説明

液晶表示パネルの検査方法および検査装置

【課題】液晶表示パネルにおいて、バックライトや投影ランプの輝度バラツキ等の外的影響を排除し、点欠陥、線欠陥を確実に検出可能とする。
【解決手段】液晶表示パネル駆動装置2により液晶表示パネル1に検査用の液晶表示を行う。液晶表示パネル1の下方からは、バックライト6により光を照射し、液晶表示パネル1の検査用の液晶表示をCCDカメラ5で撮像する。画像処理装置3は、撮像された液晶表示画像の縦横の各検査ライン毎に輝度波形を求め、各輝度波形から各一次導関数波形を求め、各一次導関数波形に対し閾値によりピークとその位置を検出し、ピークの位置に基づいてピークが検査ラインの直交方向に連続する数をカウントし、このカウント値が線欠陥閾値を超えている線欠陥を検出する。ここで、線欠陥が検出されない場合には、カウント値が線欠陥閾値より低い点欠陥閾値を超えている点欠陥を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パネル形態やモジュール形態の液晶表示パネルの表示状態を検査する液晶表示パネルの検査方法および検査装置に係り、詳しくは、バックライトや投影ランプの輝度バラツキ等の外的影響を排除することにより、液晶表示パターン内の線欠陥もしくは点欠陥を確実に検出可能として、その検出能力を向上させた液晶表示パネルの検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置に用いられる液晶表示パネルの形態には、液晶表示パネルそのものであるパネル形態と、液晶表示パネルにドライバを実装することによりモジュール化したモジュール形態とがある。これらを組み込んだ液晶表示装置は、様々な用途で使用されるが、例えば、テレビジョン受像機やコンピュータのモニタディスプレイ等のようにバックライトを用いてパネル面に表示するものと、プロジェクタ等のように光源ランプや投影レンズ等の光学系と組み合せてスクリーン等に投影表示するものとが知られている。
【0003】
このような液晶表示装置、あるいはパネル形態やモジュール形態の液晶表示パネルを出荷する際には、不良品の流出を防止するため、パネル形態やモジュール形態のそれぞれの表示状態において、欠陥有無の検査が実施される。従来の液晶表示パネルの代表的な検査方法は、液晶表示パネルに検査用の液晶表示を行い、CCDカメラで取り込んだこの液晶表示画像において、画像処理により画像内の縦横の各画素ライン上の輝度波形を求め、その輝度波形中の各輝度値が閾値よりも大きい(高い)か小さい(低い)かで欠陥の有無、即ち良否を判定するものであった(特許文献1、2参照)。
【0004】
また、従来の液晶表示パネルの検査装置として特許文献3には、表示ムラの検出を能率良く行うことことを目的として、前面一様に無地表示された液晶パネルの撮影画像データをスキャンして得られた1次元輝度データに1次微分処理を施し、この1次微分処理の結果に基づいて1次元輝度データ中の線状欠陥等の突起部分を所定の閾値で除去し、突起部分が除去された後の1次元輝度データに2次微分処理を施して、その2次微分処理の結果をフィルタにより所定の閾値で2値化処理することにより、緩やかな輝度値変化の表示ムラを検出することが記載されている。
【特許文献1】特開平07−190888号公報
【特許文献2】特開2001−147413号公報
【特許文献3】特開平08−145848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2の液晶表示パネルの検査方法では、欠陥部と欠陥部以外(良品部)の輝度値の差が非常に小さいと、バックライトや投影ランプの輝度バラツキ(中心部から外(角)に向かうにつれて輝度値が小さくなる)等の影響により、欠陥部の発生位置によっては、欠陥部の輝度値が欠陥部以外の輝度値と同等もしくは以下になることがある。このことは、欠陥部を検出する上での誤判定(良品を不良と判定)の要因となるだけでなく、欠陥部を検出することができない場合があるという問題のあることを意味する。
【0006】
また、上記特許文献3の液晶表示パネルの検査装置では、緩やかな輝度値変化の表示ムラを能率良く検出することはできるものの、液晶表示パネルの表示状態における線欠陥や点欠陥は検出できず、欠陥を見逃してしまう場合があるという問題がある。
