説明

液晶表示素子の製造方法、液晶表示素子及び液晶配向剤

【課題】視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性及び長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、(1)[A]同一又は異なる重合体中に、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体成分を含有する液晶配向剤を用い、導電膜を有する一対の基板のこの導電膜上に塗膜を形成する工程、(2)上記塗膜を形成した一対の基板を、それらの一対の塗膜が対向するよう、かつ液晶層を介して配置することで、液晶セルを形成する工程、及び(3)上記一対の基板の導電膜間に電圧を印加した状態で上記液晶セルに光照射する工程を有する液晶表示素子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法、液晶表示素子及び液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、視野角が広く、応答速度の速い液晶表示素子を製造するための新規な方法、この方法によって製造された液晶表示素子及びこの方法に好適に用いられる液晶配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子のうち、垂直配向モードとして従来知られているMVA(Multi−Domain Vertical Alignment)型パネルは、液晶パネル中に突起物を形成し、これにより液晶分子の倒れ込み方向を規制することにより、視野角の拡大を図っている。しかし、この方式によると、突起物に由来する透過率及びコントラストの不足が不可避であり、さらに液晶分子の応答速度が遅いという問題がある。
近年、上述のMVA型パネルの問題点を解決すべく、PSA(Polymer Sustained Alignment)モードが提案されている。PSAモードは、パターン状導電膜付き基板及びパターンを有さない導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙、あるいは2枚のパターン状導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙に重合性の化合物を含有する液晶組成物を狭持し、導電膜間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して重合性化合物を重合し、これによりプレチルト角特性を発現することで液晶の配向方向を制御しようとする技術である。この技術によると、導電膜を特定の構成とすることにより視野角の拡大及び液晶分子応答の高速化を図ることができ、MVA型パネルにおいて不可避であった透過率及びコントラストの不足の問題も解消される。しかしながら、上記重合性化合物の重合のために、例えば100,000J/mといった多量の紫外線の照射が必要であり、そのため液晶分子が分解する不具合が生ずるほか、紫外線照射によっても重合しなかった未反応化合物が液晶層中に残存することとなり、これらが相俟って表示ムラが発生し、電圧保持特性に悪影響を及ぼし、あるいはパネルの長期信頼性に問題が生じることが明らかとなっている。
【0003】
これらに対し非特許文献1には、反応性メソゲンを含有するポリイミド系液晶配向剤から形成された液晶配向膜を用いる方法が開示されている。非特許文献1によると、かかる方法により形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、液晶分子の応答が高速であるという。しかしながら非特許文献1には、いかなる反応性メソゲンをいかなる量で使用すべきかについての指針は全く記載されておらず、また必要な紫外線照射量も依然として多く、表示特性、特に電圧保持特性に関する懸念は払拭されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y.−J.Lee et.al. SID 09 DIGEST,p.666(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性及び長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(1)[A]同一又は異なる重合体中に、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体成分(以下、「[A]重合体成分」と称することがある)を含有する液晶配向剤(以下、「液晶配向剤(A)」と称することがある)を用い、導電膜を有する一対の基板のこの導電膜上に塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜を形成した一対の基板を、それらの一対の塗膜が対向するよう、かつ液晶層を介して配置することで、液晶セルを形成する工程、及び
(3)上記一対の基板の導電膜間に電圧を印加した状態で上記液晶セルに光照射する工程
を有する液晶表示素子の製造方法である。
【化1】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【0007】
本発明の液晶表示素子の製造方法によれば、(1)工程において、上記特定構造を有する[A]重合体成分を含有する液晶配向剤を用いて塗膜を形成すると共に、(3)工程において、一対の基板の導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射することで、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性及び長期信頼性に優れる液晶表示素子を製造することができる。
【0008】
[A]重合体成分は、[A−1]重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び上記式(A1)で表される基を有する重合体(以下、「[A−1]重合体」と称することがある)を含むことが好ましい。
【0009】
当該液晶表示素子の製造方法によれば、[A]重合体成分が[A−1]重合体を含むことで、得られる液晶表示素子の視野角、液晶分子の応答速度、表示特性及び長期信頼性を向上させることができる。
【0010】
[A]重合体成分は、[A−2]重合性炭素−炭素二重結合を含む基を有する重合体(以下、「[A−2]重合体」と称することがある)と、[A−3]上記式(A1)で表される基を有する重合体(以下、「[A−3]重合体」と称することがある)とを含むことも好ましい。
【0011】
当該液晶表示素子の製造方法によれば、[A]重合体成分が[A−2]重合体と[A−3]重合体とを含むことで、より簡便に液晶表示素子を製造することができる。
【0012】
上記式(A1)におけるRは、下記式(A2)で表されることが好ましい。
【化2】

(式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基又はアルコキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0013】
当該液晶表示素子の製造方法によれば、液晶配向剤(A)の[A]重合体成分におけるRが上記特定構造を有することで、得られる液晶表示素子の視野角、液晶分子の応答速度、表示特性及び長期信頼性をより向上させることができる。
【0014】
[A]重合体成分は、ポリオルガノシロキサン構造を有することが好ましい。当該液晶表示素子の製造方法によれば、液晶配向剤(A)がポリオルガノシロキサン構造を有することで、得られる液晶表示素子の耐光性を向上させることができる。
【0015】
[A]重合体成分は、ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体をさらに含むことが好ましい。
当該液晶表示素子の製造方法によれば、[A]重合体成分として、上記特定の重合体をさらに含むことで、得られる液晶配向剤(A)の溶液特性を向上することができ、また、得られる液晶表示素子の電気特性を改善することができる。
【0016】
本発明には、当該液晶表示素子の製造方法によって製造された液晶表示素子も好適に含まれる。
【0017】
本発明の液晶配向剤は、
[A]同一又は異なる重合体中に、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体成分を含有する液晶配向剤である。
【化3】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【0018】
当該液晶配向剤は、上記特定構造を有する重合体成分を含有するので、上述の液晶表示素子の製造方法において好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によって製造された液晶表示素子は、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、十分な透過率及びコントラストを示し、表示特定に優れる上、長時間連続駆動しても表示特性が損なわれることがない。
また、本発明の製造方法によると、照射に必要な光の量が少なくてすむため、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
従って、本発明の製造方法により製造された液晶表示素子は、性能面及びコスト面の双方において従来知られている液晶表示素子に勝り、2次元表示及び3次元表示の液晶テレビジョンを含む種々の用途に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例及び比較例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【図2】実施例及び比較例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子の製造方法は、
(1)[A]同一又は異なる重合体中に、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体成分を含有する液晶配向剤を用い、導電膜を有する一対の基板のこの導電膜上に塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜を形成した一対の基板を、それらの一対の塗膜が対向するよう、かつ液晶層を介して配置することで、液晶セルを形成する工程、及び
(3)上記一対の基板の導電膜間に電圧を印加した状態で上記液晶セルに光照射する工程
を有する。
そして上記のようにして得られた光照射後の液晶セルの両面に偏光板を配置することにより、液晶表示素子を製造することができる。以下、各工程について説明する。
【0022】
[(1)工程]
本工程では[A]重合体成分を含有する液晶配向剤(A)を用い、導電膜を有する一対の基板のこの導電膜上にを塗膜を形成する。この液晶配向剤(A)については後述する。
【0023】
TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各透明導電膜形成面上に、液晶配向剤(A)を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤(A)の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0024】
液晶配向剤(A)の塗布後、塗布した液晶配向剤(A)の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30℃〜200℃であり、より好ましくは40℃〜150℃であり、特に好ましくは40℃〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25分〜10分であり、より好ましくは0.5分〜5分である。その後、溶媒を完全に除去し、さらに後述するポリオルガノシロキサン化合物(A)の製造において製造法1を採用した場合には残存するジカルボン酸を除去することを目的として、焼成(ポストベーク)工程を実施することが好ましい。この焼成(ポストベーク)温度としては、好ましくは80℃〜300℃であり、より好ましくは120℃〜250℃である。ポストベーク時間としては好ましくは5分〜200分であり、より好ましくは10分〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001μm〜1μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.5μmである。
【0025】
一方、IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、液晶配向剤(A)をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理、液晶配向剤(A)の塗布方法及び塗布後の加熱方法並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合と同様である。
【0026】
形成後の塗膜は、これをそのまま次の(2)工程に供することができるが、任意的にラビング処理を施してもよい。
ラビング処理は、上記のようにして形成された塗膜面に対し、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
【0027】
さらに、上記のようにして形成された液晶配向膜に対し、例えば、特開平6−222366号公報及び特開平6−281937号公報に示されているように、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理、特開平5−107544号公報に示されているような液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成したうえで先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善することなどが可能である。
【0028】
[(2)工程]
本工程では、上記塗膜を形成した一対の基板を、それらの一対の塗膜が対向するよう、かつ液晶層を介して配置することで、液晶セルを形成する。
【0029】
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。ここで、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置する。
【0030】
液晶セルを製造する方法としてはは、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
【0031】
上記シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0032】
上記液晶としては、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等を用いることができる。液晶の層の厚さは、1μm〜5μmとすることが好ましい。
【0033】
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0034】
[(3)工程]
本工程では、上記一対の基板の導電膜間に電圧を印加した状態で上記液晶セルに光照射する。
【0035】
照射する光としては、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300nm〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。上記の好ましい波長領域の紫外線は、上記光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000J/m以上100,000J/m未満であり、より好ましくは1,000J/m〜50,000J/mである。従来知られているPSAモードの液晶表示素子の製造においては、100,000J/m程度の光を照射することが必要であったが、本発明の方法においては、光照射量を50,000J/m以下、さらに10,000J/m以下とした場合であっても所望の液晶表示素子を得ることができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資するほか、強い光の照射に起因する電気特性の低下、長期信頼性の低下を回避することができる。
【0036】
そして、上記処理を施した後の液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。この偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0037】
<液晶配向剤>
本発明の方法において用いられる液晶配向剤(A)は、
[A]同一又は異なる重合体中に、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び上記式(A1)で表される基を有する重合体成分を含有する。また、この液晶配向剤(A)は、[A]重合体成分として、ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体(以下、「重合体(B)」と称することがある)等の後述する「他の重合体」を含有できる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0038】
<[A]重合体成分>
[A]重合体成分は、同一又は異なる重合体中に、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び上記式(A1)で表される基を有する。
【0039】
[重合性炭素−炭素二重結合を含む基]
重合性炭素−炭素二重結合を含む基としては、例えば下記式(A)で表される基等が挙げられる。
【0040】
【化4】

