説明

液晶化合物および液晶媒体

【課題】液晶化合物および液晶媒体を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも3個のフッ素置換ベンゼン環、末端トリフルオロメチル基および少なくとも1個の−CFO−ブリッジを有する液晶化合物に関する。また、本発明は、それらを用いて調製される液晶媒体と、これらの媒体を含有する液晶ディスプレイ装置(LCディスプレイ)とにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3個のフッ素置換ベンゼン環、末端トリフルオロメチル基および少なくとも1個の−CFO−ブリッジを有する液晶化合物に関する。また、本発明は、それらを用いて調製される液晶媒体、およびこれらの媒体を含有する液晶ディスプレイ装置(LCディスプレイ)にも関する。
【背景技術】
【0002】
情報を表示するために、LCディスプレイにおいて液晶媒体が長らく使用されてきた。4個の環および1個の−CFO−ブリッジを有する高極性化合物は、例えば、ドイツ国特許出願公開第10353658号公報(特許文献1)および欧州特許出願公開第1454975号公報(特許文献2)において、ディスプレイ装置用に既に提案されている。米国特許出願公開第2009/0059157号公報(特許文献3)には、光学的等方性ブルー相において動作するLCディスプレイが開示されている。
【0003】
当業者に良く知られているネマチック液晶を用いるディスプレイに加え、ブルー相を有する媒体を基礎とする用途も次第に開発されてきている。これらは、特に、短い応答時間によって特徴づけられる。液晶ブルー相の電気光学的効果を利用するディスプレイ用途においては、特に、パラメータΔεおよびΔnが極めて重要である。
【0004】
これらの相における高速スイッチング動作のための原理は、所謂カー効果である。カー効果は、外部電界によって引き起こされる光学的に透明および等方な材料の複屈折における変化である。複屈折における変化は、以下の式によって与えられる:
【0005】
【数1】

式中、Δninducedは誘発される複屈折であり、Kはカー定数であり、Eは印加される電界である。λは波長を表す。ブルー相における材料については、異常に高いカー定数が観測される。
【0006】
Kikuchiらは、LC材料の特性に対するカー定数の依存性を記載している[H.Kikuchiら、Appl.Phys.Lett.2008年、92巻、043119頁(非特許文献1)]。それによれば、カー定数は、液晶媒体の複屈折率および誘電異方性の積に比例する:
【0007】
【数2】

高速スイッチングプロセスおよび低いスイッチング電圧のためには、高い値のカー定数、よって、高い値の積Δn・Δεを有する材料が必要である。
【0008】
ブルー相の安定化のために使用される重合性シクロヘキサン誘導体に加え、国際特許出願公開第2008/061606号パンフレット(特許文献4)には、以下の式のCF末端化合物:
【0009】
【化1】

を含め、複数の異なるLC成分も開示されている。
当該明細書においては、テトラヒドロピラン環の隣のベンゼン環が2個のフッ素原子により排他的に置換されている。
【0010】
米国特許出願公開第2006/0061699号公報(特許文献5)(ドイツ国特許出願公開第10353685号公報(特許文献6)参照)には、例えば、下式の2種類のF末端化合物:
【0011】
【化2】

を含め、4個の環および1個の−CFO−ブリッジを有する化合物が開示されている。
がHである化合物の積Δn・Δεの方が、LがFである化合物よりも低い(4.3に比べ4.0)ことがデータより明らかである。
【0012】
欧州特許出願公開第1454975号公報(特許文献7)には、例えば、下式の2種類のOCF末端化合物:
【0013】
【化3】

を含め、4個の環および1個の−CFO−ブリッジを有する化合物が開示されている。
がHである化合物の積Δn・Δεの方が、LがFである化合物よりも低い(3.7に比べ3.5)ことがデータより再び明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第10353658号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1454975号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0059157号公報
【特許文献4】国際特許出願公開第2008/061606号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0061699号公報
【特許文献6】ドイツ国特許出願公開第10353685号公報
【特許文献7】欧州特許出願公開第1454975号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】H.Kikuchiら、Appl.Phys.Lett.2008年、92巻、043119頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
液晶媒体における使用のために有利な特性を有する化合物を提供することを本発明の目的とする。特に、化合物は、ポリマー安定化されたブルー相を有する媒体を使用するディスプレイにおける使用にとって適していなければならない。本明細書においては、高速スイッチングを可能とし、良好な電圧保持率(VHR)を有し、スイッチングプロセスのために低い電圧(Vop)を必要とし、高い透明点を有し、低いヒステリシスを示し、低いメモリー効果を有し、光および熱への曝露に対して安定な材料が要求される。加えて、個々の化合物はネマチックLC媒体において適度な溶解性を有していなければならないか、それら自身で広いネマチック相範囲を有していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、一般式Iの化合物によって本発明に従い達成される。また、驚くべきことに、本発明による化合物を用いることにより、適切なネマチック相範囲、高い誘電異方性Δεおよび高いΔnを有する液晶媒体を達成することができ、該液晶媒体は先行技術の材料の不具合を有していないか、少なくとも著しく低減された程度にのみ有することも見出された。実質的には、単なるネマチックディスプレイ用の高極性物質にも同一の要求がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は式Iの化合物に関する。
【0019】
【化4】

式中、
は、1,4−フェニレン(該基は、互いに独立に、ハロゲン、CN、CH、CHF、CHF、CF、OCH、OCHF、OCHFまたはOCFにより任意に四置換までされていてもよく、ただし、1〜2個のCH基は、任意にNにより置換されていてもよい。)、シクロヘキサン−1,4−ジイルまたはシクロヘキセン−1,4−ジイル(該基のそれぞれにおいて、1〜2個のCH基は、任意に互いに独立に、OまたはSにより置換されていてもよく、および/または、HはFにより置換されていてもよい。)、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、2,5−チオフェンジイルまたは2,5−セレノフェンジイルを表し、
は、単結合、CFO、CHCH、CFCH、CFCF、CFHCFH、CFHCH、(CO)O、CHO、C≡C、CH=CH、CF=CH、CF=CFを表し、ただし、非対称な結合単位(例えば、CFO)は両方の可能な方向のうち、どちらを向いていてもよく、および
は、1〜15個のC原子を有する無置換のアルキル基(ただし加えて、この基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CO)−または−O−により置き換えられていてもよい。)、H、F、Cl、Br、CN、CF、OCF、SCN、NCSまたはSFを表す。
【0020】
本発明による化合物は、比較的高い透明点、極めて高い誘電異方性(Δε)、高い光学的異方性(Δn)および低い回転粘度を有する。本発明による化合物は、単独または更なるメソゲン成分と混合されて、広い温度範囲にわたりネマチック相を有する。これらの特性により、本発明による化合物は液晶媒体における使用に適するものとなる。本発明による化合物は、ブルー相の領域における媒体における使用に特に適する。
【0021】
基Rは、好ましくは、1〜15個のC原子を有するアルキル基を表し、ただし加えて、この基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CO)−または−O−により置き換えられていてもよい。Rは、特に好ましくは、無置換のアルキル、非常に特に好ましくは、1〜12個のC原子を有する直鎖状のアルキルを表す。
【0022】
ブリッジ基Zは、好ましくは、単結合を表す。
【0023】
環Aは、好ましくは、以下の基より選択され、
【0024】
【化5】

