説明

液晶表示素子の製造方法

【課題】外観不良を起こさない光学フィルムの切断と連続的な貼り合わせにおけるフィルムの破断防止という課題を同時に解決できる液晶表示素子の製造方法を提供する。
【解決手段】偏光子を含む光学フィルムF11に粘着剤層F14とそれに仮着されたキャリアフィルムF12とが積層された長尺なシート状物F1を、前記キャリアフィルムF12の連続性を維持した状態で所定間隔に切断し、得られた光学フィルム片を搬送するとともにキャリアフィルムF12を張力により剥離して露出した粘着剤層にて液晶パネルに連続的に貼り合せる液晶表示素子の製造方法において、前記切断は、実質上キャリアフィルムF12に達する切り込み深さとされ、且つキャリアフィルムF12の幅方向の少なくとも両端部で、該キャリアフィルムF12の厚みの半分未満の切り込み深さとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子を含む光学フィルムに粘着剤層と該粘着剤層に仮着されたキャリアフィルムとが積層された長尺なシート状物を、前記キャリアフィルムの連続性を維持した状態で所定間隔に切断した後、得られた光学フィルム片からキャリアフィルムを剥離して液晶パネルに連続的に貼り合せる液晶表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置において偏光板は必要不可欠なものであるが、偏光板の移送と貼り付けは、それぞれが完全に切断された枚葉状で行なわれる事が多かった。しかし、生産性が低い、偏光板のカールにより貼合時に位置ズレがおきる等の問題があるため、連続的に貼り合わせる手法が提案されている(例えば特許文献1〜2参照)。
【0003】
この連続貼り合わせ方法においては、偏光板は原反の状態でロールから繰り出されて移送され、偏光板を含む積層構造の厚さ方向の一部(キャリアフィルム)を残して切断するハーフカットにより、個々の偏光板となった後、貼り合わせが行われる。すなわち、ハーフカットにより切断されていない部分は、連続性が維持されるので、キャリアとして用いることができると共に、切断された偏光板を張力により搬送した後に、液晶パネルに連続的に貼り付けを行なう。
【0004】
しかし、かかるハーフカットにおいては、切り込みの深さの精度如何によっては粘着剤層が完全に切断されずに残ってしまうことがある。このような粘着剤層の切断残りが生じると、キャリアフィルムから光学フィルムを剥離する際に粘着剤層の切断残り部分が引きちぎられる事となり、伸びた後に千切れて粘着剤端部が玉になるといった永久変形を起こす。殊に弾性率の低い(柔らかい)粘着剤を用いた場合に、このような粘着剤層の変形が生じやすい。そして、ハーフカットから貼り付けまでの工程では、キャリアフィルム上に偏光板が乗っているため端面加工を行うことができない。その結果、偏光板が貼り合わされた液晶パネル(即ち液晶表示素子)に粘着剤層の変形に起因する気泡が生じたり端部からのハガレを生じたりし、さらには、かかる部位から光が抜ける等の致命的な不良の原因ともなるおそれも生じる。
【0005】
そこで、このような問題を回避するために、かかるハーフカットにおける切り込み深さを、キャリアフィルムの層内にまで達するようにして、粘着剤層を完全に切断することが考えられる。粘着剤層が完全に切断されると、キャリアフィルムから光学フィルム片を剥離する際に、粘着剤が変形するのを防ぐことができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−037416号公報
【特許文献2】特開昭57−52017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ハーフカットの切り込み深さによっては、搬送中又はキャリアフィルムの剥離時にかかる張力によって搬送距離が短距離であってもキャリアフィルムが破断するおそれがある。殊に張力をかけつつ連続的に液晶パネルに貼り合わせるシステムにおいては、キャリアフィルムの搬送は単調な搬送系とは異なり、搬送の開始と停止を繰り返す寸動状態となるため、搬送の開始時にフィルムに加わる応力は通常時の数倍にも達し、またキャリアフィルムをエッジ状部材等を用いて剥離する際に大きな負荷が生じるため、フィルム破断の危険性は飛躍的に増加する。
【0008】
本発明者らの実験したところによると、フィルム破断の危険性はフィルムの幅方向の中央部よりも端部が深く切り込まれている場合に顕著であることが判明した。即ち、フィルムの端部が深く切り込まれていると、このような寸動状態ではフィルム全体の機械的強度が著しく低下し、搬送中の破断の原因となり易いことが判明している。
【0009】
この点に関し、特許文献1では、ハーフカットにおけるカッターの下死点を前記剥離フィルムの厚さの0倍以上0.5倍以内に設定することで粘着剤層の切れ残りを解消することを提案している(請求項5、段落0021参照)。しかし、特許文献1では、上述した連続的な貼り合わせにおける問題点が十分考慮されていない。