によって電場の空間変調を生じさせる。
【0046】
勾配制御構造502は、リング状の固定された孔パターン電極リング504からなり、これは、例えば透明である。図4にて、電極504は、周波数依存性材料506の層の上部に位置しており、図5の(積層構造)設備では、周波数依存性材料506の底に電極504が位置している。層506は、電極構造の一部であり、この電極構造を、本明細書では隠れ電極と呼ぶ場合もある。追加のカバー基板513(例えばガラス)が、勾配制御構造502の上部にて、透明な中央電極504と周波数依存層506との上に設けられていてもよい。
【0047】
前述のように、周波数依存層506は、適用されたAC励起駆動信号によって生じる電荷の侵入深さが周波数毎に異なる、複素誘電性材料を含む。周波数毎に電荷の侵入深さが異なると、有効な電極表面を拡大(移動)させることにより、電極構造を再構成することができる。言い換えれば、ある周波数での電荷の侵入深さによって、有効な、すなわち「実質的な」電極表面を形成することができる。有効な電極表面は、周波数によって大きさが異なる(前記の有効な電極表面に対して異なる位置にある)。電極を用いてLC層に与える電場を発生させるために、様々な有効な電極表面が用いられ、LC層に作用する電場を変化させることができる。これにより、それの光学特性が変化する。すなわち、例えば、電極に適用される周波数によってLCセルの光学特性は制御できるので、調整可能LCレンズは周波数調整可能である。更に、周波数調整は電圧の振幅に依存していなくてもよく、その場合、前記調整は、様々な周波数の励起駆動信号に対して実質的に(本質的に)同一のRMS電圧を用いて達成することができる。
【0048】
更に図4に関して、図示されたレンズは、実現可能な様々な状態にて機能する。周波数依存層506内にて大きな程度の電荷移動を発現させる制御駆動信号周波数では、電極504と層506との結合物が、(共に)一様な「上部」電極と考えられる。すなわち、層506への電荷侵入の程度が大きいと、電極504が「拡大」し、有効電極が、電極504における開口全体にわたる構成において、層506の全体(全長)にまで広がっている。下部電極構造523もまた平坦で一様であることから、LC層全体の電場も実質的に(ほぼ)一様であり、LC分子もまた、一様且つ配向不良も生じずに再配向され、さもなければ、孔パターン電極にかける電圧振幅を変化させることにより再配向されるLC構造に影響しうる。対照的に、周波数が電極に適用され、層506内の電荷移動が非常に制限される場合、有効な上部電極形状は、ほぼ電極504のみの形状であり、その結果、LC層全域で生じる電場は一様でなくなる(空間変調がなされる)。この例では、一様でない電場は、孔パターン電極504の周囲に密集して、LC層521の光学特性を予め定められた程度変更する。周波数制御は、このように、所望の光学的な調整を行うために用いることができる。
【0049】
本来の電圧振幅調整ではなく周波数調整によって、電力消費量の目的か又は液晶の変調の目的のために電圧範囲をより効率良く利用することができる。また周波数制御を利用することで、有効な電極形状と上述のように電極によって発生される電場の形状とを動的に制御する能力を生じさせることもできる。
【0050】
図6及び7は、図4の層構造における等電位面を表している。図6に示すように、中/高周波数の駆動信号(この場合は20Vで3kHz)を用いると、周波数依存層内で中程度の電荷侵入(移動)が生じ、それによって、穏やかな勾配として図に示された特定の電場が発生する。使用可能な周波数範囲は、用いられる周波数依存性材料のパラメータに依存する。図7に示すように、比較的低い周波数の駆動信号(この場合は20Vで100Hz)を用いると、周波数依存層内でより多くの電荷移動が生じる。これによって電場プロファイルが平坦化されて、LC層にて対応する一様なディレクタ再配向が生じて、配向欠陥、いわゆる回位を容易に無くすことができる。この種の電場プロファイルはまた低いRMS電圧でレンズを「消去」することもでき、3つ目の電極を必要としないか、或いはホスト装置の性能を低下させるか又は電圧限界に触れる傾向がある極低い(例えば0ボルト)電圧振幅若しくは極高い(例えば100ボルト)電圧に駆動信号電圧を変化させる必要もない。この平坦な準静的なポテンシャル面は、レンズの径全体における電場に対応している。ここではまた、「低」周波数の範囲は、用いられる周波数依存性材料のパラメータに依存する。
【0051】
図8及び図9は、図5の構造における等電位面を表している。図8は、25Vで周波数700Hzの駆動信号が与えられた、図5の積層構造における電場プロファイルを表している。この比較的高い周波数駆動信号は、周波数依存性材料内に中程度の電荷移動を発生させ、その結果、図に示すように、穏やかに変化し且つ空間的に変化する電場プロファイルがもたらされる。一方、低周波数の駆動信号(例えば25Vで100Hz)は、図9に示すように、(比較的)相対的に平坦な空間分布の電場を生じさせる。
【0052】
図10A〜図10Eは、図4に示す(セルの)積層構造における調整可能LCレンズ(TLCL)の効果を実験的に示したものを表している。図示した画像を得るために、単一の液晶層を備えた調整可能レンズは、2枚の交差偏光板の間に(45°で)配置されている。図10Aは、制御駆動信号で稼働する前のLC配列の一様なプロファイルを表している。図10Bは、比較的低い駆動周波数の駆動信号を電極に印加して稼働したときの、一様なLC分子配向プロファイルを表している。この低周波数駆動で生じた一様な電場プロファイルは、レンズ効果を有しない、対応する一様なLC分子配向プロファイルを含む。駆動信号の電圧振幅を0V(図10A)から35V(図10B)まで上げることによって、液晶分子の配向は変化するが、配向勾配は生じず、そのためレンズ効果は生じない。図10C〜図10Eは、周波数依存性材料層(誘電体)の電荷移動度が中程度の場合の、駆動信号周波数でのレンズの動作を表している。つまり、10VRMSで1.1MHzでは(図10C)、多数の干渉縞は、勾配とそれに対応するレンズ効果の存在を示している。電圧を35VRMSまで上げると(図10D)、勾配が部分的に減少し、それに応じてレンズの屈折力も部分的に減少している(干渉縞の減少)。同様の屈折力の減少効果は、図10Eに示すように、電圧は同じだが周波数を、周波数依存層の電荷移動度がより高い点まで周波数を下げた(図10Bに示す状態に近づけた)場合に得られることがある。
【0053】
図11A及び11Bは、振幅変調状態(一定の周波数)にて稼働された、図4に示すセル構造における、RMS電圧に対する振幅変調領域での屈折力とRMS収差それぞれについての実験データ(Shack−Hartmanデータ)を示している。この実施例では、駆動電圧1.1MHzが図4に記載された構造を有するLCレンズに印加され、駆動信号電圧の大きさが変化している。図11Aからは屈折力の穏やかな変化が明白に認められるが、図11Bには、周波数を更に調節しなくても単一の電圧振幅制御を用いることで得られた、優れた(極めて低い)収差レベルが表されている。図に示すように、9ジオプタの屈折力でも、収差は0.18マイクロメートル未満である。しかし、電圧を挙げるとレンズの「消去」効果がなくなることに注意しなければならない。V>70VRMSでも約1.5ジオプタの「残留屈折力」が存在しており、非常に注目すべき周波数制御状態になっている。
【0054】
提案された解決方法の様々な実施態様を表す図4、図5等の図面は、概略図であって、正確な縮尺ではないことが当業者には分かるであろう。つまり、周波数依存層が他の層に比べて比較的厚く示されているが、実際には非常に薄い可能性があり、周波数依存性材料の位置に基づいて有効な電極プロファイルを動的に形成するために利用され得る。また、電極の「拡大」は、レンズの光軸に対して並行な方向であっても、垂直な方向であっても、その両方であってもよい。そのため、例えば図5の構造では、孔パターン電極504と平坦な電極層523との間にて駆動信号は、周波数依存層506内の電荷移動がほとんど無い場合、LC層521をまたがる、一様でない電場を生じさせる。この一様でない電場は、例えば、LC層に所望のレンズプロファイルをもたらす可能性がある。一方で、周波数依存層内に有意な程度の電荷移動度を発現する周波数の駆動信号が印加されると、有効な電極構造が孔パターン電極の中央の「孔」領域にまで実質的に広がるので、電極構造全体にわたって平坦な有効な電極が形成される。孔パターン電極のこの「水平方向の」拡張は、前記構造における2つの一様な電極によって電場プロファイルを一様なものへ変化させる。この一様な電場は、液晶分子の均質な再配向に影響を及ぼし、その結果、レンズ効果が消去される。
【0055】
前述の比較的高い周波数から比較的低い周波数までの周波数範囲では、駆動信号の周波数は、徐々に変化する光学パラメータのLC層が生じるように調節されうる。この例は、駆動電圧の周波数を変えることによって屈折力を最小値から最大値まで変化できるレンズを作製することである。従来の調整可能LCレンズは、一定周波数の駆動信号を利用して、電圧レベルを調節してLC層の光学特性を変化させる。このように、平坦な電極と孔パターン電極(図4と図5のように)の間の電圧振幅を変化させればレンズの屈折力は変えることができるが、従来のシステムのものと同様の固定電極構造では周波数調整ができず、複雑な電場プロファイルも到底得られない。
【0056】
パターン電極を有する従来のシステムのもう一つの課題は、「回位」の影響である。一般的なLCレンズでは、LC分子にはいずれも共通のプレチルト角が付与されているため、それらは0ボルトでは整列している。パターン電極を有するレンズの電圧調整を行うと、電圧上昇によって、一様でない電気力線が形成されて、同じ電場強度を受ける他のLC分子とは異なる配置転換を生じるLC分子が現れる。この回位は、レンズに収差を生じさせ、この回位は、レンズを消去する非常に高い電圧の駆動信号で全分子を整列させてから、電圧を所望の屈折率をもたらすのに適した範囲まで下げることによって取り除くこともできる。一方、提案された解決方法にしたがって、図5の実施態様等では、最初に比較的低周波数の駆動信号を適用することによって、有効で一様な電極プロファイルとそれに応じた電場プロファイルが生じる。電圧振幅を閾値電圧より高くすることで、LC分子は、共通した角度方向に再配向している(この状態では、屈折力はゼロである)。そして、周波数依存性材料の電荷移動度が減少させるために、駆動信号の周波数を増大させてもよい。周波数が増大すると、一様でないプロファイルの電場が形成され、所望のレンズ効果が生じる。全て閾値よりも高い低周波数の駆動信号によってLC分子は予め整列させられたため、レンズプロファイルが形成しても回位は続かない(生じない)。
【0057】
図12Aは、提案された解決方法のレンズ構造によって周波数調整が達成できる仕方の例を表すグラフである。図示した曲線は上述のように周波数0にまで及んでいるが、レンズに供給する初期駆動信号は100Hzのような低いAC周波数であってよい。この周波数では屈折力は低い。なぜなら、LC分子の全てが本来は統一して整列されているためである。駆動信号の電圧を変えずに周波数を増加することもでき、また図に示すように、LC層にレンズ特性を一様でない電場が生成するにつれて、屈折率は上昇する。この実施例では、屈折率は、約25kHzで最大値に達した後、また低下し始める。このように、レンズを電圧調整する代わりに又は電圧調整することに加えて、周波数調整がどの程度利用できるかが分かる。図12Bは、図12Aと同様であるが、更に高い周波数範囲で周波数調整可能な別のレンズ構造を表している。しかし、図12Bは、活性な屈折力範囲を越えて現れた、非常に低いRMS収差レベルも示している。
【0058】
空間的に一様な低角のプレチルトアライメント層を利用した屈折率分布型液晶レンズ(GRIN)の場合、液晶材料は電場の方向に基底状態から所望の最大再配向まで再配向する。プレチルト角が電場に対してほぼ90度のとき、LC分子を再配向させる電場の能力が最も弱い。そのため、ある種の調整可能GRIN光学装置では、液晶の配向に調整可能な範囲を決めて、液晶を再配向させる能力が弱い電場では液晶を配向させないことが有利な場合もある。これは、一様な電場を適用することで完了し、その結果、基底状態ではない液晶の再配向が生じて、新たな感応性の高い「基底」状態又は基準状態を発現することで、変調された電場を一様な電場の上部に適用してレンズ又は他の光学装置を形成することができる。あるいは、これは、電場(最低屈折力)と基状態方向での一様な電場設定から外れた空間変調配向(高い屈折率)とを用いたアライメントに近い配向で生じる屈折率を変化させることで達成することができる。これは、電場と液晶の基底状態との間の弱い相互作用によって収差を生じさせない。したがって、提案された解決方法は、周波数依存性材料を利用してこのような好適な電場を形成できると考えられる。
【0059】
完全なTLCL
図13Aは、隠れ電極を利用して周波数調整によって電場の空間変調をもたらす、調整可能LCレンズの更なる変更態様を表している。図13Aにおいて、電場勾配を制御する構造部は、固定(好ましくは低い)電気抵抗を有する孔パターン周辺の電極1304で構成されているが、この電極の真ん中の(同一平面上の)中央ディスク状領域及びその平面を囲む領域は、周波数依存性材料1306で満たされている。この勾配制御構造(GCS)1302は、直交面内で、ディレクタ(LC分子の長軸の平均配向)を有するLCセル1320a、1320bの間に挟まれている。例えば、ディレクタの1つがXZ面にあり、第2のディレクタがYZ面にあり、前記サンドイッチ部の法線がZ軸であってよい。(この実施態様では、LCセルの従来利用される「内部」電極の一方を取り除くと、LC層内に電場勾配を形成することができる。)GCS1302の位置を好都合に利用して、GCS用の複数の機能、例えば電極とヒーターと(周波数依存性材料の)シート抵抗又は温度センサ、光学素子形状、ビームのステアリング、パン/傾き、光学エラー補正、画像安定化処理等とを組み合わせてもよい。ヒーターと温度センサを一緒に用いると、装置の温度を最適レベルに維持するのに役立つ場合がある。電極1304を更にパターニングすることで、電場プロファイルの形成時に重要な役割を果たしかつ経時的に徐々に部分変化し得る周波数依存性材料1306の電気特性、例えばシート抵抗を測定することも可能である。これに関連して、GCSを特殊合金(例えばMo/Al)で別の形に作製することでこれら複数の機能が達成される可能性もある。層構造(アセンブリ)の中央に電場の空間変調をもたらす層を設けると、上述のように変調層の下にある1層又は複数の層で電場に対し均一に影響を及ぼすという利点がある。電極構造にて中間電極を設けることで電極間の距離は基本的に半分になる。また、2つの電極セルを同時に駆動しなければならないにもかかわらず、駆動信号や部品はほとんど変わらない。
【0060】
例えば、ウエハ段階の製造方法が、図13Aに示した完全なTLCL層構造を形成する、層ごとの蒸着工程を含んでいることは、好ましい。同様に、ウエハ段階の製造方法が、分離している半分のTLCL(単一の極性である)を形成する、層ごとの蒸着工程を含んでおり、二つの半分のものの一つが、他の上面に結合される前に、裏返され90度回転させられることは、好ましい。後者の場合、パターン電極1302、1304は、半分のもののうちの一つに蒸着(が実行)されてもよく、半分の層は蒸着(二度の蒸着を)されてもよく、半分の層は、結合後に層1302/1304を形成する。二度の蒸着を実行する際にて、驚くべきことに、稼働時に、弱く結合した導電性を有する半分の層が結合し、それらの電気的な特性が一般的に現れることが発見された。前記結合は、少なくともある程度は、エバネッセント場の結合の結果であると考えられる。製造方法をうまく改善する、この驚くべき結合および特性の発現によって、利点が得られる。例えば、弱導電層の導電性の、通常の浸透領域のばらつきによって、製造収率が低くなる。しかしながら、二度の蒸着を実行すると、裏返され回転させられ結合されるときに、所望の範囲内に平均的な電気特性を弱導電層に与えることができる半分のTLCLの対(混合物および一方)を選択できる。このような事を行うことにより、高い製造収率を達成できる。
【0061】
更に、図5の半分のTLCLを用いて実行する際、回転させたり裏返したり結合したりして完全なTLCLを形成すると、上部及び下部孔パターン電極に挟まれた一体の弱導電層が形成される。驚くべきことに、稼働中に互いに離れた孔パターン電極が(一体の弱導電層を介して)対になり、互いに電気的に一つのものとして現れることが、わかった。したがって、隣接する弱導電層および電極が、単一の弱導電層/電極構造として形成され且つ稼働することが、わかった。
【0062】
要約すると、様々な電極構造はTLCL層構造にて用いることができ、各々は利点および欠点を有する。欠点の中には、特定の適用形態ではたいして重大ではないものがある。図13Bおよび図13Cには、LCセルを有する、提案された解決方法にかかる新規な電極構造を一体化する2つのありうる構成がそれぞれ示されており、光のs偏光とp偏光とを操作するためのものである。図13Bの構成において、2つの液晶セル(LCCxおよびLCCy)は、交差する方向に沿って配置されており、直交する光の偏光を操作している。また、CVES(制御電極構造)は、LCC層の一方の側に位置している。この例では、CVESの各々は、LCC層のうちの互いに異なるものを制御するのに用いられる。2つの弱導電層を用いるとき、導電性の組み合わせに関して注意する必要がある場合があり、2つの弱導電層を用いることは、ある特定の適用形態にて求められうる。図13Cに示す代替の構成は同様であるが、1つの電極構造のみを用いており、2つの交差する方向に配置されたLCCを制御している。この場合、LCCyにおける上部電極構造および下部平坦電極による電場を制御できるように、上側のLCCxの下部平坦電極は配置されている。図13Dに示す構成を用いることも可能であり、CVES層は、最終装置の中央に(2つの交差する方向に配置されたLCセルの間にて)適合されて配置されている。
【0063】
ここで述べた周波数依存性材料のいずれかは、上述の様々なLCレンズにて用いられうる。この物質は、駆動周波数の変化によって変化しうる(弱い導電性を有する)複素誘電率を有する。この物質の特定の特性は、問題となっている特定のレンズ構造にしたがって選択されうる。クレームされた発明の範囲から外れることなく、様々な材料の組成、様々なLC層、様々な電極、様々な幾何学的な形状等を、上述のLCレンズを製造するのに用いることができることには、注目するべきである。様々な光学装置は、ここで述べたLCレンズを用いて改良されうることにも、読者は評価すべきである。
【0064】
例
調整可能なLC光学装置は、積層部品を用いることにより形成され、優先的に、並行して(「ウエハ段階の製造」と称され、多くのユニットが同時に製造される)最終製品が単体化することにより得られ、追加的に、2つの(両方の)直交する偏光に焦点を当てるべく交差する方向にて駆動軸(ディレクタ)を有するレンズを結合することは、評価されうる。
【0065】
非限定例として、本発明の様々な集束型平面反射レンズの実施態様の寸法について述べる。寸法は、構造の選択と材料の選択に応じて大幅に変化し得ることが考えられる。カバー基板は、厚さ50〜100ミクロンのガラスから製造され得る。孔パターン電極はアルミニウム等の不透明な金属で製造されても、又は透明な酸化インジウムスズ(ITO)で製造されてもよい。電極の厚さは10〜50nmまでであってよい。周波数依存性材料は、厚さ約10nmの酸化チタンから製造され得る。酸化チタンは、制御信号周波数によって変化する半導体特性を有している。
【0066】
周波数依存性の誘電(又は複素誘電)材料は、以降に記載の様々な材料から構成することができる。このような材料の必須特性は、弱導電性を示し得ることであり、それによって制御信号の周波数に応じて変化する電荷移動度がもたらされる。これによって、光学特性又は屈折力を制御するために電場の形状を周波数調整したり、更にはLC光学装置のオンオフ操作を周波数調整したりすることもできる。
【0067】
上部及び下部のアライメント層は、約20〜40nm厚のポリイミド層であってよく、これらをラビング処理することで、低角でプレチルトした液晶基底状態をアライメントさせる表面が得られる。液晶層は、例えば5〜30ミクロン厚であってよい。空間変調式の屈折率分布型レンズを含むこのような単一の液晶層は、光の単一直線偏光を集光する。図13Aの実施態様では、孔パターン電極1304と周波数依存性材料1306が上部基板に配置されており、この電極は2つのLC層又はセル1320a、1320b間で共有されている。
【0068】
この方法で2層〜4層のTLCLをアセンブリすると、直径約1〜3mm及び厚さ約460ミクロンのレンズが現れると考えられる。TLCLの屈折力は約8〜16ジオプタになることがあり、これは大抵のカメラ用途に適している。TLCLは、1層だと可変集束レンズを提供し、2層だと、ズームレンズを提供することができる。
【0069】
上述の実施形態において、TLCLの構造は、本来的には全て平坦であり、すなわち、周波数依存性層、電極層(ITO等)、およびLC層等は、平坦である。電極層のパターニングおよび周波数依存性層の複素インピーダンスのいずれかあるいは両方によって、電場成型がなされる。しかしながら、他の構成を用いることによって、電場成型を行うこともできる。
【0070】
周波数依存性材料
上述のように、提案された解決方法は、本明細書に記載のLCレンズ等の調整可能光学装置での利用に適した、周波数依存性材料の様々な化学組成物を提供する。このような材料は、ビームステアリング装置やシャッター等のような他の周波数依存性光学用途にも利用できることが当業者には分かるであろう。周波数依存性材料の均質又は不均質層をレンズ、ビームステアリング装置、及び/又はシャッター構造に組み込むことで、周波数調整による電場の空間変調がもたらされる可能性がある。つまり、調整を周波数で制御することができる。このような装置は、調整可能焦点調節、回折、ステアリングなどに利用できる。
【0071】
前述の様々なLCレンズ構造において、周波数依存層は、複素誘電体の誘電率を有する材料から作製され、前記材料は、前記システムの電極に適用される駆動周波数に依存性(弱導電性を包含するもの)を示す。非限定的な実施例によれば、この材料は、熱又は光重合可能な導電性材料であってよく、その組成には、次の要素を包含することができる。
(i)重合性モノマー(直鎖又は環状)化合物、
(ii)反応開始剤、
(iii)最終組成物の誘電率又は導電性を変化させる添加物、
(iv)重合体のガラス表面への接着力を向上させる接着剤(接着剤は、表面処理剤として用いて又は前記溶液に直接組み込むことで接着力を向上させることができる)、及び
(v)前記混合物の粘度を変化させる充填剤。
【0072】
ある実施例では、90%(重量)のイソデシルアクリレート(SR256)を0.3%のLi+CLO4−(重量%)と混合する。そして3%の反応開始剤2−ヒドロキシル2−メチル1,1−フェニルプロパノン(ダロキュア(Darocure)1173)を加えて、混合物を室温で慎重に撹拌して、均質な透明溶液を生成する。次に、10%のECA(2−エチルシアノアクリレート)(モノマー類の全質量に対する重量%)を加えて、最終溶液を室温及び暗状態で15分間慎重に撹拌した。この混合物は、材料をUV光源によって強度15mV/cm2において3分間露光することで重合可能である。
【0073】
別の実施例では、組成物の第1液を調製するために、35(重量)%の光学接着剤OA9352HT2(HT)を65(重量)%の(2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレートモノマー)と混合し、この混合物を室温で慎重に撹拌することで均質な透明溶液を生成する。次に、10%の4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロホスフェート(モノマー類の全質量に対する重量%)を加えて、最終溶液を室温及び暗状態で15分間慎重に撹拌する。
【0074】