【0007】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、バックライトや投影ランプの輝度バラツキ等の外的影響を排除して、液晶表示パネルの表示状態における線欠陥、点欠陥を確実に検出可能とする液晶表示パネル検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、液晶表示パネルの検査方法に係り、背面からの光の透過を制御して表示を行う液晶表示パネルの表示状態の欠陥を検出する液晶表示パネルの検査方法であって、前記液晶表示パネルに検査用の液晶表示を行う工程と、前記液晶表示を撮像手段で撮像した液晶表示画像を取り込む工程と、前記取り込んだ液晶表示画像から検査ラインの輝度波形を求める工程と、前記輝度波形から一次導関数波形を求める工程と、前記一次導関数波形に対し閾値により前記検査ラインの直交方向に連続する線欠陥または点欠陥を検出する工程とを、備えることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の液晶表示パネルの検査方法に係り、前記輝度波形を求める工程では、液晶表示画像の縦横の各検査ライン毎に輝度波形を求め、前記一次導関数波形を求める工程では、前記各輝度波形から各一次導関数波形を求め、前記線欠陥または点欠陥を検出する工程では、前記各一次導関数波形に対し閾値によりピークとその位置を検出し、前記ピークの位置に基づいて前記ピークが前記検査ラインの直交方向に連続する数をカウントし、このカウント値に対し線欠陥閾値により線欠陥を検出し、前記線欠陥が検出されない場合には前記カウント値に対し前記線欠陥閾値より低い点欠陥閾値により点欠陥を検出することを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の液晶表示パネルの検査方法に係り、前記輝度波形を求める工程では、取り込んだ液晶表示画像の縦横の検査ラインの画素毎または当該画素を含む所定幅の画素毎に前記検査ラインの直交方向の線全体または特定範囲の累積値または平均値から輝度波形を求めることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の液晶表示パネルの検査方法に係り、前記線欠陥または点欠陥を検出する工程では、前記線欠陥閾値を予め定めた下限個数と上限個数から成るものとし、前記カウント値が前記下限個数と上限個数の範囲内である場合に線欠陥と判定して検出することを特徴としている。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、液晶表示パネルの検査装置に係り、背面の光源からの光の透過を制御して表示を行う液晶表示パネルの表示状態の欠陥を検出する液晶表示パネルの検査装置であって、前記液晶表示パネルに検査用の液晶表示を行う駆動手段と、前記液晶表示を撮像する撮像手段と、前記撮像された液晶表示画像を取り込み、前記取り込んだ液晶表示画像から検査ラインの輝度波形を求め、前記輝度波形から一次導関数波形を求め、前記一次導関数波形に対し閾値により検査ラインの直交方向に連続する線欠陥または点欠陥を検出する画像処理手段とを、備えることを特徴としている。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の液晶表示パネルの検査装置に係り、前記画像処理手段が、撮像手段で撮像された液晶表示画像を取り込み、前記取り込んだ液晶表示画像の縦横の各検査ライン毎に輝度波形を求め、前記各輝度波形から各一次導関数波形を求め、前記各一次導関数波形に対し閾値によりピークとその位置を検出し、前記ピークの位置に基づいて前記ピークが前記検査ラインの直交方向に連続する数をカウントし、このカウント値に対し線欠陥閾値により線欠陥を検出し、前記線欠陥が検出されない場合には前記カウント値に対し前記線欠陥閾値より低い点欠陥閾値により点欠陥を検出するものであることを特徴としている。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の液晶表示パネルの検査装置に係り、前記画像処理手段が、輝度波形を求めるのに際して、液晶表示画像の縦横の検査ラインの画素毎または当該画素を含む所定幅の画素毎に前記検査ラインの直交方向の線全体または特定範囲の累積値または平均値から輝度波形を求めるものであることを特徴としている。
【0015】
