説明

液晶光学素子とその製造方法、および電子眼鏡

【課題】液晶層ならびに配向膜への紫外線照射を防ぐことを可能とする液晶光学素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】液晶光学素子10は、インプリント樹脂層30に紫外線吸収剤90を混入し紫外線の透過を減少させることで、液晶材料20と配向膜40、41の紫外線劣化を防ぐことができる。特に、紫外線硬化シールを用いる真空貼り合わせの液晶滴下工程(ODF)では、インプリント樹脂層30によって液晶が保護されていることによって、遮光マスクとアライメントが不要となり、直接紫外線を照射でき、工程の簡略化とともに、シールと液晶が触れている時間の短縮によりシールからの液晶層への汚染を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶を用いて光学特性を可変とした液晶光学素子とその製造方法、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電極が形成された透明基板同士をシールで接着し、液晶層を封入した構成による液晶光学素子が知られている。液晶光学素子は、印加する電圧を変更することで液晶の配向を変化させて屈折率を制御することにより、光学特性を可変としたものである。この液晶光学素子として、印加する電圧により焦点距離を制御することができる液晶レンズが知られている。液晶レンズには、輪帯状にパターニングされた透明電極を備える方式やフレネルレンズなどの光学形状の構造をセル内に備える方式などがある。
【0003】
液晶光学素子の液晶セルの作製に伴う液晶の封入方法としては、大きく分けて2種類存在する。一つは、貼り合せ後に液晶を封入する方式で、液晶の注入口として開口部を設けたシールの塗布後に透明基板同士での貼り合せを行い、紫外線照射または焼成によってシールを硬化させた後に、液晶セルを個別サイズに分割し、注入口を真空状態で液晶に浸して毛細管現象により液晶を注入する真空注入方式である。
もう一つは、貼り合せ時に同時に液晶を封入する方式で、透明基板にシール塗布した後に液晶を滴下し、真空状態で透明基板同士を貼り合せ、その後に紫外線照射を行ってシールを硬化させる液晶滴下(ODF:One Drop Fill,One Drop Filling)方式である。
【0004】
製造プロセスの簡略化、製造時間の短縮化、原材料使用量の削減等の効果により、ODF方式が現在注目を集めており主流となってきている。しかしながら、ODF方式の場合、硬化前のシールと液晶とが直接触れてしまうため、シールと液晶の相溶性によっては、シールと液晶とが混ざり合う、シールから液晶への不純性イオンが流入するといったことにより、液晶材料の特性が劣化し液晶の配向が乱れるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、このようなシールによる液晶への汚染を防ぐための方法の一つとして、液晶滴下後の貼り合せ工程のタクトタイムを短縮し、できるだけ早く紫外線照射を行い、シールを硬化させることが上げられる。ここで、液晶材料は有機物であり、紫外線によって劣化しやすいので、シールへの紫外線照射時に液晶へは照射させない方が望ましく、液晶部に遮光マスクをセットしてから紫外線照射を行うという工程となっている。(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、遮光マスクとして、2〜5mm厚のガラス基板に黒色インキをスクリーン印刷したものやクロムをスパッタしてシールパターン部分にのみ透光部を持つようにパターン化されたものを用いている。その際、310nm以下の波長をカットするガラス基板を遮光マスクの基板として用いることで、紫外線照射による液晶や配向膜への影響を軽減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−365643号公報(第5−8、13−14頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来技術による紫外線照射方法では以下のような問題がある。シールと遮光マスクのアライメントが必要であり、シールの線幅塗布精度、液晶パネルと遮光マ
スクのアライメント公差を考慮して、遮光マスクの透光部をシール幅よりも大きくする必要があり、シール内側の液晶封入領域の照射したくない領域まで照射しており、その領域を不使用としていたため小型化への支障があった。また、そもそも遮光マスクをセットするために一工程必要であり、遮光マスク代も含めてコスト増である上に、精度良くアライメントする時間も必要なため、そもそものできるだけ早く紫外線照射するということに反してしまっている。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決し、シールへの紫外線照射時において、有効領域内の液晶層や配向膜への紫外線照射を低減し、アライメントする必要がなく、紫外線照射までの時間を短縮できることを可能とする液晶光学素子およびその製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の液晶光学素子および製造方法は、下記記載の構成を採用するものである。
【0010】
枠状のシールを介して、第1の基板と第2の基板とが貼り合わされ、シールの内側の領域に液晶層が配され、第1の基板または第2の基板の片側または両側の液晶層側に、樹脂によって形成された光学構造体を備えた液晶光学素子であって、光学構造体が紫外線低減機能を備えたことを特徴とする。また、光学構造体が、少なくとも液晶層の有効エリア領域を覆うことを特徴とする。また、紫外線低減機能を備えた光学構造体とは、樹脂に紫外線吸収剤が混入されていることを特徴とする。また、光学構造体の厚みは、少なくとも液晶層の領域における最も厚みが薄くなる箇所において、樹脂に混入されている紫外線吸収剤の平均粒径よりも厚いことを特徴とする。