組成物の第2液は、低ε又は導電性を有するものであって、55重量%のイソデシルアクリレート(SR395)と光学接着剤(45重量%、AT6001)とを混合したものである。この溶液を室温及び暗状態で15分間慎重に撹拌する。この混合物は、材料をUV光源によって強度15mV/cm2において3分間露光することで重合可能である。必要に応じて、シリコーン系由来の光学エラストマーを前記熱重合性又は光重合性の導電性材料に含有させ、それを前記組成物の低ε部分として利用してもよい。この材料は、熱硬化性化合物に分類することができる(そして、1液型又は2液型シリコーンエラストマーでもあり得る)。
【0075】
様々な材料組成物、様々なLC層、様々な電極、様々なディレクタアライメント、様々な幾何学形状等を用いて同様の光学装置を製造できることにも留意すべきである。すなわち、本明細書に開示した材料と物理的構造物との様々な組み合わせは特定の用途に利用され得るが、光学装置の周波数調整に利用できる周波数依存性材料の使用は、これら各実施態様に共通している。
【0076】
複素誘電体の誘電率を有する材料の多種多様な化学組成物は、前述の周波数調整可能レンズ、ビームステアリング装置、及び/又はシャッター構造での利用に好適な場合があることが判明しており、前記材料は、電極に適用される駆動周波数を加減することで(弱導電性を含む)変更が可能である。
【0077】
提案された解決方法のある実施態様によれば、重合性モノマー化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有し、また虚数部を含む複素誘電率(導電率と呼ぶ)も有しており、そして反応開始剤は、UV−可視光若しくはNIR感応性又は感熱性の分子の組み合わせである。
【0078】
特に、反応開始剤化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩混合物、ヘキサフルオロリン酸塩、及び当業者に既知の任意の他の好適な反応開始剤を挙げることができる。好ましい反応開始剤化合物は、4−メチルフェニル[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロホスフェートである。
【0079】
熱重合性又は光重合性の導電性材料の誘電率を変化させる添加物は、有機イオン性化合物(例えば、ヨードニウム(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロホスフェート又はトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩であって、プロピレンカーボネートと混合したもの)、無機イオン性化合物(例えば、Li+ClO4−、K+ClO4−等)、イオン性有機金属化合物、又はこれらの任意の混合物、及び当業者に既知の任意の他の好適な添加物であってよい。
【0080】
接着剤は、UV−可視光若しくはNIR感応性であるか、又は熱反応開始剤を用いて重合される接着剤であり、表面処理剤として用いて又は前記溶液に直接組み込むことで接着力を向上させることができる。前記実施例では、接着剤は光学接着剤OA9352HT2(HT)であるが、他の好適な接着剤も当業者には既知である。
【0081】
前記実施例で説明したように、光学エラストマーは、光学接着剤(AT6001)と混合したイソデシルアクリレート(SR395)、及び当業者に既知の任意の他の好適な光学エラストマー類からなる群より選択されてよい。
【0082】
提案された解決方法の別の実施態様によれば、周波数依存性材料は、高誘電率の液体であって、電荷移動度を生じさせることができるε値2.0〜180.0までのあらゆる透明な液状物質から選択される。好ましくは、高誘電率液体のε値は30.0〜150.0である。更に好ましくは、高誘電率液体のε値は60.0〜120.0である。液体は、純粋なものであっても、アルキレンカーボネート系混合物、例えばプロピレンカーボネート(PC)又はグリセリンカーボネート(GC)(それぞれεが67と111であってアルキル基、置換アルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、置換アリール基、及びアリールカルボニル基を有するもの)であってもよい。更に、水、グリセロール、及び水と有機若しくは無機化合物(例えば、グリセロール、アルカリ塩、又はアルカリ希土類塩)との混合物の利用も考えられる。ある特別な実施例は、7%の蒸留水と93%のグリセロールとの混合物である。この溶液は、室温で15分間撹拌する。
【0083】
提案された解決方法の別の実施態様によれば、周波数依存性材料は電解質ゲルであって、高分子材料(マトリクスとして使用されるもの)、イオン性組成物、及びイオン輸送体が挙げられる。
【0084】
一般に、イオン性組成物やイオン輸送体材料と混合できるあらゆる市販ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、エポキシ材料、ポリウレタン、ポリカーボネート、及びポリフェノール(polyphenylic)材料)をポリマーマトリクスとして利用することが可能である。アニオン種及びカチオン種を有するイオン性組成物は、溶解性アルカリ塩又は希アルカリ塩(例えば、Li+、K+等)、有機化合物又は有機金属化合物からなる群より選択することができる。
【0085】
イオン輸送体材料は、プロピレンカーボネート(PC)若しくはエチレンカーボネート(EC)等の純粋な液体であっても、2種以上の液体の混合物であっても、或いはエーテル基又はフェノキシ基等の極性基を有するモノマーであってもよい。この極性基は、側鎖であっても、ポリマー主鎖に組み込まれていてもよい。例えば、(2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレートモノマー)中のエーテル基は、長い側鎖であり、イオン輸送体の役割を果たす。電解質ゲルの例は、10重量%のPMMAを80%プロピレンカーボネート(PC)に溶解したものであってよい。この溶液を室温で一晩撹拌した後、この溶液に10重量%の量のLi+ClO4−を加えて室温で撹拌する。最終的にゲル様の材料を、調整可能LCレンズの高誘電率層部分として利用する。
【0086】
提案された解決方法の更なる実施態様によれば、周波数依存性材料は、導電性のイオン性液体であってよい。この材料は、塩素酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩及び炭酸塩のように、イオン種を有する様々な有機、無機又は有機金属化合物に分類される。このような材料の具体的な非限定例としては、(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)及び(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)が挙げられる。
【0087】
周波数依存性材料のまた別の例は導電性ポリマーである。共役ポリマーの最も重要な特徴は、導電体として働くその能力である。これら材料は、従来のポリマー(例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン)又はクレビオス(Clevios)製のPEDOTポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びPEDTから、低バンドギャップで本質的に導電性のポリマー類のように特殊な導電性を有する新規ポリマーにまで及ぶ。
【0088】
ナノ粒子環境では、材料を水、有機溶媒、モノマーに分散することがある。例えば、ATO((SnO2)0.9(Sb2O5)0.1)は水又はポリエチレングリコールジアクリレートに分散され、又は粉末形態で使用されるナノ粒子はスパッタ法で基板に薄層としてコーティングされている。あるいは、炭素ナノチューブ(CNT類)は円筒形ナノ構造の炭素同素体である。この材料は、水、又はモノマー等の有機材料中に分散されたナノ粒子として用いることができる。ナノ粒子は、スピンコーティング法等の様々な方法でガラス表面に堆積することができる。
【0089】
周波数依存層を調製するもう一つの可能性は、金属酸化物をガラス基板表面上の薄膜として堆積することに基づいている。この場合、金属化合物をガラス表面に堆積させてから、酸化プロセスで処理する。この方法では、電子ビーム法、スパッタ法、又は熱蒸着法のために金属ターゲットが使用される。例えば、電子ビーム法で作製されたSnO2、Ti3O5、ZnS、ZnO2等の金属酸化物は、周波数依存性部として利用することができる。
【0090】
導電性ガラスを、調整可能LCレンズの周波数依存性部として利用することもある。この場合、導電性材料は、ガラス(バルク)にドープして薄膜蒸着法(例えば、電子ビーム法、スパッタ法、又はゾルゲル法等)でのターゲットとして利用することができる。例としては、ガラス中に直接ドープして薄膜蒸着法での導電性ガラスターゲットとして利用される、モリブデン、銀、又はこれらの混合物が挙げられる。Ti3O5(酸化チタン)層は約10nm厚とすることができ、一方、イオン導電性を多少もたらすポリマーも十分に機能し得るが、その厚さは0.1〜30ミクロンまでの範囲である。
【0091】
周波数依存性材料を含む「隠れた、また、周波数制御された」電極を用いて、電場の空間変調を生じさせることにより、光学的に透明な物質の選択の幅を大きく広げることができる。このようなLCレンズの構成は、物理パラメータの変化を引き起こすけれども、簡素であり、製造の費用効率もよい。最終的に、導電性の周波数依存性は、追加的な手段であり、その導電性によって、より薄い膜を形成でき、また、電場の空間プロファイルを制御できる。
【0092】
低い周波数依存性を有しあるいは周波数依存性を全く有さないが、励起信号の周波数に「敏感」ではある材料を、特定の装置が利用しうることも、当業者は認識するだろう。これは、異なる要素を連結することによって、分布RCL電気回路におけるように、周波数に依存して(横面にて)電場を弱める場合である。
【0093】
駆動信号
対応する光学装置の周波数依存性を制御するために本明細書で使用される特定の材料は、様々な特性の多種多様な駆動信号を利用することができる。これら信号の特徴には、周波数変動(周波数変調)が挙げられ、更には振幅(振幅変調)や動作周期制御(パルス幅変調)も挙げることができる。これらの幾つかの例について、以下に詳述する。
【0094】
パルス幅変調
周波数を制御する一つの方法は、いわゆる「パルス幅変調」(PWM)信号を利用するものである。図14には、PWM信号のパラメータ、すなわち振幅と周期、そして動作周期又は曲線因子(「FF」)が表されている。図示するように、PWM信号は合計周期で規定される特徴を有しており、パルス持続時間は動作周期で決まる。PWM信号の周波数領域特性を図15に概略的に示すが、これは、様々な曲線因子に対するPWM波形の周波数成分を表している。パルス列には、波形周期に相当する優位周波数が含まれていることが分かる。また一方、このような波形のフーリエ級数が示すように、低振幅の高周波数成分は矩形波に含まれる。そのため、動作周期50%の矩形波パルス列のエネルギーのほとんどはPWM信号周期に相当する「中心」周波数に含まれているが、一部のエネルギーは他の周波数にも伝播する。このことは、図15に示す「高FF」包絡線で表される曲線因子で明示されている。低い曲線因子の場合、中心周波数から外れるとPWM信号中のエネルギー量が大きくなる。これは、高周波数域に大量のエネルギーを有するブロードな包絡線と一致する。高い動作周期の場合、中心周波数から外れるとPWM信号のエネルギー量が小さくなる。例えば、PWM動作周期を50%から5%まで低下させると、RMS電圧が正規化数1.0から0.1まで一桁減少するが、それと同時に、高周波数域でのエネルギーがかなり増加する。
【0095】
TLCLの制御は、例えば携帯電話のカメラ用のレンズ等の特定用途ではPWMを利用する場合がある。PWM制御は、このようなTLCLにある種の利点をもたらし、また、次の特性があると考えられる。
【0096】
1)ある特定の「中心」周波数、例えばf=f1では、駆動「最大振幅」は、駆動信号の実スペクトルがかなりブロードとなることを踏まえて、最大屈折力が比較的低いFFで達成されるように設定することができる。その場合、そのFFを単に増加させるとRMS電圧も上がるので、屈折率は低下するが、その低下は曲線f1(図16)と同じように進まない。実際には、FFを増加させると駆動信号のスペクトル成分がかなり減少するため、屈折率の低下は、RMS電圧の上昇だけでなく高周波数信号成分の減少にも起因すると考えられる。これによって屈折率は非常に「速く」低下し、比較的低い電圧の利用が可能となる。
【0097】
2)ある特定の駆動周波数及びFFで最大屈折率に達すると、駆動周波数はシフトダウンし、ある伝達関数から別の伝達関数へ効率良く変化する(例えば、図16ではf1からf2へ変化する)。これは、高いRMS電圧を必要とせずにレンズの屈折率を最小値にするのに役立つ。
【0098】
3)FFの変化と周波数の変化を併用するか又は同時に生じさせことで、屈折率の制御を達成することも可能である。提案された解決方法では、周波数調整による電場の空間変調を生じさせるために隠れ(curved)電極システムを用いた、調整可能LCレンズに関する。そのため、レンズ調整によって周波数制御が可能だが、FFを調節すると駆動信号の関連周波数成分も同様に変化する。このような場合、FFと周波数の両方を用いてレンズ調整を行うこともできる。上述のように、提案された解決方法の装置は、調整可能な焦点調節、回折、ステアリング等の多種多様な用途に利用可能である。
【0099】
振幅変調
PWMモードとは異なり、振幅変調(AM)モードは、特定の周波数を伝えるようにレンズを調節するのに利用できる。図16は、様々な駆動周波数f1〜f3において振幅変調モードでの屈折力対RMS電圧を表す伝達関数の概略図を表している。振幅変調(AM)モードとPWMモードの両方で提案されるTLCLには様々な制御選択肢が利用可能である。AMモードは、PWM信号が、曲線因子の変更によるRMS振幅制御を利用して前記信号の比較的高い又は低い周波数成分を決定するという点で、PWMモードとは異なる。それに対して、AMは、曲線因子100%で設定された周波数信号を利用して、その振幅だけを変えるものである。図16の曲線はそれぞれ、様々な選択周波数における、TLCLの屈折力を変えるためのRMS電圧の利用の仕方を表している。このような特性は、図33に示すレンズでよく見られる。
【0100】
周波数変調
図17は、周波数制御レンズが様々な制御電圧振幅でどのように作用するかを表している。図示する様々な電圧振幅では、周波数の増加がレンズの屈折力の増加(及びその後の低下)に対応している。一方、屈折力の最大値は電圧に応じて大きくなり、また、最大値は高周波数域で生じる可能性がある。このような特性は、図5に示すレンズでよく見られる。図17は、TLCLの周波数制御の特徴を概略的に強調している。図17は、実験結果を再現しているが、図17は一方の次元では、一定の縮尺ではない。
【0101】
複素周波数信号
PWMやAM信号について具体的に述べたが、ある周波数で単に伝わる駆動信号や、複数の個々の周波数要素を合成した駆動信号を用いることができる。このような「複素周波数」信号は、例えば、異なった周波数の個々の信号を合成したものであってもよく、全て所定の比率で(動的に可変であるが)混合したものである。PWM方法とは異なり、複素周波数信号は、矩形波型の信号形状にすべて依存するわけでなく、あらゆる周波数要素の段階を調整するため充填率の調整を用いることはない。複素周波数信号を用いる電場プロファイル形状の例は、同時係属している2009年12月23日に出願の米国仮特許出願61/289,995号に記載されており、同出願は参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0102】
制御信号発生器の要素
光学装置を調整する制御信号は、可変周蓮制御信号回路によって提供され得、当該回路は、制御信号周波数の働きとして、前記装置内にて前記装置が光の伝播を制御できるように構成されている。
【0103】
光学装置を調整するための制御信号は、装置内の光の伝播が制御信号周波数に応じて制御されるように構成された可変周波数制御信号回路から供給することができる。例えば、図18には、LCレンズ2502と少なくとも1つの固定レンズ2504とを組み合わせたカメラの概略図を表しており、LCレンズ2502の行う焦点制御によって画像センサ2506に画像の焦点を合わせる。画像は、所望の焦点値を出力するオートフォーカス機能を備えたカメラコントローラ2508に送られる。電場コントローラ2510は、一般には早見表(形状、材料、温度、シート抵抗、カメラ等に関する利用可能な/任意の情報を含むもの)を利用して、焦点値を電気的パラメータ(この場合は所望の曲線因子)に変換する。単一のPWM波形の振幅と周期で設定する曲線因子だけでは調整が不可能な場合、コントローラ2510によってPWM振幅設定と周期設定を調整することができる。PWM駆動回路2512自体は、従来型のPWM回路であってよい。構成要素2508及び2510は、マイクロコントローラで処理されたマイクロコードを用いて実行でき、更に構成要素2512には、所望の周波数と動作周期を示すようにマイクロコントローラでも制御されるパルス幅変調電気回路へマイクロコントローラの管理下で切り替わる電源が装備されていること、が当業者には分かるであろう。
【0104】
周波数成分を制御して高周波数域を縮小させる場合、PWM振幅は減少させるが、動作周期はその後増加させることで、電極システム又はLCセルが望ましくない方法で応答する高周波数域を生じさせない機構と同一のRMS電圧を得ることができる。
【0105】
パラメトリック液晶レンズ
可変液晶レンズ(TLCL)にて周波数依存性材料を用いることを記載したが、このようなTLCレンズが非常に正確に且つ精密に配置されうる、理想的な製造条件およびアプリケーションに上記の記載が関連していることが、理解できる。しかしながら、図10Aから図10Eから明らかであるように、実際の有効な開口は、層構造例えば孔パターン電極構造によって規定されるそれとはかなり異なりうる。例えば、孔パターン電極の開口全体にわたってTLCレンズが一様であることは、理論的に可能とは言えず、TLCレンズを含む光学組立品を製造することによって、TLCレンズそれ自身を製造する際、あるいは、光学組立品全体を製造する際のいずれかにおいて、異常/収差(非点収差、コマ収差、分散、光軸の傾斜、光軸のシフト、等)を引き起こす場合がある。他の例として、アプリケーションそのものが、画像安定化を必要とする場合がある。少なくともこれらの状況に対処することは必要である。
【0106】
図19は、先行技術の液晶レンズの図を示しており、当該レンズは、一様に平坦な上部電極と、上部電極の下にて区画された四半電極と、液晶セルの下部に位置する一様に平坦な下部電極と、を用いている。
【0107】
図20Aは、提案された解決方法の実施形態にかかる区画された上面電極の差し込み上面図とともに、可変液晶レンズの側断面図を示しており、周波数依存性材料は、区画された孔パターン電極上にある。周波数依存性材料は、区画電極(図20B参照)の開口や、区画電極(図20C参照)の真下にて、区画電極の表面上にて、区画電極を覆っていてもよい。
【0108】
複数の部分に与えられる、共通の周波数制御駆動信号要素の電圧振幅だけを変化させることにより、複素電場空間変調を行うことができる。代わりに、複数の部分に与えられる駆動信号要素の周波数を変化させることにより、複素電場空間変調を行なってもよい。周波数依存性材料を有する弱導電層の上述の機能性は、電極部分の各土台の上にて用いられ、全ての電極部分によってもたらされる一体の効果が提供される。すなわち、周波数依存層内における部分的な電荷の浸透は、各電極部分によって制御され、各電極部分のすぐ近くの対応する部分においてパターン電極の範囲を制御する。全ての電極部分の一体の範囲は、対称な物理構造を用いる複素的な方法で電場を空間的に変調するのに用いられる。電場の複素的な空間変調は、同様に、全体にわたって複素屈折率分布を表すLC層の複素ディレクタ配向を介して入射ビームに特別な影響を与える。最も一般的な意味では、LC層によって提供される光学的要素は、ある特定の調整された屈折率分布を提供するという意味において「変形」させられる。TLCレンズは、所望の光学的な影響の働きとして、各部分に対する所望の制御信号の周波数および振幅で調整されうる。様々な影響を入射ビームに与えうる。静的な状態、および、準静的な光学的な影響のいずれもが、本明細書では記載されている。
【0109】
本発明を制限することなく、映像/画像を取得するアプリケーションで、駆動信号要素の特定の周波数および振幅は、有益であり、制御器は、修正参照テーブルからの修正値を用いることができる。例えば、屈折力の調整や光軸の再配向は、映像/画像の取得の際に用いられ、焦点調節機能を提供したり、(手持ち/振動する環境での)カメラの動きを補填するためTLCレンズの光軸を移動させることによって取得した画像の安定化を行う。画像追跡アプリケーションでは、光軸の再配向は、移動しているシーンを安定化するために用いられる。
【0110】
区画された電極および周波数依存性を有する弱導電層を有するこのようなTLCレンズの駆動は、図21を参照してうまく描くことができ、図21は、映像/画像の取得の際によく用いられるモードを形成する光学ビームを記載している。TLCL開口内にて空間的に不変の屈折率分布を有するLC層は、入射光学ビームに特徴的な変化を生じさせることはなく、平面位相面は、変化なく伝播する。LC層は、ガラスの板(分極効果は無視する)とそっくりに駆動する。対称的なレンズ状の開口内にて空間的に変化する屈折率分布を有するLC層は、入射平面位相面を焦点に集めさせる。図22は、全ての電極部分に適用される28Vの振幅の駆動信号での周波数に対する屈折力を記載している。直線的に異型である開口内にて空間的に変化する屈折率分布LC層は、入射平面位相面を傾けあるいはパンさせる(角度に関する光軸再配向)。図23は、1.49mmの有効瞳を有する直径が1.85mmの環状電極の角度に関する光軸再配向を示している。一体となった光学ビーム形状は、同一の周波数依存性材料の弱導電層およびLC層を用いる一つのTLCLにおいて、傾けること/パンすること、および、集束させることによってもたらされ、これにより、光軸がシフトする。図24は、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示し、当該平面図は、電極部分を用いる、光軸の移動の異なった態様におけるものである。確実性のために、区画された電極に適用される一体となった駆動信号は、周波数混合を含み、適当な電圧振幅の少なくとも1つの周波数が、焦点調節の際に屈折力制御を行うために適用され、同時に、適当な電圧振幅の他の周波数が、画像安定化の際にビームステアリング制御を行うために、適用される。
【0111】
図25は、LC層における屈折率分布を示しており、当該分布は、図21に示した波面に対応しており、8つの部分を有する環状電極に関する。部分駆動信号要素の相対電圧振幅の具体例を示しており(V4=V5, V3=V6, V2=V7, V8=V1)、簡単化のために、対応する周波数は省略している。
【0112】
例えば、これには限定されないが加速度計等の適切なフィードバック機構を用いることによって、本明細書で上述した機能を実行する周波数依存性の弱導電層を有するTLCレンズを、画像安定化を行う際にも用いることができることを、再び強調することは重要である。画像安定化は、振動する環境におけるのと同様に手持ちのアプリケーションにおいて重要である。2009年6月5日に出願された米国特許20100309334号にて記載された、ブライアン ジェームス、アンドリュー ホッジ、およびリンダルによる先行技術の試みでは、非常に大きなバッファの中へ複数の画像を連続して取得し、後の工程において、動作センサが最も小さい動作を記録した画像取得時刻に基づき、取得した画像の集合から選択することを、提案している。これに対し、本明細書にて提案された解決方法にしたがって、能動的フォードバック機構および能動的画像安定化を用いることは、高速TLCL応答によって可能となり、画像保存領域と大量且つ高速な必要メモリとを削減させる。上述の弱導電層を用いる高速TLCLは、同時係属しており同一出願人による米国特許61/422,115に記載されており、同出願は、2010年12月10日に出願された「高速調整可能な液晶光学装置および駆動方法」と題されており、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0113】
