説明

液晶素子

【課題】 螺旋構造、捩れ配向、透過率低下を改善した量産可能なセル厚を有し、表面安定化配向状態を用いない液晶素子及び当該液晶素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 一対の電極層を有する基板間に、光学活性化合物を含有する液晶組成物及び高分子前駆体から成る透明性固体物質により構成される液晶層を有し、該液晶層において該液晶組成物が光学的に一軸配向しており、螺旋ピッチ(該液晶組成物の電圧無印加状態において発現する螺旋構造のピッチ(μm))とセル厚(該液晶層の厚さ(μm))が以下の関係を満たすことを特徴とする液晶素子及び当該液晶素子の製造方法を提供する。
螺旋ピッチ≦セル厚

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界強度に依存して消光位を連続的に変化させることができる液晶素子及び液晶素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラークおよびラガウォールにより提案された強誘電性液晶材によれば、分子の長軸に対し永久双極子モーメントを分子の垂直方向に有することで自発分極を発現させ、自発分極の向きと逆極性電界により光スイッチングさせることができ、双安定性を有し、且つ電界の変化に対する応答が高速であることが記載されている(特許文献1参照)。この強誘電性液晶材を用いた液晶表示装置(ディスプレイ)は、単純マトリックス方式の駆動により大画面で高精細な液晶表示素子としての応用が期待されている。しかしながら、スイッチングに利用する強誘電性液晶のスメクチックC*相は、液晶分子の配向が螺旋状態を示しディスプレイに応用する場合には螺旋を解く必要がある。
一般に、強誘電性液晶であるスメクチック液晶は層構造であることが知られ、スメクチックC*相に於いてはキラル化合物の性質で極小的には層内の液晶ダイレクターの向く方向が隣接する層内の液晶ダイレクターの向く方向とはずれ巨視的に層の法線方向へ螺旋軸を描く。隣接する層間のダイレクターのずれが一周する距離を螺旋ピッチと定義される。この螺旋構造が存在すると偏光の直交ニコル下で螺旋軸と直交するように螺旋ピッチに由来する縞模様が現れて無電界状態では光散乱や回折により光を遮断できなくなりノーマルブラックモードのディスプレイへの応用を困難にしていた。
【0003】
螺旋を解く目的で螺旋ピッチより小さいセル厚の液晶セルに注入すると螺旋が解け層構造の法線方向に対して液晶分子が左右に傾斜(傾斜角度をチルト角と言う。)して二軸性の配向が得られる。これは、薄厚のセルにすることで螺旋が解け液晶分子はセル基板界面からの強い相互作用を受けて二軸配向状態を示す。これを表面安定化配向状態(SSFLCD)と呼び双安定性(メモリー性)による光学素子やディスプレイに応用される。しかし、螺旋ピッチは、温度で変化し降温で螺旋ピッチが小さくなる傾向があるため広い温度範囲(スメクチックC*相を示す温度範囲)で二軸性の配向を得るのに、少なくとも、セル厚≦螺旋ピッチの関係を動作温度条件の範囲で満たす必要があり、2μm以下の薄厚の液晶セルが用いられている。2μm以下の薄厚にすると、強誘電性液晶は液晶セル基板表面の配向安定化(表面安定化)の作用により配向のメモリー性(双安定性)が発現してメモリー性を有する黒と白の二値表示のディスプレイが得られるが、フルカラーディスプレイへの応用に於いては、印加電圧に比例した連続階調表示が必須で、前記双安定性の二値表示のディスプレイでは印加電圧に比例した階調表示が不可能になりフルカラー表示のディスプレイへの応用を難しくしている。
更に、現在実用化されている強誘電性液晶を用いたディスプレイは、配向膜にSiO2の斜方蒸着膜を用いることにより配向欠陥を無くしてコントラストを高くして、セル厚2μm以下で、且つ2インチ以下の超小型LCDである。しかし、LCDのサイズを大きくするとSiO2の斜方蒸着膜を均一に蒸着させることは難しくなり、セル厚が2μ以下では歩留まりが悪化して、その大型化は制限されていた。
【0004】
階調表示の課題を解消するために、FLC材料と共にメソゲン基を有するモノマーを使用し、紫外線を照射することによりモノマーを重合させ高分子安定化を図り、これにより双安定性を消失させて中間階調表示を可能にする技術が提案されている(非特許文献1及び2参照)。
又、これらは、強誘電性液晶と単官能液晶性アクリレートモノマーを含有する液晶組成物を液晶セル中で、該組成物がスメクチックA相やスメクチックC*相等の所定の液晶相を示す温度において紫外線を照射して、単官能液晶性アクリレートモノマーを高分子化させることにより得られる高分子安定化強誘電性液晶表示素子が開示されている(特許文献2、3、4及び5参照)。更に、強誘電性液晶材と単官能液晶性アクリレートモノマーを含有する強誘電性液晶組成物の強誘電性を示す温度で紫外線を照射する場合は、該組成物を液晶セル中で、該液晶組成物が強誘電性を示す温度において直流電圧を印加しながら紫外線を照射する方法が開示されている(特許文献4参照)。
【0005】
上述の方法で作製された高分子安定化強誘電性液晶性液晶素子は、紫外線照射の際に印加していた直流電圧に対し異極性の直流電圧を印加すると、配向膜の容易軸に対し直流電圧の絶対値に比例して、高分子安定化された傾き角の方向とは反対方向に強誘電性液晶材の配向方向が傾く。この場合でも双安定性は消失しているので、印加電圧を除去すれば、強誘電性液晶材は再び配向膜の容易軸に対して高分子安定化された傾き角を有する位置に配列する。このように紫外線照射時の印加直流電圧に対し異極性の電圧印加時における配向方向の変化を利用することで中間調表示が可能となる。しかし、印加電圧の極性に対して傾き角が配向膜の容易軸に対して対称にはならないため光学素子を直流電圧で駆動させるため焼付け等の素子の信頼性低下を招いていた。
【0006】
この解決のために、一対の基板間に単官能液晶性アクリレートモノマーを含有した強誘電性液晶組成物を挟み、強誘電性液晶層に対し電圧印加しながらカイラルスメクチックC相を示す状態で、周波数2kHz〜4kHzの交流電界を印加するとともに、紫外線もしくは電子線を照射することで上記液晶性アクリレートモノマーを高分子化させる手段を用いて、配向膜の容易軸に対して印加電圧の極性に関わらず対象な傾き角を有し、一軸配向及びV字型の透過率−電圧特性を有する高分子安定化強誘電性液晶性液晶素子が開示されている(特許文献6参照)。当該液晶素子は、素子の駆動を交流電圧で駆動できる点で有用であるが、液晶性単官能アクリレートを用いているため熱や外部からの力による変形等で配向が乱れ易く信頼性の低いものであった。
【0007】
上述の何れの階調表示実現を目的として提案された技術は、強誘電性を示すスメクチックC*相に於いて高分子安定化により一軸配向が得られるように液晶分子の配向を安定化させるものであって、印加電圧に依存して液晶分子のチルト角が連続的に変化することで中間階調表示を可能にするものである。中間階調を得るためには表面安定化強誘電性液晶の双安定性(メモリー性)を消失させて課題を解決しているが、高分子安定化強誘電性液晶作製する際には、少なくとも一対の基板間(セル厚)が2μm以下の薄厚の液晶セルを用いて、双安定性の状態の二軸配向状態に電圧を印加しながら含有している高分子前駆体を重合させて目的の一軸配向を高分子安定化させる必要があるため、セル厚3μm以上の光学素子の量産化を難しくしていた。更に、セル厚を1.5μm程度のセル厚にして基板界面との相互作用で螺旋を解くため電圧−透過率特性に於いて基板界面の影響を大きく受けて液晶分子が電界に対して動き難くなりチルト角の低下を引き起こし、透過率の低下、駆動電圧の増加等の問題を起こしていた。
【0008】
セル厚を増し、セル厚2μmより2〜3ミクロン厚くした範囲では、螺旋構造を示す縞模様は見られないが、基板の表面エネルギーと液晶の弾性エネルギーの作用に依存して液晶ダイレクターが捩れるような力が発生し、セルの厚さ方向で、強誘電性液晶分子のダイレクターがラビング配向方向から僅かにズレて捩れた状態の配向を示す。二軸配向状態に捩れ配向が加わり、偏光のクロスニコル下で偏光軸を回転させても一軸配向や二軸配向で見られるような暗視野に複屈折色が加わるようになり、この光漏れがディスプレイでは完全な黒が得られなくなる原因の一つでコントラスト低下を引き起こしていた。(非特許文献3、4参照)更に、セル厚を増していくと螺旋構造を発現する。(非特許文献5参照)このセル厚を臨界セル厚とすると、臨界セル厚以上で無電界では螺旋ピッチに対応した干渉色や螺旋構造に起因した光散乱が起こりノーマルブラックのディスプレイが得られなくなる。
【0009】
以上より、強誘電性液晶表示素子において製造効率に有利なセル厚を有するものは知られておらず、表面安定化を使用せずTFT駆動が可能で高コントラスト、高速応答、高透過率、且つ電界強度に比例して連続的に透過率を制御できる強誘電性液晶表示素子の開発が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特開昭56−107216号公報
【特許文献2】特開平9−211462号公報
【特許文献3】特開平9−211463号公報
【特許文献4】特開平11−21554号公報
【特許文献5】特開平11−326909号公報
【特許文献6】特開2002−31821号公報
【非特許文献1】古江(H.Furue),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.),36,L1517(1997)
【非特許文献2】古江(H.Furue),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.),37,3417(1998)
【非特許文献3】大内(Y.Ouchi),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.),26,1(1987)
【非特許文献4】新宮(T.Shingu),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.),25,L206(1986)
【非特許文献5】ペイベル(J.Pavel),ジャーナル・オブ・フィジックス(J.Phys.),45,137(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、螺旋構造、捩れ配向、透過率低下を改善した量産可能なセル厚を有し、表面安定化配向状態を用いない液晶素子及び当該液晶素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本願発明者らは液晶素子の構成について検討を行った結果、螺旋構造のピッチとセル厚を特定の関係に最適化した構成を有する高分子安定化液晶素子を見出し本願発明の完成に至った。本発明は上記課題を解決するために、一対の電極層を有する基板間に、光学活性化合物を含有する液晶組成物及び高分子前駆体から成る透明性固体物質により構成される液晶層を有し、該液晶層において該液晶組成物が光学的に一軸配向しており、螺旋ピッチ(該液晶組成物の電圧無印加状態において発現する螺旋構造のピッチ(μm))とセル厚(該液晶層の厚さ(μm))が以下の関係を満たすことを特徴とする液晶素子を提供する。
螺旋ピッチ≦セル厚
更に、本願発明は、一対の電極層を有する基板間に、光学活性化合物を含有する液晶組成物及び透明性固体物質を形成する高分子前駆体を挟持し液晶層を形成し、該液晶組成物の螺旋ピッチ(該液晶組成物の電圧無印加状態において発現する螺旋構造のピッチ(μm))とセル厚(該液晶層の厚さ(μm))が以下の関係を満たし、
螺旋ピッチ≦セル厚
該液晶組成物の発現する螺旋構造を外部電界、又は温度により螺旋を解き、該高分子前駆体を硬化(架橋)させることにより高分子安定化させることにより無電界状態に於いて一軸性の配向状態を示し、これに電界を印加することにより電界強度に依存して消光位が連続的に変化する液晶素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶素子によって、3μm以上のセル厚で一軸配向が得られ、V字型電圧-透過率特性に基づく中間階調表示が可能な数百マイクロミリ秒の高速応答を有する液晶ディスプレイが実現できる。当該素子及び本願発明の製造方法は従来の強誘電性液晶表示素子に比べてセル厚が厚いことから量産性に優れる。更に、本願発明の液晶素子は高分子安定化技術を適用していることから従来の強誘電性液晶表示素子と比較して耐衝撃性に優れる特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<螺旋を解いた配向状態を高分子安定化させる方法>
上記課題を解決するために、本発明に用いる液晶組成物は、スメクチックC相を示す液晶組成物にキラル化合物を添加することによりスメクチックC*相を発現させ、強誘電性による自発分極を示す液晶組成物に少量の少なくとも一種類以上の重合液晶性化合物を添加した重合性強誘電性液晶組成物である。重合性化合物は、液晶中に含まれるラジカル重合性化合物が熱、又は紫外線等の活性エネルギー線により重合し、それに伴い液晶組成物と相分離、又は液晶組成物中に分散した状態を引き起こして透明性高分子物質と液晶組成物からなる高分子安定化液晶表示素子を得るのに使用される。
【0015】