このため、カッターの下死点を設定しても、切り込み深さの精度にばらつきが生じることにより、深く切り込まれる部分が生じることは避け難く、寸動状態におけるフィルム破断の危険性を回避できない場合がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、外観不良を起こさない光学フィルムの切断と連続的な貼り合わせにおけるフィルムの破断防止という課題を同時に解決できる液晶表示素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、次の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の液晶表示素子の製造方法は、偏光子を含む光学フィルムに粘着剤層と該粘着剤層に仮着されたキャリアフィルムとが積層された長尺なシート状物を、前記キャリアフィルムの連続性を維持した状態で所定間隔に切断し、得られた光学フィルム片を搬送するとともにキャリアフィルムを張力により剥離して露出した粘着剤層にて液晶パネルに連続的に貼り合せる液晶表示素子の製造方法において、前記切断は、実質上キャリアフィルムに達する切り込み深さとされ、且つキャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部で、該キャリアフィルムの厚みの半分未満の切り込み深さとなることを特徴とする。ここで、「切断が実質上キャリアフィルムに達する切り込み深さ」とは、キャリアフィルムの幅方向の切断距離の8割以上の長さで、切断がキャリアフィルムに達している状態を指し、予めキャリアフィルムの層内に達する切り込み深さをハーフカットの目標値として設定しておくことで行うことができる。例えば、ハーフカットの切り込み深さの目標値が、この範囲外であっても、切断装置の精度により上記の長さで切断がキャリアフィルムに達するような場合も含むものである。
【0012】
本発明の液晶表示素子の製造方法によると、切断を、実質上キャリアフィルムに達する切り込み深さとし、且つキャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部で、該フィルムの厚みの半分未満の切り込み深さとするため、外観不良を起こさない光学フィルムの切断と連続的な貼り合わせにおけるフィルムの破断防止という課題を同時に解決できる。つまり、光学フィルム/粘着剤層/キャリアフィルムがこの順に積層されたものを、キャリアフィルムを残して貼り付けを行なう液晶パネルと略同様のサイズとなるようにハーフカットするとき、ハーフカットの切り込みの深さは刃物精度、機械精度(取付精度)によって一定ではなく、フィルム厚みの誤差の影響もあるため、粘着剤層の切断部分と連続部分とが生じ易い。これにより、貼り合わせ時に粘着剤がはみ出す、又は気泡が発生する等の経時で消えない外観不良を引き起こすこととなる。
【0013】
一方、この問題を回避するためにキャリアフィルムの厚みの半分以上を切断するような切り込みを加えた場合、フィルム両端部の切り込み状態(深さ)によっては、キャリア中にかかる張力によって搬送距離が短距離であってもキャリアフィルムが破断する可能性がある。これに対して、本発明では、平均的な深さの設定と、バラツキ制御による両端部の切り込み深さの設定を所定範囲とすることにより、外観不良を起こさない光学フィルムの切断と連続的な貼り合わせにおけるフィルムの破断防止という課題を同時に解決ことができる。
【0014】
上記において、前記キャリアフィルムを剥離する際に、例えばエッジ状部材を用いてキャリアフィルムの搬送方向を鋭角に反転させて、前記粘着剤層から剥離することが好ましい。本発明では、キャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部で、該キャリアフィルムの厚みの半分未満の切り込み深さとするため、このような負荷の大きい剥離方式であっても、キャリアフィルムが破断しにくくなり、粘着剤層からキャリアフィルムをスムーズに順次剥離することができる。
【0015】
また、前記切断を行う際に、切断刃により台座に支持した前記キャリアフィルムを切断すると共に、前記キャリアフィルムの幅方向の両端部で、他の部分と比較して前記台座の表面高さを低くしてあることが好ましい。切断刃を用いた切断では、粉塵等を発生しにくくすることができるが、切断の切り込み深さを微妙に変化(例えばμmオーダー)させるのが困難という問題がある。これに対して、台座の表面高さをキャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部で低くすることで、台座表面と切断刃の間隔を部分的に大きくすることができ、その部分でのキャリアフィルムの切り込み深さを、より確実に小さくすることができる。
【0016】
また、切断における前記キャリアフィルムへの切込み深さをcとし、キャリアフィルムの厚みをdとするとき、切断距離の6割以上が、3μm<c<(d/2)μmを満たすことが好ましい。このような切込み深さの分布にすることで、より確実にキャリアフィルムに達する切り込み深さとなり、且つキャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部で、より確実に該フィルムの厚みの半分未満の切り込み深さとすることができる。
【0017】
また、前記キャリアフィルムの厚みが20μm以上40μm未満であることが好ましい。このような厚みであると、キャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部でフィルム厚みの半分未満の切り込み深さを維持しながら、より確実に粘着剤層を切断して、外観不良を防止することができる。
【0018】
また、前記キャリアフィルムの破断強度が180MPa以上であることが好ましい。破断強度がこの範囲であると、キャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部でフィルム厚みの半分未満の切り込み深さにすることで、連続的な貼り合わせにおけるフィルムの破断をより確実に防止できるようになる。