【0011】
さらに、第1の基板と第2の基板において、シールが配置される領域には、光学構造体を設けないことを特徴とする。あるいは、第1の基板と第2の基板において、シールが配置される領域は、他の領域より光学構造体の厚みを薄くしたことを特徴とする。
【0012】
また、シールの内側には、光学構造体で形成された隔壁を備えていることを特徴とする。さらに、光学構造体は、紫外線低減機能を持つ層と紫外線低減機能を持たない層との2層を有することを特徴とする。
【0013】
さらに、第1の基板または前記第2の基板のいずれか一方の基板に、光学構造体を形成し、形成されてない他方の基板の外側に紫外線低減機能膜を配置するか、または前記他方の基板自体が紫外線低減機能を有することを特徴とする。さらに、本発明はこれら液晶光学素子を用いた電子眼鏡である。
【0014】
本発明の液晶光学素子の製造方法は、枠状のシールを介して、第1の基板と第2の基板とが貼り合わされ、シールの内側の領域に液晶層が配置され、第1の基板または第2の基板の液晶層側に、樹脂によって形成された光学構造体を備えた液晶光学素子の製造方法であって、第1の基板または第2の基板上に、未硬化の紫外線低減機能を有する樹脂を配置したのち、樹脂を硬化して、光学構造体を形成する光学構造体形成工程と、第1の基板または第2の基板に未硬化の前記シールを配置するシール配置工程と、光学構造体が形成された前記第1の基板または前記第2の基板の外側から、未硬化のシールを硬化するための紫外線照射を行うシール硬化工程を有することを特徴とする。
【0015】
また、シール硬化工程前に、第1の基板または第2の基板の上に、液晶層を配置する液晶層配置工程を備えることを特徴とする。さらに、光学構造体は、シールと接する位置に隔壁を備えていることを特徴とする。
【0016】
光学構造体形成工程では、未硬化の紫外線低減機能を有する樹脂に紫外線または可視光の光照射を行うことで、樹脂の硬化が行われ、シールを配置する領域には、樹脂に対して光照射が行われないように、マスクを配置することを特徴とする。あるいは、光学構造体形成工程では、シールを配置する領域において、他の領域より、光学構造体の厚さが薄くなるように光学構造体を形成されることを特徴とする。
【0017】
また、光学構造体形成工程では、未硬化の前記紫外線低減機能を持たない樹脂も配置し、紫外線低減機能を持たない樹脂も硬化する工程を有することを特徴とする。また、未硬化の紫外線低減機能を有する樹脂とは、紫外線吸収剤が混入されている樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シール領域を除いた光学構造が型の転写により精度良く形成される。光学構造には紫外線吸収機能を付与しているので、光学構造側から紫外線を照射することで、特に遮光マスクのアライメントも必要なく、貼り合わせ後に迅速に紫外線照射することができ、液晶とシールが接触している時間を短縮することができるので、シールによる液晶の汚染を抑えることができる。
【0019】
さらに本発明によれば、シール硬化後においても、光学構造による紫外線吸収機能があるため、特に液晶保護用として、紫外線吸収機能がある部材を追加で設ける必要がなく、そのまま使用することが可能となり、特に電子眼鏡等の使用環境として紫外線が照射されるアプリケーションに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例1の液晶光学素子のインプリント工程の説明図である。
【図3】本発明の実施例1の液晶光学素子のセル化工程の説明図である。
【図4】本発明の実施例1の液晶光学素子を用いたアプリケーション例1の説明図である。
【図5】本発明の実施例1の液晶光学素子を用いたアプリケーション例2の説明図である。
【図6】本発明の実施例2の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例2の液晶光学素子のインプリント工程の説明図である。
【図8】本発明の実施例3の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例3の液晶光学素子のインプリント工程の説明図である。
【図10】本発明の実施例4の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例4の液晶光学素子のインプリント工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、液晶光学素子の光学構造体としてフレネルレンズを用い、液晶層に印加する電圧により焦点距離を可変とした液晶レンズを例にして、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
[実施例1]
<実施例1の構成:図1>
まず、本発明の実施例1の液晶光学素子の構成について説明する。図1は実施例1の液晶光学素子10の構成を示す説明図である。図1(a)は実施例1の液晶光学素子10の断面図であり、図1(b)は後述するフレネルレンズおよびシールの形状と位置関係を示す平面図である。図面表示上の問題から、図1では実際とは異なるアスペクト比で模式的
に示している。
【0023】
図1に示すように、実施例1の液晶光学素子10は、第1の透明基板50と第2の透明基板51とが、それぞれの基板表面に形成された透明電極が対向するようにシール70を介して貼り合わされた構成を有する。
【0024】