【0041】
上記式(A)中、Rは水素原子又はメチル基である。
及びXIIは、それぞれ独立して、1,4−フェニレン基、メチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基又は1,3−プロピレン基である。
A、B、C及びDは、それぞれ独立して、0又は1である。
但し、Cが0かつDが1の場合、XIIは1,4−フェニレン基である。
また、Bが0の場合、Dは0である。
【0042】
上記式(A)で表される基の具体例としては、例えばビニル基、アリル基、p−スチリル基、(メタ)アクリロキシメチル基、2−((メタ)アクリロキシ)エチル基、3−((メタ)アクリロキシ)プロピル基、4−((メタ)アクリロキシ)ブチル基、5−((メタ)アクリロキシ)ペンチル基、6−((メタ)アクリロキシ)ヘキシル基、7−((メタ)アクリロキシ)ヘプチル基、8−((メタ)アクリロキシ)オクチル基、9−((メタ)アクリロキシ)ノニル基、10−((メタ)アクリロキシ)デシル基、4−(2−((メタ)アクリロキシ)エチル)フェニル基、2−((4−(メタ)アクリロキシ)フェニル)エチル基、4−((メタ)アクリロキシメチル)フェニル基、4−(メタ)アクリロキシフェニルメチル基、4−(3−((メタ)アクリロキシ)プロピル)フェニル基、3−(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロピル基、4−((メタ)アクリロキシメトキシ)フェニル基、4−(2−((メタ)アクリロキシ)エトキシ)フェニル基、4−(3−((メタ)アクリロキシ)プロポキシ)フェニル基、(メタ)アクリロキシメトキシメチル基、2−((メタ)アクリロキシメトキシ)エチル基、2−(2−((メタ)アクリロキシ)エトキシ)エチル基、2−(2−(2−((メタ)アクリロキシ)エトキシ)エトキシ)エチル基、3−(3−((メタ)アクリロキシ)プロポキシ)プロピル基、アクリロキシメチル基等が挙げられる。これらの中でもビニル基、アリル基、p−スチリル基、(メタ)アクリロキシメチル基、2−((メタ)アクリロキシ)エチル基及び3−((メタ)アクリロキシ)プロピル基が好ましい。
【0043】
上記重合性炭素−炭素二重結合を含む基としては、好ましくは上記式(A)で表される基、より好ましくは上記例示した具体的な基のうちから選択される1種以上の基が好ましい。
【0044】
[上記式(A1)で表される基]
上記式(A1)のRはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0045】
上記Rで表される炭素数2〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基等が挙げられる。これらのうち、液晶配向を安定に発現させるためには、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基等の炭素数が5以上20以下のアルキレン基が好ましい。
【0046】
は、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rとしては、例えば、エテンジイル基、エチンジイル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、フルオロメタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基等が挙げられる。なお、Rは上記結合のいずれかを含んでいればよいが、各結合を組み合わせて含んでいてもよい。また、Rがフェニレン基又はシクロヘキシレン基である場合は、形成される配向膜の配向性や溶媒への溶解性の観点から、Rはメチレン基又は炭素数2〜30のアルキレン基を含んでいることが好ましい。なお、aは0又は1である。
【0047】
は少なくとも2つの単環構造を有する基であり、好ましくは、正又は負の誘電異方性を示す基である。単環構造とは、一の環構造が他の環構造から独立して存在しており、一の環構造の結合が他の環構造と共有されている、いわゆる縮合環構造を有しない構造である。また、単環構造としては、脂環式構造、芳香環式構造、複素環式構造のいずれでもよく、これらを組み合わせて有していてもよい。
【0048】
は少なくとも2つ以上の単環構造を有する基である限り特に限定されないが、Rは下記式(A2)で表される基が好ましい。
【0049】
【化5】

【0050】
上記式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0051】
上記式(A2)で表される構造を導入することにより、得られる液晶表示素子の電気光学応答性をさらに高速化させることができる。式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。2価の複素環基としては、例えばピリジニレン基、ピリダジニレン基、ピリミジニレン基等が挙げられる。
【0052】
上記式(A2)において、Rは、置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む、RとRとを連結する連結基であり、[A]重合体成分に必要とされる配向性や誘導異方性に応じて適宜選択することができる。Rとしては、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、エテンジイル基、エチンジイル基、エーテル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、エタンジイルオキシ基、フルオロメタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、エタンジイル基、エチンジイル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基が好ましい。なお、bは0又は1であり、側鎖構造の設計においてRは含まれていても含まれていなくてもよい。
【0053】
上記式(A2)において、Rは、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。cは1〜9の整数である。Rとしては、例えばcが1の場合、上記Rとして例示した2価の基と同じ基等が挙げられる。
【0054】
上記式(A2)中、Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられ、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等の炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0055】
上記式(A2)において、Rが複数の置換基(R)を有する場合は、それぞれ異なるものを組み合わせて用いても良い。Rが複数の置換基を有する場合の組み合わせとしては、所望の誘電異方性を安定して発現させるために、フッ素原子とシアノ基との組み合わせ、フッ素原子とアルキル基との組み合わせ、シアノ基とアルキル基との組み合わせが好ましい。なお、cは1〜9の整数である。
【0056】
<重合体[A−1]、[A−2]、[A−3]>
[A]重合体成分としては、
[A−1]重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び上記式(A1)で表される基を有する重合体を含むことが好ましい。
また、[A]重合体成分としては、[A−2]重合性炭素−炭素二重結合を含む基を有する重合体と、[A−3]上記式(A1)で表される基を有する重合体とを含むことも好ましい。
【0057】
これら重合体は、上記特定基を有するならば公知の重合体主鎖を適宜選択できるが、ポリオルガノシロキサン、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン誘導体、ポリアミック酸エステルを主鎖構造とすることが、電気特性の面から好ましく、耐光性の面からポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン化合物(A)」と称することがある)とすることが好ましい。
【0058】
ポリオルガノシロキサン化合物(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましく、さらに1,000〜50,000であることが好ましい。
このようなポリオルガノシロキサン化合物(A)は、上記のような特徴を有するものである限り、いかなる方法によって製造されたものであってもよい。
【0059】
ポリオルガノシロキサン化合物(A)は、例えば重合性炭素−炭素二重結合を含む基及びアルコキシ基を有するシラン化合物(以下、「シラン化合物(a1)」と称することがある)、又はシラン化合物(a1)と他のアルコキシシラン化合物(以下、「シラン化合物(a2)」と称することがある)との混合物を、
ジカルボン酸及びアルコールの存在下に反応させる方法(製造法1)、又は
加水分解・縮合する方法(製造法2)
によって製造することができる。
【0060】
上記製造法1又は2において、シラン化合物(a1)の他にシラン化合物(a2)を使用し、かつ、シラン化合物(a2)の一部として上記式(A1)で表される基及びアルコキシ基を有するシラン化合物(以下、「シラン化合物(a2−1)」とも称することがある)を使用することにより、重合性炭素−炭素二重結合を含む基の他に上記式(A1)で表される構造を有する基をも有するポリオルガノシロキサン化合物(A)を得ることができる。
【0061】
ポリオルガノシロキサン化合物(A)は、さらに、
上記製造法1又は2において、シラン化合物(a1)の他にシラン化合物(a2)を使用し、かつ、シラン化合物(a2)の少なくとも一部としてエポキシ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物(以下、「シラン化合物(a2−2)」と称することがある)を使用し、先ず重合性炭素−炭素二重結合を含む基及びエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「前駆ポリオルガノシロキサン(A’)」ともいう)を合成し、次いでこれと上記式(A1)で表される基及びカルボキシル基を有する化合物(以下、「特定カルボン酸2」と称することがある)を含むカルボン酸と反応させる方法(製造法3);又は製造法1又は2において、原料シラン化合物としてシラン化合物(a2−1)を含むシラン化合物(a2)を使用して先ずエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「前駆ポリオルガノシロキサン(A”)」と称することがある)を合成し、次いでこれと特定カルボン酸2及び/又は重合性炭素−炭素二重結合を含む基及びカルボキシル基を有する化合物(以下、「特定カルボン酸1」と称することがある)を含むカルボン酸と反応させる方法(製造法4)によっても製造することができる。
上記いずれの場合であっても、シラン化合物(a2)として、シラン化合物(a2−1)及びシラン化合物(a2−2)以外のシラン化合物(a2)(以下、「シラン化合物(a2−3)」ともいう。)を併用してもよい。
【0062】
上記シラン化合物(a1)としては、例えば下記式(a−1)で表される化合物等が挙げられる。
【0063】
【化6】