特に好ましくは、以下の基より選択される基を表す。
【0025】
【化6】

従って、本発明の具体的な好ましい実施形態は、とりわけ、以下の構造である。
【0026】
【化7】


式中、nは、1、2、3、4、5、6または7、特に、3である。
【0027】
式Iの化合物は、以下の具体的合成例(スキーム1)より明らかな通り、有利に調製できる。
【0028】
特に好ましくは、構築ブロック2をボロン酸類1または、例えば、3などのボロン酸エステル類とパラジウム促進交差カップリング反応することにより、式Iの化合物を調製する(鈴木カップリング、スキーム1参照)。
【0029】
【化8】

【0030】
また、求電子剤および求核剤の役割を交換しても構わない。よって、ボロン酸類6または、例えば、ピナコールボロン酸エステル5などのボロン酸エステル類が好ましい出発化合物である(スキーム2)。これらを対応する求電子剤4(ただし、Xは、好ましくは、Br、Iまたはトリフレート(OTf)である。)と反応する。
【0031】
【化9】

【0032】
必要な出発材料は、当業者に既知で、例えば、Houben−Weyl著、Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載される方法に類似して調製できる。
【0033】
スキーム3に示す通り、3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノール(8)より出発して化合物2を合成する。塩基存在下において該フェノールをジチアニリウム塩7と反応させ、付加物を直接、酸化的に脱硫する[P.Kirsch、M.Bremer、A.Taugerbeck、T.Wallmichrath、Angew.Chem.Int.Ed.2001年、40巻、1480〜1484頁]。
【0034】
【化10】

【0035】
次いで、ピナコールボラン類、例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン(Pin)を使用するパラジウム触媒ホウ素化を経由して2より出発し、ボロン酸エステル5を得る。ボロン酸6は、2より得られる有機リチウム化合物をホウ酸トリメチルと反応し、引き続いて加水分解することで得られる(スキーム4)。
【0036】
【化11】

【0037】
がシクロヘキサン環でZが単結合の場合、対応するボロン酸類13を容易に入手できる(スキーム5)のため、好ましくは、方法A(スキーム1参照)が使用される。3−フルオロブロモフェノール(9)より得られるグリニャール試薬をケトン類10に加える。アルコール類11を脱水によりアルケン類に転化し、次いで、アルケン類を水素化する。次いで、異性化により、好ましくは、化合物12のトランス異性体が得られる。適切なリチウム塩基により、所望の位置においてオルトメタル化がうまく行なわれる。該有機金属化合物をホウ酸トリメチルと反応し、酸を使用する一連の操作の後にボロン酸類13が得られる。
【0038】
次いで、例えば、スキーム5に記載される条件下において、成分13および2の鈴木カップリングが優れた収率で進行する。
【0039】
【化12】

【0040】
がテトラヒドロピラン環を表す化合物に対しては、反応を同じように行うと位置異性のボロン酸の混合物が得られるため、これは好ましい方法ではない(スキーム6参照)。15と16の分離は、容易に可能ではない。
【0041】
【化13】

【0042】
従って、良好な収率および優れた純度で好ましい化合物Ia(即ち、AがテトラヒドロピランでZが単結合であるI)の合成を行えるための方法を提供することも本発明の態様である。この目的は、2つのプロセスを開発することで達成される(スキーム7および8またはスキーム9および10参照)。
【0043】
第1のプロセスはスキーム1からの方法Bに基づく。ここでは、化合物2に対する鈴木カップリングにおいて、ボロン酸エステル17を化合物Iaに転化する(スキーム7)。
【0044】
【化14】

【0045】
この目的のために必要なボロン酸エステル17は、4−ブロモ−3−フルオロベンズアルデヒド(18)より出発して合成する。最初に、Prins型環化において、4−ブロモ−3−フルオロベンズアルデヒド(18)をアリルアルコール類19と反応させ、ブロモテトラヒドロピラン類20を与える。パラジウム触媒を用いてブロモテトラヒドロピラン類20をPinと反応させ、ボロン酸エステル類21を得る。最後に、還元的条件下において脱臭素化を行い、化合物17を得る。
【0046】
【化15】

【0047】
第2のプロセスは、スキーム2からの方法Cに基づく。ここでは、出発材料としてトリフレート類22を使用し、鈴木カップリングにおいて、ボロン酸エステル5と反応させ、化合物Iaが得られる(スキーム9)。
【0048】
【化16】

【0049】
トリフレート類22は、4−ブロモ−2−フルオロフェノール(23)より出発して以下の通り合成する。最初に、臭化ベンジルを使用してヒドロキシル官能基を保護し、ベンジルエーテル24を得る。N−ホルミルモルホリンまたはDMFを使用して、24より形成されたグリニャール試薬をホルミル化する。アリルアルコール類19を使用し、アルデヒド25のPrins型環化を経由して、テトラヒドロピラン環を構築する。この段階において、化合物26の望ましくないシス異性体(テトラヒドロピラン環の1,4−位に関して)が有利に分離除去される。還元的条件下における脱臭素化により、ベンジル保護基の除去と共に、フェノール類27が形成される。化合物27をトリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO)と反応させ、所望のトリフレート類22を与える。
【0050】
【化17】

【0051】
従って、本発明は、適切な遷移金属触媒の存在下において、式AおよびBの2種類の出発物質を反応させる反応工程を含む式Iの化合物を調製する方法も包含する。
【0052】
【化18】

式中、R、AおよびZは、式Iで定義される通りであり、および
またはXが、−B(OH)、ボロン酸エステルまたはボロン酸塩を表し、そして他の基が、Cl、Br、Iまたは−O(SO)CFを表す。
【0053】
この方法は、