第1の透明基板50には透明電極60と配向膜40とが形成されている。第2の透明基板51には、光学構造形状(フレネルレンズ100)がインプリント(転写)工程で一体に形成されたインプリント樹脂層30を備える。このフレネルレンズ100を形成するインプリント工程については、後段で詳細に説明する。インプリント樹脂層30は紫外線低減機能を備えており、少なくとも液晶層の有効エリア領域に設けられている。本実施例では、紫外線低減機能として、インプリント樹脂層30中に紫外線吸収材90を内在させており、紫外線吸収材90の平均粒径よりも、液晶層領域110における最も厚みが薄くなる箇所の厚みが、厚くなっている。また、インプリント樹脂層30の上には、透明電極61と配向膜41とが形成されている。
【0025】
シール70には、スペーサ82が混入されており、第1の透明基板50と第2の透明基板51とのセルギャップが規制される。シール70は同心円状のフレネルレンズ100を取り囲むように円状で形成されており、シール70の内側には液晶20が充填されており、インプリント樹脂30とシール70は接しており、インプリント樹脂30上に液晶20の領域がある構成となっている。図面上では、インプリント樹脂30と液晶層領域110の幅は一致しているが、実際ではばらつきもあり、ぴったり一致ということはなく、液晶層領域110よりもインプリント樹脂30が大きい領域である関係が好適である。この際、シール材料自体は紫外線照射時に未照射領域への硬化反応の進行があるので、特に問題はない。図面上は図示していないが、透明基板がプラスチック基板の場合には、ガスバリア層としてSiO2等の無機膜を透明電極と透明基板の間に設ける構成の方が好適である。
【0026】
図1に示す本発明の実施例1の構成においては、インプリント樹脂層30の側から紫外線を照射することによって、シール70へは紫外線が直接照射されるが、液晶20へはインプリント樹脂層の紫外線吸収剤90によって吸収されるため、液晶20へは紫外線が照射されることがない。したがって、遮光マスクや遮光マスクとのアライメントが不要のため、貼り合せ後にすぐに紫外線照射することができ、シールからの液晶への汚染を低減させるとともに、工程の短縮ができる。
【0027】
<実施例1の製造方法:図2、図3>
次に、実施例1の液晶光学素子の製造方法について、図2及び図3を用いて説明する。図2及び図3では、図面表示上の問題から実際とは異なるアスペクト比で模式的に示している。図2は、実施 例1の液晶光学素子10のフレネルレンズ100のインプリント工程の説明図である。以下では、インプリント樹脂として紫外線(UV)や可視光、赤外光により硬化する光硬化樹脂を用いた例を説明する。
【0028】
まず、図2(a)に示すように、第2の透明基板51にディスペンサ74によって光硬化性の樹脂25を滴下する。樹脂25には、紫外線吸収剤90が混入されている。紫外線吸収剤ではなく、紫外線散乱剤でも紫外線を通さなくさせることができるが、可視光の波長も散乱されることがあり、見映えとして白濁することに注意が必要である。
図示していないが、第2の透明基板51と樹脂25の接着性が悪い場合には、プラズマ照射を行い、第2の透明基板51の表面改質を行ったり、第2の透明基板51にプライマー処理等を施すことにより接着層を設けて接着性を向上させる。
【0029】
次に、図2(b)及び図2(c)に示すように、第2の透明基板51に滴下した樹脂25に、金型モールド95を加圧しながら押し当てる。金型モールド95にはフレネルレンズ100の形状が凹凸反転で形成されている。金型モールド95の表面には、予めフッ素系の離型剤を塗布することにより離型処理が施されている。
【0030】
その後、樹脂25が金型モールド95の隙間に十分に入り込んだ状態で、図2(c)に示すように紫外線80を照射して樹脂25を硬化させる。照射の際に、透明基板51の紫外線80側にマスク85を設けておくことで、マスク85の開口部のみに紫外線80が透過し、開口部の形状に樹脂25が硬化する。なお、図面上では、透明基板51側から紫外線80を照射しているが、これに限定されることはなく、金型モールド95が、紫外線を透過する石英モールドや樹脂モールドであれば、金型モールド95側にマスク85を設置し、金型モールド95側から紫外線80を照射しても構わない。
【0031】
ここで、樹脂25には、紫外線吸収剤90が混入されているため、混入されていない場合と比べて、吸収によって単位体積あたりに樹脂成分に照射される紫外線照射量が少なくなり、樹脂が硬化しにくくなるので、紫外線照射量を大きくしたり、照射時間を長くしたりする必要がある。紫外線吸収剤90の吸収波長と樹脂25の吸収波長(反応波長)のピークをずらした組み合わせにすることで、樹脂25を硬化しやすくしても良い。紫外線波長領域の中で波長をずらしても良いし、樹脂25に可視光・赤外硬化成分のある光重合開始剤を付与し、紫外線に加えて400nm以上の波長の光を照射することで硬化させても良い。例えば、チバ・ジャパン株式会社製の光重合開始剤IRGACURE819は、295nmと370nmに吸収のピークがあり、長波長側は可視光の440nmの波長まで、短波長側は200nm以下まで吸収特性を持っており、好適である。
本発明においては、紫外線を吸収するのであって、紫外線によって活性化された分子に対して抑制するわけではないので、光硬化での重合の種類としては特に限定されずに、ラジカル、カチオン、アニオン、どれにでも適用可能である。
【0032】
樹脂25が十分硬化したのち、図2(d)に示すように、金型モールド95を樹脂25から離型し、マスク85によって紫外線が照射されず未硬化のままの樹脂を溶剤で洗い流す。
以上の工程により、第2の透明基板51上に、フレネルレンズ100が転写され、外側の樹脂が取り除かれてパターニングされたインプリント樹脂層30が作製される。
【0033】