また、請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の液晶表示パネルの検査装置に係り、前記画像処理手段が、前記線欠陥閾値を予め定めた下限個数と上限個数から構成し、前記カウント値が前記下限個数と上限個数の範囲内である場合に線欠陥と判定して検出するものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、この発明の構成によれば、液晶表示パネルの表示を撮像した画像から求めた輝度波形に対し、更に一次導関数を求める(輝度波形内各部分の傾きを求める)処理を行うようにしたので、欠陥部のような急激な輝度変化がおきる箇所のみを強調することができる。欠陥部以外の箇所の輝度値が欠陥部の輝度値より大きい場合(バックライト等の背面の光源による輝度バラツキ等の外的要因により起こり得る)においては、隣接する画素の輝度値との差が小さければ、その箇所の傾きは小さくなるため、急激な輝度変化が生じる欠陥部のように傾きの大きい所との区別をつけることが可能となり、欠陥部を確実に検出することが可能となる。これらより、この発明の第1の効果としては、バックライト等の光源による輝度バラツキ等の外的影響を排除することができ、線欠陥、点欠陥を確実に検出可能となることである。
【0017】
また、この発明の請求項3,7の構成によれば、線欠陥部輝度と隣接輝度の差が小さく、閾値の設定が難しい場合において、線欠陥部と隣接部の線全体もしくは特定範囲の輝度値を累積した値を求め、その累積値もしくは平均値で算出した輝度波形から一次導関数波形を求めるようにしたので、第2の効果として、欠陥部を検査ライン上のある一部分の小さな輝度変化で捉えるよりも、線欠陥部全体の傾向として捉えることが可能となり、線欠陥の検出能力を更に向上させることができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明は、液晶表示パネルにおいて、バックライトの輝度バラツキ等の外的影響を排除して、線欠陥、点欠陥を確実に検出可能とするという目的を、CCDカメラで撮像した液晶表示画像において、各画素ライン上の輝度波形を求め、更に一次導関数を求める(輝度波形内各部分の傾きを求める)処理を行って、欠陥部のような急激な輝度変化がおきるピーク箇所のみを強調し、このピーク個所を所定の閾値により位置情報とともに検出し、この位置情報を基に連続するピーク個所の数を見て、線欠陥、点欠陥することにより実現した。
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。説明は、実施例を用いて具体的に行う。
【実施例1】
【0019】
まず、この発明の第1実施例を説明する。図1は、この実施例である液晶表示パネルの検査装置の接続構成を示すブロック図である。この実施例は、バックライトを用いる液晶表示パネルの表示状態の欠陥を検査する場合の例である。この実施例の液晶表示パネル1の検査装置は、液晶表示パネル駆動装置2と、画像処理装置3と、パソコン(パーソナルコンピュータ)4と、CCDカメラ5と、バックライト(照明装置)6と、照明装置電源7と、モニタ8とから構成されている。
【0020】
液晶表示パネル1に対する電源制御、検査用の表示パターンの表示制御や切替制御は、パソコン4からの指示により、液晶表示パネル駆動装置2によって行われる。液晶表示パネル1の下方からはバックライト6により光が照射され、液晶表示パネル1の表示パターンがCCDカメラ5に撮像されて、画像処理装置3へ出力される。バックライト6の電源制御は、パソコン4からの指示により、照明装置電源7によって行われる。画像処理装置3では、入力された液晶表示画像に対し欠陥検出のための画像処理を行い、結果をパソコン4に出力し、モニタ8上に検査結果を表示して一連の検査を終了する。図1では、画像処理装置3とパソコン4を個別に備える構成としているが、パソコン4内に画像処理装置の処理機能を持たせた構成としても、同様の検査を行うことができるものである。
【0021】
この実施例における液晶表示パネル検査方法は、CCDカメラ5で撮像した液晶表示パネル1の検査用の表示パターン画像において、各画素ライン上の輝度波形を求め、更に一次導関数を求める(輝度波形内各部分の傾きを求める)処理を行うことで、欠陥部のような急激な輝度変化がおきる箇所のみを強調・検出することを特徴とするものである。まず、輝度波形と一次導関数の関係について説明する。
【0022】
図2は、輝度波形21と一次導関数波形22の関係を概略的に示した説明図である。この図に示す輝度波形21は、左側から右側に向けて輝度値が大きくなっていることを示しているが、この時、一次導関数波形22は、輝度波形21の傾きが一番大きくなる所でピーク23を示している。このことは、輝度値の変化が小さい箇所では、一次導関数波形のピーク値は小さく、その逆は大きくなることを示している。即ち、輝度波形から一次導関数を求めると、急激な輝度変化がおきる箇所のみを強調することができる。