提案された解決方法は、ある製造方法に適用することができ、当該製造方法では、特定の駆動信号要素によって、周波数依存性の弱導電層を有する部分電極TLCレンズが製造/組立の欠点を補填し、この意味においては、このような部分電極TLCレンズは、パラメトリック(レンズ)光学要素として理解できる。図26は、非点収差エラーを補填するように構成された部分電極TLCレンズを示している。図27は、コマ収差エラーを補填するように構成された部分電極TLCレンズを示している。コマ収差エラーは、修正された波面が同一平面の同一点に集束しない点において、光軸のシフトとは異なっている。
【0114】
時間変化する(位相シフトされた)多数の駆動信号要素は、追加の光学特性を制御するのに用いられうる。例えば、図28A〜図28Eは、8つの部分の孔パターン電極(4つの駆動信号要素を用いている)の準静的な制御を示しており、0度から45度の間で、光軸の傾きは任意にとりうる。
【0115】
複数要素の積層構造
本発明は、同一の区画電極、周波数依存性の弱導電層、およびLC層を用いて、レンズの機能性と画像安定化/エラー修正/誘導/振動低減等との両方を行う上述のパラメトリックTLCレンズには、限定されない。
【0116】
例えば、電場のシフトは、区画電極を用いることなく、積層構造において行うことができる。例えば、図29Aは、上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、上面孔パターン電極の下には追加の横電極が配置されている。この実施形態において、周波数は、一方側から他方側の電場を減少させることにより、液晶セル内の電場を大きくする横あるいは側方の電極に適用され、当該電極は、一方側におけるものが他方側におけるものよりも大きい屈折力の差(ウェッジ)を引き起こす。横電極は、図示のように孔パターン電極の下方に位置していてもよいし、図29Bに示すように孔パターン電極の外周の外方において、同一の基板レベルに位置していてもよい。特に、引き起こされるシフトは、TLC構造の残りの部分には依存しない。この技術は、ビーム操作を行う他のTLCレンズ形成構造を提供し、すなわち、TLCL構造は、例えば次の文献に記載されている:2009年の12月23日に出願の同一出願人の米国仮出願61/289,995、2008年7月14日出願の米国仮出願61/080,493に基づく優先権を主張した、同時係属で同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420、2009年07月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419、2007年3月2日に出願され、「液晶を用いる、空間変調された電場発生および電気光学的な調整のための方法および装置」と題された国際特許出願WO 2007/098,602であり、全て、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0117】
同様に、周波数依存性材料の挙動は温度に影響されうる。図30に示すように、周波数依存性材料層内にて制御可能な温度勾配の創造物は、レンズの光軸を移動させるために用いられうる。温度はまた、配向を変化させる液晶の機能にも影響するので、この方法は、液晶層においても同様に用いることができる。光軸をシフトさせるためのこの技術は、一方側におけるものが他方側におけるものよりも大きい屈折力の差(ウェッジ)を引き起こし、液晶の配向がレンズ効果を発生させるために行われる方法から独立して用いられることは、理解されるだろう。本発明を限定することなく、液晶配向変化を空間的に変調するための様々な装置は次のものを含む:電場を空間的に変調するための様々な技術、例えば、2009年12月23日に出願された、同一出願人による米国仮出願61/289,995に記載されており、この出願は、参照することによって本明細書に組み込まれる;ポリマー分散などの、液晶配向を空間変調する様々な技術、例えば、2008年7月14日に出願された米国仮出願61/080493に基づく優先権を主張し、同時係属中であり同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420、2009年7月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419に記載されており、これらの出願は、参照することによって、本明細書に組み込まれる;空間的に配列された層を提供するための技術、例えば、2007年3月2日に出願され「液晶を用いる、空間変調された電場発生および電気光学的な調整のための方法および装置」と題する国際特許出願WO 2007/098,602に記載されており、これは参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0118】
図31は、上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、液晶セルの基板の間でそれの隅に追加の圧電素子が配置されている。圧電素子は、レンズ装置を製造する際に基板に蒸着されうる。代わりに、基板間の隙間において所望の傾斜を生じさせるために、液体が充填された閉じたセルを、制御可能に加熱してもよい。光軸をシフトさせるためのこの技術は、一方側におけるものが他方側におけるものよりも大きい屈折力の差(ウェッジ)を引き起こし、液晶の配向がレンズ効果を発生させるために行われる方法から独立して用いられることは、理解されるだろう。本発明を限定することなく、液晶配向変化を空間的に変調するための様々な装置は次のものを含む:電場を空間的に変調するための様々な技術、例えば、2009年12月23日に出願された、同一出願人による米国仮出願61/289,995に記載されており、この出願は、参照することによって本明細書に組み込まれる;ポリマー分散などの、液晶配向を空間変調する様々な技術、例えば、2008年7月14日に出願された米国仮出願61/080493に基づく優先権を主張し、同時係属中であり同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420、2009年7月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419に記載されており、これらの出願は、参照することによって、本明細書に組み込まれる;空間的に配列された層を提供するための技術、例えば、2007年3月2日に出願され「液晶を用いる、空間変調された電場発生および電気光学的な調整のための方法および装置」と題する国際特許出願WO 2007/098,602に記載されており、これは参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0119】
提案された解決方法は、図4および図5、好ましくは図13Aに概略的に示したTLCL構造を参照して記載したが、本発明はそれに限定されない;TLCL層構造の他の例が開示され、例えば、2009年12月23日に出願された、同一出願人による米国仮出願61/289,995、2008年7月14日に出願された米国仮出願61/080493に基づく優先権を主張し、同時係属中であり同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420、2009年7月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419に記載されており、これらの出願は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。弱導電層の導電性の考察に関して、図13Aを参照して本明細書にて示した考察は、このような単一の導電層および対となった(連結された)弱導電層に関して当てはまる。
【0120】
特に、図32を参照して、周波数依存性の弱導電層を用いるのに関して本明細書で上述した周波数制御は、レンズ形成から独立してTLCレンズにて用いられ、例えば、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学エラー修正、等を行う。図32に示した実施形態では、底の導電性透明ITO電極は、提案された解決方法にしたがって、周波数依存性の弱導電層および帯状電極(図示している)によって替えられ、例えば図29Aを参照しつつ上述されている;もしくは、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学的な修正等を行うように、形状制御電極構造が構成されている。駆動時、周波数依存性の弱導電層の上面と孔パターン電極は、電場のある状態で機能し、LC層を経由して(対称的な)レンズ効果を奏する。この意味において、弱導電層の上面は、「レンズ効果を示す弱導電層」と称される。これとは別に、底部において周波数依存性の弱導電層と帯状電極とは形状制御駆動信号にしたがって稼働する。例えば、同一の低い周波数であり且つ同一の電圧振幅の駆動信号要素が帯状電極に与えられた場合、大きな電化移動は、周波数依存性の弱導電層を、平坦な導電ITO電極(423)の様な連続した電極として出現させる。したがって、レンズ効果の全体は、図4および図5に示したTLCレンズ構造によってもたらされるものと、実質的に同じである。だが、対向している帯状電極が、周波数あるいは電圧振幅のいずれかが異なっている、異なった駆動信号要素を受けることによって、底の周波数依存性材料は、電場条件において、電場全体を対応してウエッジ形状に変形させる斜面(ウェッジ)として出現する。この意味において、底の周波数依存性の弱導電層は、形状制御を行う弱導電層として稼働する。用いられる底の電極構造およびそれに与えらる駆動信号要素の組み合わせによって、形状制御を行う弱導電層は、電場(光学要素)形状を提供し、例えば、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学的な修正等を行う。これを行う際、図32に示した半分のTICL構造において、上面のおよび底の弱導電層は、異なった機能を有しており、このような半分のTLCLの各々において、上面のおよび底の弱導電層の間の導電性の違いは、したがって大した問題とはならないことが、理解されるだろう。同様に、完全なTLCL構造を製造する際、図13Aに関して本明細書にて上述した考察および利点は、対になっている(固着されている)、上面のレンズ効果を有する弱導電層のみに適用できる。このことは、一つの中央パターン電極へと結合するパターン電極にも拡張される。完全なTLCLが製造され、図13に示した積層構造を用い、積層されたLC層xおよびyとは反対の層構造の底にて、弱導電層を形成する場合、各弱導電層が異なった機能を果たすから、上面のおよび底の弱導電層の間の導電性の違いはまた、大した問題とはならない。
【0121】
同様に、図33を参照すると、周波数依存性の弱導電層を用いることに関して本明細書で上述した周波数制御は、もっぱらTLCレンズ構造において用いられ、レンズ形成からは独立しており、例えば、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学エラー修正、等、電場形成制御を行う。図33に示した実施形態では、空間的に一定の電場を用いて、レンズ効果を奏させるは例えば次の文献に記載されている:2007年3月2日に出願され「液晶を用いる、空間変調された電場発生および電気光学的な調整のための方法および装置」と題する国際特許出願WO 2007/098,602(図示あり)、2008年7月14日に出願された米国仮出願61/080493に基づく優先権を主張し、同時係属中であり同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420(図示なし)、2009年7月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419(図示なし)であり、これらの出願は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。上記のTLCレンズ構造は、図32に関して本明細書で述べた電場形状制御構造とともに用いられる。図33に示した実施形態では、レンズ効果が、例えば隠れ電極層によって奏される。当該電極層は、例えば全体にわたって同一の屈折率nを有するけれども、接合面がレンズ状の(1((2の部分を有する。それは、上面の透明導電層(例えばITO)によって提供される空間的に一定の電場の存在下、および、平坦な底の導電層が入射ビームの波面を収束させるといった条件下においてである。本発明を限定することなく、他の積層構造は、空間的に一様な電場におけるレンズ効果を奏しうる。図32に示した実施形態のように、底の導電性透明ITO電極は、提案された解決方法にしたがって、周波数依存性の弱導電層および帯状電極(図示している)によって替えられ、例えば図29Aを参照しつつ上述されている;もしくは、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学的な修正等を行うように、形状制御電極構造が構成されている。稼働時、底部において周波数依存性の弱導電層と部分電極とは形状制御駆動信号にしたがって稼働する。例えば、同一の低い周波数であり且つ同一の電圧振幅の駆動信号要素が部分電極に与えられた場合、大きな電化移動は、周波数依存性の弱導電層を、平坦な導電ITO電極(423)の様な連続した電極として出現させる。したがって、レンズ効果の全体は、TLCレンズ構造によってもたらされるものと、実質的に同じである。だが、部分電極が、周波数あるいは電圧振幅のいずれかが異なっている、異なった駆動信号要素を受けることによって、底の周波数依存性材料は、電場条件において、電場全体を対応して空間変調して変形させる空間的に変調されたポテンシャル面として出現する。この意味において、底の周波数依存性の弱導電層は、形状制御を行う弱導電層として稼働する。用いられる底の電極構造およびそれに与えらる駆動信号要素の組み合わせによって、形状制御を行う弱導電層は、電場(光学要素)形状を提供し、例えば、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学的な修正等を行う。このことを行う際、単一の弱導電層は、光学要素形成機能のみを提供する半分のTLCLの各々において、用いられることが理解される。完全なTLCLでは、他の半分のTLCLは単に薄い透明電極を有する一方、一つの半分のTLCL上にて弱導電層を形成するものを一つだけ用いるか、あるいは、導電層を形成するものを2つ用いる。後者の場合、弱導電層を形成する2つのものの導電性の違いは、特性化/修正の間に対処されうる。2つの弱導電層を形成する際、弱導電層を形成する外側の各々は、異なる目的のために用いられる。例えば、本発明を限定することなく、弱導電層を形成するものの下側は、エラーの修正/補填のために用いることができ、弱導電層を形成するものの上側は、画像安定化のために用いることができる。
【0122】
本発明は、その好ましい実施態様を参照して示して説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、形態や詳細を様々に変更できることが当業者には分かるであろう。
【技術分野】
【0001】
本出願は、液晶レンズ装置を対象にする。
【背景技術】
【0002】
調整可能液晶レンズは、例えば、2009年12月23日公開の自己のPCT出願WO2009/153764に記載され、当該出願では、電場と対応する屈折率勾配とを液晶セル内にて形成するため、調整可能液晶レンズは、レンズを製造するのに適した周波数依存性物質(そこではこのように定義されている)を用いている。
【0003】
「オプティクス コミュニケイションズ」の259(2006)710−722にて発表された、Yeらによる「焦点面における焦点移動可能液晶レンズ」と題された記事にて、液晶レンズが開示されており、4部分孔パターン電極の四半部分の各々に適用される駆動信号の相対振幅を制御することにより、当該レンズの光軸は移動可能となっている。このレンズ設備は、平面電極の下の区画された電極を用いており、これらの電極には、一定周波数の駆動信号の相対振幅の機能として電界を規定するための駆動信号が与えられ、一定周波数の駆動信号は、底部平面電極に対して、上側の前記平面電極および下側の前記区画された電極に用いられる。相対振幅を変化させた際の実験結果は、液晶レンズの光軸のシフトすなわち変化を示している。
【0004】
レンズなどの調整可能液晶(LC)光学装置は、電気的あるいは磁気的な一様な制御場にて作動し、多くは、空間的に変調された場を用いる。電場を用いる場合、電場を空間的に変調するのに用いる先行文献技術が、いくつかある。空間的に不均一な誘電層は、電場の大きさを小さくするために用いられており、所望の空間特性を提供している。電極は、電場の所望の空間特性を提供するために、球形に形成されている。電場を空間的に変調する他の方法は、AC駆動電流を電極に供給したときの電極での電圧降下が、空間変調された電場を引き起こすほどのインピーダンス特性を有する平面電極を利用することである。
【0005】
図1に示すように、ある種の従来式LCセルは、2枚の基板104、106の間に液晶102を挟んで構成されている。基板104、106にはそれぞれ、先ず、酸化インジウムスズ(ITO)等の材料層であり得る透明電極108、110をコーティングされてから、ポリマー層112(一般にはポリイミド)をコーティングされている。前記ポリマー層が所定の方向にラビング処理されることにより、基底状態すなわち制御電場が無い状態でLC分子が整列する。2枚のITO層に電圧を印加すると、一様な電場と、それに対応して一様なLC分子再配向とが生じる。LC分子再配向は、対応して、LC層中に一様な屈折率分布を与える。そのような装置において、屈折率は、分子の横方向よりも、分子の縦方向で異なる。
【0006】
図2には従来技術のLCセル構造が示されており、ここでは、高抵抗の材料から成るディスク状領域205の周囲の、低抵抗の孔パターン電極リング204を利用することで、電場勾配が生じる。この形状の利点は、非常に薄いこと(これは、例えば携帯電話用途などで重要な要件である)と、電極を2つだけ利用する(そのため、制御駆動信号を一つだけ利用する)ことである。残念なことに、高い光学透明性を有する所望の厚さの高抵抗の材料だけでなく、良好な一様性を有するLCセルもが製造され難く、その製造歩留まりも一般に低い。様々なレンズの電極抵抗はわずかに異なることがある。これは、要求される制御が精密なセル厚さにも大きく左右されるという事実と連動して、各レンズをそれぞれ別個に調整しなければならないことを表している。更に、モードレンズの最小直径は約2mmまでに制限されている。この寸法未満では、ITO層の要求される抵抗が約10MΩ/sqを超える。最後に、このような(いわゆる「モード制御型」)レンズは常に凸レンズか凹レンズのどちらかでなければならない。発散レンズと収束レンズを切り替えることはできない。
【0007】
図3は、電場勾配を生じさせる別の従来型LCセル構造を表しており、これには、3つの個別電極304、305、307(このうち2つの間にはその同一平面内に孔が形成されている)と、2つの電圧V1及びV2とが、更に追加の個別の弱導電体層(WCL)306とともに用いられている。孔パターン外側電極304(電圧V1が印加された状態)の役割は、レンズの様な電場プロファイルを作り出すことであり、一方、中央のディスク状電極305(電圧V2が印加された状態)の役割は、回位を減らすことと、(例えばレンズ効果を失わせるために)前記勾配値を制御することと、である。WCL306の役割は、V1によって生じた前記プロファイルを和らげて、レンズ全厚を減少させることである。
【0008】
残念なことに、上部電極に係る複雑なパターンや2つの個別電圧と別のWCLとを用いる必要性が、製造を困難にし、しかもこの方法の実際の利用を妨げている。例えば、この方法を利用して偏光無依存型レンズを構成するには6、7枚の厚いガラス素材を用いる必要があるが、これは困難な作業である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
調整可能液晶レンズの焦点の移動の制御を改善すること(有益なものにすること)が、提案された解決方法の目的である。
【0010】
周波数依存性材料を用いて生成された電場の改善された(有益な)制御は、区画された電極を用いることによって提供でき、結果として生じるレンズの焦点の移動が制御されることが、わかった。
【0011】
制御可能な熱源を用いて、電場変調と液晶との少なくとも一つに影響を与えることにより、液晶レンズの光軸を移動させることが可能であることが、わかった。
【0012】
液晶レンズ構造における基板に影響を与える(作用する)、制御可能な圧力源を用いることによって、液晶レンズの光軸を移動させるのが可能であることが、わかった。適切な圧力源は、熱源によって作動させられる、圧電物質あるいは液体が充填されたセルであってもよい。
【0013】
カメラのレンズ設備の一部を形成するレンズにて、光軸をシフトあるいは変化させることは、例えば、カメラの振動を補填する等の画像安定化、他のレンズ要素との位置合わせを行うための画像あるいはレンズ位置の調整、レンズの角度調整(ピッチおよび回転/パンおよび傾斜)、にとって有益なことであり、画像移動をさせることにより、個別のピクセルイメージセンサを用いてサブピクセル画像を得ることができる。このように、光軸の調節機構は、所望のアプリケーションの要求に応じて、一度セットされて、画像取得に先立って調節されあるいは画像取得時に動的に調節される。動的な制御の場合、加速度計センサを用いて、あるいは、取得され且つカメラの移動量を決定する画像を分析することによって、光軸の調整が行われる。
【0014】
提案された解決方法によれば、その中を通過する光の伝播を制御する様々な光学装置であって、周波数依存性材料と複数の異なる周波数を有する駆動信号を発生する電気信号発生器とを利用する光学装置が提供される。前記装置は、光が貫通する液晶(LC)層を備えており、前記LC層によって光の伝播が制御される。更には、電気信号発生器に接続されており、しかもLC層に作用してその光学特性を変える電場を発生させるように配置された、電極システムも提供される。電気信号発生器は、複数の異なる周波数を有する駆動信号を発生し、その駆動信号を電極システムに供給することで電場を発生させる。周波数依存性材料は、電場と相互作用するように前記装置内に配置されている。この周波数依存性材料は、それに適用される駆動信号の周波数によって決まる電荷移動度を有しているため、可変電場の空間プロファイルが駆動信号周波数に応じて提供されることで、代わりに用いられる区間変調された電場が前記LC層の特性を変える。「電荷移動度」を本明細書にて「導電率」の代わりに用いて、周波数依存性材料の特性を説明する。低周波数では、一部の周波数依存性材料が高い電荷移動度を示し、低周波数では電荷が周波数依存性材料内を移動する時間が長くなるためである。同様に、高周波数では、より短い時間に正と負の両方のサイクルの電位があることを考えると、電荷の移動が小さくなる。したがって、「電荷移動度」は、電荷が、与えられる交互の電気信号の制約範囲内で周波数依存性材料中を移動する能力全体を指すのに用いられる。
【0015】
一部の実施態様では、電極システムは、周波数依存性材料本体に接続された固定導電性電極を備えている。電場には、固定導電性電極で実質的に規定される部分と、周波数依存性材料で規定される部分とがあり得る。電場は、実質的には周波数依存性材料で規定できる。電極システムは固定導電性電極を有していてもよく、その場合、電場は、当該固定導電性電極と結合していない周波数依存性材料本体で成形される。
【0016】
一部の実施態様では、電極システムは、実質上平坦な層状の構成要素を用いて作成される。
【0017】
電極システムは、基本的には光学的に隠れていてもよく、そのため光学装置からの光の伝播を妨げない可能性がある。
【0018】
一部の実施態様では、電極システムには、周波数依存性材料層と接触しているパターン電極が備わっていてもよい。
【0019】
一部の実施態様では、前記装置は、調整可能焦点レンズである。前記レンズは屈折性であっても回折性であってもよい。