実際に試作したフレネルレンズ100の寸法を、例として示す。有効径をφ20mmとし、ブレーズ(輪帯)の数を55、各ブレーズの高さ(サグ量)を7μmで固定とした。最内周のブレーズ半径を1.28mm、最も外側に位置するブレーズの幅を51μmとし、最も外側に位置するブレーズのレンズ面の最大傾斜角度は3.6度である。また、有効径φ20mmに対して、マスク85の開口をφ22mmとし、有効径に対して半径で1mm広くして形成した。
【0034】
図3は、透明基板上への透明電極および配向膜の形成から、第1の透明基板50と第2の透明基板51の貼り合わせまでの工程の説明図である。
フレネルレンズ100をインプリント樹脂層30に形成した後、図3(a)に示すように、インプリント樹脂層30の表面上にスパッタリング法等により透明電極61を形成する。直接、インプリント樹脂層30の上に透明電極61を膜付けしても構わないが、インプリント樹脂層30にまずSiO2等のバリア層やハードコート層などの層を設けてから透明電極61を設けても良い。特に透明基板51がプラスチック基板である場合には、インプリント樹脂層30にSiO2等のバリア層を設けた方が好適である。
【0035】
インプリント樹脂層30の表面に透明電極61を形成した後、配向膜41を形成する。
配向膜41は、例えばスプレーコーターにより形成される。基板に有効領域が開口されたマスクを用いてマスキング処理を施し、その上から配向膜を吐出する。その後、焼成を行い配向膜の溶剤を飛ばし、配向膜の種類によっては焼成によりイミド化を行い配向膜41が完成する。
【0036】
配向膜形成後に、ラビング方式による配向処理を行うことによって、液晶の配向方向を制御することができる。ただし、ラビング布の押し当てでフレネルレンズにダメージを与えないように注意が必要であるが、ラビング布、ローラの回転速度、ラビング圧力等の各種の条件の最適化、インプリント樹脂材料の選定、表面のハードコート処理などを行うことで問題ない。また図示しないが、第1の透明基板50にも同様に、透明電極60と配向膜40とを形成する。
【0037】
その他の配向膜の形成方法としては、例えば斜方蒸着法が挙げられる。蒸着材料としては、例えばSiOx等の無機材料が用いられる。蒸着角度によって蒸着膜のカラム構造を変化させることができ、それにより液晶の配向状態を制御することができる。この斜方蒸着法では、フレネルレンズ100の形状にダメージを与えることなく、非接触で配向膜41を形成することができる。また、斜方蒸着法で全面にSiOxを膜付けしてしまうと、SiOxは絶縁体であるため、配線の端子出しができなくなってしまうので、マスキングを行って斜方蒸着を行い、最低でも端子部として使用する予定の領域にはSiOx膜がつかないようにする。
【0038】
また、その他の配向膜の形成方法としては、インプリント樹脂層30の表面上にインクジェットやスピンコート、スプレーコートにより配向膜を塗布した後に光配向法を用いることにより、フレネルレンズ100の形状にダメージを与えることなく、非接触で配向膜を形成することができる。
【0039】
インプリント樹脂層30の表面に透明電極61および配向膜41を形成した後、図3(b)に示すように、インプリント樹脂層30の無い位置にディスペンサ75によりシール70を塗布する。このシール70は、例えば紫外線硬化樹脂であり、潰れて広がることを考慮に入れて、インプリント樹脂層30の端ぎりぎりではなく、離れて塗布する。シール70は、後述する工程で第1の透明基板50と第2の透明基板51とが貼り合わせされたときに潰されて、シール70はインプリント樹脂層30の端と密着することとなる。
【0040】
シール70を塗布した後、図3(c)に示すように、ディスペンサ76を用いてシール70の内側、フレネルレンズ100が形成された領域に液晶20を滴下する。フレネルレンズ100へのダメージを防ぐために、非接触で滴下可能なジェットディスペンサを用いることが好適である。液晶の滴下量は、シール70の内側の体積に応じて決まる。シール70の内側の体積に応じた量の液晶を滴下しないと、第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせた後の液晶セルの面精度の悪化、液晶セル内の気泡の発生などの原因となる。
【0041】
また、インプリント樹脂層30上に滴下された液晶20は、表面張力・ぬれ性等の特性に応じて、シール70より高く盛られた状態となる。液晶が高く盛られた状態で、後述するように第1の透明基板50と第2の透明基板51を重ね合わせると、液晶が第2の透明基板51に接触した後、第2の透明基板51の表面上をシール70の外側の領域まで広がってしまう問題がある。そこで、滴下された液晶の高さを抑えるため、インプリント樹脂層30の複数の箇所に液晶を滴下することが望ましい。さらに、透明基板どうしを重ね合わせたときに液晶が均一に広がるように、中心対称となる複数の箇所に液晶を滴下することが望ましい。
【0042】
インプリント樹脂層30上に液晶20を滴下した後、図3(d)に示すように、第2の透明基板51の液晶滴下面を上向きに配置して、真空状態で第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせる。
【0043】
第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせた後、UV(紫外線)をインプリント樹脂層30側から照射してシール70を硬化させる。インプリント樹脂層30が紫外線を吸収し、なおかつシール70の場所にはインプリント樹脂層30がないので、特に遮光マスク等を必要とせずに、アライメントも必要とせず、そのまま紫外線照射することができる。紫外線を照射した後、必要に応じて焼成を行ってシール70を本硬化させる。以上の工程により、本発明の液晶光学素子10が製造される。