【0054】
【化19】

を表し、
が単結合を表し、
が、ホウ素原子、好ましくは、ボロン酸エステル基を含む基を表し、
が、ハロゲンまたはこの方法に適切な基を表す
式Iの化合物にとって特に有利である。
【0055】
ホウ素化合物Aは、好ましくは、スキーム8に類似して調製され、即ち、化合物Aまたはそれの前駆体は、適切なホウ素化合物の存在下でパラジウム触媒を用いて、XがBrである化合物より調製される。
【0056】
本発明による液晶媒体は、式Iの1種類以上の化合物および任意成分として少なくとも1種類の更なる、好ましくは、メソゲン化合物を含む。従って、液晶媒体は、好ましくは、2種類以上の化合物を含む。好ましい媒体は、式Iの好ましい化合物を含む。
【0057】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、正の誘電異方性を有する。本発明による液晶媒体は、それらが高い光学的異方性と組み合わされて非常に高い誘電異方性を有するように設計できる。
【0058】
本発明による液晶媒体のために更に好ましい化合物は、式IIおよびIIIの化合物より選択される:
【0059】
【化20】

式中、
は、それぞれの場合において互いに独立に、1〜15個のC原子を有する無置換のアルキル基(ただし加えて、この基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CO)−または−O−により置き換えられていてもよい。)、好ましくは、2〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、
、Aは、互いに独立に、
【0060】
【化21】

を表し、
、Zは、互いに独立に、単結合、CFO、CHCH、CFCH、CFCF、CFHCFH、CFHCH、(CO)O、CHO、C≡C、CH=CH、CF=CH、CF=CFを表し、ただし、非対称な結合単位(例えば、CFO)は両方の可能な方向のどちらを向いていてもよく、
は、F、Cl、CN、または、1〜3個のC原子を有しFにより一置換または多置換されているアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキルアルコキシまたはアルコキシを表し、および
〜Lは、HまたはFを表す。
【0061】
液晶媒体は、好ましくは、10および50質量%の間の量で、式Iの化合物を含む。総含有量が10%を超える場合、好ましくは、基Rの鎖長が異なり、任意選択で環Aが異なる2種類以上の式Iの化合物を使用する。液晶媒体は、好ましくは、20および40質量%の間の式IIの化合物を含む。式IIIの化合物は、存在するのであれば、好ましくは、20質量%までの量で使用する。残りの他の化合物は、存在するのであれば、高い誘電異方性、高い光学的異方性、および、好ましくは、高い透明点を有する更なる化合物より選択される。
【0062】
高含有量の式Iの化合物により、好ましくは、式IIおよびIIIの化合物によって補足されて、過度に高い誘電異方性を達成できる。
【0063】
式IIの好ましい化合物は、式IIaのものである:
【0064】
【化22】