この素子は、一対の電極層を有する基板間に配向制御膜と液晶層とを有する液晶素子において、液晶層は少なくとも液晶性高分子前駆体を一種類以上含有し、非液晶性高分子前駆体を含有することもできる光硬化性組成物の光硬化物及び強誘電性液晶材料から成り、且つ一対の電極層間に電圧を印加していない状態における液晶性高分子前駆体のメソゲン基の配向方向と、強誘電性液晶材料の配向方向が配向制御膜の配向方向に揃い一軸配向になるように電界で螺旋を解いた状態を高分子安定化させて、その配向を固定化させた液晶表示素子であって、液晶層中に液晶性高分子前駆体と非液晶性高分子前駆体を含有することも出来る硬化性物質を含む液晶組成物で、硬化物が重合相分離で微細な粒子状、又は微細な網目状に分散したもので、硬化物の一部に液晶性骨格を有する高分子鎖であって、該高分子鎖と強誘電性液晶分子との相互作用により一軸配向が得られるように強誘電性液晶分子が配向安定化され、電圧を印加していない状態では、一軸配向を示し偏光軸に合わせることにより消光位が得られる。電圧を印加すると強誘電性液晶の持つ双極子が電界方向へ再配向して液晶分子の配向方向が一軸配向から傾斜してその傾斜角の連続的な変化により透過率を変化させ連続的な階調表示が可能なV字型電圧−透過率特性を示す。この特性により、フルカラー表示が可能なディスプレイへ応用することができる。
【0016】
セル厚3μm以上で一軸配向による消光位を得るためには螺旋を解く点、及び捩れ配向の課題を解決する必要がある。本発明では、螺旋が解けた液晶の配向状態を紫外線等を当てて組成物中に含有している高分子前駆体(液晶性アクリレート)を重合させることにより高分子安定化させ、螺旋の解けた配向状態を無電界状態でも維持させる手段を適応する。螺旋を解く手段は、
1.直流電界を印加して液晶分子が持つダイポール(双極子)を電界方向へ揃える方法
2.液晶組成や温度を上げて螺旋ピッチをセル厚以上の大きさにする方法
3.一軸配向が得られるように螺旋が解ける交流電圧を印加しながら高分子前駆体を重合させる方法
が挙げられる。
【0017】
1の電界を印加する手段は、螺旋を巻く力に打ち勝つ電界強度を印加する。使用するキラル化合物に依存するが少なくとも5V/μm以上の強い電界強度が必要になる。又、直流の極性とキラル化合物の双極子の向きに依存して液晶層法線方向から左右の何れかに傾斜した方向に液晶分子が揃い、高分子安定化させると非対称なV字型電圧−透過率特性、又は、半Vの字型電圧−透過率特性を示し交流駆動が難しくなる。2は、螺旋の右巻きを示すキラル化合物と螺旋の左巻きを示すキラル化合物をセル厚以上の螺旋ピッチになるような比率、及び添加量、キラル化合物の種類で調整する方法により螺旋を解くことが可能であるが、特に、セル厚3μmのセル厚以上で螺旋を解かせる方法として、螺旋を巻く力が弱いキラル化合物を使用か、組成物中のキラル化合物濃度を低く、例えば数%に抑える必要がある。この場合、強誘電性液晶組成物の自発分極が低くなり応答速度が遅くなったり、駆動電圧の増加などの問題を起し好ましくない。自発分極を高めるにはキラル化合物濃度を上げることになるが螺旋ピッチが小さくなり、螺旋が解ける濃度範囲が狭くなり渦かな濃度変化で螺旋構造が発現する確率が高く工業製品としては好ましくない。又、温度に依存して螺旋ピッチが変化し、用いるホスト液晶、及びキラル化合物の種類により螺旋ピッチの大きさ、及び螺旋ピッチの温度依存性が異なり、必ずしも光学素子の動作温度範囲全域で螺旋が解けるとは限らず問題があった。更に、ピッチを大きく示すキラル化合物の種類も限られるため実用的な組成物を得ることを難しくしていた。温度を上げると螺旋ピッチが増加することを利用してスメクチックA相−スメクチックC*相点移転付近の温度に加温することで螺旋ピッチを大きくする方法があるが、螺旋ピッチがセル厚以上になり螺旋が解けるが、捩れ配向状態が現れディスプレイのコントラスト低下要因になる。偏光顕微鏡で配向状態を観察すると暗の部分に捩れ配向状態による複屈折色が加わるようになることで分かる。
【0018】
3の交流電界を印加する方法は、高分子前駆体を重合させて液晶分子の配向状態を高分子安定化させる際に印加される電界により一軸性の配向が得られる点と、初期配向ではスメクチックC*相の配向構造がシェブロン構造であったのをスイッチング状態にすることで擬似ブックシェルフ構造に変化させた所で高分子安定化させて強誘電性液晶特有のジグザグ配向欠陥を大幅に減少させてさせてモノドメイン状態を高分子安定化させる点と、3μm以上のセル厚(臨界セル厚以上)に於いて現れる螺旋構造や捩れ配向を解消させた状態から一軸配向が得られるような配向状態にさせて高分子安定化させる点である。即ち、螺旋ピッチ≦セル厚の関係で螺旋構造が現れる場合は、本発明の電界を印加する手段は、螺旋を解くのに必要な電界強度で且つ素子を重合させた後に電気光学効果がV字型電圧−透過率特性を示し、且つ一軸配向が得られる周波数の交流電界を印加することが重要である。交流電界で螺旋を解くには、電界により双極子が電界方向へ揃うようとする力が発生して螺旋が次第に解けて行き螺旋ピッチが無限大になる。この解けるまでに、スメクチックC*相の弾性率、双極子モーメントや粘性の影響を受け電界が印加されてから螺旋が解くまでに約10m秒程度時間が必要になる。そのため周波数は、螺旋が解く時間より速い場合は、双極子が完全に揃う前に電界の極性が切り替わるため、交番する電界に双極子は揃わなくなり螺旋が解けなくなる。少なくとも約200Hz以下の周波数の交流電界を印加させることが好ましい。
【0019】
又、螺旋ピッチ≦セル厚の関係で捩れ配向が現れる場合は、液晶の分極反転速度と同程度以上の周波数(数kHz)を印加することでダイレクターの動きを高速に回転させることや振動させることでダイレクターの配向分布範囲を広げることで捩れ配向状態を消滅させ良好な一軸配向性が示されるような状態で高分子安定化できるのでより好ましく、高分子安定化前の初期液晶配向状態に応じて交流電界の周波数、及び電圧を調整して印加することができる。
【0020】
一方、交流を印加して一軸性配向が得られるのは以下のことが考えられる。紫外線露光前(高分子前駆体重合前)は、スメクチックC*相を示し層構造の法線方向に対して液晶分子は傾斜している。この状態に、交流電圧を印加して液晶分子を動かすと丁度、前記法線を中心線としてその周りを回転させたことで描かれる円錐状の軌跡を描く。このような液晶配向状態は、印加電圧の極性とキラル化合物の双極子モーメントの方向に依存して前期円錐の右回転、又は左回転の何れかの配向状態を通る。この回転状態に於いて交番電界を印加しながら高分子前駆体を重合させると円錐断面に描かれるV字の中心位置(前記法線方向付近)に消光位を示すような液晶配向状態が高分子安定化され一軸性の配向状態が発現する。これは、液晶分子の円錐状の回転により、回転速度に依存して重合による液晶分子の固定化がある確率で起こり、円錐状に散在するダイレクターの分布が光学的な二軸性を解消して光学的な一軸性を示すように存在するようになる。詰まり、円錐断面に描かれるV字状にダイレクターが分布する場合、円錐状に均一にダイレクターが分布する場合、が一軸性を示す配向状態として挙げられる。その結果、ノーマルブラックの液晶ディスプレイを作製することができる。液晶ディスプレイに於いて交流駆動連続階調表示が可能なV字型電圧−透過率特性が得られディスプレイに用いた場合は信頼性の向上が図られる。
【0021】
しかし、使用する高分子前駆体の種類により一軸配向の方向が前記法線方向付近が著しく外れ非対称のV字型電圧−透過率特性になる場合や、一軸配向性を乱す場合があるので対称のV字型電圧−透過率特性になるように高分子前駆体の組成を調整する必要がある。又、一軸性の配向は、高分子前駆体を重合させる際に印加する電圧と周波数に影響される。印加電圧が低く高分子安定化されると一軸配向は見られず前記円錐上の二つの配向状態に由来した二つのドメインが同時に存在して高分子安定化され均一な一軸性配向が得られなくなり、ディスプレイの黒レベルが上がりコントラストが低下して好ましくない。この状態を示す電圧より上げていくと斑な二つのドメインが一方向へ揃うようになり、この時の電圧以上でUVを露光して高分子安定化させると一様な一軸性の配向が得られるような状態を高分子安定化され、直交する二枚の偏光板の間に素子を置くと消光位が偏光板の偏光軸の位置で観察されるようになる。このような配向状態は、ディスプレイに於いてはノーマルブラックが得られ好ましい。飽和電圧の数倍の電圧を印加すると強誘電性液晶の層が強電界により動き配向が乱れ好ましくない。更に、一軸配向の配向性は、周波数にも左右される。周波数が低いと、配向性が低下する傾向が見られる。これは、スメクチックC*相の層構造に於けるシェブロン構造に由来したジグザグ配向欠陥に起因する光漏れやラビング等の配向処理方向から外れる液晶が増えて漏れる光の量が多くなることに起因している。
【0022】
更に、低周波の矩形波を印加して重合させた場合、重合過程中に右と左に傾斜した配向状態の二つのドメインが存在して二軸配向状態が高分子安定化され好ましくない。周波数を数百Hz程度から電気光学スイッチング速度程度の周波数(数kHz程度)に高くするのに伴い、シェブロン構造が擬似シェブロン構造に変化して光漏れの原因であるジグザグ欠陥が消失し、又、配向処理方向に揃う液晶が増え配向性が向上して黒レベルが下がりディスプレイに於いてはコントラストが向上するのでより好ましくなるが、周波数が高くなると双極子が交番する電界の速度に追従しなくなり螺旋構造が発現して目的の一軸配向が得られなくなる。そのため、用いる組成物の物性(粘度、弾性、双極子モーメント、自発分極)を考慮した条件(周波数、電圧)を探して電気光学素子を作製する必要がある。更に、一軸配向性は、高分子前駆体を重合する前の配向プロセス、用いる強誘電性液晶組成物の相系列、及びN*相の螺旋ピッチにも影響される。少なくとも本願に必要な強誘電性液晶の相系列は、高温側から等方相→N*相→スメクチックA相→スメクチックC*相の順の相系列が好ましく、加熱して等方相で液晶セルへ注入した後、N*相-スメクチックA相転移温度(Tna)付近のN*相側から徐冷して液晶を配向処理方向へ液晶分子を配向させる配向プロセスで配向させると配向性が高まりより好ましい。この時、N*相の螺旋ピッチがスメクチックA相へ転移する手前で解けていることが一軸配向性を高める必要条件になる。
【0023】
N*相の螺旋ピッチが解けていない場合は、スメクチックA相に配向の乱れが起こり一軸配向性の低下要因になる。徐冷は、Tnaから+3℃からTna−1℃の範囲で少なくとも2℃/分以下の速度にすることが好ましい。即ち、前記配向プロセスを経た後に、螺旋ピッチ≦セル厚の条件で螺旋構造を示す場合は、1の手段を用いて本願の液晶ディスプレイが作製される。1の手段は、螺旋を解くのに必要な周波数、及び電界強度で且つ一軸配向性が高くなる周波数を印加しながら高分子前駆体を重合させれば良く、50〜200Hz程度が好ましい。螺旋ピッチ≦セル厚の条件で捩れ配向を示す場合は、3の手段を用いて本願の液晶ディスプレイが作製される。更に、交流電圧の波形は、三角波、サイン波、矩形波、の何れでも作製することができるが、コントラストを高めるには矩形波がより好ましい。
【0024】
2の手段は、電界の極性に対して自発分極の向く方向が同一で螺旋の巻く向きが異なるキラル化合物を所望な螺旋ピッチが得られるような比率でホスト液晶組成物へ添加する。しかし、螺旋ピッチは温度で変化するため素子の全動作範囲(一例、−30℃〜80℃)で螺旋ピッチを3μm以上に維持させることは難しい。そこで、使用する液晶セルのセル厚に於いて螺旋が解ける温度にて上述した良好な一軸配向性を得られる電圧条件で高分子前駆体を重合させることが好ましい。この場合、捩れ配向を示す確率が高いため3の手段で作製することが好ましい。これにより全動作温度範囲で螺旋を解かれた状態を維持できる上記手段、1、2、3の高分子前駆体の重合は、熱、電子線、紫外線による方法を用いることができる。この内、紫外線による方法は、生産性に優れた方法で好ましい。しかし、短波長の紫外線は、液晶分子を分解させるため露光の際は紫外線のハイパスシャープカットフィルターを用いることが好ましい。特に、TFT駆動用途に用いる場合、電圧保持率の低下を抑えるために365nm以下の短波長紫外線を完全にカットすることが好ましい。紫外線の光源の種類によりシャープカットフィルターの種類を選択して最適な結果が得られるようにすることが好ましい。紫外線の露光量は、1500〜3000mJ/cmが好ましい。
【0025】
セル厚は、量産可能な3μm以上が好ましい。更に、V字型電圧−透過率特性にもセル厚に強く影響及ぼされる。セル厚が薄いと螺旋構造や捩れ配向の影響が無くなるが、その反面、基板界面との相互作用の影響がセル厚に反比例して大きくなり傾斜角(チルト角)が減少して透過率低下を引き起こしたり、駆動電圧が増加したりする。高透過率の特性を得るためには、少なくともセル厚を2μm以上にすることが好ましく、量産性を考慮すると3μmがより好ましい。更に、透過率は、リターデーション(液晶の屈折率異方性Δn、セル厚d、とすると、Δndの積)が光の波長λとするとλ/2になるよう液晶のΔnを調整することが好ましい。
【0026】
<低電圧駆動及び高コントラストを示す電気光学特性>
このようにして形成された高分子安定化液晶表示素子は、前記組成物に添加され高分子前駆体の含有量に比例して駆動電圧、及び光散乱が上昇する。該前駆体の含有量が微量である場合、駆動電圧の上昇度合いは低減されるが、熱的や機械的安定性に乏しい。信頼性を高くするためには、前駆体の含有量を増やす必要があり、この時に駆動電圧の増加や液晶配向性の低下、及び散乱性の発現が問題になる。駆動電圧の増加は、例えば高分子分散型液晶表示素子の駆動電圧に関する記述として、特開平6−222320号公報において次式の関係が示されている。高分子安定化液晶素子の駆動電圧に対する考え方は、高分子分散型液晶表示素子と同様で、次の通りになる。
【0027】
【数1】