【0044】
図3では、第2の透明基板51にシール70を塗布した後、第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせる例を示した。しかしこれに限定されるものではなく、第1の透明基板50にシール70を塗布した後、第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせてもよい。
【0045】
上述したように、本実施例の液晶光学素子では、紫外線を吸収する機能を付与した光学構造であるフレネルレンズ形状が金型モールドの転写により精度良く形成される。これにより、透明基板を貼り合わせた後のシール硬化のための紫外線照射時に、フレネルレンズ形状側から紫外線照射を行うことで、液晶保護するための遮光マスクやアライメントを必要とせず、そのまま紫外線照射することができるので、液晶と未硬化シールの接触している時間を短縮できるとともに、工程自体の短縮ができる。
【0046】
当然であるが、ODF方式だけでなく、注入方式でも本発明は適用でき、液晶未充填時の紫外線硬化シールを硬化する際の配向膜の保護や、液晶注入後の封口剤を紫外線硬化させる際にも液晶を保護することができる。
【0047】
また、配向膜に光配向膜を用いた際には、ODFで液晶を封入した後でも、シール硬化のための紫外線照射によって配向に影響を与えて配向不良を引き起こすことがあるので、光配向膜の保護をすることも可能である。
【0048】
図4は、実施例1の液晶光学素子10を用いたアプリケーションの一例を示した説明である。液晶光学素子10の透明基板をレンズ形状に加工した眼鏡レンズ1の断面図を示している。凹型形状の第1の透明基板52と凸型形状の第2の透明基板53での液晶セル構造となっている。それ以外の構成については、実施例1の液晶光学素子10と変わっていない。凹型形状の第1の透明基板52と凸型形状の第2の透明基板53によるレンズ特性に加えて、液晶20への電圧印加のON、OFFによって、焦点を可変することができるので、主に老眼鏡向けの可変焦点型電子眼鏡である。
【0049】
人間の眼球側ではなく、光源側となる物体面側に紫外線吸収剤90入りのインプリント樹脂層30を配置することで、太陽光下での使用時においても、液晶への紫外線を低減することができるし、眼球に対しても紫外線を低減している。
【0050】
また、図示していないが、より紫外線をカットするために、第1の透明基板52と第2の透明基板53の少なくともどちらかの外側表面に、紫外線低減機能を持つ層として紫外線カット層をコーティングしても良い。なお、内側表面に紫外線カット層を設けても良いが、第1の透明基板52と第2の透明基板53自体を紫外線から保護するためにも外側表面が好適である。インプリント樹脂層30のある第1の透明基板52よりも、第2の透明基板53の表面に紫外線カット層を設ければ効率が良く、好適である。紫外線カット層の他にも、一般的な眼鏡レンズのように、反射防止膜やハードコート層をコーティングする
ことがさらに望ましい。
【0051】
図5は、実施例1の液晶光学素子10を用いたアプリケーションの一例を示した説明であり、図4の変形例である。図4の構成に比べて異なっている点は、第1の透明基板54と第2の透明基板55の凹凸を図4に比べて反対にさせて、眼球側にインプリント樹脂層30を配置させるとともに、外側に配置された基板自体に紫外線低減機能を持たせたことである。外側に配置された第1の透明基板54に紫外線吸収剤90が混入されており、第1の透明基板54で紫外線をカットする機能をもっている。第1の透明基板54とインプリント樹脂層30での紫外線カットによって、液晶20への紫外線照射をより防ぐことが可能となっている。シール70を硬化させるための紫外線照射は、インプリント樹脂層30がある第2の透明基板55側からであり、第1の透明基板54に紫外線吸収があったとしても、製造に関して一向に問題がない。
【0052】
なお、第1の透明基板54と第2の透明基板55の両方の基板自体に紫外線吸収剤を混入させてしまうと、シール硬化のための紫外線を透過しなくなるため、その際には、シール70を可視光硬化対応にさせる必要がある。
【0053】
[実施例2]
<実施例2の構成:図6>
次に、本発明の液晶光学素子および製造方法の他の実施例について説明をする。以下の説明においては、既に説明した同一の構成には同一の符号を付与しており、その詳細な説明は省略し、構成が異なる点についてのみ説明する。
【0054】
本発明の実施例2の液晶光学素子の構成について説明する。図6は実施例2の液晶光学素子11の構成を示す説明図である。図6(a)は実施例2の液晶光学素子11の断面図であり、図6(b)はフレネルレンズ100、隔壁35およびシール70の形状を示す平面図である。
【0055】
図6に示すように実施例2の液晶光学素子11は、フレネルレンズ100と隔壁35とを一体に形成したインプリント樹脂層31が、シール70の内側にのみ形成された構成を備える。液晶層領域110は、インプリント樹脂層31に比べて隔壁35の部だけ小さくなっている構成である。シール70は、第1の透明基板50に形成された配向膜40および第2の透明基板51に形成された配向膜41と接着する。
【0056】
隔壁35の部位にも紫外線吸収剤90が混入されており、紫外線をカットすることができるので、実施例1に比べて、横や斜入射の液晶20への紫外線に対してもカットすることができ、より液晶への保護をすることができる。
【0057】
<実施例2の製造方法:図7>
次に、実施例2の液晶光学素子11の製造方法について、図7を用いて説明する。実施例1と異なる工程についてのみ説明を行い、重複する工程については説明を省略する。図7(a)〜(d)は、実施例2の液晶光学素子11における第2の透明基板51へのインプリント工程についての説明図である。