【0064】
上記式(a−1)中、R、X、XII、A、B、C及びDは、上記式(A)と同義である。Rは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基である。Eは1〜3の整数である。
【0065】
上記式(a−1)におけるRで表される炭素数1〜12のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、その具体例として例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などを挙げることができ、好ましくはメチル基、エチル基又はn−プロピル基であり、特に好ましくはエチル基である。Rで表される炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基などを挙げることができる。
上記式(a1)におけるEは、1又は2であることが好ましく、特に好ましくは1である。
【0066】
シラン化合物(a1)の具体例としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリイソブトキシシラン、ビニルトリ−tert−ブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシラン、アリルトリイソブトキシシラン、アリルトリ−tert−ブトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリプロポキシシラン、p−スチリルトリイソプロポキシシラン、p−スチリルトリ−n−ブトキシシラン、p−スチリルトリイソブトキシシラン、p−スチリルトリ−tert−ブトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリ−n−プロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリ−iso−プロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリ−n−ブトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリ−iso−プロポキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−iso−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、
4−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリ−n−プロポキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリ−iso−プロポキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリ−n−ブトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルトリ−n−プロポキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルトリ−iso−プロポキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルトリ−n−ブトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリ−n−プロポキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリ−iso−プロポキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリ−n−ブトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。より好ましくはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン及び3−(メタ)アクリロキシプロミルトリメトキシシランよりなる群から選択される1種以上である。
【0067】
上記シラン化合物(a2−1)は、上記式(A1)で表される基及びアルコキシ基を有するシラン化合物であり、さらに下記式(a2−1a)で表されるシラン化合物も併用することができる。
(R(RSi(OR4−f−g (a2−1a)
上記式(a2−1a)中、Rは炭素数4〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフッ素化アルキル基、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基、炭素数2〜24のアルコキシ基を有するアルコキシフェニル基若しくはビシクロヘキサン骨格を有する炭素数12〜30の炭化水素基である。
は炭素数1〜3のアルキル基である。
は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基である。
fは1〜3の整数である。gは0〜2の整数である。但しf+g≦3である。
【0068】
上記式(a2−1a)中のRについては、ポリオルガノシロキサン化合物(A)が任意的に有することのできる上記式(A1)で表される基について上記したところと同様である。Rとしてはメチル基が好ましい。Rについては、上記式(a−1)中のRについて上記したところと同様である。fは1であることが好ましく、gは0又は1であることが好ましい。
【0069】
上記式(a2−1a)で表されるシラン化合物としては、
炭素数4〜30のアルキル基を有するシラン化合物として、例えば、
n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシシラン、n−ブチルトリ−n−ペントキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリフェノキシシランヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0070】
また、炭素数1〜30のフッ素化アルキル基を有するシラン化合物として、例えば、
3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−プロピル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基を有するシラン化合物として、例えば、
3−コレスタニルトリメトキシシラン、3−コレスタニルトリエトキシシラン、3−コレスタニルトリ−n−プロポキシシラン、3−コレスタニルトリ−iso−プロポキシシラン、3−コレスタニルトリ−n−ブトキシシラン、3−コレスタニルトリ−sec−ブトキシシラン、3−コレステニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0072】
炭素数2〜24のアルコキシ基を有するアルコキシフェニル基を有するシラン化合物として、例えば、
4−ペントキシフェニルトリメトキシシラン、4−ペントキシフェニルトリエトキシシラン、4−へキシロキシフェニルトリメトキシシラン、4−オクチロキシフェニルトリメトキシシラン、4−ドデシルオキシフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
上記シラン化合物(a2−2)は、エポキシ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物であり、好ましくは下記式(a2−2)で表される化合物である。
(R(RSi(OR4−h−i (a2−2)
上記式(a2−2)中、Rはエポキシ基を有する1価の基である。
は炭素数1〜3のアルキル基である。
は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基である。hは1〜3の整数である。iは0〜2の整数である。但し、h+i≦3である。
で表される化合物である。
【0074】
式(a2−2)中のRとしては、例えば3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基などを挙げることができる。Rとしては、メチル基が好ましい。Rについては、上記式(a−1)中のRについて上記したところと同様である。hは1であることが好ましく、iは0又は1であることが好ましい。
【0075】
シラン化合物(a2−2)の具体例としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
【0076】
上記シラン化合物(a2−3)は、シラン化合物(a2−1)及び(a2−2)以外のシラン化合物(a2)であり、例えば下記式(a2−3)で表されるシラン化合物等が挙げられる。
(RSi(OR4−j (a2−3)
上記式(a2−3)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基である。
は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基である。jは0〜3の整数である。
上記式(a2−3)中のRについては、上記式(a−1)中のRについて上記したところと同様である。
【0077】
シラン化合物(a2−3)の具体例としては、
jが0である化合物として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−sec−プポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等が挙げられる。
【0078】
jが1である化合物として、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシシラン、メチルトリ−n−ペントキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリ−p−メチルフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0079】
jが2である化合物として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0080】
jが3である化合物として、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−iso−プロピルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン等が挙げられる。これらの中で、より好ましくは上記式(a2−3)においてjが0又は1である化合物であり、さらにエチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましく、特に上記式(a2−3)においてjが0である化合物が好ましく、就中テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。
【0081】
ポリオルガノシロキサン化合物(A)を製造法1又は2によって製造する場合、その原料として使用されるシラン化合物は、上記シラン化合物(a1)を、シラン化合物の全体に対して、1モル%以上含むものであることが好ましく、1モル%〜60モル%含むものであることがより好ましく、2モル%〜50モル%含むものであることがさらに好ましく、特に2モル%〜30モル%含むものであることが好ましい。
製造法1又は2によって、重合性炭素−炭素二重結合を含む基のほかに上記式(A1)で表されるをも有するポリオルガノシロキサン化合物(A)を製造する場合には、シラン化合物(a1)とともに、シラン化合物(a2−1)が使用される。この場合のシラン化合物(a2−1)の使用割合は、シラン化合物の全体に対して、60モル%以下とすることが好ましく、5モル%〜50モル%とすることがより好ましく、特に10モル%〜40モル%とすることが好ましい。
製造法1又は2においては、上記のシラン化合物のほかにシラン化合物(a2−3)を併用することが好ましい。その使用割合は、シラン化合物の全体に対して、60モル%以下とすることが好ましく、0モル%〜40モル%とすることがより好ましく、特に0モル%〜20モル%とすることが好ましい。
【0082】
ポリオルガノシロキサン化合物(A)の製造を製造法3にて行う場合には、その原料として使用されるシラン化合物は、上記シラン化合物(a1)を、シラン化合物の全体に対して、1モル%以上含むものであることが好ましく、1モル%〜60モル%含むものであることがより好ましく、2モル%〜50モル%含むものであることがさらに好ましく、特に2モル%〜30モル%含むものであることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン化合物(A)の製造を製造法3にて行う場合には、上記シラン化合物(a1)のほかにシラン化合物(a2−2)が使用される。このシラン化合物(a2−2)の使用割合は、シラン化合物の全体に対して、10モル%以上とすることが好ましく、20モル%〜90モル%とすることがより好ましく、特に30モル%〜70モル%とすることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン化合物(A)の製造を製造法4にて行う場合には、その原料として使用されるシラン化合物は、上記シラン化合物(a2−2)を、シラン化合物の全体に対して、20モル%以上含むものであることが好ましく、40モル%含むものであることがより好ましい。
製造法3及び4においてはシラン化合物(a2−3)を使用しないことが好ましい。
ポリオルガノシロキサン化合物(A)、前駆ポリオルガノシロキサン(A’)又は前駆ポリオルガノシロキサン(A”)は、上記シラン化合物を、
ジカルボン酸及びアルコールの存在下に反応させる方法(製造法1)、又は
加水分解・縮合する方法(製造法2)
によって、それぞれ製造することができる。
以下、製造法1及び製造法2について順に説明する。
【0083】
[製造法1]
製造法1は、上記シラン化合物を、ジカルボン酸及びアルコールの存在下に反応させる方法である。
ここで使用されるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、炭素数2〜4のアルキレン基に2つのカルボキシル基が結合してなる化合物、ベンゼンジカルボン酸などであることができる。具体的には例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることが好ましい。特に好ましくはシュウ酸である。
ジカルボン酸の使用割合は、原料として使用するシラン化合物の有するアルコキシル基の合計1モルに対するカルボキシル基の量が、0.2モル〜2.0モルになる量とすることが好ましく、0.5モル〜1.5モルになる量とすることがより好ましい。
【0084】
上記アルコールとしては、1級アルコールを好適に使用することができる。その具体例としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。ここで使用されるアルコールとしては、炭素数1〜4の脂肪族1級アルコールであることが好ましく、タノール、エタノール、iso−プロパノール、n−プロパノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール及びtert−ブタノールよりなる群から選択される1種以上を使用することがより好ましく、特にメタノール及びエタノールよりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。
【0085】
製造法1におけるアルコールの使用割合は、反応溶液の全量に占めるシラン化合物及びジカルボン酸の割合が、3質量%〜80質量%となる割合とすることが好ましく、25質量%〜70質量%となる割合とすることがより好ましい。
反応温度は1℃〜100℃とすることが好ましく、より好ましくは15℃〜80℃である。反応時間は0.5時間〜24時間とすることが好ましく、より好ましくは1時間〜8時間である。
製造法1においては、上記アルコール以外に他の溶媒は使用しないことが好ましい。
【0086】
製造法1では、シラン化合物とジカルボン酸との反応によって生成した中間体にアルコールが作用することにより、シラン化合物(a1)の縮合体であるか、あるいはシラン化合物(a1)とシラン化合物(a2)との共縮合体であるポリオルガノシロキサンが生成するものと推察される。
【0087】
[製造法2]
製造法2は、上記シラン化合物を、加水分解・縮合する方法である。
この加水分解・縮合反応は、シラン化合物と水とを、好ましくは触媒の存在下に、好ましくは適当な有機溶媒中で、反応させることにより行うことができる。
ここで使用される水の割合は、原料として使用するシラン化合物の有するアルコキシル基の合計1モルに対する量として、0.5モル〜2.5モルとすることが好ましい。
上記触媒としては、酸、塩基、金属化合物などを挙げることができる。このような触媒の具体例としては、酸として例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、蟻酸、蓚酸、マレイン酸などを挙げることができる。
【0088】
塩基としては、無機塩基及び有機塩基のいずれをも使用することができ、無機塩基として例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを;
有機塩基として例えばトリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどを、それぞれ挙げることができる。
金属化合物として、例えばチタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。
【0089】
触媒の使用割合は、原料として使用するシラン化合物の合計100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、0.001質量部〜10質量部とすることがより好ましく、さらに0.001質量部〜1質量部とすることが好ましい。
上記有機溶媒としては、例えばアルコール、ケトン、アミド、エステル及びその他の非プロトン性化合物を挙げることができる。上記アルコールとしては、水酸基を1個有するアルコール、水酸基を複数個有するアルコール及び水酸基を複数個有するアルコールの部分エステルのいずれをも使用することができる。上記ケトンとしては、モノケトン及びβ−ジケトンを好ましく使用することができる。
【0090】
このような有機溶媒の具体例としては、水酸基を1個有するアルコールとして例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられ、
水酸基を複数個有するアルコールとして例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられ、
水酸基を複数個有するアルコールの部分エステルとして例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0091】
また、モノケトンとして例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョン等が挙げられ、
上記β−ジケトンとして例えばアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオン等が挙げられ、
アミドとして例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられる。
【0092】
エステルとして例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0093】
その他の非プロトン性溶媒として例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホロン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−Δ3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等が挙げられる。
有機溶媒の使用割合としては、反応溶液中の有機溶媒以外の成分の合計質量が反応溶液の全量に占める割合として、1質量%〜90質量%となる割合とすることが好ましく、10質量%〜70質量%となる割合とすることがより好ましい。
【0094】
製造法2においてポリオルガノシロキサンの製造に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中に又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的に又は連続的に添加することができる。
触媒は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、あるいは添加される水中に溶解又は分散させておいてもよい。
反応温度は1℃〜100℃とすることが好ましく、より好ましくは15℃〜80℃である。反応時間は0.5時間〜24時間とすることが好ましく、より好ましくは1時間〜8時間である。
ポリオルガノシロキサン化合物(A)の製造方法として製造法1又は2を採用する場合には、上記のようにしてポリオルガノシロキサン化合物(A)を得ることができる。
【0095】
ポリオルガノシロキサン化合物(A)の製造方法として製造法3を採用する場合には、上記のようにして得た前駆ポリオルガノシロキサン(A’)を、さらに特定カルボン酸2を含むカルボン酸と反応させることによりポリオルガノシロキサン化合物(A)を得ることができる。
【0096】
ポリオルガノシロキサン化合物(A)の製造方法として製造法4を採用する場合には、上記のようにして得た前駆ポリオルガノシロキサン(A”)を、さらに特定カルボン酸1及び/又は特定カルボン酸2を含むカルボン酸と反応させることにより、ポリオルガノシロキサン化合物(A)を得ることができる。
【0097】
[前駆ポリオルガノシロキサン(A’)とカルボン酸との反応]
製造法3において用いられる特定カルボン酸2は、上記式(A1)で表される基及びカルボキシル基を有する化合物である。
製造法3において用いられる特定カルボン酸2としては、下記式(A1−C)で表されるカルボキシル基を有する化合物を挙げることができる。
【0098】
【化7】