式中、RおよびLは、式IIで定義される通りである。
【0065】
式IIIの好ましい化合物は、式IIIaまたはIIIbのものである:
【0066】
【化23】

式中、Rは式IIIで定義される通りである。
【0067】
本発明は、更に、液晶媒体において、好ましくは、光学的に等方な液晶相、好ましくは、ブルー相を有する媒体において、式Iの化合物を使用することに関する。この相は、好ましくは、ポリマー安定化されている。一般に、媒体のモノマー含有物は、媒体がブルー相にある温度において重合される。よって、この相の安定範囲は広くなっている。ブルー相におけるポリマー安定化媒体のこれまでに達成可能であった特性における著しい改良が、本発明による化合物および媒体に付随する。
【0068】
加えて、液晶媒体は、安定剤、キラルドーパントおよびナノ粒子などの更なる添加剤を含んで構わない。添加される個々の化合物は、好ましくは、0.1〜6%の濃度において使用される。使用される個々の化合物の濃度は、好ましくは、それぞれの場合において、0.1%〜3%の範囲内である。しかしながら、液晶混合物の他の構成成分、即ち、液晶またはメソゲン化合物、および適切な場合には重合成分のための濃度データは、これらの添加剤の濃度を考慮せずに示される。
【0069】
液晶媒体は、好ましくは、0.01〜10質量%の光学的に活性なキラルドーパントを含む。これは、液晶ブルー相の形成を助ける。ブルー相のためには、好ましくは、高いHTP(「helical twisting power(らせん誘起力)」)を有するキラルドーパントを、典型的には、2〜5質量%の範囲内において使用する。
【0070】
本発明による媒体は、好ましくは、1種類以上の重合性化合物を含むか、または、それらより得られるポリマーによって安定化されており、ここで、重合は、好ましくは、ブルー相において行われる。
【0071】
液晶媒体は、好ましくは0〜10質量%、特には0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%の安定剤を含む。媒体は、好ましくは、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール類、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン類または2−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノール類より選択される1種類以上の安定剤を含む。これらの補助剤は当業者に既知であり、例えば、光安定剤として商業的に入手可能である。
【0072】
従って、また、本発明の実施形態は、式Iの1種類以上の化合物を、好ましくは、式IIおよびIIIより選択される1種類以上の液晶化合物と、任意成分として1種類以上の更なる化合物と、任意成分として1種類以上の添加剤と混合することを特徴とする液晶媒体を調製する方法である。任意に、引き続き、液晶媒体の重合性成分を重合する。
【0073】
本発明は、更に、電気光学的装置、好ましくは、液晶ディスプレイにおける本発明による化合物または媒体の使用、およびそのような装置自身に関する。ディスプレイは、好ましくは、少なくとも部分的にブルー相(好ましくは、ポリマー安定化ブルー相である。)の領域において動作する。あるいは、媒体およびディスプレイは、好ましくは、ネマチック相においても動作する。
【0074】
本発明によるポリマー安定化装置は、好ましくは、装置自身において、即ち、光電子セルにおいて、媒体の重合性構成成分の重合を行うことによって製造される。
【0075】
本発明による電気光学的ディスプレイ装置の構造は、好ましくは、液晶媒体を封入する2枚の互いに対向する基板と、セル内に設けられた電極とを含むセルより成る。電極は、好ましくは、基板に平行な方向(または、光軸に垂直)の成分を有する電界を液晶媒体中に電極が生成できるように設計される。電極は、好ましくは、くし型電極(交差指電極)として基板の一方に適用される。一方または両方の基板が透明であることが好ましい。ブルー相において動作するディスプレイの場合、電圧を印加することで、光学的に等方な媒体が複屈折性となる。対応して配置された偏光子と共に、光学的なスイッチング操作が達成される。
【0076】
本出願において、用語「誘電的に正」はΔεが3.0より大きい化合物または成分を記載し、誘電的に中性は、Δεが−1.5以上3.0以下の化合物または成分を記載し、誘電的に負は、Δεが−1.5未満の化合物または成分を記載する。それぞれの化合物の誘電異方性は、ネマチックホスト混合物中のそれぞれ個々の化合物の10%溶液の結果より決定される。それぞれの化合物のホスト混合物中における溶解度が10%未満の場合、濃度を5%に下げる。テスト混合物の容量は、ホメオトロピック配向のセルにおいて、また、ホモジニアス配向のセルの両方において決定される。両タイプのセルにおける層厚は約20μmである。印加される電圧は1kHzの周波数、および、典型的には、0.5V〜1.0Vの有効値を有する矩形波であるが、それぞれのテスト混合物の容量閾値よりも電圧が低くなるよう常に選択される。
【0077】
誘電的に正の化合物に使用されるホスト混合物は混合物ZLI−4792であり、誘電的に中性および誘電的に負の化合物に使用されるホスト混合物は混合物ZLI−3086であり、両者ともドイツ国メルク社製である。化合物の誘電定数の絶対値は、興味ある化合物を添加した際のホスト混合物のそれぞれの値における変化より決定される。その値を、興味ある化合物の濃度100%に外挿する。
【0078】
20℃の測定温度においてネマチック相を有する成分は、そのままで測定され、他の全ては化合物と同様に処理される。
【0079】
本出願において示されるパラメータの範囲は、他に明らかに示さない限り、全て限界値を含む。
【0080】
本出願を通じて、他に明らかに示さない限り、以下の条件および定義を適用する。全ての濃度は質量パーセントで示され、それぞれの場合において、混合物全体に関する。例えば、液晶の融点T(C,N)またはT(C,S)、スメクチック(S)相からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などの全ての温度は、摂氏度で示される。全ての温度差は差異度で示される。全ての物理的特性、典型的には液晶の特性は、「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年11月、ドイツ国メルク社に従って決定され、他に明らかに示さない限り、20℃の温度で示される。光学異方性(Δn)は、589.3nmの波長で決定される。誘電異方性(Δε)は、1kHzの周波数で決定される。Δεは(ε−ε)と定義され、一方、εaveは(ε+2ε)/3である。
【0081】
閾電圧および他の全ての電気光学的特性は、ドイツ国メルク社で製造されたテストセルを使用して決定される。Δεの決定のためのテストセルは、約20μmの層厚を有している。電極は、1.13cmの面積および保護リングを有する円形ITO電極である。配向層は、ホメオトロピック配向(ε)用には日本国日産化学社製SE−1211、ホモジニアス配向(ε)用には日本国日本合成ゴム社製ポリイミドAL−1054である。容量値は、0.3Vrmsの電圧を有する正弦波を使用し、Solatron1260周波数応答解析装置を使用して決定する。電気光学的測定において使用される光は、白色光である。ドイツ国Autronic Melchers社製の商業的に入手可能なDMS装置を使用する装置構成を、本明細書において使用する。特性電圧を、垂直観察で決定する。閾値電圧(V10)、中間灰色電圧(V50)および飽和電圧(V90)を、それぞれ、10%、50%および90%の相対コントラストで決定する。
【0082】
液晶のダイレクタに垂直および平行な特性の成分に関する値は、磁界中において液晶を配向することで得る。この目的のために、永久磁石の磁界を使用する。磁界の強度は0.35teslaである。磁石の配置を対応して設定し、次いで、対応して90°回転する。
【0083】
本出願においては、他に明らかに示さない限り、用語「化合物」は、1種類の分子と、また、複数種類の分子との両方を表す。
【0084】
用語「アルキル」は、好ましくは、1〜15個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルキル基、特に、直鎖状の基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。2〜10個の炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
【0085】
用語「アルケニル」は、好ましくは、2〜15個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルケニル基、特に直鎖状の基を包含する。特に好ましいアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特に、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニルおよびC〜C−4−アルケニルである。更に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個までの炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
【0086】
用語「アルコキシ」は、好ましくは、式C2n+1−O−の直鎖状の基を包含し、ただし、nは1〜10を表し、nは、好ましくは、1〜6である。好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、n−ノノキシ、n−デコキシである。
【0087】
用語「オキサアルキル」または「アルコキシアルキル」は、好ましくは、式C2n+1−O−(CHの直鎖状の基を包含し、ただし、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜10を表す。好ましくは、nが1で、mが1〜6である。
【0088】
用語「フッ化アルキル基」は、好ましくは、一フッ素化または多フッ素化された基を包含する。ペルフッ素化された基も含む。CF、CHCF、CHCHF、CHF、CHF、CHFCFおよびCFCHFCFが特に好ましい。
【0089】
用語「フッ化アルコキシ基」は、好ましくは、一フッ素化または多フッ素化された基を包含する。ペルフッ素化された基も含む。OCFが特に好ましい。
【0090】
1,4−シクロヘキサン環は、好ましくは、1,4−トランス立体配置である。例示化合物はトランス立体配置である。
【0091】
本出願において、用語「化合物(複数形)」は、他に明らかに示さない限り、1種類の化合物と、また、複数種類の化合物との両者を表す。逆に、これが定義に従って可能であり他に明らかに示さない限り、用語「化合物(単数形)」は、一般に、複数種類の化合物も含む。同一のことを、液晶媒体(複数形)および液晶媒体(単数形)との用語に適用する。それぞれの場合において用語「成分」は、1種類以上の物質、化合物および/または粒子を包含する。
【0092】
本発明による液晶媒体は、複数種類の化合物、好ましくは3〜30種類、より好ましくは4〜20種類、非常に好ましくは4〜16種類の化合物から成る。これらの化合物は、従来の様式において混合される。一般に、より少ない量で使用される化合物の所望の量を、より多い量で使用される化合物中に溶解する。より高濃度において使用される化合物の透明点より温度が高い場合、溶解工程の完了を特に容易に観察できる。しかしながら、他の従来法において、例えば、化合物の同族または共晶混合物でよいが、所謂プレミックスを使用して、または、例えば、それらの構成成分がそれら自身で使用可能な状態の混合物である所謂「マルチボトル」系を使用して媒体を調製することも可能である。
【0093】
以下の例は、本発明をどのような様式においても制限することなく説明する。
【0094】
しかしながら、いかなる特性が達成可能であり、それらをどの範囲で改変できるかが、物理的特性により当業者に明らかとなる。よって、特に、好ましくは達成できる種々の特性の組み合わせが当業者に対して十分に規定される。
【0095】
更なる略称:
BnBr 臭化ベンジル
THF テトラヒドロフラン
Pd/C 商業的に入手可能で活性炭支持体上のパラジウム触媒
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
SiO クロマトグラフィー用のシリカゲル
【実施例】
【0096】
<例1>:2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−プロピルテトラヒドロピラン
【0097】
【化24】