【0023】
次に、この実施例におけるバックライトによる液晶表示パネルの輝度分布について説明する。図3に、この実施例におけるバックライト6による輝度分布例を示す。この輝度分布においては、横検査ライン33の輝度波形35と縦検査ライン34の輝度波形36より、中心部31から角(隅)32に向かうにつれて、輝度値が緩やかに低下していることが分かる。中心部31と角32の輝度値は、輝度波形から明らかに値に違いのあることが見て取れるが、横検査ライン33の輝度波形35と縦検査ライン34の輝度波形36の一次導関数波形37,38を見ると、ほぼ水平な波形を示している。これは、バックライト6の輝度変化が緩やかに変化していることから、部分的な傾きが小さいことを意味している。これらのように、この発明は、バックライト6の輝度分布のような緩やかな輝度変化をもった外的影響を排除することで、線欠陥、点欠陥のみを強調して検出可能とするものである。
【0024】
次に、この実施例による液晶表示パネルの線欠陥の検出方法を、従来方法と対比させて説明する。図4は、その説明図である。線欠陥とは、縦または横の各検査ラインの直交方向に連続して複数個並んだ欠陥画素の列である。図4において、線欠陥41を検出する場合、従来方法を利用する検出方法では、各検査ライン42の輝度波形43を個別に算出した後に、各輝度波形43を所定の閾値45を超えた場合に線欠陥部44と判定して座標位置とともに記憶しておき、縦の各検査ラインにおいて連続して線欠陥部44と判定された数の合計を見て線欠陥と判定し検出する方法が考えられる。
【0025】
これに対して、この実施例による方法では、各検査ライン42の輝度波形43を個別に算出した後に、各輝度波形43から各一次導関数波形46を求め、各一次導関数波形46に対して予め定めた閾値48を超えたピーク47を座標位置とともに記憶しておき、座標位置に基づいて各検査ラインの直交方向において連続してピークとされた数の合計(カウント値)を見て、線欠陥41を判定する。例えば、ピーク47とされた数の合計が、予め定めた所定の閾値(線欠陥閾値と呼ぶ)より多ければ、線欠陥と判定する。あるいは、この合計が、予め定めた下限個数と上限個数の範囲内である場合に線欠陥とすれば、更に、線欠陥の検出精度が高まる。
【0026】
次に、この実施例による液晶表示パネルの点欠陥の検出方法を、従来方法と対比させて説明する。図5は、その説明図である。図5において、点欠陥51を検出する場合、従来方法を利用する検出方法では、各検査ライン52の輝度波形53を個別に算出した後に、各輝度波形53が所定の閾値55を超えた場合に点欠陥部と判定し検出する方法が考えられる。これに対して、この実施例による点欠陥の検出方法では、前述の線欠陥が検出されない場合にのみ、線欠陥の検出時に算出した各検査ライン42の直交方向において連続してピーク57とされた数の合計(カウント値)が、線欠陥閾値より低い点欠陥閾値を超えた場合に点欠陥と判定する。これらによって、欠陥部の検出が確実となる。
【0027】
次に、この実施例の動作例について説明する。図6は、CCDカメラで撮像された液晶表示画像に対する画像処理の流れを説明するフローチャートである。図中、S1〜S15は、この画像処理のステップを表す。この画像処理は、図1の画像処理装置3にて実行される。このため、画像処理装置3は、S1〜S15の各ステップを処理する機能手段を備えている。これらのステップあるいは機能手段は、コンピュータのプログラムで構成することも可能である。この場合には、このプログラムを画像処理装置3のコンピュータにインストールして実行させることとなる。なお、このプログラムは、インターネットや電子メール等のデータ通信手段により配布することが可能であり、また、このプログラムを種々の記憶媒体に記憶させて、保存したり、配布したり、提供したりすることも可能である。
【0028】
まず始めに、CCDカメラ5で撮像した液晶表示画像のメモリへの取り込みS1を行う。この液晶表示画像の取り込みS1終わると、前処理S2として必要に応じノイズ除去等の処理を行う。この前処理S2は、欠陥部を検出し易くするためのものであり、必要が無ければ省略が可能なものである。前処理S2が終了したのち、液晶表示領域および液晶表示パネルの傾きを算出するための処理として、液晶表示画像エッジ検出S3、液晶表示画像エッジ角度算出S4の処理を行い、液晶表示画像角度補正S5にて画像の傾きが無くなるように補正をかける。液晶表示画像の角度補正は、図4、図5を例に取ると、検査ライン42、52と液晶表示パネル1の画素ラインが水平になるように補正される。この液晶表示画像角度補正S5で処理された液晶表示画像は、欠陥検出処理を行うための画像として、以降取り扱われることとなる。ここまで終了すると、この発明を実施する上での事前準備が終了したこととなる。