【0019】
前記切断において、粘着剤層が完全に切断されていない部分が切断距離の10%以下で且つ切断されていない部分の粘着剤層の厚みが最大で3μmであることが好ましい。完全に切断されていない粘着剤層の割合と厚みがこの範囲であると、貼り合わされた液晶パネル(液晶表示素子)に粘着剤層の変形に起因する気泡が生じにくく、端部からのハガレも生じにくい。また、これらに起因して光が抜ける等の致命的な不良も生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の液晶表示素子の製造方法の一例を示すフローチャート
【図2】本発明の液晶表示素子の製造方法に用いる製造システムの一例を示す概略構成図
【図3】本発明の液晶表示素子の製造方法に用いる製造システムの一例を示す概略構成図
【図4】第1、第2光学フィルムの積層構造の一例について説明するための図
【図5】本発明の液晶表示素子の製造方法に用いる切断装置の一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の液晶表示素子の製造方法は、偏光子を含む光学フィルムに粘着剤層と該粘着剤層に仮着されたキャリアフィルムとが積層された長尺なシート状物を、前記キャリアフィルムの連続性を維持した状態で所定間隔に切断し、得られた光学フィルム片を搬送するとともにキャリアフィルムを張力により剥離して露出した粘着剤層にて液晶パネルに連続的に貼り合せるものである。
【0022】
本発明の液晶表示素子の製造方法は、例えば図1に示すような工程により実施することができる。即ち、本発明の液晶表示素子の製造方法は、主たる工程として、長尺なシート状物の切断工程と、切断後の光学フィルム片を液晶パネルに連続的に貼り合せる貼合工程とを含み、更に、ロール原反準備工程、搬送工程、検査工程を備えていてもよい。以下、図1に基づいて各工程を説明する。
【0023】
(1)第1ロール原反準備工程(図1、S1)。本発明の巻回体を第1ロール原反として準備する。第1ロール原反の幅は、液晶パネルの貼り合わせサイズに依存している。第1ロール原反として巻回される長尺なシート状物は、偏光子を含む光学フィルムに粘着剤層と該粘着剤層に仮着されたキャリアフィルムとが積層されたものである。
【0024】
図4に示すように、例えば、第1シート状物F1の積層構造は、第1光学フィルムF11と、第1キャリアフィルムF12と、表面保護フィルムF13とを有する。第1光学フィルムF11は、第1偏光子F11aと、その一方面に接着剤層(不図示)を介した第1フィルムF11bと、その他方面に接着剤層(不図示)を介した第2フィルムF11cとで構成されている。
【0025】
第1、第2フィルムF11b、F11cは、例えば、偏光子保護フィルム(例えばトリアセチルセルロースフィルム、PETフィルム等)である。第2フィルムF11cは、第1粘着剤F14を介して液晶パネル面側に貼り合わされる。第1フィルムF11bには、表面処理を施すことができる。表面処理としては、例えば、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散ないしアンチグレア等を目的とした処理等が挙げられる。第1キャリアフィルムF12は、第2フィルムF11cと第1粘着剤層F14を介して設けられている。また、表面保護フィルムF13は、第1フィルムF11bと粘着剤層F15を介して設けられている。以下において、偏光子と偏光子保護フィルムとの積層構造を偏光板を称することがある。
【0026】
(2)搬送工程(図1、S2)。準備され設置された第1ロール原反から第1シート状物を繰り出し、下流側に搬送する。第1シート状物を搬送する第1搬送装置は、例えば、ニップローラ対、テンションローラ、回転駆動装置、アキュムレート装置、センサー装置、制御装置等で構成されている。第1シート状物は第1キャリアフィルムを有しており、これがキャリアフィルムとして機能する。
【0027】
(3)第1検査工程(図1、S3)。第1シート状物の欠点を第1欠点検査装置を用いて検査する。ここでの欠点検査方法としては、第1シート状物の両面に対し、透過光、反射光による画像撮影・画像処理する方法、検査用光学フィルムをCCDカメラと検査対象物との間に、検査対象である偏光板の偏光軸とクロスニコルとなるように配置(0度クロスと称することがある)して画像撮影・画像処理する方法、検査用光学フィルムをCCDカメラと検査対象物との間に、検査対象である偏光板の偏光軸と所定角度(例えば、0度より大きく10度以内の範囲)になるように配置(x度クロスと称することがある)して画像撮影・画像処理する方法が挙げられる。なお、画像処理のアルゴリズムは公知の方法を適用でき、例えば二値化処理による濃淡判定によって欠点を検出することができる。
【0028】
透過光による画像撮影・画像処理方法では、第1シート状物内部の異物が検出できる。反射光による画像撮影・画像処理方法では、第1シート状物表面の付着異物が検出できる。0度クロスによる画像撮影・画像処理方法では、主に、表面異物、汚れ、内部の異物等が輝点として検出できる。x度クロスによる画像撮影・画像処理方法では、主に、クニックを検出することができる。
【0029】
第1欠点検査装置で得られた欠点の情報は、その位置情報(例えば、位置座標)とともに紐付けされて、制御装置に送信され、後述する第1切断装置による切断方法に寄与させることができる。第1検査工程においては、検査の精度を向上させる観点より、図2に示す製造システムのように、検査前にキャリアフィルムを剥離した後、検査後にキャリアフィルムを再貼着することが好ましい。この点は、第2検査工程においても同様である。この検査方式の場合、検査前後のキャリアフィルムは、同一でも異なっていてもよい。