【0020】
一部の実施態様では、前記装置には、前記装置に光の伝播を制御信号周波数に応じて制御させるように構成された、様々な周波数制御信号回路が備わっている。
【0021】
周波数依存性材料と様々な周波数の駆動信号を利用することで、多種多様な実施態様光学装置が可能である。その実施態様のいくつかの例は、電極の数、形状及び構造、様々な周波数依存性材料の数及び電極に対するその位置やそれら互いの位置、様々な駆動信号周波数及び電圧の適用、並びに前記光学装置構造内での追加材料の使用である。
【0022】
一実施態様では、駆動信号は、単一周波数を含み、当該周波数は、前記装置の光学特性を変化させるために用いられる。これは、駆動信号電圧振幅をほとんど変化させず用いることができ、又は信号振幅の変化を含む場合もある。別の実施態様では、異なった複数の周波数の駆動信号要素を混ぜ合わせて同時に適用することで周波数依存層との特殊な相互作用がもたらされ、そしてそれに応じて所望の電場プロファイルが得られる。
【0023】
提案された解決方法によると、光学装置内で有効な電極構造を変更するために周波数依存性材料が、様々な駆動信号周波数とともに用いられる。電極構造によって電場のプロファイルが決まり、同様に、LC層の光学特性が決まる。
【0024】
周波数依存性材料は、様々な周波数で異なる電荷移動度を示すように選択することができるので、様々な周波数では、選択的に(制御可能に)、導電性材料とみなされる場合も非導電性材料とみなされる場合もある。導体とみなされる(高い電化移動度を有する)周波数では、周波数依存性材料は、固定電極の一つとは異なる位置に、有効な電極構造を形成する場合がある。しかしながら、周波数依存性材料の電荷移動度が比較的低い周波数では、それは導体とはみなされず、有効な電極構造は固定電極の実際の位置によって決定される。したがって、周波数依存性材料を適正に配置し、そして別の駆動周波数を選択すると、有効な導電性構造が変更されて、LC層の光学特性が動的に変化する可能性がある。
【0025】
周波数依存性材料をパターン電極と併用するある種の実施態様では、(別の電極構造がなければ)、空間的に一様でない電場が形成される。このような構造は、空間変調された電場によるLC分子の不均一な再配向に起因する特別な特徴(例えば、レンズ構造)をLC層に形成するために利用できる。しかし、このような実施態様では、LC分子全てに初期の共通の配列傾向を付与する(例えば、回位を無くす)ために、空間的に一様な電場を作り出すことが望ましい場合もある。提案された解決方法のこの実施態様では、周波数依存性材料の高い電荷移動度(電荷がより遠い距離を移動すること)を生じさせる駆動信号周波数を選択したときに、有効な電極構造が形成され、それによって実質的に一様な電場の空間プロファイルが生じるように、周波数依存性材料を配置してもよい。例えば、パターン電極が環状電極であり、そして電極中央の空間を周波数依存性材料で充填してもよい。このような場合、第1周波数、例えば比較的高い周波数で駆動信号を適用すると、周波数依存性材料の電荷移動度は小さく(すなわち、電荷が移動する距離が比較的短い)、その結果、電極表面の有効な拡張は生じず、電極の環構造に基づいて一様でない電場が生じる。しかしながら、ある周波数、例えば周波数依存性材料が比較的高い電荷移動度を示す比較的低い周波数に変えると、前記材料が環状電極の拡張を発現させて、有効な電極構造が平面的となる。このような場合、こうして生じた電場は実質的に(基本的に)一様である。上述の実施態様では、固定電極にディスク状などの他の形状を利用してもよく、周波数依存性材料によって層を形成し、その層の上部又は下部のいずれかの近辺にあるいはそれを同一面内で取り囲むように配置された固定電極と共に形成していてもよい。
【0026】
前述の実施形態では、2009年12月23日に出願された同一出願人による米国仮出願61/289,995に記載されているように、固定パターン電極に他の形状を用いることができ、これは参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0027】
提案された解決方法の他の実施態様では、様々な光学装置は、2つのLC層の間に配置された中心層を備えている。中心層は、特定の構造配置の固定電極(例えば孔パターン電極)と周波数依存性材料とを備えており、各LC層で見られる電場を左右対称に形成することで勾配制御層として働く。液晶層それぞれのLC分子配向方向は異なっていてもよい。駆動信号が適用される電極は、それぞれ、各LC層と隣接し、中心層を避けて横に配置されている。電場形成は、駆動信号の周波数によって決まり、同一周波数依存層内での電荷移動度も決定する。低い電荷移動度に対応する周波数では、勾配制御層は、固定された中心層電極の形に応じて電場を形成する。しかし、高い電荷移動度に対応する周波数では、周波数依存層が有効な電極表面を形成し、勾配制御層は、電極と周波数依存層の両方に起因する、中心層の電極形状全体に準じて電場を形成する。
【0028】
本発明の別の実施態様では、光学装置は、特定の周波数で様々な電荷移動度を示す複数の周波数依存性材料を有している。これら材料を併せて特別な幾何学形状で配置すると、動的に調節可能な有効な電極構造が形成される場合がある。例えば、この2つの周波数依存性材料は、共通する層内に、一方の材料がレンズ様(レンズ状)の形状を呈してもう一方の材料で取り囲まれた状態に配置することができる。この共通周波数依存性材料層とLC層とが一緒に2つの平面電極の間に配置されている場合、駆動信号電圧の周波数を変え、それにより、有効な電極構造が周波数依存性材料で形成された形(例えば2つの前記材料間の境界線に沿って形成され得るようなもの)を受け入れるかどうかを変えることで、電場プロファイルを変化させることもできる。
【0029】
また、所望により光効率を更に高めるために、装置の光軸と垂直な表面を持つように別々の材料(全て周波数依存性である必要はない)を配置してもよく、同様に、非導電性材料を一緒に用いて、所望の有効な電極形状を構成してもよい。
【0030】
提案された解決方法の別の変更態様では、層間の勾配に沿って変化する周波数依存性の電荷移動度を有する周波数依存層を利用している。そのため、層の一部は、第1周波数に応じて層の別の部分よりも高い電荷移動度を示す。このように、装置に適用される駆動信号の周波数の調整によって、導体として働く勾配層の部分が変更(選択)される。したがって、勾配層の勾配形状を利用すると、駆動信号周波数を変更するにつれて変化する有効な電極形状を形成することができる。更には、この種の勾配層を、様々な固定電極構造(例えば、パターン電極)と組み合わせることで、より複雑な有効電極形状を製造することもできる。
【0031】
周波数依存性材料は、利用可能な多種多様の材料から成っていてよい。一実施態様では、前記材料は熱重合性導電性材料であり、また、別の実施態様では、前記材料は光重合性導電性材料である。その他の利用可能な材料としては、真空(あるいは、例えばゾルゲル)蒸着薄膜、高誘電率の液体、電解質ゲル、導電性イオン液体、導電性ポリマー、又は導電性ナノ粒子を有する材料が挙げられる。前記周波数依存性材料の重要な特徴は、周波数依存性の電荷移動度である。
【0032】
周波数依存性材料が熱又は光重合性導電性材料である場合、それは、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する重合性モノマー化合物と、UV−可視光若しくはNIR感応性又は感熱性の分子の組み合わせである反応開始剤と、これら混合物の誘電率を変化させる添加物であって、有機イオン性化合物及び無機イオン性化合物からなる群より選択されるものと、前記混合物の粘度を変化させる充填剤とを含んでいてよい。前記材料には更に、UV−可視光感応性接着剤、NIR感応性接着剤、及び熱反応開始剤を用いて重合した接着剤からなる群より選択される接着剤が含まれていてもよい。光学エラストマーを更に含んでいてもよい。
【0033】
周波数依存性材料が高誘電率の液体であれば、それとして、比較的低い周波数ではεが2.0〜180.0までの、周波数に依存して電荷を移動させることができる透明液状物質を挙げることができる。
【0034】
周波数依存性材料は、電解質ゲル物質である場合、高分子材料、イオン性組成物、及びイオン輸送体を含むことができる。
【0035】
周波数依存性材料が導電性イオン液体であれば、それとして、塩素酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、及び炭酸塩からなる群より選択されるイオン種を挙げることができる。
【0036】
提案された解決方法の様々な実施態様としては更に、信号周波数を変化できる駆動信号発生器が挙げられる。駆動信号発生器は、周波数を変更できるように単一周波数駆動信号を出力することも、異なる周波数の異なる個別の駆動信号要素の混合(結合)である駆動信号を出力することも、又は周波数成分を変更できるように幾つかの他の形態の駆動信号を出力することもできる。一実施態様では、駆動信号発生器は、曲線因子を変えることができるようにパルス幅変調駆動信号を発生させる。このような場合、曲線因子を調節することで、結合駆動信号の高周波数成分の量を変えることができる。別の実施態様では、駆動信号発生器は、基本モードで、又は第1周波数の信号が第2周波数の信号要素で変調されるモードで、振幅変調駆動信号を発生させる。更に別の実施態様では、駆動信号発生器は、所定の相対周波数と振幅とを有するいくつかの異なる個別の周波数信号を組み合わせた駆動信号を発生させる。適切な駆動信号を選択するには、特定用途の具体的な電極と周波数依存層の構成を考慮に入れる場合もある。
【0037】
提案された解決方法のある特定種の実施態様では、非平面形状の固定導電性電極を備えた電極構造(電極システム)を利用する。非平面形状の周波数依存性材料はまた、非平面固定電極と交互に用いても、又はこれと組み合わせて用いてもよい。本実施態様では構造体の構成は様々であり、レンズ様(レンズ状)のポリマー構造上にコーティングした湾曲した導電性材料層から構成される固定導電性電極を備えていてもよい。別の実施態様では、固定導電性電極は、平面開口ポリマー構造上にコーティングした、多層の平面な導電性材料層である。周波数依存性材料はまた、LC層と固定導電性電極との間に配置された平坦な材料層であってもよい。変更態様では、平面ポリマー構造は、対向する合わせ曲面を有する一対のレンズ様のポリマー構造から構成することができる。周波数依存性材料の湾曲層としては、整合する曲面同士を付着させる光学的に透明な接着剤層を挙げることもできる。
【0038】
提案された解決方法の更に別の実施態様では、様々な光学装置として、それ自体が周波数依存性の電荷移動度を有するLC層が挙げられる。本実施態様の一変更態様では、LC層自体が駆動周波数の変化につれて電荷移動度を変化させるので、外部の周波数依存性材料を必要としない。したがって、LC層と相互作用する電場の空間プロファイルは周波数依存性であり、その結果、LC層は、その光学特性が駆動信号の周波数成分を変えることで調整可能なものとなる可能性がある。本実施態様の一変更態様では、電極構造(アセンブリ)は空間的に一様でない電場を発生し、LC層に高い電荷移動度を付与する周波数が発生すると、電場が空間的に更に一様なものへと調節される。別の変更態様では、電極構造(システム)には、光学上透明な材料を含む孔パターン電極が電極の中心領域に備わっている。
【0039】
本明細書に記載の様々な原則や実施態様を更に調和及び適合させることで、様々な電場生成特徴を有する光学装置が作製できることが当業者には分かるであろう。様々な形状及び構成の電極、様々な種類、形状及び位置の周波数依存性材料、様々な駆動信号発生器、並びに本明細書に記載の他の変更態様を組み合わせて用いると、特別な特徴を有する光学装置が作製できる。前記装置は更に、周波数制御型、電圧制御型、又はこれら2つの組み合わせであってよい。
【0040】
例えば、低角のプレチルトアライメント層を有するLC層を利用してよく、また第1周波数は、均一な有効電極構造に適用してよい。この周波数では、その後電圧を、LC分子全てが均一な傾きで初期再配向を示すレベルまで上げてもよい。そのとき、電圧の周波数を変更することで、液晶の光学特性が変化する(例えば、レンズ構造を形成する)ように有効な電圧構造を調節して電場に不一様性を導入することができる。初期の一様な電場強度を液晶に適用してから電場不均一性を導入することで、LC層の回位を最小限にする(無くならせる)。駆動信号はまた、液晶モジュールを基底状態付近に留まらせないために適用してもよく、それによって光学(像)収差を軽減することもできる。別の例では、周波数制御を利用してLCレンズの屈折力を変更する場合もあるが、駆動信号の電圧は、前記レンズの性能を高めるために別々の屈折力で、あるレベルから別のレベルまで変化させてもよい。多数の他の同様の制御パラダイムも同様に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来技術の調整可能液晶(LC)レンズ構造体の概略図である。
【図2】孔パターン電極を有する、従来技術の調整可能LCレンズ構造体の概略図である。
【図3】2区画の上部電極を有する、従来技術の調整可能LCレンズ構造体の概略図である。
【図4】提案された解決方法にかかる、周波数依存性材料層とその上部付近に配置された孔パターン上部電極とを有する、調整可能LCレンズ構造体の概略図である。
【図5】提案された解決方法にかかる、周波数依存性材料層とその底部付近に配置された孔パターン上部電極とを有する、調整可能LCレンズ構造体の概略図である。
【図6】提案された解決方法にかかる、図4の構造において比較的高い周波数の駆動信号を利用した場合の等電位面を表すグラフである。
【図7】提案された解決方法にかかる、図4の構造において比較的低い周波数の駆動信号を利用した場合の等電位面を表すグラフである。
【図8】提案された解決方法にかかる、図5の構造において比較的高い周波数の駆動信号を利用した場合の等電位面を表すグラフである。
【図9】提案された解決方法にかかる、図5の構造において比較的低い周波数の駆動信号を利用した場合の等電位面を表すグラフである。
【図10A】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図10B】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図10C】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図10D】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図10E】提案された解決方法にかかる、図4と同様の構造において、調整可能レンズ効果を示す画像を表している。
【図11A】図4の構造における屈折力対RMS電圧についての実験データを表すグラフを示している。
【図11B】図4と同様の構造におけるRMS収差対RMS電圧についての実験データを表すグラフを示している。
【図12A】図4と同様の構造における屈折力対周波数についての実験データを表すグラフを示している。
【図12B】図4と同様の構造における屈折力対周波数についての実験データと、同じ周波数範囲での対応する収差の兆候と、を表すグラフを示している。
【図13A】孔パターン電極と周波数依存性材料とを有する勾配制御構造部が2つのLCセル間に挟まれている、提案された解決方法にかかる構造体の概略図である。
【図13B】光に直交する2つの偏光を制御するためのLCセル構造の概略図である。
【図13C】図13BのようなLCセル構造であり、可変電極構造がLCセル両方を制御する単一の一体化されたものの概略図である。
【図13D】図13CのようなLCセル構造であり、可変電極構造が交差する方向を向いた2つのセルの間に配置されたものの概略図である。
【図14】パルス幅変調された信号のパラメータを表すグラフである。
【図15】パルス幅変調された信号の周波数領域特性を表すグラフである。
【図16】3つの異なる周波数で駆動したLCレンズの伝達関数(屈折力対RMS電圧)を表すグラフである。
【図17】周波数調整可能LCレンズにおける、3つの異なる制御電圧に関する伝達関数(屈折力対周波数)を概略的に表すグラフである。
【図18】周波数調整可能LCレンズを有するカメラシステムの概略図である。
【図19】一様な平面状の上面電極と、上面電極の下に配置された区画された四半電極と、液晶セルの底部に配置された底部一様平面状電極と、を用いる従来技術の液晶レンズを示す。
【図20A】周波数依存性材料が区画された孔パターン電極上にある実施形態にかかる、区画された上面電極の差し込み上面図とともに、可変液晶レンズの側断面図を示している。
【図20B】周波数依存性材料が区画された孔パターン電極の開口内にある実施形態にかかる、区画された上面電極の差し込み上面図とともに、可変液晶レンズの側断面図を示している。
【図20C】周波数依存性材料が区画された孔パターン電極下にある実施形態にかかる、区画された上面電極の差し込み上面図とともに、可変液晶レンズの側断面図を示している
【図21】光学ビーム形成モードを示す概略図を示している。
【図22】全ての区画された電極部分に適用された駆動信号の周波数に対する屈折力を表す実験結果を示している。
【図23】角度に関する光軸再配向を表す実験結果を示している。
【図24A】区画された電極を用いて光軸をシフトする様々な状態の一つにおける、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示している。
【図24B】区画された電極を用いて光軸をシフトする様々な状態の一つにおける、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示している。
【図24C】区画された電極を用いて光軸をシフトする様々な状態の一つにおける、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示している。
【図24D】区画された電極を用いて光軸をシフトする様々な状態の一つにおける、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示している。
【図25】図21に示した波面に対応する、LC層における屈折率分布を示す。
【図26】非点収差エラーを補填するように構成された部分電極TLCレンズを示している。
【図27】コマ収差エラーを補填するように構成された部分電極TLCレンズを示している。
【図28A】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図28B】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図28C】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図28D】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図28E】0度から45度の間で光軸を傾斜させる、4つの孔パターン電極の準静的な制御を示している。
【図29A】上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、実施形態にかかる上面孔パターン電極の下には追加の横電極が配置されている。
【図29B】上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、実施形態にかかる上面孔パターン電極の外周の外方において追加の横電極が配置されている。
【図30】上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、実施形態にかかる上面孔パターン電極の下には追加の抵抗熱源が配置されている。
【図31】上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、実施形態にかかる液晶セルの基板の間でそれの隅に追加の圧電素子が配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
提案された解決方法は、周波数依存性材料を用いて周波数調整によって与えられた電場の空間プロファイルを調節する、調整可能液晶(LC)レンズを対象としている。したがって、レンズの調整は周波数で制御することができる。提案された解決方法にかかる装置は、調整可能焦点調節、回折、ステアリング等に利用可能である。提案された解決方法にかかる装置はまた、固定型のLC光学装置を制御するのにも利用可能である。
【0043】
図4は、周波数依存特性を有する材料の層506を用いた調整可能LCレンズの概略図を表している。この材料は例えば高誘電率の材料であっても弱導電性材料であってもよい。以降、簡潔にするためにこの材料を「周波数依存性材料」と呼ぶ。前記材料は機能上、その中で限定的な電荷移動度を実現する特性を有しており、また、その電荷移動度は、装置に適用される電気信号の周波数によって決まる。そのため、ある特定の周波数依存性材料では、例えば、比較的低い周波数の電気信号が大きな程度の電荷移動度(侵入/移動距離)を材料内で生じさせ、一方、比較的高い周波数が比較的小さな程度の電荷移動度を生じさせる。与えられた駆動信号に応じて電場を発生させる電極構造(対)と併せて周波数依存性材料を利用すると、電荷移動度によって、周波数依存性材料への電荷の侵入深さが決定される。その結果、電場形成の情況において、「良い」導電層のように機能する材料の部分と、「不良な」導体のように機能する部分と、が決定される。したがって、電荷移動度が大きい場合、前記周波数依存性材料の大部分は、導体と考えることができ、隣接する電極が拡大しているようにふるまう。その結果、提案された解決方法ではこの周波数依存特性は、動的に設定可能な有効な電極表面を形成するのに利用され、当該有効な電極表面は、駆動信号の周波数を変えることで変化しうる。有効な電極プロファイルをこの方法で変更すると、前記電極構造における2つの電極間の電場のプロファイル(空間変調)に対応する変化がもたらされる。LC層を電極間に配置した場合、動的に変更可能な電場プロファイルをこのようにして利用することで、LC層の光学特性を動的に変更させることができる。
【0044】
更に図4に関して、液晶セル(LCC)520はLC材料521の層から構成されており、これは、ラビング処理したポリイミド等の材料で形成された「配向」コーティング522の間に挟まれている。LCC520の下面は、比較的一様な透明導電層(すなわち、電極)523を備えており、当該透明電極層は、酸化インジウムスズ(ITO)等の好適な材料で形成されている。前記下面には基板524(例えばガラス)が備えられており、前記透明導電層を支持している。必要に応じて、前記LCCの上面で、上方の配向コーティング522の上に、中間(緩衝)層525を設けてもよい。
【0045】
提案された解決方法にしたがって、調整可能LCレンズにおける勾配制御構造502は、隠れ電極を用い、周波数調整によって電場の空間変調を生じさせる。
【0046】
勾配制御構造502は、リング状の固定された孔パターン電極リング504からなり、これは、例えば透明である。図4にて、電極504は、周波数依存性材料506の層の上部に位置しており、図5の(積層構造)設備では、周波数依存性材料506の底に電極504が位置している。層506は、電極構造の一部であり、この電極構造を、本明細書では隠れ電極と呼ぶ場合もある。追加のカバー基板513(例えばガラス)が、勾配制御構造502の上部にて、透明な中央電極504と周波数依存層506との上に設けられていてもよい。
【0047】
前述のように、周波数依存層506は、適用されたAC励起駆動信号によって生じる電荷の侵入深さが周波数毎に異なる、複素誘電性材料を含む。周波数毎に電荷の侵入深さが異なると、有効な電極表面を拡大(移動)させることにより、電極構造を再構成することができる。言い換えれば、ある周波数での電荷の侵入深さによって、有効な、すなわち「実質的な」電極表面を形成することができる。有効な電極表面は、周波数によって大きさが異なる(前記の有効な電極表面に対して異なる位置にある)。電極を用いてLC層に与える電場を発生させるために、様々な有効な電極表面が用いられ、LC層に作用する電場を変化させることができる。これにより、それの光学特性が変化する。すなわち、例えば、電極に適用される周波数によってLCセルの光学特性は制御できるので、調整可能LCレンズは周波数調整可能である。更に、周波数調整は電圧の振幅に依存していなくてもよく、その場合、前記調整は、様々な周波数の励起駆動信号に対して実質的に(本質的に)同一のRMS電圧を用いて達成することができる。