【0029】
次に、これ以降は、この発明について係わる所となり、図4、図6を用いて以下に説明する。まず、欠陥検出の初めの処理として、図6の液晶表示画像角度補正S5で処理された液晶表示画像に対し、全検査ラインの輝度波形算出S6が行われる。ここで算出された輝度波形は、図4の輝度波形43のような波形として算出される。検査ラインとしては、横の全検査ラインと縦の全検査ラインのいずれか一方としても良いが、ここでは縦横の全検査ラインとすることにより、縦横の線欠陥を確実に検出可能としている。図4では検査ライン42の輝度波形を示しているが、全検査ライン(X0からXn,Y0からYn)に対し、輝度波形43と同様の波形を算出する。続いて、全検査ラインの輝度波形算出S6にて算出された結果より、全検査ラインの一次導関数波形算出S7が行われる。一次導関数波形の算出は、輝度波形の部分的な傾きから求められ、輝度値の変化が小さい箇所では、一次導関数波形の縦軸の値は小さくなり、その逆では大きくなる。
【0030】
図6のピーク検出S8では、一次導関数波形のピーク値が、予め設定した閾値より高ければ欠陥部のピークとして判定される。このピーク検出S8は、全検査ラインの一次導関数波形に対して行われ、このピークと判定された位置がピーク検出位置記憶S9により記憶される。このピーク位置記憶に基づいて、まず、検査ラインの直交方向に連続するピーク検出数をカウントして、線欠陥閾値を超えていれば線欠陥と判定する線欠陥判定S10が行われる。線欠陥判定S10において、線欠陥と判定された場合には、パソコン4に線欠陥の位置出力S12がなされ、不良品処理S15がなされる。線欠陥判定S10において、線欠陥と判定されなかった場合には、前記のカウント値が線欠陥閾値より低い点欠陥閾値を超えていれば点欠陥と判定する点欠陥判定S11が行われる。点欠陥判定S11において、点欠陥と判定された場合には、パソコン4に点欠陥の位置出力S13がなされ、不良品処理S15がなされる。線欠陥、点欠陥と判定されなかった場合には、その旨がパソコン4に通知され、良品処理S14がなされる。
【0031】
次に、この発明の特徴といえるバックライトの輝度分布のような緩やかな輝度変化をもった外的影響を排除することで、線欠陥、点欠陥のみを強調するという点について、図4を用いて説明する。図4では、液晶表示パネル1の表示画像に線欠陥41が発生している。輝度波形43は、検査ライン42上の波形を示している。ここでは示していないが、液晶表示パネル1は、図3に示すバックライト6の光を下方より照射された状態を想定しており、輝度波形43は、液晶表示パネル1の中心31から角32に向けて輝度値が緩やかに小さくなる傾向を示している。輝度波形43を見ると、検査ライン42の中心部輝度値は、線欠陥部44のピーク輝度値より高い輝度値を示している。この線欠陥44は、欠陥部の輝度値と周辺部の輝度値の差が小さいために線欠陥部44のピークが小さいものとなっている。従来の輝度値による閾値の設定では、線欠陥部44のピーク輝度値より検査ライン42の中心部輝度値の値が大きいため、この関係において閾値を設定することは困難である。よって、従来の輝度値による欠陥検出方法では、線欠陥41は検出できないと判断される。
【0032】
その解決手段として、この発明によるものが一次導関数波形46である。一次導関数波形46を見ると、線欠陥部47の所に大きいピーク波形が見られるが、線欠陥部47以外の所では、ほぼ平坦な波形となっている。このことは、輝度波形43より一次導関数波形46を描くことにより、バックライトの輝度バラツキの影響が排除されていることを意味しており、線欠陥部47のみが強調され、かつ閾値が容易に設定可能な状態にあることが分かる。以上のように、この発明では、バックライトの輝度分布のような緩やかな輝度変化をもった外的影響を排除することで、線欠陥、点欠陥のみを強調して検出可能とする液晶表示パネル検査方法及び検査装置を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0033】
次に、この発明の第2実施例について説明する。この実施例は、第1実施例として線欠陥検出における検出能力の向上を図った例である。この実施例の構成が第1実施例と異なる所は画像処理装置3の機能であって、その他の構成は同様であり、容易に類推できるのでその説明は省略する。
【0034】