【0028】
(Vthはしきい値電圧を表し、Kii及びKiiは弾性定数を表し、iは1、2又は3を表し、Δεは誘電率異方性を表し、<r>は透明性高分子物質界面の平均空隙間隔を表し、Aは液晶組成物に対する透明性高分子物質のアンカリングエネルギーを表し、dは透明性電極を有する基板間の距離を表す。)
【0029】
これによると、ネマチック液晶の高分子安定化液晶表示素子の駆動電圧は、透明性高分子物質界面の平均空隙間隔、基板間の距離、液晶組成物の弾性定数・誘電率異方性、及び液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーによって決定される。このうち、一般の液晶表示素子では駆動電圧はセル厚、該誘電率異方性、及び該弾性定数で決まるが、高分子安定化液晶表示素子においも高分子分散液晶と同様に透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーに駆動電圧は大きく影響を受け、液晶と高分子の複合系での特有の現象になる。但し、強誘電性液晶の場合は、上述のΔεの替わりに自発分極Psになる。そのため、高分子安定化液晶表示素子においてもポリマーと液晶との界面の面積が増加するとともに系のアンカリングエネルギーが増して駆動電圧が上がる。言い換えると、本発明の組成物中に液晶性高分子前駆体の含有量が増加すると駆動電圧が上がることを意味している。駆動電圧の上昇を低減し、低い駆動電圧を維持させるためには、高分子安定化液晶を構成する高分子のアンカリングエネルギーを低くすれば良いことになる。例えば、重合性高分子前駆体の効果は、低分子液晶の一軸配向を高分子安定化させることにある。一方、非液晶性高分子前駆体は、該非液晶性高分子が低分子液晶に対してアンカーリング力が弱いものを用いることにより重合性高分子による駆動電圧増加を低減させる役割を果たす。前記組成物に用いる重合性液晶高分子前駆体と非液晶性高分子前駆体を併用して組成を調整することで高分子安定化の信頼性を維持したまま課題である駆動電圧を下げることができる。
【0030】
非液晶性高分子前駆体の該エネルギーを低くするには、アルキル側鎖を有する二官能モノマーを用いれば良い。特に、アルキル側鎖の炭素原子数が5から15が良く、更に、該炭素原子数が8から13がより好ましい。アルキル側鎖が短い場合は、アンカリングエネルギーが高くなり、長すぎると、側鎖の影響が強くなりアンカリングエネルギーが高くなる。又、低分子液晶に類似したベンゼン環等を有するメソゲン基を側鎖にすると低分子液晶との親和性が高くなりアンカリングエネルギーが増加して好ましくない。更に、アルキル側鎖間の距離も重要で、炭素原子数の距離に換算して6〜18が良い。使用する液晶組成に依存するがアルキル側鎖間が狭いと低分子液晶が高分子界面で垂直配向してしまい好ましくない。
【0031】
アンカリングエネルギーは、側鎖が低分子液晶に及ぼす分子間相互作用と、主鎖が低分子液晶に及ぼす分子間相互作用とのバランスで決まり、両者の力が均等になるときにアンカリングエネルギーが最小になる。更に、高分子の架橋間距離は、高分子主鎖の熱運動性に影響を及ぼし、架橋間距離が短く熱運動性が低いと低分子液晶に対する分子相互作用が強く働きアンカリングエネルギーが高まる。架橋間距離が長くなると高分子主鎖の熱運動性が増して主鎖の熱による揺らぎが大きくなり分子間相互作用の力より揺らぎの力が大きくなると分子間相互作用を打ち消すように作用するためアンカリングエネルギーが小さくなる。しかし、架橋間距離が長くなると高分子前駆体の重合速度が遅くなり、液晶との相溶性が下がり好ましくなくなる。高分子主鎖の熱運動性を表す指標としては高分子ガラス転移温度が一般に用いられる。
【0032】
本発明に用いられる高分子は、アンカーリングを低くする目的で該ガラス転移温度が室温以下になる高分子前駆体を用いることが好ましく、更には、ガラス転移温度が0〜−100℃であることがより好ましい。他に、ガラス転移温度を低くする意味では、機械的安定性を向上させるためにガラス転移温度を低くすることが好ましい。ガラス転移温度が室温以上であると素子外部からの変形などにより高分子で液晶の配向を安定化させる高分子網目構造が変形したり破損したりして高分子配向安定化の作用が落ちてしまう。ガラス転移温度が低いと該網目構造が変形しても網目の弾力性で元の状態に戻り固定化された配向が保持される。即ち、本発明に使用する液晶組成と高分子前駆体の主鎖長と側鎖長を調整して、かつガラス転移温度が室温以下である高分子前駆体を使用することで駆動電圧が低く、信頼性の高い高分子安定化液晶素子が得られる。しかしながら、機械的な変形や熱変化による配向の安定性と低電圧駆動特性を示す良好な電気光学特性はトレードオフの関係にあるため必要に応じて本発明に用いる高分子前駆体の組成、及び液晶組成を調整して所望の特性が得られるようにすることが好ましい。
【0033】
高分子安定化液晶は、液晶中に分散された高分子前駆体で液晶の所望の配向を固定化したり安定化させる。そのため、相分離により形成された高分子により光散乱を避ける必要がある。そのため、重合プロセスや高分子前駆体の組成調整などで光散乱が起こらない微細な網目状高分子や微細粒子を可視光の波長以下の大きさで少なくとも400nm以下に形成させることが好ましい。
【0034】
更に、相分離方法は低分子液晶の配向を乱す恐れがある場合があり、この場合は、所望の安定化させる配向が得られるように配向秩序度の高い重合性液晶高分子前駆体を用いたり、電界、配向膜の配向規制力、磁場外場などを活用して目的の高分子安定化液晶素子が得られるように前記外場を調整して作製することもできる。更には、重合性液晶高分子前駆体と非液晶性高分子前駆体による共重合体でメソゲン基の自己組織化の性質や水素結合基等を基にした自己組織化を応用して規則性のある周期構造を形成させても良い。所望の特性を得るのに必要であればナノ微粒子状の高分子を低分子液晶中に分散させた構造であっても良い。又、液晶高分子前駆体とアンカーリング力に低い非液晶高分子前駆体で構成される高分子安定化液晶組成物を用いることで駆動電圧を低く、中間調表示が可能で、且つ高分子安定化の信頼性が高く、更に、光散乱が無い高コントラストの液晶表示素子を得ることができる。しかしながら、配向欠陥が発生すると表示コントラストが低下してしまう。
【0035】
<液晶素子>
液晶が配向膜等で配向させた状態を配向欠陥が少ない状態で高分子安定化により固定化させるためには、強誘電性液晶の場合は、少なくとも、ネマチック相から1分間に2℃程度の速度で除冷してキラルスメチックC相へ相転移させることが好ましく、用いる液晶セルの基板面が平坦であることがより好ましい。これによりキラルスメクチックC相で発生するジグザク配向欠陥の発生が改善される。上述の配向セル、及び配向プロセスを適用してスメクチック相の配向欠陥が少ない状態を作り、液晶相中で該高分子前駆体を網目状、又は分散した状態で重合させる必要がある。しかし、完全に上述の方法で配向欠陥を無くすことは難しく、数kHz程度迄の周波数の交流を印加しながら液晶分子を電界で動かしながら重合させると偏光顕微鏡で観察される液晶ダイレクターの平均配向方向に揃うようになり、結果としてジグザグ配向欠陥の無い一軸配向の素子を作製することができる。これは、スメクチック相の層構造が該交流で変化して擬似ブックシェルフ構造に変化したものと推定している。
【0036】
本発明に用いる配向は、パラレル配向やアンチパラレル配向のラビング配向処理や光配向処理を施した配向膜を有する液晶セルを用いる。液晶セルの2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。
【0037】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる調光層の厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。2から10μmが更に好ましく、偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。又、二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。更に、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
2枚の基板間に高分子安定化液晶組成物を狭持させるに方法は、通常の真空注入法、又はODF法などを用いることができる。この時、高分子安定化液晶組成物は、各種液晶化合物と本発明の高分子前駆体が相溶していれば良く、均一なアイソトロピック状態か、又はネマチック相であることが好ましい。スメクチック相では、素子作製時の取り扱い方が難しくなる。
【0038】
ラジカル重合性化合物を重合させる方法としては、紫外線照射が好適である。紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、高分子分散型液晶表示素子用組成物に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましく、350nm以下の紫外線をカットして使用することがより好ましい。
【0039】
このようにして得られた素子の駆動は、ディスプレイの場合ノーマルブラックモード動作でTFT駆動させることができる。中間階調は電圧により透過率を制御して、連続的に中間調を変化させることができる。光の三原色のカラーフィルターによる加法混色、又は光の三原色のバックライト光源を点滅させたヒールドシーケンシャル駆動方式によりフルカラー表示のディスプレイを作製することができる。特に、能動素子と液晶画素電極との間に補助容量Csが並列接続されており、液晶画素電極をCflcとした場合、Cs/Cflsが0.1以上、10以下であることが好ましい。TFT駆動では一つの画素へ書き込んだ情報を次に書き込まれるまでの時間(フレームレート)の間、保持させる必要がある。そのためには、本発明の組成物に含有されるイオン性不純物を可能な限り除去する必要があるので精製が重要である。精製方法は、含有されるイオン性不純物の種類により様々な方法で行う必要があり、必要に応じて吸着剤、高純度の有機溶媒、純水等を用いて組成物や組成物に含有される各化合物を洗浄して十分に乾燥させて使用する組成物の比抵抗を少なくとも1013Ω/cm以上にすることが好ましい。
【0040】
<高分子安定化液晶組成物の重合方法>
本発明の高分子安定化液晶表示素子用組成物を重合させる場合の重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を用いることが可能であるが、ラジカル重合により重合することが好ましい。
【0041】
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。具体的には以下の化合物が好ましい。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;
【0042】
ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;
ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル系;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;
ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;
10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が好ましい。この中でも、ベンジルジメチルケタールが最も好ましい。
【0043】
本発明に用いる高分子安定化液晶組成物に使用する化合物の具体的な一例を以下に示す。該高分子安定化液晶組成物は、非液晶性(メタ)アクリレートとして下記一般式(Ia)で表される重合性化合物(I)の少なくとも一種を含有し、液晶性(メタ)アクリレートとして下記一般式(III−a)、(III−b)及び(III−c)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性化合物(III)を含有し、強誘電性液晶として、下記一般式(II−a)又は(II−b)で表される低分子液晶化合物(II)と、一般式(IV−a)又は(IV−b)で表されるカイラル化合物(IV)とをそれぞれ少なくとも一種含有するものが好ましい。
【0044】
<重合性化合物(I)>
本発明に用いる高分子安定化液晶組成物に用いられる重合性化合物(I)は、下記一般式(I−a)
【0045】
【化1】