【0030】
また、このような検査工程を連続製造工程で行う代わりに、ロール原反の製造時に検査工程を行うことで、同様の歩留り向上効果を得ることが出来る。即ち、先に行った検査結果に基づいて、第1および第2ロール原反の幅方向の一方の端部には、所定ピッチ単位(例えば1000mm)に第1、第2シート状製品の欠点情報(欠点座標、欠点の種類、サイズ等)がコード情報(例えばQRコード、バーコード)として付されている場合である。このような場合、切断する前段階で、このコード情報を読み取り、解析して欠点部分を避けるように、第1、第2切断工程において所定サイズに切断する(スキップカットと称することがある)。そして、欠点を含む部分は除去あるいは液晶パネルではない部材に貼り合わせるように構成し、所定サイズに切断された良品判定の枚葉のシート状製品を液晶パネルに貼り合わされるように構成する。これにより、液晶パネルの歩留まりが大幅に向上される。
【0031】
(4)第1切断工程(図1、S4)。第1切断装置は、第1キャリアフィルムを切断せずに、第1光学フィルムおよび第1粘着剤層を所定サイズに切断(ハーフカット)する。第1欠点検査装置14で得られた欠点の情報に基づいて、欠点を避けるように切断するように構成される。これにより、第1シート状物F1に対する製品の歩留まりが大幅に向上する。欠点を含む第1光学フィルム片は、後述する第1排除装置19によって排除され、液晶パネルWには貼り付けされないように構成される。切断工程については、後に詳述する。
【0032】
(5)第1光学フィルム貼合工程(図1、S5)。第1剥離装置を用いて第1キャリアフィルムを除去しながら、第1貼合装置を用いて当該第1キャリアフィルムが除去された第1光学フィルムを第1粘着剤層を介して液晶パネルに貼り合せる。貼り合せに際し、第1光学フィルムと液晶パネルをロール対で挟んで圧着する。キャリアフィルムを剥離する際には、エッジ状部材を用いてキャリアフィルムの搬送方向を鋭角に反転させることで、粘着剤層から剥離することができる。
【0033】
(6)洗浄工程(図1、S6)。必要に応じて、液晶パネルは、研磨洗浄装置および水洗浄装置によって、その表面が洗浄される。洗浄されたパネルは、搬送機構によって、検査装置まで搬送される。
【0034】
(7)第2ロール原反準備工程(図1、S11)。本発明の巻回体を第2ロール原反として準備する。第2シート状物の積層構造は、第1シート状物と同様の構成であるが、これに限定されない。図4の示すように、第2シート状物F2の積層構造は、第1シート状物と同様の構成であるが、これに限定されない。例えば、第2シート状物F2は、第2光学フィルムF21と、第2キャリアフィルムF22と、表面保護フィルムF23とを有する。第2光学フィルムF21は、第2偏光子21aと、その一方面に接着剤層(不図示)を介した第3フィルムF21bと、その他方面に接着剤層(不図示)を介した第4フィルムF21cとで構成されている。
【0035】
第3、第4フィルムF21b、F21cは、例えば、偏光子保護フィルム(例えばトリアセチルセルロースフィルム。PETフィルム等)である。第4フィルムF21cは、第2粘着剤層F24を介して液晶パネル面側に貼り合わされる。第3フィルムF21bには、表面処理を施すことができる。表面処理としては、例えば、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散ないしアンチグレア等を目的とした処理等が挙げられる。第2キャリアフィルムF22は、第4フィルムF21cと第2粘着剤層F24を介して設けられている。また、表面保護フィルムF23は、第3フィルムF21bと粘着剤層F25を介して設けられている。
【0036】
(8)搬送工程(図1、S12)。準備され設置された第2ロール原反から第2シート状物を繰り出し、下流側に搬送する。第2シート状物を搬送する第2搬送装置は、例えば、ニップローラ対、テンションローラ、回転駆動装置、アキュムレート装置、センサー装置、制御装置等で構成されている。
【0037】
(9)第2検査工程(図1、S13)。第2シート状物の欠点を第2欠点検査装置を用いて検査する。ここでの欠点検査方法は、上述した第1欠点検査装置による方法と同様である。
【0038】
(10)第2切断工程(図1、S14)。第2切断装置は、第2キャリアフィルムを切断せずに、第2光学フィルムおよび第2粘着剤層を所定サイズに切断(ハーフカット)する。必要に応じて、第2欠点検査装置で得られた欠点の情報に基づいて、欠点を避けるように切断するように構成される。これにより、第2シート状物の歩留まりが大幅に向上する。欠点を含む第2シート状物は、第2排除装置によって排除され、液晶パネルには貼り付けされないように構成される。
【0039】
(11)第2光学フィルム貼合工程(図1、S15)。次いで、第2切断工程後に、第2剥離装置を用いて第2キャリアフィルムを除去しながら、第2貼合装置を用いて当該第2キャリアフィルムが除去された第2光学フィルムを、前記第2粘着剤層を介して、液晶パネルの第1光学フィルムが貼り合わされている面と異なる面に貼り合せる。なお、第2光学フィルムを液晶パネルに貼り合せる前に、搬送機構の搬送方向切り替え機構によって液晶パネルを90度回転させ、第1光学フィルムと第2光学フィルムをクロスニコルの関係にする場合がある。貼り合せに際し、第2光学フィルムと液晶パネルをロールで挟んで圧着する。