本発明による化合物を下記の通り調製する。
【0098】
1.1 1−ベンジルオキシ−4−ブロモ−2−フルオロベンゼンの合成
【0099】
【化25】

210.0g(1.10mol)の4−ブロモ−2−フルオロフェノールを1.1lのエチルメチルケトンに溶解し、175.0g(1.27mol)の炭酸カリウムおよび150.0ml(1.26mol)の臭化ベンジルを加える。混合物を5時間還流し、室温において16時間撹拌する。バッチを濾過し、濾液を乾固するまで濃縮する。粗生成物をヘプタンより低温において結晶化する。
【0100】
1.2 4−ベンジルオキシ−3−フルオロベンズアルデヒドの合成
【0101】
【化26】

最初に、25.9g(1.07mol)の削り状マグネシウムを200mlのTHFに導入し、700mlのTHF中の285.6g(1.02mol)の1−ベンジルオキシ−4−ブロモ−2−フルオロベンゼンの溶液を、グリニャール反応の開始後に穏やかな還流が維持される速度によって滴下で加える。添加が完了した時点で混合物を1000mlのTHFで希釈し、バッチを沸騰で1時間加熱する。グリニャール試薬の溶液を0℃まで冷却し、100mlのTHF中の118ml(1.07mol)のN−ホルミルモルホリンを滴下で加える。1時間後、混合物をMTBEで希釈し、希塩酸を使用して加水分解する。有機相を分離除去し、水相をMTBEで抽出する。合わされた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶液を乾固するまで濃縮し、粗生成物をn−ヘプタン:MTBEより再結晶する。
【0102】
1.3 2−(4−ベンジルオキシ−3−フルオロフェニル)−4−ブロモ−5−プロピルテトラヒドロピランの合成
【0103】
【化27】

最初に、188.0g(0.79mol)の4−ベンジルオキシ−3−フルオロベンズアルデヒドを、1000mlのジクロロメタンに0℃において90.0g(0.79mol)の2−ビニルペンタン−1−オールと共に導入する。176.0g(0.39mol)の臭化ビスマス(III)を数回に分けて加え、混合物を室温において19時間撹拌する。不溶性成分を分離除去し、混合物を吸引濾過する(SiO、CHCl)。濾液を乾固するまで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:MTBE=4:1)によって精製する。得られる油分をクロロブタンに取得溶解し、溶液を冷エタノールに滴下で加える。沈殿する結晶を回収し、n−ヘプタンより再び再結晶する。このようにして、2−(4−ベンジルオキシ−3−フルオロフェニル)−4−ブロモ−5−プロピルテトラヒドロピランを帯黄色の固体として得る。
【0104】
1.4 2−フルオロ−4−(5−プロピルテトラヒドロピラン−2−イル)フェノールの合成
【0105】
【化28】

Pd/C(5%のPd)および86.0ml(0.60mol)のトリエチルアミンの存在下、トルエン/水において、123.0g(0.30mol)の2−(4−ベンジルオキシ−3−フルオロフェニル)−4−ブロモ−5−プロピルテトラヒドロピランを水素化する。反応溶液をMTBEで希釈し、有機相を分離除去する。水相をMTBEで抽出する。合わされた有機相を水洗し、硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶液を乾固するまで濃縮し、以下の反応で残渣を直接使用する。
【0106】
1.5 トリフルオロメタンスルホン酸2−フルオロ−4−(トランス−5−プロピルテトラヒドロピラン−2−イル)フェニルの合成
【0107】
【化29】

最初に、62.0g(0.26mol)の2−フルオロ−4−(5−プロピルテトラヒドロピラン−2−イル)フェノールを600mlのジクロロメタンに0℃において55.0ml(0.40mol)のトリエチルアミンおよび0.65g(5.32mmol)のDMAPと共に導入する。45.0ml(0.27mol)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO)を量り入れ、混合物を室温において17時間撹拌する。バッチを水洗し、水相をジクロロメタンで抽出する。合わされた有機相を硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、溶液を乾固するまで濃縮する。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、トリフルオロメタンスルホン酸2−フルオロ−4−(トランス−5−プロピルテトラヒドロピラン−2−イル)フェニルを無色の液体として得る。
【0108】
1.6 2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−プロピルテトラヒドロピランの合成
【0109】
【化30】

10.0g(27.0mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸2−フルオロ−4−(トランス−5−プロピルテトラヒドロピラン−2−イル)フェニルおよび14.3g(29.4mmol)の2−{4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−3,5−ジフルオロフェニル}−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、1.50g(1.30mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)および30mlの2N炭酸ナトリウム溶液の100mlのトルエン/エタノール(1:1)中の混合物を還流下で20時間加熱する。冷却後、有機相を分離除去し、水相をMTBEで抽出する。合わされた有機相を水洗する。硫酸ナトリウムを使用して溶液を乾燥し、乾固するまで濃縮する。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:トルエン=7:3)によって精製する。エタノールおよびn−ヘプタンからの再結晶により更なる精製を行い、2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−プロピルテトラヒドロピランを無色の固体(融点95℃)として与える。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

例1からの化合物は、比較例3よりも高い外挿透明点と、より好ましいΔεおよびΔnの組み合わせを有する。更に、例1からの化合物は、ネマチックLC媒体において、より高い溶解性を有する。
【0114】
化合物「AGUQU−3−T」の有利な特性は、ΔεΔn量において逆の傾向が観察されるため、互いに文献より既知の比較例2および比較例3の化合物の比較からは明らかではなかった。
【0115】
【表5】

【0116】
<例2>:2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−エチルテトラヒドロピラン
【0117】
【化31】

本発明による化合物を下記の通り調製する。
【0118】
2.1 4−ブロモ−2−(4−ブロモ−3−フルオロフェニル)−5−エチルテトラヒドロピランの合成
【0119】
【化32】

最初に、72.9g(0.16mol)の臭化ビスマス(III)を50mlのトルエンに−10℃において導入し、250mlのトルエン中の50.0g(0.25mol)の4−ブロモ−3−フルオロベンズアルデヒドの溶液を滴下で加える。この温度において、50mlのトルエン中の27.0g(0.27mol)の2−エチルブタ−3−エン−1−オールの溶液を量り入れ、混合物を10℃において2時間撹拌する。希塩酸バッチに加え、有機相を分離除去する。水相をトルエンで抽出し、合わされた有機相を、水、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液によって順次洗浄する。硫酸ナトリウムを使用して溶液を乾燥し、乾固するまで濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:トルエン=2:1)によって精製し、4−ブロモ−2−(4−ブロモ−3−フルオロフェニル)−5−エチルテトラヒドロピランを無色の油分として得る。
【0120】
2.2 4−ブロモ−5−エチル−2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロピランの合成
【0121】
【化33】