(式(I−a)中、Aは水素原子又はメチル基を表し、
は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、A及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から17のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
【0046】
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、kは1から40を表し、B、B及びBは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個もしくは2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い)、又は一般式(I−b)
【0047】
【化2】

【0048】
(式(I−b)中、Aは水素原子又はメチル基を表し、
は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)で表される基を表す。ただし、2k+1個あるB、B及びBのうち前記一般式(I−b)で表される基となるものの個数は0〜3個である。)で表される重合性化合物であって、該重合性化合物の重合物のガラス転移温度が−100℃から25℃である重合性化合物(I)である。
【0049】
なお、本願発明において、「アルキレン基」とは、特に断りのない場合、脂肪族直鎖炭化水素の両端の炭素原子から水素原子各1個を除いた二価の基「−(CH−」(ただしnは1以上の整数)を意味するものとし、その水素原子からハロゲン原子もしくはアルキル基への置換、又はメチレン基から酸素原子、−CO−、−COO−もしくは−OCO−への置換がある場合は、その旨を特に断るものとする。また、「アルキレン鎖長」とは、「アルキレン基」の一般式「−(CH−」におけるnをいうものとする。
一般式(I−a)で表される重合性化合物(I)の好ましい構造として、下記一般式(I−c)
【0050】
【化3】

【0051】
(式(I−c)中、A11及びA19はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、A12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
【0052】
13及びA16はそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、A14及びA17はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、A15は炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表す。)で表される化合物、一般式(I−d)
【0053】
【化4】

(式(I−d)中、A21及びA22はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、aは、6〜22の整数を表す。)で表される化合物、一般式(I−e)
【0054】
【化5】

(式(I−e)中、A31及びA32はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、b及びcはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、eは0〜6の整数を表す。)で表される化合物、及び一般式(I−f)
【0055】
【化6】

(式(I−f)中、A41及びA42はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、m、n、p及びqはそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、式(I−c)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0056】
一般式(I−c)で表される重合性化合物の好ましい構造として、A11及びA19はいずれも水素原子であることが好ましい。これらの置換基A11又はA19がメチル基である化合物においても本願発明の効果は発現するが、水素原子である化合物は重合速度がより速くなる点で有利である。
【0057】
12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基であることが好ましい。二つの重合性官能基間距離は、A12及びA18とA15とで独立的にそれぞれ炭素数の長さを変えて調整することができる。一般式(I−c)で表される化合物の特徴は、重合性官能基間の距離(架橋点間の距離)が長いことであるが、この距離があまりに長いと重合速度が極端に遅くなって相分離に悪い影響が出てくるため、重合性官能基間距離には上限がある。一方、A13及びA16の二つの側鎖間距離も主鎖の運動性に影響がある。すなわちA13及びA16の間の距離が短いと側鎖A13及びA16がお互いに干渉するようになり、運動性の低下をきたす。従って、一般式(I−c)で表される化合物において重合性官能基間距離はA12、A18、及びA15の和で決まるが、このうちA12とA18を長くするよりはA15を長くした方が好ましい。
【0058】
一方、側鎖であるA13,A14,A16,A17においては、これらの側鎖の長さが次のような態様を有することが好ましい。
一般式(I−c)において、A13とA14は主鎖の同じ炭素原子に結合しているが、これらの長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA13と呼ぶものとする(A13の長さとA14の長さが等しい場合は、いずれが一方をA13とする)。同様に、A16の長さとA17の長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA16と呼ぶものとする(A16の長さとA17の長さが等しい場合は、いずれが一方をA16とする)。
【0059】
このようなA13及びA16は、本願においてはそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)とされているが、好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数2から18の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、より好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数3から15の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0060】
側鎖は主鎖に比べて運動性が高いので、これが存在することは低温での高分子鎖の運動性向上に寄与するが、前述したように二つの側鎖間で空間的な干渉が起こる状況では逆に運動性が低下する。このような側鎖間での空間的な干渉を防ぐためには側鎖間距離を長くすること、及び、側鎖長を必要な範囲内で短くすることが有効である。
【0061】
さらにA14及びA17については、本願においてはそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)とされているが、好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から7のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
【0062】
より好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、さらに好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から3のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0063】
このA14及びA17についても、その長さが長すぎることは側鎖間の空間的な干渉を誘起するため好ましくない。この一方でA14及びA17が短い長さを持ったアルキル鎖である場合、高い運動性を持った側鎖になり得ること、及び隣接する主鎖同士の接近を阻害する働きを有することが考えられ、高分子主鎖間の干渉を防ぐ作用がり主鎖の運動性を高めているものと考えられアンカリングエネルギーが低温で増加して行くことを抑制することができ高分子安定化液晶表示素子の低温域における表示特性を改善する上で有効である。
【0064】
二つの側鎖間に位置するA15は、側鎖間距離を変える意味からも、架橋点間距離を広げてガラス転移温度を下げる意味からも、長い方が好ましい。しかしながらA15が長すぎる場合は一般式(I−c)で表される化合物の分子量が大きくなりすぎ液晶組成物との相溶性が低下してくること、及び重合速度が遅くなりすぎて相分離に悪影響が出ること等の理由から自ずとその長さには上限が設定される。
【0065】
よって、本願発明においてA15は、炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であることが好ましい。
【0066】
すなわち、本願発明においてA15のアルキレン鎖長は炭素原子数9から16であることが好ましい。A15は構造上の特徴として、アルキレン基中の水素原子が炭素原子数1から10のアルキル基で置換された構造を有する。アルキル基の置換数は1個以上5個以下であるが、1個から3個が好ましく、2個又は3個置換されていることがより好ましい。置換するアルキル基の炭素原子数は、1個から5個が好ましく、1個から3個がより好ましい。
【0067】
一般式(I−a)で表される化合物は、Tetrahedron Letters,Vol.30,pp4985、Tetrahedron Letters,Vol.23,No6,pp681−684、及び、Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,Vol.34,pp217−225等の公知の方法で合成することができる。
【0068】
例えば、一般式(I−c)において、A14及びA17が水素である化合物は、エポキシ基を複数有する化合物と、エポキシ基と反応し得る活性水素を有するアクリル酸やメタクリル酸等の重合性化合物とを反応させ、水酸基を有する重合性化合物を合成し、次に、飽和脂肪酸と反応させることにより得ることができる。
更に、複数のエポキシ基を有する化合物と飽和脂肪酸とを反応させ、水酸基を有する化合物を合成し、次に水酸基と反応し得る基を有するアクリル酸塩化物等の重合性化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0069】
またラジカル重合性化合物が、例えば、一般式(I−c)のA14及びA17がアルキル基であり、A12及びA18が炭素原子数1であるメチレン基である場合は、オキセタン基を複数有する化合物と、オキセタン基と反応し得る脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法や、オキセタン基を一つ有する化合物と、オキセタン基と反応し得る多価の脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法等により得ることができる。
【0070】
また、一般式(I−c)のA12及びA18が炭素原子数3であるアルキレン基(プロピレン基;−CHCHCH−)の場合は、オキセタン基の代わりにフラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。更に、一般式(I−c)のA12及びA18が炭素原子数4であるアルキレン基(ブチレン基;−CHCHCHCH−)の場合は、オキセタン基の代わりにピラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。
重合性化合物(I)の具体例を以下の(I-1)から(I-8)に挙げることができる。
【0071】
【化7】