【0040】
(12)液晶パネルの検査工程(図1、S16)。検査装置は、光学フィルムを両面に貼着された液晶パネルを検査する。検査方法としては、液晶パネルの両面に対し、反射光による画像撮影・画像処理する方法が例示される。また他の方法として、検査用光学フィルムをCCDカメラと検査対象物との間に設置する方法も例示される。なお、画像処理のアルゴリズムは公知の方法を適用でき、例えば二値化処理による濃淡判定によって欠点を検出することができる。
【0041】
(13)検査装置で得られた欠点の情報に基づいて、液晶パネルの良品判定がなされる。良品判定された液晶パネルは、次の実装工程に搬送される。不良品判定された場合、リワーク処理が施され、新たに光学フィルムが貼られ、次いで検査され、良品判定の場合、実装工程に移行し、不良品判定の場合、再度リワーク処理に移行するかあるいは廃棄処分される。
【0042】
以上の一連の製造工程において、第1光学フィルムの貼合工程と第2光学フィルム貼合工程とを連続した製造ラインで実行することによって、液晶表示素子を好適に製造することができる。
【0043】
次に、各工程を実施するための製造システムについて説明する。この製造システムとしては、図2〜図3に示すように、第1搬送装置12、第1検査前剥離装置13、第1欠点検査装置14、第1キャリアフィルム貼合装置15、第1切断装置16、第1剥離装置17、および第1貼合装置18を備えるものが例示される。本発明では、第1検査前剥離装置13、第1欠点検査装置14、第1キャリアフィルム貼合装置15を備えることにより、第1光学フィルムの検査を精度良く行えるが、これらの装置は、省略することも可能である。
【0044】
長尺の第1シート状物F1の第1ロール原反は、自由回転あるいは一定の回転速度で回転するようにモータ等と連動されたローラ架台装置に設置される。制御装置によって回転速度が設定され、駆動制御される。
【0045】
第1搬送装置12は、第1シート状物F1を下流側に搬送する搬送機構である。第1搬送装置12は、ニップローラ対、テンションローラ、回転駆動装置、アキュムレート装置A、センサー装置、制御装置等で構成され、制御装置によって制御されている。第1搬送装置12は、第1キャリアフィルムに張力をかけながら、切断前の光学フィルム又は切断後の光学フィルム片を、第1貼合装置18まで搬送する。なお、第1欠点検査装置14の位置では、第1キャリアフィルムを用いずに光学フィルムのみが下流側へと搬送される。
【0046】
第1検査前剥離装置13は、搬送されてきた第1シート状物F1からキャリアフィルムH11を剥離し、ロール132に巻き取る構成である。ロール132への巻取り速度は制御装置によって制御されている。剥離機構131としては、先端が先鋭なナイフエッジ部を有し、このナイフエッジ部にキャリアフィルムH11を巻き掛けて反転移送することにより、キャリアフィルムH11を剥離すると共に、キャリアフィルムH11を剥離した後の第1シート状物F1を搬送方向に搬送するように構成される。
【0047】
第1欠点検査装置14は、キャリアフィルムH11の剥離後に、欠点検査をする。第1欠点検査装置14は、CCDカメラで撮像された画像データを解析して欠点を検出し、さらにその位置座標を算出する。この欠点の位置座標は、後述の第1切断装置16によるスキップカットに提供される。
【0048】
第1キャリアフィルム貼合装置15は、第1欠点検査後に、キャリアフィルムH12を第1粘着剤層F14を介して第1光学フィルムF11に貼り合せる。図2に示すように、キャリアフィルムH12のロール原反151からキャリアフィルムH12を繰り出し、1または複数のローラ対152で、キャリアフィルムH12と第1光学フィルムF11を挟持し、当該ローラ対152で所定の圧力を作用させて貼り合わせる。ローラ対152の回転速度、圧力制御、搬送制御は、制御装置によって制御される。
【0049】
第1切断装置16は、キャリアフィルムH12を貼り合せた後に、キャリアフィルムH12の連続性を維持した状態で、所定間隔に第1光学フィルムF11を切断する。本発明は、その際に実質上キャリアフィルムH12に達する切り込み深さとされ、且つキャリアフィルムH12の幅方向の少なくとも両端部で、該キャリアフィルムH12の厚みの半分未満の切り込み深さとなることを特徴とする。図4に示す第1シート状物F1の場合、当該キャリアフィルムH12を完全に切断せずに、第1光学フィルムF11、表面保護フィルムF13、第1粘着剤層F14、粘着剤層F15が所定サイズに切断される。
【0050】
第1切断装置16に使用される切断手段としては、各種の切断刃を備えた切断装置、レーザ装置、その他の公知の切断手段等が挙げられる。中でも、切削屑等の粉塵を出しにくいなどの観点から、切削(鋸式)を伴わないナイフ式の切断刃を備えた切断装置を用いることが好ましい。ナイフ式切断刃を備える切断装置には、切断刃を切断方向に移動させながら切断を行うものとして、回転式丸刃、固定式丸刃、カッターナイフ等を備えるものが挙げられ、切断刃を切断方向に移動させずに切断を行うものとして、押切ブレード刃、直線状トムソン刃を備えるものが挙げられる。
【0051】