前述の第1実施例では、ある一つの検査ライン上の輝度波形から一次導関数波形を求めていたが、この実施例は、線欠陥部の輝度と隣接輝度の差が小さく、前述の第1実施例においても、閾値の設定が難しい場合において、線欠陥部と隣接部の線全体もしくは特定範囲の輝度値を累積もしくは平均した値を求め、その累積値もしくは平均値で描いた輝度波形の一次導関数波形を求めることにより、線欠陥部の検出能力をさらに向上させることを可能としたものである。
【0035】
図4を用いてこの実施例による線欠陥の検出方法について説明する。線欠陥41を検出する場合において、第1実施例では、各検査ラインの輝度波形43を個別に算出し、各輝度波形43から一次導関数波形46を算出し、この一次導関数波形46を閾値で判定して欠陥部(ピーク)と判定された数の合計を見て線欠陥を判定していた。この実施例では、一方の検査ライン(例えば、横の検査ラインY0からYnまで)の画素毎もしくは所定幅の画素毎にこの検査ラインに直交する他方の検査ラインの画素列(例えば、縦の検査ラインX0からXnまで)の全体または特定範囲の輝度値の累積値もしくは平均値にて輝度波形43を算出し、この輝度波形43の一次導関数波形46を求めて、この一次導関数波形46を閾値で判定して欠陥部(ピーク)47を検出し、この検査ライン42の直交方向に連続するピークの数の合計を線欠陥閾値で判定して線欠陥を検出する方法である。この方法によれば、検査ライン上のある一部分の小さな輝度変化で見るよりも、線欠陥部全体の傾向として捉える事が可能となるため、線欠陥の検出能力の向上を図ることができる。
【0036】
次に、この実施例の点欠陥検出方法について説明する。点欠陥検出は、上述の線欠陥検出において線欠陥が検出されなかった場合に行う。基本的な画像処理の流れとしては、線欠陥の検出と同じである。即ち、線欠陥と判定されなかった場合、線欠陥の判定時に求めた一次導関数波形46が線欠陥閾値より低い点欠陥閾値を超えた場合に全て点欠陥と判定する方法である。
【0037】
次に、この実施例の動作例について説明する。この実施例の動作例の基本的な処理の流れとしては、図6と同様なので、異なる所を詳細に説明し、その他は説明が重複するため詳細な説明は省略する。S1からS5までの準備処理は第1実施例と同じである。輝度波形算出S6では、一方の検査ライン(例えば、横の検査ラインY0からYnまで)の画素毎もしくは所定幅の画素毎にこの検査ラインに直交する他方の検査ラインの画素列(例えば、縦の検査ラインX0からXnまで)の全体または特定範囲の輝度値の累積値もしくは平均値にて輝度波形を算出する。この輝度波形の算出は、縦横の全検査ラインについて行う。導関数波形S7では、この各輝度波形から一次導関数波形を求める。以下、ピーク検出S8から良品処理S14もしくは不良品処理S15までは第1実施例と同様にである。
【0038】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、一次導関数としては正負のピークが現れるが、上述の実施例では正側のピークで欠陥の判定を行うものであったが、負側のピークで判定しても良い。また、上述の実施例では、バックライトを用いる液晶表示パネルに適用した例について説明したが、プロジェクタ等のように光源ランプや投影レンズ等の光学系と組み合せてスクリーン等に投影表示する液晶表示パネルにも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、パネル形態やモジュール形態の液晶表示パネルに限らず、種々の形態に含まれる液晶表示パネルの表示状態を検査する場合に、好適に利用できるとともに、バックライト式や投影式の液晶表示パネルの表示状態を検査する場合にも、好適に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の第1実施例であるの液晶表示パネル検査装置の装置構成を示すブロック図である。
【図2】同検査装置の液晶表示パネルにおける輝度波形と一次導関数波形の関係を説明する図である。
【図3】同検査装置のバックライトによる液晶表示パネルの輝度分布例を示す図である。
【図4】同検査装置での液晶表示パネルの線欠陥検出について従来方法と本発明方法を対比して説明する図である。
【図5】同検査装置での液晶表示パネルの点欠陥検出について従来方法と本発明方法を対比して説明する図である。
【図6】同検査装置での液晶表示パネルの表示状態における欠陥検査の画像処理の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 液晶表示パネル
2 液晶表示パネル駆動装置(駆動手段)