<低分子液晶化合物(II)>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)は、下記一般式(II−a)又は(II−b)
【0072】
【化8】

【0073】
(式(II−a)及び(II−b)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びCはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びZはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
はフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメチル基、イソシアネート基、シアノ基を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)で表される化合物(II)である。
【0074】
一般式(II−a)又は(II−b)で表される化合物は、幅広い液晶温度範囲、低温域でのネマチック安定性及び相溶性、且つ高誘電率、高い比抵抗値の点で具体的には次に記載する一般式(V−a)、一般式(VI−a)、一般式(VI−b)、一般式(VII−a)及び一般式(VII−b)で表される化合物が好ましい。
<重合性液晶化合物(III)>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる重合性液晶化合物(III)は、下記一般式(III−a)、一般式(III−b)及び一般式(III−c)からなる群より選ばれる化合物が好ましい。
一般式(III−a)
【0075】
【化9】

【0076】
(式(III−a)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、C及びCはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
【0077】
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)、
一般式(III−b)
【0078】
【化10】

【0079】
(式(III−b)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
【0080】
及びCはそれぞれ独立してベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
【0081】
及びZそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、nは、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良く、n5及びn6はそれぞれ独立して1、2及び3を表す。)
一般式(III−c)
【0082】
【化11】

(式(III−c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、
6員環T、T及びTはそれぞれ独立的に、
【0083】
【化12】

【0084】
のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表し、nは0又は1の整数を表し、Y及びYはそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH)4−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−又は−CHCHCH=CH−を表し、
は単結合、−COO−、又は−OCO−を表し、
は炭素原子数1から18の炭化水素基を表す。)
より具体的には、一般式(III−d)及び(III−e)
【0085】
【化13】

(式(III−d)及び(III−e)中、mは、0又は1を表し、
11及びY12はそれぞれ独立して単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、Y13及びY14はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、
15及びY16はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、
【0086】
r及びsはそれぞれ独立して2〜14の整数を表す。式中に存在する1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)のいずれかで表される化合物を用いると、機械的強度や耐熱性に優れた光学異方体が得られるので好ましい。
一般式(III−a)で表される化合物の具体例を以下の(III−1)から(III−10)に挙げることができる。
【0087】
【化14】

【0088】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
また、一般式(III−d)及び(III−e)のいずれかで表される化合物の具体例を以下の(III−11)から(III−20)に挙げることができる。
【0089】
【化15】

【0090】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
一般式(III−b)で表される化合物の具体例を以下の(III−21)から(III−10)に挙げることができる。
【0091】
【化16】

【0092】
【化17】

(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
<カイラル化合物(IV)>
本発明に用いられる高分子安定化液晶組成物におけるカイラル化合物(IV)は、一般式(IV−a)又は(IV−b)
【0093】
【化18】

【0094】
(式(IV−a)及び(IV−b)中、Rは炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
及びCはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基又は1,4−シクロへキシレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
【0095】
は単結合、−CHCH−、−C≡C−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
及びYはそれぞれ独立して単結合、酸素原子、メチレン基、−OCH−、−COO−、−OCO−、−OCHCH−又は−OCOCH−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。
及びXはそれぞれ独立して、一般式(IV−c)から(IV−h)
【0096】
【化19】

【0097】
のいずれかの式で表される基を表す。ただし、式(IV−c)から(IV−h)中、*は炭素原子が不斉炭素原子であることを表し、結合する4つの基は相互に異なる。
、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数2から20のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、
、X及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
【0098】
及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
は単結合又はメチレン基を表し、
は酸素原子又は−OC(Re1)(Re2)O−で表される基(ただし、Re1及びRe2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、Zはカルボニル基又は−CH(Rf1)−で表される基(ただし、Rf1は水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
は−OCO−、−COO−、−CHO−又は−OCH−を表す。)で表されるカイラル化合物(IV)である。
更に、カイラル化合物(IV)は、一般式(IV−i)であっても良く、
【0099】
【化20】

(式(IV−i)、R10及びR11はそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
10、C11、C12、及びC13はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基又は1,4−シクロへキシレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
10及びZ11はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−C≡C−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
10及びY11はそれぞれ独立して単結合、酸素原子、炭素数1から10のアルキレン基、−OCH−、−COO−、−OCO−、−OCHCH−又は−OCOCH−を表し、n11及びn12は、それぞれ独立して1又は2を表す。
10はそれぞれ独立して、一般式(IV−j)から(IV−n)
【0100】
【化21】

のいずれかの式であらわされる基を表す。
ただし、式(IV−j)から(IV−n)中、*は炭素原子が不斉炭素原子であることを表し、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数0から18のアルキレン基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、
【0101】
、X及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、X及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、Zは単結合又はメチレン基を表し、Zは酸素原子又は−OC(Re1)(Re2)O−で表される基(ただし、Re1及びRe2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
はカルボニル基又は−CH(Rf1)−で表される基(ただし、Rf1は水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
は−OCO−、−COO−、−CHO−又は−OCH−を表す。)で表されるカイラル化合物(IV)である。
<一般式(VI−a)及び一般式(VI−b)で表される低分子液晶化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)の具体例を示すと(II)は、下記一般式(VI−a)又は(VI−b)
【0102】
【化22】

【0103】
(式(VI−a)中、R21は、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
21は、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0104】
六員環Y21はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、 X21は、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
22からX26はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
21は、単結合又は−CHCH−を表し、
22は、単結合、−CHCH−又は−CFO−を表し、
21は0又は1を表す。)
【0105】
【化23】

【0106】
(式(VI−b)中、R31は、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
31は、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0107】
六員環Y31はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、
31は、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
32からX36はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
31は、単結合又は−CHCH−を表し、
32は、単結合、−CHCH−又は−CFO−を表し、
31は0又は1を表す。)
【0108】
一般式(VI−a)及び一般式(VI−b)においてR21及びR31としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、
該アルキル基又はアルケニル基は、式(VI−c)
【0109】
【化24】

(式(VI−c)中の各構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるアルケニル基又は炭素原子数5から12のアルキル基がより好ましい。
21及びC31としては、1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
21及びZ31としては、単結合が好ましい。
21及びX31としては、フッ素原子もしくはトリフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
具体的には、一般式(VI−1)から一般式(VI−33)で表される化合物が好ましい。
【0110】
【化25】

【0111】
【化26】

【0112】
(式中、R22及びR32は炭素原子数1から18のアルキル基を表す。)
<一般式(VII−a)及び一般式(VII−b)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)の具体例を示すと(II)は、下記一般式(VII−a)、及び一般式(VII−b)
【0113】
【化27】

【0114】
(式(VII−a)中、R41は、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
41は、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0115】
六員環Y41はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、
41は、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
42からX45は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
41は、単結合又は−CHCH−を表し、
42は、単結合、−CHCH−又は−CFO−を表し、
41は0又は1を表す。)
【0116】
【化28】

(式(VII−b)中、R51は、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
51は、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0117】
六員環Y51はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、
51は、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
52からX55は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
51は、単結合又は−CHCH−を表し、
52は、単結合、−CHCH−又は−CFO−を表し、
51は0又は1を表す。)
【0118】
一般式(VII−a)及び一般式(VII−b)においてR41及びR51としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、
該アルキル基又はアルケニル基は、式(VII−c)
【0119】
【化29】

(式(VII−c)中の構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるアルケニル基又は炭素原子数5から12のアルキル基がより好ましい。
41及びC51としては、1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
41及びZ51としては、単結合が好ましい。
41及びX51としては、フッ素原子もしくはトリフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
具体的には一般式(VII−1)から一般式(VII−42)で表される化合物が好ましい。
【0120】
【化30】

【0121】
【化31】

【0122】
【化32】

【0123】
【化33】

【0124】
(式中、R42及びR52は炭素原子数1から18のアルキル基を表す。)
また、更なる液晶温度領域の拡大、高誘電率、又は低粘性を得るため、一般式(V−a)、一般式(VI−a)、一般式(VI−b)、一般式(VII−a)、一般式(VII−b)の化合物に加えて、一般式(VIII−a)、一般式(IX−a)又は一般式(X)で表される化合物を含有することも好ましい。
<一般式(VIII−a)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)の具体例を示すと(II)は、下記一般式(VIII−a)
【0125】
【化34】