【0058】
図7(a)に示すように、第2の透明基板51にディスペンサ74によって紫外線吸収剤90入りの光硬化性の樹脂25を滴下し、図7(b)及び図7(c)に示すように、第2の透明基板51に滴下した樹脂25に、金型モールド95を加圧しながら押し当てる。
【0059】
その後、樹脂25が金型モールド95の隙間に十分に入り込んだ状態で、図7(c)に示すように紫外線80を照射して樹脂25を硬化させる。この際、第2の透明基板51の
紫外線80を照射する側に、隔壁35より外側の領域を隠す形状のマスク85を設置する。これにより、隔壁35およびその内側領域の樹脂25のみが硬化する。
【0060】
樹脂25が十分硬化したのち、図7(d)に示すように、金型モールド95を樹脂25から離型し、隔壁35より外側の領域の未硬化の樹脂を洗浄により洗い流す。
以上の工程により、第2の透明基板51上に、フレネルレンズ100と隔壁35とが転写され、隔壁35より外側の樹脂が取り除かれたインプリント樹脂層31が作製される。その後、図3に示す工程と同様に、透明電極および配向膜の形成、シールの塗布、液晶の滴下および透明基板の貼り合わせが行われ、実施例2の液晶光学素子11が製造される。
【0061】
なお、ここで重要な点として、ディスペンサ74による液晶の滴下量のバラつきを抑えることはもちろんのこと、隔壁35の内側の体積のバラつきも抑える必要がある。本実施例の液晶光学素子では、隔壁35がインプリントによって精度良く形成されることにより、隔壁35の内側の体積のバラつき量を抑えて、液晶セルの面精度の悪化、気泡の発生などを抑え、歩留まりを向上させることができる。
【0062】
[実施例3]
[実施例3の構成:図8]
本発明の実施例3の液晶光学素子の構成について説明する。図8は、実施例3の液晶光学素子12の構成を示す説明図である。図8(a)は、実施例3の液晶光学素子12の断面図であり、図8(b)はフレネルレンズ100の形状を示す平面図である。
【0063】
実施例3の液晶光学素子12は、インプリント樹脂層32が透明基板51の全面に形成されており、シール71を形成する領域のインプリント樹脂層32の厚みを薄くして、シール71への紫外線を完全にはカットせずに透過させている構成となっている点が、実施例1、2の液晶光学素子と異なる。図面上は、実施例1のように隔壁を設けていない構成であるが、実施例2のように隔壁があってもよい。また、シール71の領域のみに、インプリント樹脂層32を薄くしているが、領域を完全に一致させる必要はなく、液晶20から見て外側の領域については、インプリント樹脂層32の薄い領域を広げても、液晶20への紫外線カットという点においては影響がないため構わない。
【0064】
<実施例3の製造方法:図9>
次に、実施例3の液晶光学素子12の製造方法について、図9を用いて説明する。実施例1と異なる工程についてのみ説明を行い、重複する工程については説明を省略する。図9(a)〜(d)は、実施例3の液晶光学素子12における第2の透明基板51へのインプリント工程についての説明図である。
【0065】
図9(a)に示すように、第2の透明基板51にディスペンサ74によって紫外線吸収剤90入りの光硬化性の樹脂25を滴下し、図9(b)及び図9(c)に示すように、第2の透明基板51に滴下した樹脂25に、金型モールド97を加圧しながら押し当てる。金型モールド97は、フレネルレンズ形状より外側のシールが塗布される領域が凸形状となっており、転写後のその位置の樹脂25の残膜が薄く形成され、沈み36が形成されるようになっている。
【0066】
その後、樹脂25が金型モールド97の隙間に十分に入り込んだ状態で、図9(c)に示すように紫外線80を照射して樹脂25を硬化させる。全面に紫外線80を照射するので、特にマスク等を設置する必要はない。
【0067】
樹脂25が十分硬化したのち、図9(d)に示すように、金型モールド97を樹脂25から離型する。
以上の工程により、第2の透明基板51上に、フレネルレンズ100と沈み36とが転写されたインプリント樹脂層32が作製される。その後、図3に示す工程と同様に、透明電極および配向膜の形成、シールの塗布、液晶の滴下および透明基板の貼り合わせが行われ、実施例3の液晶光学素子12が製造される。
【0068】
[実施例4]
<実施例4の構成:図10>
本発明の実施例4の液晶光学素子の構成について説明する。図10は、実施例4の液晶光学素子13の構成を示す説明図である。図10(a)は、実施例4の液晶光学素子13の断面図であり、図10(b)はフレネルレンズ100の形状を示す平面図である。
【0069】
図10に示すように実施例4の液晶光学素子13は、フレネルレンズ100がインプリント樹脂層33、34によって2層構造で構成されている。フレネルレンズ100は、シール70の内側にのみ形成された構成を備える。シール70は、第1の透明基板50に形成された配向膜40および第2の透明基板51に形成された配向膜41と接着する。
【0070】
インプリント樹脂層34の部位にのみ紫外線吸収剤が混入されており(図示せず)、紫外線をカットすることができる。実施例1に比べて、紫外線を吸収する部位であるインプリント樹脂層34のフレネルレンズ100の形状に占める割合を少なくすることができ、インプリント樹脂層33は、通常の紫外線硬化で硬化することが可能であるので、インプリント樹脂の硬化のタクトタイムの短縮ならびに、インプリント樹脂の形状が大きい時に形状すべてに紫外線吸収剤が不要という時に、本実施例は特に好適である。
【0071】
<実施例4の製造方法:図11>