【0048】
更に図4に関して、図示されたレンズは、実現可能な様々な状態にて機能する。周波数依存層506内にて大きな程度の電荷移動を発現させる制御駆動信号周波数では、電極504と層506との結合物が、(共に)一様な「上部」電極と考えられる。すなわち、層506への電荷侵入の程度が大きいと、電極504が「拡大」し、有効電極が、電極504における開口全体にわたる構成において、層506の全体(全長)にまで広がっている。下部電極構造523もまた平坦で一様であることから、LC層全体の電場も実質的に(ほぼ)一様であり、LC分子もまた、一様且つ配向不良も生じずに再配向され、さもなければ、孔パターン電極にかける電圧振幅を変化させることにより再配向されるLC構造に影響しうる。対照的に、周波数が電極に適用され、層506内の電荷移動が非常に制限される場合、有効な上部電極形状は、ほぼ電極504のみの形状であり、その結果、LC層全域で生じる電場は一様でなくなる(空間変調がなされる)。この例では、一様でない電場は、孔パターン電極504の周囲に密集して、LC層521の光学特性を予め定められた程度変更する。周波数制御は、このように、所望の光学的な調整を行うために用いることができる。
【0049】
本来の電圧振幅調整ではなく周波数調整によって、電力消費量の目的か又は液晶の変調の目的のために電圧範囲をより効率良く利用することができる。また周波数制御を利用することで、有効な電極形状と上述のように電極によって発生される電場の形状とを動的に制御する能力を生じさせることもできる。
【0050】
図6及び7は、図4の層構造における等電位面を表している。図6に示すように、中/高周波数の駆動信号(この場合は20Vで3kHz)を用いると、周波数依存層内で中程度の電荷侵入(移動)が生じ、それによって、穏やかな勾配として図に示された特定の電場が発生する。使用可能な周波数範囲は、用いられる周波数依存性材料のパラメータに依存する。図7に示すように、比較的低い周波数の駆動信号(この場合は20Vで100Hz)を用いると、周波数依存層内でより多くの電荷移動が生じる。これによって電場プロファイルが平坦化されて、LC層にて対応する一様なディレクタ再配向が生じて、配向欠陥、いわゆる回位を容易に無くすことができる。この種の電場プロファイルはまた低いRMS電圧でレンズを「消去」することもでき、3つ目の電極を必要としないか、或いはホスト装置の性能を低下させるか又は電圧限界に触れる傾向がある極低い(例えば0ボルト)電圧振幅若しくは極高い(例えば100ボルト)電圧に駆動信号電圧を変化させる必要もない。この平坦な準静的なポテンシャル面は、レンズの径全体における電場に対応している。ここではまた、「低」周波数の範囲は、用いられる周波数依存性材料のパラメータに依存する。
【0051】
図8及び図9は、図5の構造における等電位面を表している。図8は、25Vで周波数700Hzの駆動信号が与えられた、図5の積層構造における電場プロファイルを表している。この比較的高い周波数駆動信号は、周波数依存性材料内に中程度の電荷移動を発生させ、その結果、図に示すように、穏やかに変化し且つ空間的に変化する電場プロファイルがもたらされる。一方、低周波数の駆動信号(例えば25Vで100Hz)は、図9に示すように、(比較的)相対的に平坦な空間分布の電場を生じさせる。
【0052】
図10A〜図10Eは、図4に示す(セルの)積層構造における調整可能LCレンズ(TLCL)の効果を実験的に示したものを表している。図示した画像を得るために、単一の液晶層を備えた調整可能レンズは、2枚の交差偏光板の間に(45°で)配置されている。図10Aは、制御駆動信号で稼働する前のLC配列の一様なプロファイルを表している。図10Bは、比較的低い駆動周波数の駆動信号を電極に印加して稼働したときの、一様なLC分子配向プロファイルを表している。この低周波数駆動で生じた一様な電場プロファイルは、レンズ効果を有しない、対応する一様なLC分子配向プロファイルを含む。駆動信号の電圧振幅を0V(図10A)から35V(図10B)まで上げることによって、液晶分子の配向は変化するが、配向勾配は生じず、そのためレンズ効果は生じない。図10C〜図10Eは、周波数依存性材料層(誘電体)の電荷移動度が中程度の場合の、駆動信号周波数でのレンズの動作を表している。つまり、10VRMSで1.1MHzでは(図10C)、多数の干渉縞は、勾配とそれに対応するレンズ効果の存在を示している。電圧を35VRMSまで上げると(図10D)、勾配が部分的に減少し、それに応じてレンズの屈折力も部分的に減少している(干渉縞の減少)。同様の屈折力の減少効果は、図10Eに示すように、電圧は同じだが周波数を、周波数依存層の電荷移動度がより高い点まで周波数を下げた(図10Bに示す状態に近づけた)場合に得られることがある。
【0053】
図11A及び11Bは、振幅変調状態(一定の周波数)にて稼働された、図4に示すセル構造における、RMS電圧に対する振幅変調領域での屈折力とRMS収差それぞれについての実験データ(Shack−Hartmanデータ)を示している。この実施例では、駆動電圧1.1MHzが図4に記載された構造を有するLCレンズに印加され、駆動信号電圧の大きさが変化している。図11Aからは屈折力の穏やかな変化が明白に認められるが、図11Bには、周波数を更に調節しなくても単一の電圧振幅制御を用いることで得られた、優れた(極めて低い)収差レベルが表されている。図に示すように、9ジオプタの屈折力でも、収差は0.18マイクロメートル未満である。しかし、電圧を挙げるとレンズの「消去」効果がなくなることに注意しなければならない。V>70VRMSでも約1.5ジオプタの「残留屈折力」が存在しており、非常に注目すべき周波数制御状態になっている。
【0054】
提案された解決方法の様々な実施態様を表す図4、図5等の図面は、概略図であって、正確な縮尺ではないことが当業者には分かるであろう。つまり、周波数依存層が他の層に比べて比較的厚く示されているが、実際には非常に薄い可能性があり、周波数依存性材料の位置に基づいて有効な電極プロファイルを動的に形成するために利用され得る。また、電極の「拡大」は、レンズの光軸に対して並行な方向であっても、垂直な方向であっても、その両方であってもよい。そのため、例えば図5の構造では、孔パターン電極504と平坦な電極層523との間にて駆動信号は、周波数依存層506内の電荷移動がほとんど無い場合、LC層521をまたがる、一様でない電場を生じさせる。この一様でない電場は、例えば、LC層に所望のレンズプロファイルをもたらす可能性がある。一方で、周波数依存層内に有意な程度の電荷移動度を発現する周波数の駆動信号が印加されると、有効な電極構造が孔パターン電極の中央の「孔」領域にまで実質的に広がるので、電極構造全体にわたって平坦な有効な電極が形成される。孔パターン電極のこの「水平方向の」拡張は、前記構造における2つの一様な電極によって電場プロファイルを一様なものへ変化させる。この一様な電場は、液晶分子の均質な再配向に影響を及ぼし、その結果、レンズ効果が消去される。
【0055】
前述の比較的高い周波数から比較的低い周波数までの周波数範囲では、駆動信号の周波数は、徐々に変化する光学パラメータのLC層が生じるように調節されうる。この例は、駆動電圧の周波数を変えることによって屈折力を最小値から最大値まで変化できるレンズを作製することである。従来の調整可能LCレンズは、一定周波数の駆動信号を利用して、電圧レベルを調節してLC層の光学特性を変化させる。このように、平坦な電極と孔パターン電極(図4と図5のように)の間の電圧振幅を変化させればレンズの屈折力は変えることができるが、従来のシステムのものと同様の固定電極構造では周波数調整ができず、複雑な電場プロファイルも到底得られない。
【0056】
パターン電極を有する従来のシステムのもう一つの課題は、「回位」の影響である。一般的なLCレンズでは、LC分子にはいずれも共通のプレチルト角が付与されているため、それらは0ボルトでは整列している。パターン電極を有するレンズの電圧調整を行うと、電圧上昇によって、一様でない電気力線が形成されて、同じ電場強度を受ける他のLC分子とは異なる配置転換を生じるLC分子が現れる。この回位は、レンズに収差を生じさせ、この回位は、レンズを消去する非常に高い電圧の駆動信号で全分子を整列させてから、電圧を所望の屈折率をもたらすのに適した範囲まで下げることによって取り除くこともできる。一方、提案された解決方法にしたがって、図5の実施態様等では、最初に比較的低周波数の駆動信号を適用することによって、有効で一様な電極プロファイルとそれに応じた電場プロファイルが生じる。電圧振幅を閾値電圧より高くすることで、LC分子は、共通した角度方向に再配向している(この状態では、屈折力はゼロである)。そして、周波数依存性材料の電荷移動度が減少させるために、駆動信号の周波数を増大させてもよい。周波数が増大すると、一様でないプロファイルの電場が形成され、所望のレンズ効果が生じる。全て閾値よりも高い低周波数の駆動信号によってLC分子は予め整列させられたため、レンズプロファイルが形成しても回位は続かない(生じない)。
【0057】
図12Aは、提案された解決方法のレンズ構造によって周波数調整が達成できる仕方の例を表すグラフである。図示した曲線は上述のように周波数0にまで及んでいるが、レンズに供給する初期駆動信号は100Hzのような低いAC周波数であってよい。この周波数では屈折力は低い。なぜなら、LC分子の全てが本来は統一して整列されているためである。駆動信号の電圧を変えずに周波数を増加することもでき、また図に示すように、LC層にレンズ特性を一様でない電場が生成するにつれて、屈折率は上昇する。この実施例では、屈折率は、約25kHzで最大値に達した後、また低下し始める。このように、レンズを電圧調整する代わりに又は電圧調整することに加えて、周波数調整がどの程度利用できるかが分かる。図12Bは、図12Aと同様であるが、更に高い周波数範囲で周波数調整可能な別のレンズ構造を表している。しかし、図12Bは、活性な屈折力範囲を越えて現れた、非常に低いRMS収差レベルも示している。
【0058】
空間的に一様な低角のプレチルトアライメント層を利用した屈折率分布型液晶レンズ(GRIN)の場合、液晶材料は電場の方向に基底状態から所望の最大再配向まで再配向する。プレチルト角が電場に対してほぼ90度のとき、LC分子を再配向させる電場の能力が最も弱い。そのため、ある種の調整可能GRIN光学装置では、液晶の配向に調整可能な範囲を決めて、液晶を再配向させる能力が弱い電場では液晶を配向させないことが有利な場合もある。これは、一様な電場を適用することで完了し、その結果、基底状態ではない液晶の再配向が生じて、新たな感応性の高い「基底」状態又は基準状態を発現することで、変調された電場を一様な電場の上部に適用してレンズ又は他の光学装置を形成することができる。あるいは、これは、電場(最低屈折力)と基状態方向での一様な電場設定から外れた空間変調配向(高い屈折率)とを用いたアライメントに近い配向で生じる屈折率を変化させることで達成することができる。これは、電場と液晶の基底状態との間の弱い相互作用によって収差を生じさせない。したがって、提案された解決方法は、周波数依存性材料を利用してこのような好適な電場を形成できると考えられる。
【0059】
完全なTLCL
図13Aは、隠れ電極を利用して周波数調整によって電場の空間変調をもたらす、調整可能LCレンズの更なる変更態様を表している。図13Aにおいて、電場勾配を制御する構造部は、固定(好ましくは低い)電気抵抗を有する孔パターン周辺の電極1304で構成されているが、この電極の真ん中の(同一平面上の)中央ディスク状領域及びその平面を囲む領域は、周波数依存性材料1306で満たされている。この勾配制御構造(GCS)1302は、直交面内で、ディレクタ(LC分子の長軸の平均配向)を有するLCセル1320a、1320bの間に挟まれている。例えば、ディレクタの1つがXZ面にあり、第2のディレクタがYZ面にあり、前記サンドイッチ部の法線がZ軸であってよい。(この実施態様では、LCセルの従来利用される「内部」電極の一方を取り除くと、LC層内に電場勾配を形成することができる。)GCS1302の位置を好都合に利用して、GCS用の複数の機能、例えば電極とヒーターと(周波数依存性材料の)シート抵抗又は温度センサ、光学素子形状、ビームのステアリング、パン/傾き、光学エラー補正、画像安定化処理等とを組み合わせてもよい。ヒーターと温度センサを一緒に用いると、装置の温度を最適レベルに維持するのに役立つ場合がある。電極1304を更にパターニングすることで、電場プロファイルの形成時に重要な役割を果たしかつ経時的に徐々に部分変化し得る周波数依存性材料1306の電気特性、例えばシート抵抗を測定することも可能である。これに関連して、GCSを特殊合金(例えばMo/Al)で別の形に作製することでこれら複数の機能が達成される可能性もある。層構造(アセンブリ)の中央に電場の空間変調をもたらす層を設けると、上述のように変調層の下にある1層又は複数の層で電場に対し均一に影響を及ぼすという利点がある。電極構造にて中間電極を設けることで電極間の距離は基本的に半分になる。また、2つの電極セルを同時に駆動しなければならないにもかかわらず、駆動信号や部品はほとんど変わらない。
【0060】
例えば、ウエハ段階の製造方法が、図13Aに示した完全なTLCL層構造を形成する、層ごとの蒸着工程を含んでいることは、好ましい。同様に、ウエハ段階の製造方法が、分離している半分のTLCL(単一の極性である)を形成する、層ごとの蒸着工程を含んでおり、二つの半分のものの一つが、他の上面に結合される前に、裏返され90度回転させられることは、好ましい。後者の場合、パターン電極1302、1304は、半分のもののうちの一つに蒸着(が実行)されてもよく、半分の層は蒸着(二度の蒸着を)されてもよく、半分の層は、結合後に層1302/1304を形成する。二度の蒸着を実行する際にて、驚くべきことに、稼働時に、弱く結合した導電性を有する半分の層が結合し、それらの電気的な特性が一般的に現れることが発見された。前記結合は、少なくともある程度は、エバネッセント場の結合の結果であると考えられる。製造方法をうまく改善する、この驚くべき結合および特性の発現によって、利点が得られる。例えば、弱導電層の導電性の、通常の浸透領域のばらつきによって、製造収率が低くなる。しかしながら、二度の蒸着を実行すると、裏返され回転させられ結合されるときに、所望の範囲内に平均的な電気特性を弱導電層に与えることができる半分のTLCLの対(混合物および一方)を選択できる。このような事を行うことにより、高い製造収率を達成できる。
【0061】
更に、図5の半分のTLCLを用いて実行する際、回転させたり裏返したり結合したりして完全なTLCLを形成すると、上部及び下部孔パターン電極に挟まれた一体の弱導電層が形成される。驚くべきことに、稼働中に互いに離れた孔パターン電極が(一体の弱導電層を介して)対になり、互いに電気的に一つのものとして現れることが、わかった。したがって、隣接する弱導電層および電極が、単一の弱導電層/電極構造として形成され且つ稼働することが、わかった。
【0062】
要約すると、様々な電極構造はTLCL層構造にて用いることができ、各々は利点および欠点を有する。欠点の中には、特定の適用形態ではたいして重大ではないものがある。図13Bおよび図13Cには、LCセルを有する、提案された解決方法にかかる新規な電極構造を一体化する2つのありうる構成がそれぞれ示されており、光のs偏光とp偏光とを操作するためのものである。図13Bの構成において、2つの液晶セル(LCCxおよびLCCy)は、交差する方向に沿って配置されており、直交する光の偏光を操作している。また、CVES(制御電極構造)は、LCC層の一方の側に位置している。この例では、CVESの各々は、LCC層のうちの互いに異なるものを制御するのに用いられる。2つの弱導電層を用いるとき、導電性の組み合わせに関して注意する必要がある場合があり、2つの弱導電層を用いることは、ある特定の適用形態にて求められうる。図13Cに示す代替の構成は同様であるが、1つの電極構造のみを用いており、2つの交差する方向に配置されたLCCを制御している。この場合、LCCyにおける上部電極構造および下部平坦電極による電場を制御できるように、上側のLCCxの下部平坦電極は配置されている。図13Dに示す構成を用いることも可能であり、CVES層は、最終装置の中央に(2つの交差する方向に配置されたLCセルの間にて)適合されて配置されている。
【0063】
ここで述べた周波数依存性材料のいずれかは、上述の様々なLCレンズにて用いられうる。この物質は、駆動周波数の変化によって変化しうる(弱い導電性を有する)複素誘電率を有する。この物質の特定の特性は、問題となっている特定のレンズ構造にしたがって選択されうる。クレームされた発明の範囲から外れることなく、様々な材料の組成、様々なLC層、様々な電極、様々な幾何学的な形状等を、上述のLCレンズを製造するのに用いることができることには、注目するべきである。様々な光学装置は、ここで述べたLCレンズを用いて改良されうることにも、読者は評価すべきである。
【0064】
例
調整可能なLC光学装置は、積層部品を用いることにより形成され、優先的に、並行して(「ウエハ段階の製造」と称され、多くのユニットが同時に製造される)最終製品が単体化することにより得られ、追加的に、2つの(両方の)直交する偏光に焦点を当てるべく交差する方向にて駆動軸(ディレクタ)を有するレンズを結合することは、評価されうる。
【0065】
非限定例として、本発明の様々な集束型平面反射レンズの実施態様の寸法について述べる。寸法は、構造の選択と材料の選択に応じて大幅に変化し得ることが考えられる。カバー基板は、厚さ50〜100ミクロンのガラスから製造され得る。孔パターン電極はアルミニウム等の不透明な金属で製造されても、又は透明な酸化インジウムスズ(ITO)で製造されてもよい。電極の厚さは10〜50nmまでであってよい。周波数依存性材料は、厚さ約10nmの酸化チタンから製造され得る。酸化チタンは、制御信号周波数によって変化する半導体特性を有している。
【0066】
周波数依存性の誘電(又は複素誘電)材料は、以降に記載の様々な材料から構成することができる。このような材料の必須特性は、弱導電性を示し得ることであり、それによって制御信号の周波数に応じて変化する電荷移動度がもたらされる。これによって、光学特性又は屈折力を制御するために電場の形状を周波数調整したり、更にはLC光学装置のオンオフ操作を周波数調整したりすることもできる。
【0067】
上部及び下部のアライメント層は、約20〜40nm厚のポリイミド層であってよく、これらをラビング処理することで、低角でプレチルトした液晶基底状態をアライメントさせる表面が得られる。液晶層は、例えば5〜30ミクロン厚であってよい。空間変調式の屈折率分布型レンズを含むこのような単一の液晶層は、光の単一直線偏光を集光する。図13Aの実施態様では、孔パターン電極1304と周波数依存性材料1306が上部基板に配置されており、この電極は2つのLC層又はセル1320a、1320b間で共有されている。
【0068】
この方法で2層〜4層のTLCLをアセンブリすると、直径約1〜3mm及び厚さ約460ミクロンのレンズが現れると考えられる。TLCLの屈折力は約8〜16ジオプタになることがあり、これは大抵のカメラ用途に適している。TLCLは、1層だと可変集束レンズを提供し、2層だと、ズームレンズを提供することができる。
【0069】
上述の実施形態において、TLCLの構造は、本来的には全て平坦であり、すなわち、周波数依存性層、電極層(ITO等)、およびLC層等は、平坦である。電極層のパターニングおよび周波数依存性層の複素インピーダンスのいずれかあるいは両方によって、電場成型がなされる。しかしながら、他の構成を用いることによって、電場成型を行うこともできる。
【0070】
周波数依存性材料
上述のように、提案された解決方法は、本明細書に記載のLCレンズ等の調整可能光学装置での利用に適した、周波数依存性材料の様々な化学組成物を提供する。このような材料は、ビームステアリング装置やシャッター等のような他の周波数依存性光学用途にも利用できることが当業者には分かるであろう。周波数依存性材料の均質又は不均質層をレンズ、ビームステアリング装置、及び/又はシャッター構造に組み込むことで、周波数調整による電場の空間変調がもたらされる可能性がある。つまり、調整を周波数で制御することができる。このような装置は、調整可能焦点調節、回折、ステアリングなどに利用できる。
【0071】
前述の様々なLCレンズ構造において、周波数依存層は、複素誘電体の誘電率を有する材料から作製され、前記材料は、前記システムの電極に適用される駆動周波数に依存性(弱導電性を包含するもの)を示す。非限定的な実施例によれば、この材料は、熱又は光重合可能な導電性材料であってよく、その組成には、次の要素を包含することができる。
(i)重合性モノマー(直鎖又は環状)化合物、
(ii)反応開始剤、
(iii)最終組成物の誘電率又は導電性を変化させる添加物、
(iv)重合体のガラス表面への接着力を向上させる接着剤(接着剤は、表面処理剤として用いて又は前記溶液に直接組み込むことで接着力を向上させることができる)、及び
(v)前記混合物の粘度を変化させる充填剤。
【0072】
ある実施例では、90%(重量)のイソデシルアクリレート(SR256)を0.3%のLi+CLO4−(重量%)と混合する。そして3%の反応開始剤2−ヒドロキシル2−メチル1,1−フェニルプロパノン(ダロキュア(Darocure)1173)を加えて、混合物を室温で慎重に撹拌して、均質な透明溶液を生成する。次に、10%のECA(2−エチルシアノアクリレート)(モノマー類の全質量に対する重量%)を加えて、最終溶液を室温及び暗状態で15分間慎重に撹拌した。この混合物は、材料をUV光源によって強度15mV/cm2において3分間露光することで重合可能である。
【0073】
別の実施例では、組成物の第1液を調製するために、35(重量)%の光学接着剤OA9352HT2(HT)を65(重量)%の(2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレートモノマー)と混合し、この混合物を室温で慎重に撹拌することで均質な透明溶液を生成する。次に、10%の4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロホスフェート(モノマー類の全質量に対する重量%)を加えて、最終溶液を室温及び暗状態で15分間慎重に撹拌する。
【0074】
組成物の第2液は、低ε又は導電性を有するものであって、55重量%のイソデシルアクリレート(SR395)と光学接着剤(45重量%、AT6001)とを混合したものである。この溶液を室温及び暗状態で15分間慎重に撹拌する。この混合物は、材料をUV光源によって強度15mV/cm2において3分間露光することで重合可能である。必要に応じて、シリコーン系由来の光学エラストマーを前記熱重合性又は光重合性の導電性材料に含有させ、それを前記組成物の低ε部分として利用してもよい。この材料は、熱硬化性化合物に分類することができる(そして、1液型又は2液型シリコーンエラストマーでもあり得る)。
【0075】
様々な材料組成物、様々なLC層、様々な電極、様々なディレクタアライメント、様々な幾何学形状等を用いて同様の光学装置を製造できることにも留意すべきである。すなわち、本明細書に開示した材料と物理的構造物との様々な組み合わせは特定の用途に利用され得るが、光学装置の周波数調整に利用できる周波数依存性材料の使用は、これら各実施態様に共通している。
【0076】
複素誘電体の誘電率を有する材料の多種多様な化学組成物は、前述の周波数調整可能レンズ、ビームステアリング装置、及び/又はシャッター構造での利用に好適な場合があることが判明しており、前記材料は、電極に適用される駆動周波数を加減することで(弱導電性を含む)変更が可能である。
【0077】