(式(VIII−a)中、R61及びR62はそれぞれ独立して、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
61、C62及びC63はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0126】
61及びZ62はそれぞれ独立して、単結合、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−を表し、
61は、0、1又は2を表す。ただし、n61が2の場合、複数存在するC61及びZ62は同一であっても異なっていても良い。
【0127】
一般式(VIII−a)においてR61及びR62としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、式(VI−c)で表されるアルケニル基もしくはアルケニルオキシ基(ただしそのアルケニル基が式(VI−c)で表されるもの)又は炭素原子数1から5のアルキル基もしくはアルコキシ基が更により好ましい。
また、特に低粘性を得たい場合は、n61が0であり、C62及びC63が、1,4−シクロへキシレン基であり、Z62が単結合であることが好ましい。
【0128】
特に液晶温度範囲を拡大するには、n61が0又は1であり、C61及びC62が、1,4−シクロへキシレン基であり、C63が1,4−フェニレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)であり、Z61が単結合又は−CHCH−であり、Z62が単結合であることが好ましい。
特に高屈折率を得るためには、n61が1であり、C61が1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)であり、C62及びC63が1,4−フェニレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子又はメチル基を有することができる。)であることが好ましい。
具体的には一般式(VIII−1)から一般式(VIII−5)で表される化合物が好ましい。
【0129】
【化35】

【0130】
(式中、R65及びR66はそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、X61からX66はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。)
更に一般式(VIII−a)の具体的な例は一般式(VIII−6)から(VIII−15)が好ましい。
【0131】
【化36】

【0132】
(式中、R67及びR68はそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)、アルコキシ基、炭素原子数2から18のアルケニル基及びアルケニルオキシ基を表し、X及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。Z63は、それぞれ独立して、単結合又は−O−を表し、Z64及びZ65はそれぞれ独立して、単結合、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−を表す。
【0133】
<一般式(IX−a)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)の具体例を示すと(II)は、下記一般式(IX−a)
【0134】
【化37】

(式(IX−a)中、R71は炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
【0135】
71、C72及びC73はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基又はインダン−2,5−ジイル基(該1,4−フェニレン基及びインダン−2,5−ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
71及びZ72はそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−又は−CHO−を表し、
71はフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基、ジフルオロメチル基、イソシアネート基を表し、
71は、0、1又は2を表す。ただし、n71が2の場合、複数存在するC71及びZ71はそれぞれ同じあっても、異なっていても良い。)
【0136】
一般式(IX−a)のR71としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、該アルケニル基は式(V−c)で表されるものが好ましく、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数1から18のアルコキシ基が更により好ましい。
【0137】
71としては、フッ素原子又はトリフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
また、特に高誘電率を得たい場合は、n71が0又は1であり、C71が1,4−シクロへキシレン基であり、C72が1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)であり、C73が2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン基又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基であり、Z71及びZ72が単結合であることが好ましい。
【0138】
特に液晶温度範囲を拡大するには、n71が2であり、C71が1,4−シクロへキシレン基であり、C72が、1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基であり、C73が2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン基又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基であり、Z71及びZ72が単結合又は−CHCH−であることが好ましい。
具体的には一般式(IX−1)から一般式(IX−4)で表される化合物が好ましい。
【0139】
【化38】

【0140】
(式中、R72は炭素原子数1から18のアルキル基又はアルコキシ基を表し、X72からX75はそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子を表し、Z73は単結合又は−CHCH−を表す。)
これら一般式(IX−1)から一般式(IX−4)の中でも、一般式(IX−5)から一般式(IX−7)で表される化合物がより好ましい。
【0141】
【化39】

【0142】
(式中、R77は炭素原子数1から18のアルキル基を表し、X77からX79はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表す。)
<一般式(X)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)の具体例を示すと(II)は、下記一般式(X)
【0143】
【化40】

【0144】
(式(X)中、R101及びR102は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、但し、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、A101は1,4−フェニレン基を表わし、B101及びC101は各々独立に1つ又は2つの水素原子がフッ素原子、CF3基、OCF3基、あるいはCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、又は、1,4−シクロヘキシレン基を表し、a、b、及びcは0又は1の整数を示し、(a+b+c)=1又は2である。)
一般式(X)で表される化合物は具体例的には、一般式(X−a)から(X−f)で表される。
【0145】
【化41】

【0146】
(一般式(X−a)から(X−f)中、Y101及びXは、各々独立に炭素原子数1から18のアルキル基、又はアルコキシ基、又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、Z101は、炭素原子数1から18のアルキル基、又はアルコキシ基、又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)、又は独立してフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフル
オロメトキシ基、ジフルオロメチル基、イソシアネート基を表し、
81からX96は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又はメチル基を表す。
一般式(X−a)から一般式(X−f)で表される化合物の具体例を以下の(X−1)
から(X−17)に挙げることができる。
【0147】
【化42】

【0148】
【化43】

<一般式(XI)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)の具体例を示すと(II)は、下記一般式(XI)
【0149】
【化44】

【0150】
(式(XI−a)から(XI−f)中、R201及びR202は各々独立に炭素原子数1から18のアルキル基、アルコシキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)又はアルケニルオキシ基を表し、
201は、単結合、−CHCH、−OCH−又は−CHO−を表し、
【0151】
201、Y201及びW201は、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基、ジフルオロメチル基、を表し、 一般式(XI−e)及び(XI−f)のVとしては、−CH2−又は−O−を表す。
一般式(XI−a)及び一般式(XI−f)においてR201及びR202としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、
該アルキル基又はアルケニル基は、式(XI−g)
【0152】
【化45】

(式(VII−c)中の構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるアルケニル基又は炭素原子数5から12のアルキル基がより好ましい。
<一般式(XII)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)の具体例を示すと(II)は、下記一般式(XII)
【0153】
【化46】

【0154】
(式(XII−a)から(XII−c)中、R301及びR302は各々独立に炭素原子数1から18のアルキル基、アルコシキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)又はアルケニルオキシ基を表し、
一般式(XII−a)及び一般式(XII−c)においてR301及びR302としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、該アルキル基又はアルケニル基は、式(XII−d)
【0155】
【化47】