75.0g(0.20mol)の4−ブロモ−2−(4−ブロモ−3−フルオロフェニル)−5−エチルテトラヒドロピランを105℃において18時間400mlのトルエン中で、60.0g(0.24mol)のビス(ピナコラト)ジボロン、50.0g(0.51mol)の酢酸カリウムおよび1.5g(2.04mmol)の塩化[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]パラジウム(II)と共に加熱する。冷却後、混合物を水洗し、有機相を分離除去する。水相をトルエンで抽出し、合わされた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。硫酸ナトリウムを使用して溶液を乾燥し、乾固するまで濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:トルエン=1:1)によって精製し、4−ブロモ−5−エチル−2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロピランを帯黄色の油分として得る。
【0122】
2.3 5−エチル−2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロピランの合成
【0123】
【化34】

18.0g(36.2mmol)の4−ブロモ−5−エチル−2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロピランを、30時間、5barの水素圧、80℃で、トルエン/水中において、Pd/C(5%のPd)および12.7ml(88.1mmol)のトリエチルアミン存在下で水素化する。有機相を分離除去し、吸引濾過する(SiO、トルエン)。濾液を乾固するまで濃縮して、残渣をエタノールより低温において再結晶し、5−エチル−2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロピランを無色の固体として得る。
【0124】
2.4 2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−エチルテトラヒドロピランの合成
【0125】
【化35】

最初に、5.20g(15.0mmol)の5−エチル−2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロピランを、35mlのTHFに、6.93g(15.0mmol)の5−((4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)ジフルオロメトキシ)−1,3−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼンと共に導入する。590mg(0.75mmol)の塩化ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)および0.1ml(0.75mmol)のトリエチルアミンを加える。混合物を50℃まで加熱し、15mlの水中の2.41g(24.0mmol)の炭酸水素カリウムの溶液を加える。この温度において3時間後、水およびMTBEを加え、有機相を分離除去する。水相をMTBEで洗浄して、合わされた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶液を乾固するまで濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:トルエン=1:1)によって精製する。エタノールおよびn−ヘプタンからの再結晶によって更なる精製を行い、2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−エチルテトラヒドロピランを、90℃の融点を有する無色の固体として得る。
【0126】
【表6】

【0127】
【表7】

【0128】
【表8】

【0129】
【表9】

例2からの化合物は高い外挿透明点、およびΔεおよびΔnの好ましい組み合わせを有する。該化合物は、ネマチック媒体において容易に溶解できる。比較例4および5は、これを示さない。
【0130】
【表10】

【0131】
<例3>:2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−ペンチルテトラヒドロピラン
【0132】
【化36】

本発明による化合物を、例2に類似して調製する。
【0133】
2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−ペンチルテトラヒドロピランを、75℃の融点を有する無色の固体として得る。
【0134】
【表11】

【0135】
【表12】

【0136】
【表13】

【0137】
【表14】

例3からの化合物は高い外挿透明点、およびΔεおよびΔnの好ましい組み合わせを有する。該化合物は比較的広いネマチック相を有し、ネマチック媒体において容易に溶解できる。
【0138】
<例4>:5−ブチル−2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}テトラヒドロピラン
【0139】
【化37】

5−ブチル−2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロピランの5−((4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)ジフルオロメトキシ)−1,3−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼンへの鈴木カップリングにより、例2に類似して本発明による化合物を調製する。5−ブチル−2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}テトラヒドロピランを、88℃の融点を有する無色の固体として得る。合成が成功していることが、NMR分光法(H、19F、13C)および質量分析(EI)により完全に確認される。
【0140】
【表15】

例4からの化合物は高い外挿透明点、およびΔεおよびΔnの好ましい組み合わせを有する。該化合物はネマチック相を有し、ネマチック媒体において容易に溶解できる。
【0141】
<例5>:2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−ヘプチルテトラヒドロピラン
【0142】
【化38】

2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−5−ヘプチルテトラヒドロピランの5−((4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)ジフルオロメトキシ)−1,3−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼンへの鈴木カップリングにより、例2に類似して本発明による化合物を調製する。
【0143】
2−{4’−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−2,3’,5’−トリフルオロビフェニル−4−イル}−5−ヘプチルテトラヒドロピランを、68℃の融点を有する無色の固体として得る。合成が成功していることを、NMR分光法(H、19F、13C)および質量分析(EI)により完全に確認する。
【0144】
【表16】

例5からの化合物は高い外挿透明点、およびΔεおよびΔnの好ましい組み合わせを有する。該化合物はネマチック相を有し、ネマチック媒体において容易に溶解できる。
【0145】
<例6>:4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−4’−(4−エチルシクロヘキシル)−3,5,2’−トリフルオロビフェニル
【0146】
【化39】

本発明による化合物4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−4’−(4−エチルシクロヘキシル)−3,5,2’−トリフルオロビフェニルを下記の通り調製する。
【0147】
【化40】

0.11ml(2.33mmol)の抱水ヒドラジンを、9.70g(22.1mmol)の5−((4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)ジフルオロメトキシ)−1,3−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン、12ml(18mmol)の1.5Nメタホウ酸ナトリウム水溶液および0.62g(0.88mmol)の塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)の150mlのTHF中の混合物に室温において加える。6.1g(24.3mmol)の4−(4−エチルシクロヘキシル)−2−フルオロベンゼンボロン酸を加え、混合物を沸騰で18時間加熱する。冷却後、水を加え、バッチをMTBEで抽出する。水相をMTBEで抽出し、合わされた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。硫酸ナトリウムを使用して溶液を乾燥し、乾固するまで濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:1−クロロブタン=9:1)によって精製する。エタノールおよびn−ヘプタンからの再結晶によって更なる精製を行い、4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−4’−(4−エチルシクロヘキシル)−3,5,2’−トリフルオロビフェニルを、77℃の融点を有する無色の固体として与える。
【0148】
【表17】

【0149】
【表18】

【0150】
【表19】

【0151】
【表20】

例6からの化合物は、本発明による媒体において使用するために、文献より既知の比較例6よりも著しくより良好な特性を有する。例6は、より広いネマチック相を有し、より好ましいΔε・Δnの値を有する。
【0152】
<例7>:4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−4’−(4−プロピルシクロヘキシル)−3,5,2’−トリフルオロビフェニル
【0153】
【化41】