提案された解決方法のある実施態様によれば、重合性モノマー化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有し、また虚数部を含む複素誘電率(導電率と呼ぶ)も有しており、そして反応開始剤は、UV−可視光若しくはNIR感応性又は感熱性の分子の組み合わせである。
【0078】
特に、反応開始剤化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩混合物、ヘキサフルオロリン酸塩、及び当業者に既知の任意の他の好適な反応開始剤を挙げることができる。好ましい反応開始剤化合物は、4−メチルフェニル[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロホスフェートである。
【0079】
熱重合性又は光重合性の導電性材料の誘電率を変化させる添加物は、有機イオン性化合物(例えば、ヨードニウム(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロホスフェート又はトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩であって、プロピレンカーボネートと混合したもの)、無機イオン性化合物(例えば、Li+ClO4−、K+ClO4−等)、イオン性有機金属化合物、又はこれらの任意の混合物、及び当業者に既知の任意の他の好適な添加物であってよい。
【0080】
接着剤は、UV−可視光若しくはNIR感応性であるか、又は熱反応開始剤を用いて重合される接着剤であり、表面処理剤として用いて又は前記溶液に直接組み込むことで接着力を向上させることができる。前記実施例では、接着剤は光学接着剤OA9352HT2(HT)であるが、他の好適な接着剤も当業者には既知である。
【0081】
前記実施例で説明したように、光学エラストマーは、光学接着剤(AT6001)と混合したイソデシルアクリレート(SR395)、及び当業者に既知の任意の他の好適な光学エラストマー類からなる群より選択されてよい。
【0082】
提案された解決方法の別の実施態様によれば、周波数依存性材料は、高誘電率の液体であって、電荷移動度を生じさせることができるε値2.0〜180.0までのあらゆる透明な液状物質から選択される。好ましくは、高誘電率液体のε値は30.0〜150.0である。更に好ましくは、高誘電率液体のε値は60.0〜120.0である。液体は、純粋なものであっても、アルキレンカーボネート系混合物、例えばプロピレンカーボネート(PC)又はグリセリンカーボネート(GC)(それぞれεが67と111であってアルキル基、置換アルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、置換アリール基、及びアリールカルボニル基を有するもの)であってもよい。更に、水、グリセロール、及び水と有機若しくは無機化合物(例えば、グリセロール、アルカリ塩、又はアルカリ希土類塩)との混合物の利用も考えられる。ある特別な実施例は、7%の蒸留水と93%のグリセロールとの混合物である。この溶液は、室温で15分間撹拌する。
【0083】
提案された解決方法の別の実施態様によれば、周波数依存性材料は電解質ゲルであって、高分子材料(マトリクスとして使用されるもの)、イオン性組成物、及びイオン輸送体が挙げられる。
【0084】
一般に、イオン性組成物やイオン輸送体材料と混合できるあらゆる市販ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、エポキシ材料、ポリウレタン、ポリカーボネート、及びポリフェノール(polyphenylic)材料)をポリマーマトリクスとして利用することが可能である。アニオン種及びカチオン種を有するイオン性組成物は、溶解性アルカリ塩又は希アルカリ塩(例えば、Li+、K+等)、有機化合物又は有機金属化合物からなる群より選択することができる。
【0085】
イオン輸送体材料は、プロピレンカーボネート(PC)若しくはエチレンカーボネート(EC)等の純粋な液体であっても、2種以上の液体の混合物であっても、或いはエーテル基又はフェノキシ基等の極性基を有するモノマーであってもよい。この極性基は、側鎖であっても、ポリマー主鎖に組み込まれていてもよい。例えば、(2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレートモノマー)中のエーテル基は、長い側鎖であり、イオン輸送体の役割を果たす。電解質ゲルの例は、10重量%のPMMAを80%プロピレンカーボネート(PC)に溶解したものであってよい。この溶液を室温で一晩撹拌した後、この溶液に10重量%の量のLi+ClO4−を加えて室温で撹拌する。最終的にゲル様の材料を、調整可能LCレンズの高誘電率層部分として利用する。
【0086】
提案された解決方法の更なる実施態様によれば、周波数依存性材料は、導電性のイオン性液体であってよい。この材料は、塩素酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩及び炭酸塩のように、イオン種を有する様々な有機、無機又は有機金属化合物に分類される。このような材料の具体的な非限定例としては、(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)及び(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)が挙げられる。
【0087】
周波数依存性材料のまた別の例は導電性ポリマーである。共役ポリマーの最も重要な特徴は、導電体として働くその能力である。これら材料は、従来のポリマー(例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン)又はクレビオス(Clevios)製のPEDOTポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びPEDTから、低バンドギャップで本質的に導電性のポリマー類のように特殊な導電性を有する新規ポリマーにまで及ぶ。
【0088】
ナノ粒子環境では、材料を水、有機溶媒、モノマーに分散することがある。例えば、ATO((SnO2)0.9(Sb2O5)0.1)は水又はポリエチレングリコールジアクリレートに分散され、又は粉末形態で使用されるナノ粒子はスパッタ法で基板に薄層としてコーティングされている。あるいは、炭素ナノチューブ(CNT類)は円筒形ナノ構造の炭素同素体である。この材料は、水、又はモノマー等の有機材料中に分散されたナノ粒子として用いることができる。ナノ粒子は、スピンコーティング法等の様々な方法でガラス表面に堆積することができる。
【0089】
周波数依存層を調製するもう一つの可能性は、金属酸化物をガラス基板表面上の薄膜として堆積することに基づいている。この場合、金属化合物をガラス表面に堆積させてから、酸化プロセスで処理する。この方法では、電子ビーム法、スパッタ法、又は熱蒸着法のために金属ターゲットが使用される。例えば、電子ビーム法で作製されたSnO2、Ti3O5、ZnS、ZnO2等の金属酸化物は、周波数依存性部として利用することができる。
【0090】
導電性ガラスを、調整可能LCレンズの周波数依存性部として利用することもある。この場合、導電性材料は、ガラス(バルク)にドープして薄膜蒸着法(例えば、電子ビーム法、スパッタ法、又はゾルゲル法等)でのターゲットとして利用することができる。例としては、ガラス中に直接ドープして薄膜蒸着法での導電性ガラスターゲットとして利用される、モリブデン、銀、又はこれらの混合物が挙げられる。Ti3O5(酸化チタン)層は約10nm厚とすることができ、一方、イオン導電性を多少もたらすポリマーも十分に機能し得るが、その厚さは0.1〜30ミクロンまでの範囲である。
【0091】
周波数依存性材料を含む「隠れた、また、周波数制御された」電極を用いて、電場の空間変調を生じさせることにより、光学的に透明な物質の選択の幅を大きく広げることができる。このようなLCレンズの構成は、物理パラメータの変化を引き起こすけれども、簡素であり、製造の費用効率もよい。最終的に、導電性の周波数依存性は、追加的な手段であり、その導電性によって、より薄い膜を形成でき、また、電場の空間プロファイルを制御できる。
【0092】
低い周波数依存性を有しあるいは周波数依存性を全く有さないが、励起信号の周波数に「敏感」ではある材料を、特定の装置が利用しうることも、当業者は認識するだろう。これは、異なる要素を連結することによって、分布RCL電気回路におけるように、周波数に依存して(横面にて)電場を弱める場合である。
【0093】
駆動信号
対応する光学装置の周波数依存性を制御するために本明細書で使用される特定の材料は、様々な特性の多種多様な駆動信号を利用することができる。これら信号の特徴には、周波数変動(周波数変調)が挙げられ、更には振幅(振幅変調)や動作周期制御(パルス幅変調)も挙げることができる。これらの幾つかの例について、以下に詳述する。
【0094】
パルス幅変調
周波数を制御する一つの方法は、いわゆる「パルス幅変調」(PWM)信号を利用するものである。図14には、PWM信号のパラメータ、すなわち振幅と周期、そして動作周期又は曲線因子(「FF」)が表されている。図示するように、PWM信号は合計周期で規定される特徴を有しており、パルス持続時間は動作周期で決まる。PWM信号の周波数領域特性を図15に概略的に示すが、これは、様々な曲線因子に対するPWM波形の周波数成分を表している。パルス列には、波形周期に相当する優位周波数が含まれていることが分かる。また一方、このような波形のフーリエ級数が示すように、低振幅の高周波数成分は矩形波に含まれる。そのため、動作周期50%の矩形波パルス列のエネルギーのほとんどはPWM信号周期に相当する「中心」周波数に含まれているが、一部のエネルギーは他の周波数にも伝播する。このことは、図15に示す「高FF」包絡線で表される曲線因子で明示されている。低い曲線因子の場合、中心周波数から外れるとPWM信号中のエネルギー量が大きくなる。これは、高周波数域に大量のエネルギーを有するブロードな包絡線と一致する。高い動作周期の場合、中心周波数から外れるとPWM信号のエネルギー量が小さくなる。例えば、PWM動作周期を50%から5%まで低下させると、RMS電圧が正規化数1.0から0.1まで一桁減少するが、それと同時に、高周波数域でのエネルギーがかなり増加する。
【0095】
TLCLの制御は、例えば携帯電話のカメラ用のレンズ等の特定用途ではPWMを利用する場合がある。PWM制御は、このようなTLCLにある種の利点をもたらし、また、次の特性があると考えられる。
【0096】
1)ある特定の「中心」周波数、例えばf=f1では、駆動「最大振幅」は、駆動信号の実スペクトルがかなりブロードとなることを踏まえて、最大屈折力が比較的低いFFで達成されるように設定することができる。その場合、そのFFを単に増加させるとRMS電圧も上がるので、屈折率は低下するが、その低下は曲線f1(図16)と同じように進まない。実際には、FFを増加させると駆動信号のスペクトル成分がかなり減少するため、屈折率の低下は、RMS電圧の上昇だけでなく高周波数信号成分の減少にも起因すると考えられる。これによって屈折率は非常に「速く」低下し、比較的低い電圧の利用が可能となる。
【0097】
2)ある特定の駆動周波数及びFFで最大屈折率に達すると、駆動周波数はシフトダウンし、ある伝達関数から別の伝達関数へ効率良く変化する(例えば、図16ではf1からf2へ変化する)。これは、高いRMS電圧を必要とせずにレンズの屈折率を最小値にするのに役立つ。
【0098】
3)FFの変化と周波数の変化を併用するか又は同時に生じさせことで、屈折率の制御を達成することも可能である。提案された解決方法では、周波数調整による電場の空間変調を生じさせるために隠れ(curved)電極システムを用いた、調整可能LCレンズに関する。そのため、レンズ調整によって周波数制御が可能だが、FFを調節すると駆動信号の関連周波数成分も同様に変化する。このような場合、FFと周波数の両方を用いてレンズ調整を行うこともできる。上述のように、提案された解決方法の装置は、調整可能な焦点調節、回折、ステアリング等の多種多様な用途に利用可能である。
【0099】
振幅変調
PWMモードとは異なり、振幅変調(AM)モードは、特定の周波数を伝えるようにレンズを調節するのに利用できる。図16は、様々な駆動周波数f1〜f3において振幅変調モードでの屈折力対RMS電圧を表す伝達関数の概略図を表している。振幅変調(AM)モードとPWMモードの両方で提案されるTLCLには様々な制御選択肢が利用可能である。AMモードは、PWM信号が、曲線因子の変更によるRMS振幅制御を利用して前記信号の比較的高い又は低い周波数成分を決定するという点で、PWMモードとは異なる。それに対して、AMは、曲線因子100%で設定された周波数信号を利用して、その振幅だけを変えるものである。図16の曲線はそれぞれ、様々な選択周波数における、TLCLの屈折力を変えるためのRMS電圧の利用の仕方を表している。このような特性は、図33に示すレンズでよく見られる。
【0100】
周波数変調
図17は、周波数制御レンズが様々な制御電圧振幅でどのように作用するかを表している。図示する様々な電圧振幅では、周波数の増加がレンズの屈折力の増加(及びその後の低下)に対応している。一方、屈折力の最大値は電圧に応じて大きくなり、また、最大値は高周波数域で生じる可能性がある。このような特性は、図5に示すレンズでよく見られる。図17は、TLCLの周波数制御の特徴を概略的に強調している。図17は、実験結果を再現しているが、図17は一方の次元では、一定の縮尺ではない。
【0101】
複素周波数信号
PWMやAM信号について具体的に述べたが、ある周波数で単に伝わる駆動信号や、複数の個々の周波数要素を合成した駆動信号を用いることができる。このような「複素周波数」信号は、例えば、異なった周波数の個々の信号を合成したものであってもよく、全て所定の比率で(動的に可変であるが)混合したものである。PWM方法とは異なり、複素周波数信号は、矩形波型の信号形状にすべて依存するわけでなく、あらゆる周波数要素の段階を調整するため充填率の調整を用いることはない。複素周波数信号を用いる電場プロファイル形状の例は、同時係属している2009年12月23日に出願の米国仮特許出願61/289,995号に記載されており、同出願は参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0102】
制御信号発生器の要素
光学装置を調整する制御信号は、可変周蓮制御信号回路によって提供され得、当該回路は、制御信号周波数の働きとして、前記装置内にて前記装置が光の伝播を制御できるように構成されている。
【0103】
光学装置を調整するための制御信号は、装置内の光の伝播が制御信号周波数に応じて制御されるように構成された可変周波数制御信号回路から供給することができる。例えば、図18には、LCレンズ2502と少なくとも1つの固定レンズ2504とを組み合わせたカメラの概略図を表しており、LCレンズ2502の行う焦点制御によって画像センサ2506に画像の焦点を合わせる。画像は、所望の焦点値を出力するオートフォーカス機能を備えたカメラコントローラ2508に送られる。電場コントローラ2510は、一般には早見表(形状、材料、温度、シート抵抗、カメラ等に関する利用可能な/任意の情報を含むもの)を利用して、焦点値を電気的パラメータ(この場合は所望の曲線因子)に変換する。単一のPWM波形の振幅と周期で設定する曲線因子だけでは調整が不可能な場合、コントローラ2510によってPWM振幅設定と周期設定を調整することができる。PWM駆動回路2512自体は、従来型のPWM回路であってよい。構成要素2508及び2510は、マイクロコントローラで処理されたマイクロコードを用いて実行でき、更に構成要素2512には、所望の周波数と動作周期を示すようにマイクロコントローラでも制御されるパルス幅変調電気回路へマイクロコントローラの管理下で切り替わる電源が装備されていること、が当業者には分かるであろう。
【0104】
周波数成分を制御して高周波数域を縮小させる場合、PWM振幅は減少させるが、動作周期はその後増加させることで、電極システム又はLCセルが望ましくない方法で応答する高周波数域を生じさせない機構と同一のRMS電圧を得ることができる。
【0105】
パラメトリック液晶レンズ
可変液晶レンズ(TLCL)にて周波数依存性材料を用いることを記載したが、このようなTLCレンズが非常に正確に且つ精密に配置されうる、理想的な製造条件およびアプリケーションに上記の記載が関連していることが、理解できる。しかしながら、図10Aから図10Eから明らかであるように、実際の有効な開口は、層構造例えば孔パターン電極構造によって規定されるそれとはかなり異なりうる。例えば、孔パターン電極の開口全体にわたってTLCレンズが一様であることは、理論的に可能とは言えず、TLCレンズを含む光学組立品を製造することによって、TLCレンズそれ自身を製造する際、あるいは、光学組立品全体を製造する際のいずれかにおいて、異常/収差(非点収差、コマ収差、分散、光軸の傾斜、光軸のシフト、等)を引き起こす場合がある。他の例として、アプリケーションそのものが、画像安定化を必要とする場合がある。少なくともこれらの状況に対処することは必要である。
【0106】
図19は、先行技術の液晶レンズの図を示しており、当該レンズは、一様に平坦な上部電極と、上部電極の下にて区画された四半電極と、液晶セルの下部に位置する一様に平坦な下部電極と、を用いている。
【0107】
図20Aは、提案された解決方法の実施形態にかかる区画された上面電極の差し込み上面図とともに、可変液晶レンズの側断面図を示しており、周波数依存性材料は、区画された孔パターン電極上にある。周波数依存性材料は、区画電極(図20B参照)の開口や、区画電極(図20C参照)の真下にて、区画電極の表面上にて、区画電極を覆っていてもよい。
【0108】
複数の部分に与えられる、共通の周波数制御駆動信号要素の電圧振幅だけを変化させることにより、複素電場空間変調を行うことができる。代わりに、複数の部分に与えられる駆動信号要素の周波数を変化させることにより、複素電場空間変調を行なってもよい。周波数依存性材料を有する弱導電層の上述の機能性は、電極部分の各土台の上にて用いられ、全ての電極部分によってもたらされる一体の効果が提供される。すなわち、周波数依存層内における部分的な電荷の浸透は、各電極部分によって制御され、各電極部分のすぐ近くの対応する部分においてパターン電極の範囲を制御する。全ての電極部分の一体の範囲は、対称な物理構造を用いる複素的な方法で電場を空間的に変調するのに用いられる。電場の複素的な空間変調は、同様に、全体にわたって複素屈折率分布を表すLC層の複素ディレクタ配向を介して入射ビームに特別な影響を与える。最も一般的な意味では、LC層によって提供される光学的要素は、ある特定の調整された屈折率分布を提供するという意味において「変形」させられる。TLCレンズは、所望の光学的な影響の働きとして、各部分に対する所望の制御信号の周波数および振幅で調整されうる。様々な影響を入射ビームに与えうる。静的な状態、および、準静的な光学的な影響のいずれもが、本明細書では記載されている。
【0109】
本発明を制限することなく、映像/画像を取得するアプリケーションで、駆動信号要素の特定の周波数および振幅は、有益であり、制御器は、修正参照テーブルからの修正値を用いることができる。例えば、屈折力の調整や光軸の再配向は、映像/画像の取得の際に用いられ、焦点調節機能を提供したり、(手持ち/振動する環境での)カメラの動きを補填するためTLCレンズの光軸を移動させることによって取得した画像の安定化を行う。画像追跡アプリケーションでは、光軸の再配向は、移動しているシーンを安定化するために用いられる。
【0110】
区画された電極および周波数依存性を有する弱導電層を有するこのようなTLCレンズの駆動は、図21を参照してうまく描くことができ、図21は、映像/画像の取得の際によく用いられるモードを形成する光学ビームを記載している。TLCL開口内にて空間的に不変の屈折率分布を有するLC層は、入射光学ビームに特徴的な変化を生じさせることはなく、平面位相面は、変化なく伝播する。LC層は、ガラスの板(分極効果は無視する)とそっくりに駆動する。対称的なレンズ状の開口内にて空間的に変化する屈折率分布を有するLC層は、入射平面位相面を焦点に集めさせる。図22は、全ての電極部分に適用される28Vの振幅の駆動信号での周波数に対する屈折力を記載している。直線的に異型である開口内にて空間的に変化する屈折率分布LC層は、入射平面位相面を傾けあるいはパンさせる(角度に関する光軸再配向)。図23は、1.49mmの有効瞳を有する直径が1.85mmの環状電極の角度に関する光軸再配向を示している。一体となった光学ビーム形状は、同一の周波数依存性材料の弱導電層およびLC層を用いる一つのTLCLにおいて、傾けること/パンすること、および、集束させることによってもたらされ、これにより、光軸がシフトする。図24は、図20Aの実施形態にかかる液晶レンズの平面図を示し、当該平面図は、電極部分を用いる、光軸の移動の異なった態様におけるものである。確実性のために、区画された電極に適用される一体となった駆動信号は、周波数混合を含み、適当な電圧振幅の少なくとも1つの周波数が、焦点調節の際に屈折力制御を行うために適用され、同時に、適当な電圧振幅の他の周波数が、画像安定化の際にビームステアリング制御を行うために、適用される。
【0111】
図25は、LC層における屈折率分布を示しており、当該分布は、図21に示した波面に対応しており、8つの部分を有する環状電極に関する。部分駆動信号要素の相対電圧振幅の具体例を示しており(V4=V5, V3=V6, V2=V7, V8=V1)、簡単化のために、対応する周波数は省略している。
【0112】
例えば、これには限定されないが加速度計等の適切なフィードバック機構を用いることによって、本明細書で上述した機能を実行する周波数依存性の弱導電層を有するTLCレンズを、画像安定化を行う際にも用いることができることを、再び強調することは重要である。画像安定化は、振動する環境におけるのと同様に手持ちのアプリケーションにおいて重要である。2009年6月5日に出願された米国特許20100309334号にて記載された、ブライアン ジェームス、アンドリュー ホッジ、およびリンダルによる先行技術の試みでは、非常に大きなバッファの中へ複数の画像を連続して取得し、後の工程において、動作センサが最も小さい動作を記録した画像取得時刻に基づき、取得した画像の集合から選択することを、提案している。これに対し、本明細書にて提案された解決方法にしたがって、能動的フォードバック機構および能動的画像安定化を用いることは、高速TLCL応答によって可能となり、画像保存領域と大量且つ高速な必要メモリとを削減させる。上述の弱導電層を用いる高速TLCLは、同時係属しており同一出願人による米国特許61/422,115に記載されており、同出願は、2010年12月10日に出願された「高速調整可能な液晶光学装置および駆動方法」と題されており、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0113】
提案された解決方法は、ある製造方法に適用することができ、当該製造方法では、特定の駆動信号要素によって、周波数依存性の弱導電層を有する部分電極TLCレンズが製造/組立の欠点を補填し、この意味においては、このような部分電極TLCレンズは、パラメトリック(レンズ)光学要素として理解できる。図26は、非点収差エラーを補填するように構成された部分電極TLCレンズを示している。図27は、コマ収差エラーを補填するように構成された部分電極TLCレンズを示している。コマ収差エラーは、修正された波面が同一平面の同一点に集束しない点において、光軸のシフトとは異なっている。
【0114】
時間変化する(位相シフトされた)多数の駆動信号要素は、追加の光学特性を制御するのに用いられうる。例えば、図28A〜図28Eは、8つの部分の孔パターン電極(4つの駆動信号要素を用いている)の準静的な制御を示しており、0度から45度の間で、光軸の傾きは任意にとりうる。
【0115】
複数要素の積層構造
本発明は、同一の区画電極、周波数依存性の弱導電層、およびLC層を用いて、レンズの機能性と画像安定化/エラー修正/誘導/振動低減等との両方を行う上述のパラメトリックTLCレンズには、限定されない。
【0116】