(式(VII−c)中の構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるアルケニル基又は炭素原子数5から12のアルキル基がより好ましい。
【0156】
<高分子安定化液晶組成物の組成比>
本発明の高分子安定化液晶組成物は、化合物(II)で表される非重合性低分子液晶化合物と、カイラル化合物(IV)と、重合性化合物(I)及び重合性化合物(III)で表される重合性液晶化合物で構成される。該非重合性低分子液晶化合物とカイラル化合物の合計と、重合性化合物の構成比は、重合性化合物の構成割合が多すぎると高分子安定化液晶組成物としての特性を損なうため最適な構成比が存在する。具体的には、該非重合性低分子液晶化合物とカイラル化合物の合計が92%〜99.9%であることが好ましく、92%〜99%であることがより好ましく、94%〜98%含有であることが特に好ましい。
【0157】
本発明の高分子安定化液晶組成物は、一般式(II−a)又は(II−b)で表される低分子液晶化合物として、一般式(VI−a)、一般式(VI−b)、一般式(VII−a)、一般式(VII−b)、一般式(VIII−a)、一般式(IX−a)、一般式(X)で表される化合物の少なくとも一種を含む液晶組成物を92から99.9質量%含有し、一般式(I−a)、(III−a)で表される化合物を含む重合性組成物を0.1から8%を含有していることが好ましく、該液晶組成物を92%から99%含有し、該重合性組成物を1から8質量%含有することがより好ましく、該液晶組成物を94%から98%含有し、該重合性組成物を2から6質量%含有することが特に好ましい。
【0158】
液晶組成物としては、一般式(X)で表される化合物の含有率が5から90%、一般式(X−a)、一般式(X−b)、一般式(X−c)で表される化合物群の含有率が50から99%であるものが好ましい。一般式(VI−a)、一般式(VI−b)及び一般式(VII−a)、一般式(VII−b)で表される化合物群、及び一般式(VIII−a)、一般式(IX−a)で表せる化合物群は、目的の該液晶組成物の基礎物性を得るために用いることが好ましい。前記基礎物性は、屈折率異方性、誘電異方性、弾性定数、液晶相の相系列、液晶相の温度範囲、自発分極等を実用には調整する必要があるため目的に応じて化合物を選択すて使用することが好ましい。特に、、更には、(XI−a)から(XI−f)で表せる化合物郡及び(XII−a)から(XII−c)で表せる化合物郡は負の誘電異方性を調整する目的で化合物を選択して使用することが好ましい。本発明の高分子安定化液晶組成物においては、重合性化合物(III)の含有率が0.05%から7%であって、重合性化合物(III)と前記重合性化合物(I)との組成比が(III):(I)=1:1から49:1であることが好ましい。
【0159】
本発明においては、重合性液晶化合物(III)のほかに多官能液晶性モノマーを添加することもできる。この多官能液晶性モノマーとしては、重合性官能基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、ClCH=CHCONH−、CH=CCl−、CHCl=CH−、RCH=CHCOO−(ここでRは塩素、フッ素、又は炭素原子数1〜18の炭化水素基を表す)が挙げられるが、これらの中でもアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、ビニルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基が特に好ましく、アクリロイルオキシ基が最も好ましい。
【0160】
多官能液晶性モノマーの分子構造としては、2つ以上の環構造を有することを特徴とする液晶骨格、重合性官能基、さらに液晶骨格と重合性官能基を連結する柔軟性基を少なくとも2つ有するものが好ましく、3つの柔軟性基を有するものがさらに好ましい。柔軟性基としては、−(CH−(ここでnは整数を表す)で表されるようなアルキレンスペーサー基や−(Si(CH−O)−(ここでnは整数を表す)で表されるようなシロキサンスペーサー基を挙げることができ、この中ではアルキレンスペーサー基が好ましい。これらの柔軟性基と液晶骨格、もしくは重合性官能基との結合部分には、−O−、−COO−、−CO−のような結合が介在していても良い。
【0161】
液晶骨格は、通常この技術分野で液晶骨格(メソゲン)と認識されるものであれば、特に制限なく使用することができるが、少なくとも2つ以上の環構造を有するものが好ましい。
環構造としては使用できる環は、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、テトラジン、ジヒドロオキサジン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘキサノン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、テトラヒドロチオピラン、ジチアン、オキサチアン、ジオキサボリナン、ナフタレン、ジオキサナフタレン、テトラヒドロナフタレン、キノリン、クマリン、キノキサリン、デカヒドロナフタレン、インダン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、フェナンスレン、ジヒドロフェナンスレン、パーヒドロフェナンスレン、ジオキサパーヒドロフェナンスレン、フルオレン、フルオレノン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンオン、コレステン、ビシクロ[2.2.2]オクタンやビシクロ[2.2.2]オクテン、1,5−ジオキサスピロ(5.5)ウンデカン、1,5−ジチアスピロ(5.5)ウンデカン、トリフェニレン、トルクセン、ポルフィリン、フタロシアニンを挙げることができる。これらの中でも、ベンゼン、シクロヘキサン、フェナントレン、ナフタレン、テトラヒドロネフタレン、デカヒドロネフタレンが好ましい。
【0162】
これらの環は、炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が望ましく、メチル基とエチル基が特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましく、アルカノイル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子と塩素原子が特に好ましい。また、多官能液晶性モノマーに加えて、単官能液晶性モノマーを添加しても良い。何れも、低分子液晶が示す一軸配向性やチルト角、駆動電圧等の電気光学特性が応用製品の仕様(動作温度、駆動電圧、コントラスト、透過率、信頼性等)に合致するように低分子液晶組成物と同様に高分子前駆体の組成の調整を行うことが好ましい。
【0163】
これらの液晶組成物は不純物等を除去する、又は比抵抗値を更に高くする目的で、シリカ、アルミナ等による精製処理を施しても良い。比抵抗値としては1012Ω・cm以上が好ましく、1013Ω・cm以上がより好ましい。更に、目的に応じて液晶組成物中に、キラル化合物、染料等のドーパントを添加することもできる。
その他、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜添加しても良い。
【0164】
本発明の高分子安定化液晶組成物は、化合物(II)で表される非重合性低分子液晶化合物と、カイラル化合物(IV)と、重合性化合物(I)及び重合性化合物(III)で表される重合性化合物で構成されるが、高分子安定化液晶組成物を重合させる場合、重合開始剤を含有していることが好ましい。重合開始剤を含有させる場合の含有量は、重合開始剤以外の材料を98%〜99.9%含有し、重合開始剤を0.1%〜2%含有していることが好ましい。
本発明の光学素子は、上述した考え方で使用する液晶組成物に対する最適条件(周波数、印加電圧、温度)を探して作製することができる。
【0165】
(高分子安定化液晶光学素子の作製、及び評価法)
中の高分子安定化液晶表示素子は以下の方法で作製した。
高分子安定化液晶組成物の等方相―ネマチック相転移温度以上(80℃)に加熱して真空注入方で注入した。スメクチックA相―ネマチックC*相転移温度近辺の73℃から69℃範囲で1℃/分の降温速度で徐冷してネマチック*相の螺旋ピッチが解けた状態でスメクチックA相へ転移させて配向欠陥の無い一軸配向が得られるようにした。更に、ジグザグ配向欠陥発生を抑制するため69℃から65℃まで2℃/分の降温速度で徐冷してスメクチックC*相へ転移させた。液晶セルは、セルギャップ3μm、又は5μmのポリイミド配向膜を塗布したITO付きアンチパラレルラビングの配向セルを用いた。ポリイミド配向膜は、日産化学社製のRN-1199を使用した。
【0166】
液晶組成物、ラジカル重合性組成物、光重合開始剤及び微量の重合禁止剤からなる調光層形成材料を真空注入法でガラスセル内に注入した。真空度は2パスカルとなるよう設定した。注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。直交ニコルスの偏光顕微鏡で二軸配向であることを確認した後、周波数70Hz、又は2kHzで3V/μmの電界強度のパルス波(矩形波)を印加してスイッチングさせながら、紫外線を露光した。25℃でセルサンプル表面の照射強度が5mW/cm2となるように調整した。ランプは、紫外線発光ダイオード(発光中心波長:365nm)を用いて600秒間照射し、高分子安定化液晶組成物の重合性化合物を重合させて高分子分安定化液晶表示素子を得た。紫外線露光後は、印加した電圧を切り、配向状態を偏光顕微鏡で観察して高分子による配向安定化された一軸配向が無電界で維持されている状態を調べた。更に、液晶セルの一軸配向方向と偏光顕微鏡の直交ニコルに於ける検光子の偏光方向に合わせることにより暗視野にしてから60Hzの矩形波を印加して電気光学特性を測定した。透過率は、二枚の偏光板を直行した時を0%、平行にした時を100%とした。
【0167】
(高分子安定化液晶組成物の調整)
化合物郡(X)と化合物郡(IV)のキラル液晶化合物を含む図1の強誘電性液晶組成物(FLC−1)へ該液晶組成物のネマチック相に於いてコレステリックの螺旋が解けるように化合物郡(VI−i)のキラル化合物(IV−1)を添加して等方相にて加熱溶解した。更に、化合物群(I)及び(III)をそれぞれ少なくとも一種含む光重合性アクリレート組成物を配合して加熱溶解して高分子安定化液晶組成物(PSV−1)を調整した。
【0168】
強誘電性液晶の相系列は、等方相 76℃ ネマチック相 71℃ スメクチックA相 67℃ スメクチックC*相 <-20℃ 結晶 で、各成分の構造および組成を次に示す。
又、化合物郡(X)と化合物郡(IV)のキラル液晶化合物を含む図3の強誘電性液晶組成物(FLC−2)を調整し、該液晶組成物のスメクチックC*相に於ける螺旋が5μmセルで存在するように化合物郡(VI−j)のキラル化合物(VI−2)を添加し、化合物群(I)及び(III)をそれぞれ少なくとも一種含む光重合性アクリレート組成物を配合して高分子安定化液晶組成物(PSV−2)を調整した。該キラル化合物は、J. Mater. Chem.,1994, 4(3), p449−456に記載されている方法を用いて合成した。
化合物郡(X)と化合物郡(IV)を含有する組成物(FLC−1)を次に示す。
【0169】
【化48】

化合物郡(IV−i)のキラル化合物を次に示す。
【0170】
【化49】

化合物郡(X)と化合物郡(IV)を含有する組成物(FLC−2)を次に示す。
【0171】
【化50】

(FLC−2)に添加する化合物郡(IV−i)のキラル化合物を次に示す。
【0172】
【化51】

化合物郡(I) に属する光重合性アクリレート(I−AM1)の構造を以下に示す。
【0173】
【化52】

化合物郡(III)に属する重合性液晶アクリレートの構造を次に示す。
【0174】
【化53】

【0175】
(実施例1)
強誘電性液晶組成物(FLC−1)を97%、(IV−1)を1%、(III−UC1)及び(III−UC2)の混合比が1:1を0.196%、(I−AM1)を1.764%、イルガキュア651(Irg651)を0.04%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製。調整した該組成物に於けるスメクチックC*相の螺旋ピッチは、0℃で0.9μm、25℃で1.8μm、50℃で2.3μmであった。
【0176】
上述の高分子安定化光学液晶素子の作製方法に於いて、セル厚3μmの液晶セルに調整した液晶組成物を80℃の等方相で注入して、2℃/minで徐冷して71.5℃でネマチック相のコレステリック螺旋ピッチが解けるの待ち、直交ニコル下で一軸配向による暗視野が得られた所で、徐冷を再開してスメクチックA相に転移させ、偏光顕微鏡でスメクチックA相にてラビング方向で暗視野(一軸配向)になることと、配向欠陥の無いことを確認した。更に徐冷を続け、67℃でスメクチックC*相へ転移させ温度25℃でスメクチックC*相の配向状態を偏光顕微鏡で観察すると螺旋構造が無い二軸性配向であった。直交ニコルを回転させて二軸配向の何れかの一方の配向軸に検光子を合わせ配向状態を観察すると暗視野部分に複屈折色の着色が若干見られ捩れ配向状態であった。0℃迄冷やすと螺旋構造を表す縞模様が観察された。このような上述の配向状態は、強誘電性液晶の特徴を示した。これに、25℃のスメクチックC*相にて周波数2kHzで15Vo-pの矩形波を印加しながら紫外線を露光して高分子安定化液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶光学素子を作製した。偏光顕微鏡で重合後の配向を観察した所、露光後、電圧を切り、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。電極部分全体は、紫外線露光前に見られたスメクチックC*相の特徴であった二軸配向は消失して略ラビング配向処理方向に消光位を示し一軸配向であった。電極周囲は、矩形波が印加されないためスメクチックC*相の二軸配向が観察された。作製したセルを−10℃迄冷却してスメクチックC*相に於いて螺旋ピッチに由来する縞模様の発現が無くモノドメインスイッチングしていることを偏光顕微鏡で確認した。
顕微分光器で作製したセルの波長分散を測定して、以下の式を用いてカーブフィッティングからセルのΔnを求めた。
【0177】
【数2】