次に、実施例4の液晶光学素子13の製造方法について、図11を用いて説明する。実施例1と異なる工程についてのみ説明を行い、重複する工程については説明を省略する。図11(a)〜(f)は、実施例4の液晶光学素子13における第2の透明基板51へのインプリント工程についての説明図である。
【0072】
図11(a)に示すように、まず、金型モールド95にディスペンサ74によって紫外線吸収剤入りの光硬化性の樹脂26を滴下し、図11(b)に示すように、スピンコートによって、金型モールド95上に薄膜として、インプリント樹脂層34を形成する。
【0073】
次に、図11(c)に示すように、第2の透明基板51にディスペンサ74によって紫外線吸収剤が入っていない光硬化性の樹脂25を滴下し、図11(d)及び図11(e)に示すように、第2の透明基板51に滴下した樹脂25に、インプリント樹脂層34が形成されている金型モールド95を加圧しながら押し当てる。
【0074】
その後、樹脂25が金型モールド95の隙間に十分に入り込んだ状態で、図11(e)に示すように紫外線80を照射して樹脂25ならびにインプリント樹脂層34を硬化させる。この際、第2の透明基板51の紫外線80を照射する側に、シール塗布位置とその外側の領域を隠す形状のマスク85を設置する。これにより、シールの内側領域の樹脂25とシールの内側領域のインプリント樹脂34が硬化する。
【0075】
なお、図面上では、透明基板51側から紫外線80を照射しているが、これに限定されることはなく、金型モールド95が、紫外線を透過する石英モールドや樹脂モールドであれば、金型モールド95側にマスク85を設置し、金型モールド95側から紫外線80を照射しても構わない。その場合には、透明基板51に紫外線吸収剤入りの樹脂を塗布し、金型モールド95側には紫外線吸収剤を入れていない樹脂を塗布することとなる。構成として、透明基板51側に紫外線吸収剤入りの樹脂を設けることができるので、樹脂自体が
紫外線に対して劣化しやすい場合に、好適である。
【0076】
樹脂25とインプリント樹脂34とが十分硬化したのち、図11(f)に示すように、金型モールド95をインプリント樹脂層34から離型し、外側領域の未硬化樹脂を洗浄により洗い流す。
以上の工程により、第2の透明基板51上に、フレネルレンズ100として、シールの形成位置より外側の樹脂が取り除かれた2層形状のインプリント樹脂層33とインプリント形状34とが作製される。その後、図3に示す工程と同様に、透明電極および配向膜の形成、シールの塗布、液晶の滴下および透明基板の貼り合わせが行われ、実施例4の液晶光学素子13が製造される。
【0077】
なお、本実施例においては、樹脂25と樹脂26を同じ屈折率にした方が、界面での反射を防ぐことができ高透過率となるので望ましく、同じ材料とすることがさらに好適である。また、同じ材料のため接着力も良好である。
金型モールド95に塗布する樹脂26を薄い薄膜とする場合には、樹脂26を溶剤で希釈しておき、スピンコート後に金型モールド95ごと加熱することで溶剤を飛ばし、薄い膜厚の薄膜とすることができる。
【0078】
製造方法の例として示したが、本実施例としては、2層構造のインプリント樹脂層という構成が本発明であって、製造方法については、これに限定されるわけではなく、金型モールド95には、離型処理が施されており密着しにくくなっているが、金型モールド95よりインプリント樹脂層33との接着力が強いという条件が適用されれば、金型モールド95に塗布後に予め紫外線照射を行ったり、異なる樹脂材料の組み合わせであっても一向に構わない。
【0079】
(その他の変形例)
上述した実施形態の説明においては、光学形状として、フレネルレンズ形状がインプリント(転写)工程で形成される例を示した。しかし、本発明は光学形状が限定されるものではなく、例えば、マイクロプリズム形状、マイクロレンズアレイ形状、シリンドリカルレンズ形状等の光学形状でも、インプリント工程で光学形状に紫外線吸収剤を混入させて紫外線吸収機能を付与した構成およびその製造方法に適用可能である。また、いずれの実施形態においても、一方の基板に光学構造形状を形成した例を示したが、両方の基板に光学構造形状を形成しても構わない。また、図4および図5に図示した眼鏡レンズのアプリケーションは、実施例1のみならず、上述したすべての実施例の構成を採用することができる。
【0080】
さらに、上述した実施形態の説明においては、シールが、平面視においてフレネルレンズ形状に合わせて円形状である例を示した。しかし、液晶領域への紫外線をカットするために、液晶領域に対してインプリント樹脂層の領域が同じ以上であれば、形状については円形状に限定されず、平面視において四角形状、多角形形状、楕円形状等であってもよい。
【0081】
本発明の液晶光学素子は、液晶の配向方式、透明電極の輪帯パターン電極の構成・本数・設計方法、液晶材料の種類、層数等によらないので、液晶光学素子に幅広く適用することができ、特に、ODF方式のプロセスにおいて有効である。
【0082】
本発明の液晶光学素子は、デジタルカメラ、ムービーカメラ、カメラ付き携帯電話のカメラ部、車等に搭載されて後方確認用モニターなどに用いられるカメラなどの撮像光学系、プロジェクタ、レーザーポインタなどの投影光学系、CD、DVD、BD(Blue-ray Disc(登録商標))等のピックアップ向けの収差補正素子、眼鏡やヘッドマウントディス
プレイなどのアイウェアと、幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1、2 眼鏡レンズ
11〜13 液晶光学素子
20 液晶
25、26 樹脂
30〜34 インプリント樹脂層
35 隔壁
36 沈み
40、41 配向膜
50、52、54 第1の透明基板
51、53、55 第2の透明基板
60、61 透明電極
65 ガスバリア層
70〜71 シール
74、75、76 ディスペンサ
80 紫外線(UV)