【0099】
上記式(A1−C)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。
【0100】
エポキシ基とカルボキシル基との間の反応性を利用することで、主鎖としてのポリオルガノシロキサンに側鎖として、上記式(A1−C)で表される誘電異方性を有する構造を容易に導入できる。
【0101】
特定カルボン酸2としては、例えば、下記式(D−1)〜(D−25)で表される化合物等が挙げられる。
【0102】
【化8】

【0103】
上記式(D−1)〜(D−25)中、Rは上記式(A1−C)と同義である。mは1〜30の整数である。
【0104】
上記式(A2)で表される基としては、例えば下記式(E−1)〜(E−123)で表される基が挙げられる。
【0105】
【化9】

【0106】
【化10】

【0107】
【化11】

【0108】
【化12】

【0109】
【化13】

【0110】
【化14】

【0111】
【化15】

【0112】
上記式(E−1)〜(E−123)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基である。又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。Xはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子である。
【0113】
上記Rで表される炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、(メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0114】
[特定カルボン酸の合成方法]
特定カルボン酸の合成手順は特に限定されず、従来公知の方法を組み合わせて行うことができる。代表的な合成手順としては、例えば(1)フェノール骨格を有する化合物と、高級脂肪酸エステルのアルキル鎖部分をハロゲンで置換した化合物とを塩基性条件下で反応させ、フェノール骨格の水酸基とハロゲンで置換された炭素との結合を形成し、その後エステルを還元して特定カルボン酸とする方法、(2)フェノール骨格を有する化合物とエチレンカーボネートとを反応させて末端アルコール化合物を生成させ、その水酸基とハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリドとを反応させて活性化し、その後活性化部分に水酸基を含む安息香酸メチルを反応させて、スルホニル部分の脱離とともに末端アルコール化合物の水酸基と置換基として水酸基を含む安息香酸メチルの水酸基との結合を生成させ、次いでエステルを還元して特定カルボン酸とする方法等が例示される。但し、特定カルボン酸の合成手順はこれらに限定されるものではない。
【0115】
製造法3においては、カルボン酸として、特定カルボン酸2のみを用いてもよく、あるいは、本発明の効果を損なわない範囲で特定カルボン酸の一部を下記式(4)で表される化合物で置き換えて使用してもよい。この場合、ポリオルガノシロキサン化合物(A)の合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸2及び下記式(4)で表される化合物の混合物とを反応させることにより行われる。
【0116】
【化16】

【0117】
上記式(4)中、
は炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基である。但し、上記アルキル基及びアルコキシ基の水素原子の一部又は全部がシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基等の置換基で置換されていてもよい。
は単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。
は単結合、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、シクロへキシレン基、ビシクロへキシレン基又は下記式(L−1)若しくは(L−2)で表される基である。
Zはポリオルガノシロキサン化合物(A)中のエポキシ基と反応して結合基を形成しうる1価の有機基である。
但し、Lが単結合であるときにはLは単結合である。
【0118】
【化17】

【0119】
上記式(L−1)及び(L−2)において「*」を付した結合手がそれぞれZと結合する。
【0120】
Zはカルボキシル基であることが好ましい。
【0121】
上記式(4)においてAが示す炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、5−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1−メチルヘキシル基、4,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、6−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノナニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基等が挙げられる。
【0122】
炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノナニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0123】
ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基としては、例えば下記式(H−1)〜(H−3)で表される基が挙げられる。
【0124】
【化18】

【0125】
上記式(4)におけるAとしては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基及び上記式(H−1)又は(H−3)から選ばれる基が好ましい。
【0126】
上記式(4)で表される化合物としては、下記式(4−1)〜(4〜6)で表される化合物が好ましい。
【0127】
【化19】

【0128】
上記式(4−1)〜(4−6)中、uは1〜5の整数である。vは1〜18の整数である。wは1〜20の整数である。kは1〜5の整数である。pは0又は1である。qは0〜18の整数である。rは0〜18の整数である。s及びtはそれぞれ独立して0〜2の整数である。
【0129】
これらの化合物の中でも、下記式(5−1)〜(5−7)で表される化合物がより好ましい。
【0130】
【化20】