出発材料として4−(4−プロピルシクロヘキシル)−2−フルオロベンゼンボロン酸を使用し、例6に類似して本発明による化合物を調製する。
【0154】
4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−4’−(4−プロピルシクロヘキシル)−3,5,2’−トリフルオロビフェニルを、86℃の融点を有する無色の固体として得る。
【0155】
【表21】

【0156】
【表22】

【0157】
【表23】

【0158】
【表24】

例7からの化合物は、比較例よりも、より広いネマチック相、より高い透明点、ΔεおよびΔnのより好ましい組み合わせを有する。
【0159】
<例8>:4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−4’−(4−ペンチルシクロヘキシル)−3,5,2’−トリフルオロビフェニル
【0160】
【化42】

出発材料として4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2−フルオロベンゼンボロン酸を使用し、例5に類似して本発明による化合物を調製する。
【0161】
4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−4’−(4−ペンチルシクロヘキシル)−3,5,2’−トリフルオロビフェニルを、74℃の融点を有する無色の固体として得る。
【0162】
【表25】

【0163】
【表26】

【0164】
【表27】

【0165】
【表28】

例8からの化合物は高い透明点、およびΔεおよびΔnの好ましい組み合わせを有する。該化合物は広いネマチック相を有し、ネマチック媒体において容易に溶解できる。
【0166】
<例9>:4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−3,5,2’−トリフルオロ−4”−プロピル−[1,1’;4’,1”]ターフェニル
【0167】
【化43】

本発明による化合物4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−3,5,2’−トリフルオロ−4”−プロピル−[1,1’;4’,1”]ターフェニルを下記の通り調製する。
【0168】
【化44】

0.11ml(2.33mmol)の抱水ヒドラジンを、10.3g(23.4mmol)の5−((4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)ジフルオロメトキシ)−1,3−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン、12ml(18mmol)の1.5Nメタホウ酸ナトリウム水溶液および0.62g(0.88mmol)の塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)の150mlのTHF中の混合物に室温において加える。6.0g(23.2mmol)の3−フルオロ−4’−プロピルビフェン−4−イルボロン酸を加え、混合物を沸騰で19時間加熱する。冷却後、水を加え、バッチをMTBEで抽出する。水相をMTBEで抽出し、合わされた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。硫酸ナトリウムを使用して溶液を乾燥し、乾固するまで濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:1−クロロブタン=9:1)によって精製する。エタノールおよびn−ヘプタンからの再結晶によって更なる精製を行い、4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−3,5,2’−トリフルオロ−4”−プロピル−[1,1’;4’,1”]ターフェニルを、128℃の融点を有する無色の固体として与える。
【0169】
【表29】

【0170】
【表30】

【0171】
【表31】

【0172】
【表32】

例9からの化合物は高い透明点、およびΔεおよびΔnの良好な組み合わせを有する。例9からの化合物は、特に高いΔnによって際立っている。
【0173】
<例10>:4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−3,5,2’−トリフルオロ−4”−ペンチル−[1,1’;4’,1”]ターフェニル
【0174】
【化45】

出発材料として3−フルオロ−4’−ペンチルビフェン−4−イルボロン酸を使用し、例9に類似して本発明による化合物を調製する。
【0175】
4−[(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフルオロメチル]−3,5,2’−トリフルオロ−4”−ペンチル−[1,1’;4’,1”]ターフェニルを、96℃の融点を有する無色の固体として得る。
【0176】
【表33】

【0177】
【表34】

【0178】
【表35】

【0179】
【表36】

例10からの化合物は高い透明点、およびΔεおよびΔnの良好な組み合わせを有する。該化合物はネマチック相を有し、ネマチック媒体において容易に溶解できる。
【0180】
<混合物例>
液晶ベース混合物(ホスト)の成分を記載するために、以下の頭字語を使用する。添え字nは1〜9の値を採用する。以下の化合物は、本発明による液晶媒体の調製に適切である。
【0181】
【表37】

【0182】
【表38】

好ましくは、以下のモノマーを使用する。
【0183】
【表39】

RM220は、相シーケンスC82.5N97Iを有する。
【0184】
RM257は、相シーケンスC66N127Iを有する。
【0185】
好ましくは、以下の添加剤を使用する(DP:キラルドーパント、IN:重合開始剤)。
【0186】
【表40】