82 スペーサ
85 マスク
90 紫外線吸収剤
95、96 金型モールド
100 フレネルレンズ
110 液晶層領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状のシールを介して、第1の基板と第2の基板とが貼り合わされ、前記シールの内側の領域に液晶層が配され、前記第1の基板または前記第2の基板の片側または両側に前記液晶層側に、樹脂によって形成された光学構造体を備えた液晶光学素子であって、前記光学構造体が紫外線低減機能を備えたことを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
前記光学構造体が、少なくとも前記液晶層の有効エリア領域を覆うことを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
前記紫外線低減機能を備えた前記光学構造体は、樹脂に紫外線吸収剤が混入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
前記光学構造体の厚みは、少なくとも前記液晶層の領域における最も厚みが薄くなる箇所において、樹脂に混入されている紫外線吸収剤の平均粒径よりも厚いことを特徴とする請求項3に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記第1の基板と第2の基板において、前記シールが配置される領域には、前記光学構造体を設けないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
前記第1の基板と第2の基板において、前記シールが配置される領域は、他の領域より前記光学構造体の厚みを薄くしたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
前記シールの内側には、前記光学構造体で形成された隔壁を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
前記光学構造体は、前記紫外線低減機能を持つ層と前記紫外線低減機能を持たない層との2層を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
前記第1の基板または前記第2の基板のいずれか一方の基板に、前記光学構造体を形成し、形成されてない他方の基板の外側に紫外線低減機能膜を配置するか、または前記他方の基板自体が紫外線低減機能を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載した液晶光学素子を用いた電子眼鏡。
【請求項11】
枠状のシールを介して、第1の基板と第2の基板とが貼り合わされ、前記シールの内側の領域に液晶層が配置され、前記第1の基板または前記第2の基板の前記液晶層側に、樹脂によって形成された光学構造体を備えた液晶光学素子の製造方法であって、
前記第1の基板または前記第2の基板上に、未硬化の紫外線低減機能を有する樹脂を配置したのち、前記樹脂を硬化して、前記光学構造体を形成する光学構造体形成工程と、
前記第1の基板または第2の基板に未硬化の前記シールを配置するシール配置工程と、
前記光学構造体が形成された前記第1の基板または前記第2の基板の外側から、前記未硬化の前記シールを硬化するための紫外線照射を行うシール硬化工程を有することを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
【請求項12】
前記シール硬化工程前に、前記第1の基板または前記第2の基板の上に、前記液晶層を配置する液晶層配置工程を備えることを特徴とする請求項11に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項13】
前記光学構造体は、前記シールと接する位置に隔壁を備えていることを特徴とする請求項11かまたは12に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項14】
前記光学構造体形成工程では、前記未硬化の紫外線低減機能を有する樹脂に紫外線または可視光の光照射を行うことで、前記樹脂の硬化が行われ、前記シールを配置する領域には、前記樹脂に対して前記光照射が行われないように、マスクを配置することを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項15】
前記光学構造体形成工程では、前記シールを配置する領域において、他の領域より、前記光学構造体の厚さが薄くなるように前記光学構造体を形成することを特徴とする請求項11から14のいずれか1項に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項16】
前記光学構造体形成工程では、未硬化の前記紫外線低減機能を持たない樹脂も配置し、前記紫外線低減機能を持たない樹脂も硬化する工程を有することを特徴とする請求項11から15のいずれか1項に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項17】
前記未硬化の紫外線低減機能を有する樹脂とは、紫外線吸収剤が混入されている樹脂であることを特徴とする請求項11から16のいずれか1項に記載の液晶光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−123315(P2011−123315A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281191(P2009−281191)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】