【0131】
上記式(4)で表される化合物は、特定カルボン酸とともにエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと反応し、得られる液晶配向膜にプレチルト角発現性を付与する部位となる化合物である。本明細書においては上記式(4)で表される化合物を、以下、「他のプレチルト角発現性化合物」と称することがある。
【0132】
本発明において、特定カルボン酸とともに他のプレチルト角発現性化合物を使用する場合、特定カルボン酸及び他のプレチルト角発現性化合物の合計の使用割合は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001モル〜1.5モル、より好ましくは0.01モル〜1モル、さらに好ましくは0.05モル〜0.9モルである。この場合、他のプレチルト角発現性化合物は、特定カルボン酸との合計に対して好ましくは75モル%以下、より好ましくは50モル%以下の範囲で使用される。他のプレチルト角発現性化合物の使用割合が75モル%を超えると、液晶の高速応答性に悪影響が出る場合がある。
【0133】
前駆ポリオルガノシロキサン(A’)とカルボン酸との反応は、好ましくは適当な触媒
及び適当な有機溶媒の存在下で行われる。
前駆ポリオルガノシロキサン(A’)とカルボン酸との反応において使用される触媒としては、例えば有機塩基を好適に使用することができるほか、エポキシ化合物と酸無水物との反応を促進するいわゆる硬化促進剤を本反応における触媒として使用することができる。上記有機塩基としては例えば1級又は2級の有機アミン、3級有機アミン、4級有機アミン塩等が挙げられる。
上記硬化促進剤としては例えば3級アミン(ただし有機塩基としての3級有機アミンは除く)、イミダゾール誘導体、有機リン化合物、4級ホスフォニウム塩、ジアザビシクロアルケン、有機金属化合物、ハロゲン化4級アンモニウム、金属ハロゲン化合物、潜在性硬化促進剤等が挙げられる。上記潜在性硬化促進剤等としては、例えば高融点分散型潜在性硬化促進剤(例えばアミン付加型促進剤など)、マイクロカプセル型潜在性硬化促進剤、アミン塩型潜在性硬化剤促進剤、高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0134】
かかる触媒の具体例としては、上記1級又は2級の有機アミンとして例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等が挙げられる。
上記3級有機アミンとして例えばトリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
上記4級有機アミン塩として例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
上記3級アミン(ただし有機塩基としての3級有機アミンは除く)として例えばベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
上記イミダゾール誘導体として例えば2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0135】
また、上記有機リン化合物として例えばジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。
上記4級ホスフォニウム塩として例えばベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムo,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートなどを;
上記ジアザビシクロアルケンとして例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、その有機酸塩等が挙げられる。
上記有機金属化合物として例えばオクチル酸亜鉛、アクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等が挙げられる。
上記ハロゲン化4級アンモニウムとして例えばテトラエチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
上記金属ハロゲン化合物として例えば三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二スズ等が挙げられる。
上記高融点分散型潜在性硬化促進剤として例えばジシアンジアミド又はアミンとエポキシ樹脂との付加物等が挙げられる。
上記マイクロカプセル型潜在性硬化促進剤として例えば上記イミダゾール誘導体、有機リン化合物、4級ホスフォニウム塩などの硬化促進剤の表面をポリマーで被覆した潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
上記高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤として例えばルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等が挙げられる。
これらのうち、4級有機アミン塩又はハロゲン化4級アンモニウムを使用することが好ましい。
触媒の使用割合は、前駆ポリオルガノシロキサン(A’)の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜100質量部であり、より好ましくは0.1質量部〜20質量部である。
【0136】
前駆ポリオルガノシロキサン(A’)とカルボン酸との反応において使用される有機溶媒としては、例えばケトン、エーテル、エステル、アミド、アルコールなどを挙げることができる。かかる有機溶媒の具体例としては、上記ケトンとして例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、
上記エーテルとして例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、
上記エステルとして例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等が挙げられ、
上記アミドとして例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられ、
上記アミドとして例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられ、
上記アルコールとして例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等が挙げられる。
有機溶媒の使用割合は、反応溶液中の有機溶媒以外の成分の合計質量が反応溶液の全量に占める割合として、0.1質量%〜50質量%となる割合とすることが好ましく、5質量%〜50質量%となる割合とすることがより好ましい。
前駆ポリオルガノシロキサン(A’)とカルボン酸との反応は、好ましくは0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃の温度において、好ましくは0.1時間〜50時間、より好ましくは0.5時間〜20時間行われる。
【0137】
[前駆ポリオルガノシロキサン(A”)とカルボン酸との反応]
製造法(4)において用いられる特定カルボン酸1は、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及びカルボキシル基を有する化合物である。特定カルボン酸1の有する重合性炭素−炭素二重結合を含む基については、ポリオルガノシロキサン化合物(A)が有する重合性炭素−炭素二重結合を含む基について上記に説明したところと同様である。
製造法4において用いられる特定カルボン酸1としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−エチルアクリル酸、α−n−プロピルアクリル酸、α−n−ブチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
製造法4においては、カルボン酸として、特定カルボン酸1のみを用いてもよく、あるいは特定カルボン酸1とともに、上記特定カルボン酸2のみを用いてもよく、あるいはそれらを併用してもよい。
【0138】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で特定カルボン酸の一部を上記式(4)で表される化合物で置き換えて使用してもよい。この場合、ポリオルガノシロキサン化合物(A)の合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸及び上記式(4)で表される化合物の混合物とを反応させることにより行われる。上記式(4)で表される化合物は製造法3で示したものと同様である。
【0139】
本発明において、特定カルボン酸とともに他のプレチルト角発現性化合物を使用する場合、特定カルボン酸及び他のプレチルト角発現性化合物の合計の使用割合は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001モル〜1.5モル、より好ましくは0.01モル〜1モル、さらに好ましくは0.05モル〜0.9モルである。この場合、他のプレチルト角発現性化合物は、特定カルボン酸との合計に対して好ましくは75モル%以下、より好ましくは50モル%以下の範囲で使用される。他のプレチルト角発現性化合物の使用割合が75モル%を超えると、液晶の高速応答性に悪影響が出る場合がある。
【0140】
製造法4における各カルボン酸の好適な使用割合は、それぞれ以下のとおりである。
カルボン酸の合計の使用割合としては、前駆ポリオルガノシロキサン(A”)の有するエポキシ基の1モルに対して、好ましくは0.1モル〜0.9モル、より好ましくは0.2モル〜0.7モル、さらに好ましくは0.3モル〜0.5モルである。
特定カルボン酸1の使用割合としては、全カルボン酸に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
特定カルボン酸2の使用割合としては、全カルボン酸に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは1モル%〜30モル%、さらに好ましくは5モル%〜10モル%である。
製造法4における前駆ポリオルガノシロキサン(A”)とカルボン酸との反応は、前駆ポリオルガノシロキサン(A”)と上記カルボン酸とを使用するほかは、製造法3における前駆ポリオルガノシロキサン(A’)とカルボン酸との反応として上記したところと同様にして実施することができる。
以上のようにして本発明におけるポリオルガノシロキサン化合物(A)を得ることができる。
【0141】
液晶配向剤(A)は、[A]重合体成分として、上記ポリオルガノシロキサン化合物(A)等の他に、ポリオルガノシロキサン化合物(A)以外の重合体(以下、「他の重合体」と称することがある)を含有してもよい。
【0142】
[他の重合体]
他の重合体は、液晶配向剤(A)の溶液特性及び得られる液晶表示素子の電気特性をより改善するために使用できる。他の重合体としては、例えば
ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(重合体(B));
下記式(a1)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「他のポリオルガノシロキサン」と称することがある);
ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0143】
【化21】

上記式(a1)中、Xは水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0144】
[重合体(B)]
重合体(B)はポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。以下、ポリアミック酸、ポリイミドについて詳述する。
【0145】
[ポリアミック酸]
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
【0146】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0147】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0148】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられる。
【0149】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられるほか特願2010−97188号に記載のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0150】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が特に好ましい。
【0151】
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の使用量としては、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のみからなることが、特に好ましい。
【0152】
ジアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0153】
脂肪族ジアミンとしては、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0154】
脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0155】
ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられるほか、特願2009−97188号に記載のジアミンが挙げられる。
【0156】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン及び下記式(A−1)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【0157】
【化22】

【0158】
上記式(A−1)中、Xはメチレン基、炭素数2若しくは3のアルキレン基、−O−、−COO−又は−OCO−である。rは0又は1である。sは0〜2の整数である。tは1〜20の整数である。
【0159】
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合としては、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0160】
合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜24時間が好ましく、2時間〜12時間がより好ましい。
【0161】
有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が挙げられる。
【0162】
有機溶媒の使用量(a)としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量(b)と有機溶媒の使用量(a)の合計(a+b)に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。
【0163】
反応後に得られるポリアミック酸溶液は、そのまま液晶配向剤(A)の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤(A)の調製に供してもよく、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤(A)の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリアミック酸の精製方法としては、単離したポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回若しくは複数回行う方法が挙げられる。
【0164】
[ポリイミド]
ポリイミドは、上記ポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環してイミド化することにより製造できる。ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有しているアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存している部分イミド化物であってもよい。
【0165】
ポリイミドの合成方法としては、例えば(i)ポリアミック酸を加熱する方法(以下、「方法(i)」と称することがある)、(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法(以下、「方法(ii)」と称することがある)等のポリアミック酸の脱水閉環反応による方法が挙げられる。
【0166】
方法(i)における反応温度としては、50℃〜200℃が好ましく、60℃〜170℃がより好ましい。反応温度が50℃未満では、脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間としては、0.5時間〜48時間が好ましく、2時間〜20時間がより好ましい。
【0167】
方法(i)において得られるポリイミドはそのまま液晶配向剤(A)の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤(A)の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で又は得られるポリイミドを精製した上で液晶配向剤(A)の調製に供してもよい。
【0168】
方法(ii)における脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
【0169】
脱水剤の使用量としては、所望のイミド化率により適宜選択されるが、ポリアミック酸のアミック酸構造1モルに対して0.01モル〜20モルが好ましい。
【0170】
方法(ii)における脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0171】
脱水閉環触媒の使用量としては、含有する脱水剤1モルに対して0.01モル〜10モルが好ましい。なお、イミド化率は上記脱水剤及び脱水閉環剤の含有量が多いほど高くできる。
【0172】
方法(ii)に用いられる有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0173】
方法(ii)における反応温度としては、0℃〜180℃が好ましく、10℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜20時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。反応条件を上記範囲とすることで、脱水閉環反応が十分に進行し、また、得られるポリイミドの分子量を適切なものとできる。
【0174】
方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液をそのまま液晶配向剤(A)の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤(A)の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤(A)の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で液晶配向剤(A)の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除く方法としては、例えば溶媒置換の方法等が挙げられる。ポリイミドの単離方法及び精製方法としては、例えばポリアミック酸の単離方法及び精製方法として例示したものと同様の方法等が挙げられる。
【0175】
[他のポリオルガノシロキサン]
液晶配向剤(A)は、ポリオルガノシロキサン化合物(A)以外にも他のポリオルガノシロキサンを含んでいてもよい。他のポリオルガノシロキサンは、上記式(5)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、液晶配向剤(A)が他のポリオルガノシロキサンを含む場合、他のポリオルガノシロキサンの大部分は、ポリオルガノシロキサン化合物(A)とは独立して存在しているもの、その一部はポリオルガノシロキサン化合物(A)との縮合物として存在していても良い。
【0176】
上記式(5)中のX及びYにおいて、
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等;
炭素数1〜16のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等;
炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基等が挙げられる。
【0177】
他のポリオルガノシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物及びハロゲン化シラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」と称することがある)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成することができる。
【0178】
ここで使用できる原料シラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;テトラクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のメチルトリアルコキシシラン;;メチルトリフェノキシシラン等のメチルトリアリールオキシシラン;メチルトリクロロシラン;エチルトリメトキシシラン等のエチルトリアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のフェニルトリアルコキシシラン;フェニルトリクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジメチルジアルコキシシラン;ジメチルジクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリメチルアルコキシシラン;トリメチルクロロシラン等が挙げられる。これらのうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランが好ましい。
【0179】
他のポリオルガノシロキサンを合成する際に、任意的に使用することのできる有機溶媒としては、例えばアルコール化合物、ケトン化合物、アミド化合物若しくはエステル化合物又はその他の非プロトン性化合物が挙げられる。これらの化合物及び各溶媒化合物は単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0180】
アルコール化合物としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等のモノアルコール化合物;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール化合物の部分エーテル等が挙げられる。
【0181】
ケトン化合物としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン等のモノケトン化合物;
アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン等のβ−ジケトン化合物等が挙げられる。
【0182】
上記アミド化合物としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられる。
【0183】
エステル化合物としては、例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0184】
その他の非プロトン性化合物としては、例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホリン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−Δ3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等が挙げられる。これら溶媒のうち、多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の部分エーテル、又はエステル化合物が特に好ましい。
【0185】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用する水の量としては、原料シラン化合物の有するアルコキシ基及びハロゲン原子の総量の1モルに対して、好ましくは0.01モル〜100モルであり、より好ましくは0.1モル〜30モルであり、さらに1モル〜1.5モルであることが好ましい。
【0186】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用できる触媒としては、例えば金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、アンモニア、アルカリ金属化合物等が挙げられる。
【0187】
上記金属キレート化合物としては、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン等のトリアルコキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン;ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン等のジアルコキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン;モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン等のモノアルコキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン;テトラキス(アセチルアセトナート)チタン;トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のトリアルコキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン;ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン等のジアルコキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン;モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン等のモノアルコキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン;テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン;モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等の2種以上のキレート配位子を含むチタン化合物などのチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のトリアルコキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム;ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のジアルコキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム;モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のモノアルコキシ・トリル(アセチルアセトナート)ジルコニウム;テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム;トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のトリアルコキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジアルコキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のモノアルコキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等の2種以上のキレート配位子を含むジルコニウム化合物などのジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0188】
上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪族飽和カルボン酸;マロン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和カルボン酸;サリチル酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;モノクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン含有カルボン酸;クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0189】
上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。
【0190】
上記有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0191】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これら触媒は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0192】
これら触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましい。金属キレート化合物としては、チタンキレート化合物がより好ましい。
【0193】
触媒の使用量は、原料シラン化合物100質量部に対して好ましくは0.001質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.001質量部〜1質量部である。
【0194】
触媒は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、又は添加される水中に溶解又は分散させておいてもよい。
【0195】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的又は連続的に添加することができる。
【0196】
他のポリオルガノシロキサンの合成の際の反応温度としては、好ましくは0℃〜100℃であり、より好ましくは15℃〜80℃である。反応時間は好ましくは0.5時間〜24時間であり、より好ましくは1時間〜8時間である。
【0197】
液晶配向剤(A)が、ポリオルガノシロキサン化合物(A)とともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の含有量としては、ポリオルガノシロキサン化合物(A)100質量部に対して10,000質量部以下であることが好ましい。他の重合体のより好ましい含有量は、他の重合体の種類により異なる。
【0198】
液晶配向剤(A)が、ポリオルガノシロキサン化合物(A)及び重合体(B)を含有する場合における両者の好ましい使用割合としては、ポリオルガノシロキサン化合物(A)100質量部に対して重合体(B)の合計量として100質量部〜5,000質量部が好ましく、200質量部〜3,000質量部がより好ましい。
【0199】
一方、液晶配向剤(A)が、ポリオルガノシロキサン化合物(A)及び他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合における両者の好ましい使用割合は、ポリオルガノシロキサン化合物(A)100質量部に対する他のポリオルガノシロキサンの量として通常5質量部〜2,000質量部であり、好ましくは100質量部〜2,000質量部である。
【0200】
液晶配向剤(A)が、ポリオルガノシロキサン化合物(A)とともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体としては、重合体(B)、又は他のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0201】
<その他の成分>
液晶配向剤(A)は本発明の効果を損なわない限り、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と称することがある)、官能性シラン化合物、界面活性剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0202】
[硬化剤、硬化触媒及び硬化促進剤]
硬化剤及び硬化触媒は、ポリオルガノシロキサン化合物(A)の架橋反応をより強固にする目的で液晶配向剤(A)に含ませることができる。硬化促進剤は、硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で液晶配向剤(A)に含ませることができる。
【0203】
硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物、又はエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化に一般に用いられている硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸が挙げられる。
【0204】
多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物及びその他の多価カルボン酸無水物が挙げられる。
【0205】
シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等が挙げられる。その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、下記式(6)で表される化合物、ポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物の他、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0206】
【化23】