本発明では、結果的にキャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部で、キャリアフィルムの厚みの半分未満の切り込み深さとなれば、キャリアフィルムの全幅にわたって、切り込み深さを一定に設定してもよいが、キャリアフィルムの幅方向の両端部で、他の部分と比較して切り込み深さを浅くすることが好ましい。後者の場合、台座の表面高さ調整する方法、切断刃の高さを調整する方法、両者を調整する方法が挙げられるが、精度を向上させる観点から、台座の表面高さ調整する方法がより好ましい。切断刃の高さを調整する方法として、切断刃がスライド式の場合には、切断刃が移動するレールを調製する方法でもよい。なお、レーザ装置を用いる場合には、レーザ出力を制御して切り込み深さを調整する方法が好ましい。
【0052】
このような切断装置としては、図5に示すように、切断刃162により台座161に支持した前記キャリアフィルムF12を切断すると共に、キャリアフィルムF12の幅方向の両端部で、他の部分と比較して台座161の表面高さを低くしてある装置を用いるのが好ましい。この例では、キャリアフィルムF12の両端から長さLの範囲で、台座161の表面161aの高さを高さHの分だけ、中央部より低くしてある。
【0053】
このような台座161を使用すると、同じ高さで切断刃162の先端162aを台座161の表面に平行にスライドさせて、切断を行う際に、キャリアフィルムF12の幅方向の両端部で、台座161の表面と切断刃の間隔を部分的に大きくすることができ、その部分でのキャリアフィルムF12の切り込み深さを、中央部に比べて浅くすることができる。
【0054】
図5では、カッターナイフ用の切断刃162が示されているが、切断刃162の種類が変わっても上記と同様の効果が得られる。例えば、回転式丸刃、固定式丸刃、などの移動式の切断装置に限らず、トムソン刃を上下させる切断装置(押切式)でも同様である。
【0055】
切断装置としてレーザ装置を用いる場合、第1シート状物F1を裏面から吸着保持する保持テーブルを配置し、レーザ装置を第1シート状物F1の上方に配置する。第1シート状物F1の幅方向にレーザを走査させるように水平移動し、最下部のキャリアフィルムH12を残して残部をその搬送方向に所定ピッチで切断する。また、第1シート状物F1の幅方向から挟むようにして、切断部位に向けて温風を吹き付けるエアーノズルと、この温風により搬送される切断部位から発生したガス(煙)を集煙する集煙ダクトとが対向した状態で一体構成されていることが好ましい。
【0056】
台座161における長さLは、10〜50mmが好ましく、15〜40mmがより好ましい。また、キャリアフィルムF12の両端における高さHは、3μmからキャリアフィルムF12の厚みの30%の高さが好ましく、2μmからキャリアフィルムF12の厚みの25%の高さがより好ましい。
【0057】
また、図5に示す例では、段差部を設けて台座161の中央部と平行な面により表面高さを低くしてあるが、例えば段差部を曲面で形成したり、徐々に高さを変化(テーパ状)させてもよい。
【0058】
切断における切込み深さは、キャリアフィルムへの切込み深さをcとし、キャリアフィルムの厚みをdとするとき、切断距離の6割以上が、3μm<c<d/2μmを満たすことが好ましく、7割以上がこの条件を満たすことがより好ましく、8割以上がこの条件を満たすことが更に好ましい。
【0059】
このような条件を考慮すると、キャリアフィルムの厚みが20μm以上40μm未満であることが好ましい。また、同じ切り込み状態でも、連続的な貼り合わせにおけるキャリアフィルムの破断をより確実に防止する観点から、キャリアフィルムの破断強度が180MPa以上であることが好ましく、破断強度が200MPa以上であることがより好ましい。
【0060】
前記のような切断により、粘着剤層が完全に切断されていない部分が殆どなくなり、貼り合わされた液晶パネル(液晶表示素子)に粘着剤層の変形に起因する気泡が生じにくく、端部からのハガレも生じにくくなり、これらに起因して光が抜ける等の致命的な不良も生じにくくなる。具体的には、粘着剤層が完全に切断されていない部分が切断距離の10%以下で且つ切断されていない部分の粘着剤層の厚みが最大で3μmであることが好ましい。
【0061】
第1切断装置16は、第1欠点検査処理で検出された欠点の位置座標に基づいて、第1切断装置16は、欠点部分を避けるように所定サイズに切断する。すなわち、欠点部分を含む切断品は不良品として後工程で第1排除装置19によって排除される。あるいは、第1切断装置16は、欠点の存在を無視して、連続的に所定サイズに切断してもよい。この場合、後述の貼り合せ処理において、当該部分を貼り合せずに除去するように構成できる。この場合の制御も制御装置の機能による。
【0062】
また、第1切断装置16は、必要に応じて、第1シート状物F1を裏面から吸着保持する保持テーブルを備える。第1シート状物F1を保持テーブルで吸着する場合に、その下流側と上流側の第1シート状物F1の連続搬送を停止しないように、搬送機構のアキュムレート装置Aは上下垂直方向に移動するように構成されている。この動作も制御装置の制御による。
【0063】
第1貼合装置18は、上記切断処理後に、第1剥離装置17によってキャリアフィルムH12が剥離された第1シート状物F1(第1光学フィルム片)を、第1粘着剤層F14を介して液晶パネルWに貼り合せる。第1シート状物F1の搬送経路は、液晶パネルWの搬送経路の上方である。
【0064】
図3に示すように、貼り合せる場合に、押さえローラ181、案内ローラ182によって、第1光学フィルムF11を液晶パネルW面に圧接しながら貼り合わせる。押さえローラ181、案内ローラ182の押さえ圧力、駆動動作は、制御装置によって制御される。