例えば、電場のシフトは、区画電極を用いることなく、積層構造において行うことができる。例えば、図29Aは、上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、上面孔パターン電極の下には追加の横電極が配置されている。この実施形態において、周波数は、一方側から他方側の電場を減少させることにより、液晶セル内の電場を大きくする横あるいは側方の電極に適用され、当該電極は、一方側におけるものが他方側におけるものよりも大きい屈折力の差(ウェッジ)を引き起こす。横電極は、図示のように孔パターン電極の下方に位置していてもよいし、図29Bに示すように孔パターン電極の外周の外方において、同一の基板レベルに位置していてもよい。特に、引き起こされるシフトは、TLC構造の残りの部分には依存しない。この技術は、ビーム操作を行う他のTLCレンズ形成構造を提供し、すなわち、TLCL構造は、例えば次の文献に記載されている:2009年の12月23日に出願の同一出願人の米国仮出願61/289,995、2008年7月14日出願の米国仮出願61/080,493に基づく優先権を主張した、同時係属で同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420、2009年07月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419、2007年3月2日に出願され、「液晶を用いる、空間変調された電場発生および電気光学的な調整のための方法および装置」と題された国際特許出願WO 2007/098,602であり、全て、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0117】
同様に、周波数依存性材料の挙動は温度に影響されうる。図30に示すように、周波数依存性材料層内にて制御可能な温度勾配の創造物は、レンズの光軸を移動させるために用いられうる。温度はまた、配向を変化させる液晶の機能にも影響するので、この方法は、液晶層においても同様に用いることができる。光軸をシフトさせるためのこの技術は、一方側におけるものが他方側におけるものよりも大きい屈折力の差(ウェッジ)を引き起こし、液晶の配向がレンズ効果を発生させるために行われる方法から独立して用いられることは、理解されるだろう。本発明を限定することなく、液晶配向変化を空間的に変調するための様々な装置は次のものを含む:電場を空間的に変調するための様々な技術、例えば、2009年12月23日に出願された、同一出願人による米国仮出願61/289,995に記載されており、この出願は、参照することによって本明細書に組み込まれる;ポリマー分散などの、液晶配向を空間変調する様々な技術、例えば、2008年7月14日に出願された米国仮出願61/080493に基づく優先権を主張し、同時係属中であり同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420、2009年7月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419に記載されており、これらの出願は、参照することによって、本明細書に組み込まれる;空間的に配列された層を提供するための技術、例えば、2007年3月2日に出願され「液晶を用いる、空間変調された電場発生および電気光学的な調整のための方法および装置」と題する国際特許出願WO 2007/098,602に記載されており、これは参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0118】
図31は、上面孔パターン電極の差し込み上面図とともに、調整可能液晶レンズの側方断面図を示しており、液晶セルの基板の間でそれの隅に追加の圧電素子が配置されている。圧電素子は、レンズ装置を製造する際に基板に蒸着されうる。代わりに、基板間の隙間において所望の傾斜を生じさせるために、液体が充填された閉じたセルを、制御可能に加熱してもよい。光軸をシフトさせるためのこの技術は、一方側におけるものが他方側におけるものよりも大きい屈折力の差(ウェッジ)を引き起こし、液晶の配向がレンズ効果を発生させるために行われる方法から独立して用いられることは、理解されるだろう。本発明を限定することなく、液晶配向変化を空間的に変調するための様々な装置は次のものを含む:電場を空間的に変調するための様々な技術、例えば、2009年12月23日に出願された、同一出願人による米国仮出願61/289,995に記載されており、この出願は、参照することによって本明細書に組み込まれる;ポリマー分散などの、液晶配向を空間変調する様々な技術、例えば、2008年7月14日に出願された米国仮出願61/080493に基づく優先権を主張し、同時係属中であり同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420、2009年7月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419に記載されており、これらの出願は、参照することによって、本明細書に組み込まれる;空間的に配列された層を提供するための技術、例えば、2007年3月2日に出願され「液晶を用いる、空間変調された電場発生および電気光学的な調整のための方法および装置」と題する国際特許出願WO 2007/098,602に記載されており、これは参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0119】
提案された解決方法は、図4および図5、好ましくは図13Aに概略的に示したTLCL構造を参照して記載したが、本発明はそれに限定されない;TLCL層構造の他の例が開示され、例えば、2009年12月23日に出願された、同一出願人による米国仮出願61/289,995、2008年7月14日に出願された米国仮出願61/080493に基づく優先権を主張し、同時係属中であり同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420、2009年7月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419に記載されており、これらの出願は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。弱導電層の導電性の考察に関して、図13Aを参照して本明細書にて示した考察は、このような単一の導電層および対となった(連結された)弱導電層に関して当てはまる。
【0120】
特に、図32を参照して、周波数依存性の弱導電層を用いるのに関して本明細書で上述した周波数制御は、レンズ形成から独立してTLCレンズにて用いられ、例えば、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学エラー修正、等を行う。図32に示した実施形態では、底の導電性透明ITO電極は、提案された解決方法にしたがって、周波数依存性の弱導電層および帯状電極(図示している)によって替えられ、例えば図29Aを参照しつつ上述されている;もしくは、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学的な修正等を行うように、形状制御電極構造が構成されている。駆動時、周波数依存性の弱導電層の上面と孔パターン電極は、電場のある状態で機能し、LC層を経由して(対称的な)レンズ効果を奏する。この意味において、弱導電層の上面は、「レンズ効果を示す弱導電層」と称される。これとは別に、底部において周波数依存性の弱導電層と帯状電極とは形状制御駆動信号にしたがって稼働する。例えば、同一の低い周波数であり且つ同一の電圧振幅の駆動信号要素が帯状電極に与えられた場合、大きな電化移動は、周波数依存性の弱導電層を、平坦な導電ITO電極(423)の様な連続した電極として出現させる。したがって、レンズ効果の全体は、図4および図5に示したTLCレンズ構造によってもたらされるものと、実質的に同じである。だが、対向している帯状電極が、周波数あるいは電圧振幅のいずれかが異なっている、異なった駆動信号要素を受けることによって、底の周波数依存性材料は、電場条件において、電場全体を対応してウエッジ形状に変形させる斜面(ウェッジ)として出現する。この意味において、底の周波数依存性の弱導電層は、形状制御を行う弱導電層として稼働する。用いられる底の電極構造およびそれに与えらる駆動信号要素の組み合わせによって、形状制御を行う弱導電層は、電場(光学要素)形状を提供し、例えば、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学的な修正等を行う。これを行う際、図32に示した半分のTICL構造において、上面のおよび底の弱導電層は、異なった機能を有しており、このような半分のTLCLの各々において、上面のおよび底の弱導電層の間の導電性の違いは、したがって大した問題とはならないことが、理解されるだろう。同様に、完全なTLCL構造を製造する際、図13Aに関して本明細書にて上述した考察および利点は、対になっている(固着されている)、上面のレンズ効果を有する弱導電層のみに適用できる。このことは、一つの中央パターン電極へと結合するパターン電極にも拡張される。完全なTLCLが製造され、図13に示した積層構造を用い、積層されたLC層xおよびyとは反対の層構造の底にて、弱導電層を形成する場合、各弱導電層が異なった機能を果たすから、上面のおよび底の弱導電層の間の導電性の違いはまた、大した問題とはならない。
【0121】
同様に、図33を参照すると、周波数依存性の弱導電層を用いることに関して本明細書で上述した周波数制御は、もっぱらTLCレンズ構造において用いられ、レンズ形成からは独立しており、例えば、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学エラー修正、等、電場形成制御を行う。図33に示した実施形態では、空間的に一定の電場を用いて、レンズ効果を奏させるは例えば次の文献に記載されている:2007年3月2日に出願され「液晶を用いる、空間変調された電場発生および電気光学的な調整のための方法および装置」と題する国際特許出願WO 2007/098,602(図示あり)、2008年7月14日に出願された米国仮出願61/080493に基づく優先権を主張し、同時係属中であり同一出願人の国際特許出願WO 2010/006,420(図示なし)、2009年7月14日に出願され「表面プログラミング方法およびそれによって製造された光修正装置」と題された国際特許出願WO 2010/006,419(図示なし)であり、これらの出願は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。上記のTLCレンズ構造は、図32に関して本明細書で述べた電場形状制御構造とともに用いられる。図33に示した実施形態では、レンズ効果が、例えば隠れ電極層によって奏される。当該電極層は、例えば全体にわたって同一の屈折率nを有するけれども、接合面がレンズ状の(1((2の部分を有する。それは、上面の透明導電層(例えばITO)によって提供される空間的に一定の電場の存在下、および、平坦な底の導電層が入射ビームの波面を収束させるといった条件下においてである。本発明を限定することなく、他の積層構造は、空間的に一様な電場におけるレンズ効果を奏しうる。図32に示した実施形態のように、底の導電性透明ITO電極は、提案された解決方法にしたがって、周波数依存性の弱導電層および帯状電極(図示している)によって替えられ、例えば図29Aを参照しつつ上述されている;もしくは、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学的な修正等を行うように、形状制御電極構造が構成されている。稼働時、底部において周波数依存性の弱導電層と部分電極とは形状制御駆動信号にしたがって稼働する。例えば、同一の低い周波数であり且つ同一の電圧振幅の駆動信号要素が部分電極に与えられた場合、大きな電化移動は、周波数依存性の弱導電層を、平坦な導電ITO電極(423)の様な連続した電極として出現させる。したがって、レンズ効果の全体は、TLCレンズ構造によってもたらされるものと、実質的に同じである。だが、部分電極が、周波数あるいは電圧振幅のいずれかが異なっている、異なった駆動信号要素を受けることによって、底の周波数依存性材料は、電場条件において、電場全体を対応して空間変調して変形させる空間的に変調されたポテンシャル面として出現する。この意味において、底の周波数依存性の弱導電層は、形状制御を行う弱導電層として稼働する。用いられる底の電極構造およびそれに与えらる駆動信号要素の組み合わせによって、形状制御を行う弱導電層は、電場(光学要素)形状を提供し、例えば、パン、傾斜、ビームステアリング、画像安定化、光学的な修正等を行う。このことを行う際、単一の弱導電層は、光学要素形成機能のみを提供する半分のTLCLの各々において、用いられることが理解される。完全なTLCLでは、他の半分のTLCLは単に薄い透明電極を有する一方、一つの半分のTLCL上にて弱導電層を形成するものを一つだけ用いるか、あるいは、導電層を形成するものを2つ用いる。後者の場合、弱導電層を形成する2つのものの導電性の違いは、特性化/修正の間に対処されうる。2つの弱導電層を形成する際、弱導電層を形成する外側の各々は、異なる目的のために用いられる。例えば、本発明を限定することなく、弱導電層を形成するものの下側は、エラーの修正/補填のために用いることができ、弱導電層を形成するものの上側は、画像安定化のために用いることができる。
【0122】
本発明は、その好ましい実施態様を参照して示して説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、形態や詳細を様々に変更できることが当業者には分かるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的に構成された有効な電極形状を利用してその中を通過する光の伝播を制御する調整可能レンズ装置であって、
前記光が通過する液晶層であって、前記光の伝播を制御する光学特性を有する液晶層と、
前記液晶層に作用する電場を発生させるように配置された電極システムと、
複数の異なる周波数の駆動信号を発生させて前記駆動信号を前記電極システムに適用する電気信号発生器と、を有し、
前記装置は、前記駆動信号の周波数に伴って変化する電荷移動度を有する周波数依存性材料を含むことで、前記駆動信号のスペクトル成分が前記電極システムの有効な電極形状を動的に構成し、それにより前記電場の空間プロファイルが、前記液晶層の前記光学特性を変化させる前記スペクトル成分に応じて変化し、
前記電極システムは、前記電場によって前記液晶層に形成されたレンズの光軸を制御可能に移動させるように、構成されている、装置。
【請求項2】
前記駆動信号は、前記光の伝播を変化させるように変化する単一周波数信号を実質上有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記信号発生器は、前記駆動信号の電圧を実質的に変化させずに前記光の伝播を制御する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記駆動信号は、前記空間プロファイルを生じさせるように組み合わせた複数の周波数を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記信号発生器は、前記駆動信号の振幅を変えることで前記光の伝播を調節する、請求項1、2又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記液晶層は、低角のプレチルトアライメント層を有し、前記信号発生器は、前記液晶層内で液晶の回位を規制する駆動信号を加えるように作動する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、レンズであり、前記液晶層は、低角のプレチルトアライメント層を有し、前記信号発生器は、前記アライメント層によって規定される基底状態付近に前記液晶層内の液晶が留まるのを規制する駆動信号を適用するように作動することで、前記電場に対する前記液晶の改善された応答によって像収差を軽減する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、異なる方向に液晶配向させて前記装置の偏光感度を低下させる少なくとも2つの液晶層を有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記電極システムは、少なくとも1層の上部液晶層及び少なくとも1層の下部液晶層の間に配置された環状の中間電極と、透明な上部電極と、透明な下部電極とを有し、
前記周波数依存性材料は、前記環状の中間電極付近に配置された材料層を有し、そのため前記周波数依存性材料で変調される前記空間プロファイルが、前記環状の中間電極及び前記透明な上部電極の間の少なくとも1層の上部液晶層と、前記環状の中間電極及び前記透明な下部電極の間の少なくとも1層の下部液晶層と、にて同一である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記液晶層が実質上平面状である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記装置が屈折率分布型レンズ(GRIN)である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
前記レンズが、好ましくは3ジオプタより大きく調整可能で可変な屈折力を有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記電極システムが、孔パターン又は環状の電極を有する、請求項1〜12のいずれか1つに記載の装置。
【請求項14】
前記周波数依存性材料が、前記電極システムの前記孔パターン電極又は環状電極付近の薄い材料層を有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記電極システムと前記周波数依存性材料が空間的に非一様の有効な電極形状をもたらし、前記電場の前記空間変調が、前記電極電圧の空間変調の他に、前記電極形状によっても生じる、請求項1〜12のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
前記電極システムが湾曲した電極を有する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記周波数依存性材料が、前記液晶層の液晶に含まれる不純物又はドーパント物質を有する、請求項1〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項18】
前記信号発生器が、パルス幅変調回路を有する、請求項1〜17のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
前記パルス幅変調回路がPWM波形の複数の振幅を発生し、前記振幅が、動作周期の対応する変化に伴って変化し、前記波形の周波数成分が中心周波数から外れると過剰な量のエネルギーを含む場合に実質的に同一の有効なPWM電圧を供給する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記周波数依存性材料が半導体材料を有する、請求項1〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項21】
前記発生装置は、前記液晶がアライメント層で定義される基底状態から再配向されかつ前記液晶層の前記光学特性が空間的に一様である場合に前記空間プロファイルが実質的に一様な第1駆動信号と、前記空間プロファイルが空間的に一様でない第2駆動信号と、を発生させることで光の伝播全体で望ましい制御を達成するように構成される、請求項1〜20のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記信号発生器を動的に調節するための制御器を更に備える、請求項1〜21のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
振動センサを更に備え、前記制御器は、振動に応じて光軸の位置を調節する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記振動センサは、加速度計である、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記振動センサは、イメージセンサによって撮られた画像の位置を分析するための分析器である、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記電極システムは、区画された環状電極を更に備える、請求項1〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
前記区画された環状電極は、6以上の部分を有する、請求項1〜26のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
前記信号発生器は、前記駆動信号の独立した駆動信号要素を各電極部分に適用するように更に構成されており、各駆動信号要素は、対応する周波数を有し、前記区画された環状電極を駆動することによって、パラメトリックレンズを提供する、請求項1〜27のいずれか1つに記載の装置。
【請求項29】
各駆動信号要素は、対応する電圧を更に有し、異なった電圧が異なった電極部分に適用され、前記区画された環状電極を駆動することによって、パラメトリックレンズが提供される、請求項1〜28のいずれか1つに記載の装置。
【請求項30】
前記電極システムは、前記周波数依存性材料に結合した帯状電極の設備を更に備え、前記信号発生器は、周波数および電圧を有する駆動信号要素を生成し、前記信号発生器は、各帯状電極を前記駆動信号要素に適用するように構成されている、請求項1〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記帯状電極の設備は、同一の前記周波数依存性材料を介して前記環状電極と組み合わせて機能するように、構成されている、請求項1〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
前記帯状電極の設備は、前記環状電極とは独立して機能するように構成されており、前記帯状電極の設備は、追加の周波数依存性材料と結合している、請求項1〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
前記信号発生器によって実質的にほぼ同一の低周波数の駆動信号要素が適用された場合に、前記帯状電極の設備と対応する周波数依存性材料とは、平面状の一様な電極として機能する、請求項31または32に記載の装置。
【請求項34】
前記信号発生器によって中〜高周波の異なった駆動信号要素が適用された場合に、前記帯状電極の設備と対応する周波数依存性材料とは、ポテンシャルランプ電極として機能し、前記ポテンシャルランプ電極は、前記電場の前記空間プロファイルを変化させ、ビームステアリングを行う、請求項31〜33のいずれか1つに記載の装置。
【請求項35】
前記追加の周波数依存性材料と前記帯状電極の設備とは、前記電場の変調とは無関係に、レンズ効果を提供する、請求項32〜34のいずれか1つに記載の装置。
【請求項36】
異なった周波数の駆動信号と、電場を生じさせるために前記駆動信号が適用される固定電極と、電荷移動度が前記駆動信号の周波数によって変化する周波数依存性材料と、を利用した有効な電極形状を動的に構成するための方法であって、前記電場の所望の空間プロファイルをもたらし、前記所望の空間プロファイルの位置をシフトさせることを含む、方法。
【請求項37】
前記空間プロファイルを周波数調整のための、前記駆動信号の少なくとも1つの周波数成分を制御する工程を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記電場の前記所望の空間プロファイルを達成するために、前記駆動信号における周波数を混ぜ合わせる工程を有する、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記駆動信号の振幅を調節する工程を有する、請求項36〜38のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