【0207】
上記式(6)中、xは1〜20の整数である。
【0208】
硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等を用いることができる。これらの触媒は、加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒することができる。
【0209】
上記硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物;4級リン化合物;4級アミン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0210】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上させる観点から、液晶配向剤(A)に含ませることができる。
【0211】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0212】
液晶配向剤(A)がエポキシ化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の[A]ポリオルガノシロキサン化合物と任意的に使用される他の重合体との合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜40質量部、より好ましくは0.1質量部〜30質量部である。
【0213】
なお、液晶配向剤(A)がエポキシ化合物を含有する場合、その架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
【0214】
[官能性シラン化合物]
官能性シラン化合物は、得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、さらに特開昭63−291922号公報に記載されているテトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等が挙げられる。
【0215】
液晶配向剤(A)が官能性シラン化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の[A]ポリオルガノシロキサン化合物と任意的に使用される他の重合体との合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0216】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0217】
液晶配向剤(A)が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、液晶配向剤(A)の全体100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
【0218】
<液晶配向剤(A)の調製方法>
液晶配向剤(A)は、上述の通り、[A]重合体成分を必須成分として含有し、必要に応じてその他の任意成分を含有できるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
【0219】
液晶配向剤(A)を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、[A]重合体成分及び任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。液晶配向剤(A)に好ましく使用することのできる有機溶媒は、任意的に添加される他の重合体の種類により異なる。
【0220】
液晶配向剤(A)が、[A]重合体成分及び重合体(B)を含有する場合における好ましい有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒が挙げられる。このとき、本発明のポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した貧溶媒を併用してもよい。これら有機溶媒は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0221】
一方、液晶配向剤(A)が、[A]重合体成分としてポリオルガノシロキサン化合物(A)のみを含有する場合、又はポリオルガノシロキサン化合物(A)及び他のポリオルガノシロキサンを含有する場合における好ましい有機溶媒としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等が挙げられる。これらのうち、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチルが好ましい。
【0222】
液晶配向剤(A)の調製に用いられる好ましい溶媒は、他の重合体の使用の有無及びその種類に従って、上記した有機溶媒の1種以上を組み合わせて得ることができる。このような溶媒は、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤(A)に含有される各成分が析出せず、かつ液晶配向剤(A)の表面張力が25〜40mN/mの範囲となるものである。
【0223】
液晶配向剤(A)の固形分濃度、すなわち液晶配向剤(A)中の溶媒以外の全成分の質量が液晶配向剤(A)の全質量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1質量%〜10質量%の範囲である。液晶配向剤(A)は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1質量%以上である場合には、この塗膜の膜厚が過小となりにくくなって良好な液晶配向膜を得ることができる。一方、固形分濃度が10質量%以下の場合には、塗膜の膜厚が過大となることを抑制して良好な液晶配向膜を得ることができ、また、液晶配向剤(A)の粘性が増大することを防止して塗布特性を良好なものとすることができる。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤(A)を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えば、スピンナー法による場合には1.5質量%〜4.5質量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3質量%〜9質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12mPa・s〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1質量%〜5質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3mPa・s〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。液晶配向剤(A)を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは0℃〜40℃である。
【実施例】
【0224】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0225】
以下の実施例において得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及び[A]ポリオルガノシロキサン化合物の重量平均分子量(Mw)は、下記仕様のGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー製、TSKgelGRCXLII
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
なお、以下の実施例において用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの原料化合物及び重合体の合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。
【0226】
<特定カルボン酸の合成>
[特定カルボン酸1の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸1を合成した。
【0227】
【化24】

【0228】
[合成例1]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル6.3g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物1を11g得た。
【0229】
[合成例2]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物1を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸1を8g得た。
【0230】
[特定カルボン酸2の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸2を合成した。
【0231】
【化25】

【0232】
[合成例3]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル15g、エチレンカーボネート13.5g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)2.5g、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、150℃で9時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を酢酸エチル300mL、1N−水酸化ナトリウム水溶液100mLの混合溶液で分液洗浄した。有機層を抽出した後、更に1N−水酸化ナトリウム水溶液100mL、水100mLの順で分液洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、有機溶媒を留去した。得られた固体を真空乾燥後、エタノール100mL/ヘキサン250mLで再結晶することにより、化合物2を13.1g得た。
【0233】
[合成例4]
冷却管、滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコに化合物2を12g、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド12.7g、脱水塩化メチレン60mLを加え混合した。氷浴で反応溶液を冷却した状態で、トリエチルアミン6.6gの脱水塩化メチレン10mL溶液を10分かけて滴下した。氷浴状態のまま、30分撹拌し、室温に戻して更に6時間撹拌した。反応溶液にクロロホルム150mLを加え、水100mLで4回分液洗浄を行った。抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を留去した。得られた固体をエタノールで洗浄することで化合物3を16.1g得た。
【0234】
[合成例5]
冷却管を備えた300mLの三口フラスコに化合物3を15g、4−ヒドロキシ安息香酸メチル11g、炭酸カリウム12.5g、N,N−ジメチルホルムアミド180mLを加え、80℃で9時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、エタノールで更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物4を10g得た。
【0235】
[合成例6]
冷却管を備えた100mLの三口フラスコに、化合物4を9.5g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、テトラヒドロフラン15mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸2を9g得た。
【0236】
[特定カルボン酸3の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸3を合成した。
【0237】
【化26】

【0238】
[合成例7]
合成例1において、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの代わりに2、3、5、6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを10.7g用いることで化合物5を13.7g得た。
【0239】
[合成例8]
合成例2において、化合物1の代わりに化合物5を13.5g用いることで、特定カルボン酸3を11.2g得た。
【0240】
[特定カルボン酸4の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸4を合成した。
【0241】
【化27】

【0242】
[合成例9]
合成例3において、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの代わりに2、3、5、6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを25.5g用いることで、化合物6を23.1g得た。
【0243】
[合成例10]
合成例4において化合物2の代わりに化合物6を18.9g用いることで、化合物7を24.1g得た。
【0244】
[合成例11]
合成例5において化合物3の代わりに化合物7を20g用いることで、化合物8を15.4g得た。
【0245】
[合成例12]
合成例6において化合物4の代わりに化合物8を13g用いることで、特定カルボン酸4を11.4g得た。
【0246】
[特定カルボン酸5の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸5を合成した。
【0247】
【化28】

【0248】
[合成例13]
特定カルボン酸1の合成と同様にしてメチレン基の数を10から5へ変更した特定カルボン酸5を15g合成した。
【0249】
[特定カルボン酸6の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸6を合成した。
【0250】
【化29】