【0065】
第1剥離装置17の剥離機構171としては、先端が先鋭なエッジ状部材を有し、このナイフエッジ部にキャリアフィルムH12を巻き掛けて反転移送することにより、キャリアフィルムH12を剥離すると共に、キャリアフィルムH12を剥離した後の第1シート状物F1(第1光学フィルムF11)を液晶パネルW面に送り出すように構成される。剥離された離型離ルムH12はロール172に巻き取られる。ロール172の巻取り制御は、制御装置によって制御される。
【0066】
エッジ状部材の先端の曲率半径は、キャリアフィルムH12を粘着剤層からスムーズに剥離する観点から、例えば1〜2mmであり、1〜1.5mmが好ましい。また、剥離後のキャリアフィルムH12に生じる張力(剥離のための張力)は、安定した搬送の観点から、例えば0.1〜0.2N/mmであり、0.15〜0.2N/mmが好ましい。
【0067】
貼合せ機構としては、貼合せ位置P31に設けられた、押さえローラ181とそれに対向して配置される案内ローラ182とから構成されている。案内ローラ182は、モータにより回転駆動するゴムローラで構成され、昇降可能に配備されている。また、その直上方にはモータにより回転駆動する金属ローラからなる押さえローラ181が昇降可能に配備されている。液晶パネルWを貼合せ位置に送り込む際には押さえローラ181はその上面より高い位置まで上昇されてローラ間隔を開けるようになっている。なお、案内ローラ182および押さえローラ181は、いずれもゴムローラであってもよいし金属ローラであってもよい。液晶パネルWは、上述したように各種洗浄装置によって洗浄され、搬送機構Rによって搬送される構成である。搬送機構Rの搬送制御も制御装置の制御による。
【0068】
欠点を含む第1シート状物F1を排除する第1排除装置19について説明する。欠点を含む第1シート状物F1が貼り合わせ位置に搬送されてくると、案内ローラ182が垂直下方に移動する。次いで、粘着テープ191が掛け渡されたローラ192が案内ローラ182の定位置に移動する。押さえローラ181を垂直下方に移動させて、欠点を含む第1シート状物F1を粘着テープ191に押さえつけて、第1シート状物F1を粘着テープ191に貼り付け、粘着テープ191とともに欠点を含む第1シート状物F1をローラ193に巻き取る。
【0069】
上記で製造された液晶パネルW1は、下流側に搬送され、第2光学フィルムF21(第2シート状物F2)が貼り合わされる。一連の工程は、第1光学フィルムF11(第1シート状物F1)と同様のため説明を省略する。
【0070】
本発明の液晶表示素子を用いた液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル(液晶パネル)と光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成される。液晶セルについては、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0071】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。
【0072】
さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0074】
(1)平均切り込み深さ
ハーフカット後にハーフカットの切断距離400mmについて、10mm間隔で切り込みの深さを40点測定し、平均値を求めた。セパレータと粘着剤層との界面を基準として、「+」はセパレータまで深く切り込んでいる状態、「−」は切り込みがセパレータまで届いていない状態を示す。
【0075】
(2)貼り付け外観不良
貼り付け時にハーフカット部の端部に気泡、ハガレが発生しないものを○、これらが経時で消えれば△、消えなければ×として評価した。
【0076】
(3)切り込み割合
切込み深さcがキャリアフィルムの層厚dと対応して3μm<c<d/2μmの範囲内となる切断部分の長さの割合を、平均切り込み深さを求めるときに測定した40点中から求めた。
【0077】
(4)切残り割合
切断距離に対して粘着剤が切れ残っている距離の割合を、平均切り込み深さを求めるときに測定した40点中から求めた。
【0078】
(5)切残り高さ
平均切り込み深さを求めるときに測定した40点から、粘着剤が切れ残っている高さが最も高い部分の切れ残りの高さを測定した。
【0079】
(6)両端部分完全切断長さ
キャリアフィルムの両端部分(左右両側)において、フィルムが完全に切断されている長さを測定した。
【0080】
(7)両端部分切れ残り厚み
キャリアフィルムの両端部分が連続性を有している厚み(μm)、即ち切れ残り厚みを測定した。フィルムの厚みからこの値を引いたものが、切断深さとなる。
【0081】
(8)キャリア中破断評価
光学フィルムの切断後からキャリアフィルムの剥離前までに、キャリアフィルムに破断が発生するか否かを評価した。
【0082】
(9)剥離中破断評価
キャリアフィルムの剥離に際し、ナイフエッジ状の剥離バーを用いて剥離するときの破断の発生の有無を評価した。
【0083】
実施例1
シート状物として、偏光板である光学フィルムと、キャリアフィルム(PET、厚み38μm、破断強度202MPa)と、表面保護フィルム(PET、厚み38μm)とが各々粘着剤層(アクリル系粘着剤、厚み23μm)を介して積層されたものを用いた。光学フィルムは、偏光子(ヨウ素配向PVAフィルム、厚み28μm)と、その両面に接着剤層(PVA系接着剤、厚み80nm)を介して積層された偏光子保護フィルム(トリアセチルセルロースフィルム、厚み80μm)からなる。