LC混合物のための更なるキラルドーパントおよび重合開始剤は当業者に既知であり、本明細書において明示的に述べられている。
【0187】
記載通り、重合前に媒体の特性を解析する。次いで、ブルー相において、照射して(180秒)RM成分を重合する。得られた媒体の特性を再び解析する。
【0188】
<重合に関する記載>
サンプルを重合する前に、約10ミクロンの厚みおよび2×2.5cmの面積を有するテストセルにおいて媒体の相特性を決定する。毛細管現象によって75℃の温度で充填を行う。加熱ステージを備える偏光顕微鏡下で1℃/分の温度連鎖において、未重合の媒体を測定する。約1.5mW/cmの有効出力を有するUVランプ(Honle社、Bluepoint 2.1、365nm干渉フィルター)を使用して、180秒間の照射によって媒体の重合を行う。重合は、電気光学的テストセル内において直接行う。最初に、媒体がブルー相I(BP−I)内にある温度において重合を行う。複数の段階的工程において重合を行い、これにより徐々に重合が完了する結果となる。一般に、重合中に、ブルー相の温度範囲が変化する。従って、それぞれの段階的工程間において、媒体が引き続きブルー相内にあるように温度を適合させる。実際には、このことは、それぞれ約5秒以上の照射操作後に偏光顕微鏡下においてサンプルを観察することによって行うことができる。サンプルがより暗くなる場合、このことは、等方相への転移を意味する。それに応じて、次の段階的工程のための温度を下げる。示される照射強度において最大の安定化の結果となる全照射時間は、典型的には180秒である。さらには、最適化された照射/温度プログラムに従って、重合を行うことができる。あるいは、特に、重合前に既に広いブルー相が存在している場合、1回の照射工程において重合を行うこともできる。
【0189】
<電気光学的特性の解析>
上記のブルー相の重合および安定化後、ブルー相の相幅を決定する。引き続き、この範囲内、および、また所望により範囲外の種々の温度において、電気光学的特性の解析を行う。
【0190】
使用されるテストセルには、片側においてセル表面上に交差指電極が取り付けられている。セル間隙、電極間距離および電極幅は、典型的には、それぞれ1〜10ミクロンである。下では、この均一な寸法を「間隙幅」で呼称する。電極で覆われている面積は約0.4cmである。テストセルは配向層を有していない。電気光学的特性を解析するために、直交偏光フィルターの間にセルを配置する。ここで、電極の長軸は、偏光フィルターの軸に対して45°の角度をとる。セル面に対して直角に、または、偏光顕微鏡上の高感度カメラを用い、DMS301(Autronic−Melchers社)を使用して測定を行う。電圧を印加していない状態において、既述の配置は本質的に暗画像を与える(0%透過と定義)。
【0191】
テストセルにおいて最初に特性動作電圧、次いで応答時間を測定する。下記の通り、セル電極における動作電圧は、交流正弦(周波数100Hz)および可変振幅の矩形電圧の形式で印加される。
【0192】
電圧を印加していない状態における透過率を0%と定義する。動作電圧を増加しながら、透過率を測定する。約100%強度の最大値に到達をもって、動作電圧の特性量V100と定義する。同様に、最大透過率の10%において、特性電圧V10を定義する。これらの値は、任意にブルー相の領域における種々の温度、どんな場合でも室温(20℃)において測定される。
【0193】
ブルー相の温度範囲の下限域において、比較的高い特性動作電圧V100が観測される。温度範囲の上限域(透明点に近い)においては、V100の値が著しく増加する。最小動作電圧の領域においては、温度と共に、V100が一般に唯一徐々に増加する。この温度範囲はTおよびTによって限定され、安定な平坦温度範囲(flat temperature range:FR)として既知である。この「平坦範囲(FR)」の幅は(T−T)であり、平坦範囲幅(width of the flat range:WFR)として既知である。TおよびTの正確な値は、V100/温度図において、平坦曲線部分FRと、隣接する急峻曲線部分とにおける接線の交点によって決定される。測定の第2段階において、スイッチのオンおよびオフの際の応答時間(τon、τoff)を決定する。応答時間τonは、選択された温度においてV100のレベルにおける電圧を印加後に90%強度を達成するのにかかる時間によって定義される。応答時間τoffは、電圧を0Vに低下後にV100における最大強度より出発して90%減少するのにかかる時間によって定義される。また、ブルー相の領域における種々の温度においても、応答時間を決定する。
【0194】
更なる特性解析として、FR内の温度において、0VおよびV100の間で動作電圧を連続的に変化させて透過率を測定できる。動作電圧の増加および減少に対する曲線を比較すると、ヒステリシスが生じることがある。例えば、0.5V100における透過率の相違および50%透過における電圧の相違は特性ヒステリシス値であり、それぞれ、ΔT50およびΔV50として既知である。更なる特性量として、スイッチングサイクルを経る前および後において電圧を印加していない状態での透過率の比を測定できる。この透過率比は「メモリー効果」として既知である。理想的な状態におけるメモリー効果の値は1.0である。1より高い値は、セルをスイッチオンおよびオフした後に過剰な残存透過の形式で、ある程度のメモリー効果が存在することを意味する。また、この値は、ブルー相の動作範囲(FR)内でも決定される。
【0195】
他に示さない限り、測定値は20℃において決定される。
【0196】
【表41】

【0197】
【表42】


典型的なポリマー安定化混合物は、下表に示す通りの組成を有する。
【0198】
【表43】

約30〜50℃の温度でブルー相の下限域(詳細は上を参照)において、1回の照射工程で重合性混合物を重合する。ポリマー安定化液晶媒体は、広い温度領域にわたってブルー相を示す。
【0199】
また、更なる実施形態の組み合わせおよび本明細書に従う発明の変法が、以下の請求項より生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中、
は、1,4−フェニレン(該基は、互いに独立に、ハロゲン、CN、CH、CHF、CHF、OCH、OCHFまたはOCFにより任意に四置換までされていてもよく、ただし、1〜2個のCH基は、任意にNにより置換されていてもよい。)、シクロヘキサン−1,4−ジイルまたはシクロヘキセン−1,4−ジイル(該基のそれぞれにおいて、1〜2個のCH基は、任意に互いに独立に、OまたはSにより置換されていてもよく、および/または、HはFにより置換されていてもよい。)、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、2,5−チオフェンジイルまたは2,5−セレノフェンジイルを表し、
は、単結合、CFO、CHCH、CFCH、CFCF、CFHCFH、CFHCH、(CO)O、CHO、C≡C、CH=CH、CF=CH、CF=CFを表し、ただし、非対称な結合単位は両方の可能な方向のどちらを向いていてもよく、および
は、1〜15個のC原子を有する無置換のアルキル基(ただし加えて、この基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CO)−または−O−により置き換えられていてもよい。)、H、F、Cl、Br、CN、CF、OCF、SCN、NCSまたはSFを表す。)
【請求項2】
が単結合を表すことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、
【化2】

を表すことを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が、1〜15個のC原子を有するアルキル基(ただし加えて、この基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CO)−または−O−により置き換えられていてもよい。)を表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
が、1〜12個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が、3個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の式Iの化合物を調製する方法であって、
適切な遷移金属触媒の存在下において、式AおよびBの2種類の出発物質を反応させる反応工程を含む方法。
【化3】

(式中、R、AおよびZは、式Iで定義される通りであり、および
またはXが、−B(OH)、ボロン酸エステルまたはボロン酸塩を表し、そして他の基が、Cl、Br、Iまたは−O(SO)CFを表す。)
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の式Iの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体。
【請求項9】
式IIおよびIIIの化合物より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項8に記載の液晶媒体。
【化4】

(式中、
は、互いに独立に、1〜15個のC原子を有する無置換のアルキル基を表し、ただし加えて、この基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CO)−または−O−により置き換えられていてもよく、
、Aは、互いに独立に、
【化5】

を表し、
、Zは、互いに独立に、単結合、CFO、CHCH、CFCH、CFCF、CFHCFH、CFHCH、(CO)O、CHO、C≡C、CH=CH、CF=CH、CF=CFを表し、ただし、非対称な結合単位は両方の可能な方向のどちらを向いていてもよく、
は、F、Cl、CN、または、1〜3個のC原子を有しFにより一置換または多置換されているアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはアルコキシを表し、および
〜Lは、HまたはFを表す。)
【請求項10】
液晶媒体における、または電気光学的ディスプレイにおける請求項1〜6のいずれか一項に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項11】
請求項8または9に記載の液晶媒体を含有する電気光学的ディスプレイ装置。
【請求項12】
液晶ブルー相の領域において完全または部分的に動作することを特徴とする請求項11に記載の電気光学的ディスプレイ装置。

【公開番号】特開2011−195587(P2011−195587A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63213(P2011−63213)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】