【0251】
[合成例14]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル10.1g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物9を10.8g得た。
【0252】
[合成例15]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物9を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸6を6g得た。
【0253】
[特定カルボン酸7の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸7を合成した。
【0254】
【化30】

【0255】
[合成例16]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピル−シクロヘキシル)フェノール)9.1gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸7を5.9g得た。
【0256】
[特定カルボン酸8の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸8を合成した。
【0257】
【化31】

【0258】
[合成例17]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4−プロピル−4”−ヒドロキシターフェニル)12.9gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸8を7.1g得た。
【0259】
[特定カルボン酸9の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸9を合成した。
【0260】
【化32】

【0261】
[合成例18]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルシクロヘキシルメトキシ)フェノール)10.2gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸9を6.5g得た。
【0262】
[特定カルボン酸10の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸10を合成した。
【0263】
【化33】

【0264】
[合成例19]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4’−(4−プロピルフェニルエチル)ビフェニル)12.6gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸10を7.2g得た。
【0265】
[特定カルボン酸11の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸11を合成した。
【0266】
【化34】

【0267】
[合成例20]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物14.2gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸11を7.6g得た。
【0268】
[特定カルボン酸12の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸12を合成した。
【0269】
【化35】

【0270】
[合成例21]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、4−[ジフルオロ(4−ペンチルシクロヘキシル)メトキシ]−2,3−ジフルオロフェノール12.5g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水でさらに洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物10を14.8g得た。
【0271】
[合成例22]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物10を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸12を6g得た。
【0272】
<エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(前駆ポリオルガノシロキサン)の合成>
[加水分解縮合反応]
[合成例S−1]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−1を粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。ここで得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−1の重量平均分子量(Mw)はMw=2,200であり、エポキシ当量は186g/モルであった。
【0273】
[合成例S−2]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、加水分解性シラン化合物として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)73.9及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GMPTS)24.8g(ECETS:GMPTS=75:25(モル比))並びに溶媒としてメチルイソブチルケトン500g及び触媒としてトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有する加水分解縮合物である粘調な透明液体S−2を得た。
この加水分解縮合物についてH−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。ここで得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−2の重量平均分子量(Mw)はMw=2,900であった。
【0274】
[合成例S−3]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、加水分解性シラン化合物として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)123.2g及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GMPTS)124.2g(ECETS:GMPTS=50:50(モル比))並びに溶媒としてメチルイソブチルケトン1250g及び触媒としてトリエチルアミン25.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水250gを滴下漏斗より45分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有する加水分解縮合物である粘調な透明液体S−3を得た。
この加水分解縮合物についてH−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。ここで得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−3の重量平均分子量(Mw)はMw=3,200であった。
【0275】
[合成例S−4]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、加水分解性シラン化合物として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)88.7及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GMPTS)9.93g(ECETS:GMPTS=90:10(モル比))並びに溶媒としてメチルイソブチルケトン500g及び触媒としてトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有する加水分解縮合物である粘調な透明液体S−4を得た。
この加水分解縮合物についてH−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。ここで得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−4の重量平均分子量(Mw)はMw=2,700であった。
【0276】
<ポリオルガノシロキサン化合物(A)の合成>
[合成例A−1]
100mLの三口フラスコに、上記合成例S−1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−1を9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例2で得た特定カルボン酸1を5.0g、上記式(5)で表される化合物の一つとして例示した式(5−5)で表される4−オクチルオキシ安息香酸(プレチルト成分1)3.3g及びUCAT 18X(サンアプロ社の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン化合物A−1を白色粉末として14.5g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−1のMwは6,500であった。
【0277】
[合成例A−2]
4−オクチルオキシ安息香酸の代わりに上記式(5)で表される化合物の一つとして例示した式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(プレチルト成分2)を3.6g用いたこと以外は合成例A−1と同様に操作して、ポリオルガノシロキサン化合物A−2の白色粉末を13.4g得た。A−2のMwは7,900であった。
【0278】
[合成例A−3]
100mLの三口フラスコに、上記合成例S−1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−1を9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例2で得た特定カルボン酸1を8.0g、上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(プレチルト成分2)1.4g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン化合物A−3を白色粉末として13.9g得た。A−3のMwは8,900であった。
【0279】
[合成例A−4]
100mLの三口フラスコに、上記合成例S−1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−1を9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例2で得た特定カルボン酸1を2.0g、上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(プレチルト成分2)5.8g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン化合物A−4を白色粉末として13.4g得た。A−4のMwは7,600であった。
【0280】
[合成例A−5]
特定カルボン酸1の代わりに合成例8で得た特定カルボン酸3を6.8g用いたこと以外は合成例A−1と同様に操作して、ポリオルガノシロキサン化合物A−5の白色粉末を14.7g得た。A−5のMwは8,100であった。
【0281】
アクリロイル基を有するシルセスキオキサンについて以下に示す。
(アクリロイル基を有するシルセスキオキサン)
AC−SQ:「AC−SQ TA−100」、東亞合成製
【0282】
[合成例A−6]
[アクリロイル基を有するシルセスキオキサンと求核性化合物(チオール)との反応]
撹拌機及び温度計を備えた500mLの三口フラスコに、アクリロイル基を有するシルセスキオキサンであるAC−SQ TA−100(東亞合成製)165.0g、求核性化合物としてn−ドデシル−1−チオール(DT)40.5g(AC−SQのアクリロイル基、溶媒としてアセトニトリル160mL及び触媒としてトリエチルアミン22.3gを仕込み、50℃に昇温して90分攪拌し、反応を実施した。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液によって洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び触媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサンA−6を粘調な透明液体として205.0gを得た。このポリオルガノシロキサンA−6につき、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは5,900であった。
【0283】
[合成例A−7]
[エポキシ基を有する加水分解縮合物とカルボン酸との反応]
200mLの三口フラスコに、合成例S−2で得たエポキシ基を有する加水分解縮合物S−2を80g仕込み、溶媒としてメチルイソブチルケトン25.0g、カルボン酸として4−オクチロキシ安息香酸(プレチルト成分1)33.8g及び触媒としてUCAT 18X(サンアプロ製のエポキシ化合物の硬化促進剤)1.0gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサンA−7を100.2g得た。このポリオルガノシロキサンA−7につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは7,100であった。
【0284】
[合成例A−8]
100mLの三口フラスコに、上記合成例S−1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−1を9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例2で得た特定カルボン酸1を8.0g、上記式(5−6)で表されるコハク酸5ξ−コレスタン−3−イル(プレチルト成分3)2.6g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン化合物A−8を白色粉末として15.5g得た。A−10のMwは9,200であった。
【0285】
[合成例A−9]
200mLの三口フラスコに、合成例S−2で得たエポキシ基を有する加水分解縮合物S−2を80g仕込み、溶媒としてメチルイソブチルケトン25.0g、特定カルボン酸1を42.7g及び触媒としてUCAT 18X(サンアプロ製のエポキシ化合物の硬化促進剤)0.8gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサンA−9を98.2g得た。このポリオルガノシロキサンA−9につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは8,100であった。
【0286】
[合成例A−10]
200mLの三口フラスコに、合成例S−2で得たエポキシ基を有する加水分解縮合物S−2を80g仕込み、溶媒としてメチルイソブチルケトン25.0g、特定カルボン酸1を42.7g、4−オクチロキシ安息香酸(プレチルト成分1)28.2g及び触媒としてUCAT 18X(サンアプロ製のエポキシ化合物の硬化促進剤)1.7gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサンA−10を125.7g得た。このポリオルガノシロキサンA−10につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは10,200であった。
【0287】
[合成例A−11]
4−オクチロキシ安息香酸(プレチルト成分1)28.2gの代わりに上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(プレチルト成分2)30.9gを用いた以外は合成例A−10と同様にしてポリオルガノシロキサンA−11を128.5g得た。このポリオルガノシロキサンA−11につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは11,500であった。
【0288】
[合成例A−12]
200mLの三口フラスコに、合成例S−3で得たエポキシ基を有する加水分解縮合物S−3を60g仕込み、溶媒としてメチルイソブチルケトン20.0g、特定カルボン酸2を20.1g及び触媒としてUCAT 18X(サンアプロ製のエポキシ化合物の硬化促進剤)0.5gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサンA−12を56.8g得た。このポリオルガノシロキサンA−12につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは8,600であった。
【0289】
[合成例A−13]
200mLの三口フラスコに、合成例S−3で得たエポキシ基を有する加水分解縮合物S−3を60g仕込み、溶媒としてメチルイソブチルケトン20.0g、特定カルボン酸4を11.1g、上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(プレチルト成分2)12.3g及び触媒としてUCAT 18X(サンアプロ製のエポキシ化合物の硬化促進剤)0.6gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサンA−13を55.9g得た。このポリオルガノシロキサンA−13につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは8,300であった。
【0290】
[合成例A−14]
100mLの三口フラスコに、上記合成例S−4で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−4を10g、メチルイソブチルケトン20g、上記合成例13で得た特定カルボン酸5を4.35g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン化合物A−14を白色粉末として10.9g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−14のMwは6,400であった。
【0291】
[合成例A−15]
100mLの三口フラスコに、上記合成例S−4で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−4を10g、メチルイソブチルケトン20g、上記合成例13で得た特定カルボン酸5を6.95g、上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(プレチルト成分2)1.54g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することによりポリオルガノシロキサン化合物A−15を白色粉末として13.7g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−15のMwは7,700であった。
【0292】
[合成例A−16]
上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸1.54gの代わりに上記式(5−6)で表されるコハク酸5ξ−コレスタン−3−イル(プレチルト成分3)2.75gを用いた以外は合成例A−15と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−16を白色粉末として15.1g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−16のMwは8,200であった。
【0293】
[合成例A−17]
100mLの三口フラスコに、上記合成例S−4で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンS−4を10g、メチルイソブチルケトン20g、上記合成例8で得た特定カルボン酸3を7.26g、4−オクチロキシ安息香酸(プレチルト成分1)3.52g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン化合物A−17を白色粉末として15.8g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−17のMwは9,100であった。
【0294】
[合成例A−18]
4−オクチロキシ安息香酸(プレチルト成分1)3.52gの代わりに、上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(プレチルト成分2)3.86gを用いた以外は合成例A−17と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−18を白色粉末として15.4g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−18のMwは8,900であった。
【0295】
[合成例A−19]
特定カルボン酸3 7.26gの代わりに、上記合成例15で得た特定カルボン酸6を6.17g用いた以外は、合成例A−17と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−19を白色粉末として15.5g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−19のMwは9,100であった。
【0296】
[合成例A−20]
特定カルボン酸3 7.26gの代わりに、上記合成例16で得た特定カルボン酸7を5.78g用いた以外は、合成例A−17と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−20を白色粉末として15.3g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−20のMwは9,000であった。
【0297】
[合成例A−21]
特定カルボン酸3 7.26gの代わりに、上記合成例17で得た特定カルボン酸8を7.18g用いた以外は、合成例A−17と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−21を白色粉末として15.6g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−21のMwは9,300であった。
【0298】
[合成例A−22]
特定カルボン酸3 7.26gの代わりに、上記合成例18で得た特定カルボン酸9を6.18g用いた以外は、合成例A−17と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−22を白色粉末として15.2g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−22のMwは8,900であった。
【0299】
[合成例A−23]
特定カルボン酸3 7.26gの代わりに、上記合成例19で得た特定カルボン酸10を7.07g用いた以外は、合成例A−17と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−23を白色粉末として15.8g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−23のMwは9,500であった。
【0300】
[合成例A−24]
特定カルボン酸3 7.26gの代わりに、上記合成例20で得た特定カルボン酸11を8.39g用いた以外は、合成例A−17と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−24を白色粉末として15.6g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−24のMwは9,200であった。
【0301】
[合成例A−25]
特定カルボン酸3 7.26gの代わりに、上記合成例22で得た特定カルボン酸12を7.02g用いた以外は、合成例A−17と同様にしてポリオルガノシロキサン化合物A−25を白色粉末として15.5g得た。ポリオルガノシロキサン化合物A−19のMwは9,100であった。
【0302】
以上のポリオルガノシロキサン化合物(A)の合成結果を以下の表1にまとめた。表1中の「−」は該当する化合物を用いなかったことを示す。
【0303】
【表1】