振幅を調節する前記工程が、PWM波形の複数の振幅を用いたパルス幅変調を利用するものであり、前記振幅が、前記波形の周波数成分が中心周波数から外れる過剰な量のエネルギーを含む場合に実質的に同一の有効なPWM電圧が供給されるように動作周期の対応する変化に伴って変化する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
液晶装置の駆動方法であって、前記装置に周波数依存性材料を供給する工程と、請求項36〜40のいずれか1つの方法に従って有効な電極形状を動的に構成する工程と、を有し、
前記電場の前記空間プロファイルを利用して前記装置の液晶を制御する、前記方法。
【請求項42】
前記液晶装置が、前記空間プロファイルによって制御される屈折力を有する屈折率分布型レンズである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記液晶内での回位を軽減する又は抑制するために、前記電場を制御する工程を有する、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記液晶の前記電場に対する改善された応答によって像収差を軽減するために、前記電場を、前記液晶がアライメント層で定義される基底状態付近に留まることを抑制するように制御する工程を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
光の伝播を制御する可変液晶光学装置であって、前記光の伝播が液晶駆動信号の周波数によって実質的に制御される、前記光学装置。
【請求項46】
光の伝播を制御する調整可能レンズ装置であって、
液晶を含む液晶層と、
レンズの光軸の位置を制御できるように、前記液晶層にて機能する空間的に非一様な電場を生成するように構成された電場源と、
前記電場を発生させるために前記電場源によって適用される可変周波数電気駆動信号と、を備え、
前記液晶層は、前記駆動信号に応じて変化する電荷移動度を有し、前記液晶は、所望の光伝搬態様となるように、空間的により一様となるように前記電場を形成する、装置。
【請求項47】
熱勾配制御システムを備え、制御可能な光軸の位置を有する調整可能液晶レンズ。
【請求項48】
制御可能な光軸の位置を有する調整可能液晶レンズであって、前記レンズの液晶を含む基板間の空隙を調節するマイクロアクチュエータを有する、レンズ。
【請求項49】
動的に構成された有効な電極形状を利用してその中を通過する光の伝播を制御する調整可能液晶レンズ装置であって、
前記光が通過する液晶層であって、前記光の伝播を制御する光学特性を有する液晶層と、
前記液晶層に作用する電場を発生させるように配置され、前記液晶層の前記光学特性を変化させる電極システムと、
複数の異なる周波数の複数の駆動信号要素を発生させて、前記駆動信号要素を前記レンズを形成する前記電極システムに適用する電気信号発生器と、
周波数依存性材料と、を有し、
前記装置は、適用される結合された駆動信号の周波数に伴って変化する電荷移動度を有する前記周波数依存性材料を含むことで、結合された駆動信号のスペクトル成分が前記電極システムの有効な電極形状を動的に構成し、それにより前記電場の空間プロファイルが、前記レンズを形成する前記液晶層の前記光学特性を変化させる前記スペクトル成分に応じて変化する、装置。
【請求項50】
前記電極システムは、前記電場によって前記液晶層内にて形成される前記レンズを制御可能に形成するように構成され、前記装置の光軸を移動させる、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記装置内を通過する入射ビームによって形成される画像を安定化させるように構成されている、請求項49または50に記載の装置。
【請求項52】
動的に構成された有効な電極形状を利用してその中を通過する光の伝播を制御する調整可能液晶レンズ装置であって、
前記光が通過する液晶層であって、前記光の伝播を制御する光学特性を有する液晶層と、
前記液晶層に作用する電場を発生させるように配置され、前記レンズの生成において前記液晶層の前記光学特性を変化させる第1電極システムと、
前記液晶層における前記電場を修正する第2電極システムと、
複数の異なる周波数の複数の駆動信号要素を発生させて、前記駆動信号要素を前記第1および第2電極システムに適用する電気信号発生器と、
前記第2電極システムに関連付けられた周波数依存性材料と、を有し、
前記周波数依存性材料は、前記第2電極システムに適用される少なくとも1つの駆動信号要素の周波数に伴って変化する電荷移動度を有することで、結合された駆動信号のスペクトル成分が、前記スペクトル成分に応じて前記液晶層にて機能する前記電場の有効な空間プロファイルを構成し、前記レンズを形成する、装置。
【請求項53】
前記第2電極システムは、前記レンズの光軸を移動させるために、前記電場によって前記液晶層に形成される前記レンズを、制御可能に形成するように更に構成されている、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記レンズを通過する入射ビームによって形成される画像を安定化するように更に構成されている、請求項52または53に記載の装置。
【請求項1】
動的に構成された有効な電極形状を利用してその中を通過する光の伝播を制御する調整可能レンズ装置であって、
前記光が通過する液晶層であって、前記光の伝播を制御する光学特性を有する液晶層と、
前記液晶層に作用する電場を発生させるように配置された電極システムと、
複数の異なる周波数の駆動信号を発生させて前記駆動信号を前記電極システムに適用する電気信号発生器と、を有し、
前記装置は、前記駆動信号の周波数に伴って変化する電荷移動度を有する周波数依存性材料を含むことで、前記駆動信号のスペクトル成分が前記電極システムの有効な電極形状を動的に構成し、それにより前記電場の空間プロファイルが、前記液晶層の前記光学特性を変化させる前記スペクトル成分に応じて変化し、
前記電極システムは、前記電場によって前記液晶層に形成されたレンズの光軸を制御可能に移動させるように、構成されている、装置。
【請求項2】
前記駆動信号は、前記光の伝播を変化させるように変化する単一周波数信号を実質上有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記信号発生器は、前記駆動信号の電圧を実質的に変化させずに前記光の伝播を制御する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記駆動信号は、前記空間プロファイルを生じさせるように組み合わせた複数の周波数を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記信号発生器は、前記駆動信号の振幅を変えることで前記光の伝播を調節する、請求項1、2又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記液晶層は、低角のプレチルトアライメント層を有し、前記信号発生器は、前記液晶層内で液晶の回位を規制する駆動信号を加えるように作動する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、レンズであり、前記液晶層は、低角のプレチルトアライメント層を有し、前記信号発生器は、前記アライメント層によって規定される基底状態付近に前記液晶層内の液晶が留まるのを規制する駆動信号を適用するように作動することで、前記電場に対する前記液晶の改善された応答によって像収差を軽減する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、異なる方向に液晶配向させて前記装置の偏光感度を低下させる少なくとも2つの液晶層を有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記電極システムは、少なくとも1層の上部液晶層及び少なくとも1層の下部液晶層の間に配置された環状の中間電極と、透明な上部電極と、透明な下部電極とを有し、
前記周波数依存性材料は、前記環状の中間電極付近に配置された材料層を有し、そのため前記周波数依存性材料で変調される前記空間プロファイルが、前記環状の中間電極及び前記透明な上部電極の間の少なくとも1層の上部液晶層と、前記環状の中間電極及び前記透明な下部電極の間の少なくとも1層の下部液晶層と、にて同一である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記液晶層が実質上平面状である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記装置が屈折率分布型レンズ(GRIN)である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
前記レンズが、好ましくは3ジオプタより大きく調整可能で可変な屈折力を有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記電極システムが、孔パターン又は環状の電極を有する、請求項1〜12のいずれか1つに記載の装置。
【請求項14】
前記周波数依存性材料が、前記電極システムの前記孔パターン電極又は環状電極付近の薄い材料層を有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記電極システムと前記周波数依存性材料が空間的に非一様の有効な電極形状をもたらし、前記電場の前記空間変調が、前記電極電圧の空間変調の他に、前記電極形状によっても生じる、請求項1〜12のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
前記電極システムが湾曲した電極を有する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記周波数依存性材料が、前記液晶層の液晶に含まれる不純物又はドーパント物質を有する、請求項1〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項18】
前記信号発生器が、パルス幅変調回路を有する、請求項1〜17のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
前記パルス幅変調回路がPWM波形の複数の振幅を発生し、前記振幅が、動作周期の対応する変化に伴って変化し、前記波形の周波数成分が中心周波数から外れると過剰な量のエネルギーを含む場合に実質的に同一の有効なPWM電圧を供給する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記周波数依存性材料が半導体材料を有する、請求項1〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項21】
前記発生装置は、前記液晶がアライメント層で定義される基底状態から再配向されかつ前記液晶層の前記光学特性が空間的に一様である場合に前記空間プロファイルが実質的に一様な第1駆動信号と、前記空間プロファイルが空間的に一様でない第2駆動信号と、を発生させることで光の伝播全体で望ましい制御を達成するように構成される、請求項1〜20のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記信号発生器を動的に調節するための制御器を更に備える、請求項1〜21のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
振動センサを更に備え、前記制御器は、振動に応じて光軸の位置を調節する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記振動センサは、加速度計である、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記振動センサは、イメージセンサによって撮られた画像の位置を分析するための分析器である、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記電極システムは、区画された環状電極を更に備える、請求項1〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
前記区画された環状電極は、6以上の部分を有する、請求項1〜26のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
前記信号発生器は、前記駆動信号の独立した駆動信号要素を各電極部分に適用するように更に構成されており、各駆動信号要素は、対応する周波数を有し、前記区画された環状電極を駆動することによって、パラメトリックレンズを提供する、請求項1〜27のいずれか1つに記載の装置。
【請求項29】
各駆動信号要素は、対応する電圧を更に有し、異なった電圧が異なった電極部分に適用され、前記区画された環状電極を駆動することによって、パラメトリックレンズが提供される、請求項1〜28のいずれか1つに記載の装置。
【請求項30】
前記電極システムは、前記周波数依存性材料に結合した帯状電極の設備を更に備え、前記信号発生器は、周波数および電圧を有する駆動信号要素を生成し、前記信号発生器は、各帯状電極を前記駆動信号要素に適用するように構成されている、請求項1〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記帯状電極の設備は、同一の前記周波数依存性材料を介して前記環状電極と組み合わせて機能するように、構成されている、請求項1〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
前記帯状電極の設備は、前記環状電極とは独立して機能するように構成されており、前記帯状電極の設備は、追加の周波数依存性材料と結合している、請求項1〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
前記信号発生器によって実質的にほぼ同一の低周波数の駆動信号要素が適用された場合に、前記帯状電極の設備と対応する周波数依存性材料とは、平面状の一様な電極として機能する、請求項31または32に記載の装置。
【請求項34】
前記信号発生器によって中〜高周波の異なった駆動信号要素が適用された場合に、前記帯状電極の設備と対応する周波数依存性材料とは、ポテンシャルランプ電極として機能し、前記ポテンシャルランプ電極は、前記電場の前記空間プロファイルを変化させ、ビームステアリングを行う、請求項31〜33のいずれか1つに記載の装置。
【請求項35】
前記追加の周波数依存性材料と前記帯状電極の設備とは、前記電場の変調とは無関係に、レンズ効果を提供する、請求項32〜34のいずれか1つに記載の装置。
【請求項36】
異なった周波数の駆動信号と、電場を生じさせるために前記駆動信号が適用される固定電極と、電荷移動度が前記駆動信号の周波数によって変化する周波数依存性材料と、を利用した有効な電極形状を動的に構成するための方法であって、前記電場の所望の空間プロファイルをもたらし、前記所望の空間プロファイルの位置をシフトさせることを含む、方法。
【請求項37】
前記空間プロファイルを周波数調整のための、前記駆動信号の少なくとも1つの周波数成分を制御する工程を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記電場の前記所望の空間プロファイルを達成するために、前記駆動信号における周波数を混ぜ合わせる工程を有する、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記駆動信号の振幅を調節する工程を有する、請求項36〜38のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
振幅を調節する前記工程が、PWM波形の複数の振幅を用いたパルス幅変調を利用するものであり、前記振幅が、前記波形の周波数成分が中心周波数から外れる過剰な量のエネルギーを含む場合に実質的に同一の有効なPWM電圧が供給されるように動作周期の対応する変化に伴って変化する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
液晶装置の駆動方法であって、前記装置に周波数依存性材料を供給する工程と、請求項36〜40のいずれか1つの方法に従って有効な電極形状を動的に構成する工程と、を有し、
前記電場の前記空間プロファイルを利用して前記装置の液晶を制御する、前記方法。
【請求項42】
前記液晶装置が、前記空間プロファイルによって制御される屈折力を有する屈折率分布型レンズである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記液晶内での回位を軽減する又は抑制するために、前記電場を制御する工程を有する、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記液晶の前記電場に対する改善された応答によって像収差を軽減するために、前記電場を、前記液晶がアライメント層で定義される基底状態付近に留まることを抑制するように制御する工程を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
光の伝播を制御する可変液晶光学装置であって、前記光の伝播が液晶駆動信号の周波数によって実質的に制御される、前記光学装置。
【請求項46】
光の伝播を制御する調整可能レンズ装置であって、
液晶を含む液晶層と、
レンズの光軸の位置を制御できるように、前記液晶層にて機能する空間的に非一様な電場を生成するように構成された電場源と、
前記電場を発生させるために前記電場源によって適用される可変周波数電気駆動信号と、を備え、
前記液晶層は、前記駆動信号に応じて変化する電荷移動度を有し、前記液晶は、所望の光伝搬態様となるように、空間的により一様となるように前記電場を形成する、装置。
【請求項47】
熱勾配制御システムを備え、制御可能な光軸の位置を有する調整可能液晶レンズ。
【請求項48】
制御可能な光軸の位置を有する調整可能液晶レンズであって、前記レンズの液晶を含む基板間の空隙を調節するマイクロアクチュエータを有する、レンズ。
【請求項49】
動的に構成された有効な電極形状を利用してその中を通過する光の伝播を制御する調整可能液晶レンズ装置であって、
前記光が通過する液晶層であって、前記光の伝播を制御する光学特性を有する液晶層と、
前記液晶層に作用する電場を発生させるように配置され、前記液晶層の前記光学特性を変化させる電極システムと、
複数の異なる周波数の複数の駆動信号要素を発生させて、前記駆動信号要素を前記レンズを形成する前記電極システムに適用する電気信号発生器と、
周波数依存性材料と、を有し、
前記装置は、適用される結合された駆動信号の周波数に伴って変化する電荷移動度を有する前記周波数依存性材料を含むことで、結合された駆動信号のスペクトル成分が前記電極システムの有効な電極形状を動的に構成し、それにより前記電場の空間プロファイルが、前記レンズを形成する前記液晶層の前記光学特性を変化させる前記スペクトル成分に応じて変化する、装置。
【請求項50】
前記電極システムは、前記電場によって前記液晶層内にて形成される前記レンズを制御可能に形成するように構成され、前記装置の光軸を移動させる、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記装置内を通過する入射ビームによって形成される画像を安定化させるように構成されている、請求項49または50に記載の装置。
【請求項52】
動的に構成された有効な電極形状を利用してその中を通過する光の伝播を制御する調整可能液晶レンズ装置であって、
前記光が通過する液晶層であって、前記光の伝播を制御する光学特性を有する液晶層と、
前記液晶層に作用する電場を発生させるように配置され、前記レンズの生成において前記液晶層の前記光学特性を変化させる第1電極システムと、
前記液晶層における前記電場を修正する第2電極システムと、
複数の異なる周波数の複数の駆動信号要素を発生させて、前記駆動信号要素を前記第1および第2電極システムに適用する電気信号発生器と、
前記第2電極システムに関連付けられた周波数依存性材料と、を有し、
前記周波数依存性材料は、前記第2電極システムに適用される少なくとも1つの駆動信号要素の周波数に伴って変化する電荷移動度を有することで、結合された駆動信号のスペクトル成分が、前記スペクトル成分に応じて前記液晶層にて機能する前記電場の有効な空間プロファイルを構成し、前記レンズを形成する、装置。
【請求項53】
前記第2電極システムは、前記レンズの光軸を移動させるために、前記電場によって前記液晶層に形成される前記レンズを、制御可能に形成するように更に構成されている、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記レンズを通過する入射ビームによって形成される画像を安定化するように更に構成されている、請求項52または53に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11A−11B】
【図12A−12B】
【図13A】
【図13B−13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21】
【図29A】
【図29B】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図10A−10E】
【図22】
【図23】
【図24A−24D】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11A−11B】
【図12A−12B】
【図13A】
【図13B−13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21】
【図29A】
【図29B】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図10A−10E】
【図22】
【図23】
【図24A−24D】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【公表番号】特表2013−515969(P2013−515969A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545032(P2012−545032)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/CA2010/002023
【国際公開番号】WO2011/075834
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(510317298)レンズヴェクター インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】LENSVECTOR INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】2307 Leghorn St., Mountain View, California 94043, U. S. A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/CA2010/002023
【国際公開番号】WO2011/075834
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(510317298)レンズヴェクター インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】LENSVECTOR INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】2307 Leghorn St., Mountain View, California 94043, U. S. A.
【Fターム(参考)】
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