(I:出射光強度、Io:入射光強度、d:セル厚、Δn:複屈折率、λ:波長、θ:検光子の偏光方向を基点に一軸配向方向が傾斜した角度)電圧0Vの一軸配向のΔnは、0.189、電圧9Vo−pは0.168であった。
前記消光の位置(暗視野)にて電圧を0Vとから徐々に上げて印加すると暗視野から明視野へ電極部分全体が一様に変化して透過率が連続的に増加する。このことは連続階調表示が可能であることを意味する。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、図1のV字型電圧―透過率特性を示し、応答は、立ち上がり時間が190μs、立ち下り時間が250μs、駆動電圧V90は6.9V(V90の電界強度:2.3V/μm)、傾斜角(チルト角)が25度、最小透過率Toは0.09%、最大透過率は40.2%、コントラストが1:315の特性が得られた。
【0178】
(比較例1)
電圧を無印加で紫外線露光した以外は実施例1と同様の方法で高分子安定化液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶光学素子を作製した。露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。スメクチックC*相の特徴である二軸配向を示し、二方向の配向状態である二つドメインが高分子安定化された。目的の一軸配向及びV字型電圧−透過率特性は得られなかった。
【0179】
(実施例2)
セル厚が2.5μm以外は、実施例1と同様の方法で高分子安定化液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶光学素子を作製した。露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。露光後電圧を切ると、電極部分全体は、紫外線露光前に見られたスメクチックC*相の特徴であった二軸配向は消失して略ラビング配向処理方向に消光位を示し一軸配向であった。電極周囲は、矩形波が印加されないためスメクチックC*相の二軸配向が観察された。
顕微分光器で作製したセルの波長分散を測定して、実施例1記載の式を用いて同様にカーブフィッティングからセルのΔnを求めた。電圧0Vの一軸配向のΔnは、0.183、電圧9Vo−pは0.169であった。
【0180】
前記消光の位置(暗視野)にて電圧を0Vとから徐々に上げて印加すると暗視野から明視野へ電極部分全体が一様に変化して透過率が連続的に増加する。このことは連続階調表示が可能であることを意味する。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、V字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は6.3V(V90の電界強度:2.5V/μm)、傾斜角(チルト角)が24.9度、最小透過率Toは0.47%、最大透過率は50.1%、コントラストが1:106の特性が得られた。
【0181】
(実施例3)
セル厚が2.0μm以外は、実施例1と同様の方法で高分子安定化液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶光学素子を作製した。露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。露光後電圧を切ると、電極部分全体は、紫外線露光前に見られたスメクチックC*相の特徴であった二軸配向は消失して略ラビング配向処理方向に消光位を示し一軸配向であった。電極周囲は、矩形波が印加されないためスメクチックC*相の二軸配向が観察された。
前記消光の位置(暗視野)にて電圧を0Vとから徐々に上げて印加すると暗視野から明視野へ電極部分全体が一様に変化して透過率が連続的に増加する。このことは連続階調表示が可能であることを意味する。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、V字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は5.9V(V90の電界強度:3V/μm)、最小透過率Toは0.49%、最大透過率は50.3%、コントラストが1:102の特性が得られた。
【0182】
(実施例4)
セル厚が1.8μm以外は、実施例1と同様の方法で高分子安定化液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶光学素子を作製した。露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。露光後電圧を切ると、電極部分全体は、紫外線露光前に見られたスメクチックC*相の特徴であった二軸配向は消失して略ラビング配向処理方向に消光位を示し一軸配向であった。電極周囲は、矩形波が印加されないためスメクチックC*相の二軸配向が観察された。
前記消光の位置(暗視野)にて電圧を0Vとから徐々に上げて印加すると暗視野から明視野へ電極部分全体が一様に変化して透過率が連続的に増加する。このことは連続階調表示が可能であることを意味する。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、V字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は6.4V(V90の電界強度:3.5V/μm)、最小透過率Toは0.31%、最大透過率は46.9%、コントラストが1:150の特性が得られた。
【0183】
(実施例5)
液晶組成物(FLC−2)を92.15%キラル化合物(IV−2)を4.85%、。(III−UC1)及び(III−UC2)の混合比が1:1を2.94%、イルガキュア651(Irg651)を0.06%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製。セル厚5μmに於いてスメクチックC*相の縞模様が観察され螺旋構造を示した。高分子安定化光学液晶素子の作製方法に於いて、セル厚5μmの液晶セルに調整した液晶組成物を注入して、徐冷してスメクチックA相にて一軸配向であることを偏光顕微鏡で確認した。67℃のスメクチックC*相転移温度から25℃の温度範囲でスメクチックC*相の配向状態を観察すると縞模様で表される螺旋ピッチ間隔が小さくなる様子が観察され、25℃にて螺旋ピッチが1.3μmを示した。これに螺旋が解ける条件である電界強度8V/μm、及び70Hzの矩形波を印加して螺旋を消失させ、この状態で電圧条件以外は、実施例1と同様の方法でで紫外線を露光した。露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、略ラビング配向処理方向に消光位を示し一軸配向であった。前記消光の位置にて電圧を0Vとから徐々に上げて印加すると暗視野から明視野へ電極部分全体が一様に変化して透過率が連続的に増加して連続階調表示が可能であることが確認された。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、図2のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は19V(V90の電界強度:3.8V/μm)、最小透過率Toは1.82%、最大透過率は8.9%、コントラストが1:23の特性が得られた。強誘電性液晶は、螺旋構造を解くためセル厚を薄くして螺旋を解くことで二軸配向が得ることでディスプレイへ応用されているが、セル厚5μmでは螺旋になることが多く一軸配向が得ることは困難であったが螺旋を解く電圧条件で液晶の配向を高分子で安定化させることにより一軸配向を得ることができた。透過率が低いのはセルのリターデイション(Δnd)の影響を強く受け低くなった。液晶のΔnを小さくしてリターデイションを調整することで解決される。
【0184】
(比較例1)
電圧を無印加で紫外線露光した以外は実施例1と同様の方法で高分子安定化液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶光学素子を作製した。露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。スメクチックC*相の特徴である二軸配向を示し、二方向の配向状態である二つのドメインが高分子安定化された。目的の一軸配向及びV字型電圧−透過率特性は得られなかった。
【0185】
(比較例2)
電圧を無印加で紫外線露光した以外は実施例5と同様の方法で高分子安定化液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶光学素子を作製した。露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。1.3μmの螺旋構造示す縞模様の状態で高分子安定化されて光散乱が起きた。目的の一軸配向及びV字型電圧−透過率特性は得られなかった。
【0186】
(比較例3)
セル厚5μmに於いてスメクチックC*相で螺旋を巻くように調整した液晶組成物(FLC−2)にキラル化合物(IV−2)を5%添加した液晶組成物を97%、(III−UC1)及び(III−UC2)の混合比が1:1を2.94%、イルガキュア651(Irg651)を0.06%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製。偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。上述の高分子安定化光学液晶素子の作製方法に於いて、セル厚5μmの液晶セルに調整した液晶組成物を注入して、徐冷してスメクチックA相にて一軸配向であることを偏光顕微鏡で確認した。67℃のスメクチックC*相転移温度から25℃でスメクチックC*相の配向状態を観察すると螺旋ピッチを示す縞模様が観察され、降温と供に間隔が小さくなり25℃にて螺旋ピッチが1.3μmを示した。これに電界強度8V/μmで2kHzの矩形波を印加して螺旋ピッチを示す縞模様が見られ完全に螺旋が解けない状態であった。この状態で上述の条件で紫外線を露光した。露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。電極部分で、螺旋構造示す縞模様が観察され一軸配向は得られなかった。
【0187】
(比較例4)
強誘電性液晶組成物(FLC−1)を80℃の等方相で注入して、2℃/minで徐冷して71℃でネマチック相のコレステリック螺旋ピッチが解けるの待ってから、2℃/minで徐冷してスメクチックA相にてラビング方向暗視野になることを確認した。67℃のスメクチックC*相転移温度から25℃でスメクチックC*相の配向状態を観察すると螺旋構造が無い表面安定化強誘電性液晶(SSFLC)特有の二軸性配向であった。温度を−5℃にするとスメクチックC*相の配向状態を観察すると螺旋ピッチを示す縞模様が観察され、スメクチックC*相特有の螺旋構造が発現した。高分子安定化させていないため低温で螺旋ピッチが小さくなる物性の変化に由来して螺旋構造が発現した。
【0188】
(比較例5)
強誘電性液晶組成物(FLC−1)を97%、(IV−1)を1%、(III−UC1)及び(III−UC2)の混合比が1:1を2.646%、(I−AM1)を0.294%、イルガキュア651(Irg651)を0.06%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製。上述の高分子安定化光学液晶素子の作製方法に於いて、セル厚1.4μmの液晶セルに調整した液晶組成物を注入して、徐冷しスメクチックA相にて一軸配向であることを偏光顕微鏡で確認した。67℃のスメクチックC*相転移温度から25℃でスメクチックC*相の配向状態を観察すると二軸配向が観察された。これに電界強度3.5V/μmで2kHzの矩形波を印加して紫外線露光した。電圧を切り、偏光顕微鏡で観察すると、電極部分全体が一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、V字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は5.7V、最小透過率Toは0.35%、最大透過率は37.1%、コントラストが1:107の特性が得られた。しかし、透過率は低くなりV90の電界強度が4.1V/μmと実施例1−5に比べて高い。
【0189】
以上の実施例、及び比較例の一覧表を表1の組成、及び表2の作製条件及びV字型電圧−透過率特性を示す。実施例1−5、及び比較例1に於けるセル厚と最大透過率T100を見ると1.8μmから3μm範囲で大きく、この範囲から外れると最大透過率は小さくなる。最大透過率が小さくなる理由は、二つある。一つは、セル厚が増すと、実施例1記載の式において関連付けられるリターデイションの影響で最大透過率が減少する。二つめは、セル厚を薄くするとセル基板界面からの配向規制力の影響を強く受け高い電界強度でも動かなくなる液晶の割合が増えるため最大透過率が低くなる。これは、V90の電界強度とセル厚で比較すると、表2に示すように、セル厚が薄くなるとV90の電界強度が増加することが一つの証拠である。即ち、本発明は、螺旋ピッチP ≦セル厚dの条件に於いては基板界面からの配向規制力が弱まる領域で強誘電性液晶を高分子安定化させて一軸配向を得ることにより最大透過率の向上、及び駆動電圧の電界強度を下げることが出来る。これにより、フルカラーディスプレイの表示材料とし応用することができ、しかも量産可能なセル厚に適応させることができる。
【0190】
【表1】

【0191】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】実施例1のV字型電圧−透過率特性を示すグラフである。
【図2】実施例2のV字型電圧−透過率特性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極層を有する基板間に、光学活性化合物を含有する液晶組成物及び高分子前駆体から成る透明性固体物質により構成される液晶層を有し、該液晶層において該液晶組成物が光学的に一軸配向しており、螺旋ピッチ(該液晶組成物の電圧無印加状態において発現する螺旋構造のピッチ(μm))とセル厚(該液晶層の厚さ(μm))が以下の関係を満たすことを特徴とする液晶素子。
螺旋ピッチ≦セル厚
【請求項2】
光学活性化合物を含有する液晶組成物がスメクチックC*相を発現する請求項1記載の液晶素子。
【請求項3】
セル厚が3μm以上である請求項1又は2記載の液晶素子。
【請求項4】
高分子前駆体が多官能アクリレートを含有する請求項1から3の何れかに記載の液晶素子。
【請求項5】
高分子前駆体がメソゲン基を有する多官能アクリレート及びアルキル側鎖を有する多官能アクリレートを含有する請求項4記載の液晶素子。
【請求項6】
液晶組成物がピリミジン系液晶化合物を含有する請求項1から5の何れかに記載の液晶素子。
【請求項7】
一対の電極層を有する基板間に、光学活性化合物を含有する液晶組成物及び透明性固体物質を形成する高分子前駆体を挟持し液晶層を形成し、該液晶組成物の螺旋ピッチ(該液晶組成物の電圧無印加状態において発現する螺旋構造のピッチ(μm))とセル厚(該液晶層の厚さ(μm))が以下の関係を満たし、
螺旋ピッチ≦セル厚
該液晶組成物の発現する螺旋構造を外部電界、又は加熱により螺旋を解き、該高分子前駆体を硬化(架橋)させることにより高分子安定化させることにより無電界状態に於いて一軸性の配向状態を示し、これに電界を印加することにより電界強度に依存して消光位が連続的に変化する液晶素子の製造方法。
【請求項8】
該液晶組成物の発現する螺旋構造を外部電界により解く請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
外部電界が交流電界である請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
交流電界が矩形波であり周波数が10〜10kHzである請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
該液晶組成物の発現する螺旋構造を加熱により解く請求項7記載の製造方法。
【請求項12】
該液晶層が加熱時に発現する相が光学的に一軸性の配向を示す液晶相である請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
光学的に一軸性の配向がキラル・ネマチック相又はスメクチックA相である請求項12記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−14869(P2010−14869A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173298(P2008−173298)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】