【0084】
このシート状物の長尺体(幅400mm)を、台座がフラットな表面を有し、カッターナイフ用切断刃の刃先を一定高さでスライド(移動速度350mm/秒)させる切断機構を有する切断装置により、平均切り込み深さを−15μm〜+35μmの範囲で変えて、所定間隔で切断した。その際の切断部について前記の評価を行った結果を表1に示す。
【表1】

【0085】
表1の結果から、切り込み割合が60%以上となるとき、破断の発生は見られないことが分かる。また切残り割合が10%以下であり切れ残り高さが3μm以下の時、貼り付け外観不良の評価が○となっている。
【0086】
実施例2
実施例1において、キャリアフィルムの厚みを25μmに変え、これに対応して平均切り込み深さを−12μm〜+20μmの範囲で変えたこと以外は、実施例1と同じ条件で切断と評価を行った。その結果を表2に示す。
【表2】

【0087】
表2の結果から、切り込み割合が60%以上となるとき、破断の発生は見られないことが分かる。また切残り割合が10%以下であり切れ残り高さが3μm以下の時、貼り付け外観不良の評価が○となっている。
【0088】
実施例3
実施例1および実施例2において切断された後の光学フィルム片を用いて、図2の装置に連続する図3に示す貼合装置(キャリアフィルムの剥離に使用する剥離バーのエッジ部の曲率半径は1.5mm、反転角度170°(内角10°)、張力0.15N/mm)により、液晶パネルと光学フィルム片との貼り合わせを行った。その際、前記の評価を行った結果を表3に示す。
【表3】

【0089】
表3の結果から、キャリアフィルムの両端部分がフルカット状態である場合、耐久性が著しく下がることが判明した。また、両端部分において、キャリアフィルムの厚みの半分以上の切り込み深さとなると、キャリアフィルムの剥離中に破断が生じることが判明した。
【符号の説明】
【0090】
F1 第1シート状物
F2 第2シート状物
F11 第1光学フィルム
F11a 第1偏光子
F11b 第1フィルム
F11c 第2フィルム
F12 第1キャリアフィルム
F13 表面保護フィルム
F14 第1粘着剤層
F21 第2光学フィルム
F21a 第2偏光子
F21b 第3フィルム
F21c 第4フィルム
F22 第2キャリアフィルム
F23 表面保護フィルム
F24 第2粘着剤層
12 第1搬送装置
13 第1検査前剥離装置
14 第1欠点検査装置
15 第1キャリアフィルム貼合装置
16 第1切断装置
17 第1剥離装置
18 第1貼合装置
19 第1排除装置
161 台座
162 切断刃
R 搬送機構
W 液晶パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を含む光学フィルムに粘着剤層と該粘着剤層に仮着されたキャリアフィルムとが積層された長尺なシート状物を、前記キャリアフィルムの連続性を維持した状態で所定間隔に切断し、得られた光学フィルム片を搬送するとともにキャリアフィルムを張力により剥離して露出した粘着剤層にて液晶パネルに連続的に貼り合せる液晶表示素子の製造方法において、
前記切断は、実質上キャリアフィルムに達する切り込み深さとされ、且つキャリアフィルムの幅方向の少なくとも両端部で、該キャリアフィルムの厚みの半分未満の切り込み深さとなることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【請求項2】
前記キャリアフィルムを剥離する際に、エッジ状部材を用いてキャリアフィルムの搬送方向を鋭角に反転させて、前記粘着剤層から剥離する請求項1記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項3】
前記切断を行う際に、切断刃により台座に支持した前記キャリアフィルムを切断すると共に、前記キャリアフィルムの幅方向の両端部で、他の部分と比較して前記台座の表面高さを低くしてある請求項1又は2に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
切断における前記キャリアフィルムへの切込み深さをcとし、キャリアフィルムの厚みをdとするとき、切断距離の6割以上が、3μm<c<(d/2)μmを満たす請求項1〜3いずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記キャリアフィルムの厚みが20μm以上40μm未満である請求項1〜4いずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項6】
前記キャリアフィルムの破断強度が180MPa以上である請求項1〜5いずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項7】
前記切断において、粘着剤層が完全に切断されていない部分が切断距離の10%以下で且つ切断されていない部分の粘着剤層の厚みが最大で3μmである請求項1〜6いずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−281849(P2010−281849A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66688(P2009−66688)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】