3 画像処理装置(画像処理手段)
5 CCDカメラ(撮像手段)
6 バックライト(光源)
41 線欠陥
42 検査ライン
43 輝度波形
46 導関数波形
47 線欠陥部(ピーク)
48 閾値
51 点欠陥
52 検査ライン
53 輝度波形
56 導関数波形
57 点欠陥部(ピーク)
58 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面からの光の透過を制御して表示を行う液晶表示パネルの表示状態の欠陥を検出する液晶表示パネルの検査方法であって、前記液晶表示パネルに検査用の液晶表示を行う工程と、前記液晶表示を撮像手段で撮像した液晶表示画像を取り込む工程と、前記取り込んだ液晶表示画像から検査ラインの輝度波形を求める工程と、前記輝度波形から一次導関数波形を求める工程と、前記一次導関数波形に対し閾値により前記検査ラインの直交方向に連続する線欠陥または点欠陥を検出する工程とを、備えることを特徴とする液晶表示パネルの検査方法。
【請求項2】
前記輝度波形を求める工程では、液晶表示画像の縦横の各検査ライン毎に輝度波形を求め、前記一次導関数波形を求める工程では、前記各輝度波形から各一次導関数波形を求め、前記線欠陥または点欠陥を検出する工程では、前記各一次導関数波形に対し閾値によりピークとその位置を検出し、前記ピークの位置に基づいて前記ピークが前記検査ラインの直交方向に連続する数をカウントし、このカウント値に対し線欠陥閾値により線欠陥を検出し、前記線欠陥が検出されない場合には前記カウント値に対し前記線欠陥閾値より低い点欠陥閾値により点欠陥を検出することを特徴とする請求項1記載の液晶表示パネルの検査方法。
【請求項3】
前記輝度波形を求める工程では、取り込んだ液晶表示画像の縦横の検査ラインの画素毎または当該画素を含む所定幅の画素毎に前記検査ラインの直交方向の線全体または特定範囲の累積値または平均値から輝度波形を求めることを特徴とする請求項2記載の液晶表示パネルの検査方法。
【請求項4】
前記線欠陥または点欠陥を検出する工程では、前記線欠陥閾値を予め定めた下限個数と上限個数から成るものとし、前記カウント値が前記下限個数と上限個数の範囲内である場合に線欠陥と判定して検出することを特徴とする請求項2または3記載の液晶表示パネルの検査方法。
【請求項5】
背面の光源からの光の透過を制御して表示を行う液晶表示パネルの表示状態の欠陥を検出する液晶表示パネルの検査装置であって、前記液晶表示パネルに検査用の液晶表示を行う駆動手段と、前記液晶表示を撮像する撮像手段と、前記撮像された液晶表示画像を取り込み、前記取り込んだ液晶表示画像から検査ラインの輝度波形を求め、前記輝度波形から一次導関数波形を求め、前記一次導関数波形に対し閾値により検査ラインの直交方向に連続する線欠陥または点欠陥を検出する画像処理手段とを、備えることを特徴とする液晶表示パネルの検査装置。
【請求項6】
前記画像処理手段が、撮像手段で撮像された液晶表示画像を取り込み、前記取り込んだ液晶表示画像の縦横の各検査ライン毎に輝度波形を求め、前記各輝度波形から各一次導関数波形を求め、前記各一次導関数波形に対し閾値によりピークとその位置を検出し、前記ピークの位置に基づいて前記ピークが前記検査ラインの直交方向に連続する数をカウントし、このカウント値に対し線欠陥閾値により線欠陥を検出し、前記線欠陥が検出されない場合には前記カウント値に対し前記線欠陥閾値より低い点欠陥閾値により点欠陥を検出するものであることを特徴とする請求項5記載の液晶表示パネルの検査装置。
【請求項7】
前記画像処理手段が、輝度波形を求めるのに際して、液晶表示画像の縦横の検査ラインの画素毎または当該画素を含む所定幅の画素毎に前記検査ラインの直交方向の線全体または特定範囲の累積値または平均値から輝度波形を求めるものであることを特徴とする請求項6記載の液晶表示パネルの検査装置。
【請求項8】
前記画像処理手段が、前記線欠陥閾値を予め定めた下限個数と上限個数から構成し、前記カウント値が前記下限個数と上限個数の範囲内である場合に線欠陥と判定して検出するものであることを特徴とする請求項6または7記載の液晶表示パネルの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−201523(P2006−201523A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13424(P2005−13424)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】