【0304】
上記表1において他のプレチルト角発現性化合物とは以下の化合物を示す。また、使用量(モル%)とは前駆ポリオルガノシロキサン中のSi原子に対するモル%を表す。
プレチルト成分1:4−オクチロキシ安息香酸
プレチルト成分2:4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸
プレチルト成分3:コハク酸5ξ−コレスタン−3−イル
【0305】
<重合体(B)の合成>
[合成例P−1]
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.61g(0.1モル)と4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル21.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン367.6gに溶解し、室温で6時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸PA−1を35g得た。
【0306】
[合成例P−2]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物 18.85g、ジアミン化合物としての下記式(G−4)で表されるジアミン8.84g及びp−フェニレンアミン7.31gをN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、2,150mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てN−メチル−2−ピロリドン465gに再溶解させ、ピリジン6.65g及び無水酢酸8.59gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率50%のポリイミドPI−1を23.1g得た。
【0307】
【化36】

【0308】
[合成例P−3]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物 24.94g、ジアミン化合物としての下記式(G−5)で表されるジアミン11.24g及び3,5−ジアミノ安息香酸13.82gをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、1,400mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てN−メチル−2−ピロリドン450gに再溶解させ、ピリジン13.20g及び無水酢酸17.04gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率69%のポリイミドPI−2を27.8g得た。
【0309】
【化37】

【0310】
[合成例P−4]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物 23.06g、ジアミン化合物としての3,5−ジアミノ安息香酸11.01g、上記式(G−4)で表されるジアミン10.81g及び上記式(G−5)で表されるジアミン5.12gをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、1,300mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てN−メチル−2−ピロリドン450gに再溶解させ、ピリジン8.14g及び無水酢酸10.50gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率55%のポリイミドPI−3を30.5g得た。
【0311】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
他の重合体として、上記合成例P−1で得たポリアミック酸PA−1を含有する溶液を、これに含有されるポリアミック酸PA−1に換算して100質量部に相当する量をとり、ここに上記ポリオルガノシロキサン化合物A−1を5質量部、上記ポリオルガノシロキサン化合物A−6を5質量部それぞれ加え、さらにN−メチル−2−ピロリドン及びブチルセロソルブを加えて、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤E−1を調製した。
<液晶セルの製造と評価>
上記で調製した液晶配向剤を用いて、下記のように透明電極のパターン(2種類)及び紫外線照射量(3水準)を変えて、計6個の液晶表示素子を製造し、評価した。
【0312】
[パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造]
上記調製した液晶配向剤E−1を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行ない、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板の片方の液晶配向膜を有する外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターンなし透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述のプレチルト角の評価に用いた。残りの2個の液晶セルについては、それぞれ下記の方法によりITO電極間に電圧を印加した状態で光照射した後にプレチルト角及び電圧保持率の評価に供した。
上記で得た液晶セルのうちの2個について、それぞれITO電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外腺照射装置を用いて、紫外線を10,000J/m又は100,000J/mの照射量にて照射した。なおこの照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
【0313】
[プレチルト角の評価]
上記で製造した各液晶セルについて、それぞれ非特許文献2(T.J.Scheffer et.al.,J.Appl.Phys. vo.48,p.1783(1977))及び非特許文献3(F.Nakano et.al.,JPN.J.Appl.Phys. vo.19,p.2013(1980))に記載の方法に準拠してHe−Neレーザー光を用いる結晶回転法により測定した液晶分子の基板面からの傾き角の値をプレチルト角とした。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セル及び照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれのプレチルト角を表2に示した。
【0314】
[電圧保持率の評価]
上記で製造した各液晶セルに対し、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置としては東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
照射量10,000J/mの液晶セル及び照射量10,000J/mの液晶セルのそれぞれの電圧保持率を表2に示した。
【0315】
[パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造(1)]
上記調製した液晶配向剤E−1を、図1に示すスリット状にパターニングされ、複数の領域に区画されたITO電極をそれぞれ有するガラス基板A及びBの各電極面上にスピンコート法により塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次いで、上記一対の基板の片方の液晶配向膜を有する外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターニングされた透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述の応答速度の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、上記パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造におけるのと同様の方法により、導電膜間に電圧を印加した状態で10,000J/m又は100,000J/mの照射量にて光照射した後に応答速度の評価に供した。
なお、ここで用いた電極のパターンは、PSAモードにおける電極パターンと同種のパターンである。
【0316】
[応答速度の評価]
上記で製造した各液晶セルにつき、先ず電圧を印加せずに可視光ランプを照射して液晶セルを透過した光の輝度をフォトマルチメーターにて測定し、この値を相対透過率0%とした。次に液晶セルの電極間に交流60Vを5秒間印加したときの透過率を上記と同様にして測定し、この値を相対透過率100%とした。
このとき各液晶セルに対して交流60Vを印加したときに、相対透過率が10%から90%に移行するまでの時間を測定し、この時間を応答速度と定義して評価した。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セル及び照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれの応答速度を表2に示した。
【0317】
[パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造(2)]
上記調製した液晶配向剤を用い、図2に示すフィッシュボーン状にパターニングされたITO電極をそれぞれ有するガラス基板A及びBを使用した他は、上記パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造(1)と同様にして、光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セル及び照射量100,000J/mの液晶セルを製造し、それぞれ上記と同様にして応答速度の評価に供した。評価結果は表2に示した。
【0318】
[実施例2〜34並びに比較例1及び2]
上記実施例1において、重合体(B)及びポリオルガノシロキサン化合物(A)(成分1及び必要に応じて成分2)の種類及び配合量をそれぞれ表2に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして液晶配向剤を調製し、この液晶配向剤を用いて各種液晶セルを製造して評価した。評価結果を表2に示す。
【0319】
【表2】

【0320】
表2の結果から、本発明の方法においては、紫外線照射量を100,000J/m(PSAモードにおいて従来採用されている値である。)とすると得られるプレチルト角の程度が過剰となり、10,000J/m又はそれ以下の照射量において適正なプレチルト角となることが分かる。また、照射量が少ない場合であっても十分に速い応答速度が得られており、さらに電圧保持率にも優れている。
従って、本発明の方法によれば、PSAモードのメリットを少ない光照射量で実現することが可能で、かつ、従来のPSAモード液晶表示素子に比べて液晶応答速度が速い液晶表示素子を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0321】
本発明によれば、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性及び長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0322】
1:ITO電極
2:スリット部
3:遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)[A]同一又は異なる重合体中に、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体成分を含有する液晶配向剤を用い、導電膜を有する一対の基板のこの導電膜上に塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜を形成した一対の基板を、それらの一対の塗膜が対向するよう、かつ液晶層を介して配置することで、液晶セルを形成する工程、及び
(3)上記一対の基板の導電膜間に電圧を印加した状態で上記液晶セルに光照射する工程
を有する液晶表示素子の製造方法。
【化1】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【請求項2】
[A]重合体成分が、[A−1]重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び上記式(A1)で表される基を有する重合体を含む請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項3】
[A]重合体成分が、[A−2]重合性炭素−炭素二重結合を含む基を有する重合体と、[A−3]上記式(A1)で表される基を有する重合体とを含む請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
上記式(A1)におけるRが、下記式(A2)で表される請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液晶表示素子の製造方法。
【化2】

(式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基又はアルコキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
[A]重合体成分が、ポリオルガノシロキサン構造を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項6】
[A]重合体成分が、ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体をさらに含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示素子の製造方法によって製造された液晶表示素子。
【請求項8】
[A]同一又は異なる重合体中に、重合性炭素−炭素二重結合を含む基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体成分を含有する液晶配向剤。
【化3】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−159826(P2012−159826A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253347(P2011−253347)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】